【実施例】
【0022】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0023】
実施例1
カリン種子(信州産、毛涯かりん)の乾燥種子50gにエタノール200mLを加え室温で1週間浸漬抽出した。エタノール50mLで洗浄しながら濾過した。抽出液をエバポレータでエタノールを除去し、水に転溶後凍結乾燥してカリン種子抽出物の凍結乾燥粉末を得た。
試験に用いる際には、凍結乾燥粉末を1%(w/v)になるようにエタノールに溶解して用いた。
【0024】
比較例1
カリン果実の果肉乾燥物(種子除去)50gを用いて、実施例1と同様にして、カリン果肉抽出物を得た。
【0025】
実施例2
(試験方法)
ヒト皮膚角化細胞(HaCaT細胞)を用いて、以下の条件で試験をおこなった。
(細胞培養および抽出物による処理)
細胞は10%のウシ胎児血清(FBS)を含んだDMEM培地10mLをディッシュに入れ、37℃、5%CO
2インキュベーター内でコンフルエントになるまで培養した。コンフルエントになった細胞は培地を全て吸い取り、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)5mLで一度洗浄してトリプシン処理をおこなった。トリプシン処理により細胞をディッシュから剥がし、4℃、10000rpmで5分間遠心した。上清を除き、ペレット化した細胞をDMEM培地に溶かし、再度10mLディッシュに植え付けて継代をおこなった。実験のために継代は2回おこなった。
継代し、コンフルエントとなった細胞は上記と同様の処理を行い、血球計算盤上でペレット化した細胞を溶かしたDMEM培地10μL中に含まれる細胞数をカウントし、全体の細胞数を計数した。細胞は2.5×10
5cells/mLの濃度で24ウェルプレートに植えつけ、ポアサイズ0.2μmの滅菌シリンジフィルターを通した各抽出物の1%(w/v)EtOH 溶液を添加し、37℃、5%CO
2インキュベーターで24時間インキュベートした。コントロール区には同量のEtOHを添加した。24時間後に、炎症を誘導するためTNF−αを10μg/mLの濃度で10μLずつ添加し、37℃、5%CO
2インキュベーターで6時間インキュベートした。炎症を誘導しない区には、同量の滅菌水を添加した。6時間インキュベート後培養液を吸い取り、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、TRI reagent試薬1mLを加えピペッティングにより細胞を剥がして回収した。
【0026】
(培養細胞からのRNA調製)
使用する試薬は全てRNAグレードのものを使用した。細胞が溶解したTRI reagent試薬を5分間室温におき、200μLのクロロホルムを加えて15秒間手で激しくシェイクした。その後3分間室温に静置し、4℃、15000rpmで15分間遠心し、上清を400〜500μL回収した。回収した上清にイソプロピルアルコール500μLを加えて15秒間手で激しくシェイクし、10分間室温で静置し、4℃、15000rpmで15分間遠心した。イソプロピルアルコールを除いた後に75%EtOH/DEPC水を1mL加え、4℃、15000rpmで5分間遠心し、ピペットを用いて上清を完全に取り除いた。細胞のペレットは30μLのDEPC水に沈殿が見えなくなるまで溶解した。細胞懸濁液30μLのうち5μLを用いてRNA量を測定し、その残りでcDNAの合成をおこなった。
RNA量の測定は、分光光度計(GE healthcare Ultrospec 3300 pro)による吸光度測定によっておこなった。細胞懸濁液5μLにDPEC水95μLを加え、20倍希釈された100μLの測定用希釈サンプルを調製し、260nmおよび280nmでの吸光度を測定し、懸濁液中のRNA濃度を算出した。ゼロ合わせはDPEC水100μLによっておこなった。算出された濃度をもとに、吸光度測定に使用した細胞懸濁液の残りにDPEC水を加え、RNAサンプルが1μgとなるように調製した。
【0027】
(RNAからのcDNA合成)
PCRチューブにRNAサンプル+DPEC水5.5μLと、10μMオリゴdT18プライマー0.5μL をそれぞれ分注して遠心でMixし、サーマルサイクラ―にセットして65℃で5分間加熱した。サンプルは一旦取り出して氷上で急冷し、軽く遠心した。別のエッペンチューブ1本に、1サンプルあたり5×First strand buffer 2.0μL、0.1M DTT 1.0μL、10mM dNTP Mix 0.5μLを氷冷しながら加え、遠心により混合した。ピペット操作によるロスを考慮し、サンプル数+1本分調製した。その後、サンプル数+1本分の逆転写酵素0.5μL(200U/L)を加え、サーマルサイクラ―で加温したチューブに4μLずつ分注し、遠心でMixした。チューブは再びサーマルサイクラ―にセットし、42℃で50分、75℃で15分加熱してRT反応をおこなった。プログラムが終了し、15℃の保温状態でサンプルを取り出した。
【0028】
(RT−PCR解析)
PCR解析は、Eco Real Time PCRシステムにより行った。RT反応により調製したcDNAテンプレートをPCR用精製水で20倍希釈したものを調製した。エッペンチューブに、1反応あたり滅菌蒸留水を2.2μL、PCR Forward プライマー(10μL)を0.4μL、PCR Reverse プライマー(10μL)を0.4μL、SYBR Premix Ex Taq IIを5μL加え、PCRマスターミックスを調製した。プライマーはGAPDH、TARC、TNF−α、IL−11、IL−12 p35(IL−12A、NKSF1)、IL−12 p40(IL−12B、NKSF2)、Interferon regulatory factor 7(IRF7)、Interferon−induced GTP−binding protein(MX1、MxA)、Interferon induced protein 44(IFI44)、Interferon induced protein with tetratricopeptide repeats 2(IFIT2)、Interferon induced transmembrane protein 3(IFITM3)についてのものを使用した。また、1つのターゲットの反応あたり3点設定した。マスターミックスは各ターゲットごとに必要量+1反応分程度調製した。専用の48ウェル反応プレートにターゲットの配置を決め、区画ごとに3点分のマスターミックス8μLとcDNAテンプレート2.0μLを分注した。プレートはシーラーで完全にシールし、卓上プレート遠心にかけ、サンプルをウェルの底に落とした。Eco ソフトウェアを起動し、Application Option(Quantification)、Detection Chemistry(DNA Binding dye)、Starting Material(DNA)、Quantification Material(Relative Quantification)を選択し、サーマルプロファイルの入力でPCR Cycleの項目を設定した。プレートレイアウトでサンプルを配置した通りに測定項目とサンプル項目の両方を入力した。測定項目のGAPDHはReference指定とした。機器にシーラーでシールした48ウェル反応プレートを設置し、リッドをしっかりと閉め、Runボタンにより反応をスタートさせた。各遺伝子の発現量は、GAPDHに対する相対発現量で表した。
【0029】
結果を
図1に示す。
図1より、カリン果肉抽出物に比べて、カリン種子抽出物は、Mx1、IRF7、IFIT2、IFIT3及びIFIT4遺伝子の発現量を顕著に増強することがわかる。
【0030】
実施例3
(試験方法)
In vivo系における活性試験を、Nc/Ngaマウスを用いて次のように実施した。
(抽出液の塗布処理)
Nc/Ngaマウスをコントロール群、対照群、マルメロ種子抽出溶液で処理した試験群、カリン種子抽出溶液で処理した試験群の4つの群に各2匹ずつ振り分け、個別飼いで2週間の塗布試験を行った。皮膚炎誘導は上記の操作を行い、2週目の塗布試験時に、ビオスタADを塗る直前に対照群にはEtOH 100μL、試験群には各試料をそれぞれ100μL均一に塗布した。塗布試験終了後の翌日にマウスの皮膚を約5mm平方の大きさに切り取り、すぐに1mLのTRI reagentに浸して細断し、細胞を溶解させた。その後、RNA抽出を行うまで−80℃で保存した。
【0031】
(皮膚組織からのRNA調製)
使用する試薬は全てRNAグレードのものを使用した。細胞が溶解したTRI reagent試薬を5分間室温におき、200μLのクロロホルムを加えて15秒間手で激しくシェイクした。その後3分間室温に静置し、4℃、15000rpmで15分間遠心し、上清を400〜500μL回収した。回収した上清にイソプロピルアルコール500μLを加えて15秒間手で激しくシェイクし、10分間室温で静置し、4℃、15000rpmで15分間遠心した。イソプロピルアルコールを除いた後に75%EtOH/DEPC水を1mL加え、4℃、15000rpmで5分間遠心し、ピペットを用いて上清を完全に取り除いた。細胞のペレットは30μLのDEPC水に沈殿が見えなくなるまで溶解した。細胞懸濁液30μLのうち5μLを用いてRNA量を測定し、その残りでcDNAの合成をおこなった。
RNA量の測定は、分光光度計(GE healthcare Ultrospec 3300 pro)による吸光度測定によっておこなった。細胞懸濁液5μLにDPEC水95μLを加え、20倍希釈された100μLの測定用希釈サンプルを調製し、260nmおよび280nmでの吸光度を測定し、懸濁液中のRNA濃度を算出した。ゼロ合わせはDPEC水100μLによっておこなった。算出された濃度をもとに、吸光度測定に使用した細胞懸濁液の残りにDPEC水を加え、RNAサンプルが1μgとなるように調製した。
【0032】
調製したRNAサンプルを、RNeasy MinElure
TM Cleanupを用いてマイクロアレイ解析用RNAに精製した。まず、RNAサンプルを100μLのRNase−free Waterに溶解し、350μLのRLTバッファーを加えた。その後,250μLのエタノールを加え、ピペッティングでよく混合した。次に、Collection Tube(2mL)にRNeasy MinElute Spin Columnをセットし、500μLのエタノール添加RPEバッファーを分注して蓋をし、10000rpmで15秒間遠心した。RNeasy MinElute Spin Columnを新しいCollection Tubes(2mL)にセットし、再度500μLのエタノール添加RPEバッファーを分注して蓋をし、10000rpmで15秒間遠心した。洗浄後のエタノール添加RPEバッファーは廃棄した。同様の作業を80%エタノールに変更して行い、10000rpmで2分間遠心した。その後、再度RNeasy MinElute Spin Columnを新しいCollection Tubes(2mL)にセットして15000rpmで5分間遠心を行い、エタノールを完全に除去した。最後に、RNeasy MinElute Spin Columnを新しいCollection Tubes(1.5mL)にセットし、16μLのRNase−free waterをspin colimnのメンブレンの中央部に分注して蓋をし、15000rpmで1分間遠心を行った。精製されたRNA懸濁液から1μLを用いてRNA濃度の測定を行った。RNA懸濁液は99μLの10mM Tris−HClで100倍に希釈した後,分光光度計(GE healthcare Ultrospec 3300 pro)による吸光度測定をおこなった。260nmおよび280nmでの吸光度を測定し、懸濁液中のRNA濃度を算出した。精製されたRNA懸濁液が入った1.5mLチューブをパラフィルムで密閉し、三菱レイヨン株式会社に解析を委託した。
【0033】
結果を
図2に示す。
図2より、カリン種子抽出物は、Mx1、IRF7、IFIT2、IFIT3及びIFIT4遺伝子の発現量を顕著に増強することが判明した。