(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494100
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】流体加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20190325BHJP
H05B 6/36 20060101ALI20190325BHJP
F24H 1/10 20060101ALI20190325BHJP
F24H 1/14 20060101ALI20190325BHJP
F22G 1/16 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
H05B6/10 311
H05B6/36 Z
F24H1/10 J
F24H1/14 Z
F22G1/16
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-96227(P2015-96227)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-213074(P2016-213074A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 深
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−238449(JP,A)
【文献】
特開平06−208887(JP,A)
【文献】
特開平03−055790(JP,A)
【文献】
特開2012−163230(JP,A)
【文献】
実開昭53−166145(JP,U)
【文献】
特開2007−333287(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0025515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/10
F22G 1/16
F24H 1/10
F24H 1/14
H05B 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状鉄心と、
前記円筒状鉄心の径方向外側に設けられた円筒状をなす外側磁路形成部と、
前記円筒状鉄心及び前記外側磁路形成部の軸方向一端部を連結する第1径方向磁路形成部と、
前記円筒状鉄心及び前記外側磁路形成部の軸方向他端部を連結する第2径方向磁路形成部と、
前記円筒状鉄心及び前記外側磁路形成部の間に設けられ、電磁誘導により発熱して内部を流れる被加熱流体を加熱する加熱導体管と、
前記円筒状鉄心及び前記外側磁路形成部の間に設けられ、前記円筒状鉄心の内部に磁束を発生させる誘導コイルと、
前記第1径方向磁路形成部に設けられ、前記加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる第1流路を形成する第1流路形成部と、
前記第2径方向磁路形成部に設けられ、前記加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる第2流路を形成する第2流路形成部とを備え、
前記誘導コイルが、前記外側磁路形成部及び前記加熱導体管の間に設けられ、前記加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる中空導体管からなる外側中空コイル要素を有し、
前記被加熱流体が、前記第1流路、前記第2流路及び前記外側中空コイル要素を流れた後に、前記加熱導体管に流入するように構成されている流体加熱装置。
【請求項2】
前記誘導コイルが、前記外側中空コイル要素に電気的に接続された中実導線からなる中実コイル要素を有し、
前記中実コイル要素が、前記外側中空コイル要素の外周に巻回して設けられている請求項1記載の流体加熱装置。
【請求項3】
前記第1流路形成部に接続され、外部から被加熱流体を導入する導入ポートと、
前記第1流路形成部に一端が接続され、前記第2流路形成部に他端が接続された第1接続配管と、
前記第2流路形成部に一端が接続され、前記外側中空コイル要素に他端が接続された第2接続配管とを備え、
前記被加熱流体が、前記第1流路、前記第2流路及び前記外側中空コイル要素をこの順で流れた後に、前記加熱導体管に流入する請求項1又は2記載の流体加熱装置。
【請求項4】
前記第1接続配管が、前記円筒状鉄心の内部に配置されている請求項3記載の流体加熱装置。
【請求項5】
前記誘導コイルが、前記円筒状鉄心及び前記加熱導体管の間に設けられ、前記加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる中空導体管からなる内側中空コイル要素を有し、
前記被加熱流体が、前記第1流路、前記第2流路、前記外側中空コイル要素及び前記内側中空コイル要素を流れた後に、前記加熱導体管に流入するように構成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体加熱装置。
【請求項6】
前記外側中空コイルの下流側端部が前記内側中空コイル要素の上流側端部に接続されており、
前記内側中空コイル要素の下流側端部が前記加熱導体管の上流側端部に接続されており、
前記被加熱流体が、前記外側中空コイル要素及び前記内側中空コイル要素をこの順で流れた後に、前記加熱導体管に流入する請求項5記載の流体加熱装置。
【請求項7】
前記円筒状鉄心、前記外側磁路形成部、前記第1径方向磁路形成部及び前記第2径方向磁路形成部により形成される空間に断熱材が充填されている請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体加熱装置。
【請求項8】
前記被加熱流体が水であり、
前記加熱導体管の誘導発熱により過熱蒸気を生成するものである請求項1乃至7の何れか一項に記載の流体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導により発熱する加熱導体管を用いて、例えば水等の被加熱流体を加熱する流体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体加熱装置としては、例えば特許文献1に示すように、閉磁路鉄心に一次コイルを巻回するとともに、被加熱流体が流れる加熱導体管を巻回したものがある。この流体加熱装置は、前記1次コイルに交流電圧を印加して、前記加熱導体管を電磁誘導により発熱させることによって、被加熱流体を加熱させる構成である。
【0003】
しかしながら、電磁誘導により発熱した加熱導体管は、内部を流れる被加熱流体に熱を与えると同時に、外部に放熱して熱損失が生じてしまう。この放熱により周辺の構成要素が加熱されるため、別途の熱対策が必要となる。例えば、断熱材を設けることによって断熱を行うことはできるが、十分な断熱を行う(熱的安全性を確保する)ためには、断熱材の使用量が増えてしまう。
【0004】
また、前記1次コイルを導体管にして被加熱流体を流すことにより、加熱導体管からの放熱を活用して被加熱流体を予熱するとともに、外部との断熱を行うことも考えられるが、前記1次コイルは、加熱導体管の内側又は外側の放熱を利用するだけである。つまり、依然として熱的安全性を確保するためには、断熱材の使用量が増えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−163229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、放熱による損失を低減して被加熱流体を効率良く加熱するとともに、断熱材の使用量を削減しつつ熱的安全性を向上させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る流体加熱装置は、円筒状鉄心と、前記円筒状鉄心の径方向外側に設けられた円筒状をなす外側磁路形成部と、前記円筒状鉄心及び前記外側磁路形成部の軸方向一端部を連結する第1径方向磁路形成部と、前記円筒状鉄心及び前記外側磁路形成部の軸方向他端部を連結する第2径方向磁路形成部と、前記円筒状鉄心及び前記外側磁路形成部の間に設けられ、電磁誘導により発熱して内部を流れる被加熱流体を加熱する加熱導体管と、前記円筒状鉄心及び前記外側磁路形成部の間に設けられ、前記円筒状鉄心の内部に磁束を発生させる誘導コイルと、前記第1径方向磁路形成部に設けられ、前記加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる第1流路を形成する第1流路形成部と、前記第2径方向磁路形成部に設けられ、前記加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる第2流路を形成する第2流路形成部とを備え、前記誘導コイルが、前記外側磁路形成部及び前記加熱導体管の間に設けられ、前記加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる中空導体管からなる外側中空コイル要素を有し、前記被加熱流体が、前記第1流路、前記第2流路及び前記外側中空コイル要素を流れた後に、前記加熱導体管に流入するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、円筒状鉄心、外側磁路形成部、第1及び第2径方向磁路形成部により形成された空間内に、熱源である加熱導体管を配置する構成としているので、加熱導体管から外部に漏れ出る熱を、外側磁路形成部、第1及び第2径方向磁路形成部の内側に閉じ込めることができる。そして、この構成において、第1及び第2径方向磁路形成部に第1及び第2流路を形成するととともに、加熱導体管の径方向外側に外側中空コイル要素を配置して、被加熱流体が、前記第1流路、前記第2流路及び前記外側中空コイル要素を流れた後に、前記加熱導体管に流入するように構成されているので、加熱導体管から径方向外側及び軸方向両端部に漏れ出た熱を利用して被加熱流体を予熱することができる。つまり、加熱導体管からの放熱による損失を低減して被加熱流体を効率良く加熱することができる。
また、前記第1流路、前記第2流路及び前記外側中空コイル要素が、加熱導体管から径方向外側及び軸方向両端部に漏れ出た熱を遮断する機能を発揮するため、断熱材の使用量を削減しつつ流体加熱装置の熱的安全性を向上させることができる。
【0009】
前記誘導コイルが、前記外側中空コイル要素に電気的に接続された中実導線からなる中実コイル要素を有し、前記中実コイル要素が、前記外側中空コイル要素の外周に巻回して設けられていることが望ましい。
この構成であれば、誘導コイルの一部を中実導線から形成しているので、誘導コイルの巻き数を増やしつつ、誘導コイル全体を小型化することができる。また、中実コイル要素が外側中空コイル要素の外周に巻回して設けられているので、中実コイル要素が高温になることを防ぎつつ、装置のより内部で加熱導体管から漏れ出た熱を被加熱流体に吸収させることができ、熱的安全性を向上させることができる。
【0010】
前記第1流路形成部に接続され、外部から被加熱流体を導入する導入ポートと、前記第1流路形成部に一端が接続され、前記第2流路形成部に他端が接続された第1接続配管と、前記第2流路形成部に一端が接続され、前記外側中空コイル要素に他端が接続された第2接続配管とを備え、前記被加熱流体が、前記第1流路、前記第2流路及び前記外側中空コイル要素をこの順で流れた後に、前記加熱導体管に流入することが望ましい。
この構成であれば、導入ポートから加熱導体管までを1本の流体回路で構成することができる。これにより、装置構成を簡略化及び小型化することができる。
【0011】
前記第1接続配管が、前記円筒状鉄心の内部に配置されていることが望ましい。
この構成であれば、円筒状鉄心の構造を活かして、流体加熱装置を小型化することができる。
【0012】
前記誘導コイルが、前記円筒状鉄心及び前記加熱導体管の間に設けられ、前記加熱導体管に流入する被加熱流体が流れる中空導体管からなる内側中空コイル要素を有し、前記被加熱流体が、前記第1流路、前記第2流路、前記外側中空コイル要素及び前記内側中空コイル要素を流れた後に、前記加熱導体管に流入するように構成されていることが望ましい。
この構成であれば、加熱導体管から径方向両側及び軸方向両端部に漏れ出た熱を利用して被加熱流体を予熱することができる。つまり、加熱導体管からの放熱による損失を低減して被加熱流体を一層効率良く加熱することができる。また、前記第1流路、前記第2流路、前記外側中空コイル要素及び前記内側中空コイル要素が、加熱導体管から径方向両側及び軸方向両端部に漏れ出た熱を遮断する機能を発揮するため、断熱材の使用量を削減しつつ流体加熱装置の熱的安全性を一層向上させることができる。
【0013】
前記外側中空コイルの下流側端部が前記内側中空コイル要素の上流側端部に接続されており、前記内側中空コイル要素の下流側端部が前記加熱導体管の上流側端部に接続されており、前記被加熱流体が、前記外側中空コイル要素及び前記内側中空コイル要素をこの順で流れた後に、前記加熱導体管に流入することが望ましい。
この構成であれば、外側中空コイル要素を流れる被加熱流体が、内側中空コイル要素を流れる被加熱流体よりも低い温度となるため、流体加熱装置の熱的安全性をより一層向上させることができる。
【0014】
前記被加熱流体が水であり、前記加熱導体管の誘導発熱により過熱蒸気を生成するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、装置全体の小型化を可能にし、被加熱流体を効率良く加熱するとともに、流体加熱装置の熱的安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流体加熱装置の構成を模式的に示す断面図。
【
図2】同実施形態の流体加熱装置の径方向における配置を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る流体加熱装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
<1.装置構成>
本実施形態に係る流体加熱装置100は、被加熱流体である水を加熱して過熱水蒸気を生成するものであり、
図1及び
図2に示すように、円筒状鉄心21と、円筒状鉄心21の径方向外側に設けられた円筒状をなす外側磁路形成部22と、円筒状鉄心21及び外側磁路形成部22の軸方向一端部を連結する第1径方向磁路形成部23と、円筒状鉄心21及び前記外側磁路形成部22の軸方向他端部を連結する第2径方向磁路形成部24とを有する閉磁路鉄心要素2を備えている。この閉磁路鉄心要素2は、概略円筒形状をなすものであり、その側周壁内部に概略円筒状の空間を形成するものである。
【0019】
なお、前記円筒状鉄心21及び前記外側磁路形成部22はともに、いわゆるインボリュート鉄心であり、幅方向断面がインボリュート曲線状に湾曲した湾曲部を有する複数の珪素鋼板10を円周方向に放射状に積み重ねて円筒状に形成したものである。
【0020】
そして、この流体加熱装置100は、前記円筒状鉄心21及び前記外側磁路形成部22の間に設けられ、電磁誘導により発熱して内部を流れる被加熱流体を加熱する加熱導体管3と、円筒状鉄心21及び外側磁路形成部22の間に設けられ、円筒状鉄心21の内部に磁束を発生させる誘導コイル4と、前記第1径方向磁路形成部23に設けられ、加熱導体管4に流入する被加熱流体が流れる第1流路S1を形成する第1流路形成部5と、前記第2径方向磁路形成部24に設けられ、前記加熱導体管3に流入する被加熱流体が流れる第2流路S2を形成する第2流路形成部6とを備えている。
【0021】
なお、閉磁路鉄心要素2の内部空間において、加熱導体管3及び誘導コイル4以外の部分は断熱材10が充填されている。また、閉磁路鉄心要素2は、加熱導体管3、誘導コイル4及び断熱材10を収容した状態で、軸方向に貫通する締結ボルト等の締結機構13により軸方向から第1径方向磁路形成部23及び第2径方向磁路形成部24を締結して一体化される。
【0022】
前記加熱導体管3は、前記円筒状鉄心21の外周に沿って螺旋状(コイル状)に巻回された導体管であり、互いに隣接する導体管要素(導体管3において螺旋の一周分を構成する部分)は互いに短絡されている。なお、この加熱導体管3は、円筒状鉄心21と同軸上に配置されている。なお、
図1において、加熱導体管3は、単層巻きのものであったが、二層巻き以上のものであっても良い。
【0023】
前記誘導コイル4は、加熱導体管3に流入する被加熱流体が流れる中空導体管からなる外側中空コイル要素41及び内側中空コイル要素42と、中実導線からなる中実コイル要素43とを有している。なお、これらコイル要素41〜43は、前記円筒状鉄心21と同軸上に配置されている。
【0024】
前記外側中空コイル要素41は、前記外側磁路形成部22及び前記加熱導体管3の間、つまり、加熱導体管3の径方向外側に配置されている。また、外側中空コイル要素41は、閉磁路鉄心要素2内の配管構成の簡単化のため、加熱導体管3の軸方向両端部よりも内側に位置する範囲内で中空導体管を巻回して構成されている。なお、
図1において、外側中空コイル要素は、単層巻きのものであったが、二層巻き以上のものであっても良い。ここで、外側中空コイル要素41及び加熱導体管3の間には絶縁材11aが設けられている。具体的に絶縁材11aは、外側中空コイル要素41の内側周面に沿って設けられている。なお、
図2では、絶縁材11aなどの絶縁材は図示していない。
【0025】
前記内側中空コイル要素42は、前記加熱導体管3及び前記円筒状鉄心21の間、つまり、加熱導体管3の径方向内側に配置されている。また、内側中空コイル要素42は、円筒状鉄心21の軸方向両端部全体に亘って、つまり、加熱導体管3の軸方向両端部よりも外側に位置する範囲内で中空導体管を巻回して構成されている。なお、
図1において、内側中空コイル要素42は、単層巻きのものであったが、二層巻き以上のものであっても良い。ここで、内側中空コイル要素42及び加熱導体管3の間には絶縁材11bが設けられている(
図1参照)。具体的に絶縁材11bは、加熱導体管3の内側周面に沿って設けられている。また、内側中空コイル要素42及び円筒状鉄心21の間には絶縁材11cが設けられている。具体的に絶縁材11cは、内側中空コイル要素42の内側周面に沿って設けられている。
【0026】
前記中実コイル要素43は、前記外側中空コイル要素41の外周に巻回して設けられている。また、中実コイル要素43は、前記外側中空コイル要素41と同様に、加熱導体管3の軸方向両端部よりも内側に位置する範囲内で中空導体管を巻回して構成されている。ここで、中実コイル要素43及び前記外側磁路形成部22の間には絶縁材11dが設けられ、中実コイル要素43及び前記外側中空コイル要素41の間には絶縁材11eが設けられている(
図1参照)。具体的に絶縁材11dは、中実コイル要素43の外側周面に沿って設けられており、絶縁材11eは、中実コイル要素43の内側周面及び外側中空コイル要素41の外側周面に沿って設けられている。
【0027】
そして、外側中空コイル要素41の上流側端部(右側端部)と中実誘導コイル要素43の右側端部とが電気的に接続されている。中実誘導コイル要素43の左側端部には、交流電源の一方の電源端子が接続される外部端子T1が設けられている。
【0028】
また、外側中空コイル要素41の下流側端部(左側端部)と内側中空コイル要素42の上流側端部(左側端部)とが接続されており、外側中空コイル要素41を流れた被加熱流体が内側中空コイル要素42に流れるように構成されている。この内側中空コイル要素43の下流側端部には、交流電源の他方の電源端子が接続される外部端子T2が設けられている。
【0029】
さらに、内側中空コイル要素43の下流側端部(右側端部)と、加熱導体管3の上流側端部(右側端部)とが接続されており、内側中空コイル要素43を流れた被加熱流体が加熱導体管3に流れるように構成されている。
【0030】
なお、本実施形態では、内側中空コイル要素43の下流側端部は、第2径方向磁路形成部24の内面に沿って渦巻状に巻き回されている。その他、内側中空コイル要素43の上流側端部を、第1径方向磁路形成部23の内面に沿って渦巻状に巻き回しても良い。
【0031】
前記第1流路形成部5は、前記第1径方向磁路形成部23の外面に沿って円環状の第1流路S1を形成するものであり、外部から第1流路S1に被加熱流体を導入する導入ポート7が接続されている。本実施形態では、環状の凹溝を有する第1流路形成部5を第1径方向磁路形成部23の外面に溶接することにより、前記第1流路S1を形成している。
【0032】
前記第2流路形成部6は、前記第2径方向磁路形成部24の外面に沿って円環状の第2流路S2を形成するものである。本実施形態では、環状の凹溝を有する第2流路形成部6を第2径方向磁路形成部24の外面に溶接することにより、前記第2流路S2を形成している。
【0033】
そして、第1流路形成部5と前記第2流路形成部6とは、第1接続配管8により接続されている。具体的に第1接続配管8は、一端(上流端)が第1流路形成部5に接続され、他端(下流端)が第2流路形成部6に接続されている。この第1接続配管8は、円筒状をなす閉磁路鉄心要素2の内部、つまり円筒状鉄心21の内部を通って設けられている。
【0034】
また、第2流路形成部6と前記外側中空コイル要素41とは、第2接続配管9により接続されている。具体的に第2接続配管9は、一端(上流端)が第2流路形成部6に接続され、他端(下流端)が外側中空コイル要素41の上流端に接続されている。本実施形態では、第2接続配管9は、外側磁路形成部22の側壁(第2径方向磁路形成部24側の端部)を貫通して、閉磁路鉄心要素2の内部に導入されて外側中空コイル要素41に接続されている。なお、第2接続配管9は、第2径方向磁路形成部24を貫通して、閉磁路鉄心要素2の内部に導入されて外側中空コイル要素41に接続されても良い。
【0035】
このように構成した本実施形態の流体加熱装置100において、中実コイル要素43の外部端子T1及び内側中空コイル要素43の外部端子T2に交流電源により交流電圧を印加することで、中実コイル要素43、外側中空コイル要素41及び内側中空コイル要素42に電流が流れて閉磁路鉄心要素2に磁束が流れる。当該磁束によって加熱導体管3に短絡電流が流れて、加熱導体管3がジュール発熱する。これにより、加熱導体管3を流れる被加熱流体が加熱される。
【0036】
次に、流体加熱装置100の被加熱流体の流れとともに被加熱流体の加熱態様について説明する。
【0037】
第1流路形成部5に接続された導入ポート7から、被加熱流体である水が導入される。そして、被加熱流体は、導入ポート7から第1流路S1内に流入して、第1径方向磁路形成部23を冷却するとともに、第1径方向磁路形成部23により予熱される。その後、被加熱流体は、第1接続配管8を流れて、第2流路S2内に流入して、第2径方向磁路形成部24を冷却するとともに、第2径方向磁路形成部24により予熱される。なお、第1径方向磁路形成部23及び第2径方向磁路形成部24は、加熱導体管3からの伝熱により加熱されている。
【0038】
このように第1流路S1及び第2流路S2を流れた被加熱流体は、第2接続配管9を流れて、外側中空コイル要素41に流入する。このとき、被加熱流体は、外側中空コイル要素41を冷却するとともに、外側中空コイル要素41により予熱される。なお、外側中空コイル要素41は、通電により生じる熱とともに、加熱導体管3からの伝熱により加熱されている。
【0039】
また、この外側中空コイル要素41を流れた被加熱流体は、内側中空コイル要素42に流入する。このとき、被加熱流体は、内側中空コイル要素42を冷却するとともに、内側中空コイル要素42により予熱される。なお、内側中空コイル要素42は、通電により生じる熱とともに、加熱導体管3からの伝熱により加熱されている。
【0040】
そして、第1径方向磁路形成部23、第2径方向磁路形成部24、外側中空コイル要素41及び内側中空コイル要素42により予熱された被加熱流体が、加熱導体管3に流入する。そして、加熱導体管3を流れる被加熱流体は、誘導加熱された加熱導体管3により加熱されて過熱水蒸気となり、加熱導体管3の下流端に接続された導出ポート12から外部又は外部配管に導出される。なお、加熱導体管3は、外側磁路形成部22の側壁(第1径方向磁路形成部23側の端部)を貫通して、閉磁路鉄心要素2の外部に導出されている。なお、加熱導体管3は、第1径方向磁路形成部23を貫通して、閉磁路鉄心要素2の外部に導出されても良い。
【0041】
<2.本実施形態の効果>
このように構成した流体加熱装置100によれば、円筒状鉄心21、外側磁路形成部22、第1及び第2径方向磁路形成部23、24により形成された空間内に、熱源である加熱導体管3を配置する構成とし、加熱導体管3の周囲を被加熱流体により冷却する構成としているので、加熱導体管3から外部に漏れ出る熱を、閉磁路鉄心要素2の内部に閉じ込めることができる。
【0042】
具体的には、加熱導体管3を取り囲むように、第1及び第2流路S1、S2、外側中空コイル要素41及び内側中空コイル要素42を配置して、被加熱流体が、第1流路S1、第2流路S2、外側中空コイル要素41及び内側中空コイル要素42を流れた後に、加熱導体管3に流入するように構成されているので、加熱導体管3から径方向両側及び軸方向両側に漏れ出た熱を利用して被加熱流体を予熱することができる。つまり、加熱導体管3からの放熱による損失を低減して被加熱流体を効率良く加熱することができる。
【0043】
また、第1流路S1、第2流路S2、外側中空コイル要素41及び内側中空コイル要素42が、加熱導体管3から径方向両側及び軸方向両側に漏れ出た熱を遮断する機能を発揮するため、断熱材の使用量を削減しつつ流体加熱装置の熱的安全性を向上させることができる。
【0044】
さらに、被加熱流体が外側中空コイル要素41を流れた後に内側中空コイル要素42に流れるので、外側中空コイル要素41を流れる被加熱流体が、内側中空コイル要素42を流れる被加熱流体よりも低い温度となるため、流体加熱装置100の熱的安全性をより一層向上させることができる。
【0045】
<3.本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0046】
例えば、前記実施形態では誘導コイル4が内側中空コイル要素42を有するものであったが、内側中空コイル要素42を有さないものであっても良い。この場合、外側中空コイル要素41が加熱導体管3に接続されて、外側中空コイル要素41を流れた被加熱流体が加熱導体管3に流入する。
【0047】
また、内側中空コイル要素42を流れた被加熱流体が外側中空コイル要素41を流れるように構成しても良い。この場合、第2接続配管9が第2流路形成部6と内側中空コイル要素42を接続しており、第2流路S2を流れた被加熱流体が内側中空コイル要素42に流入する。
【0048】
さらに、中実コイル要素43を外側中空コイル要素41の径方向内側又は内側中空コイル要素42の径方向内側に配置しても良い。
【0049】
その上、第1流路形成部5及び第2流路形成部6は、前記実施形態のように、第1径方向磁路形成部23及び第2磁路形成部24の外面との間で流路を形成するものの他、被加熱流体が流れる配管により構成しても良い。この場合、第1流路形成部5及び第2流路形成部6となる配管を、第1径方向磁路形成部23及び第2磁路形成部24の外面に接触して設けることが考えられる。
【0050】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
100・・・流体加熱装置
2 ・・・閉磁路鉄心要素
21 ・・・円筒状鉄心
22 ・・・外側磁路形成部
23 ・・・第1径方向磁路形成部
24 ・・・第2径方向磁路形成部
3 ・・・加熱導体管
4 ・・・誘導コイル
41 ・・・外側中空コイル要素
42 ・・・内側中空コイル要素
43 ・・・中実コイル要素
S1 ・・・第1流路
5 ・・・第1流路形成部
S2 ・・・第2流路
6 ・・・第2流路形成部
7 ・・・導入ポート
8 ・・・第1接続配管
9 ・・・第2接続配管
10 ・・・断熱材