(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記誤差補正は、飛行体が有する3軸方向、すなわち、機首が上下に振れる方向(ピッチング)、機首が左右に振れる方向(ヘディングまたはヨーイング)、機体が左右に揺れる方向(ローリング)の全ての傾きについて補正を行う必要がある。しかしながら、この中の1軸に対して誤差補正を行うと、他の2軸に対しても影響が生じる。したがって、3軸に全てについての誤差を許容範囲に収めるには多数回の試行錯誤を必要とする。
【0008】
上記誤差補正は、専門の技術者の勘やノウハウに頼って行われているのが実情であり、一般の使用者がこのような補正を行うことは極めて困難である。非特許文献1には、誤差補正を行うことの必要性が記載されているが、その補正についての具体的な手順は記載されていない。また、専門の技術者が補正を行う場合であっても、その作業には多大な時間や労力が必要とされていた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、移動体を用いたレーザ測量における誤差補正が容易に行える誤差補正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、レーザスキャナを搭載した移動体を用いて行うレーザ測量における誤差補正を実行する誤差補正装置であって、前記移動体を測量対象領域内で、第1経路と、第2経路とは移動方向が異なる第2経路とで移動させ、この移動によって得られた第1経路移動時の計測データと第2経路移動時の計測データとを記憶する記憶部と、誤差補正における補正値を入力するための入力部と、前記記憶部に記憶された計測データと前記入力部により入力された補正値とに基づいて、第1経路移動時の計測領域内の断面モデルと第2経路移動時の計測領域内の断面モデルとを演算する演算部と、前記演算部により演算された前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルを表示する表示部とを有しており、前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルは、計測領域の中の同一の断面位置に対応する断面モデルであり、前記演算部は、前記入力部により入力される補正値を変更されるたびに、前記第1経路移動時の断面モデルと前記第2経路移動時の断面モデルとを再演算し、前記表示部に表示される前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルを更新することを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、ユーザが補正値を変更するたびに、第1経路移動時の断面モデルと第2経路移動時の断面モデルとが再演算され、表示部に表示される断面モデルが更新される。この為、ユーザは、表示部に表示される第1経路移動時の断面モデルと第2経路移動時の断面モデルとを一致させるように補正値の入力・変更を行うことで、直感的な誤差補正作業が可能となる。これにより、ユーザに対して熟練した技能を必要とすることなく、ピッチングφ、ローリングωおよびヘディングκの3軸の全てについて、誤差をなくす方向に容易に収束させることが可能となる。
【0012】
また、上記の課題を解決するために、本発明は、レーザスキャナを搭載した移動体を用いて行うレーザ測量における誤差補正を実行する誤差補正装置であって、前記移動体を測量対象領域内で、第1経路と、第2経路とは移動方向が異なる第2経路とで移動させ、この移動によって得られた第1経路移動時の計測データと第2経路移動時の計測データとを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された計測データに基づいて、第1経路移動時の計測領域内の断面モデルと第2経路移動時の計測領域内の断面モデルとを演算する演算部と、前記演算部により演算された前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルを表示する表示部と、前記表示部に表示された前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルにおいて、互いに対応する複数箇所の設定点を設定入力するための入力部と、を有しており、前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルは、計測領域の中の同一の断面位置に対応する断面モデルであり、前記演算部は、誤差補正開始前の最初に表示される前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルに対して前記設定点が入力されると、前記計測データに対して所定の補正範囲内で所定の補正幅で補正値を順次変更しながら前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルを演算し、演算されたすべての断面モデルに対して、前記設定点の間の距離を演算してずれ具合を評価し、最終的にずれが最も小さいと評価された断面モデルにおいて設定されていた補正値を補正決定値として出力することを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、ユーザは最初に設定点の選択を行うだけで、演算部の自動演算により補正値が決定される。
【0014】
また、本発明の他の誤差補正装置は、上記の課題を解決するために、レーザスキャナを搭載した移動体を用いて行うレーザ測量における誤差補正を実行する誤差補正装置であって、前記移動体を測量対象領域内で移動させ、この移動によって得られた計測データを記憶する記憶部と、誤差補正における補正値を入力するための入力部と、前記記憶部に記憶された計測データと前記入力部により入力された補正値とに基づいて、前記測量対象領域内の断面モデルを演算する演算部と、前記演算部により演算された前記断面モデルと、複数箇所の実測点とを表示する表示部とを有しており、前記演算部は、前記入力部により入力される補正値を変更されるたびに、前記断面モデルを再演算し、前記表示部に表示される前記断面モデルを更新することを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、ユーザが補正値を変更するたびに、測量対象領域の断面モデルが再演算され、表示部に表示される断面モデルが更新される。この為、ユーザは、表示部に表示される断面モデルを、同時に表示される実測点と一致させるように補正値の入力・変更を行うことで、直感的な誤差補正作業が可能となる。これにより、ユーザに対して熟練した技能を必要とすることなく、ピッチングφ、ローリングωおよびヘディングκの3軸の全てについて、誤差をなくす方向に容易に収束させることが可能となる。またこの時、高さのオフセット調整も同時に行える。
【0016】
また、本発明の他の誤差補正装置は、上記の課題を解決するために、レーザスキャナを搭載した移動体を用いて行うレーザ測量における誤差補正を実行する誤差補正装置であって、前記移動体を測量対象領域内で移動させ、この移動によって得られた計測データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された計測データに基づいて、前記測量対象領域内の断面モデルを演算する演算部と、前記演算部により演算された前記断面モデルと、複数箇所の実測点とを表示する表示部と、前記表示部に表示された前記断面モデルにおいて、前記実測点に対応する複数箇所の設定点を設定入力するための入力部と、を有しており、前記演算部は、誤差補正開始前の最初に表示される前記断面モデルに対して前記設定点が入力されると、前記計測データに対して所定の補正範囲内で所定の補正幅で補正値を順次変更しながら前記断面モデルを演算し、演算された断面モデルにおける前記設定点と、各設定点に対応する実測点との間の距離を演算してずれ具合を評価し、最終的にずれが最も小さいと評価された断面モデルにおいて設定されていた補正値を補正決定値として出力することを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、ユーザは最初に設定点の選択を行うだけで、演算部の自動演算により補正値が決定される。またこの時、高さのオフセット調整も同時に行える。
【0018】
また、上記誤差補正装置では、前記演算部は、前記移動体の移動によって得られるオリジナルファイルの計測データから一部の計測データを抜き出して中間ファイルとし、前記中間ファイルの計測データと前記入力部により入力された補正値とに基づいて、前記断面モデルを演算する構成とすることができる。
【0019】
上記の構成によれば、表示部に表示される断面モデルは、オリジナルファイルではなく、一部の計測データを抜き出した中間ファイルから作成されるものとなり、演算部におけるモデル作成の演算を高速に行うことができる。その結果、ユーザによる補正値の入力・変更に対してリアルタイムに断面モデルの表示を行うことができる。これにより、誤差補正に掛かる時間も大幅に短縮することが可能となる。
【0020】
また、本発明の誤差補正プログラムは、コンピュータに、レーザスキャナを搭載した移動体を用いて行うレーザ測量における誤差補正を実行させるための誤差補正プログラムであって、前記コンピュータは、前記移動体を測量対象領域内で、第1経路と、第2経路とは移動方向が異なる第2経路とで移動させ、この移動によって得られた第1経路移動時の計測データと第2経路移動時の計測データとを記憶する記憶部と、誤差補正における補正値を入力するための入力部と、を備えており、前記コンピュータに、前記記憶部に記憶された計測データと、前記入力部により入力された補正値とに基づいて、計測領域の中の同一の断面位置に対応する第1経路移動時の計測領域内の断面モデルと第2経路移動時の計測領域内の断面モデルとを演算する機能と、演算された前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルを表示部に表示させる機能と、前記入力部により入力される補正値を変更されるたびに、前記第1経路移動時の断面モデルと前記第2経路移動時の断面モデルとを再演算し、前記表示部に表示される前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルを更新する機能と、を実行させることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の他の誤差補正プログラムは、コンピュータに、レーザスキャナを搭載した移動体を用いて行うレーザ測量における誤差補正を実行させるための誤差補正プログラムであって、前記コンピュータは、前記移動体を測量対象領域内で、第1経路と、第2経路とは移動方向が異なる第2経路とで移動させ、この移動によって得られた第1経路移動時の計測データと第2経路移動時の計測データとを記憶する記憶部と、前記第1経路移動時の計測領域内の断面モデルおよび前記第2経路移動時の計測領域内の断面モデルにおいて、互いに対応する複数箇所の設定点を設定入力するための入力部と、を有しており、前記コンピュータに、前記記憶部に記憶された計測データに基づいて、計測領域の中の同一の断面位置に対応する第1経路移動時の断面モデルと第2経路移動時の断面モデルとを演算する機能と、誤差補正開始前の最初に表示される前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルに対して前記設定点が入力されると、前記計測データに対して所定の補正範囲内で所定の補正幅で補正値を順次変更しながら前記第1経路移動時の断面モデルおよび前記第2経路移動時の断面モデルを演算する機能と、演算されたすべての断面モデルに対して、前記設定点の間の距離を演算してずれ具合を評価し、最終的にずれが最も小さいと評価された断面モデルにおいて設定されていた補正値を補正決定値として出力する機能と、を実行させることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の他の誤差補正プログラムは、コンピュータに、レーザスキャナを搭載した移動体を用いて行うレーザ測量における誤差補正を実行させるための誤差補正プログラムであって、前記コンピュータは、前記移動体を測量対象領域内で移動させ、この移動によって得られた計測データを記憶する記憶部と、誤差補正における補正値を入力するための入力部と、を備えており、前記コンピュータに、前記記憶部に記憶された計測データと、前記入力部により入力された補正値とに基づいて、前記測量対象領域内の断面モデルを演算する機能と、演算された前記断面モデルと、複数箇所の実測点とを表示部に表示させる機能と、前記入力部により入力される補正値を変更されるたびに、前記断面モデルを再演算し、前記表示部に表示される前記断面モデルを更新する機能と、を実行させることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の他の誤差補正プログラムは、コンピュータに、レーザスキャナを搭載した移動体を用いて行うレーザ測量における誤差補正を実行させるための誤差補正プログラムであって、前記コンピュータは、前記移動体を測量対象領域内で移動させ、この移動によって得られた計測データを記憶する記憶部と、前記測量対象領域の断面モデルにおいて複数箇所の実測点と対応する複数箇所の設定点を設定入力するための入力部と、を有しており、前記コンピュータに、前記記憶部に記憶された計測データに基づいて、前記断面モデルを演算する機能と、誤差補正開始前の最初に表示される前記断面モデルに対して前記設定点が入力されると、前記計測データに対して所定の補正範囲内で所定の補正幅で補正値を順次変更しながら前記断面モデルを演算する機能と、演算された断面モデルにおける前記設定点と、各設定点に対応する実測点との間の距離を演算してずれ具合を評価し、最終的にずれが最も小さいと評価された断面モデルにおいて設定されていた補正値を補正決定値として出力する機能と、を実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の誤差補正装置および誤差補正プログラムは、ユーザに対して熟練した技能を要求することなく、直感的で簡易な誤差補正を実現できるといった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
まずは、本発明が適用されるレーザ測量システムについて、
図1および
図2を参照して説明する。本実施の形態においては、レーザスキャナを搭載する移動体としてドローンを用い、ドローンを用いた航空レーザ測量を行う場合を例示している。このように、無線操縦が可能な小型の飛行体を用いることにより、航空レーザ測量を簡便に行うことが可能となる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、上記移動体は、飛行機やヘリコプター等のドローン以外の飛行体であってもよく、あるいは、車両等の移動体であってもよい。
【0028】
本実施の形態に係る航空レーザ測量システムでは、
図1に示すように飛行体であるドローン10にレーザスキャナ11を搭載し、レーザスキャナ11から地上に向けてレーザスポットを照射し、その反射時間を計測して地上までの距離を求める。また、ドローン10には、INS(慣性航法装置:inertial navigation system)計測器12も搭載されている。INS計測器12は、ドローン10の位置を計測するGNSS機能と、ドローン10の姿勢を計測するIMU機能とを有している。尚、
図1の構成例では、INS計測器12にてドローン10の位置および姿勢を計測するものとしているが、GNSS計測器とIMUとを別々に設けてドローン10の位置および姿勢を計測してもよい。
【0029】
レーザスキャナ11により得られる測距データは、測定時におけるドローン11の位置データおよび姿勢データと対応付けられ、これらが計測データとして格納される。尚、レーザスキャナ11は1秒間に数万〜数十万のレーザパルスを照射可能であるが、INS計測器12のGNSS機能による位置計測は1秒間に数回程度、INS計測器12のIMU機能による姿勢計測は1秒間に数百回程度である。このため、レーザスキャナ11の測距データと対応付けられる位置データおよび姿勢データの殆どは、補間演算によって求められる。
【0030】
また、レーザスキャナ11は、ドローン10の姿勢を計測するINS計測器12に対してできるだけ精度よく取り付けることが好ましい。しかしながら、完全に誤差なく取り付けることはほぼ不可能であり、ある程度の取付誤差は発生する。また、取付誤差を補正した後も、使用のたびに調整作業としてのアライメントが必要である。上記アライメントは、例えばドローン10を所定のルート(例えば8の字状)で飛行させてセルフアライメントで行うことができるが、そのようなセルフアライメントでは完全に誤差を補正することはできず、微小な誤差は残るものであるため、微調整としての誤差補正も随時必要となる。
【0031】
例えば、
図2(a)〜(c)に示すように、INS計測器12によって計測される直交3軸(x軸、y軸、z軸)の傾きが、ドローン10が一定の速度で、かつ所定の方角に向かって水平直線飛行を行っている場合にそれぞれ0°となるように設定される。また、この時、z軸は鉛直方向に平行になり、ドローン10の進行方向がy軸に平行になるものとする。
【0032】
一方、レーザスキャナ11は、所定のスキャン方向に沿って一定のスキャン幅でレーザパルスの走査を行う(
図1参照)。この時、レーザスキャナ11がINS計測器12に対して誤差なく取り付られていると仮定した場合、スキャン幅の中央の光を基準ビームとすると、基準ビームがz軸と平行となり、かつスキャンの主走査ラインがx軸と平行となるように取り付けられる(副走査方向は進行方向と一致する)。
【0033】
しかしながら実際には、レーザスキャナ11とINS計測器12との間には取付誤差が生じており、その誤差は、例えばx軸、y軸、z軸周りそれぞれの回転角度として表すことができる。ここでは、
図3に示すように、x軸、y軸、z軸周りのそれぞれの誤差(回転角度)をφ(ピッチング)、ω(ローリング)、κ(ヘディング)とする。
【0034】
このような誤差を補正しない状態で測量を行った場合、実際の測量対象物と測量結果との間に生じるずれを、
図4を参照して説明する。
図4では、ドローン10が土手等の対象物を横切るように測量を行った場合を例示している。φ(ピッチング)方向のずれが生じている場合、測量結果(
図4(a)に破線で示す)において生じる主なずれは、実際の測量対象物(
図4(a)に実線で示す)に対してy軸方向にずれたものとなる。ω(ローリング)方向のずれが生じている場合、測量結果(
図4(b)に破線で示す)において生じる主なずれは、実際の測量対象物(
図4(b)に実線で示す)に対してxz平面内で回転するようにずれたものとなる。そして、κ(ヘディング)方向のずれが生じている場合、測量結果(
図4(c)に一点鎖線で示す)において生じる主なずれは、実際の測量対象物(
図4(c)に実線で示す)に対してxy平面内で回転するようにずれたものとなる。尚、実際の測量結果は、
図4(a)〜(c)に示す3種類のずれが合成された形で表れる。
【0035】
上述したようにレーザスキャナ11とINS計測器12との間に取付誤差が生じており、この取付誤差によるずれを補正しないで測量を行うと、正確な測量結果は得られない。このため、取付誤差によるずれを補正する誤差補正が必要となる。また、上記取付誤差の補正以外に、使用時のアライメントでは補正しきれない微小誤差を補正するための微調整としての誤差補正も必要となる。本発明は、このような誤差補正を行うための誤差補正装置および誤差補正方法に関する。尚、実際の誤差補正は、ドローン10の製品出荷前に取付誤差の補正がメーカー側によって行われ、その補正値が基本値として入れられ、製品出荷後には使用のたびにユーザによって微小な誤差を補正するための微調整が行われるようにすることが好ましい。本発明の誤差補正装置および誤差補正方法は、この何れの誤差補正にも使用できるものである。
【0036】
図5は、本実施の形態に係る誤差補正装置20の概略構成を示す機能ブロック図である。誤差補正装置20は、記憶部21、演算部22、入力部23、表示部24から構成されている。
【0037】
記憶部21は、ドローン10による計測データ(測距データ、位置データ、姿勢データ)を格納するメモリであり、オリジナルファイルと中間ファイルとのそれぞれについて記憶領域を有している。演算部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)からなり、記憶部21に格納されている計測データと、入力部23から入力される補正値とに基づいて測量対象領域の三次元モデルを作成する。入力部23は、誤差補正における補正値をユーザが入力するための手段である。表示部24は、演算部22により作成される測量対象領域の三次元モデルを表示する手段である。
【0038】
誤差補正装置20を用いた誤差補正を実施する時には、最初にドローン10による測量対象領域の計測を行う。この計測は、レーザスキャナ11の誤差補正がされていない状態で行われるものであり、測量対象領域上で同一の飛行経路を往復飛行することによって行われる。そして、この往復飛行によって得られた計測データが記憶部21にオリジナルファイルとして格納され、その状態で誤差補正装置20による誤差補正作業が可能となる。尚、オリジナルファイルである計測データでは、往路飛行時の計測データと復路飛行時の計測データとが区別できるようになっている。
【0039】
演算部22は、オリジナルファイルから一部の計測データを抜き出して最初の中間ファイルを作成する。
図6に示すように、中間ファイルにおける計測領域は、副走査方向の一部の領域に対応して得られる。また、上記中間ファイルでも、往路飛行時の計測データと復路飛行時の計測データとが区別できるようになっており、往路飛行時の中間ファイルと復路飛行時の中間ファイルは同一の領域に対応するように抜き出される。
【0040】
中間ファイルとして抜き出す計測領域は、例えば、往路飛行時の計測データに対して何時何分何秒から何時何分何秒までといった時間指定をユーザが行い、指定された計測時間に対応する計測データを中間ファイルとして抜き出すことができる。また、復路飛行時の計測データに対しても同様の方法で中間ファイルを抜き出すことができる。
【0041】
抜き出される往路飛行時および復路飛行時の中間ファイルは、計測時の飛行方向が異なるだけで、同一の地形(計測領域)に対応するものとされる。このため、ユーザが上記時間指定を行う時には、例えば、測量結果(往路飛行時または復路飛行時の計測領域)をグーグルアース(登録商標)等を用いてマップ表示し、そのマップ表示から中間ファイルとして抽出しようとする地形(計測領域)の計測開始位置と計測終了位置との時間抽出を行うようにすればよい。
【0042】
次に、演算部22は、作成された中間ファイルから往路飛行時の計測領域の一部である断面モデルと復路飛行時の計測領域の一部である断面モデルとを作成し、これらを表示部24に表示させる。これらの断面モデルは、計測領域の中の同一箇所に対応する断面モデルとされる。
図7(a)は、誤差補正が行われる前の往路飛行時の断面モデル31と復路飛行時の断面モデル32とが表示部24に表示された状態を示す図である。往路飛行時の断面モデル31と復路飛行時の断面モデル32とは、計測領域の中の同一箇所に対応するものであるため、レーザスキャナ11とINS計測器12との間の取付誤差やその他の微小誤差が無ければこれらは完全に一致する。しかしながら実際には、上記誤差が存在することにより、往路飛行時の断面モデル31と復路飛行時の断面モデル32とが一致せず、互いにずれた状態で表示されている。例えば、
図4(a)〜(c)に示す測量結果を往路飛行時の測量結果であると仮定すると、復路飛行時の測量結果は、往路飛行時とずれの方向が逆(ずれ量はほぼ同じ)となる。
【0043】
尚、断面モデル31,32の断面位置は、ユーザが任意に指定することができる。例えば、グーグルアース(登録商標)等を用いてマップ表示される測量結果の鳥瞰図等においてユーザが断面位置を指定すれば、その断面位置での断面モデル31,32が表示部24に表示される。
【0044】
本実施の形態における断面モデル作成時の具体的な演算は、例えば、以下のような手順にて行うことができる。まず、中間ファイルとして抜き出された計測領域全体の計測データを用いて、この計測領域の三次元モデルが演算される。そして、この計測領域全体の三次元モデルから、指定された断面位置に対応する断面モデルが作成される。
【0045】
また、表示部24には、補正値表示ウインドウ33と補正値増減キー34とが表示されている。補正値表示ウインドウ33は、ピッチングφ、ローリングωおよびヘディングκの3軸のそれぞれについて、ユーザにより入力された補正値を表示するためのウインドウであり、最初に表示される補正値は0となっている。補正値増減キー34は、補正値表示ウインドウ33に表示される補正値を増減させるキーである。ユーザが補正値を入力する場合は、例えばテンキー等を用いて補正値表示ウインドウ33に補正値を直接入力してもよく、あるいは、カーソル等で補正値増減キー34をクリックし、補正値を所定量(例えば、0.001°)ずつ増減させて変更してもよい。
【0046】
ピッチングφ、ローリングωおよびヘディングκの何れかにおいて、ユーザが補正値を入力(または変更)すると、その入力結果に応じて演算部22が往路飛行時および復路飛行時の両方について再演算を行い、この再演算によって作成された断面モデル31,32を表示部24に表示させる。ユーザは、表示部24に表示される断面モデル31,32を確認しながら、断面モデル31,32を一致させるように補正値の入力(または変更)を行う。
図7(b)は、ユーザの誤差補正作業(補正値の入力)によって、往路飛行時の断面モデル31と復路飛行時の断面モデル32とが一致した状態の表示部24を示す図である。また、この時の補正値表示ウインドウ33に表示されている補正値が、最終的な誤差補正値として得られる。
【0047】
尚、断面モデルの再演算時の演算も、上述した最初の演算時と同様の手順で行われる。すなわち、中間ファイルとして抜き出された計測領域全体の計測データに対して入力された補正値が反映され、補正値が反映された計測データを用いて、この計測領域の三次元モデルが再演算される。そして、再演算された計測領域全体の三次元モデルから、指定された断面位置に対応する断面モデルが作成される。
【0048】
上述のように、断面モデル31,32を一致させるように誤差補正を行った場合、その断面の面内方向に存在する誤差については補正されるが、該断面との直交方向に存在する誤差については補正しきれず誤差が残っている可能性がある。このため、実際の誤差補正では、少なくとも2つの断面(好ましくは互いに直交する2つの断面)に対して上記誤差補正を行うことが好ましい。こうして2つの断面において誤差がなくなれば、計測領域全体で誤差がなくなったものと見なすことができる。無論、3つ以上の断面に対して上記誤差補正を行ってもよい。
【0049】
尚、上述のように、断面モデル31,32を一致させるように補正値の入力(または変更)を行う方法は、φ(ピッチング)、ω(ローリング)およびκ(ヘディング)方向のずれを相対的に補正するものとなる。このため、高さ方向のオフセットについては、上記誤差補正を行った後、一致した断面モデル31,32が、少なくとも一つの実測点にあっていることを確認するようにするとよい。ここでの実測点とは、測量を行う現場で実際に実測した三次元の座標点であり、絶対的な座標点である。このため、相対的な誤差補正がなされた後の断面モデルをさらに絶対的座標点に合わせ込むことで、絶対的な誤差補正が行える。
【0050】
本実施の形態に係る誤差補正装置20では、ユーザは、表示部24に表示される断面モデル31,32を一致させるように補正値の入力・変更を行うものであり、直感的な誤差補正作業が可能となる。これにより、熟練した技能を必要とすることなく、ピッチングφ、ローリングωおよびヘディングκの3軸の全てについて、誤差をなくす方向に容易に収束させることが可能となる。
【0051】
また、断面モデル31,32は、オリジナルファイルから一部の計測データを抜き出してなる中間ファイルから作成されるものであるため、モデル作成の演算を高速に行うことができ、ユーザによる補正値の入力・変更に対してリアルタイムに断面モデル31,32の表示を行うことができる。これにより、誤差補正に掛かる時間も大幅に短縮することが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態に係る誤差補正装置20では、誤差補正作業に係る時間および労力を大幅に削減することができる。このため、誤差補正時の変更幅を従来よりも小さくしても対応可能である。例えば、従来であれば、0.1°幅でずれの補正を行っていたものを、本発明では0.001°幅で補正を行うことも可能となり、補正精度の向上にも寄与する。
【0053】
尚、上記説明では、ドローン10を往復飛行させ、往路飛行時の計測データと復路飛行時の計測データとに基づいて誤差補正を行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、誤差補正に用いる2つの計測データは、同じ場所に対して計測方向(ドローン10の飛行方向)が異なるものであればよく、往復飛行によって得られる計測データに限定されない。例えば、
図8に示すように、ドローン10を、第1経路と、第1経路に直交する第2経路とで飛行させ、第1経路飛行時の計測データと第2経路飛行時の計測データとに基づいて誤差補正を行うことも可能である。この場合には、第1経路飛行時の計測領域と第2経路飛行時の計測領域との重畳箇所を中間ファイルにおける計測領域とすればよい。
【0054】
また、上記説明では、測定時の飛行経路が異なる2つの測定データを用い、これらの測定データから作成される2つの断面モデル31,32を一致させるように補正値の入力(または変更)を行う方法を例示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、測量を行う現場で実際に実測した三次元の座標点(実測点)を演算部22に読み込ませ、この実測点を用いて誤差補正を行うことも可能である。
【0055】
この場合、誤差補正時におけるドローン10による測量は、一つの飛行経路に対応するものだけでよく、演算部22で作成される断面モデルも一つとされる(例えば、上記説明における断面モデル31)。一方、ドローン10による測量とは別に、複数の箇所で実測を行い、得られた複数の実測点の三次元座標を演算部22に読み込ませる。例えば、ユーザが実測点の三次元座標を入力部23を介して入力すると、その三次元座標が記憶部21に格納され、演算部22は記憶部21から実測点の三次元座標を読み込むことができる。
【0056】
そして、演算部22は、ドローン10による測量結果から作成される一つの断面モデル31と、三次元座標が入力された複数の実測点とを表示部24に表示させる。この時、断面モデル31において誤差が無ければ、これらは完全に一致する。しかしながら実際には、誤差が存在することにより、断面モデル31は上記実測点に一致せず、ずれた状態で表示されている。
【0057】
ピッチングφ、ローリングωおよびヘディングκの何れかにおいて、ユーザが補正値を入力(または変更)すると、その入力結果に応じて演算部22が断面モデル31について再演算を行い、この再演算によって作成された断面モデル31を表示部24に表示させる。ユーザは、表示部24に表示される断面モデル31と上記実測点とを確認しながら、断面モデル31を複数の上記実測点に一致させるように補正値の入力(または変更)を行う。こうして、断面モデル31と上記実測点とが一致した時の補正値表示ウインドウ33に表示されている補正値が、最終的な誤差補正値として得られる。
【0058】
このように、ドローン10による航空レーザ測量から得られる断面モデルを実測点に合わせ込んで調整を行う方法では、実測点の三次元座標は絶対的な座標であるため、φ(ピッチング)、ω(ローリング)およびκ(ヘディング)方向のずれを補正すると同時に高さのオフセットを同時にリアルタイムに合わせ込める。
【0059】
また、航空レーザ測量を行う時の測量範囲全体では、1方向の1回の飛行で得られる計測範囲を並べて測量範囲全体をカバーすることも多い。この時、特に高さ方向は現場のローカルの高さに合わせることが多く、隣接する計測範囲のすり合わせを行う場合に、実測の点を表示しておくことで隣接する計測範囲の高さを容易に合わせることができる。
【0060】
また、上記説明における誤差補正では、ユーザ自身が補正値の入力・変更を行って表示部24に表示される往路飛行時と復路飛行時との三次元モデル31,32を一致させるようにしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、補正値を演算部22の自動演算で求めるようにすることも考えられる。
【0061】
例えば、誤差補正開始前の最初の断面モデル31,32において、互いに対応する複数箇所の点を、ユーザが入力部23から設定入力する。この設定点は、例えば、建物のエッジ部分など、対応関係が明確に認識できる箇所を選べばよい。複数の設定点が決まると、演算部22は、断面モデル31,32において対応する設定点の間の距離(ずれ量)を演算し、そのずれ具合を最小二乗法などで評価する。
【0062】
さらに、演算部22は、ピッチングφ、ローリングωおよびヘディングκの全てにおいて、所定の補正範囲内で所定の補正幅で補正値を順次変更しながら、そのすべての組み合わせに対して、同様の方法でずれ具合を評価する。そして、最終的にずれが最も小さいと評価された補正値の組み合わせが最終的な補正値(補正決定値)として出力され、誤差補正が完了する。
【0063】
この方法では、ユーザは、最初に設定点の選択を行うだけで、自身が補正値の入力・変更を行う必要はないため、より簡単に誤差補正を行うことができる。無論、このような自動演算による誤差補正は、一つの断面モデルと、三次元座標が入力された複数の実測点との合わせ込みによって誤差補正を行う場合にも適用可能である。この場合、実測点に対応する箇所を断面モデルにおける設定点とすればよい。
【0064】
以上説明した誤差補正装置20において、演算部22における各処理はコンピュータにて実施されるプログラムにて実現される。本発明の対象は、このプログラムそのものや、このプログラムがコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されているものを含む。
【0065】
本発明では、この記録媒体として、
図5に示されている演算部22で処理が行なわれるために必要なメモリ、例えばROMのようなものそのものがプログラムメディアであってもよいし、また、図示していない外部記憶装置としてプログラム読み取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムメディアであってもよい。いずれの場合においても、格納されているプログラムはマイクロコンピュータがアクセスして実行させる構成であってもよいし、あるいはいずれの場合もプログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにロードされて、そのプログラムが実行される方式であってもよい。このロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0066】
ここで、上記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、FD(フレキシブルディスク)やHD(ハードディスク)等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/BD等の光ディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する媒体であってもよい。
【0067】
また、本発明においては、インターネットを含む通信ネットワークと接続可能なシステム構成であることから、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する媒体であってもよい。なお、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用プログラムは予め装置本体に格納しておくか、あるいは別の記録媒体からインストールされるものであってもよい。
【0068】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。