特許第6493971号(P6493971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6493971-ハンドル用帯電防止金具 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6493971
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】ハンドル用帯電防止金具
(51)【国際特許分類】
   E05B 1/00 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   E05B1/00 311H
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-75168(P2015-75168)
(22)【出願日】2015年4月1日
(65)【公開番号】特開2016-194226(P2016-194226A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】峯村 知孝
【審査官】 秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−26107(JP,A)
【文献】 特開2002−309808(JP,A)
【文献】 特開2008−196159(JP,A)
【文献】 特開平7−106009(JP,A)
【文献】 米国特許第5713615(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面中心部の周囲に回り止め用の凸起を有する座部、及び前記座部の中心部を貫通して延び、先端側の外周面にねじを有する軸筒からなる受け座と、前記軸筒内に回転可能に挿通される駆動軸と、前記駆動軸に作動連結され、前記軸筒の基端部に連結されるハンドルレバーとを備え、前記受け座の前記軸筒を扉に穿設する取付穴に通すとともに、前記受け座の前記回り止め用の凸起を扉の取付穴の周囲に穿設する回り止め用の穴に嵌め込み、扉の背面側で前記軸筒にナットを締結して、扉に取り付ける形式の金属製のハンドルに装着され、前記ハンドルの帯電を防止するハンドル用帯電防止金具であって、
金属材からなり、
前記受け座の前記軸筒を挿通可能に形成されるリング状の本体と、
前記リング状の本体の一部に形成され、扉の回り止め用の穴に係合可能に突出される係止部と、
前記リング状の本体の一部に形成され、扉の背面に食い込み可能に突出される突起と、
を備え、
前記ハンドルを扉に取り付ける際に、扉の背面側で前記リング状の本体を前記軸筒の周囲に取り付けて扉の背面と前記ナットとの間に介装し、
前記ナットの締め込みにより前記リング状の本体を扉の背面に圧接することにより、前記突起を扉の背面に食い込み接触させて、扉にアースを取る、
ことを特徴とするハンドル用帯電防止金具。
【請求項2】
突起はリング状の本体の外周縁部又は一方の面又は内周縁部に設けられる請求項1に記載のハンドル用帯電防止金具。
【請求項3】
突起はリング状の本体に対称的に対にして設けられる請求項1又は2に記載のハンドル用帯電防止金具。
【請求項4】
突起はリング状の本体に切り起しにより形成される請求項1乃至3のいずれかに記載のハンドル用帯電防止金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重電機器、電気設備など各種の機器格納用のキャビネットやケースの扉その他各種の扉に使用するハンドル用帯電防止金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重電機器、電気設備などの機器格納用のキャビネットやケースの扉には各種のハンドルが取り付けられている。その一例が例えば特許文献1により開示されている。
この文献1のハンドルは所謂L型ハンドルで、座面の中心部の周囲に一対の回り止め用の凸起を有する座部、及び座部の中心部を貫通して延び、先端側の外周面にねじを有する軸筒からなる受け座と、軸筒内に回転可能に挿通される駆動軸と、駆動軸に作動連結され、軸筒の基端部に連結されるハンドルレバーと、駆動軸の先端に取り付けられる止め金とを備えて構成される。
このハンドルを扉に取り付けるときは、扉のハンドル取付位置にハンドルの軸筒を挿通可能な取付孔と、ハンドルの座部の一対の回り止め用の凸起を嵌挿可能な一対の回り止め用の穴をそれぞれ形成し、ハンドルの軸筒を先端から扉の取付穴に通すとともに、座部の各回り止め用の凸起を扉の各回り止め用の穴に嵌め込んで座部の座面を扉の正面に当接し、この状態から、扉の背面側で軸筒に歯付き座金を介して六角ナットを締結する。そして、駆動軸の先端に止め金を取付ねじにより取り付け、キャビネット又はケースの固定枠に受け金を取り付ける。
このようにしてハンドルを取り付けて、ハンドルレバーを回動操作することにより、駆動軸を回転し、止め金を回動して固定枠側の受け金に係脱するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−16797公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種のハンドルは、絶縁性を有する塗装を施された扉に取り付けられることが多く、また、ハンドルそれ自体が、通常、金属により形成されているため、ハンドル周囲の環境などによりハンドルレバーに静電気が帯電することがあり、ユーザーが扉を開閉するため、手でハンドルレバーに触ると、ハンドルの静電気がユーザーの人体に放電されて、電気ショック(痛み)を受けることがある、という問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、この種のハンドルの扉への取り付けに用いる受け座の軸筒を利用して簡易かつ確実に取り付け、ハンドルの静電気の帯電を防止し、ユーザーのハンドルレバーの操作の際に静電気の放電による痛みなどの電気ショックを防止することのできるハンドル用帯電防止金具を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
座面中心部の周囲に回り止め用の凸起を有する座部、及び前記座部の中心部を貫通して延び、先端側の外周面にねじを有する軸筒からなる受け座と、前記軸筒内に回転可能に挿通される駆動軸と、前記駆動軸に作動連結され、前記軸筒の基端部に連結されるハンドルレバーとを備え、前記受け座の前記軸筒を扉に穿設する取付穴に通すとともに、前記受け座の前記回り止め用の凸起を扉の取付穴の周囲に穿設する回り止め用の穴に嵌め込み、扉の背面側で前記軸筒にナットを締結して、扉に取り付ける形式の金属製のハンドルに装着され、前記ハンドルの帯電を防止するハンドル用帯電防止金具であって、
(イ)金属材からなり、
(ロ)前記受け座の前記軸筒を挿通可能に形成されるリング状の本体と、
(ハ)前記リング状の本体の一部に形成され、扉の回り止め用の穴に係合可能に突出される係止部と、
(ニ)前記リング状の本体の一部に形成され、扉の背面に食い込み可能に突出される突起と、
を備え、
前記ハンドルを扉に取り付ける際に、扉の背面側で前記リング状の本体を前記軸筒の周囲に取り付けて扉の背面と前記ナットとの間に介装し、
前記ナットの締め込みにより前記リング状の本体を扉の背面に圧接することにより、前記突起を扉の背面に食い込み接触させて、扉にアースを取る、
ことを要旨とする。
【0007】
また、この帯電防止金具は、次のように具体化される。
(1)突起はリング状の本体の外周縁部又は一方の面又は内周縁部に設けられる。
(2)突起はリング状の本体に対称的に対にして設けられる。
(3)突起はリング状の本体に切り起しにより形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハンドル用帯電防止金具によれば、上記(イ)−(ニ)の構成を備え、ハンドルを扉に取り付ける際に、扉の背面側でリング状の本体を軸筒の周囲に取り付けて扉の背面とナットとの間に介装し、ナットの締め込みによりリング状の本体を扉の背面に圧接して、この本体の突起を扉の背面に食い込み接触させて、扉にアースを取るようにしたので、ハンドルの扉への取り付けに用いる受け座の軸筒に簡易かつ確実に取り付けて、ハンドルの静電気の帯電を防止し、ユーザーのハンドルレバーの操作の際に静電気による痛みなどの電気ショックを防止することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態によるハンドル用帯電防止金具をその適用対象となるハンドル及びその付属部品とともに示す斜視図
図2】同ハンドル用帯電防止金具単体を示す図((a)は平面図(b)は正面図(c)は側面図)
図3】同ハンドル用帯電防止金具の要部を拡大して示す図((a)は図2のA部を拡大して示す図(b)は図2のB部を拡大して示す図)
図4】本発明の他の実施の形態によるハンドル用帯電防止金具単体を示す図((a)は平面図(b)は正面図(c)は側面図)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1にハンドル用帯電防止金具をその適用対象の一例となるハンドル及びその付属部品とともに示している。なお、図1中、Dは扉で、この扉Dのパネルには絶縁性を有する塗装が施されている。
図1に示すように、ハンドルHはL型ハンドルで、受け座30と、駆動軸40と、ハンドルレバー50とを備えて構成される。
受け座30は大径の座部10と小径の軸筒20とからなり、座部10は座面101の中心部の周囲に一対の回り止め用の凸起102を有し、軸筒20は座部10の中心部を貫通して座部10の正面、背面(座面101)から延び、座部10(の座面101)から延びる先端側の外周面にねじ201が形成される。この場合、受け座30は座部10が座面101を円形の平坦面とする円盤状に形成され、一対の回り止め用の凸起102は座面101の中心部の上下に対称的に設けられる。軸筒20は断面円形の長い円筒状に形成されて、座部10の正面、背面から所定の長さに延ばされ、座部10の座面(背面)101から延びる先端側の外周面にのみねじ201が切られる。駆動軸40はこの受け座30の軸筒20内に回転可能に挿通され、ハンドルレバー50はこの駆動軸40に作動連結されて、軸筒20の基端部に連結される。
このハンドルHを扉Dに取り付けるときは、扉Dのパネルのハンドル取付位置にハンドルHの軸筒20を挿通可能な取付穴d10と、ハンドルHの座部10の一対の回り止め用の凸起102をそれぞれ嵌挿可能な一対の回り止め用の孔d20とを穿設する。この場合、ハンドルHの座部1の各回り止め用の凸起102は座面101の中心部の上下に対称的に設けられているので、これに対応して、扉Dのパネルには一対の回り止め用の穴d20を取付穴d10の上下に対称的に穿つ。扉Dに取付穴d10、一対の回り止め用の穴d20を形成したら、ハンドルHの軸筒20を先端から扉Dの取付穴d10に通すとともに、座部10の各回り止め用の凸起102を扉Dの各回り止め用の穴d20に嵌め込んで座部10の座面101を扉Dのパネルの正面に当接させ、この状態から、扉Dのパネルの背面側で、軸筒20に座金60、この場合、歯付き座金60を介して六角ナット70を締結する。そして、駆動軸40の先端に止め金(図示省略)を取付ねじ(図示省略)により取り付け、キャビネット又はケースなどの固定枠に受け金(図示省略)を取り付ける。
なお、この実施の形態では、ハンドルHの座部10の各回り止め用の凸起102が軸筒20の外周面から離間された位置に別体として突設されているため、扉Dのパネルに各回り止め用の穴d20を取付穴d10から少し離れた位置に別の穴として穿設したが、回り止め用の凸起が軸筒の外周面上に一体的に突設される場合には、扉のパネルに回り止め用の穴を取付穴の(縁部の)一部に一体的に形成する。
このようにしてハンドルHは扉Dに取り付けられ、ハンドルレバー50を回動操作することにより、駆動軸40を回転し、止め金を回動して固定枠側の受け金に係脱する形式になっている。
【0011】
図1に示すように、ハンドル用帯電防止金具A1(以下、単に帯電防止金具A1という。)は、金属材からなり、ハンドルHの受け座30の軸筒20を挿通可能に形成されるリング状の本体1と、リング状の本体1の一部に形成され、扉Dのパネルの各回り止め用の穴d20に係合可能に突出される係止部11と、リング状の本体1の一部に形成され、扉Dのパネルの背面に食い込み可能に突出される突起12とを備えて構成される。
この帯電防止金具A1では、図2に示すように、リング状の本体1が略円形の平板からなり、内周は円形に、外周は略円形で、上部、下部にそれぞれ、係止部11が断面略L字形の突出形状で適宜の突出長さに形成される。なお、この場合、リング状の本体1の外周は各係止部11の両側が少し直線的に形成され、各係止部11の先端縁と略平行になっている。そして、突起12は、リング状の本体1の外周(縁部)で各係止部11間中央にそれぞれ、切り起しにより対称的に対にして形成される。この場合、一方の突起12は、図3に示すように、リング状の本体1の外周に切り込み120が上部の係止部11に向けて上方斜めに設けられて、刃先121側が係止部11の突出方向と同じ側に扉Dのパネルの背面に対して食い込みに適した適宜の角度に切り起され、他方の突起12は、リング状の本体1の外周に切り込み120が下部の係止部11に向けて下方斜めに設けられて、刃先121側が係止部11の突出方向と同じ側に扉Dのパネルの背面に対して食い込みに適した適宜の角度に切り起される。
【0012】
このようにして帯電防止金具A1は、図1に示すように、ハンドルHを扉Dに取り付ける際に、扉Dの背面側でリング状の本体1を扉Dの取付穴d10に通されたハンドルHの軸筒20の周囲に取り付けて扉Dのパネルの背面と六角ナット70及び歯付き座金60との間に介装し、各係止部11を扉Dの取付孔d10の上下の各回り止め用の穴d20に差し込み係止した状態から、六角ナット70の締め込みにより歯付き座金60を介してリング状の本体1を扉Dのパネルの背面に圧接し、この本体1の外周の各突起12を扉Dのパネルの背面に食い込み接触させて、扉Dにアースを取る。
この帯電防止金具A1においては、リング状の本体1の上下部の各係止部11が扉Dの取付孔d10の上下の各回り止め用の穴d20に差し込み係止された状態から、六角ナット70をハンドルHの軸筒20に締め込むので、六角ナット70の締め込みの間、帯電防止金具A1が六角ナット70とともに回ることがなく、帯電防止金具A1が空回りして各突起12が扉Dのパネルの背面を傷付けるようなことがない。
そして、六角ナット70がハンドルHの軸筒20に締め込まれて、ハンドルHが扉Dに取り付けられ、リング状の本体1が扉Dのパネルの背面に圧接されて、この本体1の扉Dのパネルの背面への圧接により各突起12が扉Dのパネルの背面に食い込み接触されて、突起12の刃先121が扉Dのパネル表面の塗装の膜を突き破り、扉Dのパネルの金属部分に達して、ハンドルHから扉Dへのアースが確保される。これにより、ハンドルHの帯電が防止され、ユーザーが扉Dを開閉するため、手でハンドルレバー50を触っても、ハンドルHの静電気がユーザーの人体に放電され電気ショック(痛み)を受けることがない。
【0013】
以上説明したように、この帯電防止金具A1は、金属材からなるリング状の本体1に一対の係止部11と、一対の突起12とを備えて構成され、ハンドルHの軸筒20を扉Dのパネルに穿設した取付穴d10に通すとともに、ハンドルHの各回り止め用の凸起102を扉Dの取付穴d10の周囲に穿設した各回り止め用の穴d20に嵌め込み、この状態から、扉Dの背面側でリング状の本体1を軸筒20の周囲に取り付けて扉Dのパネルの背面とナット70との間に介装し、軸筒20にナット70を締結して、ハンドルHを扉Dに取り付けるとともに、このナット70の締め込みによりリング状の本体1を扉Dのパネルの背面に圧接し、この本体1の各突起12を扉Dのパネルの背面に食い込み接触させて、扉Dにアースを取るようにしたので、この帯電防止金具A1をハンドルHの扉Dへの取り付けに用いる受け座30の軸筒20に簡易かつ確実に取り付けて、ハンドルHの静電気の帯電を防止し、ユーザーのハンドルレバー50の操作の際に静電気による痛みなどの電気ショックを防止することができる。
また、この帯電防止金具A1は、扉に新規にハンドルを取り付ける場合や扉の既存のハンドルを交換する場合に、ハンドルの扉への取り付けとともにハンドルに取り付けて、ハンドルの帯電を防止することができ、また、既存のハンドルにも後付けで取り付けて、ハンドルの帯電を防止することができる。
【0014】
なお、この実施の形態では、リング状の本体1(の外形)を略円形に形成したが、この本体1の形状は、円形に限定されるものではなく、この本体1の面全体がナット70により圧接可能な形状である限り、任意であり、例えば、図4に示すように、リング状の本体1の外周の上下の各突起11の両側を水平方向に長くして、太鼓型の外形としてもよい。このような帯電防止金具A2の場合でも、基本構成は上記帯電防止金具A1と同様であり、各部に、上記帯電防止金具A1と同様の符号を付してある。さらに、このリング状の本体の外形は、この本体の面全体がナットにより圧接可能な形状である限り、角形であってもよい。
また、この実施の形態では、各突起12をリング状の本体1の外周(縁部)に設けたが、リング状の本体1の一方の面若しくは内周(縁部)に設けてもよい。
このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0015】
H ハンドル(L型ハンドル)
10 座部
101 座面
102 回り止め用の凸起
20 軸筒
201 ねじ
30 受け座
40 駆動軸
50 ハンドルレバー
60 座金(歯付き座金)
70 ナット(六角ナット)
D 扉
d10 取付穴
d20 回り止め用の穴
A1、A2 ハンドル用帯電防止金具
1 リング状の本体
11 係止部
12 突起
120 切り込み
121 刃先
図1
図2
図3
図4