【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、産業技術力強化法19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
青色遅延蛍光材料を含む層と、緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層と、前記青色遅延蛍光材料を含む層と前記緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層との間に介在するスペーサー層とを有することを特徴とする有機発光素子。
前記緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層において、前記緑色蛍光材料および前記赤色蛍光材料は、同一の層内に混在することを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
前記緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層において、前記緑色蛍光材料および前記赤色蛍光材料は、別々の層にそれぞれ含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
前記緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層における各蛍光材料の重量は、緑色蛍光材料の方が赤色蛍光材料よりも大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機発光素子。
前記緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層における赤色蛍光材料と緑色蛍光材料のモル比(赤色蛍光材料の重量:緑色蛍光材料の重量)は、1:2〜1:100であることを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
前記スペーサー層の材料の最低励起一重項エネルギー準位および最低励起三重項エネルギー準位は、それぞれ、前記青色遅延蛍光材料の最低励起一重項エネルギー準位および最低励起三重項エネルギー準位よりも大きいことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機発光素子。
前記青色遅延蛍光材料を含む層が前記陰極側に配され、前記緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層が前記陽極側に配されていることを特徴とする請求項14に記載の有機発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべて
1Hであってもよいし、一部または全部が
2H(デューテリウムD)であってもよい。
【0010】
<有機発光素子>
本発明の有機発光素子は、青色遅延蛍光材料を含む層と、緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層と、青色遅延蛍光材料を含む層と緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層との間に介在するスペーサー層とを有するものである。
本発明において「青色遅延蛍光材料」とは、励起三重項状態に遷移した後、励起一重項状態に逆項間交差することができ、励起一重項状態から基底状態に戻るときに青色蛍光を放射する有機化合物のことを言う。なお、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により生じる光の寿命は、通常の蛍光(即時蛍光)やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。
また、「スペーサー層」とは、青色遅延蛍光材料含有層から緑赤色蛍光材料含有層へのキャリアの移動を抑制する障壁として機能する層のことを言う。
なお、以下の説明では、青色遅延蛍光材料を含む層を「青色遅延蛍光材料含有層」と言い、緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を個別または一緒に含む層を「緑赤色蛍光材料含有層」と言うことがある。
【0011】
このように構成された有機発光素子は、白色を効率よく発光させることができる。これは、以下の機構によるものと推測される。
図1に、本発明の有機発光素子の要部の一例を模式的に示す。
図1に示すように、青色遅延蛍光材料含有層10と、緑赤色蛍光材料含有層11と、青色遅延蛍光材料含有層10と緑赤色蛍光材料含有層11との間に介在するスペーサー層12とを有する有機発光素子では、青色遅延蛍光材料含有層10および緑赤色蛍光材料含有層11に、それぞれ互いに逆符号のキャリアが注入されると、緑赤色蛍光材料含有層11に注入されたキャリアは、緑赤色蛍光材料含有層11からスペーサー層12を通過して青色遅延蛍光材料含有層10に移動する。一方、青色遅延蛍光材料含有層10に注入されたキャリアは、スペーサー層12が障壁となって緑赤色蛍光材料含有層11への移動が抑制されるため、そのほとんどが青色遅延蛍光材料含有層10の内部および青色遅延蛍光材料含有層10とスペーサー層12との界面に留まって緑赤色蛍光材料含有層11から移動してきたキャリアと再結合し、エネルギーを生ずる。このエネルギーにより、青色遅延蛍光材料は励起一重項状態と励起三重項状態に励起され、このうち励起三重項状態に励起された励起子は逆項間交差を通じて励起一重項状態に遷移する。こうして生じた青色遅延蛍光材料の励起一重項エネルギーは、その一部が緑赤色蛍光材料含有層の緑色蛍光材料および赤色蛍光材料に移動して各蛍光材料を励起一重項状態に遷移させる。そして、残りの青色遅延蛍光材料の一重項励起子、緑色蛍光材料の一重項励起子、赤色蛍光材料の一重項励起子は、それぞれ青色光、緑色光、赤色光を放射しつつ基底状態に戻る。これにより、青色光、緑色光、赤色光が合わさって白色光が得られる。
【0012】
ここで、仮に、有機発光素子がスペーサー層を有さず、緑色蛍光材料および赤色蛍光材料が青色遅延蛍光材料中に混在している発光層を想定した場合、この発光層に注入されたキャリアは、青色遅延蛍光材料よりも緑色蛍光材料および赤色蛍光材料に優先的にトラップされ、各蛍光材料上で直接再結合して各蛍光材料を励起させるものと考えられる。この場合、緑色蛍光材料および赤色蛍光材料の最低励起一重項エネルギー準位S
1および最低励起三重項エネルギー準位T
1は、青色遅延蛍光材料の最低励起一重項エネルギー準位S
1および最低励起三重項エネルギー準位T
1よりも低いため、緑色蛍光材料および赤色蛍光材料で生じたエネルギーは青色遅延蛍光材料に移動せず、青色遅延蛍光材料からの発光はほとんど得られない。そして、通常の蛍光材料(緑色蛍光材料、赤色蛍光材料)は、逆項間交差を生じないため、励起子の75%を占める三重項励起子は無輻射失活し、形成確率が25%の一重項励起子のみによって発光を得ることになる。また、青色遅延蛍光材料上でキャリアが再結合して励起子が生成されたとしても、そのエネルギーは青色発光に利用される前に緑色蛍光材料および赤色蛍光材料に容易に移動するものと考えられる。このため、得られる発光は青色を欠いたものになり、発光効率も低くなってしまう。
【0013】
これに対して、本発明の有機発光素子では、青色遅延蛍光材料含有層10と、緑色蛍光材料と赤色蛍光材料とを含む緑赤色蛍光材料含有層11とがスペーサー層12を介して分離されていることにより、青色遅延蛍光材料上で優先的にキャリアが再結合して励起子が生成され、逆項間交差を通じて三重項励起子のエネルギーを有効に青色蛍光の発光に寄与させることができる。また、青色遅延蛍光材料で生じた励起一重項エネルギーは比較的容易に各蛍光材料に移動し、このエネルギーによって緑色蛍光材料および赤色蛍光材料が青色遅延蛍光材料とともにバランスよく発光する。以上の機構により、この有機発光素子は、効率よく白色を発光させることができるものと推測される。
【0014】
さらに、本発明の有機発光素子は、電流密度に関わらず、同じパターンの発光スペクトルを得ることができ、長期間使用しても色純度がほとんど変化しないという有利な特性を有しており、電流密度を上げることで白色度を損なうことなく発光強度を高めることができ、また長期間に亘って安定に白色を発光させることが可能である。
以下、有機発光素子を構成する各層の構成について詳述する。
【0015】
[青色遅延蛍光材料含有層]
青色遅延蛍光材料含有層は、青色遅延蛍光材料含有層に注入されたキャリアと、緑赤色蛍光材料含有層からスペーサー層を介して移動してきたキャリアとが再結合することにより励起子が生成した後、青色光を発光する層である。ここで、青色遅延蛍光材料では、三重項励起子も逆項間交差を通じて一重項励起子に遷移するため、キャリアの再結合によって直接生じた一重項励起子とともに、三重項励起子のエネルギーも間接的に蛍光発光に寄与させることができる。
青色遅延蛍光材料含有層は、青色遅延蛍光材料のみで構成されていてもよいし、青色遅延蛍光材料とホスト材料を含有していてもよい。但し、青色遅延蛍光材料含有層は、通常の蛍光材料(例えば青、緑、赤の蛍光材料)を含まない。青色遅延蛍光材料含有層が通常の蛍光材料を含むと、この蛍光材料上でキャリアが再結合することによって生じた三重項励起子を発光に有効に寄与させることができず、発光効率が低くなる可能性がある。
青色遅延蛍光材料としては、特に制限されないが、耐久性が高い遅延蛍光材料を使用することが好ましい。
青色遅延蛍光材料は、400〜520nmの範囲に発光ピークを有することが好ましく、420〜500nmの範囲に発光ピークを有することがより好ましく、460〜470nmの範囲に発光ピークを有することがより好ましい。
また、青色遅延蛍光材料は、最低励起一重項エネルギー準位S
1と最低励起三重項エネルギー準位T
1との差ΔE
stが0.20eV以下であることが好ましく、0.15eV以下であることがより好ましく、0.10eV以下であることがさらに好ましい。
【0016】
以下において、本発明で用いることができる青色遅延蛍光材料の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる青色遅延蛍光材料はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0017】
4,5-bis(carbazol-9-yl)-1,2-dicyanobenzene (2CzPN)
2,4-bis[3-(9H-carbazol-9-yl)-9H-carbazol-9-yl]-6-phenyl-1,3,5-triazine (CC2TA)
10-phenyl-10H,10'H-spiro[acridine-9-9'-antracen]-10'-one (ACRSA)
bis[4-(9,9-dimethyl-9,10-dihydroacridine)phenyl]sulfone (DMACDPS)
【0018】
ホスト材料を用いる場合、ホスト材料としては、少なくとも最低励起三重項エネルギー準位T
1が青色遅延蛍光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることが好ましい。これにより、青色遅延蛍光材料に生成した三重項励起子を、青色遅延蛍光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を促進することができる。また、ホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位S
1は、青色遅延蛍光材料上での励起一重項状態から基底状態への輻射失活と励起一重項エネルギーの緑赤色蛍光材料含有層への移動の両立を考慮して選定するのが好ましい。このような点から、ホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位S
1は、青色遅延蛍光材料の最低励起一重項エネルギー準位をS
b1としたとき、S
b1+0.1eV以上であることが好ましく、S
b1+0.2eV以上であることがより好ましく、S
b1+0.3eV以上であることがさらに好ましい。
ホスト材料を用いる場合、青色遅延蛍光材料が青色遅延蛍光材料含有層中に含有される量は5〜90重量%であることが好ましく、75重量%以下であることがより好ましく、50.0重量%以下であることがさらに好ましい。
青色遅延蛍光材料含有層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0019】
[緑赤色蛍光材料含有層]
緑赤色蛍光材料含有層は、青色遅延蛍光材料含有層からスペーサー層を介して移動してきたエネルギーによって励起子が生成した後、緑色光および赤色光を発光する層である。この有機発光素子では、上記の青色遅延蛍光材料含有層からの青色光と、緑赤色蛍光材料含有層からの緑色光および赤色光が合わさって白色光が得られる。
緑赤色蛍光材料含有層は、緑色蛍光材料および赤色蛍光材料を含む。緑色蛍光材料と赤色蛍光材料は同一の層に混在していてもよいし、別々の層にそれぞれが含まれていてもよい。
緑色蛍光材料と赤色蛍光材料が別々の層に含まれているとき、緑色蛍光材料を含む層と赤色蛍光材料を含む層とは連続していることが好ましい。これにより、青色遅延蛍光材料からのエネルギーを効率よく各層に移動させることができる。また、緑色蛍光材料含む層と赤色蛍光材料を含む層はいずれがスペーサー層側に配されていてもよいが、緑色蛍光材料を含む層が赤色蛍光材料を含む層よりもスペーサー側に配されていることが好ましい。これにより、緑色蛍光材料を含む層と赤色蛍光材料を含む層の両方に、青色遅延蛍光材料含有層からのエネルギーを効率よく移動させることができる。
【0020】
緑色蛍光材料は、500〜560nmの範囲に発光ピークを有することが好ましく、510〜550nmの範囲に発光ピークを有することがより好ましく、520〜540nmの範囲に発光ピークを有することがより好ましい。
以下において、本発明で用いることができる緑色蛍光材料の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる緑色蛍光材料はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0021】
3-(2-benzothiazolyl)-7-(diethylamino)coumarin (Coumarin6)
2,3,6,7-tetrahydro-1,1,7,7,-tetramethyl-1H,5H,11H-10-(2-benzothiazolyl)quinolizino[9,9a,1gh]comarin (C545T)
N,N'-dimethyl-quinacridone (DMQA)
9,10-bis[N,N-di-(p-tolyl)-amino]anthracene (TTPA)
【0022】
赤色蛍光材料は、560〜750nmの範囲に発光ピークを有することが好ましく、
570〜680nmの範囲に発光ピークを有することがより好ましく、580〜650nmの範囲に発光ピークを有することがより好ましい。
以下において、本発明で用いることができる赤色蛍光材料の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる赤色蛍光材料はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0023】
2,8-di-tert-butyl-5,11-bis(4-tert-butylphenyl)-6,12-diphenyltetracene (TBRb)
4-(dicyanomethylene)-2-tert-butyl-6-(1,1,7,7-tetramethyljulolidine-4-yl-vinyl)-4H-pyran (DCJTB)
4-(dicyanomethylene)-2-methyl-6-julolidyl-9-enyl-4H-pyran (DCM2)
Dibenzo[[f,f']-4,4',7,7'-tetraphenyl]diindeno[1,2,3-cd:1',2'3'-lm]perylene (DBP)
【0024】
緑赤色蛍光材料含有層における各蛍光材料の重量は、緑色蛍光材料の方が赤色蛍光材料よりも大きいことが好ましい。具体的には、赤色蛍光材料と緑色蛍光材料のモル比(赤色蛍光材料の重量:緑色蛍光材料の重量)は、1:2〜1:100であることが好ましく、1:10〜1:70であることがより好ましく、1:20〜1:40であることがさらに好ましい。
【0025】
また、緑色蛍光材料と赤色蛍光材料とが混在する層、緑色蛍光材料を含む層、赤色蛍光材料を含む層は、それぞれ青色蛍光材料(青色遅延蛍光材料ではなく、通常の青色蛍光材料)を含んでいてもよいし、ホスト材料を含んでいてもよい。
以下において、緑赤色蛍光材料含有層に含ませることができる好ましい青色蛍光材料の具体例を挙げる。
【0026】
6-methyl-2-(4-(9-(4-(6-methylbenzo[d]thiazol-2-yl)anthracen-10-yl)phenyl)benzo[d]thiazole (DBzA)
2,5,8,11-tetra-tert-butylperylene (TBPe)
4-(di-p-tolylamino)-4'-[(di-p-tolylamino)styryl]stilbene (DPAVB)
4,4'-bis(carbazol-9-yl)triphenylamine (CBP)
2,2',2"-(1,3,5-benzinetriyl)-tris(1-phenyl-1-H-benzimidazole) (TPBi)
【0027】
ホスト材料を用いる場合、ホスト材料としては、少なくとも最低励起一重項エネルギー準位S
1が、同一層内に共存する蛍光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることが好ましく、最低励起一重項エネルギー準位S
1および最低励起三重項エネルギー準位T
1が、同一層内に共存する蛍光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることがより好ましい。これにより、各蛍光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、各蛍光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。
ホスト材料を用いる場合、緑色蛍光材料が緑赤色蛍光材料含有層中に含有される量は1〜90重量%であることが好ましく、5〜50重量%であることが好ましく、10〜20重量%であることがより好ましい。また、赤色蛍光材料が緑赤色蛍光材料含有層中に含有される量は1〜10重量%であることが好ましく、1〜5重量%であることが好ましく、1〜3重量%であることがより好ましい。
緑赤色蛍光材料含有層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0028】
[スペーサー層]
スペーサー層は、青色遅延蛍光材料含有層から緑赤色蛍光材料含有層へのキャリアの移動を抑制する障壁として機能する層である。これにより、緑赤色蛍光材料含有層でキャリアが直接再結合することが抑えられ、青色遅延蛍光材料含有層において優先的にキャリアを再結合させることができる。
スペーサー層の材料としては、その最低励起一重項エネルギー準位S
1および最低励起三重項エネルギー準位T
1が青色遅延蛍光材料のそれよりも高いものが用いられる。具体的には、スペーサー層の材料の最低励起一重項エネルギー準位S
1は、青色遅延蛍光材料の最低励起一重項エネルギー準位をS
b1(eV)としたとき、S
b1+0.5eV以上であることが好ましく、S
b1+0.5eV〜S
b1+1.0eVであることがより好ましく、S
b1+1.0eV〜S
b1+1.5eVであることがさらに好ましい。また、スペーサー層の材料の最低励起三重項エネルギー準位T1は、青色遅延蛍光材料の最低励起三重項エネルギー準位をT
b1(eV)としたとき、T
b1+0.5eV以上であることが好ましく、T
b1+0.5eV〜T
b1+1.0eVであることがより好ましく、T
b1+1.0eV〜T
b1+1.5eVであることがさらに好ましい。
スペーサー層の材料は、一般的なホスト材料として使用可能な材料の中から、最低励起一重項エネルギー準位S
1および最低励起三重項エネルギー準位T
1が青色遅延蛍光材料のそれよりも高いもの選択して使用することができ、特に緑赤色蛍光材料含有層で用いるホスト材料と同一のホスト材料を含有することが好ましい。
スペーサーの厚みは、特に限定されないが、0.5〜10nmとするのが好ましく、その下限値は0.9nm以上が好ましく、1.5nm以上がより好ましい。また、スペーサー層の厚みの上限値は5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましい。
【0029】
[発光色]
本発明の有機発光素子において、発光は、青色遅延蛍光材料含有層に含まれる青色遅延蛍光材料、緑赤色蛍光材料含有層に含まれる緑色蛍光材料および赤色蛍光材料から生じ、これらの発光色が合わさって白色光が得られる。青色遅延蛍光材料および各蛍光材料の発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
有機発光素子が発光する発光色のCIE色度座標は、(0.20,0.30)〜(0.46,0.41)であることが好ましい。
【0030】
<有機発光素子を構成するその他の層>
本発明の有機発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子として構成することができる。有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層が、青色遅延蛍光材料含有層と緑赤色蛍光材料含有層と、青色遅延蛍光材料含有層と緑赤色蛍光材料含有層との間に介在するスペーサー層とを有する。発光層において、青色遅延蛍光材料含有層および緑赤色蛍光材料含有層のいずれが陽極側または陰極側であってもよいが、青色遅延蛍光材料を含む層が陰極側に配され、緑赤色蛍光材料含有層が陽極側に配されていることが好ましい。
有機層は、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を
図2に示す。
図2において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層以外の各部材および各層について説明する。
【0031】
[基板]
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0032】
[陽極]
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0033】
[陰極]
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0034】
[注入層]
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0035】
[阻止層]
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0036】
[正孔阻止層]
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0037】
[電子阻止層]
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0038】
[励起子阻止層]
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0039】
[正孔輸送層]
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0040】
[電子輸送層]
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0041】
有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する各層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0042】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R’、R
1〜R
10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Xは環骨格を形成する炭素原子または複素原子を表し、nは3〜5の整数を表し、Yは置換基を表し、mは0以上の整数を表す。
【0043】
まず、発光層(遅延蛍光材料含有層、緑赤色蛍光材料含有層、スペーサー層)のホスト材料として用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0049】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0051】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0058】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0060】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0062】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0066】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0068】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0070】
この有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極の間に電界を印加することにより、遅延蛍光材料含有層および緑赤色蛍光材料含有層で励起子が生成され、その励起子が基底状態に戻る際に青色光、緑色光、赤色光が蛍光発光および遅延蛍光発光として放射されるとともに、これらの光が合わさって白色光が得られる。
【0071】
本発明の有機発光素子は、特に、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに用いられる白色発光ダイオードとして応用することができる。また、本発明の有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機発光素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、デバイス特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、絶対外部量子効率測定システム(浜松ホトニクス社製:C9920−12)、分光計(浜松ホトニクス社製:PMA−12)を用いて行った。
【0073】
実施例および比較例で用いた化合物の最低励起一重項エネルギー準位E
S1と、最低励起三重項エネルギー準位E
T1は、以下の手順により求めた。また、最低励起一重項状態と77Kの最低励起三重項状態とのエネルギーの差ΔE
stは、E
S1とE
T1の差を計算することにより求めた。
(1)最低励起一重項エネルギー準位E
S1
測定対象化合物をSi基板上に蒸着して試料を作製し、常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトルを測定した。蛍光スペクトルは、縦軸を発光、横軸を波長とした。この発光スペクトルの短波側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値 λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をE
S1とした。
換算式:E
S1[eV]=1239.85/λedge
発光スペクトルの測定には、励起光源に窒素レーザー(Lasertechnik Berlin社製、MNL200)を検出器には、ストリークカメラ(浜松ホトニクス社製、C4334)を用いた。
【0074】
(2)最低励起三重項エネルギー準位E
T1
一重項エネルギーE
S1と同じ試料を77[K]に冷却し、励起光(337nm)を燐光測定用試料に照射し、ストリークカメラを用いて、燐光強度を測定した。この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をE
T1とした。
換算式:E
T1[eV]=1239.85/λedge
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引いた。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とした。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の10%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とした。
【0075】
(実施例1) 緑赤色蛍光材料含有層(DBP、TTPA)/mCPスペーサー層/青色遅延蛍光材料含有層(DMACDPS)を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚110nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
-5Pa以下で積層した。まず、ITO上にα−NPDを30nmの厚さに形成した。次に、DBPとTTPAとmCPとを異なる蒸着源から共蒸着し、8nmの厚さの層を形成して緑赤色蛍光材料含有層とした。この時、DBPの濃度は1重量%とし、TTPAの濃度は10重量%とした。次に、mCPを2nmの厚さに蒸着してスペーサー層を形成し、その上にDMACDPSを7.5nmの厚さに形成して青色遅延蛍光材料含有層とした。次に、DPEPOを10nmの厚さに形成し、その上にTPBiを40nmの厚さに形成した。さらに、フッ化リチウム(LiF)を0.5nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の1mA/cm
2、2.5mA/cm
2、5mA/cm
2、10mA/cm
2の各電流密度での発光スペクトルを
図3に示し、DMACDPS、TTPA、DBPの各発光波長に対応する光の過渡減衰曲線を
図4に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を
図6に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図7に示す。なお、
図3中のかっこ内の数値はCIE色度座標を表す。また、測定したデバイス特性を表1に示す。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子は、12.1%の高い外部量子効率を得ることができた。
また、
図3から、この有機エレクトロルミネッセンス素子では、電流密度に関わらず同じパターンの発光スペクトルが得られることが確認された。また、
図4で示されるように、DMACDPSの発光波長に対応する光(青色)、TTPAの発光波長に対応する光(緑色)、DBPの発光波長に対応する光(赤色)は、いずれも遅延蛍光として放射され、減衰パターンもほぼ同じとなっている。このことから、DMACDPSの逆項間交差に起因するエネルギーがTTPAとDBPに移動して緑色発光および赤色発光を生じさせることを確認することができた。
【0076】
(実施例2) 緑赤色蛍光材料含有層(DBP、TTPA)/mCPスペーサー層/青色遅延蛍光材料含有層(DMACDPS)を有する他の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
緑赤色蛍光材料含有層におけるTTPAの濃度を15重量%に変えたこと以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の1mA/cm
2での発光スペクトルを
図5に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を
図6に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図7に示す。なお、
図5中のかっこ内の数値はCIE色度座標を表す。また、測定したデバイス特性を表1に示す。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子は、8.92%の高い外部量子効率を得ることができた。
【0077】
(実施例3) 緑赤色蛍光材料含有層(DBP、TTPA)/mCPスペーサー層/青色遅延蛍光材料含有層(DMACDPS)を有する他の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
スペーサー層の厚みを1nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。作製した有機エレクトロルミネッセンス素子のデバイス特性を表1に示す。
この有機エレクトロルミネッセンス素子は、8.8%の高い外部量子効率を得ることができた。
【0078】
(比較例1) DBPとTTPAとDMACDPSとが混在する層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
緑赤色蛍光材料含有層/mCPスペーサー層/青色遅延蛍光材料含有層を形成する代わりに、DBPとTTPAとDMACDPSとを異なる蒸着源から共蒸着し、7.5nmの厚さの層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。この時、DBPの濃度は1重量%とし、TTPAの濃度は10重量%とした。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧−電流密度−発光強度特性を
図6に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図7に示す。また、測定したデバイス特性を表1に示す。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子は、外部量子効率が1.84%と低く、発光色も赤色が強く、白色度の低いものであった。
【0079】
(比較例2) 青色遅延蛍光材料含有層(DMACDPS)を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
緑赤色蛍光材料含有層およびスペーサー層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧−電流密度−発光強度特性を
図6に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図7に示す。また、測定したデバイスと特性を表1に示す。
この有機エレクトロルミネッセンス素子からはDMACDPSに由来する青色発光のみが観測された。
【0080】
(比較例3) 緑赤色蛍光材料含有層(DBP、TTPA)/青色遅延蛍光材料含有層(DMACDPS)を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
スペーサー層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の素子特性を表1に示す。
この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が6.3%と低いものであった。
【0081】
【表1】
【0082】
【化20】
DMACDPSの最低励起一重項エネルギー準位は3.0eV、最低励起三重項エネルギー準位は2.98eVであり、TTPAの最低励起一重項エネルギー準位は2.34eVであり、DBPの最低励起一重項エネルギー準位は2.03eVである。