特許第6494071号(P6494071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494071
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】紙シート素材を用いた筒状体の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B31B 50/64 20170101AFI20190325BHJP
【FI】
   B31B50/64
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-205934(P2014-205934)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-74138(P2016-74138A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191537
【氏名又は名称】森 昭平
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100152249
【弁理士】
【氏名又は名称】川島 晃一
(72)【発明者】
【氏名】森 昭平
【審査官】 西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5080691(JP,B2)
【文献】 特公昭40−025597(JP,B1)
【文献】 特開2007−276369(JP,A)
【文献】 特開2003−340939(JP,A)
【文献】 特開昭58−024434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B50/00−70/99
B31C1/00−99/00
B31D1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙シート素材の側縁部同士を、一方の側縁部に連接した接着片を他方の側縁部に重ね合わせ接着して筒状に形成する紙シート素材を用いた筒状体の形成方法であって、一方の側縁部に、該側縁部から内側に折り返す折り返し片を連接してこれを前記接着片とし、前記一方の側縁部と、前記一方の側縁部に連接し折り返した前記接着片と、前記他方の側縁部とを、前記接着片が前記他方の側縁部の表裏いずれかの面側と接するように重ね合わせ、この重ね部を、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する一対の綴じ部材で前記重ね部を挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて前記重ね部を圧縮し、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面の繊維を絡み合わせることにより前記接着片と前記他方の側縁部と強い結合力を生じさせ、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とは結合力を生じさせないようにして、前記接着片と前記他方の側縁部のみを接着することを特徴とする紙シート素材を用いた筒状体の形成方法。
【請求項2】
前記紙シート素材は、表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法。
【請求項3】
前記重ね部を前記綴じ部材により圧縮する前に、前記他方の側縁部と前記接着片の対向面の少なくともいずれか一方の面に、水分を供給し吸湿させることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法。
【請求項4】
前記紙シート素材は、裏面に耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料が塗布されているものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一枚の紙シート素材の両側縁部のうちの一方の側縁部に接着片を連接し、該接着片と他方の側縁部を重ね合わせ接着して筒状に形成する紙シート素材を用いた筒状体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一枚の紙シート素材で組み立てた各種の箱や容器等が数多く作られている。これら箱や容器等(以下、単に箱等という。)の多くは、箱等の本体を構成するパネルの両側縁部を接着して筒状とした箱等の本体を形成している。パネルの両側縁部の接着にあっては、一般に、パネルの一方の側縁部に糊代片が連接され、この糊代片が他方の側縁部に糊により接着している。
【0003】
近年、複数枚の紙シートを重ね、糊や金属針等の副資材を使用せずに、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する一対の綴じ部材で前記重ね部を挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ、前記重ね部を圧縮して綴じる紙シートの接着方法が提案されており、雑誌、冊子、ノート、パンフレット等の綴じ込みだけでなく、紙箱等における接着手段としても使用ができることが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5080691号公報
【特許文献2】特許第5361858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、箱等の本体が、前記のような箱等の本体を構成するパネルの一方の側縁部に連接された糊代片を他方の側縁部に接着して筒状に形成されるものである場合、パネルの一方の側縁部に連接された糊代片を他方の側縁部に接着する手段として、前記特許文献1、2に記載されている綴じ部材で接着しようとすると、糊代片と他方の側縁部の重ね部に対し、一対の綴じ部材の一方の綴じ部材を重ね部の外側に、一方の綴じ部材を重ね部の内側に側に対向させて配置し、重ね部を挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせることになる。
【0006】
この場合、重ね部の外側は綴じ部材を配置するのに十分なスペースがあるが、重ね部の内側は筒状に形成される本体の内部となり、綴じ部材の配置スペースが狭く、配置が難しい。特に箱等が小さい場合は、重ね部の内側への綴じ部材の配置は特に困難である。
また、重ね部の内側に綴じ部材を配置するのに十分なスペースがあったとしても、重ね部の内側に配置する綴じ部材を支持する躯体の構造が制約され、実施が難しいといった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、紙シート素材の両側縁部を一対の綴じ部材で容易に接着できるようにするとともに、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状に形成できるようにした、紙シート素材を用いた筒状体の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、紙シート素材の側縁部同士を、一方の側縁部に連接した接着片を他方の側縁部に重ね合わせ接着して筒状に形成する紙シート素材を用いた筒状体の形成方法であって、一方の側縁部に、該側縁部から内側に折り返す折り返し片を連接してこれを前記接着片とし、前記一方の側縁部と、前記一方の側縁部に連接し折り返した前記接着片と、前記他方の側縁部とを、前記接着片が前記他方の側縁部の表裏いずれかの面側と接するように重ね合わせ、この重ね部を、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する一対の綴じ部材で前記重ね部を挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて前記重ね部を圧縮し、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面の繊維を絡み合わせることにより前記接着片と前記他方の側縁部と強い結合力を生じさせ、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とは結合力を生じさせないようにして、前記接着片と前記他方の側縁部のみを接着することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記紙シート素材は、表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の、前記重ね部を前記綴じ部材により圧縮する前に、前記他方の側縁部と前記接着片の対向面の少なくともいずれか一方の面に、水分を供給し吸湿させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の、前記紙シート素材は、裏面に耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料が塗布されているものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法によれば、一方の側縁部に、該側縁部から内側に折り返す折り返し片を連接してこれを前記接着片とし、前記一方の側縁部と、前記一方の側縁部に連接し折り返した前記接着片と、前記他方の側縁部とを、前記接着片が前記他方の側縁部の表裏いずれかの面側と接するように重ね合わせ、この重ね部を、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する一対の綴じ部材で前記重ね部を挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて前記重ね部を圧縮し、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面の繊維を絡み合わせることにより前記接着片と前記他方の側縁部と強い結合力を生じさせ、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とは結合力を生じさせないようにして、前記接着片と前記他方の側縁部のみを接着するようにしたので、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて前記重ね部を圧縮したとき、前記接着片と前記他方の側縁部とが前記歯部の噛み合いにより圧縮され結合して接着し、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とは接着せず、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ前記重ね部を圧縮した紙シート素材を押し広げたとき、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とが容易に離れ、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状体に形成することができる。
また、紙シート素材の両側縁部は、前記重ね部を前記一対の綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせることにより圧縮されて接着するので、前記一対の綴じ部材は重ね部の外側に配置することができることから、形成される筒状の大きさに関係なく簡単な構成で容易に接着することができ、また、接着に糊の使用が無くなり、更に作業工程が簡略化するなど、その分コストの低減を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法によれば、請求項1に記載の、前記紙シート素材は、表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであるので、前記一方の側縁部と前記接着片と前記他方の側縁部とを重ね合わせた前記重ね部は、前記重ね部における前記接着片と前記他方の側縁部の対向面にあっては、一方の面が長繊維の層となり他方の面が短繊維の層となり、そして、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部の対向面にあっては、いずれも短繊維の層となる。
そのため、前記重ね部を一対の綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ圧縮したとき、圧力により前記接着片と前記他方の側縁部の対向面の繊維がほぐれ、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のいずれか一方の面の長繊維が他方の面の短繊維と絡み合って強い結合力で結合し、他方、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部との対向面の繊維はほぐれるが、いずれも短繊維であるため絡み合いが弱く、強い結合力が得られず結合しない。
これにより、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ前記重ね部を圧縮した紙シート素材を押し広げたとき、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とが容易に離れ、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状体に形成することができる。
【0014】
請求項3に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法によれば、請求項1に記載の、前記重ね部を前記綴じ部材により圧縮する前に、前記他方の側縁部と前記接着片の対向面の少なくともいずれか一方の面に、水分を供給し吸湿させるので、吸湿した面の繊維はほぐれ易く、前記重ね部を一対の綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて圧縮したとき、その圧力が強くなくても前記他方の側縁部と前記接着片の対向面の少なくともいずれか一方の吸湿している面の繊維が容易にほぐれ、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のほぐれた繊維が絡み合って強い結合力で結合し、他方、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部との対向面の繊維はほぐれ難く絡み合いも弱く、強い結合力が得られず結合しない。
これにより、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ前記重ね部を圧縮した紙シート素材を押し広げたとき、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とが容易に離れ、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状体に形成することができる。
また、前記紙シート素材が、表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであると、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のいずれか一方の面の長繊維が他方の面の短繊維と絡み合って強い結合力で結合するので、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面は、一層強い結合力で結合し、一層強固な筒状体を形成することができる。
【0015】
請求項4に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法によれば、請求項1に記載の、前記紙シート素材は、裏面に耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料が塗布されているので、前記一方の側縁部に、該側縁部から内側に折り返す折り返し片を連接してこれを前記接着片とし、前記一方の側縁部と前記接着片と前記他方の側縁部とを重ね合わせた前記重ね部は、重ね部における接着片と他方の縁部の対向面にあっては、いずれか一方の面が耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布していない面、他方の面が塗布した面となり、そして、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部の対向面にあっては、いずれも耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面となる。
そのため、前記重ね部を一対の綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ圧縮したとき、圧力により前記接着片と前記他方の側縁部の対向面の繊維がほぐれ、耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面の繊維は絡み合いが弱いが、耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布していない面の繊維がこれをカバーし、耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布していない面の繊維と耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面の繊維が絡み合って強い結合力で結合し、他方、前記一方の側縁部と前記接着片との対向面は、いずれも耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面となるため、繊維は絡み合いが弱いもの同士となり、強い結合力が得られず結合しない。
これにより、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ前記重ね部を圧縮した紙シート素材を押し広げたとき、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とが容易に離れ、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状に形成することができる。
また、前記紙シート素材が、表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであると、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のいずれか一方の面の長繊維が他方の面の短繊維と絡み合って強い結合力で結合するので、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面は、一層強い結合力で結合し、一層強固な筒状体を形成することができる。
また、前記重ね部を前記綴じ部材により圧縮する前に、前記他方の側縁部と前記接着片の対向面の少なくともいずれか一方の面に、水分を供給し吸湿させておくと、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のほぐれた繊維が絡み合って強い結合力で結合するので、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面は、一層強い結合力で結合し、一層強固な筒状体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る紙シート素材を用いた筒状体の形成方法を実施する工程の一例を示し、本例で形成する筒状体の展開図である。
図2図1に示す展開図から折り畳んで両側縁部を重ね合わせた状態を示す斜視図である。
図3図1に示す展開図から折り畳んで両側縁部を重ね合わせた状態の他例を示す斜視図である。
図4図2に示す両側縁部を重ね合わせた重ね部を一対の綴じ部材で加圧し接着する状態を示す説明図である。
図5】綴じ部材の他例を示す説明図である。
図6図2に示す両側縁部を重ね合わせた重ね部を接着した状態を示す斜視図である。
図7】形成された筒状体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る紙シート素材を用いた筒状体の形成方法の実施の形態の一例を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る紙シート素材を用いた筒状体の形成方法で形成する筒状体の一例を示す展開図、図2図1に示す展開図から折り畳んで両側縁部を重ね合わせた状態を示す斜視図、図3図1に示す展開図から折り畳んで両側縁部を重ね合わせた状態の他例を示す斜視図、図4図2に示す両側縁部を重ね合わせた重ね部を一対の綴じ部材で加圧し接着する状態を示す説明図、図5は綴じ部材の他例を示す説明図、図6図2に示す両側縁部を重ね合わせた重ね部を接着した状態を示す斜視図、図7は形成された筒状体を示す斜視図である。
【0018】
図1は、本発明で形成される紙シート素材を用いて形成される筒状体1の一例を示すブランクシート2であり、折線3,4,5,を介して連接された4面の筒壁パネル6,7,8,9と、ブランクシート2の一方の側縁部10(筒壁パネル6の開放側の側縁部)に折線11を介してブランクシート2の他方の側縁部12(筒壁パネル9の開放側の側縁部)と接着する接着片13が連接されている。
図1に示すブランクシート2は、筒状体1の開口部を開閉する側面パネルを省略している。
【0019】
本例の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法では、先ず、ブランクシート2の一方の側縁部10に連接している接着片13を折線11から内側(筒状体1の内面側)へ折り返し、次に、ブランクシート2を折線4から内側へ折り畳んで、一方の側縁部10と、一方の側縁部10に連接し折り返した接着片13と、他方の側縁部12とを重ね合わせる(図2参照。)。
本例では、一方の側縁部10に連接し折り返した接着片13を他方の縁部12の内側に重ね合わせているが、図3に示すように、一方の側縁部10に連接し折り返した接着片13を他方の縁部12の上側に重ね合わせてもよい。
【0020】
次に、一方の側縁部10と接着片13と他方の側縁部12とを重ね合わせた重ね部14を対向面に互いに噛み合い可能な歯部15,16を有する一対の綴じ部材17,18で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて重ね部14を圧縮する(図4図5図6参照)。
一対の綴じ部材17,18にあっては、例えば、特許第5080691号公報、特許第5361858号公報に記載されている公知の綴じ部材が使用される。本例では、外周縁に互いに噛み合う歯部15,16を有する歯車状の綴じ部材17,18が使用されているが(図4参照。)、直線状の綴じ部材17,18でもよく(図5参照。)、また、図示しないが歯車状の綴じ部材と直線状の綴じ部材との組み合わせであってもよく、特に限定されない。
綴じ部材17,18による重ね部14の圧縮は、接着片13と他方の側縁部12とを強い結合力で結合し、一方の側縁部10と接着片13とは結合力を生じさせないようにして、接着片13と他方の側縁部12のみを接着するようにした。
【0021】
なお、綴じ部材17,18が歯車状である場合、図示しないが、綴じ部材17,18の少なくとも一方の側に重ね部14を押さえるローラを設けることが好ましい。特に、紙シート素材がダンボール等の場合、重ね部14に沿って綴じ部材17,18で圧力を加えたとき、ローラによって重ね部14が押さえられ綺麗な綴じ込みとなる。
【0022】
このように構成された本例の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法によれば、重ね部14を綴じ部材17,18で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて重ね部14を圧縮したとき、接着片13と他方の側縁部12とが歯部15,16の噛み合いにより圧縮され結合して接着し、一方の側縁部10と接着片13とは接着せず、重ね部14を綴じ部材17,18で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ重ね部14を圧縮したブランクシート2を押し広げたとき、接着片13と一方の側縁部10とが容易に離れ、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状に形成することができる(図7参照。)。
【0023】
次に、綴じ部材17,18による重ね部14の圧縮で、接着片13と他方の側縁部12とを強い結合力で結合し、一方の側縁部10と接着片13とは結合力を生じさせないようにして、接着片13と他方の側縁部12のみを接着する手段について、例を挙げて説明する。
【0024】
[第1例]
筒状体1を形成する紙シート素材として、筒状体1の外面となる表面Aが長繊維、裏面Bが短繊維の層で構成されたものを使用する。ここにいう長繊維とは、綴じ部材17,18で圧縮したとき絡み合って強い結合力が得られる長さを有する繊維をいい、短繊維とは絡み合いが弱く、強い結合力が得られない長さの繊維をいう。表面Aが長繊維、裏面Bが短繊維の層で構成された紙シート素材として、例えば、コートボール紙がある。
このような紙シート素材を用いた筒状体1のブランクシート2の一方の側縁部10と接着片13と他方の側縁部12とを重ね合わせた重ね部14は、重ね部14における接着片13と他方の側縁部12の対向面にあっては、接着片13における対向面が長繊維の層となり、他方の側縁部12における対向面が短繊維の層となり、そして、一方の側縁部10と接着片13の対向面は、いずれも短繊維の層となる。
そのため、重ね部14を一対の綴じ部材17,18で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ圧縮したとき、圧力により接着片13と他方の側縁部12の対向面の繊維がほぐれ、接着片13における対向面の長繊維が他方の側縁部12における対向面の短繊維と絡み合って強い結合力で結合し、他方、一方の側縁部10と接着片13との対向面の繊維はほぐれるが、いずれも短繊維であるため絡み合いが弱く、強い結合力が得られず結合しない。
【0025】
[第2例]
紙シート素材を用いた筒状体1のブランクシート2の一方の側縁部10と接着片13と他方の側縁部12とを重ね合わせた重ね部14を綴じ部材17,18により圧縮する前に、他方の側縁部12と接着片13の対向面の少なくともいずれか一方の面に、水分を供給し吸湿させておく。
このようにすることにより、吸湿した面の繊維はほぐれ易く、重ね部14を一対の綴じ部材17,18で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて圧縮したとき、その圧力が強くなくても他方の側縁部12と接着片13の対向面の少なくともいずれか一方の吸湿している面の繊維が容易にほぐれ、接着片13と他方の側縁部12の対向面のほぐれた繊維が絡み合って強い結合力で結合し、他方、一方の側縁部10と接着片13との対向面の繊維はほぐれ難く絡み合いも弱く、強い結合力が得られず結合しない。
【0026】
なお、紙シート素材が、第1例に示した表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであると、接着片13と他方の側縁部12の対向面のいずれか一方の面の長繊維が他方の面の短繊維と絡み合って強い結合力で結合するので、接着片13と他方の側縁部12の対向面は、一層強い結合力で結合し、一層強固な筒状体1を形成する。
【0027】
[第3例]
筒状体1を形成する紙シート素材の裏面に耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料(インキも含む。)を塗布しておく。
このようにすることにより、このような紙シート素材を用いた筒状体1のブランクシート2の一方の側縁部10と接着片13と他方の側縁部12とを重ね合わせた重ね部14は、重ね部14における接着片13と他方の縁部の対向面にあっては、いずれか一方の面が耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布していない面、他方の面が塗布した面となり、そして、一方の側縁部10と接着片13もしくは一方の側縁部10と他方の側縁部12の対向面にあっては、いずれも耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面となる。
そのため、重ね部14を一対の綴じ部材17,18で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ圧縮したとき、圧力により接着片13と他方の側縁部12の対向面の繊維がほぐれ、耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面の繊維は絡み合いが弱いが、耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布していない面の繊維がこれをカバーし、耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布していない面の繊維と耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面の繊維が絡み合って強い結合力で結合し、他方、一方の側縁部10と接着片13との対向面は、いずれも耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面となるため、繊維は絡み合いが弱いもの同士となり、強い結合力が得られず結合しない。
【0028】
なお、紙シート素材が、第1例に示した表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであると、接着片13と他方の側縁部12の対向面のいずれか一方の面の長繊維が他方の面の短繊維と絡み合って強い結合力で結合するので、接着片13と他方の側縁部12の対向面は、一層強い結合力で結合し、一層強固な筒状体1を形成する。
また、重ね部14を綴じ部材17,18により圧縮する前に、他方の側縁部12と接着片13の対向面の少なくともいずれか一方の面に、水分を供給し吸湿させておくと、接着片13と他方の側縁部12の対向面のほぐれた繊維が絡み合って強い結合力で結合するので、接着片13と他方の側縁部12の対向面は、一層強い結合力で結合し、一層強固な筒状体1を形成する。
【0029】
なお、本例では一枚の紙シート素材の両側縁部のうちの一方の側縁部10に接着片13を連接し、接着片13と他方の側縁部12を重ね合わせ接着して筒状体1を形成しているが、図示しないが、複数枚の紙シート素材を使用し、それぞれの紙シート素材の一側の側線部を一方の側縁部10として接着片13を連接し、他側の側線部を他方の側縁部12とし、1の紙シート素材の一方の側縁部10に連接した接着片13と他の紙シート素材の他方の側縁部12を重ね合わせ接着して筒状体1を形成してもよく、また、一枚の紙シート素材を二つ折りし、前後に対向する紙シート素材の同じ側にある側線部の内の前または後の紙シート素材の側縁部を一方の側縁部10として接着片13を連接し、他の紙シート素材の側縁部を他方の側縁部12とし、接着片13と他方の側縁部12を重ね合わせ接着して筒状体1を形成してもよく、形成される筒状体1については特に限定されない。
このようにして形成される筒状体1には、本例のような角筒や円筒形などがあり、箱、容器、袋、パック、トレー、封筒などに適用することができる。
また、紙シート素材としては、コートーボール紙、ダンボール紙、普通紙などが使用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 筒状体
2 ブランクシート
3、4、5 折線
6、7、8、9 筒壁パネル
10 一方の側縁部
11 折線
12 他方の側縁部
13 接着片
14 重ね部
15、16 歯部
17、18 綴じ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7