特許第6494312号(P6494312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494312
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20190325BHJP
   F23N 5/02 20060101ALI20190325BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   F24C1/00 360G
   F24C1/00 370N
   F24C1/00 370B
   F23N5/02 344A
   F23N5/24 106A
   F23N5/24 104
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-23160(P2015-23160)
(22)【出願日】2015年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-145689(P2016-145689A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】林 周作
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−017788(JP,A)
【文献】 特開2010−145060(JP,A)
【文献】 特開2002−303425(JP,A)
【文献】 特開平07−190349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
F23N 5/02
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する加熱庫と、同一方向へ並設された複数の炎孔からガスを放出して燃焼させ、熱気を生成するバーナと、バーナを配する燃焼室と、前記熱気を燃焼室内から導出させ、加熱庫内へ送り込む循環ファンとを備え、循環ファンによって本体外部の空気を給気口から燃焼室内に取り込み、バーナの各炎孔の周辺へ導くように構成された加熱調理器であって、
前記炎孔の並設方向に向かい合う両燃焼室側壁とバーナとの間に、所定の間隙が設けられ、
燃焼室内の熱気導出経路におけるバーナの炎孔形成部との対向領域よりも両燃焼室側壁側に、二つの温度センサが炎孔の並設方向へ離間して設けられ、
前記温度センサ相互の検知温度差が基準値より大きい状態が所定時間以上続いた場合は、バーナが異常燃焼状態であると判定する構成とした、加熱調理器。
【請求項2】
被加熱物を収容する加熱庫と、同一方向へ並設された複数の炎孔からガスを放出して燃焼させ、熱気を生成するバーナと、バーナを配する燃焼室と、前記熱気を燃焼室内から導出させ、加熱庫内へ送り込む循環ファンとを備え、循環ファンによって本体外部の空気を給気口から燃焼室内に取り込み、バーナの各炎孔の周辺へ導くように構成された加熱調理器であって、
燃焼室内の熱気導出経路に、二つの温度センサが炎孔の並設方向へ離間して設けられ、
前記温度センサ相互の検知温度差が基準値より大きい状態が所定時間以上続いた場合は、バーナが異常燃焼状態であると判定し
前記異常燃焼状態であると判定された異常判定回数が所定回数未満である場合は、加熱調理運転を許容しつつ、バーナの異常燃焼を報知手段から報知させ、
前記異常判定回数が所定回数以上である場合は、加熱調理運転を禁止すると共に、バーナの異常燃焼を報知手段から報知させる構成とした、加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器において、
バーナが異常燃焼状態であると判定された後、前記検知温度差が基準値より大きい状態が所定時間未満になった場合は、バーナが正常燃焼状態になったと判定して、異常判定回数の記録を消去する構成とした、加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の加熱調理器において、
少なくとも何れか一方の温度センサの検知温度が所定の上限値に達した場合は、バーナが異常燃焼状態であると判定する構成とした、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器、特に、バーナから放出された熱気を加熱庫内に送り込んで被加熱物の加熱調理を行う加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体内部に設けられる加熱庫下部の空間にバーナを配し、バーナから放出された熱気を循環ファンによって加熱庫内へ送り込むことで、食材等の被加熱物のオーブン加熱調理を行う所謂熱気循環式の加熱調理器が知られている。この種の加熱調理器では、本体内部の限られた空間内にて加熱庫の容積をできる限り大きくすべく、加熱庫周辺の構造の小型化が図られている。具体的には、加熱庫と本体ケースとの対向する底壁相互の比較的狭い間隙に燃焼室を設けると共に、上記燃焼室内に、同一方向へ並設される複数の炎孔を有するバーナを配し、バーナから放出された熱気を循環ファンによって燃焼室内から加熱庫内へ送り込むように構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−213649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の加熱調理器では、バーナの燃焼用の二次空気を、本体外部から本体ケースの前面に設けられた給気口を通じて燃焼室内へ取り込み、バーナの各炎孔の周辺へ導くように構成されているため、埃などによって給気口が閉塞され、炎孔周辺への外部空気の流れが悪くなると、不完全燃焼や燃焼炎のリフト現象などバーナの異常燃焼を引き起こす場合がある。そこで、このような異常燃焼を検出するため、燃焼室内の熱気導出経路の所定位置に温度センサを配し、温度センサの検知温度が正常燃焼時の基準温度より高くなれば、バーナが異常燃焼状態であると判定する方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、給気口の一部が閉塞された場合、燃焼室内の一部領域への外部空気の流れが悪くなり、炎孔の並設方向における一方側と他方側とで空気の流れに偏りが生じる。そのため、上述のように熱気導出経路の特定の位置の温度に基づいてバーナの異常燃焼を判定するように構成されたものとしても、的確に異常燃焼を検出できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、バーナから放出された熱気を加熱庫内に送り込んで被加熱物の加熱調理を行う加熱調理器において、バーナの異常燃焼の検知精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被加熱物を収容する加熱庫と、同一方向へ並設された複数の炎孔からガスを放出して燃焼させ、熱気を生成するバーナと、バーナを配する燃焼室と、前記熱気を燃焼室内から導出させ、加熱庫内へ送り込む循環ファンとを備え、循環ファンによって本体外部の空気を給気口から燃焼室内に取り込み、バーナの各炎孔の周辺へ導くように構成された加熱調理器であって、前記炎孔の並設方向に向かい合う両燃焼室側壁とバーナとの間に、所定の間隙が設けられ、燃焼室内の熱気導出経路におけるバーナの炎孔形成部との対向領域よりも両燃焼室側壁側に、二つの温度センサが炎孔の並設方向へ離間して設けられ、前記温度センサ相互の検知温度差が基準値より大きい状態が所定時間以上続いた場合は、バーナが異常燃焼状態であると判定する構成としたものである。
【0008】
給気口から燃焼室内全体へ均一に外部空気が取り込まれている場合、熱気導出経路への外部空気の流れは、炎孔の並設方向の一方側と他方側とで殆ど差を生じない。よって、二つの温度センサの配設部周辺にも均等に外部空気が流れる。しかしながら、給気口の閉塞度合が大きくなって、燃焼室内の一部領域への外部空気の流れが悪くなると、一方の温度センサに対する空気の流れも正常時より少なくなるため、その一方の温度センサ周辺の温度と他方の温度センサ周辺の温度との間で温度偏重が生じる。そこで、本発明では、二つの温度センサの検知温度差が基準値より大きい状態が所定時間以上続けば、バーナが異常燃焼状態であると判定する。これにより、給気口の閉塞条件が異なっても的確にバーナの異常燃焼を検出できる。
【0009】
また、本発明は、被加熱物を収容する加熱庫と、同一方向へ並設された複数の炎孔からガスを放出して燃焼させ、熱気を生成するバーナと、バーナを配する燃焼室と、前記熱気を燃焼室内から導出させ、加熱庫内へ送り込む循環ファンとを備え、循環ファンによって本体外部の空気を給気口から燃焼室内に取り込み、バーナの各炎孔の周辺へ導くように構成された加熱調理器であって、燃焼室内の熱気導出経路に、二つの温度センサが炎孔の並設方向へ離間して設けられ、前記温度センサ相互の検知温度差が基準値より大きい状態が所定時間以上続いた場合は、バーナが異常燃焼状態であると判定し、前記異常燃焼状態であると判定された異常判定回数が所定回数未満である場合は、加熱調理運転を許容しつつ、バーナの異常燃焼を報知手段から報知させ、前記異常判定回数が所定回数以上である場合は、加熱調理運転を禁止すると共に、バーナの異常燃焼を報知手段から報知させる構成としたものである。
【0010】
身体や衣服などによって給気口が塞がれた場合など、給気口が閉塞されても、容易に閉塞が解消され、元の正常状態に復帰する場合がある。そこで、本発明では、バーナが異常燃焼状態であると判定されても、その異常判定回数が所定回数未満である間は、加熱調理運転を禁止しないで、バーナに異常燃焼が生じている旨の報知のみ行う。これにより、異常燃焼の原因が容易に解消可能なものであるにもかかわらず、即時に使用が制限されてしまうといった問題が生じない。
【0011】
一方で、異常判定回数が所定回数以上であれば、異常燃焼の原因が炎孔の詰まりやガスバルブの動作不良など、使用者で対処不可能なことによるものである可能性があるため、この場合は、加熱調理運転を禁止した上で、バーナに異常燃焼が生じている旨の報知を行う。これにより、機器に不具合が存する状態で使用し続けられるといった問題も生じない。
【0012】
また、本発明は、上記加熱調理器において、バーナが異常燃焼状態であると判定された後、前記検知温度差が基準値より大きい状態が所定時間未満になった場合は、バーナが正常燃焼状態になったと判定して、異常判定回数の記録を消去する構成としたものである。
【0013】
このものでは、バーナが異常燃焼状態であると判定されても、異常燃焼の原因が解消され、上記検知温度差の大きい状態が所定時間以上続かなくなれば、異常判定回数の記録を消去するから、異常燃焼の原因が容易に解消可能なものであるにもかかわらず、長期使用している間に、突然使用が制限されてしまうといった問題が生じない。
【0014】
また、本発明は、上記加熱調理器において、少なくとも何れか一方の温度センサの検知温度が所定の上限値に達した場合は、バーナが異常燃焼状態であると判定する構成としたものである。
【0015】
バーナへ供給されるガス圧の上昇や一次空気量の低下、燃焼室からの排気不良などによってバーナの異常燃焼が生じると、燃焼炎の形成位置や向き、範囲が不安定になり、温度センサの配設部周辺が高温になる場合がある。そこで、本発明では、二つの温度センサの検知温度差が基準値以下であっても、何れか一方の検知温度が所定の上限値に達すれば、バーナが異常燃焼状態であると判定する。これにより、より確実にバーナの異常燃焼を検出できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、給気口の閉塞条件が異なっても的確にバーナの異常燃焼を検出可能な、検知精度の高い加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の概略斜視縦断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の燃焼室周辺の概略斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の燃焼室周辺の概略上方視横断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の燃焼室周辺の概略後方視縦断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の概略構成図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の異常燃焼判定動作を示す作動フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、上記した本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る加熱調理器1は、オーブン機能を有するガスコンロであって、本体ケース11の内部に、食材等の被加熱物を収容する加熱庫10が設けられている。また、本体ケース11の前面部111には、加熱庫10の前面開口部100を被閉する前扉12が設けられている。さらに、前扉12の後方で且つ本体ケース11の前面部111の下端寄りの位置には、本体外部の空気を燃焼室20内へ取り込むための給気口112が複数開設されている。尚、本明細書では、本体ケース11の前面部111を加熱調理器1の正面とし、加熱調理器1を正面側から見たときの本体ケース11の奥行き方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0019】
本体ケース11内における加熱庫10の下方の空間、即ち、加熱庫10と本体ケース11との対向する底壁相互の間隙には、バーナ13を収容する燃焼室20が設けられている。また、本体ケース11内における加熱庫10の後方の空間には、バーナ13から燃焼室20内へ放出されたガスの燃焼熱(熱気)を循環ファン14の吸込口141へ導く熱気通路30が設けられている。さらに、本体ケース11内における加熱庫10の上方後部には、加熱庫10内の空気を本体ケース11の外部へ導く排気通路31が設けられている。
【0020】
加熱庫10は、上面を構成する上壁10Aと、底面を構成する底壁10Bと、左側面を構成する左側壁10Cと、右側面を構成する右側壁(図示せず)と、後面を構成する奥壁10Eとによって、前方へ開放する略矩形箱状に形成されている。
【0021】
加熱庫10の上壁10Aの後方寄りの位置には、排気通路31に繋がる排気口101が開設されており、被加熱物から発生した油煙や臭気成分は、排気口101から排気通路31を通って本体ケース11の外部へ排出される。
【0022】
加熱庫10の奥壁10Eの中央より左右の側方寄りの位置には、循環ファン14の図示しない吹出口に繋がる熱気導出孔102が開設されている。また、加熱庫10の奥壁10Eの中央位置には、熱気通路30に繋がる熱気導入孔103が開設されている。従って、循環ファン14を作動させると、バーナ13から燃焼室20内に放出された熱気が熱気通路30を通って吸込口141へ吸い込まれた後、熱気導出孔102から加熱庫10内へ送り込まれる。また、加熱庫10内へ送り込まれた熱気の一部は、熱気導入孔103から熱気通路30を通って吸込口141へ吸い込まれ、再び熱気導出孔102から加熱庫10内へ送り込まれる。
【0023】
図2に示すように、燃焼室20は、上面を構成する上壁20Aと、底面を構成する底壁20Bと、左側面を構成する左側壁20Cと、右側面を構成する右側壁20Dと、後面を構成する奥壁20Eとによって、前方へ開放する略矩形箱状に形成されており、バーナ13は、燃焼室20内における前後方向の略中央位置に組み込まれている。また、給気口112は、燃焼室20の前面開口部21の前方に設けられており、循環ファン14を作動させることで、本体外部の空気(外部空気)がバーナ13の燃焼用の二次空気として給気口112から燃焼室20内へ取り込まれる。
【0024】
燃焼室20の上壁20Aの中央後方寄りの位置には、燃焼室20と熱気通路30とを繋ぐ連通口22が開設されており、バーナ13から燃焼室20内へ放出された熱気は、連通口22を通って熱気通路30へ導かれる。
【0025】
バーナ13は、プレス加工された一枚の板材を折り曲げて形成した管体であり、図1に示すように、燃焼室20の上壁20Aと底壁20Bとの間に所定の間隙を存して配設されている。従って、給気口112から燃焼室20内に取り込まれた外部空気は、バーナ13の上下の間隙を通り、バーナ13の後端面に形成された炎孔130の周辺へ導かれる。
【0026】
図2および図3に示すように、バーナ13は、左右に長い上方視略矩形状に形成されており、その後端面には、複数の炎孔130が左右方向へ所定の間隔を存して並設されている。また、バーナ13の一方の側端(ここでは、右側端)には、ガス供給口131が設けられている。尚、図示しないが、ガス供給口131の外側には、ガス噴出ノズルが対峙して設けられており、ガス噴出ノズルから噴出されたガスは、ガス供給口131周辺の空気と共に、バーナ13の内部へ送り込まれ、各炎孔130から後方へ向けて面状に噴出される。
【0027】
バーナ13の上面および下面にはそれぞれ、対向する燃焼室20の上壁20Aまたは底壁20Bに対して一定幅の間隙を存して、横長板状の整流板132が設けられている。従って、給気口112から燃焼室20内に取り込まれた外部空気は、バーナ13の上下の間隙を通過する際、バーナ13の左右間において一定の流量で炎孔130の周辺へ供給される。よって、バーナ13を点火すれば、炎孔130の後方に安定した燃焼炎が形成される。
【0028】
燃焼室20の左側壁20Cにおけるバーナ13の配設部より後方で且つ炎孔130の近傍位置には、炎孔130の後方における燃焼炎の有無を検知する炎検知センサ15が設けられている。一方、燃焼室20の右側壁20Dにおけるバーナ13の配設部より後方で且つ炎孔130の近傍位置には、炎孔130の周辺で火花放電する点火プラグ16が設けられており、バーナ13の点火操作がなされ、図示しないイグナイタから所定電圧が印加されると、特定の炎孔130の周辺で火花放電させ、炎孔130から放出されたガスを着火させる。
【0029】
また、左側壁20Cにおけるバーナ13の配設部より後方で且つ炎検知センサ15より後方位置、および、右側壁20Dにおけるバーナ13の配設部より後方で且つ点火プラグ16より後方位置には、バーナ13の燃焼状態を検知するための温度センサ171,172が各別に設けられている。即ち、炎孔130の形成部から連通口22に至る熱気導出経路200の略中間位置に、二つの温度センサ171,172が炎孔130の並設方向(左右方向)と同一方向へ離間して設けられている。
【0030】
側壁20C,20Dの内側で且つ炎検知センサ15および点火プラグ16の配設部より後方位置には、バーナ13から放出された熱気を連通口22へ導くための導風板23が、側壁20C,20Dから燃焼室20の中央斜め後方へ向かって延設されており、温度センサ171,172は、導風板23の前端に配設されている。従って、バーナ13から放出され、導風板23の前端に到達した熱気は、温度センサ171,172の配設部を通って連通口22へ導かれる。
【0031】
図3および図4に示すように、左側壁20Cの温度センサ(以下、「第1温度センサ」という)171は、バーナ13の最左端に位置する炎孔130より左側方に配設され、右側壁20Cの温度センサ(以下、「第2温度センサ」という)172は、バーナ13の最右端に位置する炎孔130より右側方に配設されている。即ち、第1温度センサ171および第2温度センサ172は、炎孔130の形成部との対向領域よりも左右外側に離間して設けられている。従って、バーナ13が正常燃焼状態であるとき、炎孔130の後方に形成されるガスの燃焼炎は、第1温度センサ171および第2温度センサ172に接触しない。しかも、給気口112から燃焼室20内へ取り込まれる外部空気の一部が、炎孔130の周辺を通らずに、バーナ13の左右の側端周辺に設けられた間隙24を通って第1温度センサ171および第2温度センサ172の各周辺へ導かれるから、燃焼炎にふらつきが生じても、第1温度センサ171および第2温度センサ172周辺の温度は安定する。よって、バーナ13の燃焼状態を正確に検知できる。
【0032】
図5に示すように、本体ケース11の前面部111には、バーナ13を手動で点火および消火させるためのバーナ操作部41と、加熱調理器1の動作情報を音声にて報知する音声出力部42と、加熱調理器1の動作情報を表示する表示部43とが設けられている。尚、バーナ操作部41は、バーナ13の火力を手動で設定するための火力調整機能を兼備している。
【0033】
本体ケース11の内部には、バーナ操作部41による点火操作や消火操作に応じてバーナ13へのガスの供給量を調整するガスバルブ44が組み込まれており、バーナ13のガス供給口131へガスを噴出するガス噴出ノズルは、ガスバルブ44に接続されている。尚、図示しないが、ガスバルブ44は、バーナ操作部41によって点火操作がなされれば開き、炎検知センサ15によって燃焼炎が検知されなくなれば閉じる電磁開閉弁と、バーナ操作部41によって点火操作がなされれば開き、消火操作がなされれば閉じる主弁と、バーナ操作部41で設定された火力に合わせて開度調整されるニードル弁と、制御回路5からの指示に応じてバーナ13へのガスの供給量を切り替える火力切替弁とからなるバルブユニットであり、これら各弁によってバーナ13の火力が適宜調整される。
【0034】
また、本体ケース11の内部には、加熱調理器1全体の動作を制御する制御回路5が組み込まれており、循環ファン14、炎検知センサ15、点火プラグ16、バーナ操作部41、第1温度センサ171、第2温度センサ172、音声出力部42、表示部43、および、ガスバルブ44は、制御回路5に電気配線を通じて接続されている。
【0035】
制御回路5は、バーナ13の点火や消火、火力調整を行うバーナ制御部、循環ファン14の作動や停止を行うファン制御部、炎検知センサ15の出力値に基づいてバーナ13の点火や消火を判定する点消火判定部等の回路構成を有している。
【0036】
また、制御回路5は、第1温度センサ171および第2温度センサ172相互の検知温度差|T1−T2|に基づいて給気口112の閉塞状態を判定する閉塞判定部、検知温度差|T1−T2|が基準値Tsより大きい状態である偏温時間S1を計測する計時部、偏温時間S1が所定時間Snに達したか否かに基づいてバーナ13の異常燃焼を判定する第1の異常燃焼判定部、第1温度センサ171および第2温度センサ172の各検知温度T1,T2に基づいてバーナ13の異常燃焼を判定する第2の異常燃焼判定部、第1の異常燃焼判定部によってバーナ13の異常燃焼と判定された異常判定回数N1を記憶する記憶部、異常判定回数N1が所定回数Nsに達したか否かを判定する異常回数判定部、バーナ13が異常燃焼状態であることを音声出力部42および表示部43から報知させる異常報知部等の回路構成を有している。
【0037】
次に、制御回路5によるバーナ13の異常燃焼判定動作を図6に従って説明する。尚、上記加熱調理器1では、本体ケース11の前面部111に設けられた図示しない電源スイッチを操作し、電源をオンにすることで制御回路5の主な制御プログラムが起動し、以下に説明する制御動作が実行可能な状態となる。
【0038】
バーナ操作部41によって点火操作がなされると、循環ファン14を作動させると共に点火プラグ16から火花放電させ、さらにガスバルブ44の電磁開閉弁および主弁を開く。また、上記点火操作に連動してガスバルブ44のニードル弁の開度が所定の点火時開度に調整される。これにより、給気口112から燃焼室20内へ外部空気(二次空気)が取り込まれ、また、バーナ13にはガス供給口131周辺の空気(一次空気)と共に所定量のガスが供給され、バーナ内部で点火に適した濃度に混合される。そして、各炎孔130から燃焼室20の後方へ放出され、上記火花放電により点火される(ST1〜ST3)。
【0039】
尚、図示しないが、ST3のステップにてバーナ13が点火された後、バーナ操作部41にて火力調整操作が行われた場合は、その操作に合わせてガスバルブ44のニードル弁の開度が変更される。これにより、バーナ13の火力が調整される。また、バーナ13が点火された後、何らかの原因により失火し、炎検知センサ15によって燃焼炎が検知されなくなった場合は、ガスバルブ44の電磁開閉弁を閉じ、バーナ13へのガスの供給を強制的に停止させる。これにより、バーナ13からのガス漏れが防止される。
【0040】
バーナ13が点火された後、バーナ操作部41によって消火操作がなされるまでの間、第1温度センサ171の検知温度(以下、「第1検知温度」という)T1と第2温度センサ172の検知温度(以下、「第2検知温度」という)T2との差の絶対値|T1−T2|を算出し、その算出された検知温度差|T1−T2|が所定の基準値Ts(例えば、50deg)より大きくなったか否か、および、第1検知温度T1または第2検知温度T2の少なくとも何れか一方が所定の上限値Th(例えば、250℃)に達したか否かの監視を行う(ST4〜ST6)。
【0041】
検知温度差|T1−T2|が基準値Ts以下であり(ST4のステップでNo)、且つ、第1検知温度T1および第2検知温度T2の何れも上限値Thより低い場合は(ST5のステップでNo)、給気口112からバーナ13の各炎孔130の周辺全体へ正常に外部空気が導入され、且つ、熱気導出経路200の熱気の流れも正常である、即ち、バーナ13が正常燃焼状態であるとして、加熱調理運転を継続する。そしてその後、バーナ操作部41によって消火操作がなされた場合は(ST6のステップでYes)、ガスバルブ44の主弁を閉じてバーナ13へのガスの供給を遮断し、バーナ13を消火させると共に、循環ファン14を停止させ、ST1のステップに戻る(ST7〜ST8)。
【0042】
一方、バーナ13が点火された後、検知温度差|T1−T2|が基準値Tsより大きくなった場合は(ST4のステップでYes)、給気口112が閉塞されて、燃焼室20内の一部領域への外部空気の流れが悪くなったとして、計時部にて偏温時間S1の計測を開始し、上述した第1検知温度T1および第2検知温度T2の監視(ST5)、消火操作の有無の監視(ST6)、検知温度差|T1−T2|の監視(ST4)に加え、偏温時間S1が所定時間Sn(例えば、5秒)に達したか否かの監視を行う(ST9〜ST10)。
【0043】
尚、偏温時間S1の計測を開始してから、偏温時間S1が所定時間Snに達するまでの間に(ST10のステップでNo)、給気口112の閉塞が解消され、検知温度差|T1−T2|が基準値Ts以下になった場合は(ST4のステップでNo)、元の正常燃焼状態に戻ったとして、偏温時間S1の計測を中止し(図示しない)、ST5のステップを行う。
【0044】
偏温時間S1の計測開始後、偏温時間S1が所定時間Snに達した場合は(ST10のステップでYes)、給気口112が閉塞されたことによって燃焼室20内の一部領域への外部空気の流れが悪くなり、バーナ13が異常燃焼状態になったとして、バーナ13が異常燃焼状態である旨を音声出力部42から音声にて報知し且つ表示部43に表示させる。そして、偏温時間S1の計測を停止すると共に、記憶部に記憶された異常判定回数N1(初期状態では「0」)に「1」を加算記憶させ、異常判定回数N1が所定回数Ns(例えば、5回)に達したか否かを判定する(ST11〜ST14)。
【0045】
その結果、異常判定回数N1が所定回数Nsに達していない場合は(ST14のステップでNo)、異常燃焼の原因が一時的なものである可能性があるため、ST5のステップを行う。そしてその後、異常燃焼の原因が解消され、検知温度差|T1−T2|が基準値Ts以下に戻れば(ST4のステップでYes)、元の正常燃焼状態に戻ったとして、記憶部に記憶された異常判定回数N1を「0」にリセットし(図示しない)、ST5のステップを行う。
【0046】
尚、図示しないが、バーナ13の異常燃焼が音声出力部42および表示部43から報知された後、検知温度差|T1−T2|が基準値Ts以下に戻った状態で、本体ケース11の前面部111に設けられた図示しない操作スイッチにより所定の報知停止操作がなされた場合は、異常燃焼の報知を停止させる。
【0047】
一方、ST4からST14のステップが繰り返された結果、異常判定回数N1が所定回数Nsに達した場合は(ST14のステップでYes)、異常燃焼の原因が容易に解消可能なものではないとして、記憶部に記憶された異常判定回数N1を「0」にリセットすると共に、バーナ13を強制的に消火させ、さらに循環ファン14を停止させる(ST15,ST7〜ST8)。
【0048】
また、ST4からST6のステップを行っている間に、第1検知温度T1または第2検知温度T2の少なくとも何れか一方が上限値Thに達した場合は(ST5のステップでYes)、バーナ13へ供給されるガス圧の上昇や一次空気量の低下、燃焼室20からの排気不良などによりバーナ13の異常燃焼が生じているとして、バーナ13が異常燃焼状態である旨を音声出力部42から音声にて報知し且つ表示部43に表示させると共に、バーナ13を強制的に消火させ、さらに循環ファン14を停止させる(ST16,ST7〜ST8)。
【0049】
このように、上記加熱調理器1では、熱気導出経路200の左右位置に離間して設けられた二つの温度センサ171,172の検知温度差|T1−T2|が基準値Tsより大きい状態が所定時間Sn以上続けば、バーナ13が異常燃焼状態であると判定するから、給気口112の閉塞条件が異なっても的確にバーナ13の異常燃焼を検出できる。よって、検知精度の高い加熱調理器を提供できる。
【0050】
また、このものでは、バーナ13が異常燃焼状態であると判定されても、その異常燃焼と判定された回数(異常判定回数)N1が所定回数Ns未満である間は、加熱調理運転を禁止しないで、バーナ13に異常燃焼が生じている旨の報知のみ行うから、異常燃焼の原因が容易に解消可能なものであるにもかかわらず、即時に使用が制限されてしまうといった問題が生じない。よって、検知精度が高く且つ使い勝手の良い加熱調理器を提供できる。
【0051】
一方で、異常判定回数N1が所定回数Ns以上であれば、異常燃焼の原因が炎孔の詰まりやガスバルブの動作不良など、使用者で対処不可能なことによるものである可能性があるため、この場合は、加熱調理運転を禁止した上で、バーナ13に異常燃焼が生じている旨の報知を行う。これにより、機器に不具合が存する状態で使用し続けられるといった問題も生じない。よって、検知精度が高く且つ使い勝手の一層良好な加熱調理器を提供できる。
【0052】
しかも、このものでは、バーナ13が異常燃焼状態であると判定されても、異常燃焼の原因が解消され、検知温度差|T1−T2|の大きい状態が所定時間Sn以上続かなくなれば、異常判定回数の記録を消去するから、異常燃焼の原因が容易に解消可能なものであるにもかかわらず、長期使用している間に、突然使用が制限されてしまうといった問題が生じない。よって、使い勝手の一層良好な加熱調理器を提供できる。
【0053】
また、このものでは、検知温度差|T1−T2|が基準値Ts以下であっても、第1検知温度T1或いは第2検知温度T2の何れか一方でも上限値Thに達した場合は、バーナ13が異常燃焼状態であると判定するから、より確実にバーナ13の異常燃焼を検出できる。よって、より検知精度の高い加熱調理器を提供できる。
【0054】
尚、上記実施の形態では、バーナ13の点火後、偏温時間S1が所定時間Snに達した場合に、異常判定回数N1が所定回数Nsに達していなければ、異常燃焼の報知のみ行い、バーナ13の燃焼状態は維持する制御構成としたが、異常燃焼を報知させると共に、バーナ13の火力を弱火に制限する制御構成としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 加熱調理器
10 加熱庫
11 本体ケース
112 給気口
13 バーナ
130 炎孔
14 循環ファン
171 第1温度センサ
172 第2温度センサ
20 燃焼室
200 熱気導出経路
42 音声出力部(報知手段)
43 表示部(報知手段)
5 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6