(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
風防を含む外装ケーシングと、前記外装ケーシング内に配置されたハウジングと、前記ハウジング内に配置されたクオーツムーブメントと、前記ハウジング内に配置された静電誘導発電器とを有する静電誘導発電器付き電子時計において、
前記静電誘導発電器は、
前記ハウジングに対して回転自在な回転錘と、
前記ハウジングに対して回転自在な回転部材と、
前記ハウジングに固定された対向基板と、
前記回転部材と前記対向基板の両者のいずれか一方に設置された帯電膜と、前記両者のうちの他方に、前記帯電膜に対向して設置された対向電極と、を有し、
前記帯電膜と前記対向電極間で発生した電力を前記クオーツムーブメントに出力し、
前記回転部材の回転又は回転伝動を、前記外装ケーシングの外部から前記風防を通じて視認できるようにし、
前記風防と前記ハウジング間に文字板が配置されており、前記回転部材の回転軸が前記文字板を貫いて、前記回転軸の軸端部に回転表示体が設けられたことを特徴とする静電誘導発電器付き電子時計。
前記ハウジングは、地板と受け板を有しており、前記回転部材は、前記地板と前記受け板間で軸支され、前記文字板、前記地板、前記回転部材、前記対向基板、前記受け板の順序で配置されたことを特徴とする請求項1に記載の静電誘導発電器付き電子時計。
前記ハウジングは、地板と受け板を有しており、前記回転部材は、前記地板と前記受け板間で軸支され、前記文字板、前記地板、前記対向基板、前記回転部材、前記受け板の順序で配置されたことを特徴とする請求項1に記載の静電誘導発電器付き電子時計。
【背景技術】
【0002】
腕時計などの携帯用電子時計には、太陽電池などの発電装置を内蔵し、電池交換なしに動作するものが実現されてきている。太陽電池のような発電装置は、直射日光下を除いて室内などでは利用可能なエネルギ密度が低く、さらに継続したエネルギが得られないという問題がある。このためソーラーセルに光が当たらず発電が一定時間行われていないことを検知すると、自動的に節電状態になるパワーセーブ機能を有している。
また、特許文献1に示すように、ユーザーの腕の動きなどを捉えて運動エネルギを電気エネルギの変換する電磁誘導型発電器付の電子時計でも、非携帯状態にある場合には蓄電池(2次電池)の消費電力を低減させるべく、自動的に節電状態になるパワーセーブ機能を有している。
【0003】
このようなパワーセーブ状態に入った電子時計は、液晶表示が消え、針が止まってしまうことから、ユーザーがしばしば故障と誤認してしまうことが多い。そのため、ユーザーから、「時計がとまってしまったのですが、どうしたらよいですか」と問い合わせが多く、FAQ(Frequently Asked Questions)として、その回答が各製造メーカに用意されている。このような誤認が生じないように、わざわざパワーセービングマークを点滅させるなどの表示手段を用いてユーザーに知らせる方法が知られている。しかしながら、表示手段を設けた分コストアップになるばかりでなく、表示手段のデスプレイ用のスペースの確保が必要となり、時計のサイズがそれだけ大きくなってしまうという問題があった。また、2次電池の充電量が少なくなって充電不足の場合には、ソーラーセルを直射日光に当てて充電して動くかどうか確認する必要があって、即座には故障かどうか判別がつかないことも多く、このような消費者の疑問に対応する必要が生じていた。
【0004】
一方、近年エレクトレット材料による静電誘導を利用した実用的発電装置が、特許文献2〜5に開示されているように、開発されてきている。静電誘導とは、帯電した物体を導体に接近させると、帯電した物体とは逆の極性の電荷が引き寄せられる現象のことである。静電誘導現象を利用した発電装置とは、「電荷を保持する膜」(以下、帯電膜という)と「対向電極」を配置した構造において、この現象を利用して、両者を相対移動させて誘導された電荷を取り出す発電のことである。
【0005】
図1は、静電誘導現象を利用した発電の原理を説明する説明図である。
【0006】
エレクトレット材料による場合を例にとると、エレクトレットは、誘電体に電荷を打ち込んだものであり、半永久的に静電場を発生させるものである。このエレクトレットによる発電では、
図1にみられるように、エレクトレットと対向電極とを近接させ、エレクトレットにより形成される静電場によって対向電極に誘導電荷が生じ、エレクトレットと対向電極の重なりの面積を変化(振動等)させれば、外部電気回路において交流電流として取り出すことができる。このエレクトレットによる発電は、構造が比較的簡単で、電磁誘導によるものより、低周波領域において高い出力が得られ有利であって、近年いわゆる「環境発電(Energy Harvesting)」として注目されている。
【0007】
特許文献2には、時計モジュールに設けられた地板に対して回転する回転板に、放射状に形成した電極及びエレクトレット膜を配置する一方、地板上に放射状に形成した電極を配置して、地板に対して回転板を回転させ、回転運動エネルギを電気エネルギに変換する発電装置が開示されている。特許文献3も、特許文献2の発電装置と同様な発電装置であって、回転体の側面とその対向面に電極又はエレクトレット膜を設けたものが開示されている。さらに、特許文献4、5には、ヒゲゼンマイ(渦巻きバネの一種、時計用語)を使ってエレクトレット膜と電極の往復周期回転を行う静電誘導型発電装置が開示されている。これらの発電装置を携帯用の電子時計に適用した場合には、先に述べた太陽電池などの電子時計と同様に、ユーザーが、パワーセーブ状態をしばしば故障と誤認してしまう上述の問題が発生する。
【0008】
特許文献2〜5の従来技術は、いずれも、エレクトレット膜や電極の配置された回転板は、ケースや地板の内部奥に組み込まれており、エレクトレットの回転動作を外部からは視認することができないものである。このため、パワーセーブ状態や2次電池の充電量が少なくなって充電不足の場合に、即座にユーザーが発電状態を確認することができないものであった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0015】
以下の各実施形態では、腕時計で実施形態を説明するが、必ずしも腕時計に限定されるものではない。携帯用の静電誘導発電器付き電子電気機器であれば、本発明のように回転表示体を設置して、本発明の効果を同様に発揮することができるものである。
【0016】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態を視覚的に示した図である。
図3は、本発明の第1実施形態の対向電極2と帯電膜3を説明するための部分的斜視図である。
図4は、本発明の第1実施形態の対向電極2と帯電膜3のパターンを示す図である。
図5は、本発明の第1実施形態の対向電極2と帯電膜3の別のパターンを示す図である。
図6は、本発明の第1実施形態のA−A線(
図7)に関する模式的断面図である。
図7は、本発明の第1実施形態の内部構造を示す概要である。
図6の断面図において、風防側24を上部、上側、上方といい、裏蓋42側を下部、下側、下方と称す。以下の実施形態においても同様である。
【0017】
以下、第1実施形態を、各図面を参照して説明する。
本実施形態は、腕時計など携帯用電子時計に適用した場合の実施形態である。携帯用電子時計は、
図6に示すように、風防24を含む外装ケーシング41、42(裏蓋42)と、文字板25と、ハウジング33、34と、このハウジング内に配置されたクオーツムーブメントと、ハウジング内に配置された静電誘導発電器とを有している。風防24は、パッキン43を介して外装ケーシング41に嵌めこまれている。風防24は、透明材料で形成されている。
【0018】
ハウジングは、以下において腕時計の場合によくつかわれる呼称、すなわち、地板33、受け板34として説明する。地板33は、ハウジングの一種であって、様々なパーツを組み込む土台、支持板、内装ケーシングなどを意味している。また、受け板とは、回転体の軸を支えたり、部品を固定・保持する役割を果たす場合に良くつかわれる用語である。文字板25と地板33を、帯電膜(エレクトレット膜)の設置された回転部材の固定された回転軸8の軸端部(上端部ともいう)が貫いており、この軸端部には、回転表示体29が、
図2に示すように設けられている。これによって、風防24から、回転表示体29の回転状況が視認できるようになっている。
【0019】
文字板や地板にのぞき窓を設けて、風防から直接、帯電膜(エレクトレット膜)回転を視認するようにすることもできるが、帯電膜に外光が照射されると、当該部位の蓄積電荷か減少することにより発電能力が低下してしまう。
さらに、外光が内部に入射すると、クオーツムーブメントの回路基板上のICなどの消費電流を大きくさせたりICの誤動作を招くことがあり、消費電力節減と誤作動防止の観点からも好ましくない。本実施形態では、外部や風防からの外光は、文字板25、外装ケーシング41、ハウジングなどのいずれかで遮光されるとともに、外装ケーシングや、地板33、受け板34などのハウジング内部が、外光に対して遮光されているので、外光に対し、蓄電電荷の喪失、帯電膜の劣化、回路の消費電流増加を防ぎ、余分なデスプレイ不要でサイズに影響を与えずに、エレクトレットの発電状況をユーザーに知らせることができる。すなわち、風防24とハウジング(地板33)間に文字板25が配置されており、回転部材4の回転軸8が文字板25を貫いて、回転軸8の軸端部(上端部)に回転表示体29を設けることによって、帯電膜3(エレクトレット膜)を外光から完全に遮蔽した上で、回転部材4の回転を回転表示体29に伝達して発電状態を視認することができる。
【0020】
クオーツムーブメントは、ここでは、水晶振動子28と、回路基板5と、コイル26及びモータ用のロータ・ステータを備えたステップモータと、運針用歯車と、2次電池22などを含むものとして定義される。回路基板5には、発振回路、分周回路、ステップモータの駆動回路、整流回路、電源回路などが組み込まれている。歯車駆動部21には、クオーツムーブメントの一部である、コイル26、ステップモータ、運針用歯車などが含まれている。
図6にみられるように、歯車駆動部21からは、指針軸が、文字板25の上方に突き出て時針、分針、秒針(秒針図示せず)などの指針23が取り付けられている。指針23は、時針、分針しか表示していないが、時針、分針、秒針を備えていても良い。
図7は、クオーツムーブメントと静電誘導発電器などの時計内部構造の概要を示しており、
図7のZ部分は、地板やクオーツムーブメントの一部が適宜レイアウトされた概略領域である。27はりゅうずを示している。Z部分には、クオーツムーブメントのうち歯車駆動部21や回路基板5などが配置されるが、そのレイアウトは適宜設計的に定めればよい。
【0021】
次に、
図3〜5を参照して静電誘導発電器の構成について述べる。
回転軸8には回転部材4が固定されており、回転部材4の下面には帯電膜3が配置されている。一方、帯電膜3に対向するように、上部表面に対向電極2が配置された対向基板1が、受け板34に設置固定されている。回転部材4の下面に対向電極2が配置されて、対向電極2に対向するように、対向基板1の上部表面に帯電膜3が配置されるようにしても良い。すなわち、回転部材4と対向基板1の両者のいずれか一方に設置された帯電膜3と、両者のうちの他方に帯電膜3に対向して設置された対向電極2を設けるようにする。本実施形態では、回転部材4は、地板33と受け板34間で軸支され、文字板25、地板33、回転部材4、対向基板1、受け板34の順序で配置されているが、これに限定されるものではなく、文字板25、地板33、対向基板1、回転部材4、受け板34の順序で配置されていても良い(後述する
図12の第4実施形態参照)。以下の第2〜8実施形態においても同様である。
【0022】
図6において、クオーツムーブメントの回路基板5も、対向基板と同様に受け板34に設置固定されている。ここでは、対向基板1と帯電膜3とのギャップを精密に管理するため、対向基板1と回路基板5を別体で作製しているが、同様の位置精度が満たされるなら回路基板5と対向基板1を同一の基板に形成することも可能である。回路基板5と対向基板1とが別基板の場合は接続コネクタ、導通バネ、接続端子などで導通を行う。これらは、後述の実施形態においても同様である。
【0023】
回転部材4が回転すると、静電誘導発電が引き起こされ、帯電膜3と対向電極2間で発生した電力を、クオーツムーブメント(回路基板5)に出力する。
図3には、回転部材4の下面には帯電膜3が配置され、帯電膜3に対向するように、対向電極2が配置された状況が斜視図で模式的に示されている。本実施形態では、回転錘10の伝動に歯車伝動機構を介しているので、上部から下部に向かって、文字板25、地板33、歯車14、回転部材4、帯電膜3、対向電極2、対向基板1、受け板34の順序で配置されている。
【0024】
回転部材4、及び、その下面の帯電膜3は、
図3、4に示すように、それぞれ、放射状に形成され、放射状の各一片との間にはブランク部(透し孔、貫孔)が形成されている。回転軸8は、上側は地板33の軸受55、下側は受け板34に設けた軸受50(耐震装置、一例としてパラショックなどであっても良い)で軸支されている。回転軸8の上方端には、回転表示体29が嵌めこまれている。この回転表示体29は、回転軸8の上端部が、地板33と文字板25を突き抜けて、風防24からの視認において、回転部材4の回転状況を表示するものである。回転表示体29としては、円盤部の表示体を例示として示したが、これに限定することなく指針などの任意の表示体であって良い。円盤部に印刷や凹凸を設けても良い。指針の場合にはスモールセコンド(秒針)と間違わないような視覚上の工夫が必要となる。
回転軸8には肩部18があり、軸受50側に設けられたバネ7で、回転軸8は上方に押圧されつつ、肩部18が軸受55で位置決め規制されている。
組み立ての際には、地板33の軸受55に対して回転軸8の上側を差込み、その後、回転軸8の下側を受け板34の軸受50に差し込み、受け板34の位置決めをしてネジ止め固定する。この過程において、回転軸8の肩部18が軸受55に押し付けられていないと、回転軸8が傾き、帯電膜3と対向電極2が接触してしまい、帯電膜3の蓄電電荷が対向電極2に流出するため、発電特性が著しく低下する。そこで、軸受50側にバネ7を設けて、回転軸8の肩部18を軸受55に押し付けることで、受け板34のネジ止め寸前まで、帯電膜3と対向電極2の距離を離すことができるため、帯電膜3の蓄電電荷を流出することなく組み立てが可能となる。
また、地板33と受け板34とは不図示の加工精度の高い支柱で連結されており、地板33と受け板34との相対位置のバラつきは極めて小さい。従って、受け板34のネジ止めを行った後には、回転部材4の下面の帯電膜3と、対向基板1の上面の対向電極2とのギャップが精度よく設定されることになる。バネ7は、針座などによくつかわれるような極薄の板バネである。弾発力のごく弱いスプリングワッシャなどであっても良い。
【0025】
回転錘10は腕の動きなどを捉えて回転する。回転軸8の回転部材4の上側において歯車14が回転軸8に固定されている。また、軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構(歯車列)として、軸9に固定された歯車15と、回転軸8に固定された歯車14とが設けられている。ここでは、歯車列は、歯車15、14を指している。この場合、回転錘10の回転が増速されて回転軸8を回転させると、回転部材に設置された帯電膜(エレクトレット膜)3を、対向基板1(受け板34の固定)に静止した対向電極2に対して、増速回転させることができる。従って、回転部材4の回転数が高まると、発電量を上昇させることができる。なお、歯車列としては、2枚の歯車に限らず、3枚以上の歯車を組み合わせても良く、また、特殊歯車、カム、リンク、一方向クラッチ等を途中に介在させたものもここでの歯車伝動機構に含まれる。軸9は、ここでは、受け板34にベアリング16を介して軸支されている。軸9の軸支については、地板33と受け板34で軸支することも可能である。
【0026】
軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構としては、機械式腕時計においてこれまで公知の自動巻きの回転駆動技術を転用することが可能である。たとえば、腕の運動などの振動による、軸9に固定された回転錘10の正逆両方向の回転を、歯車伝動機構に内在した変換クラッチ機構によって、常に一方向の回転に変換するようにしても良い。
【0027】
このような変換クラッチ機構は、ツゥーウェイクラッチ機構として機械式自動巻き腕時計の公知技術として、よく知られているので、これらの公知技術などを適用することが可能である。また、回転錘10による軸9の回転や揺動の正逆一方向のみを、ワンウェイクラッチで回転軸8に伝動しても良い。この場合、回転錘10の軸9(回転部材4の回転軸8)の回転が逆回転する時であっても、回転部材4に動きを阻害する力が加わることがなくなるので運動エネルギの無駄がなくなり、発電効率を高めることができる。以上述べた回転部材4と回転錘10との歯車伝動機構は、以下に述べる実施形態においても適宜適用することができる。本実施形態において、回転錘10は直接回転軸8に設けることも可能である。さらには、回転部材4に錘を設けて、回転錘の代わりにしても良い。これらの場合には歯車伝動機構15、14が不要である。
【0028】
続いて、本実施形態の詳細について以下に説明する。
本発明で帯電膜として用いられるエレクトレット材料には、帯電しやすい材料を用い、例えばマイナスに帯電する材料としてはシリコン酸化物(SiO
2)や、フッ素樹脂材料などを用いる。具体的には一例としてマイナスに帯電する材料として旭硝子製のフッ素樹脂材料であるCYTOP(登録商標)などがある。
【0029】
さらに、その他にもエレクトレット材料としては、高分子材料としてポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルデンジフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などがあり、無機材料としては前述したシリコン酸化物(SiO
2)やシリコン窒化物(SiN)なども使用することができる。その他、周知の帯電膜を使用することができる。
【0030】
図4、5を参照して、帯電膜3と対向電極2を説明する。
帯電膜3(エレクトレット膜)には、負電荷が保持されているので、対向電極2には、静電誘導により正電荷が引き寄せられる。対向基板1に設けられた対向電極2、回転部材4に設けられた帯電膜3は、
図4に示すようなパターンであって、中心から等しい角度の放射部3’、3’が等間隔で形成されている。
図4のパターンでは、
図3の斜視図にみられるように、放射部(帯電膜)3’、3’相互間はそれぞれブランク部(透し孔)となっており、放射部(電極)2’、2’相互間には電極が設けられておらず、対向基板1が露出しているか、
図3のように、対向基板1の放射部相互間をブランク部にしても良い。
【0031】
この
図4の帯電膜と対向電極のパターンを、以下、「第1パターン」と称す。帯電膜3は、個別の放射部3’からなるパターンに形成されていて、導電部材の回転軸8に電気接点を介して接続されて出力されている(各放射部3’毎に回転軸8に接続するか、各放射部3’を連結配線後回転軸8に接続するようにしても良い)。回転部材(基板)4が金属の場合には各放射部3’はそれぞれ基板を通じて回転軸8と直接接続される。一方、対向電極も、外周側の電極部から出力が取り出される。両出力端子は、整流回路20に接続している。回転軸8からの電流の取り出し方については、ブラシ電極や軸受部の導電体構成部を利用して回転しながら電気的接続を行えばよい。
【0032】
回転錘10によって、回転軸8に固定された回転部材4が回転すると、帯電膜(エレクトレット膜)3と対向電極2間との重なり面積が増減し、対向電極2に引き寄せられる正電荷が増減して、帯電膜(エレクトレット膜)3と対向電極2間に交流電流を発生させる。対向電極2と帯電膜3間の発生電流を、出力部として、整流回路20を通し直流変換して、クオーツムーブメントに出力させるものである。
【0033】
整流回路20は、ブリッジ式であり、4個のダイオードを備え、入力側には、対向電極2と帯電膜3がそれぞれ接続されている。出力側には平滑回路を介して、所定電圧に変換する図示しない電源回路が接続されており、この直流変換された発電電流は、クオーツムーブメントに電力として供給されるとともに、2次電池22に蓄電される。本実施形態における帯電膜および対向電極は放射状にパターニングされていたが、対向基板1、回転部材4に対して相対回動したときに、重なり面積が増減するのであれば、他の形状にパターニングされていても良い。
【0034】
その他のパターンの一例として、
図4の下部に示すパターンとは異なり、
図5の下部に示すように対向基板1上の対向電極2の放射部2’を、それぞれ独立させ、とびとびに接続配線した放射部2’を、2端子としてそれぞれ整流回路20の入力側に接続させてもよい。
図5の上部の帯電膜3のパターンは、
図4の上部の場合と同じであるが、出力端子が不要となっている。(特許文献5の
図9、10の実施例の原理説明を参照。特許文献5を引用補充する。)この場合には、静止する対向基板1上の対向電極2のみから電流を取り出せばよいので、回転する回転部材の電気的接続が不要になって便利である。
【0035】
ここで、
図5の下部に示す対向基板1上の対向電極2の放射部2’のパターンと、
図5の上部に示す帯電膜3のパターンを、以下、「第2パターン」と称す。なお、第1、2パターンにおいて、放射部3’、3’相互間はブランクでなく、透過性の部材で構成しても良い。本発明の本実施形態及び後述する実施形態では、
図4の「第1パターン」であっても、
図5の「第2パターン」であっても、いずれも実施可能である。
【0036】
本実施形態では、風防24からの回転表示体29の回転によって、帯電膜(エレクトレット膜)回転状態を視認するようにすることできる。対向基板1、回転部材4は、遮光部材として機能する文字板25などによって完全に遮光されており、遮光部材より下は外光からの光は入射されない。また、回転部材4の回転軸8の上端部は文字板25から出ており、この軸に回転表示体29を接続し、回転部材の回転状態が視認できるようにしている。このため、帯電膜の光による特性劣化を防止するとともに、外光の内部への入射により、クオーツムーブメントの回路基板上のICなどの消費電流を大きくさせたりICの誤動作を招くことも、防止することができる。回転部材4の回転する様子は、回転表示体29の回転によって、風防24を通して視覚的に明確に確認できるため、ユーザーが容易に発電状態を認識することが出来る。
【0037】
回転軸8、回転部材4、対向電極2を時計に組み込む際は、位置合わせが必要であり、特に帯電膜3と対向電極2とのギャップは発電特性にかかわるため微調整が必要となる。したがって、前記のように第1パターンにおいては、回転部材4の放射部3’、3’相互間と、対向基板1の放射部2’、2’相互間に位置する部位を、ブランクかあるいは透明部材で構成することで、相互の位置と状態を確認しながらの調整が可能となり、調整工程を簡易化できる利点も生じる。
【0038】
以上述べたように、本実施形態において、風防24から見える回転表示体29の回転状況によって、回転部材4の回転する様子が視覚的に明確に確認できるため、ユーザーが容易に発電状態を認識することが出来る。また、風防24とハウジング(地板33)間に文字板25が配置されており、回転部材4の回転軸8が文字板25を貫いて、回転軸8の軸端部(上端部)に回転表示体29を設けることによって、帯電膜3(エレクトレット膜)を外光から完全に遮蔽することができる。これによって、帯電膜の光による特性劣化を防止するとともに、外光の内部への入射により、クオーツムーブメントの回路基板上のICなどの消費電流を大きくさせたりICの誤動作を招くことも、防止することができる。
【0039】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態のA−A線(
図7)に関する模式的断面図である。
図9は、本発明の第2実施形態において、回転表示体の取付けを説明するための平面図及び側面図である。
【0040】
本発明の第2実施形態は、
図6の第1実施形態において、回転軸8を支承する下側の軸受50に使用されていたバネ7を、上側の軸受55に使用した実施形態である。回転部材4に固定された回転軸8は、地板33と受け板34間で支承され、文字板25、地板33、歯車14、回転部材4、対向基板1、受け板34の順序で配置されている。回転軸8の風防側の軸端部に回転表示体29が設けられ、バネ7は、回転軸8の肩部18と軸受55との間に介在して設置されている。バネ7により、回転軸8は、常時受け板側に付勢されている。なお、バネ7は、針座などに良くつかわれる板バネである。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0041】
図9に示すように、回転表示体29は、本実施形態では円盤部であり、下面に回転軸8の上端部に取り付けるための筒29’が固着されている。回転表示体29は指針であっても良い。この取り付け工程(針付けともいう)においては、地板33内の全てのパーツを組み付けて受け板34で各軸を固定し、時計ムーブメントとして形成した後、回転表示体29の筒29’を、文字板25から飛び出している回転軸8の上端部に、押し込んで嵌めこむ。
【0042】
回転部材4の下面の帯電膜3と、対向基板1の上面の対向電極2とのギャップは、極めて微小に精度よく設定されている。回転軸8に回転表示体29を取り付けるとき、回転部材4の回転軸8に強い力がかかり、回転部材4と対向基板1が接触したりするようなことがあってはならない。接触すると、帯電量が低下し、発電量が低下する。回転表示体29を取り付ける工程はムーブメントを組み立てた後なので、帯電膜3と対向電極2との接触は製品としてダメージを与えることがあるので、接触は極力避ける必要がある。本実施形態では、バネ7が、回転軸8を軸受50の方向に押圧しており、回転軸8の下端部は、軸受50で位置決め規制されて軸方向には動かない。したがって、筒29’を回転軸8の上端部に押し込む時の押し込み力が、回転軸8に作用しても、回転軸8の下端部と軸受50には隙間が存在していないので、回転軸8軸方向に移動することなく、帯電膜3と対向電極2とのギャップを、針付け時に一定に保つことができる。すなわち、回転表示体29を回転軸8の上端部に取り付けるときに、回転部材4の回転軸8が、バネ7によって、時計の裏蓋側の軸受50で既に移動規制されており、回転部材4の下面の帯電膜3と、対向基板1の上面の対向電極2とが接触するようなことがない。
【0043】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、風防24から見える回転表示体29の回転状況によって、回転部材4の回転する様子が視覚的に明確に確認できるため、ユーザーが容易に発電状態を認識することが出来る。また、風防24とハウジング(地板33)間に文字板25が配置されており、回転部材4の回転軸8が文字板25を貫いて、回転軸8の軸端部(上端部)に回転表示体29を設けることによって、帯電膜3(エレクトレット膜)を外光から完全に遮蔽することができる。これによって、帯電膜の光による特性劣化を防止するとともに、外光の内部への入射により、クオーツムーブメントの回路基板上のICなどの消費電流を大きくさせたりICの誤動作を招くことも、防止することができる。
【0044】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態のB−B線(
図11)に関する模式的断面図である。
図11は、本発明の第3実施形態の内部構造を示す概要である。
【0045】
本発明の第3実施形態は、回転表示体29が、第1実施形態の回転軸8ではなくて、回転伝動軸8’に取り付けられた実施形態である。回転軸8の回転部材4の上側において歯車14が回転軸8に固定されている。第1実施形態と同じように、軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構として、軸9に固定された歯車15と、回転軸8に固定された歯車14とが設けられている。歯車15に歯車17が噛合うように、回転伝動軸8’には歯車17が固定されている。歯車17は必ずしも1つの歯車を意味しない。歯車伝動機構から複数の歯車を介在させて、回転伝動軸8’に回転を伝えるようにしても良い。回転部材4の回転数と回転表示体29の回転数の比率を適宜設定して、視認する上で適切な回転スピードに設定することもできる。また、回転軸8から、歯車伝動機構を経由せず、直接回転伝動軸8’に伝動しても良い。回転軸8から回転伝動軸8’への伝動は、軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構を利用する方が、歯車個数の節約になる。以上のようにして、本実施形態では、
図11にみられるように、軸8の位置に対して、軸8’の位置を、文字板25や内部レイアウトZにおけるスペース上好ましい位置に設定することができる。その他の構成は第1、2実施形態と同様である。
【0046】
本実施形態によれば、第1、2実施形態と異なり、回転表示体29は、回転伝動軸8’の上端部に取り付けるので、回転部材4の回転軸8が軸方向に移動することなく、回転部材4の下面の帯電膜3と、対向基板1の上面の対向電極2との接触が防止される。さらに、第1、2実施形態と同様に、風防24から、回転表示体29の回転状況が視認でき、回転伝動軸8’が文字板25を貫いて、回転伝動軸8’の軸端部(上端部)に回転表示体29を設けることによって、帯電膜3(エレクトレット膜)を外光から完全に遮蔽した上で、回転部材4の回転を回転表示体29に伝達して発電状態を視認することができる。
【0047】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態を示す模式的断面図である。
【0048】
本発明の第4実施形態は、対向基板1が、第1〜3実施形態の受け板34側に取り付けられる代わりに、文字板25の側の地板33に取り付けられている。したがって、文字板25、地板34、地板34に固定された対向基板1、回転部材4、受け板34の順序で配置されている。回転軸8の肩部18は、軸受55で位置決め規制されるように、軸受50側に設けられたバネ7で、回転軸8を上方に押圧している。これによって、回転部材4の上面の帯電膜3と、対向基板1の下面の対向電極2とのギャップが精度よく設定されることになる。さらに、回転表示体29の筒29’を、文字板25から飛び出している回転軸8の上端部に、押し込んで嵌めこむときに、回転部材4の回転軸8が、下方に(受け板側、裏蓋側)に移動する。このとき、回転部材4の下面の帯電膜3と、対向基板1の上面の対向電極2は、ギャップが拡がる方に移動するので、回転部材4と対向基板1が接触して帯電量が低下したりして、製品としてダメージを与えることはない。本実施形態では、第2実施形態と同様に、回転表示体29を回転軸8の上端部に取り付けるときに、回転部材4の上面の帯電膜3と、対向基板1の下面の対向電極2との接触が防止される。その他の構成及び効果は第1、2実施形態と同様である。
【0049】
(第5実施形態)
図13は、本発明の第4実施形態を示す模式的断面図である。
図14は、
図13のC部の拡大断面図である。
【0050】
本発明の第5実施形態は、第1実施形態とは、回転表示体29の回転軸8への取付け構造が相違している。回転表示体29を取り付けるときに、回転部材4の上面の帯電膜3と、対向基板1の下面の対向電極2との接触を防止することを目的としている。
図14を参照して、マグネットカップリングを利用した回転表示体29の取付け構造を以下説明する。
図9と同様に、回転表示体29は、本実施形態では円盤部であり、下面に軸11の上端部に取り付けるための筒29’(図示せず)が固着されている。回転表示体29は指針であっても良い。回転表示体29は、ムーブメント組み付け完成後に、回転表示体29の筒29’を、文字板25から飛び出している軸11の上端部に、押し込んで嵌めこむ。
【0051】
地板33は、上側磁石保持用板部材37と軸受保持用の地板部分33’から構成されている。回転軸8は、軸受保持用の地板部分33’の軸受50と受け板34の軸受50で支承されている。軸11の下部には円盤状の上部マグネット盤31が固定されており、上部マグネット盤31の下面には有底穴39が設けられている。この有底穴39は、上側磁石保持用板部材37の凸部38に遊嵌(緩く嵌合)して載置されている。上部マグネット盤31は、凸部38及び有底穴39を軸心にして回転可能に構成されている。一方、地板33を隔てて、回転軸8の上端部には、下部マグネット盤32が固着されており、上部マグネット盤31と上部マグネット盤31はマグネットカップリングを構成する。マグネットの着磁の状態は、NS左右に分割した2極であっても多極であっても良い。回転軸8が回転すると、下部マグネット盤32が回転し、上部マグネット盤31が、地板33を隔てて連れ回りする。これによって、風防24から見える回転表示体29の回転状況によって、回転部材4の回転する様子が視覚的に明確に確認できる。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0052】
本実施形態によれば、回転表示体29の筒29’を、文字板25から飛び出している軸11の上端部に、押し込んで嵌めこむ場合に、押し込み力は、マグネットカップリングが介在しているので、回転軸8に伝わらない。回転表示体29を取り付けるときに、回転部材4の回転軸8が、時計の裏蓋側に移動することがなく、下面の帯電膜3と、対向基板1の上面の対向電極2との接触が防止される。さらに、第1実施形態と同様に、風防24から、回転表示体29の回転状況が視認でき、地板33を隔てて回転表示体29を設けることによって、帯電膜3(エレクトレット膜)を外光から完全に遮蔽した上で、回転部材4の回転を回転表示体29に伝達して発電状態を視認することができる。
【0053】
(第6実施形態)
図15は、本発明の第6実施形態を示す模式的断面図である。
【0054】
本実施形態は、回転軸8に半円形の回転錘10’と回転部材4を固定して、回転軸8と地板34との間にヒゲゼンマイ12(時計用語、渦巻きバネ)を設置して、回転錘10’の振動でヒゲゼンマイ12撓ませて、回転部材4の回転振幅を大きくさせて、発電効率を向上させたものである。回転錘と一体化した回転部材4としても良い。本実施形態においても、風防24と地板33間に文字板25が配置されており、回転部材4の回転軸8が文字板25を貫いて、回転軸8の軸端部(上端部)に回転表示体29を設けることによって、帯電膜3(エレクトレット膜)を外光から完全に遮蔽した上で、回転部材4の回転を回転表示体29に伝達して発電状態を視認することができる。
【0055】
回転部材4の下面には帯電膜3が配置されている。一方、帯電膜3に対向するように、対向基板1の上の対向電極2が配置されて、対向基板1が受け板34に載置固定されている。回転部材4が回転すると、静電誘導発電が引き起こされ、帯電膜3と対向電極2間で発生した電力をクオーツムーブメントに出力する。回転軸8は、地板33の軸受55、受け板34に設けられた軸受50(パラショックなどの耐震装置でも良い)で軸支されている。ヒゲゼンマイ12は、一端が、地板33から突き出したブラケット36に設置したヒゲ持ち13で固定され、ヒゲゼンマイ12の他端が、回転軸8にヒゲ玉12’によって圧入や加締めで固定されている。回転軸8には肩部18があり、軸受50側に設けられたバネ7で、回転軸8は上方に押圧されつつ、肩部18が軸受55で位置決め規制されている。従って
図6と同様の理由で、回転部材4の下面の帯電膜3と、対向基板1の上面の対向電極2とのギャップが精度よく設定されることになる。
図8の第2実施形態のように、バネ7を、回転軸8の肩部18と軸受55との間に介在して設置し、回転軸8は、常時受け板側に付勢されるようにしても良い。
【0056】
回路基板5も、受け板34上に設置されている。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
図15では、回転部材4の下面に帯電膜3が設置され、対向基板1の上面に対向電極2が設置されているが、もちろん帯電膜3と対向電極2がこの逆に配置された場合もこの実施形態に含まれる。本実施形態においても、回転部材4の回転する様子が回転表示体29を通して視覚的に確認できるため、ユーザーが発電状態を確認することが出来る。
図15の実施形態では、回転軸8に直接回転錘10’を取り付けたが、第1実施形態の回転錘10と歯車14、15のようにして、回転軸8を回転させても良い。既に第1実施形態で述べたが、ヒゲゼンマイ12、ブラケット36がない場合であっても、本発明の実施形態として含まれる。
【0057】
(第7実施形態)
図16は、本発明の第7実施形態を示す模式的断面図である。
【0058】
本実施形態は、第6実施形態と同様に、ヒゲゼンマイ12を撓ませて、回転部材4の回転振幅をより継続的にして、発電効率を向上させたものである。第7実施形態では、ヒゲゼンマイ12の両端の取付け位置と、ベアリング116に注目して説明する。
【0059】
本実施形態においても、回転軸8には、回転部材4が固定されており、回転部材4の下面には帯電膜3が配置されている。一方、帯電膜3に対向するように、対向基板1の上の対向電極2が配置されて、対向基板1が受け板34に載置固定されている。回路基板5も、受け板34上に設置されている。
図16では、回転部材4の下面に帯電膜3が設置され、対向基板1の上面に対向電極2が設置されているが、もちろん帯電膜3と対向電極2がこの逆に配置された場合もこの実施形態に含まれる。回転部材4が回転すると、静電誘導発電が引き起こされ、帯電膜3と対向電極2間で発生した電力をクオーツムーブメントに出力する。回転軸8は、地板33の軸受55、受け板34に設けられた軸受50(パラショックなどの耐震装置でも良い)で軸支されている。回転軸8には肩部18があり、軸受50側に設けられたバネ7で、回転軸8は上方に押圧されつつ、肩部18が軸受55で位置決め規制されている。従って
図6と同様な理由で、回転部材4の下面の帯電膜3と、対向基板1の上面の対向電極2とのギャップが精度よく設定されることになる。
図8の第2実施形態のように、バネ7を、回転軸8の肩部18と軸受55との間に介在して設置し、回転軸8は、常時受け板側に付勢されるようにしても良い。
【0060】
回転部材4の回転軸8の上端部は、文字板25を貫いて、回転軸8の上端部に回転表示体29を設けられている。帯電膜3(エレクトレット膜)を外光から完全に遮蔽した上で、回転部材4の回転を回転表示体29に伝達して発電状態を視認することができるようにしている。
【0061】
回転錘10は腕の動きなどを捉えて回転する。回転軸8の回転部材4の上側において歯車14がベアリング116を介して回転軸8に接続されている。軸9に固定された回転錘10から回転軸8への歯車伝動機構として、軸9に固定された歯車15と、回転軸8に固定された歯車14とが設けられている。この場合、回転錘10の回転が増速されて回転軸8を回転させると、回転部材4に設置された帯電膜3を、対向基板1に静止した対向電極2に対して、増速回転させることができる。
【0062】
これまでの実施形態では、歯車14は回転軸8に固定されていたが、本実施形態では、歯車14と回転軸8との間には、ベアリング116が設けられている。ヒゲゼンマイ12の一端はヒゲ持ち13で歯車14に固定され、ヒゲゼンマイ12の他端が、回転軸8にヒゲ玉12’によって圧入や加締めで固定されている。歯車14の上面には、ヒゲゼンマイ12の外周を囲むように、円筒部材19が一体的に設置されている。円筒部材19は、ヒゲゼンマイ12が振動で巻き広がる時に規制する壁である。
回転錘10が回転すると、歯車15を介して歯車14が回転し、歯車14に設置したヒゲ持ち13も回るため、ヒゲゼンマイ12は撓む。この時、ベアリング116が介在することで、歯車14の回転動作に影響されずに回転軸8を保持できるため、回転軸8はゼンマイの撓みに応じて回転することになる。これにより、回転モーメントの異なる回転部材4と回転錘10とが、ヒゲゼンマイ12を介して繋がる事から、いわば連成振動のごとく動作し、回転部材4の回転運動を長く続けることが可能になる(これを以下連成振動型という)。従って、回転錘10の振動でヒゲゼンマイ12撓ませて、回転部材4の回転振幅を大きくかつ継続的に振動させて、発電効率を向上させることができる。
【0063】
本実施形態においても、風防24と地板33間に文字板25が配置されており、回転部材4の回転軸8が文字板25を貫いて、回転軸8の軸端部(上端部)に回転表示体29を設けることによって、帯電膜3(エレクトレット膜)を外光から完全に遮蔽した上で、回転部材4の回転を回転表示体29に伝達して発電状態を視認することができる。
【0064】
本実施形態の変形例としては、回転錘10にボス穴を設けて、回転軸8をボス穴に挿入し、回転錘10と回転軸8とを相互に回転できるようにする。一方、回転錘10は地板33にベアリングを介して回転可能に支持する。ヒゲゼンマイ12の一端をヒゲ持ち13で回転錘10に固定し、ヒゲゼンマイ12の他端が、回転軸8にヒゲ玉12’によって圧入や加締めで固定しても、同様の連成振動型の実施形態を実現することができる。
【0065】
(第8実施形態)
図17は、本発明の第8実施形態を示す模式的断面図である。
【0066】
第10実施形態は、回転部材4と回転錘10とを一体化し、回転錘10の回転軸である軸9の円周方向に、帯電膜3と対向電極2をリング状に向かい合うよう配置している。ここで、帯電膜3と対向電極2とは略直方形であり、外部ケーシンク41の外周方向に、略直方形のブランクと交互に配されている。帯電膜3と対向電極2とは同じサイズであることが発電効率において望ましいが、発電電力との兼ね合いで、その一方が他方よりも大きくしてもかまわない。
回転表示体29が、回転伝動軸8’に取り付けられている。回転錘10(回転部材)の回転を、軸9に固定した歯車15から歯車17に歯車伝動して、歯車17の回転を、第3実施形態と同様に、視認できるようにした実施形態である。帯電膜3と対向電極2を、回転錘10の側方外周円筒面と外部ケーシンク41の側方内周円筒面との間に設けることもできる。回転錘10は半円形であっても、全円形にして付加錘をつけても良い。
対向電極2は、外部ケーシンク41の側方内周円筒面の全周にわたって、ブランクと交互に設けられる。これに対して帯電膜3は、回転錘10の側方外周円筒面にブランクと交互に設けられるため、回転錘10が半円形であるよりも全円形のほうが、帯電膜3の総面積が広くできるため発電量が多くなり望ましい。その一方で、回転錘10が半円形である場合は、回転しやすくなるため発電の機会が増える。従って回転錘10を半円形と全円形のどちらにするかは、都度、条件によって選択してよい。
【0067】
本実施形態では、いわば回転錘10が回転部材4を兼ねており、回転錘10の側方内周円筒面に回転部材(基板)4が設けられており、そこに帯電膜3が設置されている。また、地板33の側方外周円筒面には対向基板1が設けられており、対向電極2が設置されている。回転錘10が回転すると、静電誘導発電が引き起こされ、帯電膜3と対向電極2間で発生した電力を、接続コネクタ(図示せず)、導通バネ、接続端子などを介して、クオーツムーブメント(回路基板5)に出力する。
図17では、回転部材4に帯電膜3が設置され、対向基板1に対向電極2が設置されているが、もちろん帯電膜3と対向電極2がこの逆に配置された場合もこの実施形態に含まれる。
【0068】
回転伝動軸8’には1つの歯車17が固定されているが、歯車17は必ずしも1つの歯車を意味しない。歯車伝動機構から複数の歯車を介在させて、回転伝動軸8’に回転を伝えるようにしても良い。本実施形態では、軸8の位置に対して、軸8’の位置を、文字板25や内部レイアウトZにおけるスペース上好ましい位置に設定することができる。その他の構成は第3実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態によれば、帯電膜3と対向電極2を、回転錘10の側方外周円筒面と外部ケーシンク41の側方内周円筒面との間に設けるので、回転表示体29を回転伝動軸8’の上端部に取り付けるときに、帯電膜3と、対向電極2との接触が防止される。さらに、他の実施形態と同様に、風防24から、回転表示体29の回転状況が視認でき、回転伝動軸8’が文字板25を貫いて、回転伝動軸8’の軸端部(上端部)に回転表示体29を設けることによって、帯電膜3(エレクトレット膜)を外光から完全に遮蔽した上で、回転部材4の回転を回転表示体29に伝達して発電状態を視認することができる。
【0070】
第8実施形態を除く上記各実施形態において、対向基板1は、クオーツムーブメントの回路基板5と同一基板上に形成すると、基板の共用化が可能であり、時計の薄型化に利するものである。発電効率上、整流回路は、対向基板1上に配置されたほうが効率的であり、その後の電源・降圧回路も同様に対向基板1上に配置されたほうが効率的である。
また、本発明を、文字板25を省略して、地板33をスケルトン時計のように、ごく必要な部分のみ残して骨格化形成したり、ハウジングを透明材にしたりして、回転部材4の回転が直接風防から視認できるように構成しても良く、これも本実施形態に含まれる。
【0071】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的構成はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。