特許第6493916号(P6493916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャタピラー エス エー アール エルの特許一覧

<>
  • 特許6493916-流体圧回路および作業機械 図000002
  • 特許6493916-流体圧回路および作業機械 図000003
  • 特許6493916-流体圧回路および作業機械 図000004
  • 特許6493916-流体圧回路および作業機械 図000005
  • 特許6493916-流体圧回路および作業機械 図000006
  • 特許6493916-流体圧回路および作業機械 図000007
  • 特許6493916-流体圧回路および作業機械 図000008
  • 特許6493916-流体圧回路および作業機械 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493916
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】流体圧回路および作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20190325BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20190325BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20190325BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   F15B11/02 W
   F15B11/08 A
   E02F9/22 E
   E02F3/43 C
   E02F9/22 M
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-86582(P2015-86582)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-205497(P2016-205497A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岸田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】豊田 充啓
(72)【発明者】
【氏名】畑 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】金縄 裕也
(72)【発明者】
【氏名】居本 周平
(72)【発明者】
【氏名】的場 信明
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/114654(WO,A1)
【文献】 特開2006−183413(JP,A)
【文献】 特開平08−004705(JP,A)
【文献】 特開2010−242774(JP,A)
【文献】 特開2016−205496(JP,A)
【文献】 特開2016−205495(JP,A)
【文献】 特開2016−205494(JP,A)
【文献】 特開2016−205493(JP,A)
【文献】 特開2016−205492(JP,A)
【文献】 特開2016−098955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22;21/14
E02F 3/42− 3/43; 3/84− 3/85; 9/20− 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作体の操作に応じてポンプから加圧供給された作動流体により動作して作業装置を上下動する流体圧シリンダと、
流体圧シリンダにポンプから供給される作動流体を制御する電磁比例式の制御バルブと、
流体圧シリンダのロッド側とタンクとの連通量を制御するバイパスバルブと、
作業装置の動作状態を検出するとともに、作業装置が掘削状態であることを検出したときに、少なくとも作業装置を上方に動作させる操作体の操作量に応じて制御バルブおよびバイパスバルブのそれぞれの動作を制御することで、流体圧シリンダにポンプから供給される作動流体を低減させ、流体圧シリンダのロッド側からの戻り流体の少なくとも一部をタンクにバイパスさせるとともに、ポンプから吐出されるポンプ流量を低減させるコントローラと、
逆止弁を介して流体圧シリンダのヘッド側とタンクとを接続する通路を備え、バイパスバルブによりロッド側からポンプへの戻り流体の少なくとも一部をタンクにバイパスし、流体圧シリンダのヘッド側にタンクから作動流体を補充するメイクアップ回路と
を具備したことを特徴とする流体圧回路。
【請求項2】
ントローラは、操作体の操作量に応じて設定されるパイロット圧、ポンプ圧および流体圧シリンダのヘッド圧に基づき作業装置の動作状態を検出する
ことを特徴とする請求項1記載の流体圧回路。
【請求項3】
機体と、
機体に対し上下方向回動可能に設けられたブーム、このブームに対し内外方向回動可能に設けられたスティック、および、このスティックに対し内外方向回動可能に設けられたバケットを備えた作業装置と、
少なくともブームを回動するブームシリンダを流体圧シリンダとしてこの流体圧シリンダに対して設けられた請求項1または2記載の流体圧回路と
を具備したことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置を上下方向に作動する流体圧シリンダを備えた流体圧回路およびその流体圧回路を搭載した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掘削作業を行う作業機械として、例えば油圧ショベルが知られている。油圧ショベルは、機体に設ける作業装置として、上下動可能なブームと、このブームの先端に接続されたスティックと、このスティックの先端に接続されたバケットとを備え、これらブーム、スティックおよびバケットがそれぞれ油圧シリンダにより作動される。
【0003】
油圧ショベルでの掘削作業の際には、これら油圧シリンダにそれぞれ作動油が供給され、バケットを土砂などに差し込んだ後、スティックを手前に引きながら(スティックイン)、バケットを閉じる(バケットイン)。このような掘削作業時、通常オペレータはスティックインおよびバケットインを最大操作している。そして、このとき、バケットを土砂に深く差し込みすぎた場合、あるいは掘削する土砂などが硬くて重い場合には、土砂によりバケットに加わる反力が大きく、ブームが持ち上がるような負荷が発生してスティックやバケットを引く動作ができなくなることがある。このような場合、オペレータは、ブームを上げて負荷を逃がし、掘削動作をやり直す。
【0004】
このようなブームの負荷を逃がす、いわゆる透かし動作を、バケットやアームなどの過負荷を検出したときに自動で行なうようにした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−252338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スティックインおよびバケットインを最大操作するような掘削動作時、ブーム用油圧シリンダのヘッド圧は略0であるのに対して、ブーム用油圧シリンダのロッド圧は掘削反力によって大きくなっていることから、ブームを上げて透かし動作をする場合、スティック、バケット操作により高圧になったポンプ圧が略0となったブームシリンダヘッド圧に流れるため、圧力損失が大きい。
【0007】
また、自動で透かし動作を行う制御の場合には、作業機械よりも下側を掘削する、いわゆる床掘りが容易でないため、オペレータが自らの意思で透かし動作を行えるようにすることが望ましい。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、掘削の透かし動作時のエネルギ損失および圧力損失を低減できる流体圧回路および作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、操作体の操作に応じてポンプから加圧供給された作動流体により動作して作業装置を上下動する流体圧シリンダと、流体圧シリンダにポンプから供給される作動流体を制御する電磁比例式の制御バルブと、流体圧シリンダのロッド側とタンクとの連通量を制御するバイパスバルブと、作業装置の動作状態を検出するとともに、作業装置が掘削状態であることを検出したときに、少なくとも作業装置を上方に動作させる操作体の操作量に応じて制御バルブおよびバイパスバルブのそれぞれの動作を制御することで、流体圧シリンダにポンプから供給される作動流体を低減させ、流体圧シリンダのロッド側からの戻り流体の少なくとも一部をタンクにバイパスさせるとともに、ポンプから吐出されるポンプ流量を低減させるコントローラと、逆止弁を介して流体圧シリンダのヘッド側とタンクとを接続する通路を備え、バイパスバルブによりロッド側からポンプへの戻り流体の少なくとも一部をタンクにバイパスし、流体圧シリンダのヘッド側にタンクから作動流体を補充するメイクアップ回路とを具備した流体圧回路である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の流体圧回路におけるコントローラが、操作体の操作量に応じて設定されるパイロット圧、ポンプ圧および流体圧シリンダのヘッド圧に基づき作業装置の動作状態を検出する流体圧回路である。
【0011】
請求項3に記載された発明は、機体と、機体に対し上下方向回動可能に設けられたブーム、このブームに対し内外方向回動可能に設けられたスティック、および、このスティックに対し内外方向回動可能に設けられたバケットを備えた作業装置と、少なくともブームを回動するブームシリンダを流体圧シリンダとしてこの流体圧シリンダに対して設けられた請求項1または2記載の流体圧回路とを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、作業装置が掘削状態であることを検出したときに、少なくとも作業装置を上方に動作させる操作体の操作量に応じて、流体圧シリンダにポンプから供給される作動流体を低減させ、流体圧シリンダのロッド側からの戻り流体の少なくとも一部をタンクにバイパスさせるとともに、ポンプから吐出されるポンプ流量を低減させ電磁比例式の制御バルブの作動を制限し、かつ、流体圧シリンダのヘッド側にタンクから作動流体を補充することで、掘削の際に作業装置を上方に動作させて負荷を逃がす透かし動作時のエネルギ損失および圧力損失を低減できる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、操作体の操作量に応じて設定されるパイロット圧、ポンプ圧および流体圧シリンダのヘッド圧に基づきコントローラが作業装置の動作状態を検出するので、作業装置が掘削状態であることを簡素な構成で容易に検出できる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、作業機械の作業装置による掘削の際に作業装置を上方に動作させて負荷を逃がす透かし動作時の圧力損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る流体圧回路の一実施の形態の切替状態を示す回路図である。
図2】同上回路の他の切替状態を示す回路図である。
図3】同上回路のさらに他の切替状態を示す回路図である。
図4】(a)は同上回路の一のバルブの制御アルゴリズムを模式的に示す説明図、(b)は同上回路の他のバルブの制御アルゴリズムを模式的に示す説明図である。
図5】同上回路のコントローラの各ブロックによる制御アルゴリズムの概略を模式的に示す説明図である。
図6】同上コントローラによる制御バルブおよびバイパスバルブの制御アルゴリズムを模式的に示す説明図である。
図7】同上コントローラによるポンプ流量の制御アルゴリズムを模式的に示す説明図である。
図8】同上流体圧回路を備えた作業機械を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図1乃至図8に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0017】
図8に示されるように、作業機械としての油圧ショベルHEは、機体1が下部走行体2とその上に旋回モータ3mにより旋回可能に設けられた上部旋回体3とにより形成され、この上部旋回体3上にエンジンおよびポンプなどが搭載された機械室4と、オペレータを保護するキャブ5と、作業装置6とが搭載されている。
【0018】
この作業装置6は、2本並列された流体圧シリンダとしてのブームシリンダ7c1,7c2により上下方向に回動されるブーム7の基端が上部旋回体3に軸支され、ブーム7の先端に流体圧シリンダとしてのスティックシリンダ8cにより前後方向に回動されるスティック8が軸支され、このスティック8の先端に流体圧シリンダとしてのバケットシリンダ9cにより回動されるバケット9が軸支されている。2本のブームシリンダ7c1,7c2は、共通のブーム7に対して並設され、同一動作を同時作動する。
【0019】
図1乃至図3は、作業装置6が有する位置エネルギを、ブームシリンダ7c1を介してアキュムレータに蓄えるとともに上部旋回体3が有する運動エネルギを、旋回モータ3mを介してアキュムレータに蓄えてエンジンパワーのアシストに利用するエンジンパワーアシストシステムを示す。
【0020】
次に、このシステムの回路構成を説明する。
【0021】
機械室4内の搭載エンジン11により駆動されるポンプとしてのメインポンプ12,13のメインポンプシャフト14にアシストモータ15を直結またはギヤなどを介して連結し、メインポンプ12,13およびアシストモータ15は、ポンプ/モータ容量(ピストンストローク)を角度により可変調整することが可能な斜板を備え、その斜板角(傾転角)はレギュレータ16,17,18により制御するとともに斜板角センサ16φ,17φ,18φにより検出し、レギュレータ16,17,18は、電磁弁により制御する。例えば、メインポンプ12,13のレギュレータ16,17は、ネガティブフローコントロール通路19ncで導かれたネガティブフローコントロール圧(いわゆるネガコン圧)によって自動的に制御可能であるとともに、ネガティブフローコントロール弁19の電磁式切替弁19a,19bによってネガコン圧以外の信号でも制御可能である。
【0022】
メインポンプ12,13は、タンク21から吸い上げた作動流体としての作動油を通路22,23に吐出し、それらのポンプ吐出圧は圧力センサ24,25により検出する。メインポンプ12,13に接続した方向制御および流量制御用のパイロット式制御弁のうち、ブームシリンダ7c1,7c2を制御する電磁比例式の制御バルブであるメインのブーム用制御弁26から引き出した一方の出力通路27および電磁比例式の制御バルブであるサブのブーム用制御弁28から引き出した出力通路29を、通路30によって複合弁としてのブームエネルギ・リカバリ弁31に接続する。
【0023】
このブームエネルギ・リカバリ弁31は、図2に示される蓄圧回路Aおよび再生回路Bと、図3に示されるブーム上げ操作時にメインポンプ12,13から加圧供給された作動油を2つのブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側に導く回路と、ブームシリンダ7c1,7c2のロッド側からの戻り油をタンク21にバイパスするバイパス回路であるブリードオフ回路Cと、タンク21からブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側にメイクアップ用の作動油を補充するメイクアップ回路Mとを切替える複数の回路機能を、単一ブロック内に組み込んだ複合弁である。
【0024】
このブームエネルギ・リカバリ弁31に一方のブームシリンダ7c1のヘッド側端から引き出した通路32をドリフト低減弁33を経て通路34により接続し、他方のブームシリンダ7c2のヘッド側端から引き出した通路35をドリフト低減弁36を経て通路37により接続する。メインのブーム用制御弁26から引き出した他方の出力通路38は、ブームエネルギ・リカバリ弁31の再生回路Bに接続する。ブームシリンダ7c1,7c2の各ロッド側は、通路39,40によりブームエネルギ・リカバリ弁31に接続する。ドリフト低減弁33,36は、それぞれ図示しないパイロット弁によりスプリング室内のパイロット圧を制御することで、ポート間の開閉および開度を制御する。なお、通路34には、ブームシリンダ7c1のヘッド側に作用するヘッド圧を検出する圧力センサ41を接続する。
【0025】
メインのブーム用制御弁26から引き出した一方の出力通路27は、電磁式切替弁42および逆止弁43を介して他方の出力通路38に連通可能とする。
【0026】
また、アシストモータ15の吐出側は、吐出通路44を介してタンク21に接続する。さらに、アシストモータ15の吸込側には、複数のアキュムレータである第1のアキュムレータ46を設けたアキュムレータ通路47から、リリーフ弁48および逆止弁49を経てタンク通路50と、電磁式切替弁51を経て吸込側通路52とを接続する。アキュムレータ通路47には、第1のアキュムレータ46に蓄圧された圧力を検出する圧力センサ55を接続する。また、タンク通路50は、タンク通路56から背圧チェック弁であるスプリング付き逆止弁57を経て、さらにオイルクーラ58またはスプリング付き逆止弁59を経てタンク21に接続する。さらに、タンク通路56から分岐されたメイクアップ通路である第1のメイクアップ通路60は、この第1のメイクアップ通路60にある逆止弁(チェック弁)61および通路62を経て例えばブームエネルギ・リカバリ弁31に接続する。そして、これら第1のアキュムレータ46、アキュムレータ通路47、リリーフ弁48、電磁式切替弁51および圧力センサ55は、単一ブロック内に組み込まれてアキュムレータブロック63を構成している。
【0027】
ブームエネルギ・リカバリ弁31は、蓄圧回路Aの一部を構成する一のバルブとしての制御弁64と、再生回路Bの一部を構成する他のバルブとしてのブーム回路切替弁であるメイン制御弁65と、バイパスバルブとしてのブリードオフ弁66とを備えている。これら制御弁64、メイン制御弁65およびブリードオフ弁66は、例えばキャブ5(図8)内などのオペレータによって操作される図示しない操作体であるレバーの操作により動作される電磁式切替弁によってパイロット圧の給排を制御することで切替わるパイロット操作式のものが用いられるが、図面上は説明をより明確にするために電磁比例方向制御弁として図示する。
【0028】
制御弁64は、逆止弁67を経て第1のアキュムレータ46(アキュムレータブロック63)に接続する通路68と、通路34との連通および遮断を切替えることで、ブームシリンダ7c1からの第1のアキュムレータ46の蓄圧を許容する流量制御弁である。この制御弁64は、通常のシリンダ(ブームシリンダ7c1,7c2など)からタンク21へと戻すよりも作動油を大きく流せるバルブであり、第1のアキュムレータ46に圧油を溜めることを優先したものとなっている。また、この制御弁64の逆止弁67に対して反対側(上流側)には、通路34を介してブームシリンダ7c1のヘッド側が接続されている。
【0029】
メイン制御弁65は、通路71と通路72との関係、通路73と通路74との関係、および、通路75および通路76との関係をそれぞれ切替えることで、ブームシリンダ7c1とブームシリンダ7c2とを蓄圧用シリンダと自己再生用シリンダとに分離するものである。すなわち、このメイン制御弁65は、制御弁64の切替えによって第1のアキュムレータ46に蓄圧するときに、ブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側間の連通を遮断するとともにブームシリンダ7c2のヘッド側とブームシリンダ7c1,7c2のそれぞれのロッド側とを連通するように構成されている。
【0030】
通路71には、通路30が逆止弁78を経て接続し、通路72は、通路37および通路30から分岐する通路79と接続し、通路73は、通路72から分岐され、通路74は、逆止弁80を経て通路40と接続し、通路75は、出力通路38および通路39と接続し、通路76は、通路40から分岐される。
【0031】
ブリードオフ弁66は、後述する掘削作業時の透かし動作の際に動作されるものである。このブリードオフ弁66は、通路82により通路39,75と接続するとともに、通路83によりタンク21と接続する。
【0032】
図1乃至図3に示されるように、蓄圧回路Aは、一方のブームシリンダ7c1のヘッド側端より引き出された通路32からドリフト低減弁33および通路34を経て、ブームエネルギ・リカバリ弁31内の制御弁64、逆止弁67を経て、通路68から第1のアキュムレータ46に至る回路であり、ブームシリンダ7c1のヘッド側から押し出された油を第1のアキュムレータ46に蓄圧させる機能を有する。
【0033】
また、再生回路Bは、他方のブームシリンダ7c2のヘッド側端より引き出された通路35からドリフト低減弁36および通路37を経て、ブームエネルギ・リカバリ弁31内の通路73、メイン制御弁65、通路74、逆止弁80および通路40を経て他方のブームシリンダ7c2のロッド側端に至るとともに、通路35からドリフト低減弁36および通路37を介して、ブームエネルギ・リカバリ弁31内の通路73、メイン制御弁65、通路74、逆止弁80、通路76、メイン制御弁65、通路75および通路39を経て一方のブームシリンダ7c1のロッド側端に至る回路であり、ブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された油をブームシリンダ7c1,7c2のそれぞれのロッド側に再生する機能を有する。
【0034】
また、ブリードオフ回路Cは、一方のブームシリンダ7c1のロッド側から通路39、通路82、ブリードオフ弁66および通路83を経てタンク21に至るとともに、他方のブームシリンダ7c2のロッド側から通路40、通路76、メイン制御弁65、通路75、通路82、ブリードオフ弁66および通路83を経てタンク21に至る回路であり、ブームシリンダ7c1,7c2のロッド側からの戻り油の少なくとも一部をタンク21へとバイパスする機能を有する。
【0035】
また、メイクアップ回路Mは、タンク21から、オイルクーラ58、スプリング付き逆止弁57、タンク通路56および第1のメイクアップ通路60を経て、逆止弁61を介して通路62、逆止弁78を介して通路34、ドリフト低減弁33および通路32を介してブームシリンダ7c1のヘッド側に至るとともに、逆止弁78を介して通路71、メイン制御弁65、通路72、通路37、ドリフト低減弁36および通路35を介してブームシリンダ7c2のヘッド側に至る回路であり、作動油をタンク21からブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側に補充する機能を有する。すなわち、このメイクアップ回路Mは、タンク21から逆止弁61,78を介してブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側とそれぞれ連通する通路を備えている。
【0036】
また、前記旋回モータ3mの旋回方向および速度を制御する旋回用制御弁91と旋回モータ3mとを接続するモータ駆動回路Dの通路92,93間に、相互に逆向きのリリーフ弁94,95および逆止弁97,98を設け、これらのリリーフ弁94,95間および逆止弁97,98間に、モータ駆動回路Dから排出された油をタンク21に戻すタンク通路機能と、モータ駆動回路Dに作動油を補充することが可能なメイクアップ機能とを有する第2のメイクアップ通路99を接続し、この第2のメイクアップ通路99は、圧油を供給する第2のアキュムレータ100に接続する。そして、この第2のメイクアップ通路99から、スプリング付き逆止弁57のスプリング付勢圧を超えない圧力で、逆止弁97,98を経て通路92,93のバキューム発生のおそれのある側に作動油を補充する。
【0037】
さらに、モータ駆動回路Dの通路92,93を、逆止弁102,103を経て旋回エネルギ回収用の通路104に連通し、この通路104を、出口側の背圧によって入口側の元圧が変化しにくいシーケンス弁105を経て通路106に接続し、この通路106が第1のアキュムレータ46および通路68に接続する。
【0038】
以上のような回路構成において、各々の斜板角センサ16φ,17φ,18φ、圧力センサ24,25,55は、検出した斜板角信号および圧力信号をコントローラである車載コントローラCR(図8)に入力し、また、各弁42,51は、車載コントローラCR(図8)から出力された駆動信号によりオン・オフ動作または駆動信号に応じた比例動作で切替わる。また、ブーム用制御弁26,28、旋回用制御弁91および図示しない他の油圧アクチュエータ用制御弁(走行モータ用、スティックシリンダ用、バケットシリンダ用など)は、キャブ5(図8)内などのオペレータによりレバー操作またはペダル操作される手動操作弁いわゆるリモコン弁などによってパイロット操作され、ドリフト低減弁33,36の図示しないパイロット弁も連動してパイロット操作される。
【0039】
以下に、上記車載コントローラCR(図8)によって制御される内容を機能的に説明する。
【0040】
図2は、ブーム7(図8)を下降させるブーム下げ操作時の回路状態を示し、作業装置6(図8)の荷重などにより一方のブームシリンダ7c1のヘッド側から押し出された作動油は、通路32およびドリフト低減弁33を経て通路34からブームエネルギ・リカバリ弁31の連通位置に切替えた制御弁64で逆止弁67を経て通路68と連通され、この通路68から第1のアキュムレータ46に蓄圧させる。
【0041】
このとき、制御弁64は、レバーの操作量、すなわちこの操作量により設定されるパイロット圧と、圧力センサ55により検出した第1のアキュムレータ46のアキュムレータ圧とに応じて一方のブームシリンダ7c1のヘッド側と第1のアキュムレータ46側との連通量を切替える。具体的に、レバーの操作量により設定されるパイロット圧に対して所定のテーブル(変換器)T1により補正を行うとともに、アキュムレータ圧に対して所定のテーブル(変換器)T2により補正を行い、これらを積算した結果を、制御弁64を動作させる出力とする。さらに具体的に、本実施の形態では、図4(a)に示されるように、テーブルT1では、レバーの操作量により設定されるパイロット圧が相対的に小さいときにはその入力圧の増加量に対して出力圧の増加量が相対的に大きくなり、レバーの操作量により設定されるパイロット圧が所定の閾値TH1を超えた領域では入力圧の増加量に対する出力圧の増加量が閾値TH1以下のときよりも抑制され、さらに所定の閾値TH1より大きい所定の閾値TH2を超えた領域では出力圧が一定に設定される。さらに、テーブルT2では、アキュムレータ圧が所定の閾値TH3以下の領域では、アキュムレータ圧の増加量に対してゲインが増加し、アキュムレータ圧が所定の閾値TH3を超えた領域ではゲインが一定(例えば1)に設定される。このとき、逆止弁78により、この作動油がブーム用制御弁26側に戻ることはない。
【0042】
同時に、他方のブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された作動油は、通路35およびドリフト低減弁36を経て通路37からブームエネルギ・リカバリ弁31のメイン制御弁65で通路73から通路74へと方向制御し、さらに逆止弁80および通路40を経て他方のブームシリンダ7c2のロッド側に再生させるとともに、逆止弁80を経て通路76へと分岐した作動油をメイン制御弁65内の逆止弁を経て通路75へと方向制御し、通路39を経て一方のブームシリンダ7c1のロッド側にも再生させる。
【0043】
このとき、メイン制御弁65は、レバーの操作量、すなわちこの操作量により設定されるパイロット圧に応じて動作量が変化する。具体的に、レバーの操作量により設定されるパイロット圧に対して所定のテーブル(変換器)T3により補正を行って、メイン制御弁65を動作させる出力とする。さらに具体的に、本実施の形態では、図4(b)に示されるように、図4(a)のテーブルT2と同様のテーブルT3により、レバーの操作量により設定されるパイロット圧の入力圧と出力圧が設定され、基本的にはブーム下げ操作を検知すると即座に切替わる。なお、他方のブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された作動油の余剰流量は、通路37から通路79および通路30を経て、ブーム用制御弁26からタンク21へと戻す。また、例えばブームシリンダ7c1,7c2のヘッド圧に基づいて作業装置6(図8)の接地を検知することなどによりブーム下げにより機体1を持ち上げていることを検知した場合(機体持ち上げフラグオン時)には、所定の設定値に応じてブームシリンダ7c1,7c2の蓄圧用シリンダと自己再生用シリンダとの分離を解除する。
【0044】
このように、ブームエネルギ・リカバリ弁31は、制御弁64とメイン制御弁65とにより、ブーム下げ時の第1のアキュムレータ46への蓄圧と、ブームシリンダ7c1,7c2のロッド側への再生とを同時に行なう。
【0045】
なお、ブーム下げ操作時にメインポンプ12から吐出された作動油の一部は、ブーム用制御弁26を経て、出力通路38から通路39を介してブームシリンダ7c1のロッド側へと供給する。このとき、ブーム用制御弁26は、ブーム下げ操作の開始時にのみ流量を最大としてブームシリンダ7c1のロッド側に作動油を供給させるとともに、ブーム7の下降が開始して再生回路Bにてメイン制御弁65がするとブームシリンダ7c2のヘッド側から作動油をブームシリンダ7c1,7c2のロッド側へと再生するので、流量を絞る。
【0046】
また、図3は、ブーム7(図8)を上昇させるブーム上げ操作時の回路状態を示し、このブーム上げ操作時のブームエネルギ・リカバリ弁31は、制御弁64を遮断位置へと切替えるとともにメイン制御弁65を切替えて、第1のアキュムレータ46への蓄圧と、ブームシリンダ7c1,7c2のロッド側への再生とを停止し、メインポンプ12,13からブーム用制御弁26,28を経て通路30に供給された作動油を、通路79から通路37、ドリフト低減弁36および通路35を経て他方のブームシリンダ7c2のヘッド側に導くとともに、逆止弁78から通路34、ドリフト低減弁33および通路32を経て一方のブームシリンダ7c1のヘッド側に導く。また、ブームシリンダ7c1のロッド側から押し出された作動油は、通路39および出力通路38からブーム用制御弁26を経てタンク21へと戻し、ブームシリンダ7c2のロッド側から押し出された作動油は、通路40および通路76を経てメイン制御弁65で通路75へと方向制御され、出力通路38からブーム用制御弁26を経てタンク21へと戻す。
【0047】
また、上記のブーム下げ操作およびブーム上げ操作時などには、それぞれメインポンプシャフト14に直結またはギヤを介して連結したモータ機能を有するアシストモータ15を、図3に示されるように油圧モータとして機能させてエンジン負荷を低減する、エンジンパワーアシストを行うことができる。例えばブーム下げ操作時には、制御弁64を介して蓄圧された第1のアキュムレータ46のアキュムレータ圧が所定の第1の閾値圧以上であることを圧力センサ55により検出した場合にエンジンパワーアシストを行い、ブーム下げ操作時以外、例えばブーム上げ操作時などには、第1のアキュムレータ46のアキュムレータ圧が上記の所定の第1の閾値圧と異なる所定の第2の閾値圧以上であることを圧力センサ55により検出した場合にエンジンパワーアシストを行う。このエンジンパワーアシストの際には、電磁式切替弁51をフラグに応じて連通位置に切替えて、第1のアキュムレータ46に蓄圧されたエネルギでアシストモータ15を回転させ、メインポンプ12,13の油圧出力をアシストしてエンジン負荷を低減する。なお、機体1を持ち上げている場合には、アシストモータ15によるエンジンパワーアシストをしない。
【0048】
このように、エンジンパワーアシスト機能は、一方のブームシリンダ7c1のヘッド側から第1のアキュムレータ46に蓄圧されたエネルギによってアシストモータ15を回転させることで、このアシストモータ15によりメインポンプシャフト14を介して連結された搭載エンジン11の負荷を低減させる。
【0049】
さらに、図8に示されるような作業装置6による掘削作業の際には、上記のブーム下げおよびブーム上げのそれぞれの操作と、スティックイン/アウト、バケットイン/アウトの操作とを任意に組み合わせて行うこととなるが、例えばバケット9を土砂に深く差し込みすぎた場合、あるいは掘削する土砂などが硬くて重い場合には、土砂によりバケット9に加わる反力が大きく、ブーム7が持ち上がるような負荷が発生してスティック8やバケット9を引く動作ができなくなることがある。このような場合、オペレータは、作業装置6(ブーム7)を上方に回動させて負荷を逃がす、いわゆる透かし動作を行うことがある(想像線に示す)。したがって、この透かし動作の場合、負荷により高圧となったポンプ圧がブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側に流れ込み、エネルギ損失を招く。
【0050】
そこで、上記車載コントローラCRは、図5に示されるように、概略として、作業装置6(図8)の動作状態を検出する動作検出部107と、開口面積制御部である弁制御部108と、ポンプ流量制御部109とを備え、動作検出部107により作業装置6が掘削状態であることを検出した場合には、弁制御部108によりブーム用制御弁26,28を動作させる出力およびブリードオフ弁66を動作させる出力がそれぞれ設定されるとともにポンプ流量制御部109によりポンプ必要流量を設定し、動作検出部107により作業装置6が掘削状態であることを検出しない場合、換言すれば動作検出部107により検出した作業装置6の動作状態が掘削状態でない場合には、ブーム用制御弁26,28を動作させる出力、ブリードオフ弁66を動作させる出力、およびポンプ必要流量をそれぞれ0に設定することで、圧力損失を低減する。
【0051】
具体的に、動作検出部107は、レバーによるスティックイン操作量、すなわちこの操作量に応じて設定されるパイロット圧と、バケットイン操作量、すなわちこの操作量に応じて設定されるパイロット圧と、メインポンプ12,13のポンプ圧と、ブームシリンダ7c1,7c2のヘッド圧と、ブーム上げ操作量、すなわちこの操作量に応じて設定されるパイロット圧とに基づいて、作業装置6(図8)の動作状態を検出する。さらに具体的に、動作検出部107は、スティックイン操作量に応じて設定されるパイロット圧が所定圧(例えば1.8MPa)より大きく、バケットイン操作量に応じて設定されるパイロット圧が所定圧(例えば1.3MPa)より大きく、ポンプ圧が所定圧(例えば15MPa)より大きく、ブームシリンダ7c1,7c2のヘッド圧が所定圧(例えば5MPa)より大きく、かつ、ブーム上げ操作量に応じて設定されるパイロット圧が所定圧(例えば1.5MPa)より小さいときに、作業装置6(図8)が掘削作業をしていると判断し、それ以外の場合には、掘削作業をしていないと判断する。
【0052】
また、弁制御部108は、レバーによるブーム上げ操作量、すなわちこの操作量に応じて設定されるパイロット圧と、メインポンプ12,13のポンプ圧と、ブームシリンダ7c1,7c2のロッド圧とに基づいて、ブーム用制御弁26,28およびブリードオフ弁66を動作させる出力を設定する。さらに具体的に、この弁制御部108は、ポンプ圧に応じて所定のテーブル(変換器)T4により設定されるゲインと、圧力センサ(図示せず)により検出したブームシリンダ7c1,7c2のロッド圧に応じて所定のテーブル(変換器)T5により設定されるゲインとの積算値と、ブーム上げ操作のレバーの操作量により設定されるパイロット圧に応じて所定のテーブル(変換器)T6により設定される開口面積とを積算した値と、この開口面積との小さい方をさらに面積圧力変換してブリードオフ弁66を動作させる出力として設定するとともに、ブーム上げ操作のレバーの操作量により設定されるパイロット圧に応じてテーブルT6により設定される開口面積と上記の開口面積の小さい方との差分をさらに面積圧力変換してブーム制御弁26,28の動作を制限する出力として設定する。テーブルT4では、ポンプ圧が所定の閾値TH4以下の領域ではゲインが一定に設定され、ポンプ圧が所定の閾値TH4を超えこの所定の閾値TH4より大きい所定の閾値TH4以下の領域ではその増加に比例してゲインが減少し、所定の閾値TH4を超えた領域ではゲインが一定に設定される。テーブルT5では、ヘッド圧が所定の閾値TH9以下の領域では、その増加量に対してゲインの増加量が相対的に大きく、ヘッド圧が所定の閾値TH6を超えこの所定の閾値TH6より大きい所定の閾値TH7以下の領域ではヘッド圧の増加量に対するゲインの増加量が閾値TH6以下のときよりも抑制され、さらに所定の閾値TH7を超えこの所定の閾値TH7より大きい所定の閾値TH8以下の領域ではヘッド圧の増加量に対するゲインの増加量が閾値TH7以下のときよりも抑制され、かつ、所定の閾値TH8を超えた領域ではゲインが一定に設定される。テーブルT6では、レバーの操作量により設定されるパイロット圧が所定の閾値TH9以下の相対的に小さいときにはその増加に比例して開口面積が増加し、所定の閾値TH9を超えこの所定の閾値TH9より大きい所定の閾値TH10以下の領域ではパイロット圧の増加量に対する開口面積の増加量が所定の閾値TH9以下のときよりも増加され、この所定の閾値TH10を超えた領域では開口面積が一定に設定される。
【0053】
また、図5に戻って、ポンプ流量制御部109は、レバーによるブーム上げ操作量、すなわちこの操作量に応じて設定されるパイロット圧と、弁制御部108から出力されたブーム用制御弁26,28を動作させる出力と、所定の流量配分とのそれぞれに基づいて、ポンプ必要流量を設定する。さらに具体的に、このポンプ流量制御部109は、図7に示されるように、ブーム上げ操作のレバーの操作量により設定されるパイロット圧に応じて所定のテーブル(変換器)T7により設定される開口面積を弁制御部108から出力されたブーム用制御弁26,28の動作を制限する出力により除した値と、1と所定のベース流量係数との差分を積算した値に対して、上記のベース流量係数を加算するとともに、この加算した値と、最大流量に所定の流量配分を積算した値とを積算した値を、ポンプ必要流量として出力する。テーブルT7では、テーブルT6と同様に、レバーの操作量により設定されるパイロット圧が所定の閾値TH9以下の相対的に小さいときにはその増加に比例して開口面積が増加し、所定の閾値TH9を超えこの所定の閾値TH9より大きい所定の閾値TH10以下の領域ではパイロット圧の増加量に対する開口面積の増加量が所定の閾値TH9以下のときよりも増加され、この所定の閾値TH10を超えた領域では開口面積が一定に設定される。
【0054】
したがって、上記の透かし動作時には、図1に示されるように、ブームシリンダ7c1,7c2のロッド側から作動油(作動油の少なくとも一部)がブリードオフ回路Cのブリードオフ弁66を介してタンク21へと戻され、メインポンプ12,13からブームシリンダ7c1,7c2のロッド側への作動油の供給がブーム用制御弁26,28により遮断(低減)され、代わりに、バキューム発生のおそれが生ずるブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側には、メイクアップ回路Mのタンク通路56にスプリング付き逆止弁57のスプリングのスプリング力により設定された背圧が発生することで、スプリング付き逆止弁57のスプリング付勢圧を超えない圧力で、メイクアップ回路Mを介してタンク21の作動油がブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側に補充され、バキューム発生を防止する。また、メインポンプ12,13は、ブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側に供給する作動油が不要または少なく、その吐出するポンプ流量が抑制される。
【0055】
このように、作業装置6が掘削状態であることを検出したときに、少なくとも作業装置6を上方に動作させる、すなわちブーム上げ操作のレバーの操作量に応じて、ブームシリンダ7c1,7c2にメインポンプ12,13から供給される作動油を低減(遮断)させ、ブームシリンダ7c1,7c2のロッド側からの高圧油(戻り油の少なくとも一部)をタンク21にバイパスさせるとともに、メインポンプ12,13から吐出されるポンプ流量を低減させ電磁比例式のブーム用制御弁26,28の作動を制限し、かつ、ブームシリンダ7c1,7c2のヘッド側にタンク21から作動油を補充することで、掘削の際に作業装置6を上方に動作させて負荷を逃がす透かし動作時のエネルギ損失および圧力損失を低減できる。
【0056】
また、上記の構成では、作業装置6を自動で透かし動作させず、オペレータが所望するときに自らの操作によって透かし動作をさせることができるので、自動透かし動作によって掘削することが容易でない床掘りなどの掘削作業を効率よく行なうことができる。
【0057】
さらに、ブームシリンダ7c1,7c2のパイロット圧、ポンプ圧およびブームシリンダ7c1,7c2のヘッド圧に基づき車載コントローラCR(動作検出部107)が作業装置6の動作状態を検出するので、作業装置6が掘削状態であることを、簡素な構成で容易に検出できる。
【0058】
また、蓄圧回路Aと再生回路Bとを切離して、油圧ショベルHEの作業装置6を下降させる際に、ブームシリンダ7c1のヘッド側から押し出された作動油を制御弁64により第1のアキュムレータ46に蓄圧すると同時に、ブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された作動油をメイン制御弁65によりブームシリンダ7c1,7c2のロッド側に再生するので、第1のアキュムレータ46を蓄圧作用させているときも再生流量分のポンプ流量を節約でき、制御弁64,65を用いる簡素な構成で他の油圧アクチュエータで必要とするメインポンプ流量を含む必要なポンプ流量を容易に確保できるとともにメインポンプ12,13を小型化できる。
【0059】
さらに、片側のブームシリンダ7c1のヘッド側油を第1のアキュムレータ46への蓄圧に回すことで、すなわち作業装置6の荷重を2本のブームシリンダ7c1,7c2に分散させるのではなく、1本のブームシリンダ7c1に集中させることで、エネルギ密度を増すことができ、ブームシリンダ7c1から発生する圧力を高めて、第1のアキュムレータ46への蓄圧エネルギを増すことができ、言い換えれば、第1のアキュムレータ46やアシストモータ15などのコンポーネントを小型化でき、コストを抑えられ、レイアウトが容易になる。
【0060】
また、制御弁64は、レバーの操作量と、第1のアキュムレータ46のアキュムレータ圧とに応じてブームシリンダ7c1のヘッド側と第1のアキュムレータ46との連通量を変化させるので、ブーム下げ操作の操作性を犠牲にすることなくより適切に第1のアキュムレータ46に蓄圧でき、操作性とエネルギ蓄圧とを同時に満たすことができる。
【0061】
さらに、ブームシリンダ7c1,7c2と他の油圧アクチュエータ(旋回モータ3m、スティックシリンダ8c、バケットシリンダ9cなど)との連動操作時に、片側のブームシリンダ7c2のヘッド側から押し出された作動油をブームシリンダ7c1,7c2のロッド側に再生するので、その再生分の油量をメインポンプ12,13から他の油圧アクチュエータに回すことができ、連動操作時の速度低下を防止でき、連動操作性を向上させることができる。
【0062】
また、複数の回路機能を単一ブロックに集約させたブームエネルギ・リカバリ弁31により、レイアウトが容易となり、組立工数の低減によるコスト低減が可能となる。
【0063】
さらに、一方のブームシリンダ7c1に荷重を集中させることで、第1のアキュムレータ46の蓄圧エネルギを増すことができ、小型のアキュムレータで大きなアシストができるため、コストを抑え、機体レイアウトをコンパクトにまとめることができる。
【0064】
しかも、第1のアキュムレータ46から吐出される蓄圧作動油をアシストモータ15に供給してポンプ12,13の動作をアシストするので、この蓄圧作動油を有効に利用して、ポンプ12,13を動作させる搭載エンジン11の負荷をより軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、流体圧回路または作業機械を製造、販売などする事業者にとって産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0066】
CR コントローラである車載コントローラ
HE 作業機械としての油圧ショベル
M メイクアップ回路
1 機体
6 作業装置
7 ブーム
7c1,7c2 流体圧シリンダとしてのブームシリンダ
8 スティック
9 バケット
12,13 ポンプとしてのメインポンプ
21 タンク
26,28 制御バルブであるブーム用制御弁
61,78 逆止弁
66 バイパスバルブとしてのブリードオフ弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8