(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術の転がり軸受の製造工程にあっては、内輪と外輪とをずらしつつ、複数の転動体を内輪と外輪との間に挿入するため、作業が煩雑であり、多大な作業工数を必要する。また、複数の転動体を均等に配列するために、例えば従来技術に記載のエア噴射装置等の専用の製造装置が必要となり、多大な設備費用を必要とする。したがって、転がり軸受の製造コストが高コストとなるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、簡単な作業で製造でき、低コスト化ができ
る軸受装置の製造方
法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の軸受装置
の製造方法は、シャフトと、前記シャフトの軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受部と、を備え、前記一対の転がり軸受部は、それぞれ前記シャフトの中心軸と同軸上に配置された内輪と、前記シャフトの径方向の外側から前記内輪を囲繞する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に保持された複数の転動体と、を備え、前記径方向における前記転動体の最内部と前記中心軸との離間距離を第一離間距離とし、前記径方向における前記転動体の最外部と前記中心軸との離間距離を第二離間距離とし、前記軸方向における前記一対の転がり軸受部の間に向かう方向を前記軸方向の内側とし、前記軸方向における前記一対の転がり軸受部の間から離れる方向を前記軸方向の外側としたとき
、前記一対の転がり軸受部の前記内輪は、それぞれ前記軸方向の内側端部の外半径が、前記第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、前記軸方向の内側から外側に向かって前記第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成され
た内輪転動面を備え、前記一対の転がり軸受部の前記外輪は、それぞれ前記軸方向の外側端部の内半径が、前記第二離間距離よりも大きく形成されるとともに、前記軸方向の外側から内側に向かって前記第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成され
た外輪転動面を備え、前記内輪の外半径は、前記内輪転動面と前記転動体との当接部から、前記内側端部に向かって全体にわたって漸次小さくなり、前記外輪の内半径は、前記外輪転動面と前記転動体との当接部から、前記外側端部に向かって全体にわたって漸次大きくなり、前記一対の転がり軸受部の外輪は、それぞれ外径が前記軸方向にわたって一様になるように形成され、前記一対の転がり軸受部は、面対称形状となって
おり、前記一対の転がり軸受部のうち、第一転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか一方部材を配置する第一配置工程と、前記第一転がり軸受部の一方部材に対して、前記軸方向から前記複数の転動体を挿入して配置する第一転動体配置工程と、前記複数の転動体に対して、前記第一転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか他方部材を前記軸方向から挿入して配置する第二配置工程と、前記一対の転がり軸受部のうち、第二転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか他方部材を、前記第一転がり軸受部の他方部材に対して軸方向に連ねて配置する第三配置工程と、前記第二転がり軸受部の他方部材に対して、前記軸方向から前記複数の転動体を挿入して配置する第二転動体配置工程と、前記複数の転動体に対して、前記第二転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか一方部材を前記軸方向から挿入して配置する第四配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれかを前記軸方向に沿って相対的に押圧して固定する予圧付加工程と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、内輪は、軸方向の一方側の端部の外半径が第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、軸方向の一方側から他方側に向かって第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成された内輪転動面を備え、外輪は、軸方向の他方側の端部の内半径が第二離間距離よりも大きく形成されるとともに、軸方向の他方側から一方側に向かって第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成された外輪転動面を備えているので、環状に均等配列した転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、環状に均等配列した転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に転動体を簡単に配置できる。これにより、内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入し、複数の転動体を周方向に均等配置するという従来の煩雑な作業や、専用の製造装置が必要ないので、簡単な作業で転がり軸受部を製造できる。したがって、軸受装置の低コスト化ができる。
また、軸方向に沿って金型を移動させて内輪および外輪を形成できるので、例えば鍛造等により低コストに形成できる。
また、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入する場合、内輪と外輪との隙間の大きさにより、挿入可能な転動体の個数や大きさが制限されることとなる。これに対して、本発明によれば、転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に複数の転動体を配置するので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体を配置できる。したがって、軸受装置の剛性を所望に設定することができる。
【0010】
また、一対の転がり軸受部の内輪は、軸方向の内側端部の外半径が第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成された内輪転動面を備え、一対の転がり軸受部の外輪は、軸方向の外側端部の内半径が第二離間距離よりも大きく形成されるとともに、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成された外輪転動面を備えているので、転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に複数の転動体を配置できる。
【0011】
また、シャフトと、前記シャフトの軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受部と、を備え、前記一対の転がり軸受部は、それぞれ前記シャフトの中心軸と同軸上に配置された内輪と、前記シャフトの径方向の外側から前記内輪を囲繞する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に保持された複数の転動体と、を備え、前記径方向における前記転動体の最内部と前記中心軸との離間距離を第一離間距離とし、前記径方向における前記転動体の最外部と前記中心軸との離間距離を第二離間距離とし、前記軸方向における前記一対の転がり軸受部の間に向かう方向を前記軸方向の内側とし、前記軸方向における前記一対の転がり軸受部の間から離れる方向を前記軸方向の外側としたとき
、前記一対の転がり軸受部の前記内輪は、それぞれ前記軸方向の内側端部の外半径が、前記第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、前記軸方向の内側から外側に向かって前記第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成され
た内輪転動面を備え、前記一対の転がり軸受部の前記外輪は、それぞれ前記軸方向の外側端部の内半径が、前記第二離間距離よりも大きく形成されるとともに、前記軸方向の外側から内側に向かって前記第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成され
た外輪転動面を備え、前記内輪の外半径は、前記内輪転動面と前記転動体との当接部から、前記内側端部に向かって全体にわたって漸次小さくなり、前記外輪の内半径は、前記外輪転動面と前記転動体との当接部から、前記外側端部に向かって全体にわたって漸次大きくなり、前記一対の転がり軸受部の外輪は、それぞれ外径が前記軸方向にわたって一様になるように形成され、前記一対の転がり軸受部は、面対称形状となって
おり、前記複数の転動体を転動自在に保持して環状に均等配列可能なリテーナを備え、前記一対の転がり軸受部の前記リテーナは、それぞれ内半径が前記内輪の最大外半径よりも大きく、かつ外半径が前記外輪の最小内半径よりも小さくなるように形成さ
れ、前記一対の転がり軸受部の前記内輪のうち、第一内輪を前記シャフトに挿入して前記軸方向の一方側に配置する第一内輪配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記リテーナのうち、第一リテーナおよび第二リテーナのそれぞれに、前記複数の転動体を転動自在に保持させて環状に均等配列するリテーナ保持工程と、前記第一内輪に、前記軸方向の他方側から前記複数の転動体を前記第一リテーナごと挿入し、前記第一内輪の前記内輪転動面に前記複数の転動体を載置する第一転動体配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記外輪のうち第一外輪を前記第一内輪の前記径方向の外側に配置し、前記第一外輪の前記外輪転動面を前記複数の転動体に当接させる第一外輪配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記外輪のうち第二外輪を前記軸方向の他方側に配置する第二外輪配置工程と、前記第二外輪に、前記軸方向の他方側から前記複数の転動体を前記第二リテーナごと挿入し、前記軸方向の他方側の前記外輪転動面に前記複数の転動体を載置する第二転動体配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記内輪のうち、第二内輪を前記シャフトに挿入して前記軸方向の他方側に配置する第二内輪配置工程と、前記第一内輪および前記第二内輪を前記軸方向に沿って相対的に押圧しつつ、前記シャフトに固定する予圧付加工程と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、一対の転がり軸受部の内輪は、軸方向の内側端部の外半径が第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成された内輪転動面を備えており、一対の転がり軸受部のリテーナは、それぞれ内半径が内輪の最大外半径よりも大きく形成されているので、転動体をリテーナに保持させて環状に均等配列した状態で、リテーナと内輪とが干渉することなく、転動体をリテーナごと軸方向の内側端部から挿入して内輪転動面に載置できる。
また、一対の転がり軸受部の外輪は、軸方向の外側端部の内半径が第二離間距離よりも大きく形成されるとともに、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成された外輪転動面を備えており、一対の転がり軸受部のリテーナは、それぞれ外半径が外輪の最小内半径よりも小さくなるように形成されているので、転動体をリテーナに保持させて環状に均等配列した状態で、リテーナと外輪とが干渉することなく、転動体をリテーナごと軸方向の外側端部から挿入して外輪転動面に載置できる。
これにより、内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入した後、複数の転動体を周方向に均等配列するという従来の煩雑な作業が必要なく、簡単に転がり軸受部を形成できるので、軸受装置の低コスト化ができる。
【0013】
また、前記リテーナは、本体部と、前記本体部に一体的に形成され前記転動体を保持可能な複数組の一対の爪部と、を備え、前記複数組の一対の爪部は、それぞれ前記本体部から前記軸方向に沿って立設されていることを特徴としている。
【0014】
本発明によれば、複数組の一対の爪部がそれぞれ前記本体部から軸方向に沿って立設されているので、複数組の一対の爪部が軸方向に対して傾斜している場合に比べて、リテーナの内半径を極力大きくできるとともにリテーナの外半径を極力小さくすることができる。したがって、リテーナと内輪および外輪とが干渉するのを確実に抑制できるとともに、軸受装置を径方向にも小型化できる。
【0015】
また、前記リテーナの前記本体部を、前記転動体よりも前記軸方向の内側に配置したことを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、転動体よりも軸方向の内側におけるデッドスペースにリテーナの本体部を配置できるので、リテーナの本体部によって軸受装置の薄型化が制限されるのを防止できる。これにより、軸受装置を極力薄型化することができる。
【0017】
また、前記外輪の前記軸方向の外側端部は、前記内輪の前記軸方向の外側端部よりも前記軸方向の内側に配置されていることを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、外輪の軸方向の長さを短縮できるので、軸受装置の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。また、外輪の重量を軽減できるので、軸受装置の共振点を上げることができ、高速な動作にも対応できる。
【0019】
また、前記複数の転動体の中心を含む仮想面から前記内輪の前記軸方向の内側端部までの距離は、前記仮想面から前記内輪の前記軸方向の外側端部までの距離よりも短くなるように形成されていることを特徴としている。
【0020】
本発明によれば、内輪の軸方向の長さを短縮できるので、軸受装置の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。
【0021】
また、前記一対の転がり軸受部の前記内輪のうちいずれか一方の内輪と、前記シャフトとは、互いに一体的に形成されていることを特徴としている。
【0022】
本発明によれば、軸受装置の部品点数をさらに削減できるので、軸受装置のさらなる小型化、軽量化および低コスト化ができる。また、一対の転がり軸受部の内輪のうちいずれか一方の内輪をシャフトに挿入する必要がないので、軸受装置の組立工数を短縮して製造コストを削減できる。したがって、軸受装置のさらなる低コスト化ができる。
【0023】
また、前記内輪および前記外輪は、鍛造により形成されていることを特徴としている。
【0024】
本発明によれば、鍛造により内輪および外輪を低コストに形成できるとともに、切削加工工数を短縮できる。したがって、軸受装置の低コスト化ができる。
【0025】
また、本発明の軸受装置の製造方法は、前記一対の転がり軸受部の前記内輪のうち、第一内輪を前記シャフトに挿入して前記軸方向の一方側に配置する第一内輪配置工程と、前記第一内輪に、前記軸方向の他方側から前記複数の転動体を挿入し、前記第一内輪の前記内輪転動面に前記複数の転動体を載置する第一転動体配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記外輪のうち第一外輪を前記第一内輪の前記径方向の外側に配置し、前記第一外輪の前記外輪転動面を前記複数の転動体に当接させる第一外輪配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記外輪のうち第二外輪を前記軸方向の他方側に配置する第二外輪配置工程と、前記第二外輪に、前記軸方向の他方側から前記複数の転動体を挿入し、前記軸方向の他方側の前記外輪転動面に前記複数の転動体を載置する第二転動体配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記内輪のうち、第二内輪を前記シャフトに挿入して前記軸方向の他方側に配置する第二内輪配置工程と、前記第一内輪および前記第二内輪を前記軸方向に沿って相対的に押圧しつつ、前記シャフトに固定する予圧付加工程と、を備えたことを特徴としている。
【0026】
本発明によれば、軸方向から転動体を挿入する第一転動体配置工程および第二転動体配置工程を備えているので、従来技術のように、内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入した後、複数の転動体を周方向に均等配列するという煩雑な作業が必要ない。このように、従来技術に比べて軸受装置を簡単に製造できるので、製造コストを削減し、軸受装置の低コスト化ができる。
また、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入する場合、内輪と外輪との隙間の大きさにより、挿入可能な転動体の個数や大きさが制限されることとなる。これに対して、本発明によれば、転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入する第一外輪配置工程と、転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入する第二内輪配置工程と、を備えているので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体を配置できる。したがって、軸受装置の剛性を増大させることができる。
【0027】
また、前記一対の転がり軸受部のうち、第一転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか一方部材を配置する第一配置工程と、前記第一転がり軸受部の一方部材に対して、前記軸方向から前記複数の転動体を挿入して配置する第一転動体配置工程と、前記複数の転動体に対して、前記第一転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか他方部材を前記軸方向から挿入して配置する第二配置工程と、前記一対の転がり軸受部のうち、第二転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか他方部材を、前記第一転がり軸受部の他方部材に対して軸方向に連ねて配置する第三配置工程と、前記第二転がり軸受部の他方部材に対して、前記軸方向から前記複数の転動体を挿入して配置する第二転動体配置工程と、前記複数の転動体に対して、前記第二転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれか一方部材を前記軸方向から挿入して配置する第四配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記内輪および前記外輪のいずれかを前記軸方向に沿って相対的に押圧して固定する予圧付加工程と、を備えたことを特徴としている。
【0028】
本発明によれば、第一配置工程から第四配置工程を備えているので、転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に複数の転動体を配置するので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体を配置できる。したがって、軸受装置の剛性を所望に設定することができる。
【0029】
また、前記一対の転がり軸受部の前記内輪のうち、第一内輪を前記シャフトに挿入して前記軸方向の一方側に配置する第一内輪配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記リテーナのうち、第一リテーナおよび第二リテーナのそれぞれに、前記複数の転動体を転動自在に保持させて環状に均等配列するリテーナ保持工程と、前記第一内輪に、前記軸方向の他方側から前記複数の転動体を前記第一リテーナごと挿入し、前記第一内輪の前記内輪転動面に前記複数の転動体を載置する第一転動体配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記外輪のうち第一外輪を前記第一内輪の前記径方向の外側に配置し、前記第一外輪の前記外輪転動面を前記複数の転動体に当接させる第一外輪配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記外輪のうち第二外輪を前記軸方向の他方側に配置する第二外輪配置工程と、前記第二外輪に、前記軸方向の他方側から前記複数の転動体を前記第二リテーナごと挿入し、前記軸方向の他方側の前記外輪転動面に前記複数の転動体を載置する第二転動体配置工程と、前記一対の転がり軸受部の前記内輪のうち、第二内輪を前記シャフトに挿入して前記軸方向の他方側に配置する第二内輪配置工程と、前記第一内輪および前記第二内輪を前記軸方向に沿って相対的に押圧しつつ、前記シャフトに固定する予圧付加工程と、を備えたことを特徴としている。
【0030】
本発明によれば、リテーナ保持工程で予め複数の転動体を第一リテーナおよび第二リテーナに保持させて環状に均等配列した後、第一転動体配置工程および第二転動体配置工程で、第一リテーナおよび第二リテーナごと複数の転動体を内輪転動面および外輪転動面に載置できる。これにより、一度に複数の転動体を均等配列できるので、従来技術のように、内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入した後、複数の転動体を周方向に均等配列するという煩雑な作業が必要ない。
また、一対の転がり軸受部の内輪は、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成された内輪転動面を備えているので、第一転動体配置工程において第一内輪に軸方向の他方側(軸方向の内側)から複数の転動体を挿入したときに、治具等を用いることなく簡単に内輪転動面に載置できる。
また、第一リテーナおよび第二リテーナは、それぞれ内半径が第一内輪および第二内輪の最大外半径よりも大きくなるように形成されているので、第一転動体配置工程および第二内輪配置工程において、第一リテーナおよび第二リテーナと第一内輪および第二内輪とが干渉することなく、転動体を各内輪転動面に配置できる。
また、一対の転がり軸受部の外輪は、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成された外輪転動面を備えているので、第二転動体配置工程において外輪に軸方向の他方側(軸方向の外側)から複数の転動体を挿入したときに、治具等を用いることなく簡単に外輪転動面に載置できる。
また、第一リテーナおよび第二リテーナは、それぞれ外半径が第一外輪および第二外輪の最小内半径よりも小さくなるように形成されているので、第一外輪配置工程および第二転動体配置工程において、第一リテーナおよび第二リテーナと第一外輪および第二外輪とが干渉することなく、転動体を各外輪転動面に配置できる。
このように、本発明の軸受装置の製造方法によれば、軸受装置を簡単に製造できるので、製造コストを削減し、軸受装置の低コスト化ができる。
【0031】
また、本発明の情報記録再生装置は、上述した軸受装置と、前記軸受装置の一方側端部を支持するハウジングと、前記外輪に外嵌され、前記シャフトの中心軸回りに回動する回動部材と、前記回動部材に装着され、磁気記録媒体との間で情報の記録および再生を行うスライダと、を備えたことを特徴としている。
【0032】
本発明によれば、低コスト化ができる軸受装置を備えているので、情報記録再生装置の低コスト化ができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、内輪は、軸方向の一方側の端部の外半径が第一離間距離よりも小さく形成されるとともに、軸方向の一方側から他方側に向かって第一離間距離よりも外半径が大きくなるように形成された内輪転動面を備え、外輪は、軸方向の他方側の端部の内半径が第二離間距離よりも大きく形成されるとともに、軸方向の他方側から一方側に向かって第二離間距離よりも内半径が小さくなるように形成された外輪転動面を備えているので、環状に均等配列した転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、環状に均等配列した転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に転動体を簡単に配置できる。これにより、内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入し、複数の転動体を周方向に均等配置するという従来の煩雑な作業や、専用の製造装置が必要ないので、簡単な作業で転がり軸受部を製造できる。したがって、軸受装置の低コスト化ができる。
また、軸方向に沿って金型を移動させて内輪および外輪を形成できるので、例えば鍛造等により低コストに形成できる。
また、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入する場合、内輪と外輪との隙間の大きさにより、挿入可能な転動体の個数や大きさが制限されることとなる。これに対して、本発明によれば、転動体を内輪転動面に載置した後に軸方向から外輪を挿入し、または、転動体を外輪転動面に載置した後に軸方向から内輪を挿入することで、内輪転動面と外輪転動面との間に複数の転動体を配置するので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体を配置できる。したがって、軸受装置の剛性を所望に設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、第一実施形態に係る軸受装置、軸受装置の製造方法および情報記録再生装置について説明をする。なお、以下では、実施形態に係る情報記録再生装置について説明したあと、第一実施形態に係る軸受装置およびこの軸受装置の製造方法について説明をする。
【0036】
(情報記録再生装置)
図1は、実施形態に係る情報記録再生装置1の斜視図である。
図1に示すように、情報記録再生装置1は、記録層を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、書き込みおよび読み取りを行う装置である。情報記録再生装置1は、アーム(回動部材)8と、アーム8の先端側に支持されたヘッドジンバルアセンブリ4と、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に装着されたスライダ2と、ヘッドジンバルアセンブリ4をスキャン移動させるアクチュエータ(VCM:ボイスコイルモータ)6と、ディスクDを回転させるスピンドルモータ7と、情報に応じて変調した電流をスライダ2に供給する制御部5と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9と、を備えている。
【0037】
ハウジング9は、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料からなり、上部に開口部を有する箱型形状のものであって、平面視四角形状の底部9aと、底部9aの周縁部から垂直に立設された周壁(不図示)とで構成されている。周壁に囲まれたハウジング9の内側には、上述した各構成品を収容する収容凹部が形成される。底部9aの略中心には、スピンドルモータ7が取り付けられており、スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定されている。
【0038】
ディスクDの側方には、軸受装置10が配置されている。軸受装置10の一方側端部は、ハウジング9の底部9aに支持されている。軸受装置10の外周面には、アーム8が外嵌固着されている。アーム8の基端部は、上述したアクチュエータ6に接続されている。またアーム8は、基端側から先端側に向かって、ディスクDの表面と平行に延設されている。
アーム8の先端には、ヘッドジンバルアセンブリ4が接続されている。ヘッドジンバルアセンブリ4は、サスペンション3と、サスペンション3の先端に装着され、ディスクDの表面に対向配置されたスライダ2と、を備えている。スライダ2は、ディスクDに対する情報の書き込み(記録)を行う記録素子と、ディスクDから情報の読み取り(再生)を行う再生素子とを備えている。
【0039】
上記のように構成された情報記録再生装置1において、情報の記録または再生を行うには、まずスピンドルモータ7を駆動して、ディスクDの中心軸L2回りにディスクDを回転させる。また、アクチュエータ6を駆動して、軸受装置10を回動中心としてアーム8を回動させる。これにより、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に配置されたスライダ2を、ディスクDの表面の各部にスキャン移動させることができる。そして、スライダ2の記録素子または再生素子を駆動することにより、ディスクDに対する情報の記録または再生を行うことができる。
【0040】
(第一実施形態の軸受装置)
図2は、第一実施形態に係る軸受装置10の側面断面図である。なお、
図2では、ハウジング9およびハウジング9の底部9aを二点鎖線で図示している。以下では、軸受装置10の軸線(すなわちシャフト20の軸線。以下、「中心軸L1」という。)に沿った方向を「軸方向」と呼ぶ。また、軸方向のうち、
図1に示すハウジング9の底部9a側(すなわち
図2における下側)を「一方側」と呼び、ハウジング9の開口側(すなわち
図2における上側)を「他方側」と呼ぶ。また、一対の転がり軸受部30,40の軸方向の内側を「軸方向の内側」と呼び、一対の転がり軸受部30,40の軸方向の外側を「軸方向の外側」と呼ぶ。また、中心軸L1に直交する方向を「径方向」と呼び、中心軸L1回りに周回する方向を「周方向」と呼ぶ。また、第一転がり軸受部30の複数の転動体35の中心P1を含む仮想面を仮想面F1と定義し、第二転がり軸受部40の複数の転動体35の中心P2を含む仮想面を仮想面F2と定義する。
図2に示すように、第一実施形態に係る軸受装置10は、ハウジング9の底部9aに立設されるシャフト20と、シャフト20の軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受部30,40と、を備えている。
【0041】
シャフト20は、中心軸L1に沿って延びた略円柱形状の部材であり、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料により形成されている。シャフト20は、ハウジング9の底部9a側が基端部とされ、軸方向に沿った反対側が先端部とされている。
シャフト20の基端部には、シャフト20の直径よりも縮径した縮径部20bが下方に突出して設けられている。縮径部20bには、ハウジング9の底部9aに形成された図示しない雌ねじに螺合する図示しない雄ねじが形成されている。そして、シャフト20は上記螺合によってハウジング9の底部9aに立設されている。この際、シャフト20の基端側の端面がハウジング9の底部9aに接することで、シャフト20の高さ方向の位置決めがなされている。
【0042】
(転がり軸受部)
シャフト20には、軸方向に並んで一対の転がり軸受部30,40が配置されており、シャフト20の軸方向の一方側には、一対の転がり軸受部30,40のうち第一転がり軸受部30が配置され、シャフト20の軸方向の他方側には、第二転がり軸受部40が配置されている。
【0043】
(第一転がり軸受部)
第一転がり軸受部30は、シャフト20の中心軸L1と同軸上に配置された第一内輪36と、シャフト20の径方向の外側から第一内輪36を囲繞する第一外輪31と、第一内輪36と第一外輪31との間に転動自在に保持された複数の転動体35と、複数の転動体35を転動自在に保持して環状に均等配列可能な第一リテーナ60(請求項の「リテーナ」に相当。)と、を備えている。
なお、以下では、径方向における複数の転動体35の最内部と、中心軸L1との離間距離を第一離間距離K1と定義し、径方向における複数の転動体35の最外部と、中心軸L1との離間距離を第二離間距離K2と定義する。
【0044】
(第一内輪)
第一内輪36は、例えばステンレス等の金属材料からなる略円筒状の部材であり、例えば鍛造や機械加工等により形成されている。
第一内輪36は、軸方向の内側端部36bの外半径が、第一離間距離K1よりも小さく形成されている。
第一内輪36の外周面37における軸方向の中間部には、内輪転動面39が形成されている。内輪転動面39は、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように、側面断面が円弧状に形成されている。内輪転動面39は、第一内輪36の外周面37の全周にわたって形成されており、環状に配置された複数の転動体35の外表面が当接可能となっている。
【0045】
第一内輪36の内径は、シャフト20に挿入可能な寸法に形成されている。本実施形態では、第一内輪36の内径は、シャフト20の外径よりも若干大きくなるように形成されている。第一内輪36は、シャフト20に挿入されて、外側端部36aとハウジング9の底部9aとの間にクリアランスを有した状態で、シャフト20の軸方向の一方側に、例えば接着剤等により固定される。なお、第一内輪36の内径は、シャフト20の外径と同一か、若干小さくなるように形成されていてもよい。この場合においては、第一内輪36は、シャフト20に挿入されて圧入固定される。
【0046】
第一内輪36は、外径が軸方向の内側から外側に向かって大きくなるとともに、内径が一様となっている。したがって、第一内輪36の外形状を形成する場合には、鍛造が好適である。そして、鍛造により第一内輪36の外形状を形成した後、内輪転動面39を切削加工することにより、機械加工を行う工数を大幅に短縮できるので、製造コストを削減できる。
また、第一内輪36は、仮想面F1から軸方向の内側端部36bまでの距離D1が、仮想面F1から軸方向の外側端部36aまでの距離D2よりも短くなるように形成されている。これにより、第一内輪36の軸方向の長さを短縮できるので、軸受装置10の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。
【0047】
(第一外輪)
第一外輪31は、第一内輪36と同様に、例えばステンレス等の金属材料からなる略円筒状の部材であり、例えば鍛造や機械加工等により形成されている。
第一外輪31は、軸方向の外側端部31aの内半径が、第二離間距離K2よりも大きく形成されている。
第一外輪31の内周面33における軸方向の中間部には、外輪転動面34が形成されている。外輪転動面34は、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように、側面断面が円弧状に形成されている。外輪転動面34は、第一外輪31の内周面33の全周にわたって形成されており、環状に配置された複数の転動体35の外表面が当接可能となっている。
第一外輪31の外周面は、軸方向にわたって外径が一様となるように形成されている。
また、第一外輪31の軸方向の外側端部31aは、第一内輪36の外側端部36aよりも軸方向の内側であって、外輪転動面34と後述する転動体35との当接部よりも外側に配置されている。これにより、第一外輪31の軸方向の長さを短縮できるので、軸受装置10の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。
【0048】
(転動体)
転動体35は、金属材料により球状に形成されている。転動体35は、第一外輪31の外輪転動面34および第一内輪36の内輪転動面39の間に配置されており、各転動面34,39に沿って転動するようになっている。各転動面34,39の曲率半径は、転動体35の外面の曲率半径よりも若干大きくなるように形成されている。複数の転動体35は、第一リテーナ60によって、転動自在に周方向に沿って環状に均等配列されている。
【0049】
(第一リテーナ)
図3は、第一リテーナ60および第二リテーナ70の斜視図である。
第一リテーナ60は、第一外輪31、第一内輪36および転動体35による案内によって、中心軸L1回りを回転しながら、各転動体35を転動可能に保持する例えば樹脂等からなる部材であって、本体部61と、該本体部61に一体的に形成された複数組の一対の爪部63と、を備えている。
図3に示すように、本体部61は、第一内輪36を径方向の外側から囲繞する円環状に形成されている。本体部61の軸方向の他方側には、周方向に等間隔を開けて転動体35が挿入可能な球面状のボールポケットPが、例えば7個凹み形成されている。
【0050】
本体部61には、各ボールポケットPにそれぞれ対応するように複数組(本実施形態では7組)の一対の爪部63が設けられている。これら一対の爪部63は、ボールポケットP内に挿入された転動体35を転動自在に保持可能となっている。爪部63は、複数組の一対の爪部63は、それぞれ本体部61から中心軸L1(軸方向)に沿って立設されており、各ボールポケットPを間にして互いに周方向に向かい合うとともに、基端から先端に向かって互いの距離が接近するように円弧状に湾曲した状態で立ち上げられている。
【0051】
図2に示すように、複数(本実施形態では7個)の転動体35は、第一リテーナ60のボールポケットP(
図3参照)により周方向に略等間隔に配置された状態で保持されて、第一内輪36と第一外輪31との間に配置されている。
ここで、第一リテーナ60の内半径R1は、第一内輪36の最大外半径よりも大きく、かつ第一リテーナ60の外半径R2は、第一外輪31の最小内半径よりも小さくなるように形成されている。このように第一リテーナ60を形成することで、第一リテーナ60と第一内輪36および第一外輪31とが干渉することなく、複数の転動体35を第一内輪36の内輪転動面39と第一外輪31の外輪転動面34との間に配置できる。
【0052】
(第二転がり軸受部)
第二転がり軸受部40は、シャフト20の中心軸L1と同軸上に配置された第二内輪46と、シャフト20の径方向の外側から第二内輪46を囲繞する第二外輪41と、第二内輪46と第二外輪41との間に転動自在に保持された複数の転動体35と、複数の転動体35を転動自在に環状に均等配列する第二リテーナ70と、を備えている。本実施形態では、第二転がり軸受部40の第二内輪46および第二外輪41が、それぞれ第一転がり軸受部30の第一内輪36および第一外輪31と面対称形状に形成されている。また、第二リテーナ70は、第一リテーナ60と同一の部材である(
図3参照)。したがって、第二転がり軸受部40については、詳細な説明を省略する。
【0053】
(スリーブ)
本実施形態では、第一外輪31および第二外輪41は、それぞれ相対移動不能にスリーブ51により固定されている。スリーブ51は、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料からなる部材であり、鍛造や機械加工等により形成されている。スリーブ51は、円筒状の本体筒部52と、本体筒部52の軸方向の中間部において径方向の内側に張り出すスペーサ部53と、を備えている。
スリーブ51の内径は、スペーサ部53を除き、第一外輪31および第二外輪41を本体筒部52の内側に挿入配置可能なように、第一外輪31および第二外輪41の外径よりも大きくなるように形成されている。また、スリーブ51の一方側および他方側の外側端部は、それぞれ第一外輪31の外側端部31aおよび第二外輪41の外側端部41aよりも軸方向の外側に配置されている。スリーブ51の軸方向の長さは、アーム8の個数等に応じて適宜設定される。
【0054】
スペーサ部53は、軸方向に所定の厚さを有しており、その内径が例えば第一外輪31および第二外輪41の内径と略同一となるように形成されている。
スペーサ部53を介在させることにより、軸方向に所定間隔だけ離間した状態で、第一外輪31および第二外輪41を配置できる。さらに、後述する予圧付加工程S25(
図11参照)では、第一内輪36および第二内輪46を軸方向に沿って相対的に押圧したとき、第一外輪31と第二外輪41との離間距離をスペーサ部53により保持しつつ、第一内輪36と第二内輪46との離間距離を短縮して第一内輪36と第二内輪46とに予圧を付加できる。
【0055】
スリーブ51には、一方側から第一外輪31が挿入され、他方側から第二外輪41が挿入されて、それぞれスペーサ部53に突き当てられた状態で例えば接着剤等により固定されている。これにより、スリーブ51、第一外輪31および第二外輪41は、一体的に形成されて外輪組立体50を構成している。
スリーブ51を備えることにより、軸受装置10の外径を一様とすることができる。したがって、軸受装置10に対して、アーム8(
図1参照)を精度良く装着できるので、高性能な情報記録再生装置1(
図1参照)を形成できる。また、スリーブ51にアーム8(
図1参照)を外嵌しても、第一外輪31と第二外輪41との中心軸に、相対ズレが発生することがない。
【0056】
上述のように形成された第一転がり軸受部30および第二転がり軸受部40は、第一内輪36の内側端部36bと、第二内輪46の内側端部46bとが互いに干渉しないように、シャフト20の軸方向に沿って並んで配置される。さらに、第一転がり軸受部30の第一内輪36および第二転がり軸受部40の第二内輪46は、予圧が付加された状態でスリーブ51に固定されている。
【0057】
(軸受装置の製造方法)
続いて、本実施形態の軸受装置10の製造方法について説明する。
図4は、軸受装置10の製造工程(製造方法)のフローチャートである。
図4に示すように、軸受装置10の製造工程は、第一内輪配置工程S11(請求項の「第一配置工程」に相当。)と、リテーナ保持工程S13と、外輪組立体形成工程S15(請求項の「第二配置工程」「第一外輪配置工程」および「第三配置工程」「第二外輪配置工程」に相当。)と、第一転動体配置工程S17と、外輪組立体配置工程S19と、第二転動体配置工程S21と、第二内輪配置工程S23(請求項の「第四配置工程」に相当。)と、予圧付加工程S25とを備えている。以下に、各工程について説明する。
【0058】
(第一内輪配置工程S11)
図5は、第一内輪配置工程S11の説明図である。
まず、
図5に示すように、一対の転がり軸受部30,40の第一内輪36および第二内輪46(
図2参照)のうち、第一転がり軸受部30の第一内輪36をシャフト20に挿入して軸方向の一方側に配置する第一内輪配置工程S11を行う。
第一内輪配置工程S11では、不図示の治具にシャフト20を立設させた状態で配置し、シャフト20の外周面に接着剤を塗布する。次いで、第一内輪36の内側端部36bを軸方向の他方側に配置した状態で、軸方向の他方側から軸方向に沿って第一内輪36をシャフト20に挿入する。次いで、第一内輪36を押し込み、シャフト20の縮径部20bよりも他方側の所定位置に配置する。その後、接着剤を固化させ、第一内輪36をシャフト20の軸方向の一方側に固定する。以上で、第一内輪配置工程S11が終了する。
【0059】
(リテーナ保持工程S13)
図6は、リテーナ保持工程S13の説明図である。
続いて、
図6に示すように、第一リテーナ60および第二リテーナ70のそれぞれに、複数の転動体35を転動自在に保持させて環状に均等配列するリテーナ保持工程S13を行う。
リテーナ保持工程S13では、第一リテーナ60の一対の爪部63の間に転動体35を押し込み、第一リテーナ60の本体部61のボールポケットP内に転動体35を組み入れる。一対の爪部63は、転動体35を押し込む際の押圧力により外側に弾性変形する。これにより、一対の爪部63間に転動体35を挿入でき、ボールポケットP内に組み入れることができる。また、転動体35がボールポケットP内に挿入されると、一対の爪部63が元の状態に弾性的に復元変形して開口径が狭まるので、転動体35をボールポケットP内で脱落させることなく一対の爪部63で転動自在に保持できる。同様に複数(本実施形態では7個)の転動体35を第一リテーナ60に組み入れることにより、複数の転動体35は、第一リテーナ60によって周方向に均等配列された状態で転動自在に保持される。さらに同様に、複数(本実施形態では7個)の転動体35を第二リテーナ70に組み入れた時点で、リテーナ保持工程S13が終了する。
【0060】
なお、リテーナ保持工程S13は、第一内輪配置工程S11の前に行ってもよい。また、本実施形態では、第一リテーナ60および第二リテーナ70への転動体35の組み込みを、一工程(リテーナ保持工程S13)で行っているが、別工程で行ってもよい。具体的には、第一リテーナ60へ転動体35を組み込む第一リテーナ保持工程と、第二リテーナ70へ転動体35を組み込む第二リテーナ保持工程とに分割し、各リテーナ保持工程を異なるタイミングで行ってもよい。
【0061】
(外輪組立体形成工程S15)
図7は、外輪組立体形成工程S15の説明図である。
続いて、
図7に示すように、第一外輪31および第二外輪41をそれぞれ相対移動不能にスリーブ51に固定し、外輪組立体50を形成する外輪組立体形成工程S15を行う。
外輪組立体形成工程S15では、まず、スリーブ51の本体筒部52の内周面に接着剤を塗布する。スリーブ51の本体筒部52の内周面に塗布する接着剤としては、例えば嫌気性接着剤が好適である。次いで、スリーブ51の内側に、軸方向の一方側から他方側に向かって第一外輪31を挿入するとともに、軸方向の他方側から一方側に向かって第二外輪41を挿入する。そして、第一外輪31の内側端部31bおよび第二外輪41の内側端部41bがそれぞれスペーサ部53に突き当たるまで押し込む。接着剤が硬化した時点で、スリーブ51、第一外輪31および第二外輪41が一体的に形成されて外輪組立体50が構成される。以上で、外輪組立体形成工程S15が終了する。
なお、外輪組立体形成工程S15は、少なくとも外輪組立体配置工程S19の前に行っていればよい。また、本実施形態では、スリーブ51への第一外輪31および第二外輪41の組み込みを、一工程(外輪組立体形成工程S15)で行っているが、別工程に分けて行ってもよい。
【0062】
(第一転動体配置工程S17)
図8は、第一転動体配置工程S17の説明図である。
続いて、
図8に示すように、第一内輪36に、軸方向の他方側から複数の転動体35を第一リテーナ60ごと挿入し、第一内輪36の内輪転動面39に複数の転動体35を載置する第一転動体配置工程S17を行う。
ここで、第一リテーナ60の内半径R1は、第一内輪36の最大外半径よりも大きく形成されているので、転動体35を第一リテーナ60に保持させて環状に均等配列した状態で、第一リテーナ60と第一内輪36とが干渉することなく、転動体35を第一リテーナ60ごと軸方向の他方側から挿入して内輪転動面39に載置できる。また、第一内輪36の内側端部36bの外半径は、第一離間距離K1よりも小さく形成されている。したがって、第一転動体配置工程S17では、軸方向の他方側から複数の転動体35を第一リテーナ60ごと、第一内輪36の内側端部36bに干渉することなく容易に挿入できる。また、第一内輪36の内輪転動面39は、軸方向の内側から外側(すなわち軸方向の他方側から一方側)に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように形成されている。したがって、第一転動体配置工程S17では、軸方向の他方側から複数の転動体35を第一リテーナ60ごと第一内輪36に挿入することで、複数の転動体35を簡単に内輪転動面39に載置できる。しかも、複数の転動体35は、第一リテーナ60により相対移動不能に均等配列されて保持されているので、治具等を用いることなく、複数の転動体35を内輪転動面39に載置した状態で保持できる。このように、本実施形態の第一転動体配置工程S17によれば、複数の転動体35を容易に第一内輪36の径方向の外側に配置できる。以上で、第一転動体配置工程S17が終了する。
【0063】
(外輪組立体配置工程S19)
図9は、外輪組立体配置工程S19の説明図である。
続いて、
図9に示すように、第一内輪36に、外輪組立体50を軸方向の他方側から挿入する外輪組立体配置工程S19を行う。
ここで、第一リテーナ60の外半径R2は、第一外輪31の最小内半径よりも小さくなるように形成されているので、転動体35を環状に均等配列した状態で、第一外輪31を挿入することにより、第一リテーナ60と第一外輪31とが干渉することなく、転動体35を簡単に外輪転動面34に当接させることができる。
また、第一外輪31の外側端部31aの外半径は、第二離間距離K2よりも大きく形成されている。したがって、外輪組立体配置工程S19では、軸方向の他方側から第一外輪31を、複数の転動体35と干渉することなく第一内輪36に容易に挿入できる。また、第一外輪31の外輪転動面34は、軸方向の外側から内側(すなわち軸方向の一方側から他方側)に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように形成されている。したがって、外輪組立体配置工程S19では、軸方向の他方側から外輪組立体50を第一内輪36に挿入したときに、第一外輪31の外輪転動面34が複数の転動体35に当接できる。これにより、外輪組立体50は、軸方向の所定位置に位置決めされるので、治具等を用いることなく、複数の転動体35に外輪転動面34が当接した状態で外輪組立体50を保持できる。
なお、本実施形態においては、スリーブ51、第一外輪31および第二外輪41が一体的に形成されて外輪組立体50が構成されていることから、第一内輪36に外輪組立体50を軸方向の他方側から挿入することで、第一外輪31の外輪転動面34を転動体35に当接させるとともに第二外輪41を軸方向の他方側に配置できる。すなわち、外輪組立体配置工程S19では、第一外輪31を第一内輪36の径方向の外側に配置し、第一外輪31の外輪転動面34を転動体35に当接させる第一外輪配置工程S19Aと、第二外輪41を軸方向の他方側に配置する第二外輪配置工程S19Bとが、同時に行われる。
このように、本実施形態の外輪組立体配置工程S19によれば、スリーブ51、第一外輪31および第二外輪41により構成された外輪組立体50を容易に第一内輪36の径方向の外側に配置できる。以上で、外輪組立体配置工程S19が終了する。
【0064】
(第二転動体配置工程S21)
図10は、第二転動体配置工程S21の説明図である。続いて、
図10に示すように、外輪組立体50の第二外輪41に、軸方向の他方側から複数の転動体35を第二リテーナ70ごと挿入し、軸方向の他方側の外輪転動面44に複数の転動体35を載置する第二転動体配置工程S21を行う。
ここで、第二リテーナ70の外半径R2は、第二外輪41の最小内半径よりも小さくなるように形成されているので、転動体35を環状に均等配列した状態で第二外輪41に挿入することにより、第二リテーナ70と第一外輪31とが干渉することなく、転動体35を簡単に外輪転動面44に載置できる。
また、軸方向の他方側に配置された第二外輪41の外側端部41aの内半径は、第二離間距離K2よりも大きく形成されている。したがって、第二転動体配置工程S21では、軸方向の他方側から複数の転動体35を第二リテーナ70ごと、第二外輪41の外側端部41aに干渉することなく容易に挿入できる。また、軸方向の他方側に配置された第二外輪41の外輪転動面44は、軸方向の外側から内側(すなわち軸方向の他方側から一方側)に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように形成されている。したがって、第二転動体配置工程S21では、軸方向の他方側から複数の転動体35を第二リテーナ70ごと第二外輪41に挿入することで、複数の転動体35を簡単に外輪転動面44に載置できる。しかも、複数の転動体35は、第二リテーナ70により相対移動不能に均等配列されて保持されているので、治具等を用いることなく、複数の転動体35を第二外輪41の外輪転動面44に載置した状態で保持できる。このように、本実施形態の第二転動体配置工程S21によれば、複数の転動体35を容易に第二外輪41の径方向の内側に配置できる。以上で、第二転動体配置工程S21が終了する。
【0065】
(第二内輪配置工程S23)
図11は、第二内輪配置工程S23および予圧付加工程S25の説明図である。続いて、
図11に示すように、一対の転がり軸受部30,40の第一内輪36および第二内輪46のうち、第二転がり軸受部40の第二内輪46をシャフト20に挿入して軸方向の他方側に配置する第二内輪配置工程S23を行う。第二内輪配置工程S23では、第二内輪46の内側端部46bを一方側に配置した状態で、シャフト20の他方側から軸方向に沿って第二内輪46を挿入する。
ここで、第二リテーナ70の内半径R1は、第二内輪46の最小外半径よりも大きくなるように形成されているので、転動体35を環状に均等配列した状態で、第二内輪46を挿入することにより、第二リテーナ70と第二内輪46とが干渉することなく、転動体35を簡単に内輪転動面49に当接させることができる。
また、軸方向の一方側に配置された第二内輪46の内側端部46bの外半径は、第一離間距離K1よりも小さく形成されている。したがって、第二内輪配置工程S23では、軸方向の他方側から第二内輪46の内側端部46bを、複数の転動体35に干渉することなく容易に挿入できる。また、第二内輪46の内輪転動面49は、軸方向の内側から外側(すなわち軸方向の一方側から他方側)に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように形成されている。したがって、第二内輪配置工程S23では、軸方向の他方側から第二内輪46をシャフト20に挿入したときに、第二内輪46の内輪転動面49が複数の転動体35に当接できる。これにより、第二内輪46は、軸方向の所定位置に位置決めされるので、治具等を用いることなく、複数の転動体35に内輪転動面49が当接した状態で第二内輪46を保持できる。このように、本実施形態の第二内輪配置工程S23によれば、第二内輪46を容易にシャフト20の径方向の外側に配置できる。以上で、第二内輪配置工程S23が終了する。
【0066】
(予圧付加工程S25)
続いて、第一内輪36および第二内輪46を軸方向に沿って相対的に押圧しつつ、シャフト20に固定する予圧付加工程S25を行う。本実施形態では、第一内輪36が固定された状態で、第二内輪46を他方側から一方側(すなわち第一内輪36側)に向かって押圧することにより、第一内輪36および第二内輪46を相対的に押圧している。なお、第二内輪46の押圧は、不図示の治具を用いて行う。
第二転がり軸受部40の第二内輪46を押圧することにより、第一転がり軸受部30の第一内輪36と、第二転がり軸受部40の第二内輪46との離間距離は短くなる。ここで、第一転がり軸受部30の第一外輪31と、第二転がり軸受部40の第二外輪41とは、スリーブ51に固定されて一体的に形成されている。したがって、第二内輪46を一方側に向かって押圧することにより、第二転がり軸受部40の転動体35が第二外輪41の外輪転動面44を押圧するとともに、第一外輪31が一方側に向かって押圧される。また、第一外輪31が一方側に向かって押圧されることにより、第一転がり軸受部30の転動体35が第一外輪31の外輪転動面34に押圧されて、第一内輪36の内輪転動面39を押圧する。
【0067】
このように、他方側から一方側に向かって、第二転がり軸受部40の第二内輪46を軸方向に沿って押圧することで、第一転がり軸受部30の第一内輪36および第二転がり軸受部40の第二内輪46に予圧が付与される。そして、接着剤が硬化するまで、第二転がり軸受部40の第二内輪46を押圧する。
接着剤が硬化した時点で、予圧付加工程S25が終了し、本実施形態に係る軸受装置10が完成する。
【0068】
なお、本実施形態の第一内輪配置工程S11、外輪組立体形成工程S15および第二内輪配置工程S23では、それぞれ接着剤を用いることにより、第一内輪36および第二内輪46をシャフト20に固定し、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に固定していた。これに対して、例えば、圧入やレーザー溶接等により、第一内輪36および第二内輪46をシャフト20に固定し、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に固定してもよい。これにより、接着剤を用いることなく第一内輪36および第二内輪46をシャフト20に固定でき、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に固定できる。したがって、接着剤からのアウトガスの発生を防止でき、アウトガスに起因する情報記録再生装置1の不良を防止できる。
【0069】
(第一実施形態の効果)
本実施形態によれば、第一転がり軸受部30の第一内輪36は、軸方向の内側端部36bの外半径が第一離間距離K1よりも小さく形成されるとともに、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように形成された内輪転動面39を備えており、第一転がり軸受部30の第一リテーナ60は、内半径R1が第一内輪36の最大外半径よりも大きく形成されているので、転動体35を第一リテーナ60に保持させて環状に均等配列した状態で、第一リテーナ60と第一内輪36とが干渉することなく、転動体35を第一リテーナ60ごと軸方向の内側端部36bから挿入して内輪転動面39に載置できる。
また、第二転がり軸受部40の第二外輪41は、軸方向の外側端部41aの内半径が、第二離間距離K2よりも大きく形成されるとともに、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように形成された外輪転動面44を備えており、第二転がり軸受部40の第二リテーナ70は、外半径R2が第二外輪41の最小内半径よりも小さくなるように形成されているので、転動体35を第二リテーナ70に保持させて環状に均等配列した状態で、第二リテーナ70と第二外輪41とが干渉することなく、転動体35を第二リテーナ70ごと軸方向の外側端部41aから挿入して外輪転動面44に載置できる。
これにより、内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入した後、複数の転動体を周方向に均等配列するという従来の煩雑な作業が必要なく、簡単に第一転がり軸受部30および第二転がり軸受部40を形成できるので、軸受装置10の低コスト化ができる。
また、転動体35を第一内輪36の内輪転動面39に載置した後に軸方向から第一外輪31を挿入し、または、転動体35を第二外輪41の外輪転動面44に載置した後に軸方向から第二内輪46を挿入することで、内輪転動面39,49と外輪転動面34,44との間に複数の転動体35を配置するので、従来技術のように内輪と外輪との隙間によって個数や大きさの制限を受けることなく転動体35を配置できる。したがって、軸受装置10の剛性を増大させることができる。
【0070】
また、複数組の一対の爪部63がそれぞれ本体部61から軸方向に沿って立設されているので、複数組の一対の爪部63が軸方向に対して傾斜している場合に比べて、第一リテーナ60および第二リテーナ70の内半径R1を極力大きくできるとともに第一リテーナ60および第二リテーナ70の外半径R2を極力小さくすることができる。したがって、第一リテーナ60および第二リテーナ70と第一内輪36、第二内輪46、第一外輪31および第二外輪41とが干渉するのを確実に抑制できるとともに、軸受装置10を径方向にも小型化できる。
【0071】
また、第一外輪31および第二外輪41の軸方向の長さを短縮できるので、軸受装置10の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。
【0072】
また、第一内輪36および第二内輪46の軸方向の長さを短縮できるので、軸受装置10の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。
【0073】
また、鍛造により内輪および外輪を低コストに形成できるとともに、切削加工工数を短縮できる。したがって、軸受装置10の低コスト化ができる。
【0074】
また、リテーナ保持工程S13で予め複数の転動体35を第一リテーナ60および第二リテーナ70に保持させて環状に均等配列した後、第一転動体配置工程S17および第二転動体配置工程S21で、第一リテーナ60および第二リテーナ70ごと複数の転動体35を内輪転動面39および外輪転動面44に載置できる。これにより、一度に複数の転動体35を均等配列できるので、従来技術のように内輪と外輪とをずらしつつ転動体を内輪と外輪との間に挿入した後、複数の転動体を周方向に均等配列するという煩雑な作業が必要ない。
また、第一転がり軸受部30の第一内輪36は、軸方向の内側から外側に向かって第一離間距離K1よりも外半径が漸次大きくなるように形成された内輪転動面39を備えているので、第一転動体配置工程S17において第一内輪36に軸方向の他方側(軸方向の内側)から複数の転動体35を挿入したときに、治具等を用いることなく簡単に内輪転動面39に載置できる。
また、第一リテーナ60および第二リテーナ70は、それぞれ内半径R1が第一内輪36および第二内輪46の最大外半径よりも大きくなるように形成されているので、第一転動体配置工程S17および第二内輪配置工程S23において、第一リテーナ60および第二リテーナ70と第一内輪36および第二内輪46とが干渉することなく、転動体35を各内輪転動面39,49に配置できる。
また、第二転がり軸受部40の第二外輪41は、軸方向の外側から内側に向かって第二離間距離K2よりも内半径が漸次小さくなるように形成された外輪転動面44を備えているので、第二転動体配置工程S21において第二外輪41に軸方向の他方側(軸方向の外側)から複数の転動体35を挿入したときに、治具等を用いることなく簡単に外輪転動面44に載置できる。
また、第一リテーナ60および第二リテーナ70は、それぞれ外半径R2が第一外輪31および第二外輪41の最小内半径よりも小さくなるように形成されているので、外輪組立体配置工程S19(第一外輪配置工程S19A)および第二転動体配置工程S21において、第一リテーナ60および第二リテーナ70と第一外輪31および第二外輪41とが干渉することなく、転動体35を各外輪転動面34,44に配置できる。
このように、本実施形態の軸受装置10の製造方法によれば、軸受装置10を簡単に製造できるので、製造コストを削減し、軸受装置10の低コスト化ができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、低コスト化ができる軸受装置10を備えているので、情報記録再生装置1の低コスト化ができる。
【0076】
(第一実施形態の変形例)
図12は、第一実施形態の変形例に係る軸受装置10の説明図である。
続いて、第一実施形態の変形例に係る軸受装置10について説明する。なお、以下では、第一実施形態と同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第一実施形態の軸受装置10は、シャフト20と、第一内輪36および第二内輪46とが別部品として形成されていた(
図2参照)。
これに対して、
図12に示す第一実施形態の変形例に係る軸受装置10のように、シャフト120と第一内輪36とが一体的に形成されていてもよい。
第一実施形態においては、第一内輪配置工程S11において、第一内輪36をシャフト20に挿入し、第一内輪36を軸方向に位置決めしつつシャフト20の軸方向の一方側に固定していた(
図5参照)。これに対して、第一実施形態の変形例では、シャフト120と第一内輪36とが一体的に形成されているので、第一内輪36を軸方向に位置決めする必要がない。
【0077】
(第一実施形態の変形例の効果)
第一実施形態の変形例によれば、軸受装置10の部品点数をさらに削減できるので、軸受装置10のさらなる小型化、軽量化および低コスト化ができる。また、第一転がり軸受部30の第一内輪36をシャフト120に挿入する必要がないので、軸受装置10の組立工数を短縮して製造コストを削減できる。したがって、軸受装置10のさらなる低コスト化ができる。
なお、第一実施形態の変形例では、シャフト120と第一転がり軸受部30の第一内輪36とが一体的に形成されている場合を例に説明したが、シャフト120と第二転がり軸受部40の第二内輪46とが一体的に形成されていてもよい。すなわち、第一転がり軸受部30の第一内輪36および第二転がり軸受部40の第二内輪46のうちのいずれか一方がシャフト120と一体的に形成されていれば、上記の作用効果を得ることができる。
【0078】
(第二実施形態)
図13は、第二実施形態に係る軸受装置210の説明図である。
続いて、第二実施形態に係る軸受装置210について説明する。なお、以下では、第一実施形態と同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第一実施形態の軸受装置10は、第一外輪31および第二外輪41がそれぞれ相対移動不能にスリーブ51により固定されており、スリーブ51のスペーサ部53を介在させることにより、軸方向に所定間隔だけ離間した状態で、第一外輪31および第二外輪41を配置していた(
図2参照)。
これに対して、
図13に示す第二実施形態に係る軸受装置210のように、環状のスペーサ55を第一内輪36と第二内輪46との間に介在させることにより、軸方向に所定間隔だけ離間した状態で、第一外輪31および第二外輪41を配置してもよい。
【0079】
シャフト220の基端部には、シャフト220の直径よりも拡径したフランジ部20aと、シャフト220の直径よりも縮径した縮径部20bと、が軸方向の他方側から一方側に向かってこの順番に連設されている。シャフト220は、フランジ部20aがハウジング9の底部9aに接することにより、高さ方向の位置決めがなされている。
また、第一内輪36は、シャフト220に挿入されて、外側端部36aがシャフト220のフランジ部20aに当接した状態で、シャフト220の軸方向の一方側に、例えば接着剤等により固定される。
【0080】
第一内輪36および第一外輪31は、それぞれ軸方向の長さ(厚さ)が同一となるように形成されている。また、第二内輪46および第二外輪41は、それぞれ軸方向の長さ(厚さ)が同一となるように形成されている
スペーサ55は、軸方向に所定の厚さを有する円環状の部材であり、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料により形成されている。スペーサ55を第一外輪31と第二外輪41との間に介在させることにより、第一実施形態と同様に、第一内輪36の内側端部36bと第二内輪46の内側端部46bとの間に間隙を設けることができる。これにより、第一内輪36および第二内輪46を相対的に押圧することで、第一内輪36と、第二内輪46との離間距離を短縮できるので、第一転がり軸受部30および第二転がり軸受部40に予圧を付加できる。
【0081】
(第二実施形態の軸受装置の製造方法)
第二実施形態の軸受装置210の製造方法では、第一転動体配置工程の後、第一外輪31を第一内輪36の径方向の外側に配置し、第一外輪31の外輪転動面34を転動体35に当接させる第一外輪配置工程と、第一外輪31の軸方向の他方側にスペーサ55を配置するスペーサ配置工程と、第二外輪41をスペーサ55の軸方向の他方側に配置する第二外輪配置工程と、を備えている。
【0082】
スペーサ配置工程では、スペーサ55の一方側の端面に、例えば接着剤を塗布する。そして、スペーサ55の一方側の端面を第一外輪31の内側端部31bに当接させた状態で固定する。
また、第二外輪配置工程では、スペーサ55の他方側の端面に、例えば接着剤を塗布する。そして、スペーサ55の他方側の端面に第二外輪41の内側端部41bを当接させた状態で固定する。
なお、予め第一外輪31、スペーサ55および第二外輪41を軸方向に同心に配置して接着剤等により固定し、第一外輪31、スペーサ55および第二外輪41を一体的に形成して外輪組立体250を構成してもよい。この場合においては、第一実施形態と同様に、外輪組立体配置工程により、第一外輪31、スペーサ55および第二外輪41を容易に第一内輪36の径方向の外側に配置できる。
【0083】
(第二実施形態の第一変形例)
図14は、第二実施形態の第一変形例に係る軸受装置210の説明図である。
図14に示す第二実施形態の第一変形例に係る軸受装置210のように、例えば、仮想面F1から第一内輪36の軸方向の内側端部36bまでの距離D1が、仮想面F1から第一内輪36の軸方向の外側端部36aまでの距離D2よりも短くなるように配置され、仮想面F2から第二内輪46の軸方向の内側端部46bまでの距離D3が、仮想面F2から第二内輪46の軸方向の外側端部46aまでの距離D4よりも短くなるように配置されていてもよい。
第二実施形態の第一変形例によれば、軸受装置210の剛性を低下させることなく、第一内輪36および第二内輪46の軸方向の長さを短縮できる。これにより、軸受装置210の更なる薄型化、小型化および低コスト化ができる。また、軸受装置210の薄型化を制限する第一内輪36の軸方向の内側端部36bの長さおよび第二内輪46の軸方向の内側端部46bの長さを短縮できるので、軸受装置210を薄型化できる。
【0084】
(第二実施形態の第二変形例)
図15は、第二実施形態の第二変形例に係る軸受装置210の説明図である。
図15に示す第二実施形態の第二変形例に係る軸受装置210のように、例えば第一外輪31の外側端部31aおよび第二外輪41の外側端部41aが、それぞれ第一内輪36の外側端部36aおよび第二内輪46の外側端部46aよりも内側に配置されていてもよい。
第二実施形態の第二変形例によれば、第一外輪31および第二外輪41の軸方向の長さを短縮できる。これにより、軸受装置210の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。また、第一外輪31および第二外輪41の重量を軽減できるので、軸受装置210の共振点を上げることができ、高速な動作にも対応できる。
【0085】
(第三実施形態)
図16は、第三実施形態の軸受装置310の説明図である。
続いて、第三実施形態の軸受装置310について説明する。なお、以下では、第一実施形態と同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第一実施形態の軸受装置10は、第一外輪31および第二外輪41がそれぞれ相対移動不能にスリーブ51により固定されており、スリーブ51のスペーサ部53を介在させることにより、軸方向に所定間隔だけ離間した状態で、第一外輪31および第二外輪41を配置していた(
図2参照)。
これに対して、
図16に示す第三実施形態に係る軸受装置310のように、第一外輪31の内側端部31bおよび第二外輪41の内側端部41bを、それぞれ第一内輪36の内側端部36bおよび第二内輪46の内側端部46bよりも内側に長く形成することにより、第一外輪31の内側端部31bおよび第二外輪41の内側端部41bを当接させて配置していてもよい。
第三実施形態によれば、スペーサを用いることなく、第一内輪36の内側端部36bと第二内輪46の内側端部46bとの間に間隙を設けることができる。したがって、第一内輪36および第二内輪46を相対的に押圧することにより、スペーサを用いることなく、第一転がり軸受部30および第二転がり軸受部40に予圧を付加できるので、軸受装置210の更なる小型化、軽量化および低コスト化ができる。
【0086】
(第三実施形態の変形例)
図17は、第三実施形態の変形例に係る軸受装置310の説明図である。
続いて、第三実施形態の変形例に係る軸受装置310について説明する。なお、以下では、第三実施形態と同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第三実施形態の軸受装置310では、第一リテーナ60の本体部61を軸方向の外側に配置するとともに、第二リテーナ70の本体部61を軸方向の内側に配置していた(
図16参照)。
これに対して、
図17に示す第三実施形態の変形例に係る軸受装置310のように、第一リテーナ60の本体部61および第二リテーナ70の本体部61を、それぞれ軸方向の内側に配置してもよい。
【0087】
第一リテーナ60の本体部61および第二リテーナ70の本体部61は、転動体35を保持するために、軸方向に厚みを有している。したがって、軸受装置310の薄型化(軸方向の短縮化)は、第一リテーナ60の本体部61および第二リテーナ70の本体部61により制限される。ここで、
図16に示す第三実施形態の軸受装置310において、第一リテーナ60の爪部63よりも軸方向の内側の領域は、デッドスペースとなっている。したがって、
図17に示すように、軸方向の内側に第一リテーナ60の本体部61を配置することにより、第一リテーナ60の本体部61によって軸受装置310の薄型化(軸方向の短縮化)が制限されるのを防止できる。これにより、軸受装置310を極力薄型化することができる。
【0088】
(第四実施形態)
図18は、第三実施形態の軸受装置410の説明図である。
続いて、第四実施形態の軸受装置410について説明する。なお、以下では、第一実施形態と同様の構成部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第一実施形態の軸受装置10は、第一外輪31および第二外輪41がそれぞれ相対移動不能にスリーブ51により固定されるとともに、第一内輪36および第二内輪46を軸方向に沿って相対的に押圧した状態でシャフト20に固定する、いわゆる内輪予圧の軸受装置10であった(
図2参照)。
これに対して、
図18に示す第四実施形態に係る軸受装置410のように、第一内輪36および第二内輪46をシャフト420に固定するとともに、第一外輪31および第二外輪41を軸方向に沿って相対的に押圧した状態でスリーブ51に固定する、いわゆる外輪予圧の軸受装置410としてもよい。
このように、本発明は、内輪予圧および外輪予圧のいずれの予圧であっても適用でき、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0089】
なお、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0090】
シャフト20,220,320,420の形状は、各実施形態および各実施形態の各変形例に限定されることはない。また、第一リテーナ60および第二リテーナ70の形状や、転動体35の配置個数等は各実施形態に限定されない。例えば、各実施形態および各実施形態の各変形例の第一リテーナ60および第二リテーナ70は、爪部63が本体部61から軸方向に沿って立設されていた。これに対して、爪部63が本体部61から軸方向に対して傾斜するように、径方向の外側または径方向の内側に向かって立設されていてもよい。
【0091】
第一実施形態では、情報記録再生装置1のアーム8の回動軸として軸受装置10を適用していたが、軸受装置10の適用は、情報記録再生装置1のアーム8の回動軸に限定されない。例えば、情報記録再生装置1のディスクDを回転させるスピンドルモータ7の回転軸として軸受装置10を適用してもよいし、レーザー光源を走査するためのポリゴンミラーの回動軸として軸受装置10を適用してもよい。
【0092】
また、各実施形態および各実施形態の各変形例においては、第一リテーナ60および第二リテーナ70を備えていたが、第一リテーナ60および第二リテーナ70を用いることなく、内輪転動面39,49と外輪転動面34,44との間に複数の転動体35を配置してもよい。また、このとき、軸受装置10の製造工程では、リテーナ保持工程S13が不要となるとともに、治具等によって転動体35を保持することにより、第一転動体配置工程S17および第二転動体配置工程S21を行うことができる。
【0093】
また、第一実施形態から第三実施形態においては、第一内輪36および第二内輪46を軸方向に沿って相対的に押圧した状態で、第一内輪36および第二内輪46をシャフト20,120,220,320に固定することにより予圧を付与する、いわゆる外輪予圧の定位置予圧を採用していた。また、第四実施形態においては、第一外輪31および第二外輪41を軸方向に沿って相対的に押圧した状態で、第一外輪31および第二外輪41をスリーブ51に固定することにより予圧を付与する、いわゆる外輪予圧の定位置予圧を採用していた。これに対して、例えば、付勢部材を設け、第一内輪36および第二内輪46または第一外輪31および第二外輪41を軸方向に沿って相対的に押圧した状態で保持することにより予圧を付与する、いわゆる定圧予圧を採用してもよい。
【0094】
また、第四実施形態においては、第一内輪36と第二内輪46との間にスペーサ55を介在させていたが、スペーサ55を削除して、第一内輪36の内側端部36bと第二内輪46の内側端部46bとを当接させてもよいし、第一内輪36と第二内輪46とを一体形成してもよい。
【0095】
また、各実施形態および各実施形態の各変形例における内輪転動面39,49および外輪転動面34,44は、それぞれ外半径および内半径が漸次変化する曲面状に形成されていた。これに対して、例えば内輪転動面39,49および外輪転動面34,44は、一部に平面部分を含んでいてもよい。
【0096】
また、各実施形態および各実施形態の各変形例をそれぞれ適宜組み合わせてもよい。例えば、第一実施形態と第三実施形態とを組み合わせて、第三実施形態の第一外輪31および第二外輪41に、スリーブを外挿してもよい。
【0097】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。