【実施例】
【0033】
実施例1:培養中の気泡の発生に関わる分泌タンパク質の選別
本実施例においては、気泡の発生原因となる分泌タンパク質を選別するために、下記の方法を用いて実験を行った。
まず、コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11016P(前記微生物は、KFCC10881で公開されていて、ブタペスト条約下である国際寄託機関に再寄託されてKCCM11016Pという寄託番号が与えられた。大韓民国登録特許第10−0159812号)菌株を1Lの発酵槽を用いて培養した後、発酵過程において生成された気泡のみを分離して15mlの試験管に移して濃縮させた。
気泡濃縮試料中に含まれているタンパク質の同定のために、界面活性剤入り適量の染色剤を試料に混合した後、8%のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行い、電気泳動の終わったドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲルは、クマシーブルー染色法を用いて染色した。次いで、染色されたタンパク質バンド部位を切開し、トリプシンを処理してペプチドを確保し、LC−MS/MS方法を用いて確保されたペプチドのアミノ酸配列を分析した。
分析されたペプチドを米国国立生物情報センター(NCBI)が提供するブラスト検索を通じてコリネバクテリウム属微生物にある遺伝子として同定した。同定されたペプチドの内から相対的に検出量が最も多い3種を選んで当該タンパク質の遺伝子を最終的に選り抜き、選り抜かれた遺伝子は、NCBI許可番号NCgl0336、NCgl0717及びNCgl2912である。
【0034】
実施例2:分泌タンパク質NCgl0336遺伝子の不活性化のための組換えプラスミドの製作
コリネバクテリウム染色体上においてNCgl0336遺伝子を不活性化させる組換えプラスミドの製作のために、米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH Genbank)に報告された塩基配列に基づいて、NCgl0336の配列番号1のアミノ酸及び配列番号2のヌクレオチドの配列を確保した。NCgl0336のオープンリーディングフレームが内部的に失われた遺伝子断片を製造するために、前記配列番号2に基づいてそれぞれ配列番号3〜6のプライマーを製作した。
【0035】
配列番号3:5'−atcctctagagtcgacGAAGCCTCTGCACCTCGCTG−3'
配列番号4:5'−TATAGTTCGGTTCCGCGTCTCCAACGCATCCGGCC−3'
配列番号5:5'−CGGAACCGAACTATACCACCGAGGGACGCATTCTC−3'
配列番号6:5'−atgcctgcaggtcgacGCTCAAACGCACGAGCGAAG−3'
【0036】
コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032ゲノムDNAを鋳型として配列番号3及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6をプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)[Sambrook et al, Molecular Cloning, a Laboratory Manual (1989), Cold Spring Harbor Laboratories]を行った。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件は、95℃における30秒間の変性、50℃における30秒間のアニーリング及び72℃における1分間の重合反応を30回繰り返し行った。
その結果、342bp及び315bpのNCgl0336遺伝子部位が含まれている2対のDNA断片である、NCgl0336−A及びNCgl0336−Bを得た。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅された前記DNA断片は、インフュージョンクローニングキット(インビトロジェン社製)を用いてpDZプラスミド(大韓民国登録特許第10−0924065号)に接合した後、大腸菌DH5αに形質転換し、25mg/Lのカナマイシンが含まれているLB固体培地に塗抹した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて目的とする遺伝子が挿入されたプラスミドに形質転換されたコロニーを選別した後、通常的に知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを得、このプラスミドをpDZ−ΔNCgl0336と命名した。pDZ−ΔNCgl0336は、NCgl0336の遺伝子503bpが失われていた。
【0037】
実施例3:分泌タンパク質NCgl0717遺伝子の不活性化のための組換えプラスミドの製作
コリネバクテリウム染色体上においてNCgl0717遺伝子を不活性化させる組換えプラスミドの製作のために、米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH Genbank)に報告された塩基配列に基づいて、NCgl0717の配列番号7のアミノ酸及び配列番号8のヌクレオチドの配列を確保し、NCgl0717のオープンリーディングフレームが内部的に失われた遺伝子断片を製造するために、前記配列番号8に基づいてそれぞれ配列番号9〜12のプライマーを製作した。
【0038】
配列番号9:5'−CCGGGGATCCTCTAGAGTTCGCGGATAAATGGG−3'
配列番号10:5'−CACGTGAAATTCAGGTCGCGTGGTTCACCTCCGAAG−3'
配列番号11:5'−CTTCGGAGGTGAACCACGCGACCTGAATTTCACGTG−3'
配列番号12:5'−GCAGGTCGACTCTAGAGGTCCCATGATTGTTCTG−3'
【0039】
コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032ゲノムDNAを鋳型として配列番号9及び配列番号10、配列番号11及び配列番号12をプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件は、95℃における30秒間の変性 、50℃における30秒間アニーリング及び72℃における1分間の重合反応を30回繰り返し行った。
その結果、493bp及び491bpのNCgl0717遺伝子部位が含まれている2対のDNA断片である、NCgl0717−A及びNCgl0717−Bを得た。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅された前記DNA断片は、インフュージョンクローニングキット(インビトロジェン社製)を用いてpDZプラスミドに接合した後、大腸菌DH5αに形質転換し、25mg/Lのカナマイシンが含まれているLB固体培地に塗抹した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて目的とする遺伝子が挿入されたプラスミドに形質転換されたコロニーを選別した後、通常的に知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを得、このプラスミドをpDZ−ΔNCgl0717と命名した。pDZ−ΔNCgl0717は、NCgl0717の遺伝子786bpが失われていた。
【0040】
実施例4:分泌タンパク質NCgl2912遺伝子の不活性化のための組換えプラスミドの製作
コリネバクテリウム染色体上においてNCgl2912遺伝子を不活性化させる組換えプラスミドの製作のために、米国国立保健院の遺伝子銀行(NIH Genbank)に報告された塩基配列に基づいて、NCgl2912の配列番号13のアミノ酸及び配列番号14のヌクレオチドの配列を確保し、NCgl2912のオープンリーディングフレームが内部的に失われた遺伝子断片を製造するために、前記配列番号14に基づいてそれぞれ配列番号15〜18のプライマーを製作した。
【0041】
配列番号15:5'−CCGGGGATCCTCTAGAGCTGCAAGAAGTGCGAC−3'
配列番号16:5'−CTCGTAGTCGCTAGCACCTATTACGGGAGGTC−3'
配列番号17:5'−GACCTCCCGTAATAGGTGCTAGCGACTACGAG−3'
配列番号18:5'−GCAGGTCGACTCTAGACCCGAGCTATCTAACAC−3'
【0042】
コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032ゲノムDNAを鋳型として配列番号15及び配列番号16、配列番号17及び配列番号18をプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件は、95℃における30秒間の変性 、50℃における30秒間アニーリング及び72℃における1分間の重合反応を30回繰り返し行った。
その結果、444bp及び636bpのNCgl2912遺伝子部位が含まれている2対のDNA断片である、NCgl2912−A及びNCgl2912−Bを得た。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅された前記DNA断片は、インフュージョンクローニングキット(インビトロジェン社製)を用いてpDZプラスミドに接合した後、大腸菌DH5αに形質転換し、25mg/Lのカナマイシンが含まれているLB固体培地に塗抹した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて目的とする遺伝子が挿入されたプラスミドに形質転換されたコロニーを選別した後、通常的に知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを得、このプラスミドをpDZ−ΔNCgl2912と命名した。pDZ−ΔNCgl2912は、NCgl2912の遺伝子128bpが失われていた。
【0043】
実施例5:リシンの産生菌株KCCM11016P由来の分泌タンパク質遺伝子の不活性化菌株の製作及び評価
前記実施例2、3及び4において製作した3種の組換えプラスミド(pDZ−ΔNCgl0336、pDZ−ΔNCgl0717及びpDZ−ΔNCgl2912)を電気パルス法を用いてコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11016Pにそれぞれ形質転換し、相同組換えにより染色体上において目的遺伝子が不活性化された菌株をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法を用いて製造し、それぞれKCCM11016P−ΔNCgl0336、KCCM11016P−ΔNCgl0717、KCCM11016P−ΔNCgl2912と命名した。
前記3種の菌株及び対照群を下記の種培地25mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに接種し、30℃において20時間かけて200rpmにて振とう培養した。次いで、1mlの種培養液を下記の産生培地24mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに接種し、37℃において96時間かけて200rpmにて振とう培養した。前記種培地及び産生培地の組成は、それぞれ下記の通りである。
【0044】
<種培地(pH7.0)>
葡萄糖20g、(NH4)2SO410g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、ヨウ素1.5g、KH2PO44g、K2HPO48g、MgSO4・7H2O0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl1000μg、カリシウム−パントテン酸2000μg、ニコチンアミド2000μg(蒸留水1lを基準とする)
<産生培地(pH7.0)>
葡萄糖100g、(NH4)2SO440g、大豆タンパク質2.5g、コーンスティープ固形分5g、ヨウ素3g、K2HPO41g、MgSO4・7H2O0.5g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1000μg、カリシウム−パントテン酸2000μg、ニコチンアミド3000μg、CaCO330g(蒸留水1lを基準とする)
培養を終えた後、培養液をマスシリンダに移して生成された気泡の高さを測定し、HPLCを用いて分析したL−リシンの濃度を下記表1に示す。表1の結果は、3回繰り返し実験した結果値であり、平均値をもって産生能を評価した。
【表1】
【0045】
表1に示すように、母菌株KCCM11016PからNCgl0336、NCgl0717及びNCgl2912遺伝子が不活性化された菌株においてリシンの産生能が約6%増加した。これとともに、気泡の発生は、母菌株に比べてNCgl0336、NCgl0717及びNCgl2912遺伝子がそれぞれ不活性化された菌株において約6〜15%低減されることが分かる。
したがって、コリネバクテリウム属微生物においてリシンの産生に不要な主たる分泌タンパク質を不活性化させることにより、培養中に発生する気泡が有効に制御することができ、これにより、L−リシンの産生能を向上させることができるということを確認した。
【0046】
実施例6:L−リシンの産生菌株KCCM10770P由来の分泌タンパク質不活性化菌株の製作及び評価
リシン生合成経路が強化されたL−リシンの産生菌株コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM10770P(大韓民国登録特許第10−0924065号)において分泌タンパク質の不活性化効果が前記実施例5の実験結果と略同じであるか否かを比較するために、3種の分泌タンパク質が不活性化された菌株を前記実施例5の方法と同様にして製造して、KCCM10770P−ΔNCgl0336、KCCM10770P−ΔNCgl0717、KCCM10770P−ΔNCgl2912と命名し、L−リシンの産生能とともに気泡の発生量を比較した。
前記菌株のリシンの産生能を比較するために、各対照群とともに実施例6の方法と同様にして培養し、培養を終えた後、気泡の発生量は実施例6の方法と同様にして測定し、HPLCを用いて分析したL−リシンの濃度は、下記表2に示す。表2の結果は、3回繰り返し実験結果値であり、平均値をもって産生能を評価した。
【表2】
【0047】
表2に示すように、母菌株KCCM10770PからNCgl0336、NCgl0717、NCgl2085、NCgl2912遺伝子がそれぞれ不活性化された菌株においてリシンの産生能が約4%増加した。これとともに、気泡の発生は、母菌株に比べてNCgl0336、NCgl0717、NCgl2085、NCgl2912遺伝子がそれぞれ不活性化された菌株において約4〜18%低減されることが分かる。
したがって、コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM10770P(大韓民国登録特許第10−0924065号)においても、前記実施例6と同様に、リシンの産生に不要な主たる分泌タンパク質を不活性化させることにより、培養中に発生する気泡を有効に制御することができ、これにより、L−リシンの産生能を向上させることができるということを確認した。
【0048】
実施例7:L−リシンの産生菌株KCCM11347P由来の分泌タンパク質不活性化菌株の製作及び評価
人工変異法により製作されたコリネバクテリウム・グルタミクムL−リシンの産生菌株KCCM11347P(前記微生物は、KFCC10750で公開されていて、ブタペスト条約下の国際寄託機関に再寄託されて、KCCM11347Pが与えられた。大韓民国登録特許第10−0073610号)においても分泌タンパク質の不活性化の効果を確認するために、3種の分泌タンパク質が不活性化された菌株を前記実施例5、6の方法と同様にして製造してKCCM11347P−ΔNCgl0336、KCCM11347P−ΔNCgl0717、KCCM11347P−ΔNCgl2912と命名し、L−リシンの産生能とともに気泡の発生量を比較した。
前記菌株のリシンの産生能を比較するために、各対照群とともに実施例5、6の方法と同様にして培養し、培養を終えた後、気泡の発生量は実施例5、6の方法と同様にして測定し、HPLCを用いて分析したL−リシンの濃度は、下記表3に示す。表3の結果は、3回繰り返し実験結果値であり、平均値をもって産生能を評価した。
【表3】
【0049】
表3に示すように、母菌株KCCM11347PからNCgl0336、NCgl0717及びNCgl2912遺伝子が不活性化された菌株においてリシンの産生能が約5%増加した。これとともに、気泡の発生は、母菌株に比べてNCgl0336、NCgl0717及びNCgl2912遺伝子がそれぞれ不活性化された菌株において約4〜15%低減されることが分かる。
したがって、コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11347P(大韓民国登録特許第94−0001307号)においても前記実施例5、6と同様にリシンの産生に不要な主たる分泌タンパク質を不活性化させることにより、培養中に発生する気泡を有効に制御することができ、これにより、L−リシンの産生能を向上させることができるということを確認した。
【0050】
実施例8:L−リシンの産生菌株CJ3P由来の分泌タンパク質不活性化菌株の製作及び評価
野生株に3種の変異[pyc(P458S)、hom(V59A)、lysC(T311I)]を組み込んでL−リシンの産生能を有するコリネバクテリウム・グルタミクムCJ3P(Binder et al.Genome Biology 2012,13:R40)においても前記実施例5、6、7と同様に分泌タンパク質の不活性化の効果を調べるために、3種の分泌タンパク質が不活性化された菌株を前記実施例5、6、7の方法と同様にして製造してCJ3P−ΔNCgl0336、CJ3P−ΔNCgl0717、CJ3P−ΔNCgl2912と命名し、L−リシンの産生能とともに気泡の発生量を比較した。
前記菌株のリシンの産生能を比較するために、各対照群とともに実施例5、6、7の方法と同様にして培養し、培養を終えた後、気泡の発生量は実施例5、6、7の方法と同様にして測定し、HPLCを用いて分析したL−リシンの濃度は、下記表4に示す。表4の結果は、3回繰り返し実験結果値であり、平均値をもって産生能を評価した。
【表4】
【0051】
表4に示すように、母菌株CJ3PからNCgl0336、NCgl0717、NCgl2912遺伝子が不活性化された菌株においてリシンの産生能が約8%増加した。これとともに、気泡の発生は、母菌株に比べてNCgl0336、NCgl0717、NCgl2912遺伝子がそれぞれ不活性化された菌株において約5〜17%低減されることが分かる。
したがって、コリネバクテリウム・グルタミクムCJ3Pにおいても、前記実施例5、6、7の実験結果と同様に、リシンの産生に不要な主たる分泌タンパク質を不活性化させることにより、培養中に発生する気泡を有効に制御することができ、これにより、L−リシンの産生能を向上させることができるということを確認した。
【0052】
実施例9:L−リシンの産生菌株KCCM11016P由来の分泌タンパク質同時不活性化菌株の製作及び評価
L−リシンの産生菌株コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11016Pにおける分泌タンパク質の同時不活性化による効果を確認するために、分泌タンパク質遺伝子が同時に不活性化された3種の菌株を前記実施例5、6、7、8の方法と同様にして製造して、各遺伝子を組み合わせて不活性化させた菌株をKCCM11016P−ΔNCgl0336/ΔNCgl0717、KCCM11016P−ΔNCgl0336/ΔNCgl2912、KCCM11016P−ΔNCgl0717/ΔNCgl2912と命名し、L−リシンの産生能とともに気泡の発生量を比較した。
前記菌株のリシンの産生能を比較するために、対照群とともに実施例5、6、7、8の方法と同様にして培養し、培養を終えた後、気泡の発生量は、実施例5、6、7、8の方法と同様にして測定し、HPLCを用いて分析したL−リシンの濃度は、下記表5に示す。表5の結果は、3回繰り返し実験結果値であり、平均値をもって産生能を評価した。
【表5】
【0053】
表5に示すように、母菌株KCCM11016PからNCgl0336/NCgl0717、NCgl0336/NCgl2912、NCgl0717/NCgl2912遺伝子が同時に不活性化された菌株においてリシンの産生能が約5%増加した。これとともに、気泡の発生は、母菌株に比べてNCgl0336/NCgl0717、NCgl0336/NCgl2912、NCgl0717/NCgl2912遺伝子が同時に不活性化された菌株において約10〜14%低減されることが分かる。
したがって、コリネバクテリウム属微生物においてリシンの産生に不要な主たる分泌タンパク質を同時に不活性化させることにより、培養中に発生する気泡を有効に制御することができ、これにより、L−リシンの産生能を向上させることができるということを確認した。
【0054】
実施例10:L−リシンの産生菌株KCCM11016P由来の分泌タンパク質不活性化統合菌株の製作及び評価
L−リシンの産生菌株コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11016Pにおける分泌タンパク質の不活性化による統合効果を確認するために、3種の分泌タンパク質がいずれも不活性化された菌株を前記実施例5、6、7、8、9の方法と同様にして選別してKCCM11016P−ΔNCgl0336/ΔNCgl0717/ΔNCgl2912と命名し、L−リシンの産生能とともに気泡の発生量を比較した。
前記菌株のリシンの産生能を比較するために、対照群とともに実施例5、6、7、8、9の方法と同様にして培養し、培養を終えた後、気泡の発生量は、実施例5、6、7、8、9の方法と同様にして測定し、HPLCを用いて分析したL−リシンの濃度は、下記表6に示す。表6の結果は、3回繰り返し実験結果値であり、平均値をもって産生能を評価した。
【表6】
【0055】
表6に示すように、母菌株KCCM11016PからNCgl0336、NCgl0717及びNCgl2912遺伝子がいずれも不活性化された菌株においてリシンの産生能が約7%増加し、気泡の発生は、母菌株に比べてNCgl0336、NCgl0717及びNCgl2912遺伝子がいずれも不活性化された菌株において約17%低減されることが分かる。
したがって、コリネバクテリウム属微生物においてリシンの産生に不要な主たる分泌タンパク質をいずれも不活性化させることにより、培養中に発生する気泡を有効に制御することができ、これにより、L−リシンの産生能を向上させることができるということを確認した。
上記の結果から、L−リシンの産生菌株における主たる分泌タンパク質の不活性化は、発酵中に過剰に生成される気泡を制御することにより、菌体の生長とともにL−リシンの産生能を増加させるのに効果があるということを確認し、前記菌株、KCCM11016P−ΔNCgl0336、KCCM11016P−ΔNCgl0717、及びKCCM11016P−ΔNCgl2912をそれぞれCA01−2281、CA01−2279、及びCA01−2280と命名し、CA01−2279及びCA01−2280は2013年11月22日付けで、CA01−2281は2013年12月13日付けで韓国微生物保存センター(KCCM)に国際寄託してそれぞれKCCM11481P(CA01−2279)、KCCM11482P(CA01−2280)、及びKCCM11502P(CA01−2281)という寄託番号が与えられた。
【表7】
【表8】
【表9】