(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カラー部材は、前記インフレータ本体の軸芯と直交する断面にて、前記軸芯を中心とする点対称の位置にて前記インフレータ本体の周面と当接する当接部を有することを特徴とする請求項1記載のインフレータ。
前記ガス噴流受部は、前記インフレータ本体の軸芯と直交する断面において、前記軸芯を挟んだ両側に切欠き部を有することを特徴とする請求項1または2記載のインフレータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、ディフレクタがインフレータ本体の周面に当接するように配置されており、インフレータ本体の周面に形成されたガス噴射孔の一部をディフレクタによって塞いでしまっている。このような場合には、インフレータ本体の内部で生成されたガスがインフレータ本体の外部に円滑に噴射され難くなる。この結果、袋体の膨張展開速度が僅かに遅れる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、インフレータ及びエアバッグ装置において、インフレータ本体に対してディフレクタ等のカラー部材を固定した場合であっても、円滑にインフレータ本体からガスを噴射可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、インフレータ(例えば、実施形態におけるインフレータ3)であって、筒状でありかつ周面に複数のガス噴射孔(例えば、実施形態におけるガス噴射孔11)を有するインフレータ本体(例えば、実施形態におけるインフレータ本体10)と、上記インフレータ本体の上記ガス噴射孔の形成領域(ガス噴射孔形成領域R)に対して空隙を介して対向配置されるガス噴流受部(例えば、実施形態におけるガス噴流受部28)を有するカラー部材(例えば、実施形態におけるスチール製カラー部材)とを備えるという構成を採用する。
【0008】
本発明によれば、インフレータ本体のガス噴射孔の形成領域に対して空隙を介してカラー部材が対向配置されている。このため、カラー部材によってガス噴射孔が直接的に閉塞されることを防止することができ、カラー部材がガス噴射孔からのガスの噴射を妨げることを防止することができる。したがって、本発明によれば、インフレータ本体に対してディフレクタ等のカラー部材を固定した場合であっても、円滑にインフレータ本体からガスを噴射することができる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記カラー部材が、上記インフレータ本体の軸芯(例えば、実施形態における軸芯L)と直交する断面にて、上記軸芯を中心とする点対称の位置にて上記インフレータ本体の周面と当接する当接部(例えば、実施形態における縁部23及び直線リブ24)を有するという構成を採用する。
【0010】
当接部によって局所的にガス噴射孔が塞がれると、軸芯方向から見たときのガスの噴射量がインフレータ本体の周方向において均等とならず、インフレータ本体に推力が発生することが考えられる。このようにインフレータ本体に推力が発生すると、インフレータ本体の位置がずれることも考えられる。これに対して、本発明によれば、当接部がインフレータ本体の軸芯を中心として点対称の位置に設けられている。このため、当接部によって局所的にガス噴射孔が塞がれた場合であっても、インフレータ本体の軸芯を挟んで両側において同様にガス噴射量が減少することになる。このため、インフレータ本体の軸芯を挟んだ箇所において受けるガス噴射の反力が常に一定となり、インフレータ本体に対して推力が発生することを防止することができる。したがって、本発明によれば、ガス噴射時においても、インフレータ本体を安定的に保持することが可能となる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記ガス噴流受部が、上記インフレータ本体の軸芯と直交する断面において、上記軸芯を挟んだ両側に切欠き部(例えば、実施形態における切欠き開口21、底穴開口22及び端部切欠き26)を有するという構成を採用する。
【0012】
本発明によれば、カラー部材が切欠き部を有することによって、切欠き部が設けられた領域ではより円滑なガスの噴出が可能となる。さらに、この切欠き部が、インフレータ本体の軸芯と直交する断面において、軸芯を挟んだ両側に設けられている。このため、切欠き部が設けられた箇所において、インフレータ本体がガス噴射により受ける反力が軸芯を挟んで釣り合い、インフレータ本体に推力が発生することを防止することができる。したがって、本発明によれば、ガスの噴射をより円滑にすることができ、かつ、ガス噴射時においても、インフレータ本体を安定的に保持することが可能となる。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記カラー部材が、2つの上記切欠き部のうち少なくとも一方の切欠き部に対して、上記インフレータ本体の軸芯方向に変位した箇所に形成されると共に、上記インフレータ本体の周方向に延在する湾曲リブ(例えば、実施形態における湾曲リブ25)を有するという構成を採用する。
【0014】
例えば、筒状のインフレータ本体に対して、カラー部材を拡径して取り付ける場合には、切欠き部の周囲の部位の強度が低いために、当該部位が塑性変形してしまう可能性が考えられる。このような場合には、インフレータの歩留まりの低下を招く。これに対して、本発明によれば、切欠き部の周囲にインフレータ本体の周方向に延在する湾曲リブを有することによって、切欠き部の周囲の強度を高め、カラー部材が取付時に塑性変形してしまうことを防止することができる。さらには、カラー部材を拡径したときのカラー部材の復元力を湾曲リブによって調節することが可能となる。
【0015】
第5の発明は、上記第3または第4の発明において、上記カラー部材が、2つの上記切欠き部のうち少なくとも一方の切欠き部に対して、上記インフレータ本体の周方向に変位した箇所に形成されると共に、上記インフレータ本体の軸芯方向に延在する直線リブ(例えば、実施形態における直線リブ24)を有するという構成を採用する。
【0016】
本発明によれば、切欠き部の周囲にインフレータ本体の軸芯方向に延在する直線リブを有することによって、切欠き部の周囲の強度を高め、カラー部材が取付時に塑性変形してしまうことを防止することができる。さらには、カラー部材を拡径したときのカラー部材の復元力を直線リブによって調節することが可能となる。
【0017】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記インフレータ本体に固定されると共に上記インフレータ本体の端部を上記インフレータ本体の径方向外側から覆うカバー部材(例えば、実施形態における樹脂製カラー部材)を備え、上記カラー部材が、上記カバー部材に当接することにより上記インフレータ本体に対する変位を規制する位置規制部(例えば、実施形態における突出部27)を有するという構成を採用する。
【0018】
本発明によれば、位置規制部によって、カラー部材がインフレータ本体に対して変位することを防止することができる。このため、本発明によれば、ガスの噴射時にカラー部材がインフレータ本体に対して変位することを防止することができる。さらに、位置規制部を目印とすることにより、組立時におけるインフレータ本体に対するカラー部材の位置決めを容易に行うことが可能となる。
【0019】
第7の発明は、袋体(例えば、実施形態における袋体2)と、当該袋体を膨張させるガスを噴射するインフレータとを備えるエアバッグ装置(例えば、実施形態におけるエアバッグ装置1)であって、上記インフレータとして、上記第1〜第6いずれかの発明であるインフレータを備えるという構成を採用する。
【0020】
本発明によれば、第1〜第6の発明であるインフレータを備えている。このため、円滑にインフレータ本体からガスを噴射することができ、袋体を設計通りに膨張展開させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のインフレータ及びエアバッグ装置によれば、インフレータ本体に対してディフレクタ等のカラー部材を固定した場合であっても、円滑にインフレータ本体からガスを噴射することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係るインフレータ及びエアバッグ装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0024】
図1は、本実施形態のエアバッグ装置1を搭載する車両の部分断面図である。本実施形態のエアバッグ装置1は、助手席の前方に配置された助手席用SRS(Supplemental Restraint System)エアバッグ装置である。
図1に示すように、本実施形態のエアバッグ装置1は、例えば、ダッシュボード100の内部であって、空調ユニット200の上方に配置されている。
【0025】
図2は、本実施形態のエアバッグ装置1を含む
図1の部分拡大図である。また、
図3は、ダッシュボード100側から見たエアバッグ装置1の部分拡大図であり、後述する袋体2を省略した図である。これらの図に示すように、エアバッグ装置1は、袋体2と、インフレータ3と、リングリテーナ4と、リテーナ5とを備えている。なお、以下の説明においては、必要に応じて、袋体2が膨張展開される方向(すなわちリテーナ3から助手席に向かう方向)を膨張展開方向と称する。
【0026】
袋体2は、車両衝突時に助手席に向けて膨張展開されることにより、乗員を支えて乗員が受ける衝撃を緩和する部品である。この袋体2は、
図2に示すように、インフレータ3を内部に収容しており、インフレータ3から見て膨張展開方向の部位が折り畳まれることによってダッシュボード100の内部に収容されている。このような袋体2は、インフレータ3から噴出されるガスによって膨張され、ダッシュボード100を破って助手席側に展開される。例えば、この袋体2は、袋状とされたナイロン製のメインパネルと、必要箇所に応じてメインパネルに積層配置されるヒートクロスとを有する。ヒートクロスは、耐熱性が高いシート材であり、例えばインフレータ3の近傍に設置されて、インフレータ3から噴射される高温のガスが直接メインパネルに当たることを防止する。
【0027】
インフレータ3は、例えばECU(Engine Control Unit)からの指示によって内部に収容する火薬を爆発させてガスを生成し、このガスを噴射して袋体2に供給することにより袋体2を膨張させる部品である。このインフレータ3は、全体として略円筒形状とされており、例えば軸芯方向を車幅方向に向けるようにして袋体2の内部に収容されている。このインフレータ3については、後に詳細に説明する。
【0028】
リングリテーナ4は、袋体2とインフレータ3と間に配置された部品である。このリングリテーナ4は、
図2に示すように、インフレータ3から見て袋体2の膨張展開方向と反対側に配置されている。このようなリングリテーナ4は、インフレータ3から袋体2の膨張展開方向と反対側に噴射されたガスを受けることにより、当該ガスが直接的に袋体2に当たることを防止する。
【0029】
リテーナ5は、袋体2の膨張展開方向に開口された金属製の容器であり、袋体2をインフレータ3及びリングリテーナ4ごと収容している。このリテーナ5は、上述のように袋体2の膨張展開方向に開口されていることから、ガスが供給されて膨張する袋体2の展開方向を助手席側に案内する。このようなリテーナ5は、例えばダッシュボードに係止されることによって車体に対して固定されている。このようにリテーナ5が車体に固定されることによってエアバッグ装置1の全体が車体に対して固定される。
【0030】
続いて、インフレータ3については、
図4〜
図7を参照して、より詳細に説明する。
図4は、インフレータ3の全体図であり、(a)が膨張展開方向側(すなわち助手席側)から見た平面図であり、(b)が膨張展開方向と直交する方向から見た側面図であり、(c)が膨張展開方向と反対側から見た底面図である。また、
図5は、インフレータ3の断面図であり、(a)が
図4(a)に示すA−A断面図であり、(b)が
図4(a)に示すB−B断面図である。
【0031】
図4に示すように、インフレータ3は、インフレータ本体10と、スチール製カラー部材20と、樹脂製カラー部材30(カバー部材)とを備えている。インフレータ本体10は、内部に火薬を収容する収容室や、この収容室に収容された火薬に点火する点火器等を備え、全体として円筒形状とされた部品である。このインフレータ本体10は、内部で生成されたガスを外部に噴射するガス噴射孔11を多数有している。このガス噴射孔11は、インフレータ本体10の周面に対して周方向及び軸芯方向に所定ピッチで形成されている。このため、インフレータ本体10の内部で生成されたガスは、インフレータ本体10の周方向及び軸芯方向の複数箇所から分散して噴射される。なお、本実施形態においては、インフレータ本体10の端部(樹脂カラー30が設置される領域)を除いた中央部の領域にガス噴射孔11が形成されている。以下、ガス噴射孔11が形成されたインフレータ本体10の中央部の領域をガス噴射孔形成領域Rと称する。
【0032】
スチール製カラー部材20は、インフレータ本体10のガス噴射孔形成領域Rに取り付けられる部品であり、インフレータ本体10の端部に固定される樹脂製カラー部材30同士の間に配置されている。
図6は、スチール製カラー部材20の斜視図である。また、
図7は、スチール製カラー部材20の膨張展開方向側(すなわち助手席側)から見た平面図である。
【0033】
スチール製カラー部材20は、スチール材料からなる部品であり、インフレータ本体10を囲うような略円筒形状を有している。このスチール製カラー部材20は、袋体2の膨張展開方向に形成された切欠き開口21(切欠き部)を有している。この切欠き開口21は、スチール製カラー部材20の軸芯方向の長さの全域に亘って形成されている。この切欠き開口21が形成されることによって、スチール製カラー部材20の断面形状は、略C型形状とされている(
図5参照)。また、スチール製カラー部材20は、切欠き開口21の反対側(すなわち袋体2の膨張展開方向と反対側)に、底穴開口22(切欠き部)を有している。これらの切欠き開口21と底穴開口22とは、インフレータ本体10の軸芯L(
図5参照)を挟んで形成されている。これらの切欠き開口21と底穴開口22は、いずれも本発明における切欠き部に相当する。つまり、本実施形態においては、インフレータ本体10の軸芯Lを挟んで両側に切欠き部が形成されている。
【0034】
また、
図6に示すように、切欠き開口21に臨むスチール製カラー部材20の縁部23(当接部)は、局所的に湾曲され、インフレータ本体10の径方向内側に向けて突出されている。これらの縁部23は、インフレータ本体10の周面に対して当接する当接部とされている。また、2つの切欠き部の一方である底穴開口22に対してインフレータ本体10の周方向に変位した箇所には、底穴開口22の縁に沿って(すなわち、インフレータ本体10の軸芯方向に沿って)直線状に延在される直線リブ24が形成されている。これらの直線リブ24は、スチール製カラー部材20を補強すると共に、インフレータ本体10の周面に対して当接する当接部とされている。つまり、直線リブ24は、縁部23と同様の高さでインフレータ本体10の径方向内側に向けて突出されており、縁部23と同様にインフレータ本体10の周面に対して当接している。
【0035】
図5に示すように、当接部として機能する2つの縁部23と、2つの直線リブ24とは、インフレータ本体10の周方向に等ピッチで配列されている。つまり、本実施形態において、スチール製カラー部材20は、インフレータ本体10の軸芯Lと直交する断面において、軸芯Lを中心とする点対称の位置にインフレータ本体10に対する当接部を有している。また、2つの縁部23の先端と、2つの直線リブ24の先端とに接する内接円は、インフレータ本体10よりも僅かに小径とされている。これによって、スチール製カラー部材20をインフレータ本体10に取り付けた場合に、スチール製カラー部材20の復元力によって2つの縁部23の先端と、2つの直線リブ24がインフレータ本体10の周面に押さえつけられ、スチール製カラー部材20の位置が安定する。
【0036】
また、
図6及び
図7に示すように、スチール製カラー部材20は、インフレータ本体10の周方向に延在する湾曲リブ25を有している。湾曲リブ25は、底穴開口22に対してインフレータ本体10の軸芯方向に変位した位置を含めて、同軸芯方向に配列されて4つ形成されている。これらの湾曲リブ25は、スチール製カラー部材20を補強する。この湾曲リブ25は、直線リブ24と同じ突出量としてインフレータ本体10に対して当接させても良いが、例えば、直線リブ24と比較して突出量が抑え、インフレータ本体10に対して当接しないようにしても良い。湾曲リブ25を直線リブ24と同じ突出量としてインフレータ本体10に対して当接させる場合には、縁部23と、直線リブ24と、湾曲リブ25との3箇所でインフレータ本体10と当接するようにすることで、スチール製カラー部材20の復元力によって縁部23と、直線リブ24と、湾曲リブ25がインフレータ本体10に押さえつけられる。このため、いわゆる三接スプリング効果によって、スチール製カラー部材20のインフレータ本体10に対する位置を安定させ、車両振動等による変位や雑音発生を防止することができる。
【0037】
このようなスチール製カラー部材20では、底穴開口22が、直線リブ24及び湾曲リブ25によって囲まれている。このため、底穴開口22が形成されることによる強度の低下を直線リブ24及び湾曲リブ25により補うことができる。さらに、直線リブ24及び湾曲リブ25の太さや数を調整することにより、スチール製カラー部材20を拡径したときの復元力を調整することができる。スチール製カラー部材20は、インフレータ本体10への取付時には、切欠き開口21が拡がるように拡径される。したがって、直線リブ24及び湾曲リブ25の太さや数は、取付後のスチール製カラー部材20が適切な保持力でインフレータ本体10に固定される復元力となるように、設定されている。
【0038】
また、スチール製カラー部材20は、
図4(c)に示すように、一方側の端部に、端部切欠き26(切欠き部)を有している。この端部切欠き26は、底穴開口22と同様に、インフレータ本体10の軸芯Lを挟んで切欠き開口21と反対側に形成されている。端部切欠き26は、切欠き開口21及び底穴開口22と同様に、本発明における切欠き部に相当する。つまり、本実施形態においては、スチール製カラー部材20の端部においても、インフレータ本体10の軸芯Lを挟んで両側に切欠き部が形成されている。
【0039】
また、スチール製カラー部材20は、端部切欠き26が形成された端部と反対側の端部に、インフレータ本体10の軸芯方向に突出する突出部27(位置規制部)を有している。この突出部27は、樹脂製カラー部材30の一方が備える後述の凹部30aの内側に入り込むように配置される。これによって、スチール製カラー部材20がインフレータ本体10に対して周方向に移動しようしたとき、及び、スチール製カラー部材20がインフレータ本体10に対して凹部30aが形成された樹脂製カラー部材30側に移動しようしたときに、突出部27と樹脂製カラー部材30とが緩衝し、スチール製カラー部材20の移動が規制される。
【0040】
このようなスチール製カラー部材20は、当接部として機能する2つの縁部23と、2つの直線リブ24と、突出部27を除いた部位であって、インフレータ本体10のガス噴射孔11に対向する領域は、ガス噴射孔11から噴射されるガスを受けるガス噴流受部28として機能する。このようなガス噴流受部28は、
図5に示すように、当接部として機能する2つの縁部23と2つの直線リブ24とがインフレータ本体10に当接することにより、インフレータ本体10の周面に対して一定の間隔を空けて対向配置されている。つまり、本実施形態において、スチール製カラー部材20は、インフレータ本体10のガス噴射孔11が形成されたガス噴射孔形成領域Rに対して空隙を介して対向配置されるガス噴流受部28を有している。
【0041】
図4に示すように、樹脂製カラー部材30は、インフレータ本体10の端部の各々に対して固定されている部品であり、樹脂によって形成されている。各々の樹脂製カラー部材30は、インフレータ本体10を径方向外側から覆うように配置されている。これらの2つの樹脂製カラー部材30のうち、スチール製カラー部材20の突出部27が形成された端部側に配置される樹脂製カラー部材30には、
図4(c)に示すように、突出部27が配置される凹部30aを有している。
【0042】
このような構成の本実施形態のエアバッグ装置1では、不図示のECUからインフレータ本体10に衝突を示す信号が入力されると、インフレータ本体10の内部に収容された火薬に点火器によって点火されてガスが生成される。このようにしてインフレータ本体10の内部で生成されたガスは、ガス噴射孔11から噴射し、袋体2に供給される。これによって袋体2が膨張展開される。
【0043】
ここで、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3によれば、筒状でありかつ周面に複数のガス噴射孔11を有するインフレータ本体10と、インフレータ本体10のガス噴射孔形成領域Rに対して空隙を介して対向配置されるガス噴流受部28を有するスチール製カラー部材20とを備えている。つまり、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3においては、インフレータ本体10のガス噴射孔形成領域Rに対して空隙を介してスチール製カラー部材20が対向配置されている。このため、スチール製カラー部材20によってガス噴射孔11が直接的に閉塞されることを防止することができ、スチール製カラー部材20がガス噴射孔11からのガスの噴射を妨げることを防止することができる。したがって、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3によれば、インフレータ本体10に対してスチール製カラー部材20を固定した場合であっても、円滑にインフレータ本体10からガスを噴射することができる。
【0044】
また、インフレータ本体10から噴射されるガスは、火薬が燃焼することによって生成されたガスであることから高温となっている。これに対して、スチール製カラー部材20の実使用域での最高温度は、ガスの温度と比較して遥かに低い。このため、インフレータ本体10から噴射されたガスがスチール製カラー部材20に一度当てられることによって、袋体2に当たるガスの温度を低下させることができる。したがって、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3によれば、袋体2に対する熱影響を低減することができ、袋体2の熱対策を緩和することが可能となる。特に、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3においては、スチール製カラー部材20が、ガス噴射孔形成領域Rの側方(袋体2の膨張展開方向と直交する方向側)の全域に被さる形状を有している。このため、インフレータ本体10の側方から噴射されたガスの温度を低下させて袋体2に供給することができ、高温状態のガスが袋体2に当たることを防止することができる。
【0045】
また、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3においては、スチール製カラー部材20が、インフレータ本体10の軸芯Lと直交する断面にて、軸芯Lを中心とする点対称の位置にてインフレータ本体10の周面と当接する当接部(縁部23及び直線リブ24)を有している。このため、インフレータ本体10の軸芯Lを挟んで両側において同流量のガスが噴射され、インフレータ本体10の軸芯Lを挟んだ箇所において受けるガス噴射の反力が常に一定となる。したがって、インフレータ本体10に対して推力が発生することを防止することができ、ガス噴射時においても、インフレータ3を安定的に保持することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3においては、スチール製カラー部材20(すなわちガス噴流受部28)が、インフレータ本体10の軸芯Lと直交する断面において、軸芯Lを挟んだ両側に切欠き部(切欠き開口21、底穴開口22及び端部切欠き26)を有している。このため、ガスの噴出が円滑となると共に、切欠き部が設けられた箇所において、インフレータ本体10がガス噴射により受ける反力が軸芯Lを挟んで釣り合い、インフレータ本体10に推力が発生することを防止することができる。したがって、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3によれば、ガスの噴射をより円滑にすることができ、かつ、ガス噴射時においても、インフレータ3を安定的に保持することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3においては、底穴開口22に対してインフレータ本体10の軸芯方向に変位した箇所に形成されると共に、インフレータ本体10の周方向に延在する湾曲リブ25を有している。このため、底穴開口22の周囲の強度を高め、スチール製カラー部材20がインフレータ本体10への取付時に塑性変形してしまうことを防止することができる。
【0048】
さらには、スチール製カラー部材20を拡径したときのスチール製カラー部材20の復元力を湾曲リブ25によって調節することが可能となり、例えば一定の力でスチール製カラー部材20を開いた場合の開き角(切欠き開口21の開き幅)を調整することができる。つまり、湾曲リブ25を設けることにより、湾曲リブ25が形成される箇所の断面形状を調整して断面係数を変更することにより、スチール製カラー部材20を開いた場合の開き角を調整することができる。このため、ガス噴射時にスチール製カラー部材20の開き角を調整することができ、ガスが適切に噴射されるようにスチール製カラー部材20の開き角を調整することも可能となる。
【0049】
また、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3においては、底穴開口22に対してインフレータ本体10の周方向に変位した箇所に形成されると共に、インフレータ本体10の軸芯方向に延在する直線リブ24を有している。このため、底穴開口22の周囲の強度を高め、スチール製カラー部材20がインフレータ本体10への取付時に塑性変形してしまうことを防止することができると共にスチール製カラー部材20の開き角を調整することができる。
【0050】
また、本実施形態のエアバッグ装置1及びインフレータ3においては、インフレータ本体10に固定されると共にインフレータ本体10の端部をインフレータ本体10の径方向外側から覆う樹脂製カラー部材30を備え、スチール製カラー部材20が、樹脂製カラー部材30に当接することによりインフレータ本体10に対する変位を規制する突出部27を備えている。このため、ガスの噴射時にスチール製カラー部材20がインフレータ本体10に対して変位することを防止することができる。さらに、突出部27を目印とすることにより、組立時におけるインフレータ本体10に対するスチール製カラー部材20の位置決めを容易に行うことが可能となる。
【0051】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、本発明のエアバッグ装置及びインフレータを、助手席用SRSエアバッグ装置に適用した例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他のエアバッグ装置に適用することも可能である。
【0053】
また、上記実施形態においては、本発明のカラー部材がスチール製カラー部材20である例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、スチール材以外の材料からなるカラー部材を用いることも可能である。