(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1には、本実施形態に係るコンプライアントアクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」と称する)の概略構成図が示されている。この図において、アクチュエータ10は、外力に応じた柔軟な駆動を可能にするアクチュエータであって、作動流体の圧力により駆動力を発生させる流体圧シリンダ11と、流体圧シリンダ11に前記作動流体を供給する流体供給手段12と、流体圧シリンダ11の作動を制御するとともに、流体供給手段12から流体圧シリンダ11への前記作動流体の供給を制御する制御手段13とを備えている。
【0011】
前記作動流体としては、作用する磁界の強さに応じて粘性(粘度)が変化する磁性流体(MR流体)が利用される。この磁性流体は、表面が界面活性剤で覆われた高濃縮の強磁性を有する磁性粒子等を水若しくは油中に分散させてなる機能性流体の一種であり、当該磁性粒子が磁界の影響下で拘束されることで、液体の見かけ上の粘性を変えるようになっている。なお、特に限定されるものではないが、本実施形態では、磁性流体として、非磁化状態での最小抵抗力を低減するため、前記磁性粒子の直径を約130nmとし、当該磁性粒子の濃度を15%としたナノMR流体が用いられている。
【0012】
前記流体圧シリンダ11は、中空のシリンダチューブ15と、シリンダチューブ15の
図1中左右両端側を閉塞するように取り付けられた第1及び第2のキャップ16,17と、シリンダチューブ15の内部空間15Aを移動可能に配置され、当該移動によって前記駆動力を発生させるピストン19と、ピストン19から
図1中右方に延びて外部に突き抜けるように配置されるとともに、ピストン19の移動に伴ってシリンダチューブ19の内部空間15Aの内外方向(
図1中左右方向)に進退可能なピストンロッド20とを備えている。
【0013】
前記シリンダチューブ15は、円筒状をなし、その内部空間15Aは、ピストン19により、その
図1中左右両側に位置する2つの空間に仕切られ、これら2つの空間は、それぞれ磁性流体が充填された第1及び第2のチャンバ22,23となっている。
【0014】
図1中左端側に位置する第1のキャップ16には、ピストン19の同図中左方に位置する第1のチャンバ22から外部に解放する第1のポート25が形成されている。この第1のポート25は、前記流体供給手段12に繋がっており、流体供給手段12の作動によって、第1のチャンバ22に対する磁性流体の供給若しくは排出が可能となっている。また、第1のキャップ16には、外部への空気抜きのためのブリードポート26が設けられ、当該ブリードポート26は、第1のポート25の途中から分岐して外部に解放するように形成されている。なお、空気抜きを行わないときには、図示しないキャップ等によりブリードポート26が閉塞される。
【0015】
図1中右端側に位置する第2のキャップ17には、ピストン19の同図中右方に位置する第2のチャンバ23から外部に解放する第2のポート27が形成されている。この第2のポート27も、流体供給手段12に繋がっており、流体供給手段12の作動によって、第2のチャンバ23に対する磁性流体の供給若しくは排出が可能となっている。また、第2のキャップ17には、同図中左右方向に貫通する貫通穴29が形成されており、ピストン19から延びるピストンロッド20の先端側20Aが、第2のキャップ17の
図1中右端から外部に突出するようになっている。
【0016】
前記ピストン19は、シリンダチューブ15の内径とほぼ同一の外径を有する円柱状に形成され、シリンダチューブ15の内部空間15Aを
図1中左右方向に移動可能となるように配置されている。なお、図示省略しているが、シリンダチューブ15の内周面とピストン19の外周面との間には、これらの間の磁性流体の通過を阻止するために、シール材やリング類が介装されている。
【0017】
このピストン19は、
図2にも示されるように、その外周部分を構成し、非磁性材料によりほぼ円筒状に形成されたアウターハウジング31と、アウターハウジング31の内部空間で周方向に沿って等間隔となる4箇所に設けられたMRプラグ33と、各MRプラグ33の間に配置され、周囲に磁界を発生させる磁界発生手段を構成する電磁石34と、図示省略したセンサ類とからなる。
【0018】
前記MRプラグ33は、
図1及び
図2に示されるように、第1及び第2のチャンバ22,23を連通して、これらチャンバ22,23間の磁性流体の流路となる連通流路36と、連通流路36を形成するプラグ本体37とからなる。なお、本実施形態では、MRプラグ33を4箇所に設けているが、本発明はこれに限定されず、1若しくは複数箇所に設ける構成としても良い。
【0019】
このプラグ本体37は、
図2及び
図3に示されるように、円筒の断面形状に対し周方向180度間隔の2箇所を凹状の薄肉状に切り欠いたような外形をなしている。すなわち、プラグ本体37は、薄肉部分となる凹溝42と、当該凹溝42の周囲の円周面部分43とを備えている。ここで、凹溝42の形成部分42Aは磁性体で形成される一方、円周面部分43は非磁性体で形成されている。
【0020】
前記電磁石34は、
図2に示されるように、前記連通流路36内に磁界を発生可能に配置され、パーマロイ等の高い透磁率を有する材料の金属からなる電磁石コア45と、電磁石コア45に巻回されたコイル46とからなる。
【0021】
前記電磁石コア45は、
図4にも示されるように、円筒形状の一部分にほぼ相当する形状をなす磁石本体48と、磁石本体48の両端面に固定され、プラグ本体37の凹溝42に嵌め込まれる部位となる板状部材49とからなる。
【0022】
前記コイル46は、
図4に記載されていないが、磁石本体48に対し、
図4中上下方向に何重にも巻回されており、流体圧シリンダ11の外部に配置された図示しない電力供給装置から外部電力が供給される。そして、コイル46が通電すると、連通流路36の内部に磁界が発生することになる。
【0023】
以上の構成の電磁石34は、4箇所のMRプラグ33の各凹溝42間にそれぞれ装着されるとともに、凹溝42の形成部分42Aが磁性体で形成されていることから、各連通流路36を挟んでトロイダルコイルのように配置される。このような電磁石34の配置に加え、アウターハウジング31とプラグ本体37の円周面部分43が非磁性体で形成されていることから、連通流路36に磁場を効率的に集中させることが可能になる。
【0024】
ピストン19に設けられた前記センサ類は、図示省略しているが、連通流路36に生じた磁界の大きさを検出可能なホール効果センサ等の磁気センサと、ピストン19の位置を検出可能な位置センサ等からなる。
【0025】
前記ピストンロッド20は、
図1及び
図2に示されるように、MRプラグ33及び電磁石34よりも径方向内側となるピストン19の中心部分を貫通した状態で、当該ピストン19に相対移動不能に固定されている。なお、ピストンロッド20の内部には、コイル46や前記センサ類に接続されたケーブルを収容するケーブル収容部51が形成されている。ピストンロッド20は、ピストン19がシリンダチューブ15の内部空間15Aを移動すると、当該移動に伴って、その内部空間15Aの内外方向に進退するように移動する。そして、ピストンロッド20の移動に伴って、その先端側20Aに接続された部材等(図示省略)に対して、アクチュエータ10の出力となる駆動力を付与するようになっている。ここで、ピストンロッドの先端側20Aには、図示省略しているが、作用する外力等を検出するための力センサが設けられている。
【0026】
以上のように構成された流体圧シリンダ11では、電磁石34への電流供給によって連通流路36内に磁場が生成されると、その強さに応じて連通流路36を通過する磁性流体の粘度が変化する。すなわち、磁性流体は、磁界が強いほど、粘性が高くなって剪断応力が増大し、連通流路36の通過が妨げられる。従って、磁界の強さを調節することで、連通流路36を通過する磁性流体の流量、流速を調節することができる。特に、磁性流体は、所定値を越える強さの磁界が発生すると、このときの磁性流体の粘度により、連通流路36内の磁性流体の通過を阻止する性質のものが利用される。従って、所定値を越える強さの磁界が発生すると、連通流路36が、あたかも弁で閉塞されたかのような閉塞状態になり、第1及び第2のチャンバ22,23の間での磁性流体の移動が無くなる。なお、このときの磁界の強さは、磁性流体の性能や種類等によって定められる。従って、連通流路36は、磁界制御によって、磁性流体の通過を許容する解放状態と、当該通過を不能にする閉塞状態との切り換えが可能であり、通過する磁性流体の流量や流速の調整も可能な可変流量弁として機能することになる。
【0027】
前記流体供給手段12は、図示省略しているが、流体圧シリンダ11の第1及び第2のポート25,27に繋がる管路と、当該管路の途中に適宜配置されたバルブ類と、管路内に磁性流体を供給するポンプユニットと、流体圧シリンダ11に供給される磁性流体の流量を検出する流量センサと、第1及び第2のポート25,27の差圧を検出する圧力センサ等を含んで構成されている。前記ポンプユニットやバルブ類の作動は、前記制御手段13によって制御され、この制御に基づき、ポンプユニットが駆動すると、第1若しくは第2のポート25,27の何れか一方から、磁性流体が流体圧シリンダ11の一方のチャンバ22,23に供給され、他方のチャンバ22,23の磁性流体が、第1若しくは第2のポート25,37の何れか他方を通じて流体圧シリンダ11の外部に排出される。また、前記ポンプユニットが停止しているときは、外部から流体圧シリンダ11への磁性流体の流入がなされないことになる。
【0028】
前記制御手段13では、予め要求される本アクチュエータの性能や仕様と、前述した各センサからの検出結果に基づいて、流体供給手段12の前記ポンプユニットの作動が制御され、流体圧シリンダ11に供給される磁性流体の流量調整がされる。それに加えて、制御手段13では、電磁石34で発生させる磁界の強さを変化させるように磁界制御が行われ、連通流路36を通過する磁性流体に対し、粘性を変化させて流量や流速が調整される。
【0029】
この制御手段13では、以下に詳述する各モードに応じ、流体供給手段12から流体圧シリンダ11に供給される磁性流体の流量制御と、電磁石34への供給電流の調整による連通流路36内の磁界制御とがなされる。前記モードとしては、受動保持モード、受動バックドライブモード、クローズドピストンモード、オープンピストンモード、エクストラフローモードがある。次に、これらモードについて説明する。
【0030】
1)受動保持モード
このモードでは、流体供給手段12による流体圧シリンダ11への磁性流体の供給を行わずに、ピストン19を同一の位置に保持する。すなわち、このモードでは、連通流路36が、磁性流体の通過を不能にする閉塞状態となるように、電磁石34に供給される電流を調整して磁界の強さを所定値に制御することで、外部からの磁性流体の供給を行わずに、ピストン19を同一の位置に保持する。このモードにおいては、外力がピストンロッド20に作用した場合、その作用方向に応じて、ピストン19を介して第1若しくは第2のチャンバ22,23が圧縮され、圧縮された側のチャンバ22,23に存在する磁性流体は、連通流路36を通じて反対側のチャンバ22,23に流れようとする。ところが、このときの磁性流体は、磁界の制御による粘度の増加によって、連通流路36内を流れない状態になっているともに、流体圧シリンダ11に外部から磁性流体が供給されないため、第1及び第2のチャンバ22,23は、それぞれ磁性流体の流出入が行われない独立した状態となり、ピストン19が同一の位置に保持される。なお、このモードが選択されると、摩擦力を考慮し、予め設定された外力の想定値、若しくは、前記力センサによって検出されるピストンロッド20への作用外力の大きさに応じて、磁界制御が行われる。すなわち、このモードでは、これら外力に抗して連通流路36を閉塞状態にするための磁性流体の最低限の粘度が得られるように、当該粘度調整がなされ、電磁石34への供給電流を必要最小限とすることができる。
【0031】
このモードによれば、アクチュエータ10の駆動力が発生していない状態で、当該駆動力の伝達部分であるピストンロッド20に衝撃力等の外力が突然作用したときでも、当該ピストンロッド20を一定位置に保持し、不測の動作をしてしまう等の事態を回避することができ、人間とのインタラクションの安全性確保が期待できる。また、流体供給手段12を作動させない状態であるため、ピストンロッド20の一定位置の保持を省エネルギ下で行うことができる。
【0032】
2)受動バックドライブモード
このモードでは、流体供給手段12による流体圧シリンダ11への磁性流体の供給を行わずに、連通流路36を磁性流体が流れるようにして、外力によるピストン19の移動を許容する。すなわち、このモードでは、連通流路36が、磁性流体の通過を許容する解放状態となるように、磁界を発生させず、或いは、外力の大きさに応じて電磁石34に供給される電流を調整することで、磁性流体が外力に対して降伏して流れを許容する粘度となるように、磁界制御される。従って、このモードでは、外力がピストンロッド20に作用した場合、その作用方向に応じて、ピストン19を介して第1若しくは第2のチャンバ22,23が圧縮され、圧縮された側のチャンバ22,23の磁性流体は、連通流路36を通じて反対側のチャンバ22,23に流れることで、外力の作用方向へのピストン19の移動が許容される。
【0033】
3)クローズドピストンモード
このモードでは、流体供給手段12による流体圧シリンダ11への磁性流体の供給が行われるとともに、受動保持モードと同様に、連通流路36内に磁界を発生させて連通流路36を閉塞状態とし、連通流路36を介した第1及び第2のチャンバ22,23間の磁性流体の移動が阻止される。すなわち、このモードでは、流体供給手段12から第1若しくは第2の何れか一方のチャンバ22,23への磁性流体の供給により、ピストン19が何れか他方のチャンバ22,23の方向に移動する。このモードでのピストン19の移動速度は、使用目的や使用状態に応じて予め設定された目標速度になるように、前記位置センサ、前記流量センサの検出値に基づき、制御手段13により、流体供給手段12からの磁性流体の供給流量が制御される。また、このモードでは、ピストンロッド20から外部に伝達される駆動力が、使用目的や使用状態に応じて予め設定された所望の大きさとなるように、前記力センサ、前記磁気センサの検出値に基づき、制御手段13により、連通流路36内に発生する磁界の強さも制御される。すなわち、連通流路36内を通過する磁性流体の流量がゼロとなる磁界の強さの範囲において、磁界が強い程、連通流路36内の磁性流体の剪断応力が大きくなり、流体供給手段12から磁性流体が供給される加圧側のチャンバ22,23内の圧力が増大し、前記駆動力が大きくなる。
【0034】
このモードによれば、制御手段13により、流体供給手段12からの磁性流体の供給流量と、連通流路36内に発生する磁界の強さとが制御されることにより、アクチュエータ10の駆動速度と駆動力との組み合わせを自由に設定でき、例えば、ピストンロッドをゆっくりと力強く動かしたり、逆に、早く柔らかく動かしたり等、柔軟性を可変にしたアクチュエータ10の様々な挙動を実現可能になる。なお、柔軟性挙動が求められる場合には、ピストンロッド20への予期しない接触時の安全性確保の観点から、後述するオープンピストンモードに迅速に移行できるように、連通流路36を通過する磁性流体の流量をゼロとする最低限の磁界の強さにすると良い。一方、アクチュエータ10を動力として、建築物の解体、瓦礫撤去、金属の鋳造や打撃を行うような場合、すなわち、アクチュエータ10が高い衝撃を受けても所望の駆動力を得られるような硬い挙動が求められる場合には、連通流路36を通過する磁性流体の流量をゼロとする最大限の磁界の強さにすると良い。
【0035】
4)オープンピストンモード
このモードでは、流体供給手段12による流体圧シリンダ11への磁性流体の供給が行われるとともに、連通流路36を磁性流体が移動できるように、連通流路36内の磁界の強さが制御される。このモードでは、流体供給手段12からの磁性流体の供給により、ピストンロッド20から所望の駆動力が出力されている状態で、当該ピストンロッド20に駆動力の作用方向と反対方向の外力が作用した場合に、当該外力の大きさを考慮して、前記駆動力を柔軟に変更する機能を有する。すなわち、このモードには、外力の大きさに応じた次のサブモードが存在する。当該サブモードは、前記駆動力の作用方向と逆方向にピストン19を移動させる能動引きと、ピストン19の移動を行わない能動保持と、前記駆動力の作用方向と同一方向にピストン19を移動させる能動押しとからなる。これらサブモードは、ピストン19の摩擦力を考慮した上で、外力を検出する前記力センサ等の検出値に基づき、流体供給手段12からの流量制御と、連通流路36内の磁界制御とが行われる。前記能動引きでは、外力の作用方向にピストン19を移動させるように、前記駆動力を外力より小さくするように制御され、前記能動保持では、ピストン19が移動しないように外力と前記駆動力とが釣り合うように制御され、前記能動押しでは、外力の作用方向と反対方向にピストン19を移動させるように、前記駆動力を外力より大きくするように制御される。
【0036】
このモードでは、流体供給手段12から供給される流量制御と、連通流路36内の磁界制御とによって、外力を加味した柔軟な駆動力をアクチュエータ10に発生させることができる。このため、アクチュエータ10から駆動力が付与される相手側に対しては、アクチュエータ10から受ける衝撃を柔軟に緩衝できることになり、例えば、人間とのインタラクションにおける安全性確保に寄与することが期待される。
【0037】
また、連通流路36での磁性流体の移動が許容された状態であるため、弁等の機器や特段の制御手法を行いることなく、磁界制御による迅速な応答が可能となり、高いバックドライブ性能を発揮することができる。
【0038】
5)エクストラフローモード
このモードでは、前記オープンピストンモードと同様、流体供給手段12による流体圧シリンダ11への磁性流体の供給が行われるとともに、連通流路36を磁性流体が移動できるように、連通流路36内の磁界の強さが制御されるが、このモードは、ピストンロッド20の駆動方向と同一の外力が作用した場合の制御である。このモードでは、磁性流体が連通流路36を流れるようになっているため、ピストンロッド20の駆動方向と同一の外力が作用した場合、外力の作用方向の後側となる一方のチャンバ22,23内の磁性流体の不足分が、同前側の他方のチャンバ22,23内の磁性流体で速やかに補充される。従って、このような場合に、流体供給手段12による外部からの磁性流体の供給流量を増大させなくても良いため、流体供給手段12をパワーアップして作動する必要がなく、省エネルギで素早い対応が可能になる。
【0039】
従って、オープンピストンモード及びエクストラフローモードにあっては、流体供給手段12からの磁性流体の供給によるピストン19の駆動が行われている際に、当該ピストン19に外力が付与されることが想定されるような場合、当該外力の大きさや方向に関わらず、当該外力を考慮した所望のアクチュエータ10の挙動を素早く得ることができる。
【0040】
以上で説明した各モードは、アクチュエータ10の用途、駆動状態、使用目的、及び接続環境等の各種状況に応じて、所望のモードが自動若しくは手動で選択され、当該モードを実行するための各種制御が制御手段13によって行われる。以下、各モードの設定例を幾つか例示するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0041】
受動保持モードの際、所定値以上の外力が作用したときに、連通流路16内の磁界制御によって連通流路16を解放状態にし、受動バックドライブモードに移行する設定を採用できる。これによれば、予期しない事故や故障を素早く回避可能になる。
【0042】
また、クローズドピストンモードの際、所定値以上の外力が作用したときに、連通流路16内の磁界制御によって連通流路16を解放状態に切り換え、オープンピストンモードに移行する設定を採用できる。これによっても、予期しない事故や故障を素早く回避可能になる。
【0043】
逆に、オープンピストンモードの際、瞬間的に大きな駆動力を得るために、連通流路16内の磁界制御によって連通流路16を閉塞状態に切り換え、クローズドピストンモードに移行する設定を採用できる。これによれば、流体供給手段12から流体圧シリンダ11へ供給される磁性流体の流量を増大するよりも、省エネルギ下で素早い対応が可能になる。
【0044】
更に、前記能動保持のサブモードは、受動保持モードとは異なり、ピストンロッド20から駆動力を発生させた状態で、反対方向から作用した外力と相殺する状態であるため、例えば、アクチュエータ10の動力によって物体を変化させずに圧力を変化させる場合等、硬い静的物体への力制御時に適用することができる。
【0045】
また、受動保持モードの際、想定した外力よりも大きな外力が作用しても、ピストン19を同一位置に保持させたい場合に、連通流路16を閉塞状態から解放状態に切り換えるとともに、流体供給手段12からの磁性流体の供給を開始するオープンピストンモードの能動保持のサブモードに移行する設定を採用できる。
【0046】
更に、アクチュエータ10に駆動力を発生させる際に、人間との共存による安全性を確保するために、人間が居ない場合は、クローズドピストンモードを選択するが、人間が居る場合は、オープンピストンモードを選択する設定を採用できる。
【0047】
従って、このような実施形態によれば、制御系統、流体の管路構成及び弁等の機器を用いた複雑な構成を採用せずに、アクチュエータ10に対する様々な状況の変化に応じて、硬い状態若しくは柔らかい状態を選択し、任意の大きさの駆動力と駆動速度で動作させたり、停止状態を保持させたりすることができる。このため、ヒューマノイドロボット、介護用ロボット、手術用ロボット等の人間に関わるロボットに対する駆動装置のように、外力に対して柔軟な駆動が要求されるものに好適であるとともに、広範な用途への利用が期待できる。
【0048】
また、連通流路36内で発生する磁界の強さを制御することで、アクチュエータ10の柔軟性に関する駆動調整をする構成であるため、特別な流体回路や煩雑な制御系等を別途設ける必要がなく、磁界制御による高い応答速度により、簡単な構成で各モード間の切り換えを迅速に行うことが可能になる。その結果、アクチュエータ10に対して発生した外乱に対しても、素早い対応が可能になる。
【0049】
更に、要求されるアクチュエータ10の動作に応じて、連通流路36内で発生する磁界の強さや、流体圧シリンダ11に供給される磁性流体の流量を必要最小限にした状態で所望の制御を行うことができ、アクチュエータ19の駆動時における省エネルギ化を促進可能になる。
【0050】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。