【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、箱等の本体が、前記のような箱等の本体を構成するパネルの一方の側縁部に連接された糊代片を他方の側縁部に接着して筒状に形成されるものである場合、パネルの一方の側縁部に連接された糊代片を他方の側縁部に接着する手段として、前記特許文献1、2に記載されている綴じ部材で接着しようとすると、糊代片と他方の側縁部の重ね部に対し、一対の綴じ部材の一方の綴じ部材を重ね部の外側に、一方の綴じ部材を重ね部の内側に側に対向させて配置し、重ね部を挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせることになる。
【0006】
この場合、重ね部の外側は綴じ部材を配置するのに十分なスペースがあるが、重ね部の内側は筒状に形成される本体の内部となり、綴じ部材の配置スペースが狭く、配置が難しい。特に箱等が小さい場合は、重ね部の内側への綴じ部材の配置は特に困難である。
また、重ね部の内側に綴じ部材を配置するのに十分なスペースがあったとしても、重ね部の内側に配置する綴じ部材を支持する躯体の構造が制約され、実施が難しいといった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、紙シート素材の両側縁部を一対の綴じ部材で容易に接着できるようにするとともに、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状に形成できるようにした、紙シート素材を用いた筒状体の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、紙シート素材の側縁部同士を、一方の側縁部に連接した接着片を他方の側縁部に重ね合わせ接着して筒状に形成する紙シート素材を用いた筒状体の形成方法であって、一方の側縁部に、該側縁部から内側に折り返す折り返し片を連接してこれを前記接着片とし、前記一方の側縁部と、前記一方の側縁部に連接し折り返した前記接着片と、前記他方の側縁部とを、前記接着片が前記他方の側縁部の表裏いずれかの面側と接するように重ね合わせ、この重ね部を、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する一対の綴じ部材で前記重ね部を挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて前記重ね部を圧縮し、
前記接着片と前記他方の側縁部の対向面の繊維を絡み合わせることにより前記接着片と前記他方の側縁部と
に強い結合力
を生じさせ、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とは結合力を生じさせないようにして、前記接着片と前記他方の側縁部のみを接着することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記紙シート素材は、表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の、前記重ね部を前記綴じ部材により圧縮する前に、前記他方の側縁部と前記接着片の対向面の少なくともいずれか一方の面に、水分を供給し吸湿させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の、前記紙シート素材は、裏面に耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料が塗布されているものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法によれば、一方の側縁部に、該側縁部から内側に折り返す折り返し片を連接してこれを前記接着片とし、前記一方の側縁部と、前記一方の側縁部に連接し折り返した前記接着片と、前記他方の側縁部とを、前記接着片が前記他方の側縁部の表裏いずれかの面側と接するように重ね合わせ、この重ね部を、対向面に互いに噛み合い可能な歯部を有する一対の綴じ部材で前記重ね部を挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて前記重ね部を圧縮し、
前記接着片と前記他方の側縁部の対向面の繊維を絡み合わせることにより前記接着片と前記他方の側縁部と
に強い結合力
を生じさせ、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とは結合力を生じさせないようにして、前記接着片と前記他方の側縁部のみを接着するようにしたので、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて前記重ね部を圧縮したとき、前記接着片と前記他方の側縁部とが前記歯部の噛み合いにより圧縮され結合して接着し、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とは接着せず、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ前記重ね部を圧縮した紙シート素材を押し広げたとき、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とが容易に離れ、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状体に形成することができる。
また、紙シート素材の両側縁部は、前記重ね部を前記一対の綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせることにより圧縮されて接着するので、前記一対の綴じ部材は重ね部の外側に配置することができることから、形成される筒状の大きさに関係なく簡単な構成で容易に接着することができ、また、接着に糊の使用が無くなり、更に作業工程が簡略化するなど、その分コストの低減を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法によれば、請求項1に記載の、前記紙シート素材は、表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであるので、前記一方の側縁部と前記接着片と前記他方の側縁部とを重ね合わせた前記重ね部は、前記重ね部における前記接着片と前記他方の側縁部の対向面にあっては、一方の面が長繊維の層となり他方の面が短繊維の層となり、そして、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部の対向面にあっては、いずれも短繊維の層となる。
そのため、前記重ね部を一対の綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ圧縮したとき、圧力により前記接着片と前記他方の側縁部の対向面の繊維がほぐれ、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のいずれか一方の面の長繊維が他方の面の短繊維と絡み合って強い結合力で結合し、他方、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部との対向面の繊維はほぐれるが、いずれも短繊維であるため絡み合いが弱く、強い結合力が得られず結合しない。
これにより、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ前記重ね部を圧縮した紙シート素材を押し広げたとき、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とが容易に離れ、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状体に形成することができる。
【0014】
請求項3に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法によれば、請求項1に記載の、前記重ね部を前記綴じ部材により圧縮する前に、前記他方の側縁部と前記接着片の対向面の少なくともいずれか一方の面に、水分を供給し吸湿させるので、吸湿した面の繊維はほぐれ易く、前記重ね部を一対の綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせて圧縮したとき、その圧力が強くなくても前記他方の側縁部と前記接着片の対向面の少なくともいずれか一方の吸湿している面の繊維が容易にほぐれ、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のほぐれた繊維が絡み合って強い結合力で結合し、他方、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部との対向面の繊維はほぐれ難く絡み合いも弱く、強い結合力が得られず結合しない。
これにより、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ前記重ね部を圧縮した紙シート素材を押し広げたとき、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とが容易に離れ、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状体に形成することができる。
また、前記紙シート素材が、表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであると、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のいずれか一方の面の長繊維が他方の面の短繊維と絡み合って強い結合力で結合するので、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面は、一層強い結合力で結合し、一層強固な筒状体を形成することができる。
【0015】
請求項4に記載の紙シート素材を用いた筒状体の形成方法によれば、請求項1に記載の、前記紙シート素材は、裏面に耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料が塗布されているので、前記一方の側縁部に、該側縁部から内側に折り返す折り返し片を連接してこれを前記接着片とし、前記一方の側縁部と前記接着片と前記他方の側縁部とを重ね合わせた前記重ね部は、重ね部における接着片と他方の縁部の対向面にあっては、いずれか一方の面が耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布していない面、他方の面が塗布した面となり、そして、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部の対向面にあっては、いずれも耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面となる。
そのため、前記重ね部を一対の綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ圧縮したとき、圧力により前記接着片と前記他方の側縁部の対向面の繊維がほぐれ、耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面の繊維は絡み合いが弱いが、耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布していない面の繊維がこれをカバーし、耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布していない面の繊維と耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面の繊維が絡み合って強い結合力で結合し、他方、前記一方の側縁部と前記接着片との対向面は、いずれも耐水性、耐油性もしくは剥離性のある液体または塗料を塗布した面となるため、繊維は絡み合いが弱いもの同士となり、強い結合力が得られず結合しない。
これにより、前記重ね部を綴じ部材で挟み、重ねた方向から圧力をかけて噛み合わせ前記重ね部を圧縮した紙シート素材を押し広げたとき、前記一方の側縁部と前記接着片もしくは前記一方の側縁部と前記他方の側縁部とが容易に離れ、一方の側縁部に連接された糊代片と他方の側縁部を糊により接着して形成される筒状と同様の筒状に形成することができる。
また、前記紙シート素材が、表面が長繊維、裏面が短繊維の層で構成されたものであると、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のいずれか一方の面の長繊維が他方の面の短繊維と絡み合って強い結合力で結合するので、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面は、一層強い結合力で結合し、一層強固な筒状体を形成することができる。
また、前記重ね部を前記綴じ部材により圧縮する前に、前記他方の側縁部と前記接着片の対向面の少なくともいずれか一方の面に、水分を供給し吸湿させておくと、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面のほぐれた繊維が絡み合って強い結合力で結合するので、前記接着片と前記他方の側縁部の対向面は、一層強い結合力で結合し、一層強固な筒状体を形成することができる。