(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記近接電極が前記液体噴霧部同士の間に配置されることで、隣接する前記液体噴霧部から噴霧される前記液体同士が少なくとも混ざることを特徴とする請求項1に記載の静電噴霧装置。
前記液体噴霧部同士の間に配置される前記近接電極は、前記近接電極に隣接する前記液体噴霧部の先端同士を直線で結んだときの長さの半分の長さよりも小さい幅であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
なお、特に断りがない場合、「先(端)」や「前(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向側を表し、「後(端)」や「後(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向と反対側を表すものとする。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る第1実施形態の静電噴霧装置10の全体構成を示す断面図であり、
図2は、静電噴霧装置10の液体噴霧部20周辺を拡大した拡大斜視図である。
なお、
図2に示すように、液体噴霧部20及び近接電極40は直線状に並んでいるわけではないので、
図1の断面図は、静電噴霧装置10を直線で切断した断面ではなく、あくまでも、全体構成がよりわかり易いように各部の断面を示しているものである。
【0015】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態の静電噴霧装置10は、3つの液体噴霧部20と、液体噴霧部20の近隣に配置される近接電極40とを備え、液体噴霧部20が正三角形に配置されるとともに、正面視で近接電極40が液体噴霧部20同士の間に配置されるように、絶縁材料からなるホルダ30によって液体噴霧部20及び近接電極40が保持されている。
【0016】
また、
図1に示すように、静電噴霧装置10は、それぞれの液体噴霧部20と被塗物60との間に電圧を印加する電圧印加手段50(電圧電源)を備えており、電圧印加手段50によって、液体噴霧部20と被塗物60との間に印加される電圧を抵抗51で分割することで、近接電極40と被塗物60との間にも電圧を印加するようになっている。
【0017】
なお、本実施形態では、電圧印加手段50によって、液体噴霧部20と被塗物60との間に印加される電圧を可変抵抗である抵抗51を用いて、近接電極40と被塗物60との間に電圧を印加する電圧印加手段を構成としているが、別の電圧印加手段(電圧電源)を用いて近接電極40と被塗物60との間に電圧を印加する構成としても良い。
【0018】
さらに、被塗物60は、アース手段70でアースされるようになっている。
このアース手段70は必須の要件ではないが、被塗物60のようなものの場合、作業者が触れたりすることがあり得るので安全面の観点で設けることが好ましい。
【0019】
なお、本実施形態では、被塗物60に電圧印加手段50からの電気配線を接続している場合を示しているが、被塗物60に、直接、電気配線を接続する必要はない。
例えば、被塗物60が搬送装置などによって、塗料などの液体を塗布する位置に搬送されるような場合には、電圧印加手段50からの電気配線を搬送装置の被塗物60が載置される載置部に接続されているようにして、載置部を介して被塗物60が電圧印加手段50に電気的に接続されるようにしても良い。
【0020】
(液体噴霧部)
図3は、1つの液体噴霧部20を示した断面図である。
図3に示すように、液体噴霧部20は、液体の供給される液体供給口21aを有する液体流路21bが形成された絶縁材料からなる胴体部21と、貫通孔が胴体部21の液体流路21bに連通するように胴体部21の先端に設けられる液体ノズル22と、胴体部21の液体流路21b内及び液体ノズル22の貫通孔内に配置される導電材料からなる心棒23と、を備えている。
【0021】
胴体部21には、心棒23を後端側に取り出すために、液体流路21bと連通した孔部21cが設けられ、その孔部21c内には、心棒23との間の隙間をシールして液体が漏れないようにするシール部材24が設けられている。
なお、本実施形態では、シール部材24としてOリングを用いているが、Oリングに限らず、シールが可能なものであればよい。
【0022】
そして、孔部21cを通じて胴体部21の後端側に位置する心棒23の後端には、絶縁材料からなる摘み部23aが設けられているとともに、摘み部23aのほぼ中央を貫通するように設けられた導電材料からなる電気配線接続部23bが設けられている。
【0023】
図1に示すように、電気配線接続部23bには、電圧印加手段50からの電気配線が接続される。
そして、
図3に示すように、電気配線接続部23bが心棒23に接触するようにされることで心棒23と電気配線接続部23bとが電気的に接続されている。
なお、本実施形態では、心棒23を液体噴霧部20の電極とする場合を示しているが、液体ノズル22を導電材料からなるものとして液体ノズル22に電圧印加手段50からの電気配線を接続して液体ノズル22を液体噴霧部20の電極としても良い。
【0024】
また、胴体部21の後端開口部21dの内周面には、摘み部23aを螺合接続するための雌ネジ構造21eが設けられ、一方、摘み部23aの先端外周面には、雄ネジ構造23cが設けられている。
【0025】
したがって、胴体部21の後端開口部21dの雌ネジ構造21eに摘み部23aの先端外周面の雄ネジ構造23cを螺合させることで心棒23が取外し可能に胴体部21に取付けられている。
また、摘み部23aの螺合量を調節することで心棒23を前後方向に移動させることができ、心棒23の先端面23dの位置を前後方向に調節できるようになっている。
【0026】
ここで、一般に、静電噴霧装置の先端を液体ノズルで形成する静電噴霧装置の場合、液体を噴霧するノズルは、液体が流れる貫通孔の直径が小さい微細な液体流路とされる。
これは、液体が流れ出るノズル先端の開口直径が大きいと、安定した液体の霧化状態が得られなくなるためと推察される。
例えば、一般には、ノズル先端の開口直径は0.1mm未満とされている。
【0027】
このため、液体が乾燥したりすると直ぐに、ノズル先端の開口部が目詰まりするが、開口直径が小さいため、この目詰まりを解消することが難しいという問題がある。
【0028】
しかしながら、理由については、後ほど説明するが、心棒23を用いるようにすることで、従来に比較して、ノズル先端の開口径を大きな開口直径としても良好な霧化ができることを見出し、このため、本実施形態の液体ノズル22の先端の開口部22bの開口直径は0.2mmの大きな開口直径にできている。
この結果、目詰まりが発生する頻度を大幅に低減することができるようになっている。
【0029】
なお、液体ノズル22の開口部22bの開口直径は0.2mmに限定されるものではなく、心棒23を用いる形態においては、開口直径は1mm程度であっても問題はない。
【0030】
液体ノズル22の開口部22bの開口直径は、目詰まりが起きにくく、また、目詰まりが起きても清掃ができることを考慮すると、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、さらに0.2mmより大きくすることが好ましい。
【0031】
一方、液体ノズル22の開口部22bの開口直径は、霧化の安定性を考慮すると、1.0mm以下が好適であり、より好ましく0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以下とするのが良い。
【0032】
また、本実施形態では、上述のように、心棒23を前後方向に移動させることができるため、目詰まりが起きても心棒23を移動させることで目詰まりの解消を行うことができる。
さらに、液体ノズル22の貫通孔の内径も心棒23を配置できる程度に大きくできているため、心棒23を取り外して洗浄液を大量に流して洗浄することも可能になっている。
【0033】
図4は、
図3に示した液体噴霧部20の先端、つまり、液体ノズル22の先端近傍を拡大した拡大図であり、
図4(a)は、心棒23の先端面23dが後方に位置する場合であり、
図4(b)は、
図4(a)の状態よりも心棒23の先端面23dが前方に位置する場合である。
【0034】
図4(a)に示すように液体ノズル22は、開口部22b側に向かってテーパ状に内径が小さくなるテーパ角度がαであるテーパ状内径部(範囲A参照)を有しており、心棒23は、先端面23dに向かって外径が小さくなるテーパ角度がβであるテーパ形状部(範囲B参照)を有している。
【0035】
そして、液体ノズル22のテーパ状内径部のテーパ角度αが、心棒23のテーパ形状部のテーパ角度βよりも大きくされている。
また、心棒23の先端面23dの直径は、液体ノズル22の開口部22bの開口直径よりも小さい直径とされているが、心棒23のテーパ形状部は、後端側に向かって徐々に直径が大きくなり、液体ノズル22の開口部22bの開口直径よりも直径の大きい部分を有するように形成されている。
【0036】
上記のように、液体ノズル22及び心棒23の先端側を形成することによって、
図4(a)及び(b)を見比べるとわかるように、心棒23を前後方向に移動させることで液体ノズル22と心棒23とで形成される隙間の幅を調節できるようになり、液体ノズル22の開口部22bから出る液体の量を調節することができる。
【0037】
また、
図4(b)で示す状態よりも、さらに、心棒23を前方側に動かすことで、心棒23が液体ノズル22の内周面に当接し、液体ノズル22の開口部22bを閉塞することが可能である。
したがって、液体を噴霧しない状態において、液体ノズル22の開口部22bを心棒23で閉塞させ、液体ノズル22内の液体が乾燥することを防止することが可能であり、液体ノズル22が目詰まりを起こすことを抑制ができる。
【0038】
(近接電極)
図2に示すように、近接電極40は、液体噴霧部20同士の間、より詳しくは、液体ノズル22同士のほぼ中間位置に位置するように、ホルダ30の近接電極取付部31に取付けられている。
より具体的には、3つの近接電極40は、中央の連結リング42の外周に周方向に120°間隔で設けられるように、連結リング42に一体形成されている。
なお、近接電極40及び連結リング42の部分は、導電材料や表面抵抗が10
10Ω以下である帯電防止材料を用いて形成される。
【0039】
そして、近接電極取付部31の先端に連結リング42を装着した状態で、連結リング42を近接電極取付部31側に押圧するように、連結リング42をネジ41で締め付けることで、近接電極取付部31に連結リング42が固定される。
このため、このネジ41を外すことで近接電極取付部31から近接電極40を取り外すことができる。
【0040】
なお、
図1では、近接電極40の先端に、抵抗51(可変抵抗)からの電気配線が接続されているように図示しているが、電気配線の接続は、例えば、
図2のホルダ30の後方側(液体ノズル22と反対側)から近接電極取付部31内を通して連結リング42に接続されるようになっていても良い。
【0041】
次に、複数の液体噴霧部20から噴霧される液体の状態を説明する前に、
図5を参照しながら、1つの液体噴霧部20から液体が噴霧される状態について説明を行い、その後、これが複数の液体噴霧部20を用いて行われたときにどのような液体の噴霧状態になるのかについて説明を行う。
【0042】
なお、
図5では、1つの液体噴霧部20だけを図示した断面図になっており、この液体噴霧部20(液体ノズル22)の両サイドに配置されている近接電極40についての図示を省略しているが、実際には、
図2に示すように、近接電極40が配置されている。
【0043】
上述した近接電極40は、電圧が印加されることで被塗物60基準電位としたときに第1電位となるようにされており、また、液体噴霧部20は、電圧が印加されることで被塗物60を基準電位としたときに第2電位となるようにされており、この第1電位と第2電位とが異なる電位になるようにされている。
つまり、電圧印加手段50及び抵抗51(可変抵抗)によって近接電極40と液体噴霧部20との間に第1電位と第2電位との間の電位差を生じる電圧が印加される構成となっている。
【0044】
そして、胴体部21の液体供給口21aに供給された液体は、液体ノズル22の先端側に供給されていき、第1電位と第2電位との間の電位差に伴う静電気力によって、前方側に引っ張られて前方に離脱・霧化する。
つまり、電圧印加手段50及び抵抗51(可変抵抗)によって近接電極40と液体噴霧部20との間に電圧を印加し、液体を帯電状態で液体噴霧部20の先端(液体ノズル22の先端)から離脱させる静電気力を発生させる電圧印加手段が構成されている。
【0045】
本実施形態では、抵抗51(可変抵抗)は、その抵抗を可変調節することで近接電極40の第1電位を調節することができるので、この調節によって近接電極40の第1電位と液体噴霧部20の第2電位との間の電位差を調節することができ、噴霧する塗料などの液体の種類などに応じて、適切な静電気力を発生させることができるようになっている。
【0046】
また、噴霧される液体同士の混ざり具合は、第1電位と第2電位との電位差によっても変化するため、適切な電位差のコントロールができることが望ましい。
例えば、第1電位を大きくすることで電位差を小さくすると、噴霧された液体同士が混ざり難くなる。
一方、第1電位を小さくすることで電位差を大きくすると、噴霧された液体が混ざりやすくなるが、近接電極40が噴霧された液体によって汚れやすくなる。
本実施形態では、第1電位を調節して電位差を簡単にコントロールできるので、近接電極40の汚れ具合などを考慮しつつ液体同士の混ざり具合を調節することも簡単に行うことができる。
【0047】
なお、液体の供給は、噴霧により消費されることで液体噴霧部20から失われる分の液体が順次供給されていれば良く、液体ノズル22の開口部22b(より正確には、開口部22bと心棒23との間の隙間)から液体が噴射するような圧力で圧送供給される必要はなく、液体が勢いよく噴射される状態の場合、かえって霧化ができなくなるようなことが起こる。
【0048】
より具体的には、心棒23の先端面23d及び液体ノズル22の先端外周縁22aへの表面張力や粘度による付着力に対して、液体を前方に引っ張る静電気力が釣り合うことで、
図5に示すように、液体ノズル22の先端側に供給された液体が、その先端で円錐形の形状となるテーラコーン80が形成される。
【0049】
このテーラコーン80は、電場の作用によって、液体中で正/負電荷の分離が起こり、過剰電荷で帯電した液体ノズル22先端のメニスカスが変形して円錐状となって形成されているものである。
そして、テーラコーン80の先端から静電気力によって液体が静電気力の引っ張り方向に真直ぐに引っ張られ、その後静電爆発によって広い範囲に液体が噴霧される。
【0050】
この噴霧される液体、つまり、液体ノズル22から離脱して液体粒子となった液体は、離脱前の状態に比べ、空気に触れる面積が飛躍的に大きくなるため溶媒の気化が促進され、その溶媒の気化に伴って帯電している電子間の距離が近づき、静電反発(静電爆発)が発生して、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
【0051】
この分裂が起こると、さらに、分裂前に比べ空気に触れる表面積が増えることになるため、溶媒の気化が促進され、上述したのと同様に静電爆発が発生し、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
このような静電爆発が繰り返されることで液体が霧化される。
【0052】
ここで、本実施形態では、液体ノズル22内に心棒23を設けるようにしている。
仮に、従来の静電噴霧装置のように、この心棒23を設けないものとすると、液体が付着できる部分は、液体ノズル22の先端外周縁22aだけとなる。
【0053】
そして、このような状態で液体ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくすると、液体の付着できる部分が、液体ノズル22の先端外周縁22aだけのため、例えば、液体ノズル22の上下左右に液体がふらついたりし易く、きれいなテーラコーン80が形成できなくなったり、また、テーラコーン80自体が維持できなくなるため、液体ノズル22から離脱する液体粒子の安定性(粒子の大きさ、数、及び、帯電状態などの安定性)が得られなくなり、結果、液体の安定した霧化ができなくなるものと推察される。
【0054】
一方、本実施形態では、液体ノズル22内に心棒23を配置して、液体ノズル22の先端外周縁22aだけでなく、心棒23の先端面23dとの間でも液体は付着する。
したがって、液体ノズル22の開口部22bの開口直径が大きくても、開口部22bの中央部に液体が付着できる心棒23の先端面23dが存在するため、安定したテーラコーン80を形成することができ、液体の安定した霧化ができるようになっているものと考えられる。
【0055】
なお、心棒23の先端面23dが液体ノズル22の先端外周縁22a(つまり、液体ノズル22の開口部22bの先端面)から前方に出過ぎると液体ノズル22から出る液体に電場が作用し難くなり、一方、心棒23の先端面23dが液体ノズル22の開口部22bの先端面から後方に引っ込み過ぎると、開口部22bの中央部に液体が付着できる部分が存在しないのと同じ状態となる。
【0056】
このことから、心棒23の先端面23dの位置は、液体を噴霧する状態において、液体ノズル22の開口部22bの先端面を基準にして、心棒23の中心軸に沿った前後方向で、液体ノズル22の先端の開口部22bの開口直径の10倍以内に位置することが好適であり、より好ましくは5倍以内に位置することが好適であり、さらに、好ましくは3倍以内に位置することが好適である。
【0057】
例えば、本実施形態では、液体ノズル22の開口部22bの開口直径が0.2mmであり、静電気力を考慮しない場合、液体ノズル22の開口部22bから出た液体は、液体ノズル22の先端で直径が約0.2mmの半球状となるように出てくる。
【0058】
そして、この液体ノズル22の先端に出てきた液体に電場(静電気力)が作用して円錐状のテーラコーン80が形成できるように、心棒23の先端は、この液体の近くに存在することが良く、このため液体ノズル22の開口部22bの先端面から前方(出る方向)に2mm以内に位置するようにするのが好適であり、一方、液体の付着に作用するように、心棒23の先端が液体ノズル22の開口部22bの先端面から後方(引っ込む方向)に2mm以内に位置するようにするのが好適である。
【0059】
上記のように、心棒23を設けることによって、液体ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくしても安定した液体の霧化が行える。
このため、液体ノズル22の開口部22bの開口直径を目詰まりが抑制できるような大きな開口直径にすることができる。
また、液体ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくできるため機械加工で液体ノズル22が製作できる。
【0060】
なお、本実施形態では、心棒23の先端が先端面23dとして平坦な平面としている場合を示しているが、必ずしも、心棒23の先端が平坦な平面である必要はなく、安定したテーラコーン80の形成に寄与すれば良いので、例えば、心棒23の先端はR形状のように、前方側に向かって突出する曲面になっていても良い。
【0061】
次に、複数の液体噴霧部20から液体が噴霧されるときの状態について説明を行う。
図6は、塗料などの液体が塗布される側から近接電極40側を見たときの正面図である。
なお、
図6では、近接電極40と液体噴霧部20の先端(液体ノズル22の先端)だけを模式的に示したものになっている。
説明の簡略化のために、3つの液体噴霧部20の先端を、単に、液体噴霧部22A、22B、22Cと記載して区別し、また、3つの近接電極40も近接電極40a、40b、40cとして区別して記載する場合がある。
【0062】
図6に示すように、液体噴霧部22A、22B、22Cは、一点鎖線で示す正三角形の頂点に位置するように配置、つまり、複数の液体噴霧部20は、正多角形に配置されている。
【0063】
また、各々の近接電極40a、40b、40cは、2つの液体噴霧部20の間に配置されている。
より具体的には、近接電極40aは液体噴霧部22Aと液体噴霧部22Cとの間のほぼ中間位置に配置され、近接電極40bは液体噴霧部22Aと液体噴霧部22Bとの間のほぼ中間位置に配置され、近接電極40cは液体噴霧部22Bと液体噴霧部22Cとの間のほぼ中間位置に配置されている。
本実施形態では、
図2に示すように、近接電極40の液体噴霧方向に沿った前後方向の位置は、液体噴霧部20の先端(液体ノズル22の先端)の少し前方に位置するようにしている。
【0064】
図6に戻って説明を続けると、このような液体噴霧部20と近接電極40の配置とすると、液体噴霧部22Aの先端からの液体の脱離・霧化に主に寄与する近接電極40は近接電極40aと近接電極40bであり、液体噴霧部22Bの先端からの液体の脱離・霧化に主に寄与する近接電極40は近接電極40bと近接電極40cであり、液体噴霧部22Cの先端からの液体の脱離・霧化に主に寄与する近接電極40は近接電極40cと近接電極40aになっている。
【0065】
また、各液体噴霧部22A、22B及び22Cに対する近接電極40a、40b及び40cの位置関係も同じ状態となるようになっており、このため、各液体噴霧部22A、22B及び22Cは、略同じ電場の状態に置かれるようになっているので、液体噴霧部22A、22B及び22Cのいずれかが他の液体噴霧部と異なる電場の状態に置かれ、塗料などの液体の噴霧が不安定になることがない。
【0066】
このため、従来技術のように、各液体噴霧部22A、22B及び22C毎に個別に印加する電圧を調整したり、前後方向の位置を複雑な設計に基づいて決めたりするような必要はなく、極めてシンプルな構成でありながら、液体噴霧部22A、22B及び22Cは、いずれも安定した塗料などの液体の噴霧を行うことができる。
【0067】
そして、液体噴霧部22A、22B及び22Cの外側に近接電極40が配置されていないことで、液体噴霧部22A、22B及び22Cから噴霧される液体は、直進方向に向かうのではなく、隣接する液体噴霧部側に向かい隣接する液体噴霧部から噴霧される液体同士が混ざるように噴霧される。
例えば、液体噴霧部22Aから噴霧される液体は、液体噴霧部22B、22Cの噴霧する液体と混ざるように噴霧される。
したがって、被塗物60上での液体の塗布状態が、3つの液体噴霧部がサポートする広い範囲で一体になった液体の塗布状態となる。
【0068】
なお、本実施形態では、3つの液体噴霧部20の場合を示しているが、液体噴霧部20の数は、3つに限定される必要はない。
4つの液体噴霧部20を用いる場合は、液体噴霧部20を正四角形に配置するようにし、隣接する液体噴霧部20の間に近接電極40が配置されるようにすればよい。
【0069】
このように、液体噴霧部20を正多角形(例えば、正五角形、正六角形、正七角形・・・)に配置し、隣接する液体噴霧部20の間に近接電極40が配置されるようにすれば、全ての液体噴霧部20を略同じ電場の状態に置くことができ、液体噴霧部20の数を飛躍的に多く設けるようにしても、全ての液体噴霧部20の安定した噴霧状態が保てるとともに、それら液体噴霧部20のそれぞれのサポートする噴霧範囲が繋がって一体となった広い範囲の液体の噴霧状態が実現できる。
【0070】
本実施形態では、個別の液体噴霧部20をホルダ30に取付けることで3つの液体噴霧部20を一体にまとめるようにした場合を示したが、このように構成されるものに限定されるものではない。
例えば、上述した胴体部21(
図3参照)を、3つの液体ノズル22で共通の1つの胴体部として構成し、1つの胴体部に3つの液体ノズル22が液体噴霧部として正三角形に配置されたものとしても良い。
【0071】
ところで、複数の液体噴霧部20を用いて塗料などの液体を被塗物などに塗布する場合、それぞれの液体噴霧部20の液体の噴霧量が適切な噴霧量になっていることが好ましいと言えるが、この点、本実施形態の液体噴霧部20は、それぞれが心棒23を備え、摘み部23aによって心棒23の前後方向の位置を変えることで液体の噴霧量を調節する機能を有しているので、適切な噴霧量に簡単に調節することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、心棒23を用いて液体の噴霧量の調節ができる場合を示しているが、液体の噴霧量の調節は、例えば、液体供給口21a(
図3参照)に供給する液体の供給量を調節できるようにするものであっても良い。
したがって、心棒23に限定されるものではないが、それぞれの液体噴霧部20から噴霧される液体の噴霧量を調節する液体噴霧量調節手段を備えるようにしておくことが好ましい。
【0073】
(第2実施形態)
図7は、本発明に係る第2実施形態の近接電極40の状態を示す正面図であり、
図6と同様に、近接電極40と液体噴霧部20の先端(液体ノズル22の先端)だけを模式的に示したものになっている。
【0074】
第2実施形態は、近接電極40の形状が異なるだけであって、基本的な構成は第1実施形態と同様である。
なお、近接電極40の形状に合わせて、
図8に示すようにホルダ30の近接電極取付部31に近接電極取付用スペーサ32を設け、近接電極40を取付けるようにしている。
【0075】
図7に示すように、第2実施形態の近接電極40では、第1実施形態の近接電極40a、40b及び40cに加え、複数の液体噴霧部22A、22B、22Cで囲われる領域の中央側にも近接電極43a、43b及び43cが設けられたものになっている。
より具体的には、各液体噴霧部22A、22B、22Cで囲われる領域の中央と各液体噴霧部22A、22B、22Cとを結ぶ直線上に交わるように配置された近接電極43a、43b及び43cが設けられたものになっている。
【0076】
なお、
図7に示す場合には、各液体噴霧部22A、22B、22Cで囲われる領域の中央と各液体噴霧部22A、22B、22Cとを結ぶ直線上にほぼ直交するように近接電極43a、43b及び43cが配置されているが、このように直交しなければならないわけではない。
【0077】
第1実施形態の場合、3つの液体噴霧部20の中央となる部分で噴霧される液体が混ざらずに、被塗物60上での液体の塗布状態として塗布範囲の中央に液体の塗りムラができる場合がある。
しかしながら、第2実施形態のように、中央側にも近接電極43a、43b及び43cを設けるようにすることで、3つの液体噴霧部20の中央となる側にも液体が噴霧されやすくなり、塗布範囲の中央に液体の塗りムラが発生することを抑制することができる。
【0078】
なお、上記では、近接電極40となる部分(近接電極40a、40b、40c、43a、43b及び43c)を棒状の電極として構成した場合を示してきたが近接電極40は棒状の構造体として形成することに限定されるものではない。
【0079】
例えば、
図9に示す変形例のように、一枚の板状のプレートを加工して、近接電極40a、40b、40c、43a、43b及び43cを形成したものとしても良い。
つまり、薄い板状のもので近接電極40は形成されていても良い。
【0080】
図9において、3つの孔44は、ホルダ30に固定するときにネジを通すためのネジ孔である。
したがって、この場合、ホルダ30には、この孔44に対応するように、上述した近接電極取付部31が3つ設けられることになるが、このように3つの近接電極取付部31を設けるようにすることに限定されるものではない。
【0081】
例えば、中央に大きな円形開口を設ける必要はなく、したがって、この中央の部分の円形開口を近接電極取付部31に取付けるためのネジを通すための大きさの孔にして3つの孔44を省略するようにしても良い。
【0082】
ところで、
図9に示す近接電極40のようにした場合、理由は定かではないが、斜線で示す部分45のところに噴霧される液体が付着する現象が見られた。
一方、第1実施形態や第2実施形態のように、近接電極40(近接電極40a、40b、及び、40c)の幅が広くない場合には、そのような液体の付着が発生しなかった。
このことから、液体噴霧部20同士の間に配置される近接電極40(近接電極40a、40b、及び、40c)は、幅が小さいことが好適である。
【0083】
より具体的には、近接電極40(近接電極40a、40b、及び、40c)に隣接する液体噴霧部20の先端同士を直線で結んだときの長さ(
図9に一点鎖線で示す正三角形の一辺の長さ)の半分の長さよりも小さい幅であるようにすることが好適である。
このようにすることで近接電極40に液体が付着することを抑制することができる。
【0084】
上述のように、このように近接電極40(近接電極40a、40b、及び、40c)の幅を小さくすることで液体の付着が抑制できる理由については、明確には明らかでないが、液体噴霧部20と近接電極40(近接電極40a、40b、及び、40c)との間に隙間ができることで、液体が噴霧される流れに沿って空気が引っ張られることで液体の噴霧方向に向かう緩やかな空気の流れが生じ、この空気の流れが近接電極40(近接電極40a、40b、及び、40c)に液体が付着することを抑制しているのではないかと推定している。
【0085】
言いかえれば、液体噴霧部20と近接電極40(近接電極40a、40b、及び、40c)との間に隙間が少ない
図9に示すような場合、この液体の噴霧方向に向かう緩やかな空気の流れの一部が近接電極40側に戻る対流になるなどしてスムーズに液体の噴霧方向に流れていないのではないかと推察している。
【0086】
以上、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を実施しても良い。
例えば、
図7に示した近接電極40において、棒状の各近接電極40a、40b及び40cの機械的強度を補強するために、
図10に示すように、棒状の各近接電極40a、40b及び40cの先端を繋いだ補強部47a、47b及び47cを設けるような形状としても良い。
【0087】
この場合、液体噴霧部22A、22B及び22Cから噴霧される液体を混合噴霧することが目的であるときには、この補強部47a、47b及び47cが近接電極40(近接電極40a、40b、40c、43a、43b及び43c)と同様に、液体噴霧部22A、22B及び22Cに作用しないようにするために、液体噴霧部22A、22B及び22Cと補強部47a、47b及び47cとの距離を取るようにする必要がある。
つまり、補強部47a、47b及び47cが近接電極40と同様の働きをするようにしてしまうと、液体噴霧部22A、22B及び22Cから噴霧される液体が、主に真直ぐ前方に噴霧されるようになり、上述したように、左右の他の液体噴霧部が噴霧する液体と混ざる方向に向かわないようになる。
このため、補強部47a、47b及び47cは、基本的に近接電極40としての役目をほとんど果さないように液体噴霧部22A、22B及び22Cから離して設けられる必要がある。
【0088】
具体的に、液体噴霧部22Aを代表して説明すると液体噴霧部22Aと補強部47aとの間の一番近い離間距離Xが、液体噴霧部22Aと近接電極43aとの間の一番近い離間距離Yよりも長い距離となるようにする。
なお、第1実施形態のように、近接電極43aが無いような場合は、液体噴霧部22Aと近接電極40a及び40bとの間の一番近い離間距離よりも液体噴霧部22Aと補強部47aとの間の一番近い離間距離Xが長い距離になるようにする。
【0089】
また、このような補強部は、棒状の近接電極の場合に限らず、
図9に示すプレート状の近接電極の場合にも適用して良い。
この場合も、この補強部が近接電極40(近接電極40a、40b、40c、43a、43b及び43c)と同様に、液体噴霧部22A、22B及び22Cに作用しないように、液体噴霧部22A、22B及び22Cから距離を取るようにする。
【0090】
なお、単に、液体噴霧部22A、22B及び22Cから正常に安定した液体の噴霧が行えれば良い場合には、
図10に示す補強部47a、47b及び47cを液体噴霧部22A、22B及び22Cに近づけて近接電極40と同様に作用させればよい。
この場合でも、多角形に配置された液体噴霧部22A、22B及び22Cの全てが略同じ電場の状態に置かれるので、全ての液体噴霧部22A、22B及び22Cが安定した液体の噴霧を行うことができる。
【0091】
さらに、本実施形態では、抵抗51として可変抵抗を用いているが、この可変抵抗の部分を2つの固定抵抗を直列接続し、その固定抵抗の間から近接電極40への電気配線を取るようにしても良い。
但し、このようにすると近接電極40の第1電位を調節するために、固定抵抗を取り替える必要が出てくるので可変抵抗で構成することが好適である。
【0092】
このように、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。