(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものにおいては、転写の際に転写テープに張力を発生させている誘導ピンも一緒に押し込まれてしまう。このとき、巻き取りが行われる訳でないので、転写テープにたるみが発生する懸念がある。その他、塗膜が転写テープから剥離する際の剥離力によって意図しない転写テープの繰り出しが起こる虞もある。
また、複数のばね部材を設ける必要があることの他に、2箇所に逆転防止機構を設ける必要があるため、部品点数が多くなり、転写具自体が大型になる上、設計の自由度が少ないなどの懸念もある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、転写時の転写テープのたるみを防止でき、かつ、構成部材を少なくして小型化及び設計の自由度の向上が図れるスタンプ型塗膜転写具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、一端に開口部を有する有底筒状のケースを構成する二分割されたケース半体と、上記ケース内に回転可能に配設され、表面に塗膜が塗布された転写テープを巻装する繰出しリールと、上記ケース内に回転可能に配設され、使い終わった転写テープを巻き取る巻取リールと、上記ケース半体の一方の開口部に配設され、上記転写テープの裏面側を押圧する押圧面を有する転写押圧部と、上記ケースの開口部を介して内外側に移動可能なスライド部材と、を具備するスタンプ型塗膜転写具であって、 上記スライド部材は、上記ケースの開口部の外方に露出し、上記開口部と連通する転写開口を有する枠部と、上記ケース内に移動自在に挿入されるスライド部と、上記ケースの底部に弾接して常時上記枠部をケースの外方へ移動するばね部と、上記スライド部が上記ケースの底部側に移動する際にのみ上記巻取リールと同軸上に設けられた巻取ギアと噛合するラックギアと、を一体に形成し、
上記巻取ギアは、上記巻取リールの回動軸の軸方向の端部周面に設けられ、上記ラックギアは、上記スライド部の先端に直状に延設される弾性変形可能な板状突片の側面に設けられ、上記繰出しリールに巻装された上記転写テープは、上記転写押圧部の押圧面と、繰出しリールに巻装された転写テープの表面に接触した状態で上記巻取リールに巻き取られる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このように構成することにより、繰出しリールに巻装された転写テープは、転写押圧部の押圧面と、繰出しリールに巻装された転写テープの表面の塗膜を抱くように接触した状態で巻取リールに巻き取られることで、繰出しリールに巻装された転写テープの表面の塗膜と使い終わった転写テープとの接触による摩擦によって回転する繰出しリールから繰り出される転写テープの繰出し量を制御することができる。また、転写テープは巻取リールによって巻き取られない限り繰出しリールから繰り出されないので、転写テープのたるみを防止することができる。また、転写開口を有する枠部と、スライド部と、常時枠部をケースの外方へ移動するばね部と、巻取リールと同軸上に設けられた巻取ギアと噛合するラックギアと、を一体に形成することができる。
また、巻取ギアとラックギアの噛合を確実にすることができると共に、巻取ギアとラックギアの占めるスペースを小さくすることができる。
【0010】
この発明において、上記繰出しリールは、上記ケース半体に突設された支持軸に、回転自在に装着される筒状のテープコアにて形成されているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
このように構成することにより、繰出しリールの形状を簡単にすることができると共に、繰出しリールへの転写テープの巻装を容易にすることができる。
【0014】
また、この発明において、上記枠部は、十字状に形成されると共に、互いに隣接する4つの角部の内方側の領域が、上記押圧転写部の押圧面より若干広く形成され、上記枠部の一辺に直状に連なる上記スライド部における上記枠部側に位置確認用の窓孔が設けられているのが好ましい(請求項
3)。
【0015】
このように構成することにより、十字状に形成された枠部と、枠部の一辺に直状に連なるスライド部における枠部側に
設けられた位置確認用の窓孔とによって塗膜の転写位置を確認することができる。
【0016】
また、この発明において、上記転写押圧部における押圧面に隣接する側面に、使い終わった上記転写テープの幅方向のずれを矯正する一対のガイド片が突設されているのが好ましい(請求項
4)。
【0017】
このように構成することにより、繰出しリールに巻装された転写テープに多少の巻きずれがあっても一対のガイド片によって矯正することができ、使い終わった転写テープが幅方向にずれることなく巻取リールに巻き取ることができる。
【0018】
また、この発明において、上記巻取リールは、上記ケース半体に突設されている支持軸に回転可能に配設され、更に巻取リールの巻取り方向と逆方向の回転を阻止する逆回転防止機構を具備
し、上記逆回転防止機構は、上記ケース半体における上記支持軸の中心と同心円上に設けられる面状歯部と、上記巻取リールの回動軸の先端部においてそれぞれ回動軸の周方向に円弧状に突設される弾性変形可能な複数のラチェット爪とを具備し、上記面状歯部と上記ラチェット爪は、上記巻取リールが巻取り方向と逆方向に回転するときに係合可能に形成されているのが好ましい(請求項
5)。
【0019】
このように構成することにより、ばね部の弾性力によってスライド部材がケースの外方に移動する際に巻取リールが逆回転して巻き取った転写テープがたるむのを防止することができる。この場合、逆回転防止機構は、ケース半体における支持軸の中心と同心円上に設けられる面状歯部と、巻取リールの回動軸の先端部においてそれぞれ回動軸の周方向に円弧状に突設される弾性変形可能な複数のラチェット爪とを具備し、面状歯部とラチェット爪は、巻取リールが巻取り方向と逆方向に回転するときに係合可能に形成することにより、逆転防止機構の組付けを容易にすることができ
る。
【0020】
また、この発明において、上記ケース半体の一方における両側片の上端面に段部を設けると共に、上記開口部側端部及び上記底部側端部に係止爪を突設し、上記ケース半体の他方における両側片の上端面には、上記段部と嵌合可能な起立片が設けられると共に、上記開口部側の上記押圧転写部及び上記底部には、上記係止爪が係合可能な係止スリットが設けられているのが好ましい(請求項
6)。
【0021】
このように構成することにより、ケース半体同士の組付けを容易にすることができると共に、組付けを強固にすることができる。
【0022】
加えて、この発明において、上記ケースの開口部を塞ぐキャップを更に具備し、上記キャップは、上記ケースの開口部に被嵌される有底筒状に形成され、上記キャップの内側面に、上記枠部の収納空間を確保すべく上記ケースの端面に当接する複数のリブと、上記リブ間に設けられ、開口端から底部に向かって上り勾配を有する複数の補助リブが設けられているのが好ましい(請求項
7)。この場合、上記ケース及びキャップはそれぞれ断面略矩形状に形成され、上記キャップの角部に上記リブが設けられ、上記キャップの各辺の中央に上記補助リブが設けられているのが好ましい(請求項
8)。
【0023】
このように構成することにより、不使用時に、ケースの開口部の外方に露出する転写押圧部の押圧面に掛け渡された転写テープの塗膜と、スライド部材の枠部をキャップによって被覆することができる。この場合、キャップの内側面に、枠部の収納空間を確保すべくケースの端面に当接する複数のリブと、リブ間に設けられ、開口端から底部に向かって上り勾配を有する複数の補助リブを設けることにより、ケースにキャップを被嵌する際にキャップが多少斜めの状態であっても、キャップの被嵌を容易にすることができると共に、ケースから突出する枠部をキャップによって安全に保護することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明のスタンプ型塗膜転写具によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0025】
(1)請求項1に記載の発明によれば、繰出しリールに巻装された転写テープの表面の塗膜と使い終わった転写テープとの接触による摩擦によって回転する繰出しリールから繰り出される転写テープの繰出し量を制御すると共に、転写テープのたるみを防止することができる。また、枠部と、スライド部と、常時枠部をケースの外方へ移動するばね部と、巻取リールと同軸上に設けられた巻取ギアと噛合するラックギアと、を一体に形成することができるので、構成部材の削減が図れ、かつ、小型化が図れると共に、設計の自由度の向上が図れる。
また、巻取ギアとラックギアの噛合を確実にすることができると共に、巻取ギアとラックギアの占めるスペースを小さくすることができるので、更に小型化が図れると共に、組付けを容易にすることができる。
【0026】
(2)請求項2に記載の発明によれば、繰出しリールの形状を簡単にすることができると共に、繰出しリールへの転写テープの巻装を容易にすることができるので、上記(1)に加えて、更に構造を簡単にすることができ、かつ、小型化が図れると共に、設計の自由度の向上が図れる。
【0028】
(3)請求項3に記載の発明によれば、十字状に形成された枠部と、枠部の一辺に直状に連なるスライド部における枠部側に設けられた位置確認用の窓孔とによって塗膜の転写位置を確認することができるので、上記(1)〜
(2)に加えて、更に塗膜の転写を容易にすることができると共に、転写位置を正確にすることができる。
【0029】
(4)請求項4に記載の発明によれば、繰出しリールに巻装された転写テープに多少の巻きずれがあっても一対のガイド片によって矯正することができ、使い終わった転写テープが幅方向にずれることなく巻取リールに巻き取ることができるので、上記(1)〜
(3)に加えて、更に塗膜の転写を容易にすることができる。
【0030】
(5)請求項5に記載の発明によれば、上記(1)〜
(4)に加えて、更に、ばね部の弾性力によってスライド部材がケースの外側に移動する際に巻取リールが逆回転して巻き取った転写テープがたるむのを防止することができる。この場合、逆回転防止機構は、ケース半体における支持軸の中心と同心円上に設けられる面状歯部と、巻取リールの回動軸の先端部においてそれぞれ回動軸の周方向に円弧状に突設される弾性変形可能な複数のラチェット爪とを具備し、面状歯部とラチェット爪は、巻取リールが巻取り方向と逆方向に回転するときに係合可能に形成することにより、逆転防止機構の組付けを容易にすることができ
る。
【0031】
(6)請求項6に記載の発明によれば、上記(1)〜
(5)に加えて、更にケース半体同士の組付けを容易にすることができると共に、組付けを強固にすることができる。
【0032】
(7)請求項7,8に記載の発明によれば、不使用時に、ケースの開口部の外方に露出する転写押圧部の押圧面に掛け渡された転写テープの塗膜と、スライド部材の枠部をキャップによって被覆することができる。この場合、ケースにキャップを被嵌する際にキャップが多少斜めの状態であっても、キャップの被嵌を容易にすることができると共に、ケースから突出する枠部をキャップによって安全に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】この発明に係る塗膜転写具の使用状態を示す前方側斜視図(a)、後方側斜視図(b)及び塗膜転写状態の一例を示す概略平面図(c)である。
【
図2】この発明におけるキャップを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】上記塗膜転写具の要部を示す断面図(a)、この発明におけるラックギアと巻取ギアの噛合状態を示す概略図(b)、(a)のI部拡大図(c)及び(a)のII部拡大図(d)である。
【
図4】上記塗膜転写具の使用状態の要部を示す断面図(a)及び(a)のIII部拡大図(b)である。
【
図5】この発明における上ケース半体を取り外した状態を示す正面図である。
【
図9】この発明における上ケース半体の正面図である。
【
図10】この発明における下ケース半体を示す斜視図である。
【
図11】この発明における上ケース半体を示す斜視図である。
【
図12】この発明におけるスライド部材を示す斜視図である。
【
図13】この発明における巻取リールを構成するスプールを示す斜視図である。
【
図14】この発明における繰出しリールのテープコアを示す斜視図である。
【
図15】この発明における巻取リールのラチェット爪を示す平面図(a)、面状歯部を示す平面図(b)及び上記ラチェット爪と面状歯部の係合関係を示す模式図(c)である。
【
図16】この発明に係る塗膜転写具の収容状態の一例を示す概略平面図である。
【
図17】この発明におけるキャップの表面に異なるデザインを施した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、この発明の実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係るスタンプ型塗膜転写具(以下に、塗膜転写具という)を粘着転写具に適用した場合について説明する。
【0035】
この発明に係る塗膜転写具は、
図2ないし
図5に示すように、一端に開口部10aを有する有底筒状のケース10を構成するケース半体11,12(以下に上ケース半体11、下ケース半体12という)と、ケース10内に回転可能に配設され、基材2の表面に塗膜である粘着剤3が塗布された転写テープ1を巻装する繰出しリール20と、ケース10内に回転可能に配設され、使い終わった転写テープ1を巻き取る巻取リール30と、上、下ケース半体11,12の一方すなわち下ケース半体12の開口部10aに配設され、転写テープ1の裏面側を押圧する押圧面13aを有する転写押圧部13と、ケース10の開口部10aを介して内外側に移動可能なスライド部材40と、ケース10の開口部10aに着脱可能に装着されるキャップ50と、を具備する。
【0036】
この場合、繰出しリール20に巻装された転写テープ1は、転写押圧部13の押圧面13aと、繰出しリール20に巻装された転写テープ1の表面の粘着剤3を抱くように接触した状態で巻取リール30に巻き取られるようになっている。
【0037】
ケース10は、一端に矩形状の開口部10aを有する断面が略矩形状の有底角筒状に形成され、ケース10を構成する上、下ケース半体11,12は、例えばポリスチレン(PS),ABS樹脂等の合成樹脂製部材にて形成されており、ケース10の開口部10aから底部10bに渡って水平に二分割された断面略角形U字状に形成されている。
【0038】
この場合、下ケース半体12の開口部10aには、転写テープ1の裏面側を押圧する転写押圧部13が突設されている。この転写押圧部13は、矩形状の開口部10aの中央に位置する矩形状の押圧面13aを有しており、押圧面13aが開口部10aより若干外方側に突出している。なお、押圧面13aの表面には、弾力性を有するスタンプパッド13bが貼着される。
【0039】
なお、転写押圧部13における押圧面13aに隣接する一方の側面13cには、使い終わった転写テープ1の基材2を誘導する一対のガイド片13d,13eが互いに平行に水平状に突設されている(
図10参照)。このガイド片13d,13eによって使い終わった転写テープ1の基材2の幅方向のずれを矯正することができる。
【0040】
また、
図10に示すように、下ケース半体12の開口部10a側の転写押圧部13より後方側には繰出しリール20を回転可能に支持する第1の繰出しリール支持軸14aが突設され、下ケース半体12の底部10b側には巻取リール30を回転可能に支持する第1の巻取リール支持軸15aが突設されている。
【0041】
一方、上ケース半体11の開口部10a側には繰出しリール20を回転可能に支持する第2の繰出しリール支持軸14bが突設され、上ケース半体11の底部10b側には巻取リール30を回転可能に支持する第2の巻取リール支持軸15bが突設されている(
図11参照)。また、上ケース半体11の第2の巻取リール支持軸15bの基端側には、後述する逆回転防止機構を構成する第2の巻取リール支持軸15bの中心と同心円上に面状歯部18が設けられている。
【0042】
なお、下ケース半体12の両側片12aの上端面の内方側には両端を残して起立片12bが設けられ、転写押圧部13の押圧面13aの上部側には、水平方向に横長の第1の係止スリット16aが設けられている。また、下ケース半体12の底部10bの上部側には、水平方向に横長の第2の係止スリット16bが設けられている。
【0043】
一方、上ケース半体11の両側片11aの上端面(下ケース半体12に対して下端面)の内側には、下ケース半体12の起立片12bと嵌合可能な段部11bが設けられている。また、上ケース半体11の開口部10a側には、先端が外方に向かって突出する略L字状の第1の係止爪17aが設けられ、また、上ケース半体11の底部10bには、先端が外方に向かって突出する略L字状の第2の係止爪17bが設けられている。
【0044】
上記のように形成される上ケース半体11と下ケース半体12を組み付ける場合は、下ケース半体12の起立片12bと上ケース半体11の段部11bを嵌合すると共に、下ケース半体12の第1の係止スリット16aと第2の係止スリット16bに、それぞれ上ケース半体11の第1の係止爪17aと第2の係止爪17bを係合させる。
したがって、上ケース半体11と下ケース半体12の組付けを容易にすることができると共に、組付けを強固にすることができる。
【0045】
繰出しリール20は、下ケース半体12及び上ケース半体11に突設された第1及び第2の繰出しリール支持軸14a,14bに回転自在に装着される円筒状のテープコアにて形成されている。この場合、繰出しリール20を形成するテープコアは、例えばポリアセタール(POM)等の合成樹脂製部材にて形成され、
図14に示すように、転写テープ1を巻装する大径部21の両端に小径部22を有する段付き円筒状に形成され、第1及び第2の繰出しリール支持軸14a,14bに回転自在に装着される。
【0046】
このように、繰出しリール20をフランジのない円筒状のテープコアによって形成することにより、形状を簡単にすることができると共に、転写テープ1の巻装を容易にすることができる。
【0047】
巻取リール30は、回動軸31が一体に形成されたスプールによって形成され、回動軸31を介して下ケース半体12及び上ケース半体11に突設された第1及び第2の巻取リール支持軸15a,15bに回転可能に装着されている。この場合、巻取リールすなわちスプール30は、例えばポリアセタール(POM)等の合成樹脂製部材にて形成され、
図13に示すように、転写テープ1の基材2を巻き取る部分に設けられた一対の鍔部32a,32bの外側に延在した回動軸31の一方の軸方向の端部周面に巻取ギア33が設けられ、他方の回動軸31の軸方向の先端部には、後述する逆回転防止機構を構成する複数(例えば2個)のラチェット爪34が設けられている。
【0048】
上記スライド部材40は、例えばポリアセタール(POM)等の合成樹脂製部材にて形成されており、
図12に示すように、ケース10の開口部の外方に露出し、開口部10aと連通する転写開口41eを有する枠部41と、ケース10内に移動自在に挿入されるスライド部42と、ケース10の底部10bに弾接して常時枠部41をケース10の外方へ移動するばね部43と、スライド部42がケース10の底部10b側に移動する際にのみ巻取リール30と同軸上に設けられた巻取ギア33と噛合するラックギア44と、を一体に形成してなる。
【0049】
この場合、枠部41は、4辺の中央部にコ字状に突出する突出枠片41a,41b,41c,41dを有する略十字状に形成されると共に、互いに隣接する4つの角部41fの内方側の領域41g(
図1(c)において一点鎖線で示す)が、押圧転写部13の押圧面13aより若干広く形成されている。また、枠部41の一辺に直状に連なるスライド部42における枠部41側に位置確認用の矩形状の窓孔42aが設けられている。
【0050】
スライド部42は、枠部41の両側の突出枠片41b,41cと下部の突出枠片41dに延在する両側片42b、42cと底片42dを有しており、底片42dには、スライド部42がケース10内を移動する際に、繰出しリール20との干渉を回避する切欠き孔42eと、巻取リール30との干渉を回避する凹状切欠き42fが設けられている。また、底片42dにおける一方の側片42b側の先端には、弾性変形可能な板状突片42gが直状に延設されており、板状突片42gの先端部側面にラックギア44が設けられている。
【0051】
上記のように形成される板状突片42fの先端部側面に設けられるラックギア44は、巻取リール(スプール)30の軸方向端部の外周側表面に設けられた巻取ギア33と噛合可能に形成されている。つまり、スライド部42がケース10の底部10b側に移動する際にのみ、ラックギア44と巻取リール(スプール)30に設けられた巻取ギア33と噛合するようになっている。
【0052】
また、ばね部43は、スライド部42の側片42cの先端から湾曲状に屈曲する弾性変形可能なばね基部43aと、ばね基部43aの先端に設けられる円形状の膨隆頭部43bとで形成されている。このように形成されるばね部43は、ばね基部43aの弾性力によって膨隆頭部43bがケース10の底部10bに弾接してスライド部材40の枠部41を常時ケース10の外方へ移動する。
【0053】
次に、巻取リール30の逆回転防止機構について説明する。本実施形態では、巻取リール(スプール)30と、上ケース半体11に突設され
た第2の巻取リール支持軸15bとの間に、巻取リール(スプール)30の巻取り方向と逆方向の回転を阻止する逆回転防止機構を設けた場合である。
【0054】
この場合、逆回転防止機構は、
図11、
図13及び
図15に示すように、上ケース半体11における第2の巻取リール支持軸15bの中心と同心円上に設けられる面状歯部18と、巻取リール(スプール)30の先端部においてそれぞれ回動軸31の周方向に円弧状に突設される弾性変形可能な複数(2個)の先端に向かって上り傾斜面34aを有するラチェット爪34とを具備し、面状歯部18とラチェット爪34は、巻取リール(スプール)30が巻取り方向(+R)と逆方向(−R)に回転するときに係合可能に形成されている(
図15(c)参照)。なお、
図15(c)の模式図に示すように、ラチェット爪34は先端に向かって上り傾斜面34aを有する断面略三角状に形成されているので、巻取リール(スプール)30が巻取り方向(+R)に回転する場合は、面状歯部18に干渉せず、巻取リール(スプール)30が逆方向(−R)に回転するときに面状歯部18に係合して巻取リール(スプール)30の逆回転を阻止する。
【0055】
このように構成される逆回転防止機構によれば、ばね部43の弾性力によってスライド部材40がケース10の外側に移動する際に巻取リール(スプール)30が逆回転して巻き取った転写テープ1がたるむのを防止することができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、巻取リール(スプール)30と、上ケース半体11に突設された第2の巻取リール支持軸15bとの間に、逆回転防止機構を設けた場合について説明したが、巻取リール(スプール)30と、下ケース半体12に突設された第1の巻取リール支持軸15aとの間に、逆回転防止機構を設けても同様の効果が得られる。
【0057】
上記キャップ50は、例えばポリスチレン(PS),ABS樹脂等の合成樹脂製部材にて形成されており、ケース10の開口部10aに被嵌される断面が略矩形状の有底筒状に形成されている。この場合、キャップ50の内側面の角部に、枠部41の収納空間を確保すべくケース10の端面に当接する複数(4個)のリブ51が設けられ、リブ51間の各辺の中央には、キャップ50の開口端から底部に向かって上り勾配を有する複数(4個)の補助リブ52が設けられている。
【0058】
上記のように形成されるキャップ50によれば、ケース10にキャップ50を被嵌する際にキャップ50が多少斜めの状態であっても、キャップ50の被嵌を容易にすることができると共に、ケース10から突出する枠部41をキャップ50によって安全に保護することができる。
【0059】
上記のように構成される実施形態の塗膜転写具において、繰出しリール20に幅6.0mm、長さ3.5mの転写テープ1を巻装し、転写面(スタンプ面)の面積を6.0mm×6.0mmとした場合、少なくとも500回の転写(スタンプ)が可能となる。
【0060】
また、上記寸法の転写テープ1を使用することにより、塗膜転写具の外形寸法を23.0mm×23.0mm×64.8mmとすることができ、全体を小型にすることができる。したがって、例えば、
図16に示すように、鉛筆等の筆記具60、消しゴム61を収容するペンケース62内に塗膜転写具を収容することができる。また、これに代えて、机の引き出し内に設けられた事務用品収容トレー内にも収容することができる。
【0061】
次に、上記のように構成される塗膜転写具を使用する場合は、まず、繰出しリール20から引き出された転写テープ1が転写押圧部13の押圧面13aと繰出しリール20に巻装された転写テープ1の表面の粘着剤3に接触した状態で巻取リール(スプール)30に巻き取られる状態にセットする。
【0062】
この状態で、使用者はケース10を手で持ち、被転写面4にスライド部材40の枠部41をばね部43の弾性力に抗して押し当てると、スライド部材40がケース10の内側へ移動する一方、転写テープ1の裏面を押圧する転写押圧部13が相対的にケース10の外側に突出して粘着剤3(塗膜)が被転写面4に転写される。
【0063】
なお、スライド部材40がケース10の内側へ移動する際、巻取リール(スプール)30と同軸上の巻取ギア33と噛合するラックギア44がケース10の底部側に移動して巻取ギア33と共に巻取リール(スプール)30を巻取方向(
図4において時計回り)に回転すると、繰出しリール20は転写テープ1の繰出し方向(
図4において反時計回り)に回転して転写テープ1を繰り出し、前回の転写(スタンプ)で使い終わった転写テープ1(基材2)が巻き取られ、粘着剤3(塗膜)を有する転写テープ1が転写押圧部13の押圧面13aに移動する。
【0064】
粘着剤3(塗膜)を転写した後、転写具を持ち上げると、ばね部43の弾性力によってスライド部材40がケース10の外側に移動して、次の転写(スタンプ)に備える。
【0065】
上記のように構成される実施形態の塗膜転写具によれば、繰出しリール20から引き出された転写テープ1が転写テープ1の表面の粘着剤3に接触した状態で巻取リール(スプール)30に巻き取られることで、繰出しリール20に巻装された転写テープ1の表面の粘着剤3(塗膜)と使い終わった転写テープすなわち基材2との接触による摩擦によって回転する繰出しリール20から繰り出される転写テープ1の繰出し量を制御することができる。また、転写テープ1は巻取リール(スプール)30によって巻き取られない限り繰出しリール20から繰り出されないので、転写テープ1のたるみを防止することができる。
【0066】
また、スライド部材40は、枠部41、スライド部42、ばね部43及びラックギア44が一体に形成されているので、構成部材の低減が図れ、また、小型化が図れると共に、設計の自由度の向上が図れる。
【0067】
また、巻取ギア33は、巻取リール(スプール)30の回動軸31の軸方向の端部周面に設けられ、ラックギア44は、スライド部42の先端に直状に延設される弾性変形可能な板状突片42gの側面に設けられているので、巻取ギア33とラックギア44の噛合を確実にすることができると共に、巻取ギア33とラックギア44の占めるスペースを小さくすることができる。
【0068】
また、十字状に形成された枠部41と、枠部41の一辺に直状に連なるスライド部42における枠部側に
設けられた位置確認用の窓孔42aとによって塗膜の転写位置を確認することができるので、塗膜の転写(スタンプ)を容易にすることができると共に、転写位置を正確にすることができる。
【0069】
また、繰出しリール20に巻装された転写テープ1に多少の巻きずれがあっても一対のガイド片13d,13eによって矯正することができ、使い終わった転写テープ(基材2)が幅方向にずれることなく巻取リール(スプール)30に巻き取ることができるので、更に塗膜の転写(スタンプ)を容易にすることができる。
【0070】
また、ばね部43の弾性力によってスライド部材40がケース10の外側に移動する際に巻取リール(スプール)30が逆回転して巻き取った転写テープ1がたるむのを防止することができる。この場合、逆回転防止機構は、上ケース半体11における
第2の巻取リール支持軸15bの中心と同心円上に設けられる面状歯部18と、巻取リール(スプール)30の回動軸31の先端部においてそれぞれ回動軸の周方向に円弧状に突設される弾性変形可能な複数のラチェット爪34とを具備し、面状歯部18とラチェット爪34は、巻取リール(スプール)30が巻取り方向と逆方向に回転するときに係合可能に形成することにより、逆転防止機構の組付けを容易にすることができる。
【0071】
更に、ケース10にキャップ50を被嵌する際にキャップ50が多少斜めの状態であっても、キャップ50の被嵌を容易にすることができると共に、ケース10から突出する枠部41をキャップ50によって安全に保護することができる。
【0072】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、この発明に係る塗膜転写具を粘着転写具に適用した場合について説明したが、粘着剤に代えて修正塗料剤の塗膜を担持した転写テープを用いた塗膜転写具にも適用できる。
【0073】
上記実施形態では、ケース10(上ケース半体11、下ケース半体12)、キャップ50にデザインが施されていない場合について説明したが、
図17(a)〜(c)に示すようにキャップ50の側面に異なる目のデザインを施してもよい。