(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  特許文献7に記載された車椅子は、片方の手で操作できるものであるため、半身の不自由な人にとって、使い勝手のよいものであった。また、車椅子テニスや車椅子バスケットボールのような車椅子を使用するスポーツ競技でも有用であった。本発明は、特許文献7に記載された車椅子とは別の観点から使い勝手の良さを追求したものであって、ハンドリムの持ち替えの必要がなく、片手で容易に操作できる車椅子を提供することを目的としている。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  本願請求項1に記載された片手操作可能な車椅子は、フレームと、右車輪及び左車輪と、右キャスタ及び左キャスタと、シートとを有し、前記各車輪の車軸と同心に配置され、ハンドリムスポークにそれぞれ連結された左右一対のハンドリムと、一方の側の前記ハンドリムを回転させることによって生ずる回転力を駆動機構を介して反対側の車輪に伝達するための回転軸と、一方の側の前記ハンドリムを回転させることによって生ずる回転力を
前記駆動機構を介して同じ側の車輪に伝達するための左右一対の車輪ハブとを備え、前記駆動機構が、前記各ハンドリムの外面にそれぞれ配置された左右二対のセンサと、車椅子の右側に配置され、前記右車輪に回転力を伝達するための第1の無励磁形電磁クラッチと、車椅子の右側又は左側に配置され、反対側の車輪に回転力を伝達するための第2の無励磁形電磁クラッチと、前記左車輪に回転力を伝達するための第3の無励磁形電磁クラッチとを有し、前記各センサへの手指の接触の有無及び/又は接触の順序に応じて、前記無励磁形電磁クラッチへの通電が制御され、前記無励磁形電磁クラッチへの通電の有無により、前記右側の車輪ハブに設けられた
面接触する係合部と前記第1の無励磁形電磁クラッチに設けられた
面接触する係合部が係合することによって形成される第1の駆動経路、前記回転軸に設けられた
面接触する係合部と前記第2の無励磁形電磁クラッチに設けられた
面接触する係合部が係合することによって形成される第2の駆動経路、および前記左側の車輪ハブに設けられた
面接触する係合部と前記第3の無励磁形電磁クラッチに設けられた
面接触する係合部が係合することによって形成される第3の駆動経路が遮断され又は遮断解除され、これにより前記回転力が所望の側の車輪に伝達されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
  本願請求項2に記載された片手操作可能な車椅子は、
フレームと、右車輪及び左車輪と、右キャスタ及び左キャスタと、シートとを有し、前記各車輪の車軸と同心に配置され、ハンドリムスポークにそれぞれ連結された左右一対のハンドリムと、一方の側の前記ハンドリムを回転させることによって生ずる回転力を駆動機構を介して反対側の車輪に伝達するための回転軸と、一方の側の前記ハンドリムを回転させることによって生ずる回転力を前記駆動機構を介して同じ側の車輪に伝達するための左右一対の車輪ハブとを備え、  前記駆動機構が、前記各ハンドリムの外面にそれぞれ配置された左右二対のセンサと、車椅子の右側に配置され、前記右車輪に回転力を伝達するための第1の無励磁形電磁クラッチと、車椅子の右側又は左側に配置され、反対側の車輪に回転力を伝達するための第2の無励磁形電磁クラッチと、前記左車輪に回転力を伝達するための第3の無励磁形電磁クラッチとを有し、前記各センサへの手指の接触の有無及び/又は接触の順序に応じて、前記無励磁形電磁クラッチへの通電が制御され、前記無励磁形電磁クラッチへの通電の有無により、前記右側の車輪ハブに設けられた平歯車又は内歯車と前記第1の無励磁形電磁クラッチに設けられた内歯車又は平歯車が係合することによって形成される第1の駆動経路、前記回転軸に設けられた平歯車又は内歯車と前記第2の無励磁形電磁クラッチに設けられた内歯車又は平歯車が係合することによって形成される第2の駆動経路、および前記左側の車輪ハブに設けられた平歯車又は内歯車と前記第3の無励磁形電磁クラッチに設けられた内歯車又は平歯車が係合することによって形成される第3の駆動経路が遮断され又は遮断解除され、これにより前記回転力が所望の側の車輪に伝達されるように構成されていることを特徴とするものである。
 
【発明の効果】
【0009】
  本発明の車椅子によれば、左右それぞれの側に装備されるハンドリムを2基ではなく1基にすることにより、操作時のハンドリムの持ち替え動作を不要にしたので、使用者にとっては使い勝手が非常に良いという効果が得られる。
【0010】
  本発明の車椅子は、半身の不自由な人以外であっても利用できる。すなわち、本発明の車椅子は、両手が健常な人が片手に物品(スマートフォン、食器、傘など)を持って車椅子で移動するような場合に有用である。また、車椅子でテニスやバスケットボールのようなスポーツをする場合にも有用である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0012】
  次に図面を参照して、本発明の好ましい実施形態に係る車椅子について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る車椅子を示した右側面図、
図2は、
図1の車椅子の背面図である。
 
【0013】
  図1において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施形態に係る車椅子は、車椅子の骨格を形成するフレーム12と、右車輪14a及び左車輪14bと、一対のキャスタ16a、16bと、シート18とを備えている。
 
【0014】
  なお、車椅子10は、原則としてその中心線に対して左右対称であり左右それぞれの側に同じ構成要素を有しているが、以下の説明において、車椅子10の右側に位置する構成要素の参照符号に「a」を付し、車椅子10の左側に位置する構成要素の参照符号に「b」を付すものとする。また、本明細書において「内方」とは、車椅子に着座する使用者が位置する側を意味し、「外方」とは、使用者が位置する側と反対側を意味する。
 
【0015】
  右車輪14a及び左車輪14bの外方には、車輪スポーク14a2、14b2に指を挟まないように、車輪カバー14a1、14b1がそれぞれ取り付けられている。
 
【0016】
  車椅子10はまた、右車輪14aの車軸24aと同心に右車輪14aの外方に配置されたハンドリム20aを備えている。ハンドリム20aは、ハンドリムスポーク20a1に連結されている。なお、
図1では、4本のハンドリムスポーク20a1が図示されているが、ハンドリムスポーク20a1の本数はこれに限定されるものではない。
 
【0017】
  車椅子10は、駆動機構として無励磁形電磁クラッチ(以下、単に「電磁クラッチ」という)を使用している。
 
【0018】
  図3は、車椅子10の駆動機構を示した図、
図4は、第1センサ、第2センサに同時に触れた場合の駆動機構を示した図、
図5は、第1センサ、第2センサの順に触れた場合の右側部分の駆動機構を示した図、
図6は、第2センサ、第1センサの順に触れた場合の右側部分の駆動機構を示した図、
図7は、第3センサ、第4センサの順に触れた場合の左側部分の駆動機構を示した図、
図8は、第4センサ、第3センサの順に触れた場合の左側部分の駆動機構を示した図である。
 
【0019】
  車椅子10は、右車輪14aを支持する車軸134aを備えている。車軸134aは、中央に開口134a2が設けられた円形のディスク部134a1と、ディスク部134a1の外方に、ディスク部134a1と同心となるように固定された円筒部134a3とを有し、円筒部134a3が、取付ボス136a、取付スリーブ138aを介して、フレーム12に取り付けられている。参照符号134a5は、車軸134aを固定するのに用いられる公知の車軸固定ばね付きレバー部材である。
 
【0020】
  車軸134aのディスク部134a1の開口134a2には、回転軸140aが回転可能に配置されている。回転軸140aは、円柱形の軸部140a1と、軸部140a1の外端に設けられ、車軸134aの円筒部134a3内に位置する円板形のディスク部140a2とを有し、ディスク部140a2の外周には、係合部140a3(
図6(b)参照)が設けられている。軸部140a1は、軸受140a4によって回転可能に支持されている。
 
【0021】
  車輪ハブ142aが、車軸134aに回転可能に支持されている。車輪ハブ142aは、中央に開口142a2が設けられた円形のディスク部142a1と、ディスク部142a1の外周に内方に延び、ディスク部142a1と同心となるように固定された円筒部142a3とを有する。ディスク部142a1の内面には、係合部142a4(
図5(b)参照)が設けられている。円筒部142a3は、軸受142a5によって、車軸134aの円筒部134a3に回転可能に支持されている。また、車輪ハブ142aの外周には、右車輪14aの車輪スポーク14a2が連結されている。
 
【0022】
  車椅子10はまた、全体として円柱状のスプライン軸である可動軸部材144aを備えており、可動軸部材144aは、車輪ハブ142aの開口142a2に設けられた軸受144a1によって回転可能に支持されている。可動軸部材144aの中央部の外方には第1ばね受け部144a2が設けられ、中央部の内方には第2ばね受け部144a3が設けられている。可動軸部材144aの外端には、ハンドリムスポーク受け部材20a2が固定されており、ハンドリムスポーク受け部材20a2には、ハンドリムスポー20a1が連結されている。
 
【0023】
  車椅子10はまた、車軸134aの円筒部134a3内の外方に配置された第1電磁クラッチ146aを備えている。第1電磁クラッチ146aは、コイル146a2を内包したほぼ円筒形のヨーク146a1と、コイル146a2に対向する位置に配置され、ほぼディスク状のアーマチュア146a3と、アーマチュア146a3の車輪ハブ142aのディスク部142a1に面する側に設けられた係合部146a4(
図5(b)参照)と、アーマチュア146a3を車輪ハブ142aのディスク部142a1の方へ押し付けるためのばね146a5とを有している。アーマチュア146a3の中央に設けられたスプライン穴146a6に可動軸部材144aが摺動可能に挿入されており、ばね146a5は、第1ばね受け部144a2によって支持されている。第1電磁クラッチ146aは、非通電状態ではばね146a5のばね力によりアーマチュア146a3の係合部146a4が車輪ハブ142aの係合部142a4に係合し、通電状態ではアーマチュア146a3がばね146a5のばね力に抗してヨーク146a1に吸引されアーマチュア146a3と車輪ハブ142aとの係合が解除されるようになっている。
 
【0024】
  車椅子10はまた、車軸134aの円筒部134a3内の内方に配置され、軸受148a7によって可動軸部材144aに回転可能に支持された第2電磁クラッチ148aを備えている。第2電磁クラッチ148aは、コイル148a2を内包したほぼ円筒形のヨーク148a1と、コイル148a2に対向する位置に配置され、ほぼディスク状のアーマチュア148a3と、アーマチュア148a3の回転軸140aのディスク部140a2に面する側に設けられた係合部148a4(
図6(b)参照)と、アーマチュア148a3を回転軸140aのディスク部140a2の方へ押し付けるためのばね148a5とを有している。アーマチュア148a3の中央に設けられたスプライン穴148a6に可動軸部材144aが摺動可能に挿入されており、ばね148a5は、第2ばね受け部144a3によって支持されている。第2電磁クラッチ148aは、非通電状態ではばね148a5のばね力によりアーマチュア148a3の係合部148a4が回転軸140aの係合部140a3に係合し、通電状態ではアーマチュア148a3がばね148a5のばね力に抗してヨーク148a1に吸引されアーマチュア148a3と回転軸140aとの係合が解除されるようになっている。
 
【0025】
  なお、面接触する係合部140a3と係合部148a4、および係合部142a4と係合部146a4は、高摩擦係数の材料(例えば、ゴム)又は互いに相補する形状の歯面で形成され、又は高摩擦コーティングが施されている。
 
【0026】
  以上の記載では、車椅子10の右側部分について説明してきたが、左側部分についても、以下の3つの相違点を除いて、右側部分と実質的に同様である。これらの相違点について、
図3、
図7および
図8を参照して説明する。
 
【0027】
  第1の相違点として、車椅子10の右側部分には、2基の電磁クラッチ(第1電磁クラッチ146a、第2電磁クラッチ148a)が装備されているが、車椅子10の左側部分には、1基の電磁クラッチ(第3電磁クラッチ150b)のみが装備されている。なお、車椅子10の左側部分には第3電磁クラッチ150bしか装備されていないので、回転軸140bを支持するため、車軸134bのディスク部134b1の内方に、ディスク部134b1と同心となるように固定された内筒部134b4が設けられている(
図3、
図7(b)、
図8(b)参照)。
 
【0028】
  第2の相違点として、
図6、
図7(b)、
図8(b)に示されるように、車椅子10の左側部分にも、回転軸140bが設けられているが、軸部140a1とディスク部140a2とを有する回転軸140aとは異なり、回転軸140bは、軸部140b1のみを有し、ディスク部を有していない。すなわち、左側部分では、回転軸140bは、車輪ハブ142bの軸受142b6および内筒部134b4の軸受134b5によって回転可能に支持されている。回転軸140bの中央部にはばね受け部140b2が設けられている。回転軸140bの外端には、ハンドリムスポーク受け部材20b2が固定されており、ハンドリムスポーク受け部材20b2には、ハンドリムスポーク20b1が連結されている。回転軸140bの軸部140b1は、回転軸140aの軸部140a1と連結スリーブ(図示せず)を介して連結することによって1本の回転軸を形成している。
 
【0029】
  第3の相違点として、左側部分には、右側部分に設けられている可動軸部材144aに相当する構成要素が設けられていない。
 
【0030】
  第3電磁クラッチ150bは、車椅子10の中心線に対して、第1電磁クラッチ146aと線対称となる構成を有している。すなわち、第3電磁クラッチ150bは、コイル150b2を内包したほぼ円筒形のヨーク150b1と、コイル150b2に対向する位置に配置され、ほぼディスク状のアーマチュア150b3と、アーマチュア150b3の車輪ハブ142bのディスク部142b1に面する側に設けられた係合部150b4と、アーマチュア150b3を車輪ハブ142bのディスク部142b1の方へ押し付けるためのばね150b5とを有している。アーマチュア150b3の中央に設けられたスプライン穴150b6に回転軸140bの軸部140b1が摺動可能に挿入されており、ばね150b5は、ばね受け部140b2によって支持されている。第3電磁クラッチ150bは、非通電状態ではばね150b5のばね力によりアーマチュア150b3の係合部150b4が車輪ハブ142bの係合部142b4に係合し、通電状態ではアーマチュア150b3がばね150b5のばね力に抗してヨーク150b1に吸引されアーマチュア150b3と車輪ハブ142bとの係合が解除されるようになっている。
 
【0031】
  第1電磁クラッチ146aは右車輪14aに力を伝達するための装置、第2電磁クラッチ148aは左車輪14b又は右車輪14aに力を伝達するための装置、第3電磁クラッチ150bは左車輪14bに力を伝達するための装置である。これらの電磁クラッチ146a、148a、150b自体は、公知の装置である。なお、参照符号152a、152bは、コイルに通電するための通電コネクタである。
 
【0032】
  車椅子10はさらに、右側ハンドリム20aの外面に配置された第1センサ20a3、第2センサ20a4と、左側ハンドリム20bの外面に配置された第3センサ20b3、第4センサ20b4と、各ハンドリム20a、20bの内部にそれぞれ配置されたセンサ信号発信部(いずれも図示せず)と、所定個所に配置された制御装置(図示せず)とを備えている。各センサ20a3、20a4、20b3、20b4と各センサ信号発信部は無線又は有線で接続されており、各センサ信号発信部と制御装置も無線又は有線で接続されている。
 
【0033】
  各電磁クラッチ146a、148a、150bへの通電又は非通電は、ハンドリム20a、20bに配置された各センサ20a3、20a4、20b3、20b4への手指の接触又は非接触によって行われるようになっている。すなわち、あるセンサに手指が接触すると、センサ信号発信部、次いで制御装置に信号が送られ、送られた信号に応じて各電磁クラッチ146a、148a、150bに通電されるようになっている。右側のハンドリム20aには、2つのセンサ20a3、20a4が配置されている。したがって、センサ20a3、20a4への手指の接触の順序を組み合わせることにより、各電磁クラッチ146a、148a、150bへの通電パターンを3通りに設定することができる。同様に、左側のハンドリム20bにも、2つのセンサ20b3、20b4が配置されている。したがって、センサ20b3、20b4への手指の接触の順序を組み合わせることにより、各電磁クラッチ146a、148a、150bへの通電パターンを3通りに設定することができる。
図9は、通電パターンの一例を示したものである。
 
【0034】
図9に示される通電パターンに基づき具体的に説明する。第1センサ20a3と第2センサ20a4の両方に同時に接触すると、すべてのコイルに通電されない。第1センサ20a3、第2センサ20a4の順に接触すると、第1電磁クラッチ146aのみに通電される。第2センサ20a4、第1センサ20a3の順に接触すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電される。一方、第3センサ20b3と第4センサ20b4の両方に同時に接触すると、すべてのコイルに通電されない。第3センサ20b3、第4センサ20b4の順に接触すると、第3電磁クラッチ150bのみに通電される。第4センサ20b4、第3センサ20b3の順に接触すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電される。さらに、第1センサ20a3及び/又は第2センサ20a4と第3センサ20b3及び/又は第4センサ20b4に同時に接触すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電される。
 
【0035】
  図10及び
図11を参照して、車椅子10の作動について説明する。
図10は、車椅子10の右折又は左折走行を示した模式的な平面図、
図11は、車椅子10の直進走行を示した模式的な平面図である。
 
【0036】
  まず、車椅子10の右折又は左折走行について説明する。右手を用いて右折しようとする場合には、第1センサ20a3に触れ、次いで第2センサ20a4に触れる(
図5(a)参照)。すると、第1電磁クラッチ146aのみに通電されるので、係合部140a3と係合部148a4とが係合し、かつ、係合部142a4と係合部146a4との係合が解除される(
図5(b)参照)。この状態で、ハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動軸部材144a次いでアーマチュア148a3を介して回転軸140a次いで回転軸140bに伝達されて左車輪14bを回転させるので、右車輪14aが回転しない状態で左車輪14bが回転し、これにより車椅子10は右折する(
図10(a)参照)。右手を用いて左折しようとする場合には、第2センサ20a4に触れ、次いで第1センサ20a3に触れる(
図6(a)参照)。すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電されるので、係合部142a4と係合部146a4とが係合し、かつ、係合部140a3と係合部148a4との係合が解除される(
図6(b)参照)。この状態で、ハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動軸部材144a次いでアーマチュア146a3を介して車輪ハブ142a次いで車輪スポーク14a2に伝達されて右車輪14aを回転させるので、左車輪14bが回転しない状態で右車輪14aが回転し、これにより車椅子10は左折する(
図10(b)参照)。右手を用いて前進しようとする場合には、第1センサ20a3と第2センサ20a4の両方に同時に触れる(
図4(a)参照)。すると、第1電磁クラッチ146aにも第2電磁クラッチ148aにも通電されず、係合部140a3と係合部148a4とが係合し、かつ、係合部142a4と係合部146a4とが係合する。この状態で、ハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動軸部材144a次いでアーマチュア148a3を介して回転軸140a次いで回転軸140bに伝達されて左車輪14bを回転させるとともに、可動軸部材144a次いでアーマチュア146a3を介して車輪ハブ142a次いで車輪スポーク14a2に伝達されて右車輪14aを回転させるので、車椅子10は前進する(
図11(a)参照)。
 
【0037】
  一方、左手を用いて左折しようとする場合には、第3センサ20b3に触れ、次いで第4センサ20b4に触れる(
図7(a)参照)。すると、第3電磁クラッチ150bのみに通電されるので、係合部140a3と係合部148a4とが係合し、かつ、係合部142b4と係合部150b4との係合が解除される(
図7(b)参照)。この状態で、ハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が回転軸140b次いで回転軸140aに伝達されて右車輪14aを回転させるので、左車輪14bが回転しない状態で右車輪14aが回転し、これにより車椅子10は左折する(
図10(c)参照)。左手を用いて右折しようとする場合には、第4センサ20b4に触れ、次いで第3センサ20b3に触れる(
図8(a)参照)。すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電されるので、係合部142b4と係合部150b4とが係合し、かつ、係合部140a3と係合部148a4との係合が解除される(
図8(b)参照)。この状態で、ハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が回転軸140b次いでアーマチュア150b3を介して車輪ハブ142b次いで車輪スポーク14b2に伝達されて左車輪14bを回転させるので、右車輪14aが回転しない状態で左車輪14bが回転し、これにより車椅子10は右折する(
図10(d)参照)。左手を用いて前進しようとする場合には、第3センサ20b3と第4センサ20b4の両方に同時に触れる。すると、第3電磁クラッチ150bにも第2電磁クラッチ148aにも通電されず、係合部140a3と係合部148a4とが係合し、かつ、係合部142b4と係合部150b4とが係合する。この状態で、ハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が回転軸140b次いで回転軸140aに伝達されて右車輪14aを回転させるとともに、回転軸140b次いでアーマチュア146b3を介して車輪ハブ142b次いで車輪スポーク14b2に伝達されて左車輪14bを回転させるので、車椅子10は前進する(
図11(b)参照)。
 
【0038】
  右手でハンドリム20aを、左手でハンドリム20bをほぼ同時に把持した場合には、各センサに触れた順序にかかわらず、第2電磁クラッチ148aのみに通電される。この状態で、ハンドリム20aを前方に回転させると、右車輪14aが回転する。また、ハンドリム20bを前方に回転させると、左車輪14bが回転する。これにより、車椅子10を自由に右左折させることができる(
図11(c)参照)。
 
【0039】
  なお、
図9に示される通電パターンは一例にすぎず、別の通電パターンを設定してもよい。
 
【0040】
  車椅子10は、面接触する係合部142a4と係合部146a4、係合部140a3と係合部148a4、係合部142b4と係合部150b4とによって回転力が伝達されるように構成されているが、平歯車と内歯車とのかみ合いによって回転力が伝達されるように構成してもよい。また、第2電磁クラッチ148aを車椅子10の右側部分ではなく左側部分に設けるように構成してもよい。
 
【0041】
  本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
 
【0042】
  たとえば、図示した車椅子の構成要素の細部は単なる例示的なものであり、これらの細部を修正してもよい。
 
 
【解決手段】左右のハンドリムと、一方の側のハンドリムを回転させることによって生ずる回転力を駆動機構を介して反対側の車輪に伝達する回転軸と、一方の側のハンドリムを回転させることによって生ずる回転力を駆動機構を介して同じ側の車輪に伝達する車輪ハブとを備え、駆動機構が、各ハンドリムの外面にそれぞれ配置された左右二対のセンサと、車椅子の右側に配置され、右車輪に回転力を伝達するための第1の無励磁形電磁クラッチと、車椅子の右側又は左側に配置され、反対側の車輪に回転力を伝達するための第2の無励磁形電磁クラッチと、前記左車輪に回転力を伝達するための第3の無励磁形電磁クラッチとを有する車椅子が提供される。