(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至
図16は、本発明の第1実施形態を示すものである。
【0018】
本発明の送風機1は、
図1に示すように、遠心式の送風機であり、例えば、車両用空気調和装置の送風手段として用いられる。
【0019】
この送風機1は、
図6に示すように、円筒状に形成された羽根車10と、羽根車10を回転させるための電動モータ20と、羽根車10の外周部及び外周側を囲むケーシング30と、を備えている。
【0020】
羽根車10は、
図6に示すように、それぞれ軸方向に延びるとともに、互いに周方向に所定の間隔をおいて設けられた複数の翼11と、軸方向一端側に設けられた基板12と、軸方向他端側に設けられたリム13と、を有している。
【0021】
翼11は、径方向内側から外側に向かって延びるように配置されている。翼11は、径方向外側が径方向内側に対して周方向の一方に向かって湾曲している。
【0022】
基板12は、外周側に複数の翼11の一端部が互いに周方向に間隔をおいて連結された円板状の部材である。基板12は、各翼11の一端部が連結された外周部の径方向内側から中心部に向かって徐々に軸方向他端側に張り出す張出部12aを有している。張出部12aの軸方向一端面には、外周側に対して径方向中心に向かって徐々に軸方向他端側に向かって窪む凹部が形成されている。
【0023】
リム13は、複数の翼11の他端部が互いに周方向に間隔をおいて連結された円筒状の部材である。リム13は、翼11の他端部から軸方向外側に向かって延びるとともに、軸方向の内側且つ径方向外側に向かって斜めに延びている。
【0024】
羽根車10は、径方向の中心を回転軸として周方向一方に回転させると、軸方向他端側から内側に空気が流入し、各翼11の隙間から径方向外側に向かって放射状に空気を流出させる。羽根車10の径方向外側に向かって流出する空気は、基板12とリム13との間から流出する。
【0025】
ここで、基板12の他端面の外周部とリム13の一端部との間の距離を空気出口高さHと定義する。
【0026】
電動モータ20は、
図6に示すように、羽根車10の軸方向一端側において、基板12の軸方向一端面の凹部に配置されている。電動モータ20は、回転軸が基板の径方向の中心部に連結されており、羽根車10を翼11の湾曲している方向である周方向一方に回転させる。
【0027】
ケーシング30は、
図6に示すように、羽根車10の軸方向一端側に設けられた第1側板31と、羽根車10の軸方向他端側に設けられた第2側板32と、第1側板31と第2側板32のそれぞれの外周部の間を羽根車10の周方向に延びる外周板33と、を有している。
【0028】
外周板33は、羽根車10の回転軸から離れた所定の基準位置から羽根車10の回転方向に向かって羽根車10の回転軸からの距離が徐々に大きくなる渦巻状の渦巻部33aと、渦巻部33aの径方向外側の端部から直線状に延びる直線部33bと、渦巻部33aの径方向内側の端部から所定の曲率半径で、渦巻部33aと反対方向に湾曲して延びる舌部33cと、舌部33cから連続して直線部33bと間隔をおいて延びる延出部33dと、を有している。
【0029】
また、ケーシング30には、
図6に示すように、ケーシング30外の空気を吸入するための吸入口34が、第2側板32に設けられている。また、ケーシング30には、
図5に示すように、ケーシング30内に吸入した空気を吐出するための吐出口35が、第1側板31、第2側板32、直線部33b、延出部33dに囲まれる部分の端部に設けられている。
【0030】
ケーシング30内には、
図3及び4に示すように、吸入口34から流入した空気を羽根車10の外周側を羽根車10の回転方向に流通させるための渦巻通風路36が、第1側板31と第2側板32との間で、且つ、羽根車10の外周部と外周板33の渦巻部33a及び直線部33bの渦巻部33a側の部分との間に設けられている。また、ケーシング30内には、渦巻通風路36の終端部と吐出口35とを連通する吐出通風路37が、第1側板31と第2側板32との間で、且つ、直線部33bの吐出口35側と延出部33dとの間に設けられている。
【0031】
渦巻通風路36は、始端部から終端部に向かって径方向及び軸方向に通風路の幅寸法が徐々に大きくなる。また、吐出通風路37は、渦巻通風路36の端部から吐出口35に向かって径方向及び軸方向に通風路の幅寸法が徐々に大きくなる。さらに、渦巻通風路36の始端部側は、舌部33cによって吐出通風路37と仕切られている。
【0032】
ここで、
図6に示すように、羽根車10の回転軸と直交して羽根車10の回転中心から径方向外側に向かって延びる直線上における、羽根車10の外周部と渦巻部33aまたは直線部33bの内面との距離を通風路幅Lと定義する。
【0033】
第1側板31の略中央部には、
図3及び6に示すように、電動モータ20を貫通させた状態で支持するためのモータ支持孔31aが設けられている。
【0034】
また、第1側板31の羽根車10の径方向外側に位置する部分(舌部33cが位置する部分)には、
図3及び6に示すように、第2側板32側に向かって突出するとともに、舌部33cから羽根車10の回転方向と反対側に向かって周方向に延びる第1突部31bが設けられている。
【0035】
第1突部31bは、
図3に示すように、羽根車10の回転軸を中心として、渦巻部33aの径方向内側の端部の位置Sを基準として羽根車10の回転方向に向かって第1突出開始角度θL回転させた位置である第1突出開始位置と舌部33cとの間に設けられている。第1突部31bは、
図8に示すように、突出開始位置から舌部33cに向かって最大の高さとなるまで徐々に高さ寸法が大きくなる。また、第1突部31bの舌部33cの近傍には、最大の高さ寸法を維持して所定の長さ周方向に延びる第1平坦部31cが設けられている。
【0036】
ここで、第1突部31bの最大の高さ寸法を、第1最大高さ寸法ZLと定義する。第1最大高さ寸法ZLは、
図8に示すように、羽根車10の軸方向における、羽根車10の基板12の内側面から第1突部31bの最大の高さとなる部分までの距離である。
【0037】
また、空気出口高さHと第1最大高さ寸法ZLとの比を第1突部高さ比(ZL/H)と定義する。
【0038】
また、第1突部31bの外周側には、
図3及び6に示すように、第1突部31bの延びる方向に渡って径方向外側に向かって徐々に高さ寸法が小さくなる第1傾斜面31dが設けられている。
【0039】
ここで、
図6に示すように、羽根車10の回転軸と直交して羽根車10の回転中心から径方向外側に向かって延びる直線上における、羽根車10の外周部と第1傾斜面31dの径方向外側の端部との距離を第1傾斜幅WLと定義する。また、通風路幅Lと第1傾斜幅WLとの比を第1傾斜幅比(WL/L)と定義する。
【0040】
第2側板32の吸入口34の縁部には、
図4及び6に示すように、羽根車10のリム13の軸方向他端側、径方向内面側及び外面側を囲むカバー部32aが設けられている。
【0041】
また、第2側板32の羽根車10の径方向外側に位置する部分(舌部33cが位置する部分)には、
図4及び6に示すように、第1側板31側に向かって突出するとともに、舌部33cから羽根車10の回転方向と反対側に向かって周方向に延びる第2突部32bが設けられている。
【0042】
第2突部32bは、
図4に示すように、羽根車10の回転軸を中心として、渦巻部33aの径方向内側の端部の位置Sを基準として羽根車10の回転方向に向かって第2突出開始角度θUに位置する第2突出開始位置と舌部33cとの間に設けられている。第2突部32bは、
図8に示すように、突出開始位置から舌部33cに向かって最大の高さ寸法となるまで徐々に高さ寸法が大きくなる。また、第2突部32bの舌部33cの近傍には、最大の高さ寸法を維持して所定の長さ周方向に延びる第2平坦部32cが設けられている。
【0043】
ここで、第2突部32bの最大の高さ寸法を、第2最大高さ寸法ZUと定義する。第2最大高さ寸法ZUは、
図8に示すように、羽根車10の軸方向における、羽根車10のリム13の内側の端部から第2突部32bの最大の高さとなる部分までの距離である。
【0044】
また、空気出口高さHと第2最大高さ寸法ZUとの比を第2突部高さ比(ZU/H)と定義する。
【0045】
また、第2突部32bの外周側には、
図4及び6に示すように、第2突部32bの延びる方向に渡って径方向外側に向かって徐々に高さ寸法が小さくなる第2傾斜面32dが設けられている。
【0046】
ここで、
図6に示すように、羽根車10の回転軸と直交して羽根車10の回転中心から径方向外側に向かって延びる直線上における、羽根車10の外周部と第2傾斜面32dの径方向外側の端部との距離を第2傾斜幅WUと定義する。また、通風路幅Lと第2傾斜幅WUとの比を第2傾斜幅比(WU/L)と定義する。
【0047】
以上のように構成された送風機1では、電動モータ20を駆動させると、羽根車10が周方向一方に回転する。羽根車10が回転すると、ケーシング30外の空気は、第2側板32に設けられた吸入口34を介してケーシング30内に吸入される。吸入口34を介してケーシング30内に吸入された空気は、羽根車10の軸方向他端側から内側に流入し、羽根車10の外周部から放射状に流出される。羽根車10の外周部から放射状に流出する空気は、ケーシング30の渦巻通風路36及び吐出通風路37を流通しながら整流されて吐出口35から吐出される。
【0048】
また、渦巻通風路36の終端部側及び吐出通風路37を流通する空気は、第1側板31に設けられた第1突部31b及び第2側板32に設けられた第2突部32bによって渦巻通風路36の始端部側への流入が抑制される。また、渦巻通風路36の終端部側及び吐出通風路37を流通する空気は、第1突部31bの外周側に設けられた第1傾斜面31d及び第2突部32bの外周側に設けられた第2傾斜面32dによって羽根車10から流出した空気を円滑に渦巻通風路36及び吐出通風路37に流入させ、且つ、渦巻通風路36及び吐出通風路37における二次流れ等の乱れの発生を抑制することができる。
【0049】
また、渦巻通風路36の終端側及び吐出通風路37を流通する空気は、舌部33cに衝突することで騒音の原因となるが、第1突部31b及び第2突部32bが張り出すことによって舌部33c表面積が小さくなるため、舌部33cに衝突する空気の量が少なくなり、騒音が抑制される。
【0050】
次に、第1側板31における、第1突部31bの第1突出開始角度θL、第1突部高さ比(ZL/H)及び第1傾斜幅比(WL/L)と、第2側板32における、第2突部32bの第2突出開始角度θU、第2突部高さ比(ZU/H)及び第2傾斜幅比(WU/L)と、のそれぞれについての適正値を得るために行った試験及び試験結果について説明する。
【0051】
まず、第1側板31の第1突部31bの適正値を得るために、第2突部32bを有しない第2側板を用いるとともに、第1突出開始角度θL、第1突部高さ比(ZL/H)及び第1傾斜幅比(WL/L)のうちの2つの数値を固定して1つの数値を変化させ、それぞれにおいて生じる騒音の大きさを測定している。
【0052】
図9は、第1突部高さ比(ZL/H=0.12)及び第1傾斜幅比(WL/L=0.55)を固定して、第1突出開始角度θLを変化させたときの比騒音値の変化を示すグラフである。比騒音値は、
図9に示すように、第1突出開始角度θLが360度(第1突部31bが形成されていない状態を示す)未満であれば、低い状態となる。第1突出開始角度θLは、345度以下であることが好ましく、330度以下であることがより好ましい。また、90度から330度の範囲でより低い状態となる。第1突出開始角度θLは、
図9に示すように、180度から290度の範囲であることが好ましい。
【0053】
図10は、第1突出開始角度(θL=250°)及び第1傾斜幅比(WL/L=0.55)を固定して、第1突部高さ比(ZL/H)を変化させたときの比騒音値の変化を示すグラフである。比騒音値は、
図10に示すように、−0.12から0.45の範囲で低い状態となる。比騒音値は、−0.1から0.42の範囲で特に低下している。したがって、第1突部高さ比(ZL/H)は、−0.1から0.42の範囲であることが望ましい。
【0054】
ここで、第1突出部高さ比(ZL/H)における負の値は、第1突部31bの最大の高さとなる部分が、羽根車10の基板12の内側面よりも羽根車10の軸方向外側に位置している状態を示している。
【0055】
図11は、第1突出開始角度(θL=250°)及び第1突部高さ比(ZL/H=0.12)を固定して、第1傾斜幅比(WL/L)を変化させたときの比騒音値の変化を示すグラフである。比騒音値は、
図11に示すように、第1突部31bを有さない場合以外であれば、低い状態となる。比騒音値は、第1傾斜幅比(WL/L)が0.25から0.8の範囲で特に低下している。したがって、第1傾斜幅比(WL/L)は、0.25〜0.8の範囲であることが望ましい。
【0056】
また、第2側板32の第2突部32bの適正値を得るために、第1突部31bを有しない第1側板を用いるとともに、第2突出開始角度θU、第2突部高さ比(ZU/H)及び第2傾斜幅比(WU/L)のうちの2つの数値を固定して1つの数値を変化させ、それぞれにおいて生じる騒音の大きさを測定している。
【0057】
図12は、第2突部高さ比(ZU/H=0.1)及び第2傾斜幅比(WU/L=0.4)を固定して、第2突出開始角度θUを変化させたときの比騒音値の変化を示すグラフである。比騒音値は、
図12に示すように、第2突出開始角度θUが360度未満であれば、低い状態となる。第2突出開始角度θUは、345度以下であることが好ましく、120度から330度の範囲であることがより好ましい。また、180度から315度の範囲でより低い状態となる。
【0058】
図13は、第2突出開始角度(θU=270°)及び第2傾斜幅比(WU/L=0.4)を固定して、第2突部高さ比(ZU/H)を変化させたときの比騒音値の変化を示すグラフである。比騒音値は、
図13に示すように、−0.1から0.5の範囲で低い状態となる。比騒音値は、−0.08から0.45の範囲で特に低下している。したがって、第2突部高さ比(ZU/H)は、−0.08から0.45の範囲であることが望ましい。
【0059】
ここで、第2突出部高さ比(ZU/H)における負の値は、第2突部32bの最大の高さとなる部分が、羽根車10のリム13の内側面よりも羽根車10の軸方向外側に位置している状態を示している。
【0060】
図14は、第2突出開始角度(θU=270°)及び第2突部高さ比(ZU/H=0.1)を固定して、第2傾斜幅比(WU/L)を変化させたときの比騒音値の変化を示すグラフである。比騒音値は、
図14に示すように、第2傾斜幅比(WU/L)は、0.05から0.75の範囲で低い状態となる。比騒音値は、第2傾斜幅比(WU/L)が0.15から0.65の範囲で特に低下している。したがって、第2傾斜幅比(WU/L)は、0.15〜0.65の範囲であることが望ましい。
【0061】
上記のそれぞれの試験によって得られた適正値を適用した送風機と本実施形態の第1突部31b及び第2突部32bを有さない従来の送風機とを比較する試験の結果について説明する。
【0062】
図15は、それぞれの送風機の風量を変化させたときの比騒音値の変化を示している(比騒音特性)。適正値を適用した送風機1は、
図15に示すように、風量が150m3/h以上となる場合に従来の送風機と比較して比騒音値が低下している。比騒音値は、風量が450m3/hとなるところで、差異が最大となり、広い風量範囲で騒音低減効果が表れていることがわかる。
【0063】
図16は、それぞれの送風機の風量を変化させたときの送風機効率の変化を示している(送風機効率特性)。適正値を適用した送風機1は、
図16に示すように、全ての風量において、従来の送風機と比較して送風機効率が高くなる。
【0064】
このように、本実施形態の送風機によれば、第1側板31には、羽根車10の外周側を羽根車10の周方向に沿って延びるように設けられ、第2側板32側に向かって突出する第1突部31bが設けられ、第1突部31bは、羽根車10の回転軸を中心として、渦巻通風路36の始端部から終端部に向かって、345度以下の範囲内に位置する突出開始位置と舌部33cとの間に設けられ、突出開始位置から最大の高さとなるまで舌部33cに向かって徐々に高さが大きくなり、羽根車10の軸方向に、羽根車10の空気を流出させる部分の第1側板31側の端部と最大の高さとなる部分との距離ZLが、羽根車10の空気を流出させる部分の軸方向寸法Hの0.42倍以下であり、第1突部31bの外周側には、径方向外側に向かって徐々に高さが小さくなる第1傾斜面31dが設けられ、羽根車10の回転中心から径方向外側に延びる直線上において、羽根車10の外周部と第1傾斜面31dの径方向外側の端部との距離WLは、羽根車10の外周部と渦巻通風路36または吐出通風路37の内周面との距離Lに対して0.25〜0.8倍である。
【0065】
また、第2側板32には、羽根車10の外周側を羽根車10の周方向に沿って延びるように設けられ、第1側板31側に向かって突出する第2突部32bが設けられ、第2突部32bは、羽根車10の回転軸を中心として、渦巻通風路36の始端部から終端部に向かって、345度以下の範囲内の位置する突出開始位置と舌部33cとの間に設けられ、吐出開始位置から最大の高さとなるまで舌部33cに向かって徐々に高さが大きくなり、羽根車10の軸方向に、羽根車10の空気を流出させる部分の第2側板32側の端部と最大の高さとなる部分との距離ZUが、羽根車10の空気を流出させる部分の軸方向寸法Hの0.15倍以下であり、第2突部32bの外周側には、径方向外側に向かって徐々に高さが小さくなる第2傾斜面32dが設けられ、羽根車10の回転中心から径方向外側に延びる直線上において、羽根車10の外周部と第2傾斜面32dの径方向外側の端部との距離WUは、羽根車10の外周部と渦巻通風路36または吐出通風路37の内周面との距離Lに対して0.15〜0.65倍である。
【0066】
これにより、渦巻通風路36及び吐出通風路37を流通する空気が渦巻通風路36の始端部側へ戻る循環流の発生を抑制するとともに、羽根車10から流出した空気を円滑に渦巻通風路36及び吐出通風路37に流入させ、且つ、渦巻通風路36及び吐出通風路37における二次流れ等の乱れの発生を抑制することができるので、高効率化及び低騒音化を図ることが可能となる。
【0067】
また、第1突部31b及び第2突部32bの舌部33c側には、最大の高さZL,ZUで周方向に延びる第1平坦部31c及び第2平坦部32cが設けられている。
【0068】
これにより、渦巻通風路36及び吐出通風路37を流通する空気の循環流及び乱れの発生を抑制することが可能となる。
【0069】
図17乃至
図19は、本発明の第2実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0070】
本実施形態の第1突部31bは、
図17に示すように、突出開始位置から舌部33cに向かって羽根車10の回転方向に30度から60度の範囲で最大の高さとなるまで徐々に高さ寸法が大きくなり、最大の高さとなった位置から舌部33cまでの範囲に第1平坦部31cが設けられている。
【0071】
また、第2突部32bは、
図17に示すように、突出開始位置から舌部33cに向かって羽根車10の回転方向に30度から60度の範囲で最大の高さとなるまで徐々に高さ寸法が大きくなり、最大の高さとなった位置から舌部33cまでの範囲に第2平坦部32cが設けられている。
【0072】
以上のように構成された送風機1において、前記実施形態と同様に、第1側板31における、第1突部31bの第1突出開始角度θL、第1突部高さ比(ZL/H)及び第1傾斜幅比(WL/L)と、第2側板32における、第2突部32bの第2突出開始角度θU、第2突部高さ比(ZU/H)及び第2傾斜幅比(WU/L)と、のそれぞれについての適正値を得るために行った試験及び試験結果について説明する。
【0073】
図18は、第1突部高さ比(ZL/H=0.12)及び第1傾斜幅比(WL/L=0.55)を固定して、第1突出開始角度θLを変化させたときの比騒音値の変化を示すグラフである。比騒音値は、
図18に示すように、第1突出開始角度θLが360度(第1突部31bが形成されていない状態を示す)未満であれば、低い状態となる。第1突出開始角度θLは、345度以下であることが好ましく、330度以下であることがより好ましい。また、90度から330度の範囲でより低い状態となる。第1突出開始角度θLは、
図18に示すように、180度から290度の範囲であることが好ましい。
【0074】
第1突出開始角度(θL=250°)及び第1傾斜幅比(WL/L=0.55)を固定して、第1突部高さ比(ZL/H)を変化させる試験において、比騒音値は、前記実施形態と同様に、−0.12から0.45の範囲で低い状態となる。比騒音値は、−0.1から0.42の範囲で特に低下している。したがって、第1突部高さ比(ZL/H)は、−0.1から0.42の範囲であることが望ましい。
【0075】
第1突出開始角度(θL=250°)及び第1突部高さ比(ZL/H=0.12)を固定して、第1傾斜幅比(WL/L)を変化させる試験において、比騒音値は、前記実施形態と同様に、第1突部31bを有さない場合以外であれば、低い状態となる。比騒音値は、第1傾斜幅比(WL/L)が0.25から0.8の範囲で特に低下している。したがって、第1傾斜幅比(WL/L)は、0.25〜0.8の範囲であることが望ましい。
【0076】
また、第2側板32の第2突部32bの適正値を得るために、第1突部31bを有しない第1側板を用いるとともに、第2突出開始角度θU、第2突部高さ比(ZU/H)及び第2傾斜幅比(WU/L)のうちの2つの数値を固定して1つの数値を変化させ、それぞれにおいて生じる騒音の大きさを測定している。
【0077】
図19は、第2突部高さ比(ZU/H=0.1)及び第2傾斜幅比(WU/L=0.4)を固定して、第2突出開始角度θUを変化させたときの比騒音値の変化を示すグラフである。比騒音値は、
図19に示すように、第2突出開始角度θUが360度未満であれば、低い状態となる。第2突出開始角度θUは、345度以下であることが好ましく、45度から330度の範囲であることがより好ましい。また、60度から330度の範囲でより低い状態となる。第2突出開始角度θUは、
図19に示すように、150度から300度の範囲であることが好ましい。
【0078】
第2突出開始角度(θU=270°)及び第2傾斜幅比(WU/L=0.4)を固定して、第2突部高さ比(ZU/H)を変化させる試験において、比騒音値は、−0.1から0.5の範囲で低い状態となる。比騒音値は、−0.08から0.5の範囲で特に低下している。したがって、第2突部高さ比(ZU/H)は、−0.08から0.5の範囲であることが望ましい。
【0079】
第2突出開始角度(θU=270°)及び第2突部高さ比(ZU/H=0.1)を固定して、第2傾斜幅比(WU/L)を変化させる試験において、比騒音値は、前記実施形態と同様に、第2傾斜幅比(WU/L)は、0.05から0.75の範囲で低い状態となる。比騒音値は、第2傾斜幅比(WU/L)が0.15から0.65の範囲で特に低下している。したがって、第2傾斜幅比(WU/L)は、0.15〜0.65の範囲であることが望ましい。
【0080】
このように本実施形態の送風機によれば、前記実施形態と同様に、渦巻通風路36及び吐出通風路37を流通する空気が渦巻通風路36の始端部側へ戻る循環流の発生を抑制するとともに、羽根車10から流出した空気を円滑に渦巻通風路36及び吐出通風路37に流入させ、且つ、渦巻通風路36及び吐出通風路37における二次流れ等の乱れの発生を抑制することができるので、高効率化及び低騒音化を図ることが可能となる。
【0081】
図20乃至
図22は、本発明の第3実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0082】
本実施形態の第1及び第2側板31,32には、それぞれ羽根車10の外周側の所定位置から舌部33cに向かって羽根車10の周方向に沿って延びるように設けられ、渦巻通風路36内に向かって突出する第1及び第2突部41,42が設けられている。
【0083】
第1及び第2突部41,42は、
図20に示すように、径方向内側に位置する第1及び第2内側面部41a,42aと、径方向外側に位置する第1及び第2外側面部41b,42bと、第1及び第2内側面部41a,42aの先端部と第1及び第2外側面部41b,42bの先端部との間に設けられた第1及び第2先端面部41c,42cとを有している。
【0084】
第1及び第2突部41,42は、
図20に示すように、第1及び第2内側面部41a,42aと第1及び第2外側面部41b,42bとの間隔が、基端部から先端部に向かって小さくなる。即ち、第1及び第2突部41,42は、断面形状が台形形状に形成されている。
【0085】
第1及び第2突部41,42は、第1及び第2内側面部41a,42aと第1及び第2先端面部41c,42cとの間を羽根車10の周方向に延びるように設けられ、曲面状に形成された第1及び第2内曲面部41d,42dを有している。
【0086】
また、第1及び第2突部41,42は、第1及び第2外側面部41b,42bと第1及び第2先端面部41c,42cとの間を羽根車10の周方向に延びるように設けられ、曲面状に形成された第1及び第2外曲面部41e,42eを有している。
【0087】
第1及び第2内曲面部41d,42dと第1及び第2外曲面部41e,42eは、それぞれ羽根車10の外周側の所定位置から舌部33cに向かって徐々に曲率半径が大きくなるように形成されている。第1及び第2外曲面部41e,42eは、羽根車10の径方向において、第1及び第2内曲面部41d,42dの曲率半径よりも大きく形成されている。
【0088】
第1及び第2突部41,42は、
図21及び
図22に示すように、それぞれ第1及び第2先端面部41c,42cが羽根車10の外周側の所定位置から舌部33cに向かって徐々に幅寸法が大きくなるように形成されている。第1及び第2先端面部41c,42cの幅寸法W1,W2は、舌部33cの近傍において、舌部33cの幅寸法と略同一に形成されている。ここで、舌部33cの幅寸法とは、
図21及び
図22に示すように、渦巻部33aの径方向内側の端部と舌部33cの径方向内側の端部との接点である位置Sと、舌部33cの径方向外側の端部と延出部33dの端部との接点である位置Eと、の距離である。また、第1及び第2先端面部41c,42cの幅寸法が舌部33cの幅寸法と略同一とは、舌部33cの幅寸法の0.8倍〜1.3倍程度の範囲内である。
【0089】
第1及び第2先端面部41c,42cは、羽根車10の軸方向に対して直交する平面、または、第1及び第2内側面部41a,42aから第1及び第2外側面部41b,42bに向かって下り傾斜となる面である。第1及び第2先端面部41c,42cが下り傾斜となる場合の傾斜角度は、0度から20度の範囲内である。
【0090】
第1及び第2突部41,42は、
図21及び
図22に示すように、舌部33cから吐出口35に向かって第1及び第2外側面部41b,42bから吐出通風路37の壁面に沿って延びる第1及び第2延長外側面部41f,42fを有している。第1及び第2延長外側面部41f,42fは、吐出口35に向かって徐々に吐出通風路37の壁面からの突出量が小さくなる。
【0091】
以上のように構成された送風機において、渦巻通風路36の終端部側及び吐出通風路37を流通する空気は、第1側板31に設けられた第1突部41及び第2側板32に設けられた第2突部42によって渦巻通風路36の始端部側への流入が抑制される。
【0092】
また、羽根車10の外周部から径方向外側に流れて渦巻通風路36の終端部側に流入する空気は、断面が台形形状に形成された第1及び第2突部41,42において、第1及び第2内側面部41a,42a、第1及び第2先端面部41c,42c、第1及び第2外側面部41b,42bに沿って流れることで整流される。
【0093】
羽根車10の外周部から径方向外側に流れて渦巻通風路36に流入する空気は、渦巻通風路36の始端部から終端部に向かって徐々に流量が大きくなる。しかし、渦巻通風路36の終端部側に対して径方向に流入する大きな流量の空気は、幅寸法の大きい第1及び第2先端面部41c,42cに沿って流通することにより整流される。
【0094】
また、第1及び第2先端面部41c,42cは、羽根車10の軸方向に対して直交する平面、または、第1及び第2内側面部41a,42aから第1及び第2外側面部41b,42bに向かって下り傾斜となる面である。このため、渦巻通風路36に対して羽根車10の径方向に流入する空気は、第1及び第2先端面部41c,42cにおいて剥離が生じることなく、第1及び第2外側面部41b,42bに沿って流れるように整流される。
【0095】
さらに、第1及び第2突部41,42の第1及び第2内側面部41a,42aに沿って流通する空気は、曲面状に形成された第1及び第2内曲面部41d,42dに沿って第1及び第2先端面部41c,42cに到達する。また、第1及び第2先端面部41c,42cを羽根車10の径方向に沿って流通する空気は、曲面状に形成された第1及び第2外曲面部41e,42eに沿って第1及び第2外側面部41b,42bに到達する。
【0096】
ここで、第1及び第2外曲面部41e,42eは、第1及び第2内曲面部41d,42dよりも曲率半径が大きく形成されている。このため、渦巻通風路36に対して羽根車10の径方向に流入する空気は、第1及び第2外側面部41b,42bにおいて剥離することなく、第1及び第2外側面部41b,42bに沿って流れるように整流される。
【0097】
また、第1及び第2内曲面部41d,42dと第1及び第2外曲面部41e,42eは、それぞれ舌部33cに向かって曲率半径が大きくなる。このため、渦巻通風路36の終端部側に対して径方向に流入する大きな流量の空気は、第1及び第2内側面部41a,42a、第1及び第2先端面部41c,42c及び第1及び第2外側面部41b,42bに沿って流れるように整流される。
【0098】
また、舌部33cの近傍から吐出口35に向かって流通する空気は、吐出通風路37の壁面に沿って延びるとともに、吐出口35に向かって徐々に吐出通風路37の壁面からの突出量が小さく形成された第1及び第2延長外側面部41f,42fによって流れが乱れることなく吐出口35に案内される。
【0099】
このように本実施形態の送風機によれば、第1及び第2突部41,42は、径方向内側に位置する第1及び第2内側面部41a,42aと、径方向外側に位置する第1及び第2外側面部41b,42bと、第1及び第2内側面部41a,42aの先端部と第1及び第2外側面部41b,42bの先端部との間に設けられた第1及び第2先端面部41c,42cとを有し、第1及び第2内側面部41a,42aと第1及び第2外側面部41b,42bとの間隔が、基端部から先端部に向かって小さくなる。
【0100】
これにより、羽根車10の外周部から径方向外側に流れて渦巻通風路36の終端部側に流入する空気が、第1及び第2内側面部41a,42a、第1及び第2先端面部41c,42c、第1及び第2外側面部41b,42bに沿って流れることで整流されるので、渦巻通風路36及び吐出通風路37を流通する空気が渦巻通風路36の始端部側へ戻る循環流の発生を抑制するとともに、羽根車10から流出した空気を円滑に渦巻通風路36及び吐出通風路37に流入させ、高効率化及び低騒音化を図ることが可能となる。
【0101】
また、第1及び第2先端面部41c,42cは、羽根車10の外周側の所定位置から舌部33cに向かって幅寸法が大きくなるように形成され、舌部33cの幅寸法は、舌部33cの幅寸法と略同一である。
【0102】
これにより、渦巻通風路36の終端部側に対して径方向に流入する流量の大きい空気を、幅寸法の大きい第1及び第2先端面部41c,42cに沿って流通させることにより確実に整流することが可能となる。
【0103】
また、第1及び第2突部41,42は、舌部33cから吐出口35に向かって吐出通風路37の側壁に沿って第1及び第2外側面部41b,42bのみが延びる第1及び第2延長外側面部41f,42fを有し、第1及び第2延長外側面部41f,42fは、吐出口35に向かって突出量が小さくなる。
【0104】
これにより、吐出通風路37を流通する空気の流れを乱すことなく吐出口35に案内することが可能となる。
【0105】
また、第1及び第2突部41,42は、第1及び第2内側面部41a,42aと第1及び第2先端面部41c,42cとの間に、曲面状に形成された第1及び第2内曲面部41d,42dを有するとともに、第1及び第2外側面部41b,42bと第1及び第2先端面部41c,42cとの間に、曲面状に形成された第1及び第2外曲面部41e,42eを有し、第1及び第2外曲面部41e,42eの曲率半径は、第1及び第2内曲面部41d,42dの曲率半径よりも大きく形成されている。
【0106】
これにより、渦巻通風路36に対して径方向に流入する空気を、第1及び第2外側面部41b,42bにおいて剥離が生じさせることなく、第1及び第2外側面部41b,42bに沿って流れるように整流することが可能となる。
【0107】
また、第1及び第2内曲面部41d,42dと第1及び第2外曲面部41e,42eは、それぞれ舌部33cに向かって曲率半径が大きくなるように形成されている。
【0108】
これにより、渦巻通風路36の終端部側に対して径方向に流入する大きな流量の空気を、第1及び第2内側面部41a,42a、第1及び第2先端面部41c,42c及び第1及び第2外側面部41b,42bに沿って流れるように整流することが可能となる。
【0109】
また、第1及び第2先端面部41c,42cは、羽根車10の軸方向に対して直交する面、または、第1及び第2内側面部41a,42aから第1及び第2外側面部41b,42bに向かって下り傾斜となる面を有している。
【0110】
これにより、渦巻通風路36に対して径方向に流入する空気を、第1及び第2先端面部41c,42cにおいて剥離が生じさせることなく、第1及び第2外側面部41b,42bに沿って流れるように整流することが可能となる。
【0111】
図23は、本発明の第4実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。また、本実施形態では、第2側板32の第2突部42についてのみ説明するが、第1側板31についても同様の構成を有している。
【0112】
本実施形態の第2側板32の第2突部42は、前記第3実施形態と同様の構成に加え、舌部33cから渦巻通風路36の始端部側に延びる第2延長突部42gを有している。
【0113】
第2延長突部42gは、羽根車10の回転軸を中心として、渦巻通風路36の始端部から終端部に向かって120度の範囲内に設けられている。また、第2延長突部42gは、渦巻通風路36の終端部に向かって突出高さが徐々に小さくなるように形成されている。
【0114】
また、渦巻通風路36の始端部側は、第2側板32から渦巻通風路36内に第2延長突部42gが突出することによって軸方向の寸法が小さくなる。
【0115】
以上のように構成された送風機において、前記第3実施形態と同様に空気が流通するのに加え、第2突部42の径方向内側を流通する空気は、第2延長突部42gに沿って流通することで、空気の流れの乱れが抑制される。
【0116】
また、空気の流量が少ない渦巻通風路36の始端部側は、軸方向の寸法が小さくなることで、流通する空気が整流される。
【0117】
このように本実施形態の送風機によれば、前記第3実施形態と同様に、羽根車10の外周部から径方向外側に流れて渦巻通風路36の終端部側に流入する空気が、第1及び第2内側面部41a,42a、第1及び第2先端面部41c,42c、第1及び第2外側面部41b,42bに沿って流れることで整流されるので、渦巻通風路36及び吐出通風路37を流通する空気が渦巻通風路36の始端部側へ戻る循環流の発生を抑制するとともに、羽根車10から流出した空気を円滑に渦巻通風路36及び吐出通風路37に流入させ、高効率化及び低騒音化を図ることが可能となる。
【0118】
また、第2突部42は、舌部33cから渦巻通風路36の始端部側に延びる第2延長突部42gを有し、第2延長突部42gは、羽根車10の回転軸を中心として、渦巻通風路36の始端部から終端部に向かって120度の範囲内に設けられ、渦巻通風路36の終端部に向かって突出高さが徐々に小さくなるように形成されている。
【0119】
これにより、第2突部42の径方向内側を流通する空気を、第2延長突部42gに沿って流通させることで、空気の流れの乱れを抑制することが可能となる。また、空気の流量が少ない渦巻通風路36の始端部側が軸方向の寸法が小さくなることで、流通する空気を整流することが可能となる。
【0120】
尚、前記実施形態では、車両用空気調和装置の送付手段以外に、建築物の室内の空気調和装置や、換気装置等の送風手段に適用することも可能である。