(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材及びフィルタ層を有する光学中性密度フィルタにおいて、前記フィルタ層は、マトリックスと非酸化物系フィルタ粒子とを有し、前記マトリックスは結合剤を有し、前記フィルタ粒子はフィルタ特性及び200nm以下の平均粒子サイズを有し、前記フィルタの透過率は405〜700nmの波長領域で最大で±10%の最大値で変化し、
前記非酸化物系フィルタ粒子は無機であり、かつ金属成分又は半金属成分及びアニオン性成分から構成された化合物からなり、
前記フィルタ粒子のアニオン性成分は、炭化物、窒化物、炭窒化物、酸窒化物、オキシカーバイド、フッ化物、カルコゲニド、例えば硫化物、セレン化物及びテルル化物、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記金属成分又は半金属成分は、Hf、Al、B、Si、Ge、Mo、Cd、Cr、Zr、Ti、W、Zn及びこれらの混合物からなる群から選択され、かつ、
前記基材は、ガラス、ガラスセラミック、セラミック及びこれらの混合物から選択され、
前記結合剤は、少なくとも1つのポリマー、少なくとも1つのゾルゲル材料、少なくとも1つのガラスフラックス、少なくとも1つのガラスフリット及びこれらの混合物から選択され、
前記ポリマーが、ポリシロキサン、シリコーン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン樹脂、シラザン及びこれらの物質の混合物からなる群より選択される、光学中性密度フィルタ。
前記フィルタ粒子が、Ti(III)N、TiON、ZrN、Zr(IV)C、Ti(IV)C、W(IV)C及び前記フィルタ粒子を2以上有する混合物からなる群より選ばれるか、又は、ZnS、CdSe、CdTe及び前記フィルタ粒子を2以上有する混合物からなる群より選ばれるか、あるいは、CdSe+CdTe+CdSの混合物である、請求項1又は2に記載のフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
前記基材は一般に透明であり、特に前記基材は、ガラス、ガラスセラミック、プラスチック、セラミック又はこれらの混合物からなる群から選択される。ガラス、ガラスセラミック及びセラミックが好ましい。特に好ましいのは、特殊光学ガラス、透明ガラスセラミック及び透明セラミック(オプトセラミック)である。このような基材と耐熱性フィルタ層との組合せは、このフィルタが適切な熱安定性及び耐熱性を有するという利点を有する。
【0020】
このフィルタ層は、好ましくは前記マトリックス及び前記フィルタ粒子からなる。
【0021】
前記マトリックスは、好ましくは、適切な波長領域で光学的に不活性である、つまり透明であるか又は少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%の透過率を有し、かつ200℃を越えて熱安定である材料からなる。前記光学フィルタ作用は、好ましくは、単に又は本質的に、上記適切な波長領域で吸収を有する非酸化物系フィルタ粒子により生じる。
【0022】
本発明の目的のために、「適切な波長領域」とは、特に405〜700nm、好ましくは400〜800nm、1実施態様によると400〜2500nmの波長領域である。特別な実施態様の場合に、この適切な波長領域は、基材とマトリックスがUV範囲で十分な透過性を有する限り、300nm、330nm、350nm、380nm又は400nmで始まってもよい。更に、この適切な波長領域の上限は、これが計画された用途にとって十分である限り、1500nm、1000nm又は800nmであってもよい。
【0023】
非酸化物系フィルタ粒子は、好ましくは、そのナノサイズの特性により、この適切な波長領域において一定のフィルタ作用を有し、その光学フィルタに関して散乱損失を生じないか又はほとんど生じない。
【0024】
光学フィルタ作用の度合い、つまり残りの透過性は、前記フィルタ層中の非酸化物系フィルタ粒子の質量含有率(質量%により表す)によって及び適用された層の厚さによって調節することができる。
【0025】
バルク着色されたフィルタガラスと比較して、これは、耐熱性の及び分解安定性のフィルタ層を適用することができ、アッベダイヤグラムでの、つまり、ガラスの屈折率及び/又はアッベ数に関する光学的位置の選択において明らかに大きな設計の自由度を付与する。
【0026】
本発明のフィルタは、好ましくは少なくとも200℃まで、更に好ましくは少なくとも300℃まで、特に好ましくは少なくとも380℃までで1時間の試験期間にわたり安定である。特に、熱安定性マトリックスの使用のために透過性において有意な変化はなく、例えば有機的な分解反応の結果として、マトリックス材料の黄変による付加的な吸収もない。このために、有意な変化とは、±5%より大きい変化、特に±3%より大きい変化である。
【0027】
更に、このフィルタ粒子の無機的な性質のために、例えば有機吸収フィルタ媒体を用いた場合に生じるような、吸収媒体の熱的に誘導される有機分解による吸収の変化はない。
【0028】
更に、非酸化物系フィルタ粒子に基づく本発明によるフィルタ層を使用する場合、純粋に有機のフィルタ層とは反対に、2500nmの波長まで、すなわち赤外線(IR)領域までの一体のフィルタ作用を達成するガラス上のフィルタを提供することができる。
【0029】
本発明のフィルタのフィルタ層は、好ましくは、少なくとも100nmで、100μmを越えない層厚を有する。
【0030】
このフィルタ層は好ましくは、主に、一定の吸収を有し、全体の適切な波長領域において光の散乱を僅かに示すか又は示さない。このように、本発明によるフィルタ層を使用する場合、この適切な波長領域での透過率は、好ましくは±10%よりも大きく、更に好ましくは±7%よりも大きく、さらに特に好ましくは±5%よりも大きく変化しない。
【0031】
本発明は、異なる透過率値を有する特別な光学フィルタを提供することができる。本発明により、例えば、特に405〜700nmの波長領域で、透過率7%±3%又は9%±3%の光学フィルタを提供することができる。
【0032】
このフィルタの特別な実施態様において、特に405〜700nmの波長領域内の透過率は、±10%より大きく、更に好ましくは±5%より大きく、特に好ましくは±3%より大きく変化しない。この場合、「変化」は、それぞれの透過率値からの絶対偏差を意味する。
【0033】
このフィルタ層の曇り値(不透明度、曇り)は好ましくは、5%未満、更に好ましくは3%未満、特に好ましくは1%未満である。この曇り値は、好ましくは、Byk社のHaze-guard Plus測定機を用いて測定される。
【0034】
このフィルタ層は、優れた引掻抵抗及び付着を有し、かつクロスハッチングカッティング試験、接着テープ試験、500gの荷重での硬度計試験、研磨試験などに合格する。このフィルタ層は、一定の吸収特性で長い寿命を有する。このフィルタは、特にIEC/EN/DIN EN 60068-2-67及びIEC/EN/DIN EN 60068-2-78に準拠する熱的試験及び湿度試験に合格する。
【0035】
この光学フィルタのフィルタ層は、廉価な液体被覆プロセスを用いて被覆することができる。好ましいプロセスは、インクジェット、ドクターブレードコーティング、スクリーン印刷、スピンコーティング、ディップコーティング、ローラコーティングであり、特に好ましいのは、インクジェット、スピンコーティング及びスクリーン印刷である。
【0036】
本発明のフィルタ層は、好ましくはマトリックス及び非酸化物系フィルタ粒子からなる。前記マトリックスは複合材料、特に有機/無機複合材料又は無機/無機複合材料を含有する。光学的に適切な波長領域中で吸収しかつ一定の吸収を有する非酸化物系フィルタ粒子が前記マトリックス中に存在する。このマトリックスは、好ましくは、有機結合剤、無機結合剤又はハイブリッドポリマー結合剤を含有する。この結合剤は、好ましくは、特に適切な波長領域中で吸収を示さないか又は僅かな吸収(1%未満)を示す。この結合剤はハイブリッドポリマーであることができる。
【0037】
この結合剤は、好ましくは少なくとも1つのポリマー及び/又はゾルゲル材料を有する。この結合剤は、付加的に又はその代わりにガラスフラックス及び/又はガラスフリットを有することができる。
【0038】
好ましいポリマーは、ポリシロキサン、シリコーン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン樹脂、シラザン及びこれらの物質の混合物から選択される。特に好ましいポリマーはSiliXane(商標)である。これらのポリマーは、UV硬化性又は熱硬化性のポリマーであってもよい。
【0039】
好ましいシリコーン樹脂は、フェニル基及び/又はメチル基を有する。これらのシリコーン樹脂は、更に官能化されていてもよい。この場合、これらの樹脂は、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、ブチル基及びエチル基及びこれらの混合物からなる群から選択される官能基を有する。
【0040】
更に、本発明の特別な態様の場合に、結合剤としてガラスハンダ又はガラスフリットを使用することができる。用途は例えば、リン酸スズガラス、好ましくはSn(II)の酸化状態のスズで製造される。更に、リン酸スズ亜鉛ガラス、ホウ酸鉛ガラス、ケイ酸鉛ガラス、オキシフッ化物、ケイ酸塩ガラス及び/又はスルホリン酸塩ガラスを使用することができる。特別な実施態様の場合、ホウ酸ビスマスガラス及び/又はホウ酸亜鉛ガラスも使用される。
【0041】
ガラスハンダ又はガラスフリットは、好ましくはガラスから粉砕により粉末にして製造する。このガラス粉末の平均粒子サイズは、300nm〜10μm、好ましくは500nm〜5μm、特に好ましくは800nm〜3μmの範囲内にある。この粒子サイズは好ましくは、動的光散乱法又は顕微鏡法を用いて測定される。顕微鏡により検出する場合には、フェレー径(Ferret diameter)が測定される。
【0042】
好ましくは、このフィルタ粒子を化学的に攻撃しないガラスフラックスが選択される。更に、好ましくは、600℃未満、更に好ましくは500℃未満、特に好ましくは450℃未満の融点を有するガラスフラックスが使用される。好ましくは、固有色がないか又は特に300nmより高い、好ましくは350nmより高い、及び/又は2500nmまで、1500nmまで又は1000nmまでの波長領域で1%より大きな吸収率を有しないガラスフラックスが使用される。ポリマー材料は一般にUV領域で透過性でないが、ガラスは400より低い波長でも良好な透明性を有することは当業者には公知である。
【0043】
好ましい実施態様の場合には、この結合剤はゾルゲル材料を有する。ゾルゲル材料は、ゾルゲル反応(つまり加水分解及び縮合)において無機網状構造を形成する物質である。この場合、UVにより又は熱的に有機架橋可能なハイブリッドポリマーゾルゲル材料、ハイブリッドポリマーゾルゲル材料及び/又はナノ粒子で機能化されたゾルゲル材料を使用することができる。
【0044】
このゾルゲル材料は、ゾルゲル前駆体を用いて生成される。このようなプロセスは、一般に当業者に公知である。好ましい実施態様の場合に、この結合剤はゾルゲル材料及び少なくとも1つのシリコーン樹脂を有する。
【0045】
好ましい実施態様の場合に、ポリウレタン変性ゾルゲル材料、エポキシ変性及び/又はメタクリレート変性ゾルゲル材料が使用される。
【0046】
前記ゾルゲル材料は、ゾルゲル前駆体の縮合反応により生成される。このゾルゲル前駆体は好ましくはアルコキシシランを有する。好ましくは、エポキシ基、メタクリレート基、アリル基及び/又はビニル基により官能化されたアルコキシシランである。好ましいアルコキシシランは、テトラアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン及びこれらの混合物である。
【0047】
前記ゾルゲル前駆体の縮合は加水分解により行われる。前記加水分解は、好ましくは酸性又はアルカリ性の媒体中で実施される。この目的のために、酸性は好ましくは1〜4のpHを意味し、アルカリ性は好ましくは8〜11のpHを意味する。前記加水分解は、好ましくはパラ−トルエンスルホン酸の存在で実施される。
【0048】
特に好ましい実施態様の場合、前記加水分解は水性ナノ粒子分散液を用いて実施される。これは、加水分解を始めるために、ゾルゲル前駆体をナノ粒子分散液と混合することを意味する。ここで言及されたナノ粒子は、前記の非酸化物系フィルタ粒子とは異なる。これらは、好ましくは本質的に酸化物であり、特にAl
2O
3、SiO
2、TiO
2及び/又はZrO
2からなることができる。このナノ粒子の平均直径は、1〜150nmの範囲内である。このナノ粒子は、フィルタ層の引掻抵抗を増大させ、フィルタ層の屈折率の適合を可能にする。
【0049】
他の実施態様の場合には、SiO
2ナノ粒子は、アルコール性分散液からのマトリックスに添加される。5〜125nmのサイズを有する単峰性の球状粒子を前記マトリックスに添加するのが特に好ましい。他の好ましい実施態様の場合には、5〜15nmの直径及び5〜150nmの長さを有する繊維状のSiO
2粒子が前記マトリックスに添加される。本願明細書において粒子の平均直径が言及されている場合、この値は、好ましくは動的光散乱法により測定される。
【0050】
特に好ましい実施態様の場合には、この結合剤がアルコキシシラン前駆体を有し、このアルコキシシラン前駆体はゾルゲル反応で加水分解されかつ縮合されて、つまりゾルゲル材料となる。ゾルゲル材料は、有機的に架橋された場合に、ハイブリッドポリマーであってもよい。
【0051】
この前駆体は、好ましくは(3−グリジドオキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン及びこれらの混合物の中から選択される。好ましい実施態様の場合に、架橋剤がこの結合剤に添加される。これらは、多重に架橋可能な有機及び/又はハイブリッドポリマー前駆体である。これらは、特に、2つの反応性官能基を有する有機分子、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、ジウレタンジメタクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート又はこれらの混合物であることができる。好ましい実施態様の場合には、当業者に公知の熱的に誘導可能なフリーラジカル開始剤又はカチオン性開始剤がこの結合剤に添加される。
【0052】
このゾルゲル前駆体は、好ましくは非晶質又は結晶質の、好ましくは分子分散系に又はコロイド分散系である。好ましいゾルゲル前駆体は、金属成分としてケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム又はスズを有する。この実験式は、例えば、SiOR
xR
y、TiOR
xX
y、ZrOR
xX
yである。この場合、Rは、水素、アルキル又はアリールであり、Xはアルキル又はアリールであるのが好ましい。添え字xとyとの合計は4であり、すなわちx+y=4である。
【0053】
特に好ましい実施態様の場合に、このゾルゲル前駆体の平均粒子サイズは、0.05〜200nm、特に好ましくは1〜100nmの範囲内である。この粒子は、好ましくは球状又は繊維状であるか又は不規則形状を有することができる。
【0054】
本発明の特別な実施態様の場合に、このゾルゲル反応(加水分解及び縮合)は、適切な前駆体と非酸化物系のフィルタ粒子との混合物中で実施される。結果として、このフィルタ粒子は、ゾルゲル材料中へ反応により組み込まれる。
【0055】
硬化の間にフィルタ層中で生じる応力又は熱の導入の結果としていくつかの適用において生じる応力を補償しかつ結果として生じる亀裂形成を避けるために、Si有機化合物の割合がマトリックス中に存在するのが好ましい。このような化合物は、特に、シリコーン樹脂及びゾルゲル材料を含む。本願発明の目的で、「Si有機化合物」とは、ケイ素−炭素結合(Si−C)を有する化合物である。この場合、Cは、有機基(残基)に属する炭素原子である。この有機基は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、フッ素化された炭化水素基及びこれらの基の混合物からなる群から選択される。
【0056】
これらのSi有機化合物は、ゾルゲル反応により製造されるか、及び/又はマトリックスにシリコーン樹脂を添加することで導入される。ゾルゲル反応中でのメチル置換、エチル置換及び/又はフェニル置換のアルコキシシランの使用及びこの反応にメチル置換及び/又はフェニル置換のシリコーン樹脂を添加することが好ましい。
【0057】
特別な実施態様の場合に、この結合剤は完全にシリコーン樹脂からなる。シリコーン樹脂は特別な熱安定性を示す。このシリコーン樹脂は、場合により他の有機架橋成分も含有することができる。本願発明で使用するために適当なシリコーン樹脂は、「Silicones in Protective Coatings」, Lawrence H. Brown著、Coatings Vol. 1, Part IIIの学術論文;「Film-Forming Compositions」, pp. 513-563, R. R. Meyers and J. S. Long編者, Marcel Dekker, Inc., New York, 1972に記載されている。適切なシリコーン樹脂は、US 3,585,065、US 4,107,148、US 3,170,890及びUS 4,879,344に記載されたようなシリコーン樹脂である。
【0058】
このシリコーン樹脂の有機成分は、好ましくはアリール、特にフェニル又は短鎖アルキル、例えばC
1〜C
4−アルキルである。良好な耐熱性を達成するために、有機成分中のメチル基及び/又はフェニル基は好ましい選択である。一般に、より多くのフェニル基が存在すると、それだけ提供される耐熱性が高くなる。望ましいシリコーン樹脂の例は、Wacker Silicone Corp.,(Conshohocken, PA, U.S.A.)により販売された、約1700の平均分子量を有するフェニルシリコーンSY−430、同様にWackerにより販売されたメチルシリコーンMK及びDow Corning Inc.により販売されたメチルフェニルシリコーン6−2230である。
【0059】
高い熱安定性を達成するために、本発明により使用されるシリコーン樹脂は、好ましくは、一般的に0.5〜1.5、好ましくは1.0〜1.5の置換度を有する。特に、この置換度は、ケイ素原子1つ当たりケイ素−炭素共有結合(Si−C)の平均数として定義される。この置換度は、好ましくは
29Si−NMRにより測定される。
【0060】
高い使用温度で自発的に縮合するシリコーン樹脂を使用することが好ましい。これは、シロキサン官能基(Si−OH)及びシリコーン樹脂を必要とし、好ましくはここで使用されるシリコーン樹脂は、シリコーン樹脂中に1.0〜7.5質量%、好ましくは2〜5質量%の範囲内のOH含有量を有する。この場合、これは、分子中の結合したヒドロキシル基の質量割合であることを意味する。好ましいシリコーン樹脂は、1〜4.5質量%の縮合可能なヒドロキシル含有量を有する。
【0061】
結合剤中の好ましいシリコーン樹脂は、フェニル、メチル、C
2〜C
6−アルキル及びこれらの混合物からなる群から選択される有機置換基を有する。このシリコーン樹脂は、好ましくはフェニルメチルポリシロキサンであることができる。
【0062】
このシリコーン樹脂は、好ましくは、150℃で100〜10000cP、好ましくは2000〜5000cPの粘度を有する。この粘度は、好ましくは、ブルックフィールドによるスピンドルレオメーターにより測定される。このシリコーン樹脂は、好ましくは、55℃又はそれ以上の、好ましくは60℃又はそれ以上のガラス転移温度(Tg)を有する。このシリコーン樹脂は、好ましくは、有機溶剤0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下を含有する。
【0063】
好ましい実施態様の場合には、ポリシルセスキシロキサン化合物(POSS)も、シリコーン樹脂として使用される。本発明による特別な場合に、このPOSS化合物は、他の架橋可能な又は重合可能な有機置換基を有することもできる。本発明の他の特別な実施態様の場合に、この結合剤は、例えばSilorane(商標)の商品名で3Mにより販売されているようなエポキシにより官能化されたシロキサンを含有することができる。
【0064】
上記のように、この結合剤は、好ましい実施態様の場合に、ゾルゲル材料及びシリコーン樹脂を含有する。この結合剤は、好ましくはゾルゲル前駆体とシリコーン樹脂とをそれぞれゾルゲル反応の前に混合することにより製造される。こうして、シリコーン樹脂及びゾルゲル前駆体の有機置換基の両方を有する複合材料が形成される。対応する結合剤は、このように、好ましくは、アルキル(好ましくはメチル)、フェニル、メタクリル、エポキシ、ビニル及びアリル及びこれらの混合物からな選択される有機置換基をその網構造中に有する。
【0065】
この結合剤は、好ましくは0.5〜1.5、更に好ましくは0.7〜1.5、特に0.8〜1.3の総置換度を有する。好ましい実施態様の場合に、この結合剤中のヒドロキシル基含有率は、1〜5質量%、更に好ましくは1〜4質量%である。
【0066】
この結合剤の酸化物含有率に直接的に第1次近似で相関するSi:C比は、好ましくは20:1〜1:5、更に好ましくは10:1〜1:2である。このSi:C比は、元素分析により測定することができる。
【0067】
この結合剤の有機の架橋度は、好ましくは30%より大きく、特に好ましくは50%より大きい。この架橋度は、ラマン分散測定法により決定され、好ましくは1259cm
-1でエポキシ環の結合の強度を測定することにより測定される。1299cm
-1でのこのCH
2振動ピークが比較のために使用される。好ましい実施態様の場合に、この結合剤は、シリコーン樹脂のかなりの含有量を有する層を備えたハイブリッドポリマーSiO
2から構成されている。
【0068】
特別な実施態様の場合に、このマトリックスはこの結合剤からなる。この結合剤は、本願明細書に結合剤として記載された複数の物質の混合物であることができる。
【0069】
好ましい実施態様の場合に、このマトリックスは、添加剤、例えばレベリング剤、脱気剤、消泡剤及び/又は湿潤剤を含有する。
【0070】
本発明のフィルタ層を得るために、非酸化物系フィルタ粒子が結合剤に添加される。結合剤中の非酸化物系フィルタ粒子の均質な分散により被覆溶液又は被覆ペーストが得られる。従って、200nm未満の、更に好ましくは100nm未満の、特に好ましくは50nm未満の、特別な態様では20nm未満の平均粒子サイズを有する非酸化物系フィルタ粒子を使用するのが好ましい。結果として、これらの粒子は、フィルタ層中で散乱を起こさない。
【0071】
使用される非酸化物系フィルタ粒子は、その特別な材料組成によって、例えば405〜700nm、好ましくは400〜1500nm、特に好ましくは405〜700nmの適切な波長領域において、実際の波長に依存した吸収を有する。この変化は、好ましくは±10%以下、好ましくは±5%以下、特に好ましくは±3%以下である。
【0072】
使用される好ましい非酸化物系フィルタ粒子の表面積は、好ましくは10m
2/gより大きく、更に好ましくは30m
2/gより大きく、特に好ましくは50m
2/gより大きい。
【0073】
このフィルタ粒子は、好ましくは無機である。このフィルタ粒子は、好ましくは、炭化物、窒化物、炭窒化物、酸窒化物、酸炭化物(oxycarbide)、フッ化物、カルコゲニド、例えば硫化物、セレン化物及びテルル化物及びこれらの混合物からなる群から選択される。このフィルタ粒子は、特に好ましくは、窒化物、炭化物、カルコゲニド、例えば硫化物、セレン化物及びテルル化物、及びこれらの混合物の中から選択される。これらの粒子は、特に所望な透過性の設定のために適している。特に、これらの粒子は、特に変化の少ない透過性を設定するために適している。
【0074】
これらの非酸化物系フィルタ粒子は、好ましくは、金属成分又は半金属成分及びアニオン性成分から構成された化合物からなる。このアニオン性成分は、特に、上述の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸窒化物、フッ化物、カルコゲニド、例えば硫化物、セレン化物及びテルル化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される。この金属成分又は半金属成分は、好ましくは、Hf、Al、B、Si、Ge、Mo、Cd、Cr、Zr、Ti、W、Zn及びこれらの混合物からなる群から選択される。更に、Ti、Zr、W、Cd及びこれらの混合物からなる群から選択される金属成分又は半金属成分が好ましい。これらの材料は、この光の波長に関して本発明により吸収の低い依存性で吸収し、従って特に適している。特に好ましい実施態様の場合に、Ti(III)N(最良で10〜20nmの一次粒子サイズを有し、好ましくは70〜90m
2/gの表面積を有する)、Zr(IV)C、Ti(IV)C及び/又はW(IV)Cが使用される。他の実施態様の場合に、ZnS、CdSe、CdTe及びこれらの混合物を使用することができる。上記の非酸化物系粒子の2つ又はそれ以上の混合物は、吸収プロフィールの改善を行うことができる、すなわち、波長及び吸収の比較的僅かな依存性を除去するか又は改善する。
【0075】
非酸化物系フィルタ粒子の表面積の測定は、N
2吸着法により実施される。当業者に周知のBET表面積が報告される。この粒子サイズは、粉末状態で、走査電子顕微鏡を用いて決定される。50の例示された粒子の平均粒子直径の中位値が測定される。溶液中のこの粒子サイズは、動的光散乱法及び/又は小角X線散乱法により決定される。
【0076】
一次粒子サイズにまで分散することができる非酸化物系フィルタ粒子を使用するのが好ましい。従って、凝集していないか又は僅かにアグリゲイト(aggregate)している、及び僅かにアグロメレイト(agglomerate)している粒子を用いるのが好ましい。
【0077】
好ましく使用されるこの非酸化物系フィルタ粒子は、1〜100nm、好ましくは4〜50nm、さらに特に好ましくは8〜30nmの一次粒子サイズを有する。使用される非酸化物系フィルタ粒子のアグリゲイトサイズは、1〜100nm、好ましくは4〜50nm、さらに特に好ましくは8〜30nmの範囲内である。これは、非酸化物系フィルタ粒子が明らかにアグロメレイトではないことを意味する。通常では、多くの非酸化物系フィルタ粒子の一次粒子サイズは、この多くの粒子のサイズが、この平均粒子の周囲の狭い範囲に分布されているので、平均(一次)粒子サイズとして与えられる。
【0078】
僅かにだけアグロメレイトした非酸化物系フィルタ粒子又は結合剤中に容易に分散することができる非酸化物系フィルタ粒子を使用するのが好ましい。一次粒子とは、より大きな複合系(アグロメレイト又はアグリゲイト)を形成するために一緒に結合されていてもよいフィルタ粒子である。
【0079】
本発明の目的のために、アグロメレイトは、弱く結合した粒子、アグリゲイト又はこれらの組合せの集合である。このアグロメレイトの表面積は、個々の部分の表面積の合計にほぼ相当する。アグロメレイトは、同様に二次粒子といわれる(同様に一次粒子を参照)。
【0080】
互いに強固に結合した粒子は、アグリゲイトといわれる。ここで、アグリゲイトの表面積は、個々の構成要素の表面積の合計よりも明らかに低くてもよい。アグリゲイトは、アグロメレイトと同様に、二次粒子に分類される。
【0081】
この非酸化物系フィルタ粒子は、前記マトリックス中で、少なくとも0.1質量%、更に好ましくは少なくとも2質量%、最も好ましくは少なくとも3質量%の割合で存在する。非酸化物系フィルタ粒子の割合は、好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは25質量%以下であり、最も好ましくは20質量%以下である。正確な割合は、所望のフィルタ吸収に依存し、製造方法により限定されずに0.1〜40質量%の範囲内にある。
【0082】
次の表は、本発明によるフィルタ層の種々の構成要素の望ましい質量範囲を示す。
【表1】
【0083】
このナノ粒子は、液相反応又は気相反応により製造することができる。この合成は、特に、沈降及び/又は熱水反応又は炎内加水分解又はプラズマ蒸着に基づくことができきる。
【0084】
好ましい実施態様の場合に、この非酸化物系フィルタ粒子は、その表面が官能化されるか又は安定化される。非酸化物系フィルタ粒子の安定化は、界面活性物質を用いて、又は化学的表面官能化により生じさせることができる。表面活性物質は、例えば界面活性剤、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)又はポリマーの添加剤、例えばポリビニルピロリドン(PVP)であることができる。
【0085】
この化学的表面官能化は、例えば、オルガノシランを用いたStober法を用いる非酸化物系フィルタ粒子のシラン化により生じさせることができる。例えば、シラン、例えばメチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3−グリシドオキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン又はこれらの混合物を使用することができる。特別な実施態様の場合に、フルオロシランも使用することができる。
【0086】
特別な実施態様の場合に、このマトリックスは、酸化物系顔料及び/又は典型的な黒色顔料を有することができる。例えば、これらは、酸化Fe(II,III)、酸化Cu(II)、酸化マンガン、FeCrスピネル、FeCoスピネル、FeZnスピネル、FeCrMnスピネル、MnCrスピネル、マンガンフェライト又はこれらの混合物であることができる。特別な実施態様の場合に、このマトリックスは、カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブを吸収性顔料として含有することもできる。特別な実施態様の場合に、このマトリックスは、金属及び半金属のナノ粒子を有することができる。これらは、特にFe、Si及び/又はステンレス鋼のナノ粒子であることができる。
【0087】
このフィルタ層の製造は、好ましくは、被覆溶液を製造する工程を有する。この被覆溶液は、後に基材に適用することができる。この被覆溶液は、完全溶液ではなくてもよい。これは懸濁液、ペースト又はエマルションであることもできる。本発明による被覆溶液又はペーストを製造するために、この非酸化物系フィルタ粒子は、好ましくは結合剤又はその前駆体中に均質に分散される。この目的のために、例えば超音波プローブ、高速ミキサ、3本ロールミル又はボールミルを用いることができる。
【0088】
前記フィルタ層を前記基材に適用するために、多様な方法を使用することができる。好ましい方法は上記に記載されている。このフィルタ層は、好ましくは、液体の形でマトリックス及び非酸化物系フィルタ粒子の構成要素を適用することにより適用される。この液体の形を得るために、好ましくは助剤が使用される。
【0089】
好ましい助剤は溶剤である。溶剤は、特に、このフィルタ層が印刷法により適用できることを保証する。低い蒸気圧(通常の条件下で2mbar未満)を有する溶剤は、良好な加工性のため、特にスクリーン印刷の間のスクリーンの閉塞を避けるために用いられる。好ましい溶剤は、アルコール、エーテル及びこれらの混合物である。エチレンモノエチルエーテル又はトリプロピレングリコールモノメチルエーテルを使用するのが好ましい。
【0090】
特別な実施態様の場合に、反応性溶剤を使用することもできる。反応性溶剤は、化学反応(重合)により皮膜形成に関する結合剤の構成要素になり、それにより溶剤としての特性を失う溶剤である。
【0091】
好ましい実施態様の場合に、非酸化物系フィルタ粒子は、粉末の形で使用される。これらは、好ましくは、ウルトラテュラックス(Ultraturrax)により、超音波により、ボールミルにより及び/又は三本ロールミルにより結合剤中に分散される。
【0092】
このナノ粒子は好ましくは結合剤中に微細に分散されている。これは、アグロメレイト粒子のサイズ対一次粒子サイズの比の値が3未満、好ましくは2未満であることを意味する。
【0093】
ポリマーの結合剤及び/又はゾルゲルベースの結合剤を基礎とする本発明による例示的な被覆溶液は、結合剤、非酸化物系フィルタ粒子、溶剤、開始剤及び添加剤からなる。
【0094】
結合剤としてガラスを使用する場合、この非酸化物系フィルタ粒子は、粉砕されたガラス粉及びペースト化媒体と一緒にこの基材に適用される。こうして最適な加工のために必要な粘度が調節される。
【0095】
このフィルタ層は、好ましくは、ドクターブレードコーティング、ロールコーティング、吹付、パッド印刷又はスクリーン印刷の適用方法の1つにより適用される。スクリーン印刷、インクジェット及びドクターブレードコーティングが好ましい。好ましい実施態様の場合に、このフィルタ層は、局所的構造化だけで又はカットアウトだけで基材に適用される。
【0096】
被覆工程の後に、この層は一般に硬化される。溶剤を含む被覆溶液を使用する場合には、この溶剤は一般に硬化工程の前にこの層から除去される。
【0097】
フィルタ層を基材に適用するための被覆溶液の多様な構成要素の好ましい質量割合を次の表中に示す。
【表2】
【0098】
乾燥されかつ硬化されたフィルタ層において、非酸化物系フィルタ粒子対結合剤の質量比は、100:1〜3:1、好ましくは50:1〜5:1、特に好ましくは20:1〜6:1である。
【0099】
特別な実施態様の場合に、この層は、UV架橋成分又は熱架橋成分を含有することができる。本発明によるフィルタ層は、同時に、特にH
2O又は油の拡散に関して遮断作用を有する。水との関連で高い接触角及び無機/有機の強い架橋性結合剤網状構造による低い気孔率が、この要因である。
【0100】
特別な実施態様の場合に、この硬化工程はさらに熱的に実施することができる。好ましい実施態様の場合に、この層は、UVを基礎とする最初の硬化の後に熱的に後硬化される。この熱的な後硬化の場合に、結合剤構成要素の更なる好ましい架橋が生じるだけでなく、特にSi−O網状構造のヒドロキシル基(特にアルコキシド基の除去により)の更なる架橋(縮合)が生じる。特に、この場合、好ましくは縮合反応による、シリコーン樹脂により構成されたポリシロキサン網状構造とゾルゲル網状構造との好ましい共有結合である。この架橋反応は、好ましくは150〜300℃の範囲内の温度で、特に好ましくは220〜270℃の範囲内の温度で開始される。
【0101】
基材として、特殊ガラス(ホウケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリフリーガラス、100μm〜1mmの厚さの薄型ガラス、25μm〜100μmの厚さの極薄型ガラス)又は例えばSCHOTT AG社から商品名D263、B270、PSKガラス、BASFガラス、LAFガラス、LASFガラス、BKガラス又はLFガラスで入手可能な光学ガラス又はガラスセラミックを使用するのが好ましい。好ましい実施態様の場合に、耐熱衝撃性の特殊ガラス又は4.0×10
-6/K未満、好ましくは3.4×10
-6/Kの熱膨張率を有するガラスセラミックが使用される。ホウケイ酸塩ガラス又は高温型石英(high-quartz)混晶相又はキータイトを有するリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックを使用するのが好ましい。
【0102】
特別な実施態様の場合に、プレストレス基材が使用される。プレストレスは、化学的又は熱的に導入することができる。
【0103】
別の特別な実施態様の場合に、透明なセラミック、特にオプトセラミックが使用される。
【0104】
このフィルタ相の好ましい層厚は、50nm〜100μm、好ましくは500nm〜50μm、特に好ましくは1μm〜20μmの範囲内である。
【0105】
結合剤としてハイブリッドポリマー及び/又はシリコーン樹脂を使用する特別な実施態様の場合に、結合剤対非酸化物系フィルタ粒子の好ましい体積比は、層厚に依存して、1000:1〜50:1の範囲内にある。
【0106】
特別な実施態様の場合に、この光学フィルタは、適切な波長領域、例えば405〜700nmで、90〜10%±2%、好ましくは85〜50%±2%、特に好ましくは80〜70%±2%の透過率を有することを特徴とする。
【0107】
本発明の他の実施態様の場合に、このフィルタは、100μm〜3mm、好ましくは500μm〜2mm、特に好ましくは800μm〜1.5mmの厚さを有する基材、特にガラスに適用される。
【0108】
更に、他の機能的及び/又は装飾的な層を、このフィルタ層に適用することができる。これらの層は、基材上に及び/又は基材とフィルタ層との間に存在してもよい。この他の複数の層又は1つの層は、付加的なフィルタコーティング、伝導性層、反射防止コーティング、防食コーティング、指紋付着防止層及び/又は耐引掻性層であることができる。
【0109】
本発明の光学フィルタは、例えば工業的光学素子及び写真において使用することができる。これらは、特にNDフィルタ又は中性フィルタとして適している。本発明は、本発明の光学フィルタを備えたレンズ又は対物レンズも提供する。
【実施例】
【0110】
ゾルゲル被覆のための加水分解物
GPTES(グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン)0.06molをTEOS(テトラエトキシシラン)0.02molと一緒に容器に装入し、PTSH(パラ−トルエンスルホン酸)0.344gを溶かした水1.5gを用いて加水分解する。3時間撹拌した後に、生成された揮発性の反応生成物を回転蒸発器で混合物から除去する。加水分解物が生じる。
【0111】
実施例A−1
メトキシ官能化されたメチルフェニルシリコーン樹脂5g及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート0.3gを、前記加水分解物10中に溶かす。ジエチレングリコールモノエチルエーテル中の30質量%濃度のSiO
2ナノ粒子分散液(粒子サイズ:10〜15nm)8.5gを引き続きこれに添加する。TiNフィルタ粒子3.15g(フィルタ粒子15質量%に相当)を引き続きUltraturraxを用いて前記結合剤中に分散させる。
【0112】
カチオン性熱開始剤のメチルイミダゾール0.5mlを、引き続きこの混合物に添加する。140スクリーンを用いるスクリーン印刷により、光学ガラスの片面に層を適用する。この硬化したフィルタ層の最終的な層厚は約7μmであった。この層を180℃(1h)で熱的に硬化した。このフィルタの透過率を図(破線)に示す。このフィルタの透過率は、400〜2500nmの波長領域で±1.5%だけ変化し、このフィルタは280℃まで安定である。
【0113】
実施例A−2
キシレン中のメチルフェニルシリコーン樹脂(50質量%)13.5g及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート0.3gを、前記加水分解物10gに添加する。TiNフィルタ粒子2.45g(フィルタ粒子12.5質量%に相当)を引き続きUltraturraxを用いて前記結合剤中に分散させる。
【0114】
カチオン性熱開始剤のメチルイミダゾール0.5mlを、引き続きこの混合物に添加する。140スクリーンを用いるスクリーン印刷により、光学ガラスの片面に層を適用する。この硬化したフィルタ層の最終的な層厚は約7μmであった。この層を260℃(1h)で熱的に硬化した。このフィルタの透過率を図に示した(点線)。このフィルタの透過率は、400〜2500nmの波長領域で±2%だけ変化し、このフィルタは280℃まで安定である。
【0115】
実施例A−3
キシレン中のメチルフェニルシリコーン樹脂(50質量%)15g及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート0.3gを、前記加水分解物10gに添加する。TiNフィルタ粒子1.96g(フィルタ粒子10質量%に相当)を引き続きUltraturraxを用いて前記結合剤中に分散させる。
【0116】
カチオン性熱開始剤のメチルイミダゾール0.5mlを、引き続きこの混合物に添加する。140スクリーンを用いるスクリーン印刷により、光学ガラスの片面に層を適用する。この硬化したフィルタ層の最終的な層厚は約7μmであった。この層を260℃(1h)で熱的に硬化した。このフィルタの透過率を図に示した(実線)。このフィルタの透過率は、400〜2500nmの波長領域で±2.5%だけ変化し、このフィルタは280℃まで安定である。
【0117】
上記実施例及び他の実施例は表3及び表4にまとめられている。実施例A−4〜A−11は、上記の実施例A−1〜A−3と同様に行った。
【0118】
表3:実施例A1〜A−6
【表3】
【0119】
表4:実施例A−7〜A−11
【表4】
【0120】
実施例B
MPTES(メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン)0.06molをTEOS(テトラエトキシシラン)0.02molと一緒に容器に装入し、PTSH(パラ−トルエンスルホン酸)0.344gを溶かした水1.5gを用いて加水分解する。3時間撹拌した後に、生成された揮発性の反応生成物を回転蒸発器で混合物から除去する。加水分解物が生じる。
【0121】
30質量%濃度のSiO
2ナノ粒子分散液(粒子直径:10〜15nm及び50〜120nmの粒子長さ)10gを、前記加水分解物10gに添加する。TiNフィルタ粒子2g(フィルタ粒子13.1質量%に相当)を引き続きUltraturraxを用いて前記結合剤中に分散させる。フリーラジカル光開始剤を、引き続きこの混合物に添加した。
【0122】
ドクターブレードと基材表面との20μmの間隔を用いるドクターブレード被覆法を用いて光学ガラスの片面に層を適用する。この層を光化学的に硬化させる。この層を、引き続き180℃(1h)で熱的に後硬化させる。この硬化したフィルタ層の最終的な層厚は約15μmである。
【0123】
実施例C
ヒドロキシ官能化されたメチルフェニルシリコーン樹脂15gを、ジエチレングリコールモノエチルエーテル中に溶かす。
【0124】
TiNフィルタ粒子4g(フィルタ粒子21質量%に相当)を引き続きUltraturraxを用いて前記結合剤中に分散させる。ドクターブレードと基材表面との20μmの間隔を用いるドクターブレード被覆法を用いて光学ガラスの片面に層を適用する。この硬化したフィルタ層の最終的な層厚は約15μmである。この層を270℃(1h)で熱的に硬化する。
【0125】
図は非酸化物系フィルタ粒子の異なる濃度を有する本発明によるフィルタの透過曲線を示す。このフィルタのスペクトル透過率は、適切な波長領域全体にわたり事実上一定である。