【実施例】
【0045】
次に参考例および実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例で使用した材料等は、次のように入手し、統計処理は下のように行った。
【0046】
(化学物質および測定試薬)
B16F10メラノーマ細胞及び3T3−L1細胞は、アメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション(ATCC)から入手した。また、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、デキサメサゾン、3−イソブチル−1−メトキシキサンチン(IBMX)、牛胎児血清(FBS)、トリトン−X、ウシ血清アルブミン(BSA)は和光純薬工業社から購入した。インシュリン、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、スルファニルアミド、ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩はシグマアルドリッチ社から入手した。
【0047】
(統計処理)
すべての分析評価は、3重で行なわれた。データは、一元配置分散分析(ANOVA)後ダンカンテストを行った。データは平均±標準偏差として表し、p値<0.05を有意差ありとした。
【0048】
参 考 例 1
ゲットウ抽出物の取得:
琉球大学(沖縄県中城郡西原町千原1)のキャンパスからゲットウ(
Alpinia zerumbet (Pers.) B.L. Burtt. & R.M. Sm. (Family Zingiberaceae) )を採取した。このゲットウの根茎を、2〜3mm程度に細断した後、その20gを、600mlのエタノール溶液(濃度80%)中に入れ、室温で48時間抽出した。得られた抽出物を、減圧下で乾燥するまで濃縮し、ゲットウ根茎のエタノール抽出物を得た。
【0049】
一方、同じゲットウのサンプル各20gを、沸騰状態の1Lの水中に30分浸漬し、その後放冷させ、抽出物をろ過し、真空下、40℃で乾燥させ、ゲットウ根茎の熱水抽出物を得た。これらの抽出物それぞれについて、残留物を定量後、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液(濃度50%)に溶解し、抽出物が1mg/mL濃度であるゲットウ抽出物の各サンプルを得た。
【0050】
参 考 例 2
DKおよびDDKの取得:
ゲットウ根茎の熱水抽出物を出発原料とし、
図1に示す工程によりDKおよびDDKを抽出した。
【0051】
まず、ゲットウ根茎2kgの熱水抽出物(乾燥前)10Lを、1Lになるまで濃縮後、その500mLのヘキサンで3回、分液ロートで分液操作を行い、ヘキサン相を分離取得した。
【0052】
ついで、このヘキサン相から、40℃の温度でヘキサンを減圧下で留去し、固体物を得た。この固形物に、100mLの水を加え、温度が100℃になるまで加熱した後、濾過した。
【0053】
上記の濾過工程で得られる残渣部分を更に下記条件の分取用の高速液体クロマトを用いて精製し、DKを100g当たり18.8mg得た。
【0054】
カラム:
TSK gel ODS−100Z(15.0×0.46cm i.d.:
5μm particle size)
移動相A: 水(0.1%酢酸)
移動相B: メタノール(0.1%酢酸)
流 速: 0.8mL/min
検出波長: 280nm
移動相の濃度勾配:
0から10分までは、移動相Aと移動相Bの50:50混液から、100%移動相B まで変化する濃度勾配
10から20分までは、100%移動相Bで変化なし
20から21分までは、100%移動相Bから、移動相Aと移動相Bが50:50混 液まで変化する濃度勾配
【0055】
一方、上記の濾過工程で得られる濾液部分は、4℃で24時間冷蔵庫内に放置し、析出した固体を濾取し、DDKを原料100g当たり24.1mg得た。上記DKとDDKの分析HPLCクロマトグラムを
図2に示す。
【0056】
得られたDDKおよびDKについて、そのCDCl
3中の、
1H−NMR(600MHz)スペクトルを、JEOL JNM−ECA600(JEOL、日本)で測定したところ、下記の通りであった。化学シフトは、TMSに対するppm(δ)で示した。2DNMR(H,C−COSY,HMQC,HMBC)試験は、標準パルスシーケンスを用いて行った。
【0057】
DDK:
EIMS, m/z 230 [M] (30), 202 (8), 125 (30), 111 (28), 91 (100), 69 (12); 1 H (CDCl
3), δ 2.73-2.76 (m, 2H, CH
2), 2.96-2.97 (m, 2H, CH
2), 3.77 (s, 3H, CH
3), 5.42 (s, 1H, CH), 5.72 (s, 1H, CH), 7.18-7.29 (m, 5H, aromatic)
【0058】
DK:
EIMS, m/z 228 [M](60), 200 (20), 157 (35), 129 (20), 69 (20), 44 (35), 40 (100); 1 H (CDCl
3), δ 3.79 (s, 3H, CH
3), 5.51 (d, 1H, CH), 5.97 (s, 1H, CH), 6.81 (d, 1H, CH), 7.31 (d, 1H, CH), 7.32 (m, 5H, aromatic)
【0059】
参 考 例 3
ラブダジエンの取得:
ラブダジエンはゲットウの種子から単離した。種子500gをエタノール1Lに浸漬して2日間抽出した。濾過後、濾液から溶媒を蒸発乾固し褐色の飴状抽出物3.26gを得た。この抽出物を蒸留水300mLに懸濁し、ヘキサン(300mL)及び酢酸エチル(300mL)に分配した。酢酸エチル(1.02g)をシリカゲル(シリカゲル60N、粒径63−120μm、70−230メッシュ(ASTM))を充填したガラスクロマトグラフィーカラムに付し、ヘキサン:アセトン(0−100%)で溶出して3つの画分を得た。第1画分をさらに薄層クロマトグラフィー(TLC)に付した。その溶液(ヘキサン:アセトン=9:1)をラブダジエン単離に用いた。プレコートTLCシリカゲルプレート(Merk−60 254,0.25mm厚)を予め45分間移動相に浸透させたツインスルーガラスタンク(Camag社)を用いて展開し、各プレートは10cmの高さまで展開した。その後プレートを取り外し、乾燥後、スポットをUV光で可視化した。さらにラブダジエンを採取するために分取薄層クロマトグラフィー(PTLC)を用いた。第1画分50mgをアセトンに溶解し、プレートを合計容量200mLのヘキサン:アセトン混液(9:1)に展開した。波長254nmで4つのバンドが検出された。各バンドを擦り取り、剥離物を酢酸エチルで撹拌しながら抽出した。抽出は2〜3回行った。ULTRASHIELD(商標)PLUS 500MHz(Bruker Biospin社)を用いてメタノールD
4中の
1H−NMRスペクトルを測定した。化学シフトは、標準パルスシーケンスを用いてppm(δ)で示した。バンド3がラブダジエンであると同定された。データを以下に示す。
EIMS, m/z (rel. int.); 302 (20), 137 (100), 123 (50), 109 (35), 95 (73), 81 (70), 69 (55), 55 (48), 41 (50).
1H (CDCl
3): d 0.74, 0.84 ,0.90 (s, each 3H, CH
3, 18, 19, 20), 1.04-2.51 (m, 14H, CH
2, CH, 1, 2, 3, 5, 6, 7, 9, 10, 11), 3.45 (s, 2H, CH
2, 14), 4.39 (s, 1H, CH
2, 17), 4.88 (s, 1H, CH
2, 17), 6.78 (t, 1H, CH, 12), 9.42 (s, 1H, CHO, 15) , 9.67 (s, 1H, CHO, 16)
【0060】
参 考 例 4
ヒスピジンの調製:
5,6−デヒドロカワイン(DK)をラット肝臓でヒスピジンに転換した。ラット肝臓ミクロソームでの代謝によるDKからヒスピジンへの転換は、文献記載の方法を若干改変した行った(Tang, C.; Shou, M.; Roddrigues, A.D. Substrate-dependent effect of acetonitrile on human liver microsomal cytochrome P4502C9 (CYP2C9) activity. Drug. Metab. Dispos. 2000, 28, 567-572.)。すなわちウィスター種マウスを殺し、直ちに肝臓を採取した。肝臓を氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で灌流した後細断し、0.15M KCl、1mM EDTA,0.25M スクロース含有0.05M Tris−HCl(pH7.4)中にて4℃、30分間1000×gでホモジナイズした。上清をさらに4℃にて100,000×g、60分間遠心分離し、得られたペレットを20%グリセロール,1mM EDTA,0.25M スクロース含有0.05M Tris−HCl緩衝液(pH7.4)にタンパクの終濃度が20mg/mLとなるように添加し−80℃で保存した。
【0061】
10mM DK 100μL,3.5mM MgCl
2 100μL,酵素400μL(ミクロソームタンパク0.2mg/mL),100mM リン酸緩衝液(pH7.4)300μLからなる混合物(最終容量1mL)を37℃で5分間インキュベートした。次にNADPH 100μLを加え37℃で10分間インキュベートを継続した。アセトニトリル/メタノール混液50mLを混合物に加え300rpmで10分間遠心分離した。有機相を蒸発させ残渣をメタノール/酢酸/アセトニトリル混液(95:4:1)に溶解した。
【0062】
次にSynergi 4u MAX−RP 80A カラム(15x0.46cm,5μm)を用いHPLCを行った。移動相はメタノール/酢酸/アセトニトリル(95:4:1、v/v;溶媒B)及び0.1%酢酸溶液(v/v;溶液A)を用いた。グラジエント溶離条件は、0〜2分間:溶液B 5%、2〜20分間:溶液B 100%、20〜25分間:溶液B 100%、25〜30分間:溶液B 5%とした。移動相は40℃、流速0.5mL/minで供給した。定量は365nmでのUVピーク面積を測定した。
質量分析は、COSMOSIL5 C 18 ARII(150mmx2.0mmφ)を用いてShimadzu LC−20AD XR LCシステムとWater Quattro micro AP MSシステムにより行った。試料の注入量は5μLとした。移動相は溶媒A(0.1%酢酸水溶液)と溶媒B(メタノール:酢酸:アセトニトリル=95:4:1)とし、0.5mL/minの一定の流速で導入した。勾配は、溶媒Bを20−100%の間で増加させた。グラジエント条件は、0〜2分間:溶液B 5%、2〜20分間:溶液B 100%、20〜25分間:溶液B 100%、25〜30分間:溶液B 5%とした。コーン及びキャピラリー電圧は、それぞれ50Vと4.0kVであった。温度は350℃に設定した。赤外線(IR)スペクトルは400〜4000cm
−1の波長範囲で、KBrペレットを用いてJASCO FT/IR−6100 plus spetrometerで測定した。マススペクトルを
図3に示す。
【0063】
参 考 例 5
ヒスピジン誘導体(H1〜H3)の調製:
無水メタノール10mLにマグネシウムメトキシド(104mg)を懸濁させた液に、4−メトキシ−6−メチル−2−ピロン(MMP)(1.4mmol,200mg)と3,4−ジメトキシベンズアルデヒド(1.7mmol,285mg)を添加した。得られた混合物を室温で16時間撹拌した。水酸化マグネシウムを溶解するために酢酸2mlを添加し、ろ液を真空中で乾燥させた。残渣を数mLのメタノールで洗浄し、メタノールで繰り返し再結晶して淡黄粉末としてヒスピジン誘導体H1を得た。次に、H1をメタノール:クロロホルム(1:1)0.82 mLに溶解させ、10%パラジウム炭素(Pd/C)の存在下で2時間攪拌した。この混合溶液をろ過し、溶媒を真空で蒸発させた。カラムクロマトグラフィーで精製を行い、H2を得た(3mg、収率85%、白色個体)。同様に、ヒスピジンを還元してH3を得た。データを以下に示す。
(H1) 6-(3,4-dimethoxystyryl)-4-methoxy-2Hpyran-2-one.
1H NMR(CDCl
3,400MHz)δ:
7.43(d,1H,CH),7.07(dd,1H,CH),7.00(d,1H,CH),6.85(d,1H,CH),6.43(d,1H,CH),5.89(d,1H,CH),5.46(d,1H,CH),3.91(s,3H,OCH
3),3.89(s,3H,OCH
3),3.81(s,3H,OCH
3).
(H2) 6-(3,4-dimethoxyphenethyl)-4-methoxy-2Hpyran-2-one.
1H NMR(CDCl
3,400MHz)δ:
6.77(d,1H,CH),6.69(dd,1H,CH),6.66(d,1H,CH),5.69(d,1H,CH),5.40(d,1H,CH),3.84(s,3H,OCH
3),3.83(s,3H,OCH
3),3.76(s,3H,OCH
3),2.91(m,2H,CH2),2.71(m,2H,CH2).
(H3) 6-(3,4-dihydroxyphenethyl)-4-hydroxy-2Hpyran-2-one.
1H NMR(DMSO,400MHz)δ:
7.29(d,1H,CH),7.20(dd,1H,CH),6.76(d,1H,CH),6.11(d,1H,CH),5.26(d,1H,CH),3.34(m,2H,CH2),2.99(m,2H,CH2).
【0064】
実 施 例 1
メラニン産生抑制作用:
(1)マウスB16F10メラノーマ細胞(ATCCより入手)を、37℃にて、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(10.000U/100μg/mL)を加えたDMEM中で5%CO
2を含む加湿雰囲気にて培養した。
【0065】
(2)細胞生存性
細胞生存率はMTTアッセイを用いて測定した(Campos, P.M.; da Silva Horinouchi, C.D.; da Silveira Prudente, A.; Cechinel-Filho, V.; de Almeida Cabrini, D.; Otuki, M.F. Effect of a Garcinia gardneriana (Planchon and Triana) Zappi hydroalcoholic extract on melanogenesis in B16F10 melanoma cells. J. Ethnopharmacol. 2013, 148, 199-204.)。B16F10細胞を96ウェルプレートに7×10
3細胞/ウェルの密度で播種した。48時間培養後、細胞を100又は200μg/mLの濃度の試験化合物、又は500μMコウジ酸溶液に接触させ、37℃でさらに48時間インキュベートした。インキュベーション後、培地を除去し、細胞をリン酸緩衝液で2回洗浄し、37℃、3時間MTT溶液(0.5mg/mL)でインキュベートした。培地を捨てて、エタノール200μLを添加した。マイクロプレート分光光度計(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて570nmにおける吸光度を測定した。結果を
図4に示す。
【0066】
(3)メラニン含有量測定
メラニン含有量はYoonらの方法に従って測定した(Yoon, N.Y.; Eom, T-K.; Kim, M-M.; Kim, S-K. Inhibitory effect of Phlorotannins isolated from Ecklonia cava on mushroom tyrosianse activity and melanin formation in mouse B16F10 melanoma cells. J. Agri. Food. Chem. 2009, 57, 4124-4129.)。すなわち、B16F10細胞を7×10
3細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。48時間培養後、細胞を20又は50μg/mLの試験化合物、又は500μMコウジ酸溶液に接触させた。1時間後、100μMイソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)を加え、さらに37℃で48時間インキュベートした。細胞をリン酸緩衝液で2回洗浄し、次いで10%DMSOを含むNaOH(1N)100μLに溶解させた。サンプルを80℃で1時間インキュベートし、メラニンを可溶化するために混合した。混合ホモジネートの490nmにおける光学濃度を測定した。コントロール群において実験期間中に生成するメラニンの総量を100%とし、処置群における阻害率を計算した。結果を
図5に示す。
【0067】
(4)DK、DDK、ヒスピジン及びラブダジエンにおける細胞内チロシナーゼ活性
Liらの方法を若干修正してチロシナーゼ活性を測定した(Li, X.; Guo, L.; Sun, Y.; Zhou, J.; Gu, Y.; Li Y. Baicalein inhibits melanogenesis through activation of the ERK signaling pathway. Inter. J. Mol. Med. 2010, 25, 923-927.)。B16F10細胞を96ウェルプレートに7×10
3細胞/ウェルの密度で播種した。48時間培養後、細胞を20又は50μg/mLの試験化合物、又は500μMコウジ酸の溶液に接触させたた。1時間後、100μM イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)を加え、さらに37℃で48時間インキュベートした。次いで、細胞を氷冷リン酸緩衝液で洗浄し、1%トリトン−X(90μL/ウェル)含有リン酸緩衝液(pH6.8)で溶解した。プレートを−80℃で30分間凍結した。解凍、混合した後、1%L−DOPA 10μLを各ウェルに加えた。37℃、2時間インキュベーションした後、90nmにおける吸光度を測定した。結果を
図6に示す。
【0068】
(5)H1〜H3における細胞内チロシナーゼ活性
Chanらの方法に従ってチロシナーゼ活性を測定した(Chan CF, Lai ST, Guo YC, Chen MJ. 2014. Inhibitory effects of novel synthetic methimazole derivatives on mushroom tyrosinase and melanogenesis. Bioorg Med Chem 22: 2809-2815.)。96ウェルプレートに、10% ウシ胎仔血清(FBS)と1% ペニシリン/ストレプトマイシンで補充したDMEM含有培養培地を用意し、B16F10細胞を、5×10
3細胞/ウェルの密度で播種し、24時間培養した。B16F10細胞をα-メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)100nMで処理した後、試験化合物で48時間処理した。B16F10細胞を50mM 氷冷リン酸緩衝液(pH 6.8)で2回洗浄し、1% トリトン−X含有50mM リン酸緩衝液(pH 6.8)90μLで溶解し、−80℃で30分間凍結した。解凍、混合した後、0.2% L−DOPA 20μLを各ウェルに加えた。37℃、2時間インキュベーションした後、490nmにおける吸光度を測定した。陽性対照としてミモシン(100μM)及びコウジ酸(50μM)を使用した。結果を
図7に示す。
【0069】
結果:
3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)は、チロシナーゼを活性化する強力なメラニン産生刺激因子である。チロシナーゼはメラニン形成における重要かつ律速段階に関与する酵素である。チロシナーゼは、チロシンの水酸化により3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)を生成し、次にL−DOPAの酸化によりドーパキノンとなる。メラニン産生刺激因子であるIBMXの存在下、DK、DDK、ヒスピジン、ラブダジエンのメラニン産生抑制活性を評価した。
B16F10メラノーマ細胞を、48時間IBMXの存在下でDK、DDK、ヒスピジン、ラブダジエン(20又は50μg/mL)で処理したところ、
図5に示されるように、いずれも有意にメラニン含有量を減少させた。50μg/mLでは、DK、DDK、ヒスピジン、ラブダジエンのメラニン生成抑制率はそれぞれ71.9±5.33%、67.6±4.47%、67.2±5.93%、67.3±5.34%であり、陽性対照であるコウジ酸(500μM、50.5±4.94%)よりも優れたメラニン生成抑制作用を示した。
【0070】
DK、DDK、ヒスピジン、ラブダジエンが細胞内チロシナーゼ活性を阻害するか否かを評価するために、B16F10メラノーマ細胞をDK、DDK、ヒスピジン、ラブダジエン(20又は50μg/mL)で48時間処理し、L−DOPAを加えてインキュベーションした。20μg/mLにおけるDK、DDK、ヒスピジン、ラブダジエンのチロシナーゼ阻害率は、それぞれ52.4±0.76%、46.0±1.87%、63.7±5.01%、58.7±0.84%であった。50μg/mLにおける阻害率は、それぞれ74.3±2.86%、55.4±4.48%、69.9±7.66%、62.3±6.99%であり、陽性対照であるコウジ酸(53.4±1.38%)よりも強い阻害活性を示した。またこれらの化合物は、B16F10メラノーマ細胞の生存率にほとんど影響を与えなかった。
H1〜3についても、一定の細胞内チロシナーゼ活性を示した。
【0071】
実 施 例 2
活性酸素種(ROS)及び一酸化窒素(NO)生成阻害試験:
(1)肥満細胞の培養と分化:
細胞として、3T3−L1細胞を用い、これを、2%のグルタミンと、10(v/v)%のウシ胎児血清(CS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、コンフルエントになるまで培養した。コンフルエンシーに達した2日後に、細胞は、追加の2日間、10%FBS、0.5mM IBMX、1μMデキサメサゾンおよび10μMインシュリンを含むDMEM培地中で培養することによって脂肪細胞に分化するように刺激された。細胞は、それから更に、2日間、10%FBSと10μg/mLインシュリンを含むDMEM中で維持され、更に4日間、10%FBSのみを含むDMEMで培養された。
この結果、細胞の90%以上は、脂質滴が蓄積された3T3−L1脂肪細胞に分化していた。分化した3T3−L1細胞は、異なった濃度の試験化合物で処理され、試験中を通して5%のCO
2を含む加湿されたインキュベーター中で、37℃に維持した。
【0072】
(2)細胞内活性酸素種(ROS)測定
3T3−L1細胞を96ウェルプレートに2×10
6細胞/mLの密度で播種し、上記と同様にしてコンフルエントになるまで培養し、分化させた。ROS生成は、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)アッセイによって検出した(Oliveira, H.R.; Verlengia, R.; Carvalho, C.R.; Britto L.R.; Curi, R.; Carpinelli, A.R. Pancreatic β-cells express phagocyte-like NAD(P)H oxidase. J. Diabetes. 2003, 52, 1457-1463.)。NBTは、ROSにより還元され、ホルマザンと呼ばれる暗青色で不溶性形態になる。分化後、細胞を10又は20μg/mLの濃度のラブダジエンで24時間インキュベートした。次いで、細胞を0.2%NBT含有PBS100μL中で90分間インキュベートした。暗青色のホルマザンを50%酢酸に溶解し、570nmにおける吸光度を測定した。
【0073】
(3)細胞内一酸化窒素(NO)生成測定
3T3−L1細胞を96ウェルプレートに播種し、分化させた。亜硝酸塩生成(NO
2)アッセイを用いて測定した( Fang, X.K.; Gao, J.; Zhu, D.N. Kaempferol and quercetin isolated from Euonymus alatus improve glucose uptake of 3T3-L1 cells without adipogenesis activity. J. Life Sci. 2008, 82, 615-622.)。細胞を10又は20μg/mLの濃度のラブダジエンで24時間インキュベートした。上清(100μL)及びグリース試薬(100μL、1%スルファニルアミドと0.1%ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩含有5%リン酸の1:1混合物(v/v))を、96ウェルプレート中で混合し、室温で10分間インキュベートした。マイクロプレート分光光度計を用いて540nmにおける吸光度を測定し、亜硝酸ナトリウムで作成した標準曲線により亜硝酸塩濃度を推定した。
【0074】
結果:
ラブダジエンは脂肪細胞におけるROS生成を有意に阻害した。濃度20μg/mLにおける阻害率は63.9±0.56%であった。またNO生成も有意に抑制し、NO生成阻害率は72.0±0.41%であった。
【0075】
実 施 例 3
発毛促進作用:
(1)ヒト毛乳頭細胞の培養
ヒト毛乳頭細胞(HFDPC)を、50mL毛乳頭細胞成長培地(PCGM)、0.5mL ウシ胎仔血清(FSC)、0.5mL ウシ脳下垂体抽出物(BPE)、0.25mL シプロテロン(Cyp)及び0.25mLインスリン トランスフェリン トリヨードサイロニン(ITT)を含む51.5mL HFDPC成長培地で培養した。
【0076】
(2)細胞増殖率
細胞増殖率は、チアゾリル ブルー テトラゾリウム 臭化物(MTT)アッセイを用いて、特開2006−219407号公報に記載された方法に基づいて行った。すなわち、ヒト毛乳頭細胞を1×10
4細胞/mL濃度に、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)及び10%ウシ胎仔血清(FBS)を含んだ培地で希釈した。次に、200μL 細胞培養液(2,000細胞/ウエル)をコラーゲンでコーティングした96ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO
2条件下で3日間培養した。培地を除き、DMEMで調整した試験物質200μLを添加し、4日間培養後、DMEMに溶解したMTT溶液(0.4mg/mL)100μLを加え、2時間培養し、未反応のMTTを取り除いた。2−プロパノール100μLを各ウェルに添加し、プレートを振とうさせ、マイクロプレートリーダーを用いて570nmと650nmにおける吸光度を測定した。陽性対照としてミノキシジル(10μM)を使用した。結果を
図8及び
図9に示す。
【0077】
DK(
図8(A))、DDK(同(B))及びヒスピジン(同(C))は、陽性対照であるミノキシジルよりも高い発毛促進効果があった。特に、ヒスピジンを10μM使用した場合、ミノキシジルと比較しておよそ2倍の効果があった。さらに、ククルビタシンIは最も効果に優れ、10nMでも20%程度の促進効果が得られた。これはミノキシジルの1000倍以上の効果である(同(D))。またアルテピリンC(同(E))も発毛促進効果を示した。
【0078】
実 施 例 4
A549肺がん細胞の生存率:
細胞生存率はMTTアッセイを用いて測定した(Campos PM, Horinouchi CDS, Prudente AS, Cechinel-Filho V, Cabrini DA, Otuki MF. 2013. Effect of a Garcinia gardneriana (Planchon and Triana) Zappi hydroalcoholic extract on melanogenesis in B16F10 melanoma cells. J Ethnopharmacol 148: 199-204.)。A549肺がん細胞を96ウェルプレートに1×10
4細胞/ウェルの密度で播種し、24時間培養した。試験化合物を添加し、加湿5%CO
2、37℃の条件下で、72時間インキュベートした。インキュベーション後、MTT溶液(0.5mg/mL)20μLを各ウェルに加え、3時間インキュベートした。培地を捨てて、ホルマザン含有DMSO 200μLを添加し、10分間プレートを振とうした。細胞生存率は、マイクロプレートリーダー(BioTek, Synergy HT, Winooski, Vermont, USA)を用いて570nmにおける吸光度を測定した。陽性対照としてレスベラトロールを使用した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
ヒスピジン誘導体であるH1〜H3は、陽性対照であるレスベラトロールよりも、A549肺がん細胞の成長を阻害する効果が高かった。特にククルビタシンI(CBI)は最も高い阻害活性を示し、IC
50は140nMであった。