特許第6494211号(P6494211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494211
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】鉛筆ホルダ及び筆箱
(51)【国際特許分類】
   B43K 23/10 20060101AFI20190325BHJP
   A45C 11/34 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B43K23/10
   A45C11/34 101A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-163182(P2014-163182)
(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-37012(P2016-37012A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 容章
(72)【発明者】
【氏名】桐竹 雅宜
(72)【発明者】
【氏名】林 哲勇
(72)【発明者】
【氏名】深澤 岳詩
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−252131(JP,A)
【文献】 特開2007−045090(JP,A)
【文献】 実開昭51−061938(JP,U)
【文献】 実開平06−039485(JP,U)
【文献】 実公昭43−027447(JP,Y1)
【文献】 実公昭41−021696(JP,Y1)
【文献】 仏国特許出願公開第00395879(FR,A1)
【文献】 筆箱と天然酵母パン完成!!!,Chibidas家の普段着,楽天ブログ,2013年 2月28日,[平成30年4月6日検索]インターネット<https://plaza.rakuten.co.jp/kantahako/diary/201302280000/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 23/08−23/12
B43K 23/00
A45C 11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉛筆用キャップを備えた鉛筆ホルダにおいて、
各鉛筆用キャップが、鉛筆の軸筒部と嵌合する嵌合部を有し、該嵌合部の外面にスリットが形成され、該スリットが前記鉛筆用キャップの後端と連通していなく、
各鉛筆用キャップが、さらに、前記嵌合部の前方に位置し、前記鉛筆の切削面が当接する当接部を有し、
該当接部が、15°及び23°を含む複数の傾斜角度を有する傾斜面を有し、該傾斜角度が前方に向かって小さくなっていることを特徴とする、鉛筆ホルダ。
【請求項2】
ポリエチレンから構成されている、請求項1に記載の鉛筆ホルダ。
【請求項3】
各鉛筆用キャップが、さらに、前記鉛筆の切削された芯を目視できるように形成された覗き孔を有する、請求項1又は2に記載の鉛筆ホルダ。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の鉛筆ホルダを備えた、筆箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鉛筆用キャップを備えた鉛筆ホルダと、鉛筆ホルダを備えた筆箱とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、切削された鉛筆の芯を保護するように鉛筆の前端部を覆う鉛筆用キャップが知られている。また、複数の鉛筆用キャップを備えた鉛筆ホルダも知られている。鉛筆ホルダは、典型的には筆箱に装着され、複数の鉛筆を筆箱内で保持する。
【0003】
市販されている鉛筆は、円、三角形、四角形、五角形、六角形等の様々な断面形状を有する。外形の最大寸法が円よりも大きい三角形や六角形の断面形状を有する鉛筆は、キャップとの嵌合力が過大となる傾向にある。特許文献1に記載の鉛筆用キャップでは、キャップの外面に形成されたスリットが鉛筆の断面形状に応じて適度に開くことによって、断面形状の違いによる嵌合力のバラツキが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−45090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の鉛筆用キャップでは、スリットはキャップの後端と連通している。この場合、外形寸法の大きな断面形状を有する鉛筆がキャップに挿入されると、キャップの後部が径方向に大きく拡がる。このことによって、キャップによる鉛筆の保持力が低下する。また、複数のキャップが一列に整列している鉛筆ホルダの場合、キャップの後部が径方向に大きく拡がると、隣接するキャップの挿入口が小さくなる。このため、鉛筆ホルダのキャップの一部に鉛筆を挿入することができないという問題が生じうる。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、鉛筆の断面形状の違いによる嵌合力のバラツキを低減しつつ、鉛筆の十分な保持力を確保し、且つ、全てのキャップに鉛筆を挿入することができる鉛筆ホルダと、鉛筆ホルダを備えた筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様では、複数の鉛筆用キャップを備えた鉛筆ホルダにおいて、各鉛筆用キャップが、鉛筆の軸筒部と嵌合する嵌合部を有し、嵌合部の外面にスリットが形成され、スリットが鉛筆用キャップの後端と連通していないことを特徴とする、鉛筆ホルダが提供される。
【0008】
本発明の第1態様では、鉛筆ホルダがポリエチレンから構成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の第1態様では、各鉛筆用キャップが、さらに、嵌合部の前方に位置し、鉛筆の切削面が当接する当接部を有し、当接部が、鉛筆の切削角度に対応した傾斜角度を有する傾斜面を有することが好ましい。
【0010】
本発明の第1態様では、傾斜面が複数の傾斜角度を有し、傾斜角度が前方に向かって小さくなっていることが好ましい。
【0011】
本発明の第1態様では、各鉛筆用キャップが、さらに、鉛筆の切削された芯を目視できるように形成された覗き孔を有することが好ましい。
【0012】
本発明の第2態様では、本発明の第1態様の鉛筆ホルダを備えた、筆箱が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鉛筆用キャップの嵌合部の外面にスリットが形成され、スリットが鉛筆の断面形状に応じて適度に開くことによって、鉛筆の断面形状の違いによる嵌合力のバラツキが低減される。また、スリットがキャップの後端と連通していないので、外形寸法の大きな断面形状を有する鉛筆がキャップに挿入されても、キャップの後部の径方向の拡がりが抑制される。このことによって、鉛筆の十分な保持力を確保し、且つ、全てのキャップに鉛筆を挿入することができる。したがって、本発明によれば、鉛筆の断面形状の違いによる嵌合力のバラツキを低減しつつ、鉛筆の十分な保持力を確保し、且つ、全てのキャップに鉛筆を挿入することができる鉛筆ホルダと、鉛筆ホルダを備えた筆記具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る鉛筆ホルダの斜視図である。
図2図2は、図1の鉛筆ホルダの内部形状を示す正面断面図であり、鉛筆ホルダには二本の鉛筆が挿入されている。
図3図3は、図1の鉛筆ホルダの正面図であり、鉛筆ホルダには二本の鉛筆が挿入されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。これら実施形態は本発明を限定するものではなく、これら実施形態の構成要素には、当業者が置換可能且つ置換容易なもの、及び実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る鉛筆ホルダ1の斜視図である。鉛筆ホルダ1は六本の鉛筆用キャップ3(以下、単に「キャップ3」とする)を備える。キャップ3は、一方の端部が閉じられた中空の略円筒形状を有する。隣接するキャップ3は互いに連結され、六本のキャップ3は同一平面上に一列に整列される。鉛筆ホルダ1は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂等の樹脂、又はエラストマーから構成され、射出成形等によって一体的に成形される。各キャップ3には、先端が切削された鉛筆が挿入され、鉛筆ホルダ1は同時に六本の鉛筆を保持することができる。なお、鉛筆ホルダ1のキャップ3の数は、二本以上の他の数であってもよい。
【0017】
両端のキャップ3の外側には、キャップ3の整列方向に突出する嵌合突起5が設けられている。嵌合突起5を、筆箱(図示せず)に設けられた嵌合孔と嵌合させることによって、鉛筆ホルダ1を筆箱に装着することができる。このことによって、鉛筆ホルダ1は筆箱内で鉛筆を保持することができる。なお、鉛筆ホルダ1は筆箱に対して脱着可能である。
【0018】
図2は、図1の鉛筆ホルダ1の内部形状を示す正面断面図であり、鉛筆ホルダ1には二本の鉛筆7a、7bが挿入されている。図2に示されるように、鉛筆用キャップ3は、鉛筆7a、7bの軸筒部71と嵌合する嵌合部31と、嵌合部31の前方に位置し、鉛筆の切削面72a、72bが当接する当接部32と、当接部32の前方に位置し、鉛筆7a、7bの芯73a、73bを保護する保護部33とを有する。なお、本明細書において、キャップの鉛筆を挿入する側を鉛筆ホルダ及びキャップの「後」側と定義し、キャップの軸線方向(長手方向)に沿ってキャップの鉛筆を挿入する側とは反対側を鉛筆ホルダ及びキャップの「前」側と定義する。
【0019】
キャップ3への鉛筆7a、7bの挿入を容易にすべく、嵌合部31の後端の内径は鉛筆7a、7bの軸筒部71の外径よりも大きい。嵌合部31の内面はテーパー形状を有し、嵌合部31の内径は前方に向かって徐々に小さくなっている。嵌合部31の前端の内径は鉛筆7a、7bの軸筒部71の外径よりも小さいので、嵌合部31は鉛筆7a、7bの軸筒部71と嵌合する。このことによって、鉛筆7a、7bの十分な保持力を確保することができる。
【0020】
キャップが単純なテーパー形状の嵌合部のみを有する場合、鉛筆をキャップに挿入する力が強すぎると、鉛筆の軸筒部はキャップの前方に押し込まれる。この結果、軸筒部は、嵌合部とより強固に嵌合するので、鉛筆の保持力が過大となる。この場合、鉛筆をキャップから引き抜くことができず、又は鉛筆をキャップから引き抜くときの反動で怪我をするおそれがある。鉛筆ホルダ1では、この問題を以下の構成によって解決することができる。
【0021】
キャップ3の当接部32は、複数の傾斜角度を有する傾斜面321を有する。本実施形態では、傾斜面321は二つの傾斜角度θ1、θ2を有し、θ1は15°であり、θ2は23°である。θ2はθ1よりも大きく、傾斜面321の傾斜角度は前方に向かって小さくなっている。市販されている主な自動鉛筆削り機によって切削された鉛筆7a、7bは、それぞれθ3、θ4の切削角度を有する。θ3は、15°であり、θ1と等しい。θ4は、23°であり、θ2と等しい。すなわち、傾斜面321は、鉛筆の切削角度に対応した複数の傾斜角度を有する。なお、傾斜面321は、鉛筆の切削角度に対応した三つ以上の傾斜角度を有してもよい。この場合も、傾斜角度は前方に向かって小さくなる。また、傾斜面321は、鉛筆の切削角度に対応した一つの傾斜角度を有してもよい。
【0022】
図2に示されるように、θ3の切削角度を有する鉛筆7aがキャップ3に挿入されると、鉛筆7aの切削面72aは、θ1の傾斜角度を有する傾斜面321aに当接する。一方、θ4の切削角度を有する鉛筆7bがキャップ3に挿入されると、鉛筆7bの切削面72bは、θ2の傾斜角度を有する傾斜面321bに当接する。このことによって、鉛筆7a、7bの軸筒部71がキャップ3の前方に押し込まれることが妨げられ、鉛筆7a、7bの保持力が過大とならない。また、傾斜面321a、321bの傾斜角度θ1、θ2が鉛筆7a、7bの切削角度θ3、θ4に対応しているので、切削面72a、72bは傾斜面321a、321bと面接触し、切削面72a、72bに掛かる力が分散される。このため、鉛筆7a、7bの切削面72a、72b上の傷の発生が低減される。
【0023】
キャップ3の保護部33には、鉛筆7a、7bの切削された芯73a、73bが延在する。保護部33の内面はテーパー形状を有し、保護部33の後端の内径は当接部32の前端の内径と等しく、保護部33の内径は前方に向かって徐々に小さくなっている。また、保護部33の前端部は閉じている。このことによって、指がキャップ3内の芯73a、73bと接触して損傷することを防ぐことができる。
【0024】
嵌合部31の外面には、キャップ3の長手方向に延在するスリット34が形成されている。市販されている鉛筆は、円、三角形、四角形、五角形、六角形等の様々な断面形状を有する。外形の最大寸法が円よりも大きい三角形や六角形の断面形状を有する鉛筆は、キャップの嵌合部との嵌合力が過大となる傾向にある。本実施形態では、スリット34が鉛筆の断面形状に応じて適度に開くことによって、断面形状の違いによる嵌合力のバラツキを低減することができる。
【0025】
スリット34はキャップ3の後端と連通していない。このため、外形寸法の大きな断面形状を有する鉛筆がキャップに挿入されても、キャップ3の後部の径方向の拡がりが抑制される。このことによって、キャップ3の嵌合部31と鉛筆7a、7bの軸筒部71との嵌合力の低下が抑制されるので、鉛筆7a、7bの十分な保持力が確保される。また、隣接するキャップ3の挿入口(後端)の大きさが維持されるので、全てのキャップ3に鉛筆を挿入することができる。
【0026】
また、スリット34の位置はキャップ3の後端よりも当接部32に近い。嵌合部31の内径が小さく嵌合力が高い位置にスリット34が形成されているので、鉛筆の断面形状の違いによる嵌合力のバラツキがより効果的に低減される。
【0027】
鉛筆ホルダ1は好ましくはポリエチレンから構成される。このことによって、嵌合部31の剛性が最適化され、鉛筆の断面形状の違いによる嵌合力のバラツキがより効果的に低減される。
【0028】
図3は、図1の鉛筆ホルダ1の正面図であり、鉛筆ホルダ1には二本の鉛筆7c、7dが挿入されている。図3に示されるように、キャップ3は、さらに、当接部32の前方に位置し、鉛筆7c、7dの切削された芯73c、73dを目視できるように形成された覗き孔35を有する。覗き孔35は保護部33の外面に形成されている。覗き孔35から芯73c、73dの状態を確認することができるので、鉛筆7c、7dをキャップ3から引き抜くことなく、使用に適した鉛筆を容易且つ迅速に選択することができる。
【0029】
鉛筆の芯の位置は鉛筆の切削角度と芯の減り具合とに依存する。このため、覗き孔35はキャップ3の長手方向に延在し、その長手方向の長さは、切削角度の異なる鉛筆のあらゆる状態の芯を目視できるように、キャップ3の長手方向の長さの1/3よりも長い。一方、覗き孔35の短手方向の長さは、芯を目視できるように芯の径方向長さよりも長く、芯と指との接触を防ぐようにキャップ3の径方向長さよりも短い。このため、鉛筆ホルダ1では、芯による指の損傷を防ぎつつ、キャップ3内の芯の状態を確認することができる。
【0030】
図2に示されるように、保護部33の外面には、さらに、キャップ3の長手方向に延在する貫通孔36が形成されている。貫通孔36は、スリット34の前方に位置し、キャップ3の周方向において覗き孔35から180°離間されている。鉛筆ホルダ1が射出成形によって成形される場合、貫通孔36の位置に配設されるキャビティと、覗き孔35の位置に配設されるキャビティとによって、キャップ3の内部に配設されるコアピンの成形時の振れが抑制される。このことによって、鉛筆ホルダ1の成形不良の発生を低減することができる。
【0031】
図3に示されるように、嵌合部31及び当接部32の外面には、径方向外側に突出する凸部37が形成されている。凸部37は、覗き孔35の後方に位置し、キャップ3の周方向においてスリット34から180°離間されている。凸部37は、先端が切削された鉛筆の略図を表し、使用者に鉛筆の挿入方向を案内する。
【符号の説明】
【0032】
1 鉛筆ホルダ
3 鉛筆用キャップ
31 嵌合部
32 当接部
321、321a、321b 傾斜面
33 保護部
34 スリット
35 覗き孔
36 貫通孔
37 凸部
5 嵌合突起
7a、7b、7c、7d 鉛筆
71 軸筒部
72a、72b 切削面
73a、73b、73c、73d 芯
θ1、θ2 傾斜角度
θ3、θ4 切削角度
図1
図2
図3