特許第6493869号(P6493869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6493869-リグニン誘導体 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493869
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】リグニン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/18 20060101AFI20190325BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20190325BHJP
   C08H 7/00 20110101ALI20190325BHJP
【FI】
   C04B24/18 Z
   C04B28/02
   C08H7/00
【請求項の数】2
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-245106(P2014-245106)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-108392(P2016-108392A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年10月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、農林水産省「木質リグニンからの材料製造技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】国立研究開発法人森林研究・整備機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 史帆
(72)【発明者】
【氏名】森本 正和
(72)【発明者】
【氏名】服部 真美
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−065867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08H 7/00
C04B 24/18
C04B 28/02
B01F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造中に(ポリ)アルキレングリコール鎖を有するリグニン誘導体を含有するセメント添加剤であって、
該リグニン誘導体は、下記一般式(1);
【化1】
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基含有基、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基、炭化水素基、又は、他のフェニルプロパン骨格由来の構造との直接結合を表し、R〜Rのうち少なくとも1つは、他のフェニルプロパン骨格由来の構造との直接結合である。)で表される骨格を有することを特徴とするセメント添加剤
【請求項2】
構造中に(ポリ)アルキレングリコール鎖を有するリグニン誘導体を含有するセメント添加剤を製造する方法であって、
該製造方法は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加する工程と酸化剤を用いてリグニン骨格を酸化する工程とを含むことを特徴とするセメント添加剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグニン誘導体に関する。より詳しくは、植物から得られるリグニンを原料として得られ、セメント添加剤等の用途に使用可能なリグニン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
リグニンは、木材等の植物系バイオマスの3大主成分のうちの一つ(3大主成分:セルロース、ヘミセルロース、リグニン)であり、天然の芳香族ポリマーとして地球上に最も豊富に存在している。リグニンの構造については、光合成において合成されるp−クマリルアルコール・コニフェニルアルコール・シナピルアルコールという3種類の基本骨格であるリグニンモノマーが、一電子酸化され、フェノキシラジカルとなり、これが不定形にラジカルカップリングすることにより、複雑な三次元網目構造をとっている。
【0003】
上述のように、リグニンの分子構造は複雑であり、また、植物体から単離する際の単離方法によりリグニンの化学的特性が大きく変化することから、リグニンの工業材料としての利用は限られている。さらに、リグニンは、基本的には疎水性物質であり、難水溶性であることも、その利用が限られる1つの原因となっている。
【0004】
リグニンの利用の一例として、疎水性のリグニンに水溶性単量体を導入した両親媒性のリグニン誘導体をセメント分散剤として利用することが開示されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−514402号公報
【特許文献2】特開2011−240223号公報
【特許文献3】特開2011−240224号公報
【特許文献4】特開2013−53010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにリグニンの水溶性用途への展開を図ることが模索されている。
しかしながら、両親媒性のリグニン誘導体がその用途に充分に適しているといえる程の性能を発揮するものとはなっていない。そのため、セメント添加剤用途においては、セメント減水性等の性能を高め、当該用途において際立った性能を発揮できるようにする工夫の余地があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメント添加剤として用いた場合の減水性能に優れたリグニン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、新規なリグニン誘導体について種々検討したところ、下記一般式(1)で表される特定の骨格と(ポリ)アルキレングリコール鎖とを有するリグニン誘導体が従来のリグニン誘導体よりも優れた減水性能を発揮することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、構造中に(ポリ)アルキレングリコール鎖を有するリグニン誘導体であって、上記リグニン誘導体は、下記一般式(1);
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基含有基、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基、炭化水素基、又は、他のフェニルプロパン骨格由来の構造との直接結合を表し、R〜Rのうち少なくとも1つは、他のフェニルプロパン骨格由来の構造との直接結合である。)で表される骨格を有するリグニン誘導体である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0012】
<リグニン誘導体>
本発明のリグニン誘導体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有するリグニン誘導体であって、上記一般式(1)で表される骨格を有する。上記リグニン誘導体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖と上記一般式(1)で表される骨格とを少なくとも1つ有していればよいが、(ポリ)アルキレングリコール鎖は、上記一般式(1)で表される骨格に含まれていてもよく、上記一般式(1)で表される骨格以外の構造に含まれていてもよい。
上記リグニン誘導体は、これらの構造以外に他の構造を有していてもよい。また、これらの構造を2つ以上有する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0013】
本発明のリグニン誘導体は、上記一般式(1)で表される骨格において、上記一般式(1)におけるR、Rのうち、少なくとも一方が水酸基又はアルコキシ基であることが好ましい。これにより、上記一般式(1)で表される骨格がカルボキシル基又はエステル基を有することになる。上記一般式(1)で表される骨格がカルボキシル基を有することにより、従来のリグニン誘導体よりもセメント粒子に吸着する基を多く有することになるため、セメント添加剤として用いた場合に、従来のリグニン誘導体をセメント添加剤として用いた場合よりも、優れた減水性能を発揮することができる。本発明のリグニン誘導体がエステル基を有する場合には、リグニン誘導体をセメントと混合した時のアルカリ加水分解によって生成するカルボキシル基がセメント粒子に吸着することにより優れた減水性能を発揮することができる。
上記一般式(1)におけるR、Rとしてより好ましくは、R、Rの両方が水酸基又はアルコキシ基であることであり、更に好ましくは、R、Rの両方が水酸基であることである。
【0014】
上記一般式(1)で表される骨格は、酸化剤を用いてリグニン骨格を酸化すること等により得ることができる。上記リグニン骨格とは、リグニンの基本骨格であるフェニルプロパン骨格を意味する。この酸化反応は、リグニン骨格が有するベンゼン環の二重結合に対して酸化剤が反応することにより、二重結合が開裂し、カルボニル基が生成する反応である。ベンゼン環の二重結合炭素に水素が結合している場合には、この酸化開裂によってアルデヒド基が生成した後、アルデヒド基が更に酸化され、カルボキシル基が生成する。また、ベンゼン環の二重結合炭素にアルコキシ基が結合している場合には、この酸化開裂によってエステル基が生成する。更に、エステル基が加水分解を受けるような反応系中で酸化反応を行った場合には、エステル基の一部又は全部が加水分解を受けてカルボキシル基となる場合がある。
【0015】
上記一般式(1)で表される骨格におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜2のアルコキシ基である。
上記炭化水素基としては、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましく、より好ましくは1〜2の炭化水素基である。
上記カルボキシル基含有基は、カルボキシル基を有する限り制限されず、カルボキシル基のみの基(−COOH)であっても、カルボキシル基とその他の構造部位とを有する基であってもよい。その他の構造部位としては、脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基等が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、−COOH、カルボキシル基を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族カルボキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基が好ましい。
【0016】
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基としては、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する限り特に制限されず、(ポリ)アルキレングリコール鎖のみの基であっても、(ポリ)アルキレングリコール鎖とその他の構造部位とを有する基であってもよい。その他の構造部位としては、脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基等の炭化水素基等が挙げられる。上記(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基としては、(ポリ)アルキレングリコール鎖のみの基、又は、炭素数1〜8のアルキレン基を有する芳香環に(ポリ)アルキレングリコール鎖が付加された基が好ましい。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端の構造は特に制限されず、置換基を有していてもよい。上記末端の酸素原子には、水素原子又は炭化水素基が結合していることが好ましい。上記炭化水素基としては、炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
(ポリ)アルキレングリコール鎖としては、後述するリグニン誘導体が有する(ポリ)アルキレングリコール鎖の具体例及び好ましい構造と同様である。
【0017】
上記リグニン誘導体における一般式(1)で表される骨格は、R〜Rのうち少なくとも1つを介して他のフェニルプロパン骨格由来の構造と結合している。他のフェニルプロパン骨格由来の構造は、リグニン由来の未変性のフェニルプロパン骨格であっても、置換基等により変性されたフェニルプロパン骨格であってもよく、一般式(1)で表される骨格であってもよい。上記置換基としては、特に制限されないが、例えば、R〜Rにおける置換基と同様のものが挙げられる。
【0018】
上記リグニン誘導体は、カルボキシル基を、酸化反応前のリグニン由来のフェニルプロパン骨格1モルに対して、0.05〜0.95モルの割合で有することが好ましい。より好ましくは0.10〜0.90モルであり、更に好ましくは0.20〜0.90モルであり、特に好ましくは0.20〜0.70モルである。上記カルボキシル基の割合が上記好ましい範囲であれば、リグニン誘導体をセメント添加剤として用いた場合のセメント粒子への吸着がより充分なものとなり、減水性能がより向上する。上記カルボキシル基の割合は、電位差滴定により測定することができる。
【0019】
本発明のリグニン誘導体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する。(ポリ)アルキレングリコール鎖は、上述したように、上記一般式(1)のR〜Rの(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基に含まれていても、リグニン誘導体における一般式(1)で表される骨格以外のその他の構造に結合していてもよい。上記その他の構造としては、一般式(1)で表される骨格以外のリグニン由来のフェニルプロパン骨格が挙げられる。
【0020】
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖としては、1種のアルキレンオキサイドによって構成されるものであってもよく、2種以上のアルキレンオキサイドによって構成されるものであってもよい。(ポリ)アルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドは特に限定されないが、炭素数1〜18のアルキレンオキサイドにより構成されることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜8のアルキレンオキサイドであり、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、2−ブテンオキサイド、トリメチルエチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、テトラメチルエチレンオキサイド、ブタジエンモノオキサイド、オクチレンオキサイド等が挙げられる。また、ジペンタンエチレンオキサイド、ジヘキサンエチレンオキサイド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキサイド等の脂環エポキシド;スチレンオキサイド、1,1−ジフェニルエチレンオキサイド等の芳香族エポキシド等である。
【0021】
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドとしては、セメント粒子との親和性の観点から、炭素数2〜8程度の比較的短鎖のアルキレンオキサイド(オキシアルキレン基)が主体であることが好適である。より好ましくは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが主体であることであり、更に好ましくは、エチレンオキサイドが主体であることである。
【0022】
ここでいう「主体」とは、ポリアルキレングリコール部位が、2種以上のアルキレンオキサイドにより構成されるときに、全アルキレンオキサイドの存在数において、大半を占めるものであることを意味する。「大半を占める」ことを全アルキレンオキサイド100モル%中のエチレンオキサイドのモル%で表すとき、50〜100モル%が好ましい。これにより、本発明のリグニン誘導体がより高い親水性を有することとなる。より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
【0023】
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、10〜200であることが好ましい。上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数とは、リグニン誘導体における1つの(ポリ)アルキレングリコール鎖において付加しているアルキレンオキサイドのモル数の平均値を意味する。上記平均付加モル数は、より好ましくは25〜180であり、更に好ましくは50〜160である。
【0024】
本発明のリグニン誘導体は、リグニン誘導体100質量%に対して、(ポリ)アルキレングリコール鎖の含有割合が、5〜95質量%であることが好ましい。
(ポリ)アルキレングリコール鎖の含有割合が上記範囲であれば、リグニン誘導体において、一般式(1)で表される骨格が有するカルボニル基と(ポリ)アルキレングリコール鎖との量のバランスが好適な範囲となり、リグニン誘導体は、セメント粒子に対する吸着基としてのカルボニル基と、分散基としての(ポリ)アルキレングリコール鎖とを好適な割合で有することとなるため、リグニン誘導体をセメント添加剤として用いた場合の減水性能がより向上する。上記(ポリ)アルキレングリコール鎖の含有割合は、より好ましくは10〜90質量%である。上記リグニン誘導体における(ポリ)アルキレングリコール鎖の含有割合は、実施例の方法により求めることができる。
【0025】
本発明のリグニン誘導体は、重量平均分子量が6000〜20万であるものが好ましい。リグニン誘導体がこのような重量平均分子量を有するものであると、後述するセメント添加剤としてより好適なものとなる。リグニン誘導体の重量平均分子量は、より好ましくは、6000〜10万であり、更に好ましくは、6000〜5万である。
また、本発明のリグニン誘導体は、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.0〜2.0であるものが好ましい。分子量分布が上記範囲よりも小さいと、分子量分布曲線がシャープなものとなり過ぎ、セメント添加剤としての製造が困難となる。上記範囲よりも大きいと、セメントの適正な分散性を得るために必要なセメント添加剤の純分添加量が多くなる。本発明のリグニン誘導体の分子量分布は、より好ましくは1.0〜1.8であり、更に好ましくは1.0〜1.6である。
リグニン誘導体の重量平均分子量、数平均分子量は、GPCを用い、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
本発明のリグニン誘導体の原料となるリグニンは特に制限されず、針葉樹や広葉樹由来の木本(木質)系リグニンであってもよく、草本系リグニンであってもよい。原料となる植物としては、スギ、モミ、ヒノキ、マツ等針葉樹、ユーカリ、アカシア、シラカバ、ブナ、ナラ等の広葉樹、稲藁、穀物、バガス、竹、ケナフ、葦等の草本植物等が挙げられる。
これらの中でも、木質系のものが分散性能の点で好ましく、針葉樹や広葉樹のものがさらに好ましく、特に、針葉樹のものが好ましい。
本発明で使用するリグニンは、通常行われる方法、例えば、「リグニンの化学(中野準三編 ユニ出版)」に記載の方法を用いて原料物質より単離することにより得ることができる。
【0027】
本発明のリグニン誘導体の原料となるリグニンの分子量は、原料物質、単離方法によって異なり、本発明において使用されるリグニンの重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量500〜100万のリグニンを使用することができる。好ましくは、重量平均分子量5000〜10万のリグニンである。
重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法を用い、後述する実施例に記載の条件により測定することができる。
【0028】
本発明のリグニン誘導体の製造には、植物体から単離したリグニンをそのまま用いても、植物体から単離したリグニンを、後述する置換基等により変性させた変性リグニンを用いてもよい。本発明においては、このような、植物体から単離したリグニンそのもの、又は、リグニンを後述する置換基等により変性させた変性リグニンであって、リグニンの基本骨格であるフェニルプロパン骨格が酸化剤等による開裂を受けていないものをリグニン類という。
【0029】
上記置換基としては、特に制限されないが、例えば、水酸基、アルコキシ基、炭化水素基、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシル基含有基、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基等が挙げられる。アルコキシ基、炭化水素基、カルボキシル基含有基、及び、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基の具体例及び好ましい構造は、上記一般式(1)のR〜Rにおけるこれらの基の具体例及び好ましい構造と同様である。
【0030】
本発明はまた、構造中に(ポリ)アルキレングリコール鎖を有するリグニン誘導体であって、上記リグニン誘導体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加する工程と酸化剤を用いてリグニン骨格を酸化する工程とを含む製造方法により得られるリグニン誘導体でもある。
このような製造方法は、上記一般式(1)で表される骨格を有する、構造中に(ポリ)アルキレングリコール鎖を有するリグニン誘導体の製造方法として好適であり、このような製造方法により得られるリグニン誘導体は、従来のリグニンやリグニン誘導体に比べて、セメント添加剤として優れた特性を発揮するものとなる。このような構造のリグニン誘導体は、これまでに知られていない化合物である。このような新しいリグニン誘導体を製造することができる方法、すなわち、構造中に(ポリ)アルキレングリコール鎖を有するリグニン誘導体を製造する方法であって、上記製造方法は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加する工程と酸化剤を用いてリグニン骨格を酸化する工程とを含むリグニン誘導体の製造方法もまた、本発明の1つである。
以下においては、このリグニン誘導体の製造方法について記載する。
【0031】
<リグニン誘導体の製造方法>
本発明のリグニン誘導体の製造方法は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加する工程と酸化剤を用いてリグニン骨格を酸化する工程を含む限り特に限定されず、他の工程を含んでいてもよく、(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加する工程とリグニン骨格を酸化する工程と他の工程との順番も制限されない。好ましくはリグニン骨格を酸化する工程の前に(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加する工程を行うことである。
【0032】
上記酸化工程における酸化剤は、リグニン骨格のベンゼン環を酸化開裂させることができる限り、特に制限されず、オゾン、酸素、過酸化水素水等が挙げられる。好ましくはオゾンである。
上記酸化剤として、上記化合物の1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
上記酸化剤として、オゾンを用いた場合には、オゾンは、リグニン骨格のベンゼン環を選択的に開裂することができるため、より効率的に上記酸化反応が進行する。すなわち、上記リグニン類が上述の置換基等により変性されたリグニンであっても、上記置換基等よりも、リグニン骨格のベンゼン環が選択的に酸化されることとなる。また、酸化開裂により生成した上記一般式(1)で表される構造中の炭素−炭素二重結合に対して更にオゾンが反応した場合には、最終的にはシュウ酸が生じることとなるが、上記一般式(1)で表される構造中の炭素−炭素二重結合よりも、上記リグニン骨格のベンゼン環が優先的に酸化されるため、本発明のリグニン誘導体をより効率的に得ることができる。
【0034】
本発明のリグニン誘導体をセメント添加剤として用いた場合の減水性能が向上する要因としては、上記酸化反応により生じるカルボキシル基及びエステル基の他にも、原料リグニンが有するセメント粒子に吸着することができる官能基やセメント粒子に対する分散性を有する(ポリ)アルキレングリコール鎖が挙げられる。このため、リグニン誘導体におけるこれらの割合を最適な範囲とすることにより減水性能を向上させることができる。
したがって、上記酸化剤の添加量は、酸化反応により生じるカルボキシル基及びエステル基の量を決める要因となるため、リグニン類におけるリグニン由来の構造単位(フェニルプロパン骨格)の量、(ポリ)アルキレングリコール鎖におけるアルキレンオキサイドの平均付加モル数等に応じて調節することが好ましい。
上記酸化剤の添加量としては、酸化反応に用いるリグニン類のフェニルプロパン骨格1モルに対して、0.05〜0.95モルであることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.9モルであり、更に好ましくは0.3〜 0.9モルであり、特に好ましくは0.5〜0.9モルである。
【0035】
上記酸化工程における酸化の方法は、酸化剤の種類に依存する。例えば、酸化剤が気体である場合には、リグニン類の溶液中に酸化剤を吹き込むことにより行うことが好ましい。
上記酸化反応に用いられた酸化剤の量は、酸化剤を吹き込んだ後に、溶液中に残存する酸化剤の量を測定することにより算出することができる。
【0036】
上記リグニン類の溶液は、溶媒を用いて調製することができ、上記溶媒は、上記酸化工程で用いるリグニン類の種類に依存する。上記溶媒としては、水、メタノール、プロパノール、ジオキサン等の有機溶媒が挙げられ、好ましくは、水である。
上記リグニン類の溶液の濃度は、特に制限されないが、酸化反応を効率的に行うために、1〜50重量%の濃度が好ましい。より好ましくは5〜30重量%である。
【0037】
上記酸化工程における反応系のpHは、特に制限されないが、上記反応を酸性条件下で行うことが好ましく、リグニン類の溶液のpHを4〜5に調整することがより好ましい。
上記pH調整における、pH調整剤としては、特に制限されないが、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸等の無機酸が好ましい。
【0038】
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加する工程は、酸化反応前のリグニン類又は酸化反応後のリグニン類に(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加する限り特に制限されず、例えば、酸化反応前又は後のリグニン類の水酸基にアルキレンオキシド又はポリアルキレングリコール含有化合物の反応基を反応させることにより(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加することができる。
上記反応により、酸化反応前又は後のリグニン類のフェノール性水酸基とアルキレンオキシド又は(ポリ)アルキレングリコール含有化合物とが直接結合した(ポリ)アルキレングリコール鎖含有リグニンが生成する。以下、酸化反応前のリグニン類のフェノール性水酸基とアルキレンオキシド又は(ポリ)アルキレングリコール含有化合物とが直接結合した(ポリ)アルキレングリコール鎖含有リグニンを両親媒性リグニンともいう。
上記(ポリ)アルキレングリコール含有化合物の反応基としては、上記水酸基と反応することができる限り制限されないが、例えば、グリシジル基、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基等が挙げられ、反応性の観点から、好ましくはグリシジル基、水酸基である。
【0039】
上記酸化反応前又は後のリグニン類と(ポリ)アルキレングリコール含有化合物との反応において、酸化反応前又は後のリグニン類に対する(ポリ)アルキレングリコール含有化合物の添加量は、特に制限されないが、通常、酸化反応前又は後のリグニン類100質量%に対し、5〜95質量%、好ましくは10〜90質量%である。
【0040】
上記両親媒性リグニンは、両親媒性リグニン100質量%に対して、(ポリ)アルキレングリコール鎖の含有割合が、5〜95質量%であることが好ましい。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖の含有割合は、より好ましくは10〜90質量%である。上記両親媒性リグニンにおける(ポリ)アルキレングリコール鎖の含有割合は、実施例の方法により求めることができる。
【0041】
上記(ポリ)アルキレングリコール含有化合物としては、特に制限されないが、例えば、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコール系化合物(以下、グリコール系化合物ともいう。);フェノールのエチレンオキシド付加物等の芳香族(ポリ)アルキレングリコール化合物;(ポリ)エチレングリコール−モノエチル−グリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコール−モノメチル−グリシジルエーテル、ラウリルアルコール−(ポリ)エチレンオキサイド−グリシジルエーテル等の単官能のグリシジルエーテル系化合物;(ポリ)(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、(ポリ)(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル等の二官能のグリシジルエーテル系化合物;及びこれらのグリシジル基(以下、エポキシ基ともいう。)をメトキシ、エトキシ等のアルコキシド化合物と反応させて、グリシジルエーテル基の官能度を低下させたグリシジルエーテル系化合物;メトキシ(ポリ)エチレングリコール等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールとエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンとの反応により得られる単官能エポキシ(ポリ)アルキレングリコール化合物等が挙げられる。
【0042】
上記反応において用いられる(ポリ)アルキレングリコール含有化合物としては、反応性の観点から、グリシジルエーテル系化合物が好ましい。グリシジルエーテル系化合物としては、(ポリ)エチレングリコール−モノエチル−グリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコール−モノメチル−グリシジルエーテル、ラウリルアルコール−(ポリ)エチレンオキサイド−グリシジルエーテル等の単官能のグリシジルエーテル系化合物が好ましく、より好ましくはメトキシ(ポリ)エチレングリコール等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールとエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンとの反応により得られる単官能エポキシ(ポリ)アルキレングリコール化合物である。
【0043】
上記グリシジルエーテル系化合物としては、反応性の観点から、(a)二官能のグリシジルエーテル系化合物とナトリウムエトキシド等のアルコキシド化合物との反応により得られる単官能エポキシポリアルキレングリコール化合物、(b)アルコキシポリアルキレングリコールとエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンとの反応により得られる単官能エポキシポリアルキレングリコール化合物が更に好ましい。上記(a)及び(b)の反応の一例として、それぞれ下記式(a)及び(b)に示す。式中、nは、10〜200の数を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0044】
【化2】
【0045】
【化3】
【0046】
上記(a)及び(b)の反応により得られるグリシジルエーテル系化合物の中でも、より好ましくは、(b)の単官能エポキシポリアルキレングリコール化合物である。
上記(a)の反応生成物には、副生成物として、二官能のグリシジルエーテル系化合物の有する2つのグリシジル基と2分子のアルコキシド化合物とが反応し生成するエポキシ基を有しない化合物や未反応の二官能のグリシジルエーテル系化合物が含まれる。この反応生成物と酸化反応前又は後のリグニン類とを反応させてリグニン誘導体を合成した場合には、未反応の二官能のグリシジルエーテル系化合物が架橋剤として作用し、リグニン誘導体の分子量分布が大きくなるおそれがある。上記(b)の反応においては、このような副反応が起きず、完全単官能エポキシ(ポリ)アルキレングリコール化合物を合成することができ、分子量分布の小さいリグニン誘導体を合成することができる。
【0047】
上記(b)の反応に用いられるアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールとしては、好ましくはメトキシ(ポリ)エチレングリコールである。
上記エピハロヒドリンとしては、上述の化合物を用いることができ、好ましくは収率向上の観点から、エピクロロヒドリンである。
【0048】
上記(b)の反応に用いられるエピハロヒドリンの添加量は、特に限定されないが、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール100モル%に対し、好ましくは100〜1000モル%、より好ましくは300〜800モル%である。
【0049】
上記(b)の反応において、塩基としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物等を用いることができる。具体的には、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。塩基として好ましくは反応性の観点から水素化ナトリウムであり、添加量は、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール100モル%に対して80〜150モル%であることが好ましい。
さらに、溶媒としては、一般的な合成に使用される有機溶媒を用いることができ、好ましくはアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフランである。
上記(b)の反応の好ましい条件として、反応温度は、50℃〜150℃、より好ましくは50℃〜80℃、反応時間は、60分〜600分、より好ましくは180分〜360分である。
【0050】
上記酸化反応前又は後のリグニン類の水酸基とグリシジルエーテル系化合物のエポキシ基との反応は、通常用いられる方法により行うことができる。
例えば、酸化反応前又は後のリグニン類をアルカリ水溶液に溶解し、アルカリ性条件下で遊離したリグニン類由来の水酸基(リグニン−OH)をグリシジルエーテル系化合物中のエポキシ基と反応させることにより、(ポリ)アルキレングリコール鎖を付加することができる。リグノセルロース系バイオマスをアルカリ蒸解した後に得られる黒液を、上記酸化反応前のリグニン類のアルカリ水溶液として用いることもできる。
【0051】
上記リグニン類由来の水酸基とグリシジルエーテル系化合物のエポキシ基との反応条件として、反応温度は、通常、50℃〜100℃、好ましくは70℃、反応時間は、通常、30分〜24時間、好ましくは1時間〜12時間、より好ましくは、2時間〜6時間である。
【0052】
上記反応において、酸化反応前又は後のリグニン類とグリシジルエーテル系化合物との反応終了後、反応系に酸を添加して中和することが好ましい。添加する酸としては、悪影響を及ぼさない限り何れの酸でもよく、例えば、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸、及びギ酸、酢酸等の有機酸を使用することができる。
【0053】
上記リグニン類が酸化反応前の疎水性のリグニン類である場合、上記反応は、疎水性のリグニン類にグリシジルエーテル系化合物の有する(ポリ)アルキレングリコール鎖が導入されたことにより、得られる(ポリ)アルキレングリコール鎖含有リグニン類が親水性になった時点で完了する。上記リグニン類とグリシジルエーテル系化合物との反応の完了は、例えば、反応中の溶液を一部サンプリングしたものに酸を加えてpHを下げた際、沈殿を生じるか否かで判定することができる。反応が不十分である場合、未反応のリグニン類が沈殿として析出する。反応が完了した場合は沈殿が生じず、両親媒性の(ポリ)アルキレングリコール鎖含有リグニン類が得られている。
【0054】
本発明の一実施形態において、酸化反応前又は後のリグニン類を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、得られたリグニン類のアルカリ水溶液を常圧下で約70℃に温め、所定量のグリシジルエーテル系化合物を加え、約3時間攪拌しながら反応させ、反応終了後、反応系に酸を加えて中和することにより、酸化反応前のリグニン類を用いた場合には、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有リグニン類が得られ、酸化反応後のリグニン類用いた場合には、本発明のリグニン誘導体が得られる。
【0055】
上記反応により得られた(ポリ)アルキレングリコール鎖含有リグニン類又はリグニン誘導体は、必要に応じて、脱塩及び未反応の親水性化合物の除去のために、限外濾過に付すことができる。例えば、分子量3000以下を排除できる限外濾過装置を用いて濾過に付すことが好ましい。また、リグニン誘導体はそのままセメント添加剤として使用することもできる。
【0056】
上記酸化反応前のリグニンとグリシジルエーテル系化合物との反応の一例として、好ましい反応形態を下記式(c)に示す。式中、nは、10〜200の数を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0057】
【化4】
【0058】
本発明のリグニン誘導体の原料となるリグニンが、(ポリ)アルキレングリコール鎖以外の置換基により変性されている場合、変性する方法は特に制限されないが、リグニン又は酸化反応後のリグニンの水酸基等の反応基と置換基を有する化合物とを反応させることにより行うことができる。
【0059】
<セメント添加剤>
本発明はまた、本発明のリグニン誘導体を含有するセメント添加剤でもある。
本発明のリグニン誘導体をセメント添加剤として使用する場合は、水溶液の形態で使用してもよいし、又は、乾燥させたものを粉体化して使用してもよい。乾燥させる場合、凍結乾燥機等の従来使用されている乾燥方法により完全に乾燥させてもよい。また、粉体化した本発明のセメント添加剤を予めセメント粉末やドライモルタルのような水を含まないセメント組成物に配合して、左官、床仕上げ、グラウトなどに用いるプレミックス製品として使用してもよいし、セメント組成物の混練時に配合してもよい。
【0060】
好ましくは、本発明のリグニン誘導体を主成分とするセメント添加剤は、水溶液の形態で使用する。水溶液の濃度は任意であるが、例えば、5〜50%であり、好ましくは、10〜30%程度である。
【0061】
セメントに添加する際の本発明のセメント添加剤の配合量は、任意であるが、例えば、固形分換算で、セメントの質量に対して、0.01〜10.0質量%、好ましくは0.02〜5.0質量%、より好ましくは0.05〜1.0質量%である。このような配合量により、通常の汎用セメントにおいては、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上などの各種の好ましい諸効果がもたらされる。特に、配合量が0.1質量%以上である場合は、流動性が著しく付与されるため、いわゆるセメント減水剤としての効果に優れ、好ましい。
【0062】
本発明のセメント添加剤はまた、他のセメント添加剤と組み合わせて用いることもでき、ポリカルボン酸系減水剤と併用することもできる。ポリカルボン酸系減水剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸の側鎖に(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する重合体を含む減水剤であればよい。
上記ポリカルボン酸を構成する不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸等のジカルボン酸系単量体、これらのジカルボン酸無水物及びこれらの塩等が挙げられる。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖としては、特に限定されないが、上述のアルキレンオキサイドから構成される高分子鎖((ポリ)アルキレンオキサイド)であることが好ましい。
上記ポリカルボン酸系減水剤の特性については、本発明のセメント添加剤と併用して分散性を向上し、減水性能を発揮できるものであれば特に限定されるものではない。
上記ポリカルボン酸系減水剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
本発明のセメント添加剤はまた、オキシカルボン酸系化合物と併用することもできる。オキシカルボン酸系化合物を併用することにより、高温の環境下においても、より高い分散保持性能を発揮することができる。オキシカルボン酸系化合物としては、炭素原子数4〜10のオキシカルボン酸又はその塩が好ましく、具体的には、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸や、これらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミンなどの無機塩又は有機塩などが挙げられる。これらのオキシカルボン酸系化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのオキシカルボン酸系化合物のうち、グルコン酸又はその塩が特に好適である。特に、貧配合コンクリートの場合には、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤としてリグニンスルホン酸塩系の分散剤を使用し、オキシカルボン酸系化合物としてグルコン酸もしくはその塩を使用することが好ましい。
本発明のセメント添加剤はまた、その他のセメント添加剤として、特開2013−53010号公報に記載されているようなその他のセメント添加剤を併用することができる。
【0064】
本発明のセメント添加剤と組み合わせて用いることができる他のセメント添加剤としては、更に、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、その他界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材等が挙げられ、これらは、特開2012−131997号公報に記載のものと同様のものを用いることができる。
【0065】
その他のセメント添加剤(材)として、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等が挙げられる。
【0066】
本発明のセメント添加剤と他のセメント添加剤と組み合わせて用いる場合の配合割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分と他のセメント添加剤の固形分との質量割合が1〜99/99〜1であることが好ましい。より好ましくは、5〜95/95〜5であり、更に好ましくは、10〜90/90〜10であり、特に好ましくは、20〜80/80〜20である。
また、本発明のセメント添加剤とポリカルボン酸系減水剤又はオキシカルボン酸系化合物と他のセメント添加剤とを用いる場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニンとポリカルボン酸系減水剤又はオキシカルボン酸系化合物と他のセメント添加剤との質量割合は、1〜98/1〜98/1〜98であることが好ましい。より好ましくは、5〜90/5〜90/5〜90であり、更に好ましくは、10〜90/5〜85/5〜85であり、特に好ましくは、20〜80/10〜70/10〜70である。
【0067】
上述した種々の他のセメント添加剤の中でも、本発明のセメント添加剤と併用するセメント添加剤としては、ポリカルボン酸系減水剤やオキシカルボン酸系化合物の他に、オキシアルキレン系消泡剤、促進剤、分離低減剤、AE剤が好ましく、AE剤を用いる場合、本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とAE剤との3成分を併用することが好ましい。
【0068】
本発明のセメント添加剤と併用するオキシアルキレン系消泡剤としては、上記のものの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が好ましい。
本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とを併用する場合、オキシアルキレン系消泡剤の配合割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分の質量に対して0.01〜20質量%であることが好ましい。
また、本発明のセメント添加剤とオキシアルキレン系消泡剤とAE剤との3成分を併用する場合、オキシアルキレン系消泡剤の割合は、上記と同様であり、AE剤の割合は、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体の固形分の質量に対して0.001〜2質量%であることが好ましい。
【0069】
本発明のセメント添加剤と促進剤とを併用する場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニン誘導体と促進剤との質量割合は、10/90〜99.9/0.1であることが好ましい。より好ましくは、20/80〜99/1である。
【0070】
本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを併用する場合、分離低減剤としては、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素原子数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素原子数2〜18のアルキレンオキサイドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを併用する場合、本発明のセメント添加剤の必須成分であるリグニンと分離低減剤との質量割合は、10/90〜99.99/0.01であることが好ましい。より好ましくは50/50〜99.9/0.1である。本発明のセメント添加剤と分離低減剤とを含むセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適に用いることができる。
【0071】
本発明のセメント添加剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような本発明のセメント添加剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
【0072】
上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含むものが好適であり、セメントとしては、特に限定されず、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩、及びそれぞれの低アルカリ形)等が挙げられ、特開2009−046655号公報に記載のものと同様のものを用いることができる。上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0073】
上記セメント組成物の1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)としては、例えば、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量200〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好適であり、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65とすることである。このように、本発明のリグニン誘導体を含むセメント添加剤は、貧配合から富配合に至るまでの幅広い範囲で使用可能であり、高減水率領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域でも使用可能であり、更に、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である
【発明の効果】
【0074】
本発明のリグニン誘導体は、上述の構成よりなり上記一般式(1)で表される特定の骨格と(ポリ)アルキレングリコール鎖とを有する、新たな構造のリグニン誘導体であり、セメント添加剤として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】後述する単官能エポキシPEG(以下、単官能型エポキシPEGともいう。)の反応率の算出におけるGPC−RIチャートの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0077】
<GPC測定条件>
装置:Waters社製、Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製
・TSKguard column α
・TSKgel α―3000
・TSKgel α―4000
・TSKgel α―5000
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶媒
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)300000、200000、107000、50000、27700、11840、6450、1470、1010、400]
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
測定時間:60分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5wt%の溶離液調製溶液)
【0078】
<蒸解条件>
以下の条件により蒸解を行い、リグニンを含む黒液を得た。
木材:スギ(Cryptomeria japonica)材
蒸解温度:170℃、蒸解時間:2h
活性アルカリ(水酸化ナトリウム)添加率(活性アルカリ(酸化ナトリウム)換算):19.5%(木材に対する割合)
AQ(アントラキノン)添加率:0.1%(木材に対する割合)
液比:5L/kg
パルプ収率:44%
パルプ中の残留リグニン含有率:2.8%
【0079】
<リグニンの精製>
上記蒸解により得られた強アルカリ性水溶液である黒液に対して、約30%の硫酸水溶液を添加し、撹拌しながらpHを2.0に調製し、沈殿を生じせしめた。遠心分離により 沈殿物を回収し、蒸留水を用いて洗浄した。沈殿は、濾過、もしくは遠心分離で回収し、風乾後、減圧乾燥した。乾燥物を乳鉢で軽く粉砕し、精製リグニンを得た。精製リグニンの数平均分子量(Mn)は12600、重量平均分子量(Mw)は17900であった。
【0080】
<製造例1:単官能型エポキシPEG(50モル)>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを10.0部、濃度60%の水素化ナトリウム1.0部を仕込んだ。
エチレンオキサイドの平均付加モル数が50であるメトキシポリエチレングリコール(メトキシPEG(50モル)ともいう。)50.0部にテトラヒドロフラン100.0部を加え、充分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン7.0部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、0.8部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応液は遠心分離を行い、生成した塩を取り除いた。
塩を取り除いた反応液を、ジエチルエーテル400.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、実施例1〜8のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
【0081】
<製造例2:単官能型エポキシPEG(90モル)の製造例>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、テトラヒドロフランを10.0部、水素化ナトリウム1.0部を仕込んだ。
メトキシポリエチレングリコール(90モル)90.0部にテトラヒドロフラン180.0部を加え、十分に均一化した後、氷冷した反応容器に添加した。その後10分間、攪拌した。
次に、反応容器を氷冷しながら、エピクロロヒドリン7.0部を添加し、反応容器を70℃に加温した。加温開始から5時間で加温をやめ、反応終了とした。反応容器を氷冷し、0.8部の水を加え、未反応の水素化ナトリウムを失活させた。
得られた反応液は遠心分離を行い、生成した塩を取り除いた。
塩を取り除いた反応液を、ジエチルエーテル720.0部にゆっくりと滴下し、生じた沈殿物を減圧ろ過し、室温で乾燥することで、実施例9〜16のリグニン誘導体の製造に用いる単官能型エポキシPEGを得た。
【0082】
<実施例1:リグニン誘導体1>
温度計、攪拌機、還流管を備えたガラス製反応容器に、精製リグニン31.4部(固形分92.6%、リグニン純分88.0%)を2M水酸化ナトリウム水溶液51.0部(NaOH 4.1部)及び蒸留水127.9部に溶解させ、製造例1で得られた単官能エポキシPEG(以下、EPEGともいう)5.9部を添加した。容器を70℃に加温し、3時間反応させ、両親媒性リグニン1を得た。両親媒性リグニン1におけるリグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は、81:19であった。リグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は後述する算出方法により求めた。
上記両親媒性リグニン1の溶液に3M塩酸を28.2部添加し、pH4〜5となるように調節した後蒸留水で希釈した。室温にて、オゾン発生装置(エコデザイン社(株)製、研究開発用オゾン発生器ED−OG−R6)で酸素より発生させたオゾン(酸素中のオゾン量:2.4%)を、ガラス製反応容器中の両親媒性リグニン1の溶液に流量500ml/minで、4時間バブリングを行うことにより、上記両親媒性リグニン1溶液に対してオゾン2.7部(両親媒性リグニン1のフェニルプロパン骨格1モルに対して0.4モルに相当)を反応させ、本発明のリグニン誘導体1を得た。リグニン誘導体1におけるリグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は、83:17であった。リグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は両親媒性リグニン1と同様に後述する算出方法により求めた。
【0083】
<両親媒性リグニンにおけるリグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比>
両親媒性リグニンにおけるリグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比は、下記式(2)に基づき精製(原料)リグニンとEPEGとの質量とこれらの反応率(%)とから求めた。なお、精製リグニンの反応率は100%である。EPEGの反応率は後述する方法により求めた。下記式(2)及び(3)における原料リグニンの仕込み量には、以下に示す表1及び2に記載の精製リグニンの量に固形分(92.6%)及びリグニン純分(88.0%)の割合を掛けた値を用いることとする。
また、両親媒性リグニンとリグニン誘導体とは、分子量において酸化による大きな変化はないため、酸化反応後のリグニン誘導体おけるリグニン由来の構造部位とEPEG由来の構造部位との質量比についても、両親媒性リグニンと同様に求めることができる。
【0084】
【化5】
【0085】
<EPEG反応率の算出>
EPEG反応率は、下記式(3)に基づき、(a)〜(c)の数値を用いて算出することができる。図1にGPC−RIチャートの例を示す。図中、(1)と(2)との面積の差が、反応したEPEGの量に相当する。
(a)各種原料の仕込み重量
(b)原料リグニン(精製リグニン)のGPC−RIチャートにおける、10〜32分までの面積100%に対する10〜25分における面積比率
(c)両親媒性リグニンのGPC−RIチャートにおける、10〜32分までの面積100%に対する10〜25分における面積比率
なお、図1のGPC−RIチャートにおいては、面積が0のところを省略し、溶出時間15分から示している。
なお、EPEGの反応率の測定方法としては、GPCのRI面積比より算出する方法の他に、紫外可視分光光度計により、リグニン中のフェノール性水酸基の数を、反応前後で測定しその測定値より算出する方法等があるが、本願では、上記GPCによる方法により測定した。なお、酸化反応後のリグニン誘導体のEPEG反応率は、上記(c)及び下記式(3)における両親媒性リグニンのGPC−RIチャートをリグニン誘導体のGPC−RIチャートに置き換えて算出することができる。
【化6】
【0086】
<実施例2〜16:リグニン誘導体2〜16>
実施例2〜8のリグニン誘導体は、製造例1で得られた単官能型エポキシPEG(50モル)を用い、実施例9〜16のリグニン誘導体は、製造例2で得られた単官能型エポキシPEG(90モル)を用い、実施例1と同様の処方で製造した。各原料の仕込み量、EPEG反応率及びリグニン誘導体の特性は表1及び2に示す通りである。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
<モルタル試験>
実施例1〜16で製造したリグニン誘導体1〜16及び比較例として表3に記載の両親媒性リグニン1〜8について、以下の方法によりモルタル試験を行った。
【0090】
【表3】
【0091】
モルタル試験では、以下のようにしてモルタルを調製し、初期のモルタル空気量(以下、単に空気量ともいう。)及び0打フロー値を測定した。結果を表4及び5に示す。同じ純分換算添加量で比較した場合、実施例が比較例に対して0打フロー値が大きく、より流動性が良好であることが分かる。
なお、モルタル試験では消泡剤としてMA−404(BASFポゾリス社製)を有姿で40質量%対各成分固形分となる量を、各成分に添加した。
【0092】
<モルタルフロー試験>
モルタルフロー試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=500/1350/250(g)とした。
ただし、
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:実施例1〜16、比較例1〜8のサンプル、及び、消泡剤のイオン交換水溶液
Wとして、表4及び5に示した添加量の各成分を量り採り、消泡剤MA−404を有姿で各成分の固形分に対して40質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。表4及び5において、各成分の添加量は、セメント質量に対する各成分の固形分の質量%で表されている。
【0093】
<モルタルの調整>
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2速で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に60秒間2速で混練を行い、モルタルを調製した。
【0094】
<モルタル空気量の測定>
上記モルタル空気量(初期空気量)の測定は、JIS−A−1128(2005年改正)の方法により行った。モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
【0095】
<0打フロー値測定>
モルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移し、スパチュラで20回撹拌した後、直ちにフロー測定板(30cm×30cm)に置かれたミニスランプコール(JISマイクロコンクリートスランプコーン、A−1173に記載) (上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)フローコーン(JIS R5201−1997に記載)に半量詰めて15回つき棒で突き、更にモルタルをフローコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回つき棒で突き、最後に不足分を補い、ミニスランプコーンの表面をならした。その後、直ちにフローコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値を0打フロー値とした。
なお、0打フロー値は、同じ純分換算添加量で比較した場合、数値が大きいほど、分散性能が優れている。
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
図1