(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属原子の凝集抑制能を有する有機基が、アミド基、アミノ基、チオール基、これらの基を有する有機基、チオエーテル構造を有する有機基、及びβ−ジケトン構造を有する有機基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の無電解めっきの下地皮膜形成用組成物。
組成物全量を基準として、ポリシルセスキオキサン化合物を10〜30質量%、金属ナノ粒子を0.1〜10質量%含む、請求項1〜4のいずれかに記載の無電解めっきの下地皮膜形成用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
無電解めっきの下地皮膜形成用組成物
本発明の組成物は、ポリシルセスキオキサン化合物及び金属ナノ粒子を含有する。
【0026】
ポリシルセスキオキサンは、式:(RSiO
3/2)
n[式中、Rは有機基を示す。]で表される構造を有する。本発明の組成物に含有されるポリシルセスキオキサン化合物は、有機基Rとして、金属イオンの還元能を有する有機基、及び金属原子の凝集抑制能を有する有機基を有する。なお、以下において、金属イオンの還元能を有する有機基を「還元基」、及び金属原子の凝集抑制能を有する有機基を「保護基」と記載することがある。
【0027】
より具体的には、本発明の組成物に含有されるポリシルセスキオキサン化合物は、下記式(1)で表されるポリシルセスキオキサンである。
【0029】
上記式(1)におけるR
1は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はSi≡を示す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル等の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0030】
上記式(1)におけるR
2は、後述する金属イオンの還元能を有する有機基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、スルフィド基、又はイソシアネート基を示す。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、1−エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。また、炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アラルキル基等が挙げられる。
【0031】
上記式(1)におけるR
3は、後述する金属原子の凝集抑制能を有する有機基を示す。
【0032】
上記式(1)におけるl、m及びnは、任意の整数である。
【0033】
金属イオンの還元能を有する有機基(還元基)は、後述する方法により本発明の組成物を調製する際に用いられる金属化合物から電離した金属イオンを還元する作用を有する有機基である。当該還元基としては、Siに結合することにより、金属イオンの還元作用を有するものであれば特に制限されず、例えば、水素原子(Si−H構造が還元能を有する)等が挙げられる。
【0034】
金属原子の凝集抑制能を有する有機基(保護基)は、後述する方法により本発明の組成物を調製する際に、上記の還元基により還元された金属原子の凝集を抑制する作用を有する有機基である。当該保護基としては、金属原子の凝集抑制作用を有するものであれば特に制限されず、例えば、アミド基、アミノ基、チオール基、これらの基を有する有機基、チオエーテル構造やβ−ジケトン構造を有する有機基等が挙げられる。中でも、アミド基を有する有機基、アミノ基を有する有機基、又はチオエーテル構造を有する有機基が好ましく、アミド基及びチオエーテル構造を有する有機基、アミノ基及びチオエーテル構造を有する有機基、チオエーテル構造を2以上有する有機基が特に好ましい。例えば、アミド基及びチオエーテル構造を有する有機基としては下記式(2)で表されるプロピルチオN,N−ジエチルプロピルアミド基、アミノ基及びチオエーテル構造を有する有機基としては下記式(3)で表されるプロピルチオN,N−ジエチルプロピルアミノ基、チオエーテル構造を2以上有する有機基としては下記式(4)で表されるメチルチオプロピルチオプロピル基が挙げられる。
【0038】
なお、上記式(2)〜(4)中、「・」は、式(1)で表されるポリシルセスキオキサン化合物との結合部を示す。
【0039】
本発明の組成物におけるポリシルセスキオキサン化合物の含有量は、基材上に下地皮膜を形成可能な量であれば特に制限されないが、組成物全量を基準として、通常10〜30質量%程度、好ましくは10〜25質量%程度、より好ましくは10〜20質量%程度である。
【0040】
本発明の組成物に含有される金属ナノ粒子の金属種としては、例えば、パラジウム、銀、銅、ニッケル、鉄等が挙げられる。中でも、取り扱い易さやコスト面の観点から、銅が好ましい。
【0041】
金属ナノ粒子の粒子径は、通常1〜50nm程度、好ましくは1〜25nm程度、より好ましくは1〜10nm程度、特に好ましくは5〜10nm程度である。なお、金属ナノ粒子の粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)観察等により測定することができる。
【0042】
本発明の組成物における金属ナノ粒子の含有量は、基材上に下地皮膜を形成可能な量であれば特に制限されないが、組成物全量を基準として、通常0.1〜10質量%程度、好ましくは0.1〜5質量%程度、より好ましくは0.5〜5質量%程度、特に好ましくは0.5〜2.5質量%程度である。
【0043】
さらに、本発明の組成物は、コロイダルシリカを含有していてもよい。コロイダルシリカは、球状、又は球が鎖状に繋がった形状のシリカ微粒子が溶媒に分散した分散体である。コロイダルシリカを本発明の組成物に配合することによって、下地皮膜の表面にシリカ微粒子に由来する微細な凹凸を形成することができ、下地皮膜と無電解めっき皮膜との密着性を向上させることができる。
【0044】
コロイダルシリカにおけるシリカ微粒子は、ナノメートルオーダーの微粒子であればよく、例えば、粒子径が10〜200nm程度であることが好ましく、10〜100nm程度であることがより好ましい。なお、シリカ微粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察、BET吸着法による比表面積測定からの換算値などにより測定することができる。
【0045】
コロイダルシリカは、分散媒の種類に応じて、水を分散媒とする水系コロイダルシリカ、及び有機溶媒を分散媒とする溶剤系コロイダルシリカに分類されるが、本発明では、いずれのコロイダルシリカも用いることができる。
【0046】
溶剤系コロイダルシリカの分散媒である有機溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
【0047】
また、コロイダルシリカは、市販品を用いることができる。例えば、扶桑化学工業株式会社等から購入することができる。
【0048】
本発明の組成物に配合するコロイダルシリカにおける固形分濃度は特に制限されないが、例えば、コロイダルシリカ分散液の質量全体を基準として5〜40質量%程度である。
【0049】
本発明の組成物におけるコロイダルシリカの配合量は特に制限されないが、例えば、本発明の組成物における固形分(シリカ微粒子)の濃度が、組成物全量を基準として、1〜10質量%程度、好ましくは1〜5質量%程度となるように配合すればよい。
【0050】
また、本発明の組成物は、上記した成分以外に他の成分を含んでいてもよい。例えば、チタニア、アルミナ等の無機酸化物の微粒子などを添加することができる。このような微粒子を添加することにより、下地皮膜の表面に微細な凹凸を形成することができるため、下地皮膜と無電解めっき皮膜との密着性をより向上させることができる。
【0051】
本発明の組成物は、上記の通り、ポリシルセスキオキサン化合物、及び金属ナノ粒子を含有するものであり、その形態は特に制限されず、例えば、粉粒状組成物などであってもよく、溶媒を含む液状組成物の形態であってもよい。
【0052】
液状組成物として用いる場合、溶媒としては、上記したポリシルセスキオキサン化合物及び金属ナノ粒子を分散可能又は溶解可能な溶媒であれば特に制限されず使用することができる。このような溶媒としては、使用する成分の種類に応じて適宜選択でき、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類など)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトンなどのジアルキルケトン類、N−メチル−2−ピロリドンなど)、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブアセテート、ブトキシカルビトールアセテートなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類(カルビトールなど)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、アセタール類(アセタール、メチラールなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)などの有機溶媒が挙げられる。
【0053】
無電解めっきの下地皮膜形成用組成物の調製方法
本発明の組成物は、例えば、(1)トリアルコキシヒドロシラン、保護基含有トリアルコキシシラン、及び必要に応じて有機官能性アルコキシシラン、並びに金属化合物、酸触媒、水、及び溶媒を混合する工程、(2)前記工程(1)で調製した混合溶液を攪拌する工程、及び(3)加熱処理を行う工程、を含む方法により調製することができる。以下、これらの各工程について具体的に説明する。
【0054】
<工程(1)>
工程(1)では、ポリシルセスキオキサン化合物の原料となるアルコキシシラン化合物、並びに金属化合物、酸触媒、水、及び溶媒を混合する。
【0055】
ポリシルセスキオキサン化合物の原料となるアルコキシシラン化合物は、トリアルコキシヒドロシラン、及び保護基含有トリアルコキシシランに大別される。
【0056】
トリアルコキシヒドロシランとしては、特に限定されないが、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリプロポキシヒドロシランなどを例示することができる。なお、ポリシルセスキオキサン化合物において、トリアルコキシヒドロシランに由来するSi−H部分が、金属イオンの還元に寄与する。
【0057】
保護基含有トリアルコキシシランとしては、側鎖に上記した保護基(即ち、金属原子の凝集抑制能を有する有機基)を有するトリアルコキシシランであれば特に限定されず、例えば、保護基含有トリメトキシヒドロシラン、保護基含有トリエトキシヒドロシラン、保護基含有トリプロポキシヒドロシランなどを例示することができる。なお、ポリシルセスキオキサン化合物において、保護基含有トリアルコキシシランに由来する保護基が、金属原子の凝集抑制に寄与する。
【0058】
さらに、アルコキシシラン化合物として、必要に応じて、有機官能性アルコキシシランを用いてもよい。有機官能性アルコキシシランとしては、シランカップリング剤として使用されるものであれば特に制限されず、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどを例示することができる。
【0059】
金属化合物は、溶液中で電離し、かつ還元により金属原子を生成可能なものであれば特に制限されない。より詳細には、金属化合物中における金属原子の酸化数が正の化合物であればよい。このような金属化合物としては、金属水酸化物、金属ハロゲン化物(金属塩化物など)、金属無機酸塩(硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、塩酸塩)、金属有機酸塩(酢酸塩など)、金属錯体などを例示することができる。また、金属化合物における金属種は、上記した金属ナノ粒子における金属種と同一である。
【0060】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、及びギ酸、酢酸などの有機酸を例示することができる。
【0061】
溶媒としては、上記した各種成分を分散又は溶解可能な溶媒であれば特に制限されず使用することができる。このような溶媒としては、使用する成分の種類に応じて適宜選択でき、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類など)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトンなどのジアルキルケトン類、N−メチル−2−ピロリドンなど)、グリコールエーテルエステル類(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブアセテート、ブトキシカルビトールアセテートなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類(カルビトールなど)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)、アセタール類(アセタール、メチラールなど)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)などの有機溶媒が挙げられる。
【0062】
上記した各成分の混合割合は特に制限されない。一例を挙げると、混合溶液全量を基準として、トリアルコキシヒドロシランを8〜10質量%程度、保護基含有トリアルコキシシランを1〜3質量%程度、有機官能性アルコキシシランを5〜10質量%程度、金属化合物を2〜5質量%程度、水を10〜20質量%程度、及び溶媒を45〜60質量%程度となるように混合することができる。
【0063】
<工程(2)>
工程(2)では、上記した工程(1)で調製した混合溶液を攪拌する。攪拌を行うことにより、アルコキシシラン化合物の加水分解反応が進行する。なお、攪拌条件は特に制限されず、例えば、室温(25℃程度)で15分〜1時間程度攪拌を行えばよい。
【0064】
<工程(3)>
工程(3)では、加熱処理を行う。加熱処理を行うことにより、各種アルコキシシラン化合物同士の縮合反応が進行し、ポリシルセスキオキサン化合物が生成される。なお、加熱処理条件は特に制限されず、例えば、65〜85℃程度で30分〜2時間程度加熱処理を行えばよい。
【0065】
上記した工程を経ることによって、アルコキシシラン化合物の加水分解・縮合反応が進行し、ポリシルセスキオキサン化合物が生成される。また、これと同時に、金属化合物から電離した金属イオンは、ポリシルセスキオキサン化合物の分子内における還元基により還元され、金属原子が生成される。さらに、金属原子は、ポリシルセスキオキサン化合物の分子内における保護基により金属原子同士の凝集が抑制され、金属ナノ粒子となる。
【0066】
無電解めっきの下地皮膜の形成方法
上記した本発明の組成物を基板に塗布した後、加熱処理を行うことにより、無電解めっきの下地皮膜を形成することができる。
【0067】
本発明の組成物を塗布する基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板、セラミックス基板などの不導体基板などが挙げられる。
【0068】
本発明の組成物の基板への塗布方法は、下地皮膜を形成可能な方法であれば特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法などが挙げられ、さらに、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の各種の印刷方法も挙げられる。
【0069】
加熱処理条件は、特に制限されず、例えば、80〜200℃程度、好ましくは100〜160℃程度の温度で、10〜60分程度加熱すればよい。
【0070】
また、本発明の組成物を塗布する際の塗布量は特に制限されず、例えば、下地皮膜の膜厚が0.1〜10μm程度、好ましくは0.1〜5μm程度となるように塗布量を決定することができる。
【0071】
無電解めっき方法
上記した方法により無電解めっきの下地皮膜を形成した後、無電解めっき処理を行うことによって、当該下地皮膜上に密着性に優れた無電解めっき皮膜を形成することができる。
【0072】
無電解めっき処理は、下地皮膜を形成した基板に対して、必要に応じて脱脂処理及び還元処理を行い、無電解めっき用触媒を付与した後、当該基板を無電解めっき浴に浸漬することにより行う。
【0073】
脱脂処理は、公知の方法により行うことができる。例えば、市販の脱脂剤を用いて行うことができる。
【0074】
また、還元処理は、下地皮膜の表面に存在する金属ナノ粒子を還元するために行うものである。特に、金属ナノ粒子の金属種として、銅などの酸化され易い金属を使用する場合には、還元処理を行うことが好ましい。還元処理を行うことにより、下地皮膜表面に存在する金属ナノ粒子を還元することができ、無電解めっき用触媒を好ましく付与することができる。
【0075】
無電解めっき用触媒の付与方法は、特に制限されず、例えば、パラジウム、銀、ルテニウム等の無電解めっき用触媒を公知の方法によって付与すればよい。この際、下地皮膜の表面に存在する金属ナノ粒子は、無電解めっき用触媒よりもイオン化傾向が低いことから、下地皮膜の表面に存在する金属ナノ粒子が無電解めっき用触媒に置換される。
【0076】
無電解めっき浴は、自己触媒性の無電解めっき浴であれば特に限定なく用いることができる。例えば、無電解パラジウムめっき浴、無電解パラジウム合金めっき浴、無電解銅めっき浴、無電解銅合金めっき浴、無電解銀めっき浴、無電解銀合金めっき浴、無電解ニッケルめっき浴、無電解ニッケル合金めっき浴、無電解金めっき浴、無電解金合金めっき浴等を用いることができるが、これらの無電解めっき浴に限定されるものではない。これらの無電解めっき浴の具体的な組成については、特に限定はなく、還元剤成分を含む公知の組成の自己触媒性の無電解めっき浴を用いればよい。めっき方法、めっき条件等についても、使用するめっき浴の種類に応じて、通常のめっき方法とめっき条件に従えばよい。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0078】
無電解めっきの下地皮膜形成用組成物の調製
(実施例1)
3−メルカプトトリメトキシシラン1.96g及びN,N−ジエチルアクリルアミド1.27gを混合し、攪拌しながらUV照射(2126mW/cm
2)を行い、エン−チオール反応により、下記式(5)で表される、側鎖にプロピルチオN,N−ジエチルプロピルアミド基(保護基A)を有するトリメトキシシラン(以下、「保護基A含有トリメトキシシラン」と記載することがある。)を合成した。
【0079】
【化6】
【0080】
次いで、20質量%の硝酸銅三水和物−プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液16.3g、メチルトリメトキシシラン8.5g、トリエトキシシラン9.9g、上記で合成した保護基A含有トリメトキシシラン1.6g、水15.2g、酸触媒としてギ酸1.4g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(残部)を混合し、当該混合溶液を室温(25℃)で30分攪拌して加水分解を行った。その後、70℃で60分攪拌することにより縮合反応を行い、下記式(6)で表されるポリシルセスキオキサン化合物を含有する下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を実施例1の組成物と記載する。
【0081】
【化7】
【0082】
(実施例2)
メチルトリメトキシシランを3.5gとし、固形分濃度が25質量%のコロイダルシリカのイソプロパノール分散液(PL−2L−IPA、扶桑化学工業株式会社製)5.0gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を実施例2の組成物と記載する。
【0083】
(実施例3)
メチルトリメトキシシランを6.0g、トリエトキシシランを12.0g、及び上記で合成した保護基A含有トリメトキシシランを2.0gとしたこと、並びに硝酸銅三水和物−プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液に替えて20質量%の硫酸銅五水和物−プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.0gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を実施例3の組成物と記載する。
【0084】
(実施例4)
メチルトリメトキシシランを3.5gとし、固形分濃度が25質量%のコロイダルシリカのイソプロパノール分散液(PL−2L−IPA、扶桑化学工業株式会社製)5.0gを用いたこと以外は実施例3と同様にして、下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を実施例4の組成物と記載する。
【0085】
(実施例5)
3−メルカプトトリメトキシシラン1.96g及びN,N−ジエチルアリルアミン1.13gを混合し、攪拌しながらUV照射(2126mW/cm
2)を行い、エン−チオール反応により、下記式(7)で表される、側鎖にプロピルチオN,N−ジエチルプロピルアミノ基(保護基B)を有するトリメトキシシラン(以下、「保護基B含有トリメトキシシラン」と記載することがある。)を合成した。
【0086】
【化8】
【0087】
次いで、上記で合成した保護基B含有トリメトキシシラン1.5gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、下記式(8)で表されるポリシルセスキオキサン化合物を含有する下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を実施例5の組成物と記載する。
【0088】
【化9】
【0089】
(実施例6)
3−メルカプトトリメトキシシラン1.96g及びアリルメチルスルフィド0.88gを混合し、攪拌しながらUV照射(2126mW/cm
2)を行い、エン−チオール反応により、下記式(9)で表される、側鎖にメチルチオプロピルチオプロピル基(保護基C)を有するトリメトキシシラン(以下、「保護基C含有トリメトキシシラン」と記載することがある。)を合成した。
【0090】
【化10】
【0091】
次いで、上記で合成した保護基C含有トリメトキシシラン1.5gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、下記式(10)で表されるポリシルセスキオキサン化合物を含有する下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を実施例6の組成物と記載する。
【0092】
【化11】
【0093】
(実施例7)
メチルトリメトキシシランを用いないこと、及び固形分濃度が25質量%のコロイダルシリカのイソプロパノール分散液(PL−2L−IPA、扶桑化学工業株式会社製)5.0gを用いたこと以外は実施例3と同様にして、下記式(11)で表されるポリシルセスキオキサン化合物を含有する下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を実施例7の組成物と記載する。
【0094】
【化12】
【0095】
(実施例8)
コロイダルシリカのイソプロパノール分散液を10.0gとしたこと以外は実施例7と同様にして、下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を実施例8の組成物と記載する。
【0096】
(実施例9)
硝酸銅三水和物−プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を8.2gとしたこと以外は実施例1と同様にして、下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を実施例9の組成物と記載する。
【0097】
(比較例1)
トリエトキシシランを用いないこと、並びにメチルトリメトキシシランを18.0g、及び保護基A含有トリメトキシシランを2.0gとしたこと以外は実施例1と同様にして、下記式(12)で表されるポリシルセスキオキサン化合物を含有する下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を比較例1の組成物と記載する。
【0098】
【化13】
【0099】
(比較例2)
メチルトリメトキシシランを10.0g、及びトリエトキシシランを10.0gとし、保護基A含有トリメトキシシランを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、下記式(13)で表されるポリシルセスキオキサン化合物を含有する下地皮膜形成用組成物100gを調製した。なお、以下において、当該下地皮膜形成用組成物を比較例2の組成物と記載する。
【0100】
【化14】
【0101】
下地皮膜形成用組成物の液色及び液状の観察
上記で調製した実施例1〜9、並びに比較例1及び2の組成物の液色及び液状を目視により観察した。結果を下記表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1から明らかなように、実施例1〜9の組成物はいずれも液色が赤褐色であるのに対して、比較例1の組成物の液色は水色であることが確認された。当該結果から、実施例1〜9の組成物では、金属化合物から電離した2価の銅イオンが銅原子に還元されているのに対して、比較例1の組成物では、2価の銅イオンは還元されていないことが分かった。さらに、比較例1の組成物に含まれる、式(12)で表されるポリシルセスキオキサン化合物の分子内には還元基(Si−H構造)が存在しないことから、ポリシルセスキオキサン化合物の分子内における還元基が2価の銅イオンの還元に寄与することが分かった。
【0104】
また、実施例1〜9の組成物はいずれも透明であるのに対して、比較例2の組成物では濁りが観察された。当該結果から、実施例1〜9の組成物では、溶液中で銅原子が微粒子状態で均一に分散しているのに対して、比較例2の組成物では、銅原子が凝集していることが分かった。さらに、比較例2の組成物に含まれる、式(13)で表されるポリシルセスキオキサン化合物の分子内には保護基が存在しないことから、ポリシルセスキオキサン化合物の分子内における保護基が、銅原子の凝集抑制に寄与することが分かった。
【0105】
下地皮膜及び無電解めっき皮膜の形成
上記で調製した実施例1〜9、並びに比較例1及び2の組成物をそれぞれ、ディップコーティングによりガラス基板上にコーティングして薄膜を作製し、150℃で30分間熱処理を行うことにより、膜厚約0.3μmの下地皮膜を形成した。
【0106】
次いで、下地皮膜を形成したガラス基板の表面を、中性脱脂剤(NNPクリーナー、奥野製薬工業株式会社製)を水で30g/Lの濃度に希釈した液を用いて、25℃、3分間の条件で脱脂処理を行った。
【0107】
脱脂処理後のガラス基板を水洗し、ジメチルアミノボラン1g/L、及び水酸化ナトリウム2g/Lを含む溶液に35℃で5分間浸漬し、還元処理を行った。
【0108】
還元処理後のガラス基板を水洗した後、30℃に調整したPdイオン濃度32ppmの中性活性剤(NNPアクセラ、奥野製薬工業株式会社製)に3分間浸漬し、パラジウム触媒を付与した。
【0109】
パラジウム触媒を付与したガラス基板を水洗し、無電解銅めっき浴(pH9.5;OPCカッパーAF、奥野製薬工業株式会社製)に45℃で5分間浸漬し、無電解銅めっき皮膜を形成した。なお、実施例1、3、5、6及び9、並びに比較例1及び2の組成物を用いた場合の無電解銅めっき皮膜の膜厚は約0.3μmであり、実施例2、4、7及び8の組成物を用いた無電解銅めっき皮膜の膜厚は約0.5μmであった。
【0110】
下地膜の密着性、並びに無電解めっき皮膜の析出性及び密着性の評価
上記した方法により得られた各試料について、下記の方法で無電解銅めっきの析出性、並びに下地皮膜及び無電解銅めっき皮膜の密着性を評価した。
【0111】
<めっき析出性の評価>
無電解銅めっき皮膜の外観を目視で観察し、以下の評価基準に従って無電解銅めっきの析出性を評価した。
○ :めっきの未析出部分は観察されなかった。
△ :一部、めっきの未析出部分が観察された。
× :めっきの未析出部分が観察された。
××:めっきの析出がほとんど観察されなかった。
【0112】
<密着性の評価>
JIS H 8504(めっきの密着性試験方法)に従ってテープ剥離試験を行い、以下の基準により下地皮膜及び無電解銅めっき皮膜の密着性を評価した。なお、密着性の評価は、(i)下地皮膜形成後、無電解銅めっき前にテープ剥離試験を行うことにより、基材と下地皮膜との密着性を評価し、(ii)無電解銅めっき後にテープ剥離試験を行うことにより下地皮膜と無電解銅めっき皮膜との密着性を評価した。
○:剥離が生じなかった。
△:一部、剥離が生じた。
×:著しい剥離が生じた。
−:めっきの析出性が不十分であるため、テープ剥離試験を行うことができなかった。
【0113】
上記した評価結果を下記表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
表2から明らかなように、実施例1〜8の組成物を用いた場合には、無電解銅めっきが下地皮膜上に良好に析出することが確認された。さらに、基材と下地皮膜との密着性、及び下地皮膜と無電解銅めっき皮膜との密着性が共に優れていることが確認された。
【0116】
また、実施例9の組成物を用いた場合には、基材と下地皮膜との密着性が優れていることが確認された。また、下地皮膜上への無電解銅めっきの析出が良好でない箇所が観察され、無電解銅めっき皮膜が一部剥離することが観察されたものの、これらはいずれも許容範囲内のものであった。
【0117】
これに対して、比較例1の組成物を用いた場合には、基材と下地皮膜との密着性は良好であったものの、下地皮膜上への無電解銅めっき皮膜の析出はほとんど確認されなかった。
【0118】
さらに、比較例2の組成物を用いた場合には、基材上に均一な下地皮膜を形成することができず、密着性が大きく劣ることが確認された。また、下地皮膜上への無電解銅めっき皮膜の析出はまばらであり、めっきの未析出部分が大部分を占めていることが確認された。そして、無電解銅めっき皮膜の析出が確認された部分の下地皮膜と無電解銅めっき皮膜との密着性は大きく劣ることが確認された。
【0119】
無電解めっきの下地皮膜のTEM観察
実施例1の組成物を用いて上記した方法に形成した下地皮膜について、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。下地皮膜表面のTEM画像を
図1に示す。
【0120】
図1から明らかなように、下地皮膜の表面には、粒子径約2〜5nm程度の銅ナノ粒子が形成されていることが確認できた。
【0121】
インクジェット印刷法による下地皮膜の形成
実施例1の組成物を用いて、ガラス基板上にインクジェット印刷法により、下地皮膜を形成した。形成した下地皮膜のマイクロスコープによる観察結果を
図2に示す。
【0122】
図2から明らかなように、形成された下地皮膜のライン幅は約50μm程度であることが観察された。当該結果より、本発明の組成物は、インクジェット印刷法により、微細なパターンの下地皮膜を形成できることが分かった。