特許第6493952号(P6493952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493952
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】リードフレーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20190325BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20190325BHJP
【FI】
   H01L23/50 D
   H01L33/62
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-171974(P2014-171974)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-46488(P2016-46488A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】517363861
【氏名又は名称】大口マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱木 薫
(72)【発明者】
【氏名】豊吉 靖生
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−133763(JP,A)
【文献】 特表2004−522297(JP,A)
【文献】 特開2014−086686(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/117112(WO,A1)
【文献】 特開2014−146827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
H01L 33/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅系の材料からなる金属板より形成されていて、側面とハーフエッチング面と前記側面及びハーフエッチング面以外の面を有し、
前記金属板の側面及びハーフエッチング面にのみ、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきが形成され、かつ、前記金属板の側面及びハーフエッチング面に形成されためっきは、前記Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきのみであり、
前記金属板の前記側面及びハーフエッチング面以外の面は平坦に形成され、
前記金属板の前記側面及びハーフエッチング面以外の面における半導体素子又はLED素子が搭載される面となるリードフレームの表面における、前記Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきが形成されている側面と該Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきが形成されているハーフエッチング面とに囲まれた所定部位には、貴金属めっき層が平坦に形成され、
前記金属板の前記側面及びハーフエッチング面以外の面における前記貴金属めっき層を形成した部位以外の全ての部位は、前記金属板をなす銅系の材料が露出し、
前記貴金属めっき層は、前記金属板をなす銅系の材料に対して、Ni(又はNi合金)/Pd(又はPd合金)/Au(又はAu合金)/Ag(又はAg合金)、Ni(又はNi合金)/Pd(又はPd合金)/Ag(又はAg合金)/Au(又はAu合金)の順に積層されてることを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記各種合金めっきの厚さが、0.02〜2.0μmであることを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
リードフレーム材料の金属板にレジストによるめっき用マスクを形成する工程と、
前記めっき用マスクから露出している前記金属板にめっきを形成する工程と、
レジストにより、形成された前記めっき部分を覆い、要求されるリードフレーム形状を得るためのエッチング用マスクを形成する工程と、
エッチングにより金属板に貫通加工およびハーフエッチング加工を施す工程と、
エッチング加工をした貫通面およびハーフエッチング面にSn,Znめっき又はそれらの金属を含む各種合金めっきを施す工程と、
を有することを特徴とするリードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム及びその製造方法に関し、特に樹脂との密着性に優れたリードフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージは、金属製のリードフレームと封止用樹脂が主に使用されており、リードフレームは、銅合金が多用され、封止用樹脂は、エポキシ樹脂等が主流を占めている。
【0003】
また、半導体パッケージの放熱用として、ヒートスプレッダと呼ばれる部品の材料は、銅板あるいは銅合金板が使用される場合があり、リードフレームとヒートスプレッダは封止用樹脂で固定されている。
【0004】
このように、銅及び銅合金を用いた金属材料と樹脂とが接合している製品では、その密着性がしばしば問題になり、樹脂密着性を良好にする方策として、アンカー効果を得る為にリードフレーム及びヒートスプレッダの表面を粗化処理する方法が採用されている。
【0005】
しかし、これらの方法の問題点としては、例えばQFN(Quad Flat Non−Lead)タイプの半導体パッケージでは、封止用樹脂の下面に接続端子が露出しており、金属材料の下面を粗化すると樹脂漏れを誘発する場合があり、その漏れた樹脂は、粗化によって剥離が難しくなるというジレンマを持っている。そのため、従来、部分的に粗化処理をする方法が提案されているが、これらの処理方法はコストアップにつながるという問題点をもっている。
【0006】
また、銅材の粗化処理は、高温加熱をすることで粗化面の銅酸化が進み酸化膜の剥離が起こりやすくなり、加熱前よりも樹脂密着性が低下することになり、半導体パッケージとしての充分な信頼性を得るには至っていない。
【0007】
これらの粗化処理に代わる方策として、従来、特許文献1、特許文献2、特許文献3に示す技術が開示されている。
【0008】
特許文献1には、半導体装置等の電子部品の放熱板において、樹脂系接着剤との接着性を向上させる方法として、アミノシラン化合物を0.001%以上含む溶液中に、Ni又はNi合金メッキ付き金属板又は条材を浸漬し、接着剤にて樹脂と接着する部分の最表面にアミノシラン化合物皮膜を形成することが開示されている。
【0009】
特許文献2には、銅板を基板として、ニッケルめっき層を形成させ、その上にシランカップリング剤塗布層またはポリアクリル酸の皮膜を形成させて半導体用放熱板とし、これに半導体素子およびプリント基板を接着し、トランスファーモールド樹脂で半導体素子を封止し、接着樹脂との密着性に優れた半導体用放熱板を得ることが開示されている。
【0010】
特許文献3には、最表面にSi換算付着量で0.5mg/m以上のシラン化合物被膜が形成され、その下層に厚さ1000〜2000Åの酸化皮膜が形成された銅又は銅合金板又は条材であり、40℃〜60℃のシランカップリング剤水溶液を、銅又は銅合金板又は条材の表面に塗布して該表面にシラン化合物被膜を形成した後、これを加熱処理し、前記シラン化合物皮膜の下層に前記銅又は銅合金板又は条状の酸化皮膜を厚さ1000〜2000Åの厚さで形成し、樹脂密着性に優れる銅合金板又は条材を得ることが開示されている。
【0011】
これら従来の銅及び銅合金条材の化学的方法による表面処理では、樹脂密着性を十分に向上させることは困難であり、依然としてリードフレームと樹脂との密着性を向上させる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−342580号公報
【特許文献2】特開2002−270740号公報
【特許文献3】特開2005−226096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、樹脂密着性を向上させるためのその他の方策として、素材となる銅材料表面をSnまたはその合金めっき、Znまたはその合金めっき処理する方法がある。
その場合、まず材料表面全体を、Sn,Zn又はそれら金属を含む各種の合金めっき処理をし、その後、めっき面をDFRによってマスキングした後に、エッチングを行うことにより所望のリードフレームを製造する。そして、結果的に、エッチング溶解されない材料面は、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金のめっき処理がなされ、エッチングされた溶解面については、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金のめっき処理されていないリードフレームが成形される。
【0014】
或いは、エッチング、もしくはプレスにて成形されたリードフレームに、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種の合金めっき処理を施し、フレーム全体をSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき処理する方法もある。この場合は、エッチング溶解面やプレスの切断面についても、全てSn,Zn又はそれらの金属を含む各種の合金めっき処理がされることになる。
【0015】
このように、どちらの方法においても、元々の材料表面は、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金のめっきがなされるので、例えば材料表面に光沢が必要になるLED等の照明用途のリードフレームの場合は、材料表面をSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきをすることによって、材料表面に光の拡散が起きてしまうために、必要な光沢度を確保することができなくなる。
【0016】
このためLED等の照明用途のリードフレームの場合は、樹脂の密着性を向上させたくとも、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金のめっき処理を行うことはできなかった。
【0017】
また、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき処理によって、リードフレームの樹脂密着性は向上するが、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき処理していないリードフレームの材料表面と比べて、ワイヤーボンディング性が格段に低下してしまう。
【0018】
そのため、本来はSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき処理を行った方が望ましいリードフレームであっても、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき処理することの出来ないリードフレームも存在している。
【0019】
上記実情に鑑み、本発明は、例えば素材面の光沢が必要なLED用途のリードフレームの場合において、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき加工を行っても、表面光沢を損なうこと無く、且つ、ワイヤーボンディング性を低下させること無く、樹脂密着性を向上させることができるリードフレームと、その製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明のリードフレームは、銅系の材料からなる金属板より形成されていて、側面とハーフエッチング面と前記側面及びハーフエッチング面以外の面を有し、前記金属板のリードフレームの側面及びハーフエッチング面にのみ、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき層が形成され、かつ、前記金属板の側面及びハーフエッチング面に形成されためっきは、前記Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきのみであり、前記金属板の前記側面及びハーフエッチング面以外の面は平坦に形成され、前記金属板の前記側面及びハーフエッチング面以外の面における半導体素子又はLED素子が搭載される面となるリードフレームの表面における、前記Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきが形成されている側面と該Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきが形成されているハーフエッチング面とに囲まれた所定部位には、貴金属めっき層が平坦に形成され、前記金属板の前記側面及びハーフエッチング面以外の面における前記貴金属めっき層を形成した部位以外の全ての部位は、前記金属板をなす銅系の材料が露出し、前記貴金属めっき層は、前記金属板をなす銅系の材料に対して、Ni(又はNi合金)/Pd(又はPd合金)/Au(又はAu合金)/Ag(又はAg合金)、Ni(又はNi合金)/Pd(又はPd合金)/Ag(又はAg合金)/Au(又はAu合金)の順に積層されてることを特徴とする。
【0021】
その場合、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき層の厚さは、0.02〜2.0μmであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係るリードフレームの製造方法は、リードフレーム材料である金属板にレジストによるめっき用マスクを形成する工程と、めっき用マスクから露出している金属板部分にめっきを形成する工程と、レジストにより、形成されためっき部分を覆い、要求されるリードフレーム形状を得るためのエッチング用マスクを形成する工程と、エッチング加工により金属板に貫通加工およびハーフエッチング加工を施す工程と、エッチング加工をした貫通面およびハーフエッチング面にSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきを施す工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
更に、本発明によれば、Sn,Znめっき又はそれらの金属を含む各種合金めっきは、電気めっきが好ましいが、その他に、化学めっきや真空蒸着などの皮膜ができるめっきであれば如何なるめっきでもよく、また、本発明のリードフレームにおいては、めっき厚は、0.02〜2.0μm程度が適当である。めっき厚が0.02μm以下の場合には効果が不十分であり、逆に、2.0μm以上の場合にはめっき効果が増大しないからである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、エッチング溶解面(製品側面、及びハーフエッチング部分)のみに限定して、部分的にSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金によるめっき処理を行うようにしたから、リードフレームと樹脂との密着性を一段と向上させることができる。
【0027】
即ち、従来、表面光沢が必要なリードフレームにおいては、材料表面の全面にSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきを行ったのでは、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金をめっきしたことによる影響で、めっき後の表面光沢度を確保できないため、また、ワイヤーボンディング性が格段に低下するため、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金のめっき処理を行うことはできなかったが、本発明による部分的Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき法を適用することで、LED等の照明用途のリードフレームであっても、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきされるのはエッチング溶解面だけになるので、めっき後の光沢度に影響を及ぼすことなく、リードフレームとリフレクタ樹脂との密着性を向上させることが可能となる。
【0028】
加えて、QFNタイプのリードフレームやその他IC用リードフレームにおいても、部分的なSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきによる樹脂密着性の向上は可能であり、エッチング溶解面である製品側面へのSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっきはもちろんのこと、表面にハーフエッチング面を追加したり、既存のハーフエッチング面の面積を増やすことで、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき面積は増加し樹脂密着性を向上させることができる。テープレスQFNについても、端子側面がSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき処理されるため、樹脂密着性を向上させることができる。
【0029】
また、従来、銅粗化処理等によって樹脂密着性の向上を図った場合には、経時変化やアッセンブリによる加熱処理等により、粗化面の銅酸化が進み酸化膜剥離が起こりやすくなり、密着性が劣化するケースが少なくないが、本発明方法による場合は、経時変化や加熱処理等により形成されるSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金酸化膜が樹脂との密着性を向上させ、また、これらの酸化膜は加熱等で密着性が劣化することはない。
【0030】
更に、部分的なSn,Zn又はそれら金属を含む各種合金めっきを行うためには、Sn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき用のマスクが必要になるが、本発明では、エッチング用のマスクをそのままSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき用のマスクとして使用するので、エッチング加工からSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき処理を同一装置により連続処理することが可能となり、部分Sn,Zn又はそれら金属を含む各種合金めっき処理をしたリードフレームを低コストで生産することが可能となる。
【0031】
又、本発明方法により、リードフレームの形状やデザインにおいて、その用途(LED用、IC用)にかかわらず、部分的にハーフエッチング部分を追加したり、既存のハーフエッチング面積を増やしたりすることによって、Sn,Zn又はそれら金属を含む各種合金めっき処理面積は増大し、更に樹脂密着性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は本発明に係るリードフレームの製造方法の実施例1の工程を示した図で、(1)は金属板にレジスト層を形成した図、(2)はめっきマスクを形成した図、(3)はめっき層を形成した図、(4)はめっきマスクを剥離した図、(5)はめっきが形成された金属板の両面にレジスト層を形成した図、(6)はエッチングマスクを形成した図、(7)はエッチング後の図、(8)はエッチングマスクを利用して部分的にSn,Zn又はそれらの金属を含む各種合金めっき処理を行った図、(9)はエッチングマスクを剥離した図である。
図2図2は実施例および比較例で作製した試験片の樹脂密着強度の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図1を参照して本発明に係るリードフレームの製造方法を説明する。
最初の工程は、リードフレーム素材となるべき金属板1の表裏面にフォトレジストをラミネートしてフォトレジスト層2を設け、その上にめっきパターンの形成されためっきマスク3を被せ、フォトリソグラフィ工程(露光及び現像)でレジストに転写し、めっきパターンを描画する工程である。
その工程は、金属板1上にフォトレジスト(例えば、ドライフィルムレジスト)をラミネートし(1)、めっきパターンの形成されたガラスマスクをフォトリソグラフィ工程(露光及び現像)でレジストに転写し、めっきパターンを金属板1上に描画し(2)、次に、電解めっき法によってNi/Pd/AuあるいはAgめっき4を施し、Ni/Pd/AuあるいはAg被膜を形成する(3)。
【0034】
次に、金属板1の両面に形成されているめっきマスク3を水酸化ナトリウム水溶液により剥離し(4)、その後再度、金属板1上にフォトレジストをラミネートし(5)、リードフレームパターンの形成されたガラスマスクをフォトリソグラフィ工程でレジストに転写し(6)、塩化第二鉄液を用いたエッチングで余分な金属部分を除去してリードフレーム形状を形成する(7)。
【0035】
次に、電解めっき法によって、SnまたはZnめっき処理を行う(8)。それにより、エッチング溶解面(金属板1の側面、及びハーフエッチング部分)のみに限定して、SnまたはZnめっきが0.02〜2.0μmの厚みで施される。
【0036】
最後に、金属板1の両面に形成されているエッチングマスクを水酸化ナトリウム水溶液により剥離することにより、本発明によるリードフレーム(9)が形成される。
【0037】
かくして、本発明によれば、封止樹脂との密着性が向上し、さらに、ワイヤーボンディング性も従来と同等のリードフレームを提供することができる。なお、本発明では、金属板1の材料としては、銅系の材料が好適である。
【実施例1】
【0038】
金属板1として厚さが0.150mmの銅材を用いて、両面にドライフィルムレジスト(旭化成イーマテリアルズ株式会社:AQ-2058)を貼り付け、レジスト層を形成した。次に、めっきを形成するためのパターンが形成された上面側用と裏面側用のガラスマスクを用いて、露光及び現像を行うことで、めっきを形成する部分のレジストを除去し、部分的に金属板表面を露出させためっきマスクを形成した。
【0039】
次に、めっき加工を行なって金属板表面の露出部分にめっきを形成した。本実施例では、金属板側から順に、設定値1.0μmのNiめっき、設定値0.02μmのPdめっき、設定値0.007μmのAuめっきを施して、3層のめっきを形成した。
【0040】
次に、金属板の両面に形成されているめっきマスクを3%の水酸化ナトリウム水溶液により剥離し、更に3%の硫酸による洗浄処理も行なった。
【0041】
次に、めっきが形成された金属板の両面にドライフィルムレジスト(旭化成イーマテリアルズ株式会社:AQ-44096)を貼り付けてレジスト層を形成し、リードフレームの形状が形成されたガラスマスクを用いて両面を露光し現像を行ってエッチングマスクを形成した。
【0042】
次に、塩化第二鉄液を用いてスプレーエッチング加工を行い、リードフレームの形成を行った。エッチング加工は、液温70℃、比重1.47の塩化第二鉄液を用い、搖動するスプレーノズルによって0.3MPaの設定圧力で噴射させ、約160秒間の処理を行なった。
【0043】
次に、エッチング溶解面に付着した銅結晶をスプレー噴射による硫酸洗浄にて除去した後、電解めっき法によって、Znめっき処理を行った。この電気Znめっき浴は、NaOH 5g/l、NaCN 35g/l、および、Zn(CN)230g/lから構成され、電流密度を3A/dmで電気Znめっきして、膜厚1μmのZnめっき層を得た。
【0044】
次に、Znめっき面に付着したZnめっき処理液の残渣物をスプレー噴射による塩酸洗浄にて除去し、その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてエッチングマスクを剥離した。その後、硫酸による酸処理を行い表面を乾燥させ、製品側面およびエッチング溶解面が部分的にZnめっきされた、実施例1のリードフレームを得た。
【実施例2】
【0045】
電気Znめっきの膜厚を0.2μmにしたことを除いて、実施例1で行ったのと同様の方法で実施例2のリードフレームを得た。
【実施例3】
【0046】
Znの代わりにSnめっきを適用することを除いて、実施例1で行ったのと同様の方法で実施例3のリードフレームを得た。この電気Snめっき浴は、硫酸第一スズ55g/l、硫酸100g/l、クレゾールスルホン酸60g/l、ゼラチン2g/l、および、βナフトール1g/lから構成され、電流密度を2A/dmで電気Snめっきして、膜厚1μmのSnめっき層を得た。
【実施例4】
【0047】
ZnめっきをAtotech社製ジンニーST AF210亜鉛ニッケル合金(Ni共析率12-15wt%)めっきを適用することを除いて、実施例1で行ったのと同様の方法で実施例4のリードフレームを得た。このジンニーST AF210亜鉛ニッケル合金めっきは、塩化カリウム213g/l、塩化亜鉛42g/l、および、塩化ニッケル6水和物121g/lの基本液に、添加剤としてジンニーACAF211を10ml/l、ジンニーACAF212を20ml/l、ジンニーACAF214を20ml/l、ジンニーACAF216を70ml/lを添加しためっき液から構成され、電流密度を2A/dmで電気めっきして、膜厚1μmのZnNi合金めっき層を得た。
【実施例5】
【0048】
Niの代わりにNiPめっきを適用することを除いて、実施例1で行ったのと同様の方法で実施例5のリードフレームを得た。この電気NiPめっき浴は、硫酸ニッケル250g/l、塩化ニッケル50g/l、ホウ酸50g/l、および、ノボプレートHS(アトテックジャパン(株))30ml/lから構成され、電流密度を2A/dmで電気Snめっきして、膜厚1μmのNiPめっき層を得た。
【0049】
以上、実施例を説明したが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【比較例1】
【0050】
エッチング後にZnめっきを適用しなかったことを除いて、実施例1で行ったのと同様の方法で比較例1のリードフレームを得た。
【比較例2】
【0051】
エッチング後にZnめっきの代わりに、銅粗化処理を行なったことを除いて、実施例1で行ったのと同様の方法で比較例2のリードフレームを得た。銅粗化処理は粗化処理液(メック株式会社:CZ8100)をスプレー噴射することにより行った。この粗化処理液は液温35℃、比重1.145、銅濃度35g/Lに調液し、スプレー噴射にて粗化処理を行った。粗化面の表面粗さはSRa0.2〜0.4となった。
【比較例3】
【0052】
Znめっきの代わりにAgめっきを適用することを除いて、実施例1で行ったのと同様の方法で比較例3のリードフレームを得た。Agめっき浴は、KCN 40g/l、AgCN 35g/l、KCO 22g/lから構成され、電流密度3A/dmで電気Agめっきして膜厚0.2μmのAgめっき層を得た。
【0053】
このようにして形成されたリードフレームから樹脂密着性評価試験のための試験片を切り出し、これら試験片の樹脂密着性を判断するために、下記の方法により樹脂密着強度を評価した。即ち、金属製基材の上に、金型注入圧力100kg/cm、金型温度175℃×90秒の条件で直径2mmの大きさの樹脂を4つ形成し、175℃のオーブン中で8時間に亘って硬化処理して、4点の評価用樹脂見本を形成した。これら評価用樹脂見本をそれぞれ真横から押して樹脂が剥離したときの荷重を測定し、この値を樹脂の接着面積で割って単位面積あたりの荷重に換算した。このようにして得られた4点の荷重の平均をとって樹脂密着強度とした。
【0054】
上記のようにして、実施例および比較例で作製したリードフレームのそれぞれに対して樹脂密着強度を評価した結果、図2に示したように、樹脂密着強度は、実施例1のリードフレームでは23MPaであり、実施例2のリードフレームでも23MPaであり、実施例3のリードフレームでは19MPaであり、実施例4のリードフレームでは19MPaであり、実施例5のリードフレームでは19MPaであり、比較例1のリードフレームでは10MPaであり、比較例2のリードフレームでは13MPaであり、比較例3のリードフレームでは12MPaであった。
【0055】
これらの結果から、製品側面およびハーフエッチ面のみを薄くSnまたはZnめっきした場合には、SnまたはZnめっきしない場合の2倍程度の密着強度が得られることが確認された。また、Znのめっき厚は0.2〜1μmの範囲では密着強度に変化はなく十分に高いレベルにあった。また、SnまたはZnめっきの代わりに、銅粗化処理を行った場合や、Agめっきを行った場合には、SnまたはZnめっきのような高い密着強度が得られないことがわかった。
一方、ZnNiめっきやNiPめっきを行った場合にも、SnまたはZnめっきと同等レベルの高い密着強度が得られることがわかった。
符号の説明
【0056】
1・・・金属板
2・・・レジスト層
3・・・めっきマスク
4・・・めっき
5・・・エッチングマスク
6・・・SnまたはZnめっき処理面
図1
図2