(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493929
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】電子式警音器
(51)【国際特許分類】
G10K 9/122 20060101AFI20190325BHJP
B60Q 5/00 20060101ALI20190325BHJP
G10K 9/12 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
G10K9/122 151
B60Q5/00 670B
G10K9/12 C
G10K9/122 140
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-37879(P2017-37879)
(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公開番号】特開2018-146601(P2018-146601A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年9月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】内村 克則
(72)【発明者】
【氏名】外山 耕一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 芳生
(72)【発明者】
【氏名】百々 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】川村 寿彦
【審査官】
堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−047007(JP,U)
【文献】
特開2007−316450(JP,A)
【文献】
実開平06−078998(JP,U)
【文献】
特開2012−148657(JP,A)
【文献】
特開平08−278368(JP,A)
【文献】
特開2013−097126(JP,A)
【文献】
特開2012−017036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 9/122
B60Q 5/00
G10K 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状振動体と、当該振動体を起振する圧電体と、一部に開口が設けられ前記振動体の前方を覆って当該振動体との間に共鳴空間を形成する共鳴器と、前記共鳴器と前記開口によって連通する緩衝室と、前記緩衝室から外周側の後方へ反転湾曲する第1通路と、前記第1通路に続いて外周側の前方ないし後方へ反転湾曲する3つ以上の第2通路を備え、最外周の第2通路が前方へ開放し、かつ前記共鳴器の前方に前方へ開放する筒状の中間体を設け、さらに前記中間体を前方から覆うようにカバー体を設けて、前記中間体に形成した筒状防水壁の筒内に進入させた前記カバー体の中心部の周囲に前記第1通路が形成されるとともに、前記中心部の先端と前記開口との間に前記緩衝室が形成され、前記カバー体に形成されて前記中間体の防水壁の筒内に進入させた筒状防水壁によって、前記共鳴器の開口を中心とする同心状に前記第2通路が形成され、前記最外周の第2通路の開口に、前方から至る雨水の勢いを減殺するルーバーが設けられており、かつ前記最外周の第2通路の開口に近い警音器本体の最下位置に排水孔が設けられている電子式警音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子式警音器に関し、特に雨水の浸入を効果的に防止できる電子式警音器の構造改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子式警音器は圧電体によって板状振動体を起振することによって警報音(車両接近音を含む)を発音するもので、従来の電磁式警音器に比してコンパクトかつ寿命も長い等の特徴がある。しかし、車両に搭載された際に警音器内部に雨水が浸入すると圧電体による振動体の起振が損なわれて発音の周波数が変動しあるいは発音しないおそれがある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1においては、超音波透過性の防水シートを警音器の開口を覆うように設けて、雨水の侵入を防止しつつ超音波は警音器外へ出力されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−148657
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記従来の構造を、超音波ではなく可聴音を出力する警音器に適用すると、防水シートで警報音が減衰してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、防水シート等を設けることなく雨水の浸入を効果的に防止できる電子式警音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、板状振動体(51)と、当該振動体(51)を起振する圧電体(52)と、一部に開口(71)が設けられ前記振動体(51)の前方を覆って当該振動体(51)との間に共鳴空間(S)を形成する共鳴器(7)と、前記共鳴器(7)と前記開口(71)によって連通する緩衝室(BR)と、前記緩衝室(BR)から外周側の後方へ反転湾曲する第1通路(P1)と、前記第1通路(P1)に続いて外周側の前方ないし後方へ反転湾曲する3つ以上の第2通路(P2,P3,P4)を備え、最外周の第2通路(P4)が前方へ開放し、かつ前記共鳴器(7)の前方に前方へ開放する筒状の中間体(6)を設け、さらに前記中間体(6)を前方から覆うようにカバー体(8)を設けて、前記中間体(6)に形成した筒状防水壁(621)の筒内に進入させた前記カバー体(8)の中心部(82)
の周囲に前記第1通路(P1)が形成され
るとともに、前記中心部(82)の先端と前記開口(71)との間に前記緩衝室(BR)が形成され、前記カバー体(8)に形成されて前記中間体(6)の防水壁(622、633)の筒内に進入させた筒状防水壁(83、84)によって、前記共鳴器(7)の開口(71)を中心とする同心状に前記第2通路(P2,P3,P4)が形成され、前記最外周の第2通路(P4)の開口に、前方から至る雨水の勢いを減殺するルーバー(81)が設けられており、かつ前記最外周の第2通路(P4)の開口に近い警音器本体の最下位置に排水孔(632)が設けられている。
【0008】
本第1発明において、前方へ開放する最外周の第2通路の開口から警音器本体内に雨水が浸入しても、第2通路から第1通路へとカバー体中心部および防水壁によって複数の反転湾曲する通路が警音器中心の緩衝室に向かって形成されているから、緩衝室内に雨水が勢いを保って直接浸入することはなく、雨水が開口を経て共鳴器内へ浸入することは効果的に防止される。また、前方へ開放する最外周の第2通路の開口から雨水が浸入しようとしても、雨水の大部分はルーバーの羽根に当たって最外周の第2通路内への浸入が防止される。さらに、カバー体中
心部や防水壁を伝って自重で落下した雨水が排水孔から効率的に警音器本体外へ排出される。
【0013】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の電子式警音器によれば、防水シート等を設けることなく雨水の浸入を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1のII−II線に沿った電子式警音器の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
図1には電子式警音器の外観を示す。
図1において、警音器本体は、車両に設置された状態で前後方向(
図1の左右方向)へ開放する円筒状の金属製ケーシング1を備えている。なお、「前後方向」は絶対的な方向を示すものではなく、警音器本体の設置状態によって警音器の音が発せられる方向を前方とする。ケーシング1からは前方へ漸次拡径する樹脂製の中間体6が延び、その円形開口にカバー体8が覆着されている。カバー体8にはその前面最外周部の全周にルーバー81が形成されている。
【0018】
図2には
図1のII−II線に沿った警音器の垂直断面を示す。
図2において、ケーシング1の筒内には前方へ開放する容器状の樹脂製ホルダ2が保持されており、ホルダ2の底壁上にはこれと平行に、警報信号発生回路やアンプ回路等で構成される警音回路を設けた回路基板(図示略)が配設されている。ホルダ2の底壁外面には取付用のステー22がボルト結合されている。
【0019】
ホルダ2の開口を閉鎖して金属板製の振動体51が張設されており、振動体51の裏面中心部に円形の圧電体52が貼り合わせてある。圧電体52の一方の電極(図示略)と、圧電体52の他方の電極(図示略)に通じる振動体51にはそれぞれ出力線(図示略)が回路基板から延びている。また、回路基板上の警音回路は、ケーシング1外に設けられた給電コネクタ11に接続されている。ここで、ケーシング1内に回路基板を設けない場合もあり、この場合には、給電コネクタ11は外部に設けた回路基板と接続するものとなる。
【0020】
上記中間体6は内筒体62と外筒体63を備えている。内筒体62は前方へ開放する筒状防水壁621,622を内外に有する二重容器状に成形されている。内筒体62の底壁外周縁は振動体51の外周縁を狭圧しつつホルダ2の開口に覆着されて、ここでケーシング1の開口縁によってかしめ固定されている。内筒体62の防水壁621内に位置する底壁中心部は筒内へ山形状に屈曲突出して、振動体51との間に共鳴空間Sを形成し、共鳴器7を構成している。共鳴器7を構成する上記底壁中心部には頂部に円形の開口71が形成されている。
【0021】
内筒体62の周囲は外筒体63で囲まれている。外筒体63は相対的に浅い容器状に形成され、その底壁の開口631が内筒体62の防水壁622外周に嵌着されている。外筒体63の外周筒壁(防水壁)633は前外方へ拡開して、全体が反射板となっている。
【0022】
中間体6の前方を覆ってカバー体8が設けられている。カバー体8は外筒体63の開口と同径の円形をなし、その一端閉鎖の筒状に成形された中心部82は内筒体62の防水壁621内のほぼ中間位置に進入している。また、カバー体8の外周部には後方へ突出する筒状の防水壁83が形成されている。防水壁83の筒端は内筒体62の防水壁621,622間のほぼ中間位置に進出しており、防水壁83は筒端に向けて漸次薄肉となっている。
【0023】
カバー体8の最外周全周に形成されたルーバー81には、
図2に示すように、後方へ向けて下降傾斜する複数の羽根811が上下方向へ等間隔で形成されている。ルーバー81の内方の、カバー体8裏面から後方へ突出する筒状防水壁84が、内筒体62の防水壁622と外筒体63の外周筒壁(防水壁)633との間に進入している。そして、ルーバー81の設置部に形成された開口は、前方直線方向から見るとルーバー81の上下の羽根811の重なりによって閉鎖されている。また、警音器本体の最下位置にあるルーバー81の近くの外周筒壁633には排水口632が形成されている。
【0024】
以上の構造によって、電子式警音器内には、内筒体62の防水壁621とカバー体8との間に、開口71によって共鳴器7に連通している所定容量の緩衝室BR(
図1の鎖線で区画された空間)が形成されている。そして、防水壁621の筒内に進入したカバー体8の中心部82によって、緩衝室BRから外周側の後方へ反転湾曲する第1通路P1が形成され、さらに防水壁621の筒外で防水壁622の筒内に進入した防水壁83によって第1通路P1に続いて外周側へ複数の第2通路P2,P3,P4が形成されている。すなわち、第1通路P1に連通して外周側の前方へ反転湾曲する最内周第2通路P2、さらに最内周第2通路P2に続いて後方へ反転湾曲する内周部第2通路P3、そして内周部第2通路P3に続いてさらに前方へ反転湾曲する最外周第2通路P4が、共鳴器7の開口71を中心に警音器内に同心状に形成されている。
【0025】
警音回路の出力信号が圧電体52に入力すると、振動体51から音出力が発せられる。この音出力は共鳴器7内で警報に適した特定周波数成分が増幅され、増幅された警報音は開口71を経て緩衝室BRから反転湾曲する第1通路P1に案内されて径方向外方の後方へ向きを変え、各第2通路P2〜P4を経て径方向外方の前方へ向けて反射出力される。
【0026】
このようにして、共鳴器7から出力された警報音は、漸次拡径する第1通路P1および第2通路P2〜P4によるメガホン効果によって共鳴増幅されつつ十分な指向性を有して前方へ効率的に出力される。この際、警報音はルーバー81の羽根811間の間隙を経て問題なく前方へ送出される。ここで、メガホン効果を発揮する第1通路P1と第2通路P2〜P4は径方向で直列しているから、警音器本体が前後方向へ大きく突出することはなくコンパクトな形状になる。
【0027】
車両走行中等に車両前方に向けた電子式警音器に対して、前方へ開放する最外周第2通路P4の開口から雨水が浸入しようとしても、開口はルーバー81の羽根811によって前方直線方向から見て閉じられているから、雨水の大部分は羽根811に当たって第2通路P4内への浸入が防止される。また譬え進入しても、第2通路P3,P2から第1通路P1へとカバー体中心部82および防水壁621,622,83,84によって複数の反転湾曲する通路P1〜P4が警音器中心の緩衝室BRに向かって形成されているから、緩衝室BR内に雨水が勢いを保って直接浸入することはない。これにより、雨水が開口71を経て共鳴器7内へ浸入することが効果的に防止される。なお、上側のルーバー81を通過した雨水は勢いが削がれ、上側の第2通路P4,P3,P2から第1通路P1を経て下側の第2通路P2,P3,P4へその通路壁を構成するカバー体中心部82および防水壁621,622,83,84を伝って自重で落下し、最下位置に開口する排水孔632から警音器本体外へ排出される。
【0028】
なお、上記実施形態では第2通路を複数設けたが、最外周の第2通路一つだけでも良い。
【符号の説明】
【0029】
51…振動体、52…圧電体、6…中間体、621,622,633…防水壁、632…排水孔、7…共鳴器、71…開口、8…カバー体、81…ルーバー、82…カバー体中心部、83,84…防水壁、BR…緩衝室、P1…第1通路、P2,P3,P4…第2通路、S…共鳴空間。