【実施例】
【0025】
バインダー樹脂中のフッ素樹脂粒子の平均アスペクト比と平均粒子径とが耐焼付き性に及ぼす影響を調べるために次の試験を行った。表1に記載の配合組成の皮膜形成成分と適量の有機溶剤(N−メチルピロリドン)とをプロペラ攪拌機により攪拌混合することにより実施例の摺動用塗料を調製した。一方、表1に記載の配合組成の皮膜形成成分と適量の有機溶剤(N−メチルピロリドン)とをビーズミルにより粉砕混合することにより比較例の摺動用塗料を調製した。一方、鋼鉄材料の斜板基材を脱脂処理した後、表面をショットブラスト法で粗面化して表面粗さ9.0μmRzjisとした。この斜板基材の表面に上記の摺動用塗料を乾燥膜厚50μmとなるように塗布し、この塗膜を230℃で30分間加熱して硬化させた。次いで、この硬化塗膜を研削機で研削して表面を平滑化し、表面粗さ0.8μmRaの摺動皮膜を形成した。グラファイトの平均粒子径は4〜5μmであった。
【0026】
上記の摺動皮膜を形成した斜板基材について、摺動性能試験を次の試験条件で行った。
試験条件
試験機:回転式摩擦摩耗試験機
潤滑:ドライ潤滑
荷重:8.8MPa
速度:2000rpm
相手軸:SUJ2(シュー形状)
【0027】
試験結果を以下に記載する。
【0028】
上記表中の被膜形成成分
PAI:ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業社製 HPC−6000系)
BPER:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(25℃で液状)(DIC製EPICLON850)
PTFE粒子:ポリテトラフルオロエチレン(喜多村社製 KTLシリーズ)
Gr:グラファイト(日本黒鉛工業社製 CSSP)
【0029】
上記表中のPTFE粒子のアスペクト比と粒子径の測定方法
アスペクト比の測定方法:
動的画像解析法/粒子分析計(セイシン企業製PITA−3)を用いて、粒子のアスペクトを測定。
粒子径の測定方法:
レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(日機装製Microtrac)を用いて、体積比50%の粒子径を算出。
【0030】
上記試験結果において、平均粒子径10μmのPTFE粒子を用いた場合に焼付き時間は最長となり、粒子径7〜13μmのPTFE粒子を用いた場合は粒子径4μm及び20μmのPTFE粒子を用いた場合より焼付き時間は長くなっている。
【0031】
次に、バインダー樹脂中のPTFE粒子の数平均分子量と耐焼付き性に及ぼす影響を調べるために次の試験を行った。表2に記載の配合組成の皮膜形成成分と適量の有機溶剤(N−メチルピロリドン)とをプロペラ攪拌機により攪拌混合することにより実施例の摺動用塗料を調製した。一方、鋼鉄材料の斜板基材を脱脂処理した後、表面をショットブラスト法で粗面化して表面粗さ8.5μmRzjisとした。この斜板基材の表面に上記の摺動用塗料を乾燥膜厚60μmとなるように塗布し、この塗膜を230℃で30分間加熱して硬化させた。次いで、この硬化塗膜を研削機で研削して表面を平滑化し、表面粗さ0.8μmRaの摺動皮膜を形成した。
【0032】
上記の摺動皮膜を形成した斜板基材について、摺動性能試験を次の試験条件で行った。
試験条件
試験機:回転式摩擦摩耗試験機
潤滑:ドライ潤滑
荷重:8.8MPa
速度:2000rpm
相手軸:SUJ2(シュー形状)
【0033】
試験結果を以下に記載する。
【0034】
上記表中の被膜形成成分
PAI:ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業社製 HPC−6000系)
BPER:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(25℃で液状)(DIC社製
EPICLON850)
PTFE粒子:ポリテトラフルオロエチレン(喜多村社製 KTLシリーズ)
Gr:グラファイト(日本黒鉛工業社製 CSSP)
PTFE粒子の数平均分子量(Mn)の測定方法:
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC) により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定。
PTFE形状の測定方法:
動的画像解析法/粒子分析計(セイシン企業製PITA−3)を用いて、粒子のアスペクトを測定。
粒子径の測定方法:
レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(日機装製Microtrac)を用いて、体積比50%の粒子径を算出。
【0035】
上記試験結果において、数平均分子量100、000以下のPTFE粒子を用いた場合は数平均分子量100、000超のPTFE粒子を用いた場合よりも焼付き時間が長くなっている。
【0036】
次に、グラファイトの比表面積の耐焼付き性に及ぼす影響を調べるために次の試験を行った。表3に記載の配合組成の皮膜形成成分と適量の有機溶剤(N−メチルピロリドン)とをプロペラ攪拌機により攪拌混合することにより実施例の摺動用塗料を調製した。使用したPTFE粒子の平均粒径は10μm、アスペクト比は1.3であった。一方、鋼鉄材料の斜板基材を脱脂処理した後、表面をショットブラスト法で粗面化して表面粗さ8.5μmRzjisとした。この斜板基材の表面に上記の摺動用塗料を乾燥膜厚60μmとなるように塗布し、この塗膜を230℃で30分間加熱して硬化させた。次いで、この硬化塗膜を研削機で研削して表面を平滑化し、表面粗さ0.8μmRaの摺動皮膜を形成した。
【0037】
上記の摺動皮膜を形成した斜板基材について、摺動性能試験を次の試験条件で行った。
試験条件
試験機:回転式摩擦摩耗試験機
潤滑:ドライ潤滑
荷重:8.8MPa
速度:2000rpm
相手軸:SUJ2(シュー形状)
【0038】
試験結果を以下に記載する。
【0039】
上記表中の被膜形成成分
PAI:ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業社製 HPC−6000系)
BPER:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(25℃で液状)(DIC社製
EPICLON850)
PTFE粒子:ポリテトラフルオロエチレン(喜多村社製 KTL−10N)
Gr:グラファイト(日本黒鉛工業社製、CSSP(245m
2/g)、UCP(110m
2/g)、 J−CPB(13m
2/g))
グラファイトの比表面積の測定方法:
流動式比表面積自動測定装置(島津社製フローソーブIII2305/2310)を用いて、窒素吸着法(BET法)により測定。
粒子径の測定方法: レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(日機装製Microtrac)を用いて、体積比50%の粒子径を算出。
【0040】
上記試験結果において、比表面積100超のグラファイトを用いた場合は比表面積100未満のグラファイトを用いた場合よりも焼付き時間が長くなっている。
【0041】
次に、バインダー樹脂中のポリアミドイミド樹脂に対する芳香族エポキシ樹脂の添加量の耐焼付き性に対する影響を調べるために次の試験を行った。表4に記載の配合組成の皮膜形成成分をプロペラ攪拌機で攪拌混合して摺動用塗料を調製した。一方、鋼鉄材料の斜板基材を脱脂処理した後、表面をショットブラスト法で粗面化して表面粗さ9.0μmRzjisとした。この斜板基材の表面に上記の摺動用塗料を乾燥膜厚60μmとなるように塗布し、この塗膜を230℃で30分間加熱して硬化させた。次いで、この硬化塗膜を研削機で研削して表面を平滑化し、表面粗さ0.8μmRaの摺動皮膜を形成した。使用したPTFEの平均粒径は10μm(アスペクト比1.3)、グラファイトの平均粒径は4〜5μmであった。
【0042】
上記の摺動皮膜を形成した斜板基材について、摺動性能試験を次の試験条件で行った。
試験条件
試験機:回転式摩擦摩耗試験機
潤滑:ドライ潤滑
荷重:8.8MPa
速度:2000rpm
相手軸:SUJ2(シュー形状)
【0043】
試験結果を以下に記載する。
PAI:ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業社製 HPC−6000系)
BPER:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(25℃で液状)(DIC製EPICLON850)
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン(喜多村社製KTL−10N)
Gr:グラファイト(日本黒鉛工業社製 CSSP)
【0044】
上記試験結果において、ポリアミドイミド樹脂100重量部に対し、ビスフェノーA型エポキシ樹脂の添加量が5重量部とすることで焼付き時間は最も長くなり、添加量が2〜18重量部では無添加の場合より焼付き時間は長くなっている。しかし、添加量が2重量部未満及び18重量部超では、焼付き時間は無添加の場合と同等又はそれ以下となっている。また、PTFE及びグラファイトの添加量はポリアミドイミド樹脂100重量部に対し、それぞれ50〜60重量部、5〜15重量部で良好な焼付き性を示している。PTFEの添加量が40重量部未満及び70重量部超、あるいはグラファイトの添加量が1重量部未満及び20重量部超では、いずれも焼付き時間は短くなっている。