(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クエリ画像は、認証対象者の掌の画像であり、前記クエリ表面情報は、前記クエリ画像から抽出された掌紋パターンの情報であり、前記クエリ体内情報は、前記クエリ画像から抽出された静脈パターンの情報である
請求項1〜6のいずれか1項に記載の個人認証装置。
前記テンプレート画像は、登録対象者の掌の画像であり、前記テンプレート表面情報は、前記テンプレート画像から抽出された掌紋パターンの情報であり、前記テンプレート体内情報は、前記テンプレート画像から抽出された静脈パターンの情報である
請求項3又は4に記載の個人認証装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
(本実施形態に係る個人認証システムの構成)
まず、本発明の一実施形態に係る個人認証システムの構成を、
図1に基づいて説明する。
【0025】
この個人認証システムは、クエリ画像である認証画像を取得する認証画像取得装置1(クエリデータ取得部の具体例に相当)と、テンプレート画像取得装置2(登録部の具体例に相当)と、識別部4と、照合部3とを備えている(
図1参照)。識別部4の基本的な機能は、認証画像取得装置1により取得した認証画像に類似するテンプレートを識別(すなわち検索)し、テンプレートに対応するIDを絞り込むことである。照合部3の基本的な機能は、認証画像取得装置1により取得した照合画像と識別により絞り込まれたIDに対応するテンプレートとを照合する事により、一意の個人を認証することである。本実施形態では、適宜なネットワークないし通信路を介して、相互の機能要素どうしでデータの送信又は受信が可能となっている。各機能ブロック内の機能要素においても同様である。
【0026】
(認証画像取得装置)
認証画像取得装置1は、認証用光源11と、認証用画像取得部12と、認証用画像処理部13とを備えている(
図2参照)。
【0027】
認証用光源11は、可視光領域での赤色光を少なくとも含む光を、人体の掌に向けて照射できる構成となっている。認証用光源11は、赤色光を含む可視光領域の波長の光を放出できる発光体(たとえばLED)で構成することができる。なお、光源を、太陽光や環境光とすることも基本的には可能である。ただし、光源を人工光とし、照射される光の波長範囲を正確に把握することにより、認証の精度を向上させることができる。ここで、赤色光とは、この明細書においては、おおよそ580〜750nm(ナノメータ)の波長の光(いわゆる赤色系の光)をいうが、どの程度の波長が最善かは、実験的に決定できる。アンバー系(おおよそ590〜630nmの波長)の光がさらに好ましいと考えられる。また、光源としては、これらの波長帯域の光のみを発光するものであってもよいが、他の波長の光を含むことは可能である。また、フィルタリングにより所望の光を発する光源も使用可能である。ただし、赤色光以外の可視光は、静脈形状の抽出においてはノイズとして作用する可能性があるので、ノイズを減らすためには、赤色光のみを発光する光源であることが好ましい。
【0028】
認証用画像取得部12は、認証用光源11から照射されて、人体の掌において反射した光で構成される少なくとも1枚の反射画像(すなわち画像データ)を取得する構成となっている。このような認証用画像取得部12は、デジタルカメラやイメージスキャナなどの適宜な装置により構成することができる。あるいは、画像取得部12は、携帯端末に取り付けられたカメラにより構成することができる。
【0029】
認証用画像処理部13は、識別用クエリ画像処理部131と照合用クエリ画像処理部132とで構成される(
図3参照)。識別用クエリ画像処理部131は、反射画像を画像処理することによって、1枚の反射画像から、掌における識別用の掌紋形状を抽出する処理を行う。識別用クエリ画像処理部131は、掌の反射画像に対応するデータを、RGB色空間のR信号、G信号、B信号に基づくグレースケールの値に変換することにより、前記掌紋の形状を抽出する処理を行う構成となっている。
【0030】
識別用クエリ画像処理部131は、掌紋特徴抽出部1311と、特徴データ変換部1312で構成される(
図5参照)。掌紋特徴抽出部1311は、識別用クエリ画像処理部131の動作として前述したグレースケール値への変換を行ない、掌紋の形状を2値化画像として抽出する。特徴データ変換部1312は、前記2値化画像をラドン変換し、半径方向の周波数スペクトルを抽出した後、対数極座標系変換した位相限定画像へ変換する事により識別用特徴データ(識別用クエリデータに相当)を生成する。
【0031】
照合用クエリ画像処理部132は、掌の反射画像に対応するデータをHSV色空間に変換し、このHSV色空間上でH信号の位相とS信号の強度とを変更し、その後HSV色空間をRGB色空間及びCMYK色空間に変換することで得られた色信号として静脈形状を抽出する。この画像処理の詳細については後述する。
【0032】
照合用クエリ画像処理部132は、静脈特徴抽出部1321と、特徴データ変換部1322で構成される(
図6参照)。静脈特徴抽出部1321は、照合用クエリ画像処理部132の動作として前述した色信号の抽出を行い、さらに、抽出した静脈形状を2値化画像として抽出する。特徴データ変換部1322は、前記2値化画像をラドン変換し、半径方向の周波数スペクトルを抽出した後、対数極座標系変換した位相限定画像へ変換する事により照合用特徴データ(照合用クエリデータに相当)を生成する。特徴データ変換部1322は、識別用クエリ画像処理部131の特徴データ変換部1312と同様の処理を行うので、両者を同一のコンピュータあるいはコンピュータプログラムとして実装することができる。
【0033】
ここで、本実施形態における識別用クエリデータと照合用クエリデータとは、同じ処理によって生成されているので、同じ情報構造を有している。ここで、同じ情報構造とは、同じ意味尺度を持つ情報系列からなるデータ構造という意味である。例えば、前記の識別用及び照合用のいずれの2値画像においても、掌紋と静脈それぞれの線分の位置情報を有しており、これらは同じ情報構造である。また、前記処理以外にも、掌紋、及び静脈を強調した画像から、局所特徴量や大域特徴量を抽出して生成した情報系列どうしや、位相成分のみを抽出した画像どうしも、同じ情報構造を有しているといえる。同じ情報構造を有しているということは同じ情報量を有していることを意味するため、同じ閾値を設定すれば、同じ識別精度を有していることを意味する。ここで、同じ情報量とは、同じ意味尺度を持ち、同じデータ次元、即ちデータ長を持つ事を意味している。またここで意味尺度とは、情報が表す意味とその数値の基準の事である。前述した、線分の位置情報、局所特徴量、大域特徴量、位相成分などは、それぞれが特徴的な情報を持ち、基準化された数値を持つ意味尺度と言える。
【0034】
認証用光源11と画像取得部12とを、いずれも、一つの携帯端末に実装することができる。そのような実装例を
図4に示す。ここでは、携帯端末6として、いわゆるスマートフォンが用いられている。図中符号8は人の手を示している。
【0035】
携帯端末6は、赤色光を含む光を外部に向けて発することができる表示画面61と、付属のカメラ62を備えている。そして、
図4の具体例では、認証用光源が、表示画面61により構成されており、認証用画像取得部が、カメラ62により構成されている。また、
図4の携帯端末6は、表示画面61を光らせるためのバックライト(図示せず)を備えており、バックライトからの光が表示画面を透過することにより、表示画面61を光らせることができるようになっている。一般に、スマートフォンの表示画面は、液晶ディスプレイで構成されていることが多い。液晶パネルは、バックライトからの光の透過色や透過量を、カラーフィルタや偏光フィルタの制御により調整することができる。したがって、液晶パネルを制御して、本実施形態に適した波長域の光を作り出すことにより、本実施形態の光源としての動作が可能となる。なお、表示画面としては、液晶ディスプレイに代えて、例えば有機ELディスプレイやLEDディスプレイなど、必要な波長の発光が得られる適宜のディスプレイを用いることができる。
【0036】
(テンプレート画像取得装置)
テンプレート画像取得装置(登録部に相当)2は、テンプレート用光源21と、テンプレート用画像取得部22と、テンプレート画像処理部23と、照合用テンプレートデータ記憶部24とを備えている(
図7参照)。なお、テンプレートデータとは登録データを意味する。
【0037】
テンプレート用光源21は、可視光領域での赤色光を少なくとも含む光を、人体の掌に向けて照射できる構成となっている。テンプレート用光源21は、前記した認証用光源11と同様に構成することができる。また、一つの光源を両方の用途に使うことも可能である。
【0038】
テンプレート用画像取得部22は、テンプレート用光源21から、人体の掌において反射した光で構成される少なくとも1枚の反射画像を取得する構成となっている。テンプレート用画像取得部22は、前記した認証用画像取得部12と同様に構成することができ、さらに、一つの画像取得部(たとえばカメラ)を両方の用途に使うことも可能である。
【0039】
テンプレート画像処理部23は、識別用テンプレート画像処理部231と、照合用テンプレート画像処理部232で構成され、反射画像を画像処理することによって、1枚の反射画像から、識別用テンプレートと照合用テンプレートを生成する(
図8参照)。識別用テンプレート画像処理部231は、前述した識別用クエリ画像処理部131の処理と同様のグレースケール値への変換を行ない、掌におけるテンプレート用の掌紋形状を抽出することによってテンプレートデータを生成する処理を行う。
【0040】
識別用テンプレート画像処理部231は、掌紋特徴抽出部2311と、特徴データ変換部2312で構成される(
図9参照)。掌紋特徴抽出部2311は、識別用テンプレート画像処理部231の機能として前述したグレースケール値への変換を行ない、掌紋の形状を2値化画像として抽出する。特徴データ変換部2312は、前記2値化画像をラドン変換し、半径方向の周波数スペクトルを抽出した後、対数極座標系変換した位相限定画像へ変換する事により識別用特徴データ(識別用テンプレートデータ)を生成する。識別用テンプレート画像処理部231は、識別用クエリ画像処理部132と同様の処理を行うので、両者を同一のコンピュータあるいはコンピュータプログラムとして実装することができる。
【0041】
照合用テンプレート画像処理部232は、前述した照合用クエリ画像処理部132の処理と同様の色信号への変換を行ない、掌におけるテンプレート用の静脈形状を抽出することによって照合用テンプレートデータを生成する処理を行う。
【0042】
照合用テンプレート画像処理部232は、静脈特徴抽出部2321と、特徴データ変換部2322で構成される(
図10参照)。静脈特徴抽出部2321は前述した色信号への変換を行ない、静脈の形状を2値化画像として抽出する。特徴データ変換部2322は、前記2値化画像をラドン変換し、半径方向の周波数スペクトルを抽出した後、対数極座標系変換した位相限定画像へ変換する事により照合用特徴データ(照合用テンプレートデータ)を生成する。照合用テンプレート画像処理部232の処理の内容は、前記した照合用クエリ画像処理部132と同様とすることができるので、両者を同一のコンピュータあるいはコンピュータプログラムとして実装することができる。
【0043】
ここで、本実施形態における識別用登録データと照合用登録データとは、同じ処理によって生成されているので、同じ情報構造を有している。ここで、同じ情報構造とは、同じ意味尺度を持つ情報系列からなるデータ構造という意味である。具体的には、前記した識別用及び照合用の位相限定画像は、いずれも2値画像をラドン変換して半径方向の周波数スペクトルを対数極座標系で表現した位相画像であり、同じ意味尺度を持った情報系列である。ラドン変換以外の処理も可能である。例えば、前記した2値化により生成された画像はいずれも、掌紋と静脈それぞれの線分の位置情報を有しており、同じ情報構造であるといえる。さらに、これらの処理以外の処理も可能であり、掌紋、及び静脈を強調した画像から、局所特徴量や大域特徴量を抽出して生成した情報系列どうしや、位相成分のみを抽出した画像どうしも、同じ情報構造を有しているといえる。同じ情報構造を有しているということは、同じ情報量を有していることを意味し、したがって、同じ識別精度を有していることを意味する。ここで、同じ情報量とは、同じ意味尺度を持ち、同じデータ次元、即ちデータ長を持つ事を意味している。
【0044】
照合用テンプレートデータ記憶部24は、照合用テンプレート画像処理部232で生成された照合用テンプレートデータを記憶する構成となっている。照合用テンプレートデータ記憶部24は、たとえばコンピュータ用のメモリにより構成することができる。また、テンプレートデータ記憶部24は、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどの、デジタルデータを記録可能な適宜の装置により構成可能である。
【0045】
(識別部)
識別部4は、識別用テーブル生成部41、識別用テーブル参照部42、識別用テーブル記憶部43で構成される(
図11参照)。
【0046】
識別用テーブル生成部41は、識別用テンプレートデータに基づいて、類似のデータが同じテーブルインデックスを持つようなインデックス値に変換する。インデックス値への変換は、識別用特徴データを表す画像同士のユークリッド距離空間における位置が近い程、同じインデックス値になるような変換を用いる。インデックス値への変換の具体的処理内容については後述する。
【0047】
識別用テーブル記憶部43は、前記識別用テンプレートデータに基づいて変換されたインデックス値に関係づけて、個人に対応したIDをテーブル(具体的にはインデックス)に記憶する。
【0048】
識別テーブル参照部42は、認証画像取得装置1で取得された識別用特徴データ(識別用クエリデータ)を、前述した識別用特徴データを表す画像同士のユークリッド距離空間における位置が近い程、同じインデックス値になるような変換を用いてインデックス値に変換し、識別用テーブル記憶部43を参照して、当該インデックス値に記憶されているIDを取得する。識別処理の具体的処理内容については後述する。
【0049】
前記取得されたIDは、識別用データに類似している識別用テンプレートデータのIDに相当している。取得されるIDは複数の場合もある。
【0050】
照合部3は、認証画像取得装置1で取得された照合用データ(照合用クエリデータ)と、前記識別部4で取得したIDに対応する、照合用テンプレートデータ記憶部24に記憶されたテンプレートデータ(照合用登録データ)とを照合することにより、個人の認証を行う構成となっている。照合処理の具体的処理内容については後述する。
【0051】
(個人認証の手順)
ついで、前記した個人認証システムを用いた個人認証方法を、
図12〜
図17をさらに参照しながら説明する。
【0052】
(全体的な手順)
本実施形態の個人認証の全体的な流れを
図12に示す。
【0053】
(
図12のSA−1)
まず、使用者の掌を撮影することによって得た1枚の反射画像から、識別用テンプレートデータと照合用テンプレートデータとを、テンプレート画像処理部23が生成する。
【0054】
(
図12のSA−2)
ついで、生成した識別用テンプレートデータに基づいて、テーブルインデックス値への変換を行い、識別用テーブルの当該インデックスに使用者のIDを記憶する。ここで、テーブルインデックス値とは、登録される識別用テンプレートデータのグルーピングの番号に相当し、テーブルインデックス値への変換とは、グルーピングした際のグループ番号を得ることを指し、同じテーブルインデックス値を持つテンプレートデータは、同じグループに属している事を意味する。
この処理は識別用テーブル生成部4により行われる。
【0055】
IDの記憶には、通常の直接アドレス表によるテーブルに記憶する以外にも、チェイン法によるテーブルに記憶する方法、木構造のテーブルに記憶する方法も可能である。チェイン法や木構造は広く知られたものであるため、ここでは詳細の説明は省く。
【0056】
(
図12のSA−3)
ついで、生成した照合用テンプレートデータを、IDと対応付けて照合用テンプレートデータ記憶部24に格納する。
【0057】
(
図12のSA−4)
ついで、認証時において、使用者の掌を撮影することによって認証用画像(1枚のカラーの反射画像)を取得する。そして、この認証用画像を用いて、識別用データ(識別用クエリデータ)と照合用データ(照合用クエリデータ)を生成する。
【0058】
(
図12のSA−5)
ついで、識別用データに基づいて、識別テーブル参照部42がテーブルインデックス値への変換を行い、識別用テーブルを参照して、当該インデックスに格納されているIDを取得する。
【0059】
(
図12のSA−6)
ついで、照合部3は、取得されたIDに対応する、照合用テンプレートデータを、照合用テンプレートデータ記憶部から取得する。
【0060】
(
図12のSA−7)
ついで、照合部3は、取得した照合用テンプレートデータと、照合用データとを1:1照合することにより、その類似度を用いて、個人認証を行う。
【0061】
前記した各処理の詳細を、以下において、さらに詳しく説明する。
【0062】
(テンプレート画像の処理)
(
図13のステップSB−1)
認証処理の前に、以下の手順により、テンプレート用画像の処理が行われる。まず、テンプレート用光源21から、可視光領域での赤色光を少なくとも含む光を人体の掌に照射する。そして、人体の掌において反射した光で構成される少なくとも1枚の反射画像を、テンプレート用画像取得部22により取得する。ここで、テンプレート用画像取得部22によりハードウエア的に取得される画像の色空間は、RGBは一般に256階調のトゥルーカラーを使用するが、他の形式でも可能である。むしろ一般的なデバイス(たとえばカメラ)の多くは、YUV色空間でのデータをハードウエア的に取得する。この場合、例えば、YUV色空間でのデータをソフトウエア的に変換して、RGB色空間のデータを生成し、これをその後の計算に用いることができる。もちろん、テンプレート用画像取得部22がハードウエア的にRGB色空間のデータを取得する構成であってもよい。なお、RGB色空間とYUV色空間とは、相互に変換可能な補色関係にある。
【0063】
(
図13のステップSB−2)
ついで、識別用テンプレート画像処理部231の掌紋特徴抽出部2311は、反射画像を画像処理することによって、1枚の前記反射画像から、前記掌におけるテンプレート用の掌紋形状を、識別用登録データ生成用の識別用テンプレートデータ(テンプレート表面情報)として抽出する(
図14(a)参照)。識別用テンプレートデータとしては、
図14(a)の形状を抽象化して、
図14(b)に示すような掌紋部分のみの形状データとすることができる。
【0064】
識別用テンプレート画像処理部231の掌紋特徴抽出部2311は、テンプレート用画像取得部22により取得されたRGB色空間のデータを変換して、例えばビットマップ画像を生成し、さらに掌紋形状の特徴を抽出するためのグレースケール画像への変換を行う。掌紋とは、手の平の微細な凹凸によって表される紋であり、個人によって異なる特徴的な形状となっている。
【0065】
掌紋形状抽出の方法としては、既存の技術を用いることができる。たとえば、原画像に対してグレースケール化及びラプラシアンフィルタを適用することにより、原画像から、掌紋を表すエッジ画像を生成することができる。
【0066】
本実施形態では、掌紋の形状特徴、特に、手相線を強調して取得するため、原画像にローパスフィルタ処理を行い、処理後の画像にgaborフィルタでエッジ強調を行ったうえでグレースケール画像を生成し、さらに生成されたグレースケール画像に対してエロ―ジョン処理を行って、掌紋形状、とりわけ手相線が強調された識別用テンプレートデータを生成することが好ましい。なお、ローパスフィルタ、gaborフィルタ、及び、エロ―ジョン手法は、いずれも広く知られたものであるため、ここでは詳細の説明は省く。
【0067】
(
図13のステップSB−3)
これと並行してあるいは前後して、照合用テンプレート画像処理部232の静脈特徴抽出部2321は、反射画像を画像処理することによって、1枚の前記反射画像から、前記掌におけるテンプレート用の静脈形状を、照合用テンプレートデータ(テンプレート体内情報に対応)として抽出する(
図14(c)参照)。照合用テンプレートデータとしては、
図14(c)の形状を抽象化して、
図14(d)に示すような静脈部分のみの形状データとすることができる。静脈形状の抽出処理について、以下において詳しく説明する。
【0068】
テンプレート用画像取得部22により取得された原画像から、静脈形状が強く現れる情報をみつけ、その特徴を抽出する事が必要になる。ここで、本発明者の知見によれば、赤色光を掌に照射して得られた画像においては、最も強く静脈パターンが現れるのが、CMYK色空間上のM(マゼンタ)信号であり、さらに、静脈パターンが現れず、掌紋形状が表出されるのがRGB色空間のG信号である。
【0069】
さらに、この二つの色信号に加え、静脈と掌紋のどちらの形状にも現れやすいRGB色空間のR信号を加え、さらに次に説明する処理を行うことにより、照合用テンプレートデータを生成する。
【0070】
まず、原画像上の各画素のRGB値をHSV変換し、色相環上にマッピングする。次に色相環上にマッピングされたR信号値、G信号値、B信号値(つまりHSV空間における色相Hの位相)を適宜に設定された値で移動させる。さらに、HSV空間における彩度(Sの値)の強度(大きさ)を適宜に設定された値に変更する。ここでの変更量は実験的に決定できるものである。
【0071】
前記RGB色空間における画像データをHSV空間に変換するには、一般的に、下記のような式を用いることができる。
H=60*(G-B)/(MAX[R,G,B]-MIN[R,G,B]) if R=MAX[R,G,B]
H=60*(B-R)/(MAX[R,G,B]-MIN[R,G,B])+120 if G=MAX[R,G,B]
H=60*(R-G)/(MAX[R,G,B]-MIN[R,G,B])+240 if B=MAX[R,G,B]
S=MAX[R,G,B]-MIN[R,G,B]
V=MAX[R,G,B]
【0072】
本実施形態では、RGB色空間のR信号とG信号は、HSV空間上で彩度(Sの値)をマイナス向に30%減衰させて生成されたR'信号、G'信号に変更する。またCMYK色空間上のM(マゼンタ)信号は、HSV空間上でHの位相を+15°移動し、さらにSの値をマイナス向に30%減衰させて生成されたM'信号に変更される。この色相の移動の幅(つまり変更の幅)と彩度の変更の値は実験によって決定される。
【0073】
前記の処理により、当初のRGB空間及びCMYK空間のデータとは異なる、R'信号、G'信号、M'信号空間でのデータを取得できる。本実施形態では、このようにして得たR'、G'、M'空間のデータは、それぞれ8bit(256階調)のグレースケール画像として表現できる。
【0074】
GPvein= (α
1*R'+α
2*M'−α
3*G')
ここで、
GPvein:R'信号、G'信号、M'信号の値から得られたグレースケールデータ
R':前記RGB色空間におけるR信号の値をHSV表色系に変換し、彩度を(−30%)変更し、RGB表色系に戻した値)
G':前記RGB色空間におけるG信号の値をHSV表色系に変換し、彩度を(−30%)変更し、RGB表色系に戻した値
M':前記CMYK色空間におけるマゼンタ信号をHSV表色系に変換し、色相を(+15°)、彩度を(−30%)変更し、CMYK表色系に戻した値
α:係数(実験的に決定される)
である。
【0075】
例えば、実験値として最適な係数値は、
GPvein= (0.6*R'+0.6*M'−0.2*G')
である。
【0076】
ここで、前記したGPveinの算出は、各画素において行われるが、もし、各画素での算出結果が0以下になった場合は、GPveinの値を0とし、各画素での算出結果が255以上になった場合は、GPveinの値を255とする。このようにして、静脈パターンが強調されたグレースケール画像として、照合用テンプレートデータを生成できる。ただし、前記したGPveinを求める式は単なる一例であり、具体的な式は制約されない。具体的な算出式は、前記した知見に基づいて当業者に実施可能な実験により、適宜に設定できる。線形結合で表される必要もない。
【0077】
なお、前記においては、RGB色空間におけるR信号及びG信号と、CMYK色空間におけるマゼンタ信号とを用いる例を述べてきたが、RGB色空間におけるB信号やCMYK色空間におけるシアン信号、イエロー信号を追加的に用いることができる。
【0078】
さらに、前記では、RGB色空間とCMYK色空間を直接的に用いているが、RGB色空間と変換可能な色空間(例えばYCbCr、YIQ、Luv、Lab、XYZ)を、RGB色空間に代えて用いて、テンプレート画像あるいはクエリ画像におけるデータの特徴を抽出することができる。すなわち、RGB空間におけるデータと、それと変換可能な色空間におけるデータとは、所定の数式により変換できる。したがって、前記における説明は、所定のデータ変換を介在させることにより、RGB色空間以外のデータを用いる場合にも同様に当てはまる。したがって、本発明におけるRGB空間での特徴を表すデータに代えて、このデータを他の色空間にマッピングして得られるデータを用いて画像の特徴を表すこと、あるいは、このように表された特徴量を用いて識別を行うことは、本発明の範囲に含まれる。
【0079】
前記の説明における各係数については、実験的に最適値を定めることができる。係数が負値の場合もある。また、前記係数αは、外部の光源環境(例えば明るさ)によって、一般的には実験的に決定される。
【0080】
(
図13のステップSB−4、SB−5)
ついで識別用テンプレート画像処理部231の掌紋特徴抽出部2311及び、照合用テンプレート画像処理部232の静脈特徴抽出部2321は、グレースケールのテンプレートデータ(識別用及び照合用)をそれぞれ2値化する。
【0081】
テンプレートデータ(TD)の2値化は、各ピクセルや各ブロックにおいて移動平均を取るなど、一般的な手法により行うことができるので、ここでは詳しい説明は省略する。2値化は、識別用テンプレートデータ、及び照合用テンプレートデータの両方とも行うが、必ずしも同じ2値化の手法である必要はない。
2値化は、掌紋及び静脈の線分パターン情報を抽出するものであり、抽出後のデータは、掌紋と静脈それぞれの線分の位置情報を有している。したがって、これらのデータについての二値化の手法が異なっていても、これらは同じ情報構造であるといえる。
【0082】
(
図13のステップSB−6、SB−7)
ついで、識別用テンプレート画像処理部231の特徴データ変換部2312及び、照合用テンプレート画像処理部232の特徴データ変換部2322は、テンプレートデータ(識別用及び照合用)の特徴抽出を行う。特徴を抽出する方法として、ラドン変換を用いる。この方法は、2次元画像であるテンプレート画像に対して、θ方向(θ=0〜180°)の軸上に投影し、投影軸上の位置ρと、角度θとによって表現する処理を行うものである。
【0083】
(
図13のステップSB−8、SB−9)
ついで、識別用テンプレート画像処理部231の特徴データ変換部2312及び、照合用テンプレート画像処理部232の特徴データ変換部2322は、ラドン変換された特徴データに対して、ρ方向のFourier変換を行ない、その振幅成分のみを抽出する。具体的にはFourier変換後の実部と虚部の自乗和の平方根を取ることにより振幅成分を得る。振幅成分のみを抽出することによりρ方向に線形推移不変(shift-invariant)となる。
【0084】
ついで、識別用テンプレート画像処理部231の特徴データ変換部2312及び、照合用テンプレート画像処理部232の特徴データ変換部2322は、ρ方向に対して、対数座標変換を行う。具体的には、ρ→log(ρ)とし、特徴データは対数極座標系となる。
【0085】
(
図13のステップSB−10、SB−11)
ついで、識別用テンプレート画像処理部231の特徴データ変換部2312及び、照合用テンプレート画像処理部232の特徴データ変換部2322は、後に処理の計算をしやすくするため、対数極座標系の特徴データに対して、位相のみを抽出した位相限定画像に変換する処理を行う。具体的には、対数極座標系となった2次元の特徴データに対して、2次元Fourier変換を行い、振幅成分を1にした後、2次元逆Fourier変換を行う。
【0086】
位相限定画像変換もよく知られているので、詳しい説明は省略する。この実施形態では、位相限定画像変換データが、識別用及び照合用の双方において、テンプレート画像の特徴を表すデータ(つまり識別用及び照合用の登録データ)となっている。
【0087】
図15に、2値画像から位相限定画像変換データへの、詳細な処理の流れを示す。各処理の内容は前述の通りである。
【0088】
(
図13のステップSB−12)
ついで、テンプレート画像処理部23は、前記処理が施された識別用テンプレートデータ(識別用登録データ)と個人に対応したID番号を、識別部4の識別用テーブル生成部41に渡す。併せて、照合用テンプレートデータ(照合用登録データ)を、個人に対応したID番号に紐づけて照合用テンプレートデータ記憶部24に保存する。前記した処理を、通常は、識別の前に実行しておく。識別処理については後述する。
【0089】
(識別用テーブル生成処理)
以下、識別用テーブルの生成処理の具体例について説明する。
【0090】
(
図16のステップSC−1)
識別用テーブル生成部41は、対象個人のIDと識別用テンプレートデータ(識別用登録データ)を取得する。
【0091】
(
図16のステップSC−2)
ついで、識別テーブル生成部41は、識別用テンプレートデータ(識別用登録データ)に基づいて、類似のデータが同じインデックス値となるような変換を行う。具体的には、識別用テンプレートデータを、当該データ長の次元をもつテンプレートベクトルとした場合に、ユークリッド距離空間における位置が近いベクトル同士が同じテーブルインデックスを持つようなインデックス値に変換する。
【0092】
ユークリッド距離空間における位置が近いベクトル同士が同じテーブルインデックスを持つようにする方法の一つとして、Locality-sensitive Hashing(LSH)があり、テンプレートベクトルにランダムハッシュ関数を適用することで、ユークリッド距離が近い、即ち類似のものが同じハッシュ値となるようにする事が出来る。
【0093】
また、ユークリッド距離に基づいてクラスタリングを行って、同じクラスのデータが同じインデックスとなるようにすることも出来る。
【0094】
さらに、前記した距離とは、二つのデータ間の直接の距離に限らず、何らかの基準データに対するそれぞれの距離であってもよい。
【0095】
また、複数の基準ベクトルを設定し、各基準ベクトルとテンプレートベクトルの位置関係、例えば最近傍基準ベクトルや、各基準ベクトルとの距離の大小関係や距離の順序等に基づいてテンプレートベクトル(つまりデータ)をグルーピングし、同じグループのデータが同じインデックスとなるようにすることも出来る。
【0096】
ここで、距離はユークリッド距離以外にも、マンハッタン距離、チェビチェフ距離など、任意の距離関数が適用可能である。
【0097】
これらの距離算出は、一般的な手法により実行できるので、これについての詳細な説明は省略する。
【0098】
(
図16のステップSC−3)
ついで、識別用テーブル生成部41は、識別用テーブル記憶部43に記憶されている識別用テーブルを参照して、変換されたインデックス値に該当するテーブルインデックスへ、対象個人のIDを追加記憶する。
該当インデックスがテーブルに存在しない場合は、テーブルへインデックスを追加したのちにIDを追加記憶する。
【0099】
(認証画像の処理)
以下、認証画像の処理について説明する。認証画像の処理は、基本的には、テンプレート画像の処理と同様に実行できる。
【0100】
(
図17のステップSD−1)
まず、認証用光源11から、可視光領域での赤色光を少なくとも含む光を人体の掌に照射する。そして、人体の掌において反射した光で構成される少なくとも1枚の反射画像を、認証用画像取得部12により取得する。
【0101】
(
図17のステップSD−2)
ついで、認証画像処理部13の識別用クエリ画像処理部131は、反射画像を画像処理することによって、1枚の前記反射画像から、前記掌における掌紋形状を、識別用データ(クエリ表面情報)として抽出する(
図14(a)参照)。なお、
図14はテンプレートデータの説明図であるが、クエリデータについても同様の処理なので、ここで参照する。識別用データとしては、
図14(a)の形状を抽象化して、
図14(b)に示すような掌紋部分のみの形状データとすることができる。なお、抽象化を行うかどうかは、テンプレートデータ生成時の処理に対応して決定される。
【0102】
(
図17のステップSD−3)
これと並行してあるいは前後して、認証画像処理部13の照合用クエリ画像処理部132は、反射画像を画像処理することによって、1枚の前記反射画像から、前記掌における静脈形状を、照合用データ(クエリ体内情報)として抽出する(
図14(c)参照)。照合用データとしては、
図14(c)の形状を抽象化して、
図14(d)に示すような静脈部分のみの形状データとすることができる。
【0103】
(
図17のステップSD−4,SD−5)
ついで、識別用クエリ画像処理部131の掌紋特徴抽出部1311及び、照合用クエリ画像処理部132の静脈特徴抽出部1321は、グレースケールの識別用データ、及び照合用データを2値化する。
【0104】
(
図17のステップSD−6、SD−7)
ついで、識別用クエリ画像処理部131の特徴データ変換部1312及び、照合用クエリ画像処理部132の特徴データ変換1322は、識別用データ、及び照合用データの特徴抽出を行う。特徴抽出は、前述したテンプレート画像処理と同様であり、要するにラドン変換を施した後にFourier変換の振幅成分を抽出するものである。
【0105】
(
図17のステップSD−8、SD−9)
ついで、識別用クエリ画像処理部131の特徴データ変換部1312及び、照合用クエリ画像処理部132の特徴データ変換1322は、特徴抽出されたデータの座標変換を行う。座標変換は、前述したテンプレート画像処理と同様であり、対数極座標系への変換である。
【0106】
(
図17のステップSD−10、SD−11)
ついで、前記処理が施された識別用データ、及び照合用データを、後に処理の計算をしやすくするために、前述したテンプレート画像処理と同様に、位相限定画像に変換し、識別用クエリデータ、及び照合用クエリデータとする。
【0107】
(
図17のステップSD−12)
ついで、識別部4の識別テーブル参照部42は、識別用クエリデータに基づき、類似のデータが同じインデックス値となるような、識別用テーブル生成処理(SB−12)と同一の変換を行い、インデックス値を生成する。次いで、識別テーブル参照部42は、識別テーブル記憶部43に記憶されている識別テーブルを参照して、変換により得られたインデックス値に相当するテーブルインデックスに記憶されているIDを取得する。この際、インデックス値に対応して記憶されているIDは複数の場合もある。
【0108】
(
図17のステップSD−13)
ついで、取得されたIDに対応する照合用テンプレートデータを、照合用テンプレートデータ記憶部24から取得する。識別されたIDが複数の場合には、各IDに対応する照合用テンプレートデータを全て取得する。
【0109】
(
図17のステップSD−14)
ついで、照合部3は、IDに対応する取得した照合用テンプレートデータ(照合用登録データ)と、SD−11の処理により生成した照合用クエリデータとの1:1照合を行う。照合時の類似度は、照合用テンプレートデータと照合用クエリデータとの相互相関を求めた際の、最大値やその周辺から得られた値を尺度として判定できる。そして、予め定めた閾値により、個人の同一性の判定を行うことができる。併せて、相関最大値が生じた画像上の位置により、回転角(θ)及び倍率(ρ)を算出することもできる。
複数のIDが識別された場合には、その中で最も相関が高いIDを選択することで、精度良く個人認証が可能である。
【0110】
本実施形態によれば、可視光用の画像取得部(たとえば可視光用カメラ)を用いて撮影された一つの原画像データから、被識別者の掌における静脈パターンの特徴と掌紋形状の特徴を抽出し、高い精度での個人認証を簡便に行うことが可能となる。このため、装置の簡易化、軽量化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0111】
しかも、本実施形態では、一つの光源(赤色光を発するもの)を用いて、掌紋抽出と静脈抽出とを行うことができるので、その点でも、装置の簡易化、軽量化、低コスト化を図ることができる。ただし、複数の光源を用いることは、本発明において可能である。
【0112】
(変形例1)
前記実施形態では、認証システムを、認証画像取得装置とテンプレート画像取得装置と識別部と照合部とを備えた構成とした。これに対して、変形例1のシステムでは、さらに、暗号化特徴データ送信装置51と暗号化特徴データ受信装置52とを備えた構成としている(
図18参照)。以下の例では、認証画像取得装置1と、照合用テンプレートデータ記憶部24を含まないテンプレート画像取得装置2と、暗号化特徴データ送信装置51が、スマートフォンなどの携帯端末に実装されており、識別部4と、照合部3と、照合用テンプレートデータ記憶部24と、暗号化特徴データ受信装置52とが、サーバ上に実装されていて、これらがネットワークを介して通信する構成であると仮定する。もちろん、このようなシステム構成は一例に過ぎず、他の構成も可能である。
【0113】
この変形例1のシステムでは、具体的には、スマートフォンを使って、サーバ上で個人識別を行うことで、クレジットカード決済を可能とするシステムを作る事が出来る。例えばネットショッピングや、店舗でのカードレス決済に応用可能である。
【0114】
テンプレート画像取得装置2、及び認証画像取得装置1で取得した、テンプレートデータ及びクエリデータは、暗号化特徴データ送信装置51により特徴データの暗号化を行った後に、サーバへ送信される。これら特徴データは、盗難、解読されることにより、なりすまし等の悪用の可能性があるため、公共のネットワークを介して送信する際には暗号化して送信を行う。
【0115】
暗号化特徴データ受信装置52は、暗号化されたテンプレートデータ及びクエリデータを取得して、復号化する。識別用テンプレートデータを受信した場合には、識別部4の識別用テーブル生成部41により識別テーブルを生成し、識別用テーブル記憶部43に記憶する。照合用テンプレートデータを受信した場合には、照合用テンプレートデータ記憶部24に照合用テンプレートデータを記憶する。
【0116】
暗号化特徴データ受信装置52は、認証用及び照合用のクエリデータを受信した場合には、識別部4の識別用テーブル参照部42により識別テーブルを参照し、識別用クエリデータのインデックス値と同じインデックス値に対応するIDを取得し、照合部3により、対象IDの照合用テンプレートデータと受信した照合用クエリデータとの照合を行う。照合が成功すれば、個人認証が成功となる。
【0117】
本実施形態の方法は、コンピュータで実行可能なコンピュータプログラムによって実施可能である。また、このプログラムは、コンピュータで読み取り可能な各種の媒体に記録可能である。
【0118】
なお、本発明の範囲は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
【0119】
例えば、前記した各構成要素は、機能ブロックとして存在していればよく、独立したハードウエアとして存在しなくても良い。また、実装方法としては、ハードウエアを用いてもコンピュータソフトウエアを用いても良い。さらに、本発明における一つの機能要素が複数の機能要素の集合によって実現されても良い。本発明における複数の機能要素が一つの機能要素により実現されても良い。
【0120】
また、前記クエリ表面情報とクエリ体内情報は、掌紋と掌静脈のみに限らず、顔と虹彩パターン、顔と顔静脈、目の形状と眼球の血管パターン、指紋と指静脈など、1枚のカラーのクエリ画像から抽出されたものであればよい。
【0121】
また、識別用クエリデータにクエリ体内情報、照合用クエリデータにクエリ表面情報を用いてよく、例えば、識別に掌静脈情報を、照合に掌紋情報を使っても良い。
【0122】
以上説明した実施形態の生体認証システムによれば、1:1照合に対して1:N認証の精度や速度が劣るという、生体認証関連の業界において一般的な考えに反し、1:N認証の精度及び速度を著しく向上させる事が出来る。以下に、本実施形態の生体認証システムによる効果・特徴を記述する。
(1)1:1認証に応用される程の高い認証性能を持ち、かつ独立な複数の生体情報を、検索(識別)と照合それぞれに用いるので、認証性能は凡そそれぞれの積となり、非常に高い認証性能を実現できる。
(2)1枚の画像から検索(識別)用と照合用の生体情報を取得するため、ユーザーの利便性が損なわれない。また、複数画像を取得しなくともよいので、システム要件の軽減を図ることもできる。
(3)掌静脈情報と掌紋情報は、それぞれ同等に高い照合性能を持つので、識別用の情報と照合用の情報とを逆に使用しても、同様に高い認証性能を実現可能である。
(4)識別用生体情報を元に、照合を行う対象である照合用テンプレートデータを絞り込むことができるので、認証の速度が向上する。
(5)現行の掌静脈による照合性能は、誤受入率0.0003%であり、掌紋による照合性能も誤受入率0.0003%である事から、これらを組み合わせた識別性能は、誤受入率1000億分の1となる。その結果、1:N認証を用いた生体認証による決済システムという未だ実用化されていない重要な用途への応用が可能となる性能を達成できる。
【解決手段】識別部4は、識別用クエリデータを用いて、既に登録されている複数の識別用登録データを識別することによって、照合に用いられるべき1又は複数の照合用登録データを特定する。照合部3は、特定された1又は複数の照合用登録データの全てに対して、照合用クエリデータとの間の類似度を用いて1:1照合を行う。これにより一意の個人を認証することができる。ここで、識別用クエリデータと照合用クエリデータとは、同じ情報構造を有している。