(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の第一脆弱部、および前記複数の第二脆弱部の少なくともいずれかは、前記基材フィルムの平面視において、前記第一基材および前記第二基材のいずれかの基材に設けられた脆弱部同士が交差して格子形状が形成されるように設けられた、
請求項1または請求項2に記載の粘着シート。
前記基材フィルムの平面視において、前記複数の第一脆弱部、および前記複数の第二脆弱部の少なくともいずれかは、前記基材フィルムの中心部を中心として、前記基材フィルムの中心部からの距離が異なる複数の略同心円状に設けられた、
請求項1または請求項2に記載の粘着シート。
前記第一基材は、MD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、3N/mm以上50N/mm以下であり、CD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、5N/mm以上100N/mm以下であり、
前記第二基材は、MD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、50N/mm以上であり、CD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、100N/mm以上である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウエハマウントテープなどの既存の粘着シートを引き延ばして、複数の半導体チップ同士の間隔を拡げようとすると、複数の半導体チップの間の距離を充分に拡げることができないおそれがある。一方で、無理に複数の半導体チップを支持するシートを引き延ばそうとすると、シートが破断したり、裂けたりするおそれがある。その結果、シート上の半導体チップ同士の間隔がばらついたり、半導体チップがシートから離脱したりして、半導体チップの取り扱い性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、シートを掴んで引き延ばした際に、シート自体の破断や裂けが生じ難く、引き延ばし易い、粘着シートを提供すること、および当該粘着シートを用いた半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基材フィルムと粘着剤層とを備え、前記基材フィルムは、少なくとも、前記粘着剤層と隣接する第一基材と、前記第一基材の前記粘着剤層と対向する面とは反対の面側に積層された第二基材とを有し、前記第一基材には、複数の第一脆弱部が設けられ、前記第二基材には、複数の第二脆弱部が設けられ、前記第一基材に設けられた前記複数の第一脆弱部と、前記第二基材に設けられた前記複数の第二脆弱部とは、前記基材フィルムの平面視において、互いに重ならない領域に設けられた、粘着シートを提供できる。
上述の本発明の一態様によれば、第一基材には、複数の第一脆弱部が設けられ、第二基材には、複数の第二脆弱部が設けられている。この態様の粘着シートを引き延ばしたときに、引き延ばしの応力が第一脆弱部および第二脆弱部に集中して、第一脆弱部および第二脆弱部に沿って各基材が分離し、分離した領域間の間隔が拡がる。また、第一脆弱部と第二脆弱部とは、平面視で互いに重ならない領域に設けられている。そのため、第一脆弱部に沿って分離した領域と、第二脆弱部に沿って分離した領域とから、それぞれ亀裂が生じたとしても、第一脆弱部に沿って分離した領域と第二脆弱部に沿って分離した領域とが亀裂でつながって、基材フィルムの厚み方向に達するような大きな破断は生じ難い。したがって、上述の本発明の一態様によれば、シート自体の破断や裂けが生じ難く、引き延ばし易い粘着シートを提供できる。
本明細書において、第一脆弱部と第二脆弱部とが、基材フィルムの平面視において、互いに重ならない領域に設けられたとは、第一脆弱部と第二脆弱部とが、全く重ならない領域に設けられた場合だけに限らない。第一脆弱部と第二脆弱部とが、平面視で、一部の領域について部分的に重なった領域が形成されていてもよい。例えば、第一脆弱部と第二脆弱部とがそれぞれ異なる方向に沿って形成され、平面視で、第一脆弱部と第二脆弱部とが交差して、第一脆弱部の一部と第二脆弱部の一部とが部分的に重なる領域が形成されていてもよい。
なお、第一脆弱部が第二脆弱部よりも大きく形成され、平面視で、第一脆弱部が形成された領域内に、第二脆弱部が形成された領域の大部分が含まれるような場合には、第一脆弱部と第二脆弱部とが互いに重ならない領域に設けられたとはいえず、互いに重なる領域に設けられていると判断する。
【0008】
本発明の一態様において、前記複数の第一脆弱部、および前記複数の第二脆弱部の少なくともいずれかは、前記粘着シートを引き延ばす方向と直交する方向に形成されたことも好ましい。
この態様によれば、第一脆弱部および第二脆弱部の少なくともいずれかが、粘着シートを引き延ばす方向と直交する方向に形成されている。脆弱部が引き延ばす方向と直交する方向に形成されていると、脆弱部が形成された領域において引き延ばしの応力が集中する領域が増えるため、脆弱部に沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とに必要な引っ張り強度が低下する。そのため、この態様では、小さな引き延ばし力で、引き延ばすことが可能な粘着シートを提供できる。
【0009】
本発明の一態様において、前記複数の第一脆弱部、および前記複数の第二脆弱部の少なくともいずれかは、前記基材フィルムの平面視において、前記第一基材および前記第二基材のいずれかの基材に設けられた脆弱部同士が交差して格子形状が形成されるように設けられていることも好ましい。
この態様によれば、各基材に設けられた脆弱部同士が交差して格子形状を形成するように設けられている。引き延ばす方向が、ある特定の方向と、この特定の方向と直交する方向に沿った2方向の場合、この態様の粘着シートを、引き延ばす方向と、格子形状を構成する脆弱部の方向とがそれぞれ直交するように配置する。このように配置して粘着シートを引き延ばすと、格子形状を構成する脆弱部の方向とは直交する方向に引き延ばしの応力が働くため、格子形状に形成された脆弱部に沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とを小さな引き延ばし力で行うことができる。そのため、上記態様によれば、ある特定の方向と、この特定の方向と直交する方向との2方向にそれぞれ引き延ばす方法に適した粘着シートを提供できる。
【0010】
本発明の一態様において、前記基材フィルムの平面視において、前記複数の第一脆弱部、および前記複数の第二脆弱部の少なくともいずれかは、前記基材フィルムの中心部を中心として、前記基材フィルムの中心部からの距離が異なる複数の略同心円状に設けられていることも好ましい。
この態様によれば、第一脆弱部および第二脆弱部の少なくともいずれかが略同心円状に設けられている。
上記形状を有する粘着シートは、例えば、環状のリングフレームと、略矩形状の離間テーブルを備えた離間装置を用いた、エキスパンド工程での使用に適している。
具体的には、まず、環状のリングフレームで粘着シートの外周の領域を保持する。次に、支持面が平面形状の離間テーブルをリングフレームの内側に通過させる。リングフレームを下降させて、離間テーブルの支持面の高さが、リングフレームの高さよりも相対的に高くなると、リングフレームの内側の領域が離間テーブルに押し上げられ、粘着シートが、同心円の円周方向と直交する方向に沿って外側に拡張される。
上記離間装置を用いて粘着シートを引き延ばすと、同心円の円周方向とは直交する方向に引き延ばしの応力が働くため、略同心円状に設けられた脆弱部に沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とを小さな引き延ばし力で行うことができる。そのため、上記態様によれば、円周方向と直交する方向に沿って引き延ばす方法に適した粘着シートを提供できる。
なお、本明細書において、粘着シートについて略同心円状という場合には、中心的な部分が同じ位置にある2以上の略円形の存在する状態、および2以上の略円形が所定の間隔を隔てて存在する状態を意味する。なお、略円形とは、円形、楕円等の円形の概念に近い形状およびそれらの変形した形状をいう。
【0011】
本発明の一態様において、前記第一基材は、MD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、3N/mm以上50N/mm以下であり、CD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、5N/mm以上100N/mm以下であり、前記第二基材は、MD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、50N/mm以上であり、CD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、100N/mm以上であることも好ましい。
この態様によれば、第一基材の引裂き強度と第二基材の引裂き強度が上記範囲であれば、第一基材に設けられた第一脆弱部および第二基材に設けられた第二脆弱部に沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とを小さな引き延ばし力で行うことができる。
また、第一基材と第二基材とで引裂き強度の異なる基材を使用することで、粘着シートを引き延ばしたときに、脆弱部に沿って基材を分離、拡張させるタイミングを基材ごとにずらすことができる。そのため、それぞれの脆弱部に沿った各基材の分離、拡張が段階的に行われるので、第一脆弱部と第二脆弱部とが同じタイミングで分離、拡張するのに比べて、第一脆弱部に沿って分離した領域と第二脆弱部に沿って分離した領域とが亀裂でつながって、基材フィルムの厚み方向に達するような大きな破断がより生じ難くなる。また、各基材の引裂き強度に応じて、各基材に設ける脆弱部の位置や数を適宜調整できる。
【0012】
本発明の一態様において、前記第一基材に設けられた前記複数の第一脆弱部は、前記第一基材の厚み方向に対して、貫通して設けられ、前記第二基材に設けられた前記複数の第二脆弱部は、前記第二基材の厚み方向に対して、貫通して設けられたことも好ましい。
この態様によれば、第一脆弱部および第二脆弱部が基材厚み方向に対して貫通している。基材厚み方向に対して貫通した脆弱部は、貫通していない脆弱部に比べて、引っ張り強度が弱くなるため分離、拡張し易い。そのため、上記態様によれば、脆弱部が形成されている領域での分離と、分離した領域間の間隔の拡張とを小さな引き延ばし力で行うことができる。
【0013】
本発明の一態様において、前記第一基材に設けられた前記複数の第一脆弱部は、前記第一基材の厚み方向に対して、溝状に設けられ、前記第二基材に設けられた前記複数の第二脆弱部は、前記第二基材の厚み方向に対して、溝状に設けられたことも好ましい。
この態様によれば、第一脆弱部および第二脆弱部が基材厚み方向に対して溝状に設けられている。溝状に設けられた脆弱部は、基材厚み方向に対して貫通するように形成された脆弱部に比べて、引っ張り強度が強くなるため、粘着シートを引っ張る前に分離したり、拡張したりし難い。そのため、上記態様によれば、粘着シートを引き延ばしたときに、基材フィルム自体が破断したり、裂けたりすることをより低減できる。
【0014】
本発明の一態様において、前記第一基材に設けられた複数の第一脆弱部は、前記第一基材の前記粘着剤層と対向する面に形成され、前記第二基材に設けられた複数の第二脆弱部は、前記第二基材の前記粘着剤層と対向する面に形成されたことも好ましい。
この態様によれば、第一基材に設けられた第一脆弱部および第二基材に設けられた第二脆弱部は、それぞれ粘着剤層側から形成されている。例えば、第一脆弱部と第二脆弱部とがそれぞれ溝状に形成されている場合、第一脆弱部と第二脆弱部とが互いに異なる面側に形成されていることで、引き延ばし力が第一基材の粘着剤層と対向する面側、第二基材の粘着剤層と対向する面側にそれぞれ分散する。そのため、第一脆弱部と第二脆弱部とが第一基材と第二基材との界面に形成されているのに比べて、粘着シートを引っ張る前に分離したり、拡張したりし難い。したがって、上記態様によれば、粘着シートを引き延ばしたときに、基材フィルム自体が破断したり、裂けたりすることをより低減できる。
【0015】
本発明の一態様において、前記第一基材に設けられた複数の第一脆弱部は、前記第一基材の前記粘着剤層と対向する面に形成され、前記第二基材に設けられた前記複数の第二脆弱部は、前記第二基材の前記粘着剤層と対向する面とは反対側の面に形成されたことも好ましい。
この態様によれば、第一基材に設けられた第一脆弱部が粘着剤層側から形成され、第二基材に設けられた第二脆弱部が粘着剤層側と対向する面とは反対側から形成されている。即ち、この構成では、第一脆弱部および第二脆弱部が基材フィルムの表面側と裏面側にそれぞれ形成されている。例えば、第一脆弱部と第二脆弱部とがそれぞれ溝状に形成されている場合、第一脆弱部と第二脆弱部とが、離れた位置に形成されているため、粘着シートを引き延ばしたときに、第一脆弱部から生じる亀裂の方向は、第二脆弱部に向かって誘導され難く、同様に、第二脆弱部から生じる亀裂の方向も、第一脆弱部に向かって誘導され難い。そのため、上記態様によれば、粘着シートを引き延ばしたときに、基材フィルム自体が破断したり、裂けたりすることをより低減できる。
また、この態様では、第一基材および第二基材を積層させて基材フィルムを形成した後に、脆弱付与処理を、基材フィルムの表裏面に対して実施する製造方法に適しており、第一脆弱部および第二脆弱部を一工程で形成できる。
【0016】
本発明の一態様において、前記粘着剤層の上には被着体が貼着され、前記第一基材に設けられた前記複数の第一脆弱部、前記第二基材に設けられた前記複数の第二脆弱部は、少なくとも、前記被着体が貼着される領域に対応する部位に設けられたことも好ましい。
この態様によれば、第一脆弱部および第二脆弱部が、被着体が貼着される領域に対応する部位に設けられる。
被着体が複数の半導体チップの場合、粘着シートを引き延ばしたときに、複数の半導体チップが貼着された領域に対応する部位に設けられた第一脆弱部および第二脆弱部に沿って各基材が分離し、分離した領域間の間隔が拡がる。一方で、複数の半導体チップが貼着されていない領域に対応する部位には第一脆弱部および第二脆弱部が設けられていない。そのため、粘着シートを引き延ばしても、複数の半導体チップが貼着されていない領域は、複数の半導体チップが貼着された領域に比べて大きく拡がらない。このように、複数の半導体チップが貼着された領域が延び易い構成とすることで、複数の半導体チップ同士の間隔を大きく拡げることができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、上記本発明の粘着シートにウエハを貼着する工程と、前記粘着シートに貼着されたウエハをダイシングにより個片化し、複数の半導体チップを形成する工程と、前記粘着シートを引き延ばし、前記第一領域に貼着された前記複数の半導体チップ同士の間隔を拡げる工程と、を備える、半導体装置の製造方法を提供できる。
この本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法において、上述の本発明の一態様に係る粘着シートを使用する。
粘着シートに貼着されたウエハをダイシングにより個片化して複数の半導体チップを形成した後、粘着シートを引き延ばすことで、複数の半導体チップ間の間隔を大きく拡げることができる。
上述の本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法によれば、ダイシングにより形成した複数の半導体チップをピックアップして、間隔を拡げて支持部材上に再配列する工程を経ることなく、複数の半導体チップ同士の間隔を大きく拡げることができる。それゆえ、上述の本発明の一態様に係る粘着シートは、WLPの製造プロセスへの適合性に優れ、特にファンアウト型のウエハレベルパッケージの製造プロセスへの適合性に優れる。
【0018】
本発明の一態様において、前記粘着シートを引き延ばして、前記複数の半導体チップ同士の間隔を拡げた後、前記複数の半導体チップの回路面を残して封止部材で覆う工程をさらに備えることも好ましい。
この態様によれば、複数の半導体チップ間の間隔を大きく拡げたうえで、封止部材で複数の半導体チップを覆うことができる。しかも、この態様によれば、個片化された半導体チップを、1個ずつ粘着シートから別の粘着シートや支持体にピック・アンド・プレイスによって再配列することなく、封止部材で覆うことができる。それゆえ、この態様によれば、WLPの製造プロセスの工程を簡略化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る第一実施形態の粘着シートを説明する。
[粘着シート]
図1(A)には、本実施形態に係る粘着シート10の断面図が示され、
図1(B)には、粘着シート10の平面図が示されている。
図1(A)は、
図1(B)のA−A線断面図である。
図1(A)に示されているように、本実施形態の粘着シート10は、基材フィルム11と、粘着剤層12とを有する。粘着剤層12は、基材フィルム11に積層されている。基材フィルム11は、第一基材13と、第二基材14とを有する。第一基材13は、粘着剤層12と隣接する。第二基材14は、第一基材13の粘着剤層12と対向する面とは反対の面側に積層される。
第一基材13には、複数の第一脆弱部15が設けられ、第二基材14には、複数の第二脆弱部16が設けられている。
図1(B)では、本実施形態の理解を容易にするために、粘着剤層の図示を省略し、複数の第一脆弱部15の位置を実線で、複数の第二脆弱部16の位置を点線で示している。
図1(B)に示されているように、複数の第一脆弱部15と、複数の第二脆弱部16とは、基材フィルム11の平面視において、互いに重ならない領域に設けられている。
【0021】
[基材フィルム]
基材フィルム11を構成する第一基材13および第二基材14の材質は、特に限定されない。第一基材13および第二基材14の材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリスチレン樹脂などが挙げられる。
第一基材13の厚さは、10〜100μmが好ましい。また、第二基材14の厚さは、50〜200μmが好ましい。
第一基材13は、MD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、3N/mm以上50N/mm以下であり、CD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、5N/mm以上100N/mm以下であることが好ましい。
第二基材14は、MD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、50N/mm以上であり、CD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、100N/mm以上であることが好ましい。
なお、第二基材14の引裂き強度の上限は、MD方向、CD方向ともに、300N/mm以下であることが好ましい。
【0022】
引裂き強さ試験は、JIS K 7128−1によるトラウザー法に準拠して行われる。MD方向に対して引裂き強さ試験を行う場合の試験片は、試験片の長辺方向が基材フィルムの長手方向(MD方向)に、試験片の短辺方向が基材フィルムの幅方向(CD方向)に切り取られる。また、試験片には、CD方向の中央部に、MD方向に沿ってスリットが設けられる。また、CD方向に対して引裂き強さ試験を行う場合の試験片は、試験片の長辺方向が基材フィルムの幅方向(CD方向)に、試験片の短辺方向が基材フィルムの長手方向(MD方向)に切り取られる。また、試験片には、MD方向の中央部に、CD方向に沿ってスリットが設けられる。このような試験片を用いて試験速度:200mm/minで引裂き強さ試験を行い、単位厚さあたりの引裂き強度を求める。
本明細書において、「MD方向」とは、基材フィルムを与える原反の長手方向(原反の製造時の送り方向)に平行な方向を示す語として用いており、「CD方向」とは、MD方向と直交する方向を示す語として用いており、以下についても同様である。本明細書において、MDは、Machine Directionの略称であり、CDは、Cross Directionの略称である。
【0023】
[第一脆弱部、第二脆弱部]
第一基材13に設けられた複数の第一脆弱部15は、第一基材13の厚み方向に対して、溝状に設けられる。また、第二基材14に設けられた複数の第二脆弱部16は、第二基材14の厚み方向に対して、溝状に設けられている。
第一基材13に設けられた複数の第一脆弱部15は、第一基材13の粘着剤層12と対向する面に形成され、第二基材14に設けられた複数の第二脆弱部16は、第二基材14の粘着剤層12と対向する面に形成されている。
本明細書において、脆弱部とは、基材に対する引裂き強度よりも引裂き強度が弱くなるように形成された領域である。例えば、脆弱部は、溝を設けたり、孔を設けたり、変質層を形成したりするなどの脆弱付与処理を施すことによって形成できる。溝や孔、変質層が形成された領域は、基材に対する引裂き強度よりも引裂き強度が弱くなる。脆弱部として、溝を設けたり、孔を設けたりする場合には脆弱付与処理として歯形加工を行うことが、変質層を形成する場合にはレーザー加工を行うことが好ましい。
第一脆弱部15は、第一基材13の所望の脆弱部形成領域に対して、脆弱付与処理を施すことで形成される。第二脆弱部16についても、第二基材14の所望の脆弱部形成領域に対して、第一基材13と同様に、脆弱付与処理を施すことで形成される。
本実施形態では、第一基材13の所望の脆弱部形成領域に対して脆弱付与処理を施して溝を形成することで、第一基材13に対する引裂き強度より引裂き強度が弱い第一脆弱部15が形成される。同様に、第二基材14の所望の脆弱部形成領域に対して脆弱付与処理を施して溝を形成することで、第二基材14に対する引裂き強度より引裂き強度が弱い第二脆弱部16が形成される。
図1では、第一脆弱部15および第二脆弱部16は、平面視で、縦長の矩形状の溝が所定の間隔を空けて複数形成されているが、間隔を空けることなく、連続的に形成されてもよい。
【0024】
[粘着剤層]
粘着剤層12に含まれる粘着剤は、特に限定されず広く適用できる。粘着剤層12に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、およびウレタン系等が挙げられる。なお、粘着剤の種類は、用途や貼着される被着体の種類等を考慮して選択される。
【0025】
粘着剤層12にエネルギー線重合性化合物が配合されている場合には、粘着剤層12に基材フィルム11側からエネルギー線を照射し、エネルギー線重合性化合物を硬化させる。エネルギー線重合性化合物を硬化させると、粘着剤層12の凝集力が高まり、粘着剤層12と被着体との間の粘着力を低下または消失させることができる。そのため、ダイシング後には、粘着剤層12にエネルギー線を照射することで、粘着剤層12から被着体を容易に剥離できる。エネルギー線としては、例えば、紫外線(UV)や電子線(EB)等が挙げられ、紫外線が好ましい。
【0026】
[粘着シートの製造方法]
粘着シート10の製造方法は、特に限定されない。
例えば、粘着シート10は、次のような工程を経て製造される。
まず、第一基材13および第二基材14を積層して基材フィルム11を形成する。第一基材13および第二基材14が積層された基材フィルム11は、例えば、Tダイを用いた共押出成形法により成形されることが好ましい。具体的には、第一基材13および第二基材14に対応した押出機を使用し、各押出機から押し出された樹脂をマルチマニホールドTダイに導入し、各樹脂層を扁平なシート状とした後に積層を行うことで製造される。なお、通常のTダイの前に設けた特殊ブロックで合流させるフィードブロック方式により共押出成形してもよい。
次に、得られた基材フィルム11に対して脆弱付与処理を施す。
本実施形態では、脆弱付与処理として歯形加工を実施する。歯形加工では、第一基材13の脆弱部形成領域に対応する部位に複数の微細な凸部が施された上ロールおよび第二基材14の脆弱部形成領域に対応する部位に複数の凸部が施された下ロールを使用する。
そして、上ロールと下ロールとの間に基材フィルム11を通過させて、上ロールおよび下ロールで基材フィルム11を所定の圧力で狭圧する。上ロールおよび下ロールに施されている複数の微細な凸部が、基材フィルム11の表裏面に押し付けられることで、基材フィルム11の表裏面にノッチ加工が施される。この脆弱付与処理で第一基材13に複数の第一脆弱部15が形成され、第二基材14に複数の第二脆弱部16が形成される。この歯形加工では、複数の微細な凸部が施された上ロールおよび下ロールを使用することで、基材フィルム11に第一脆弱部15と第二脆弱部16とを同時に形成することができる。
そして、基材フィルム11の第一基材13の上に粘着剤を塗布し、塗膜を形成する。次に、この塗膜を乾燥させて、粘着剤層12を形成する。上記工程を経ることで、粘着シート10が得られる。
【0027】
本実施形態によれば、第一基材13には、複数の第一脆弱部15が設けられ、第二基材14には、複数の第二脆弱部16が設けられている。粘着シート10を引き延ばしたときに、引き延ばしの応力が第一脆弱部15および第二脆弱部16に集中して、第一脆弱部15および第二脆弱部16が破断する。第一脆弱部15および第二脆弱部16を破断させた後は、破断により分離した領域間の間隔が拡がる。また、第一脆弱部15と第二脆弱部16とは、平面視で互いに重ならない領域に設けられている。そのため、第一脆弱部15の破断により分離した領域と、第二脆弱部16の破断により分離した領域とから、それぞれ亀裂が生じたとしても、第一脆弱部15の分離領域と第二脆弱部16の分離領域とが亀裂でつながって、基材フィルム11の厚み方向に達するような大きな破断は生じ難い。したがって、シート自体の破断や裂けが生じ難く、引き延ばし易い粘着シート10を提供できる。
【0028】
また、この態様によれば、第一基材13は、MD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、3N/mm以上50N/mm以下であり、CD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、5N/mm以上100N/mm以下である。第二基材14は、MD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、50N/mm以上であり、CD方向に対して引裂き強さ試験を行った際の引裂き強度が、100N/mm以上である。
第一基材13の引裂き強度と第二基材14の引裂き強度が上記範囲であれば、第一基材13に設けられた第一脆弱部15および第二基材14に設けられた第二脆弱部16に沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とを小さな引き延ばし力で行うことができる。また、第一基材13と第二基材14とで引裂き強度の異なる基材を使用することで、粘着シート10を引き延ばしたときに、脆弱部に沿って分離、拡張させるタイミングを基材ごとにずらすことができる。それぞれの脆弱部に沿った分離、拡張が段階的に行われるので、第一脆弱部と第二脆弱部とが同じタイミングで分離、拡張するのに比べて、第一脆弱部に沿って分離した領域と第二脆弱部に沿って分離した領域とが亀裂でつながって、基材フィルムの厚み方向に達するような大きな破断がより生じ難くなる。また、各基材の引裂き強度に応じて、各基材に設ける脆弱部の位置や数を適宜調整できる。
【0029】
本実施形態によれば、第一脆弱部15および第二脆弱部16が基材厚み方向に対して溝状に設けられている。溝状に設けられた脆弱部は、基材厚み方向に対して貫通するように形成された脆弱部に比べて、引っ張り強度が強くなるため、引っ張る前に分離したり、拡張したりし難い。そのため、上記態様によれば、粘着シートを引き延ばしたときに、基材フィルム自体が破断したり、裂けたりすることをより低減できる。
【0030】
第一基材13に設けられた溝状の第一脆弱部15および第二基材14に設けられた溝状の第二脆弱部16は、それぞれ粘着剤層12側から形成されている。第一脆弱部15と第二脆弱部16とが互いに異なる面側に形成されていることで、引き延ばし力が第一基材13の粘着剤層12と対向する面側、第二基材14の粘着剤層12と対向する面側にそれぞれ分散する。そのため、第一脆弱部15と第二脆弱部16とが第一基材13と第二基材14との界面に形成されているのに比べて、粘着シート10を引っ張る前に分離したり、拡張したりし難い。したがって、上記態様によれば、粘着シート10を引き延ばしたときに、基材フィルム11自体が破断したり、裂けたりすることをより低減できる。
【0031】
〔第二実施形態〕
第二実施形態は、溝状の第一脆弱部および溝状の第二脆弱部の配置が、第一実施形態と相違する。第二実施形態は、その他の点において第一実施形態と同様であるため、説明を省略または簡略化する。
以下、本発明に係る第二実施形態の粘着シートを説明する。
図2には、本実施形態に係る粘着シート10Aの平面図が示されている。なお、
図2では、本実施形態の理解を容易にするために、粘着剤層の図示を省略し、基材フィルム11A(第一基材13Aおよび第二基材14A)を示している。また、複数の第一脆弱部15Aの位置を実線で、複数の第二脆弱部16Aの位置を点線で示している。
図2において、引き延ばす方向は、第一方向M1、および第一方向M1と直交する第二方向M2である。
図2に示すように、本実施形態の粘着シート10Aは、複数の第一脆弱部15A、および複数の第二脆弱部16Aが、粘着シート10Aを引き延ばす第一方向M1および第二方向M2のいずれかと直交する方向に形成されている。
本実施形態によれば、脆弱部が引き延ばす方向と直交する方向に形成されていると、脆弱部が形成された領域において引き延ばしの応力が集中する領域が増えるため、脆弱部に沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とに必要な引っ張り強度が低下する。そのため、この態様では、粘着シート10Aを第一方向M1および第二方向M2に沿って引き延ばしたときに、第一脆弱部15Aおよび第二脆弱部16Aに沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とを容易に行うことができる。そのため、小さな引き延ばし力で、引き延ばすことが可能な粘着シートを提供できる。
【0032】
〔第三実施形態〕
第三実施形態は、溝状の第一脆弱部および溝状の第二脆弱部の配置が、第一実施形態および第二実施形態と相違する。第三実施形態は、その他の点において第一実施形態および第二実施形態と同様であるため、説明を省略または簡略化する。
以下、本発明に係る第三実施形態の粘着シートを説明する。
図3には、本実施形態に係る粘着シート10Bの平面図が示されている。なお、
図3では、本実施形態の理解を容易にするために、粘着剤層の図示を省略し、基材フィルム11B(第一基材13Bおよび第二基材14B)を示している。また、複数の第一脆弱部15Bの位置を実線で、複数の第二脆弱部16Bの位置を点線で示している。
図3において、引き延ばす方向は、第三方向M3、および第三方向M3と直交する第四方向M4である。
図3に示すように、本実施形態の粘着シート10Bでは、複数の第一脆弱部15Bが、基材フィルム11Bの平面視において、第一基材13Bに設けられた第一脆弱部15B同士が交差して格子形状17Aが形成されるように設けられている。
また、複数の第二脆弱部16Bが、基材フィルム11Bの平面視において、第二基材14Bに設けられた第二脆弱部16B同士が交差して格子形状17Bが形成されるように設けられている。
【0033】
粘着シート10Bを、第三方向M3、および第四方向M4と、格子形状17Aを構成する複数の第一脆弱部15B、および格子形状17Bを構成する複数の第二脆弱部16Bの方向とがそれぞれ直交するように配置する。
この配置で粘着シート10Bを第三方向M3および第四方向M4に沿って引き延ばす。格子形状17A,17Bを構成する脆弱部の方向とは直交する方向に引き延ばしの応力が働くため、格子形状17Aを構成する第一脆弱部15Bおよび格子形状17Bを構成する第二脆弱部16Bに沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とを小さな引き延ばし力で行うことができる。そのため、本実施形態によれば、第三方向M3、および第三方向M3と直交する第四方向M4に沿って引き延ばす方法に適した粘着シート10Bを提供できる。
【0034】
〔第四実施形態〕
第四実施形態は、溝状の第一脆弱部および溝状の第二脆弱部の配置が、第一実施形態〜第三実施形態と相違する。第四実施形態は、その他の点において第一実施形態〜第三実施形態と同様であるため、説明を省略または簡略化する。
以下、本発明に係る第四実施形態の粘着シートを説明する。
図4には、本実施形態に係る粘着シート10Cの平面図が示されている。なお、
図4では、本実施形態の理解を容易にするために、粘着剤層の図示を省略し、基材フィルム11C(第一基材13Cおよび第二基材14C)を示している。また、複数の第一脆弱部15Cの位置を実線で、複数の第二脆弱部16Cの位置を点線で示している。
図4に示すように、本実施形態の粘着シート10Cは、基材フィルム11Cの平面視において、複数の第一脆弱部15C、および複数の第二脆弱部16Cは、基材フィルム11Cの中心部Oを中心として、基材フィルム11Cの中心部Oからの距離が異なる複数の略同心円状に設けられている。
【0035】
上記形状を有する粘着シート10Cは、例えば、
図5に示す、環状のリングフレームRFと、略矩形状の離間テーブル70を備えた離間装置50を用いた、エキスパンド工程での使用に適している。このエキスパンド工程では、粘着シート10Cの粘着剤層の上に、被着体として複数の半導体チップCPが貼着される。
図5に示す離間装置50は、複数の半導体チップCPの相互間隔を拡げる装置である。
離間装置50は、支持手段60と、離間テーブル70と、直動モータ80とを備えている。支持手段60はリングフレームRFを支持する。離間テーブル70は、粘着シート10Cを介して複数の半導体チップCPを支持する。直動モータ80は、支持手段60および離間テーブル70を相互移動させて粘着シート10Cに張力を付与する。
支持手段60は、リングフレームRFを受容可能な溝61Aを有する。支持手段60は、それぞれ直動モータ80の出力軸80Aで支持された一対の支持部材61を備えている。
離間テーブル70は、平面視すなわち上方から見た外形が四角形である。離間テーブル70は、複数の半導体チップCPが貼着された領域と略同一面積の平面形状とさせた支持面70Aを有している。
【0036】
上記の離間装置50において、複数の半導体チップCPの相互間隔を拡げる手順を説明する。
まず、
図5において、実線で示すように、環状のリングフレームRFで粘着シート10Cの外周の領域を保持する。粘着シート10Cを保持したリングフレームRFを支持部材61の溝61Aに挿通させる。
次に、直動モータ80を駆動させて、支持部材61を下降させ、
図5の二点鎖線に示すように、離間テーブル70をリングフレームRFの内側に通過させる。支持部材61を下降させて、離間テーブル70の支持面70Aの高さが、リングフレームRFの高さよりも相対的に高くなると、リングフレームRFの内側の領域が離間テーブル70の支持面70Aによって押し上げられる。この押し上げにより、粘着シート10Cが、厚み方向と直交し、円周方向と直交する方向に沿って外側に向かう方向に拡張される。
このように、上記離間装置50を用いて粘着シート10Cを引き延ばすと、
図4に示す、複数の同心円を構成する第一脆弱部15Cおよび第二脆弱部16Cとは直交する方向に引き延ばしの応力が働くため、略同心円状に設けられた脆弱部に沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とを小さな引き延ばし力で行うことができる。そのため、上記態様によれば、円周方向と直交する方向に沿って引き延ばす方法に適した粘着シートを提供できる。
【0037】
〔第五実施形態〕
第五実施形態は、溝状の第一脆弱部および溝状の第二脆弱部の配置が、第一実施形態〜第四実施形態と相違する。第五実施形態は、その他の点において第一実施形態〜第四実施形態と同様であるため、説明を省略または簡略化する。
以下、本発明に係る第五実施形態の粘着シートを説明する。
図6には、本実施形態に係る粘着シート10Dの断面図が示されている。
図6に示すように、本実施形態の粘着シート10Dでは、第一基材13Dに設けられた複数の第一脆弱部15Dは、第一基材13Dの粘着剤層12Dと対向する面に形成される。また、第二基材14Dに設けられた複数の第二脆弱部16Dは、第二基材14Dの粘着剤層12Dと対向する面とは反対側の面に形成される。
なお、本実施形態の粘着シート10Dにおいて、第一脆弱部15Dおよび第二脆弱部16Dが設けられる領域は、基材フィルム11Dの平面視において、上記第一実施形態から上記第四実施形態までのいずれの領域にも適用できる。
【0038】
本実施形態によれば、第一基材13Dに設けられた溝状の第一脆弱部15Dが粘着剤層12D側から形成され、第二基材14Dに設けられた溝状の第二脆弱部16Dが粘着剤層12D側と対向する面とは反対側から形成されている。即ち、この構成では、第一脆弱部15Dおよび第二脆弱部16Dが基材フィルム11Dの表面側と裏面側にそれぞれ形成されている。このように、第一脆弱部15Dと第二脆弱部16Dとが、離れた位置に形成されているため、粘着シート10Dを引き延ばしたときに、第一脆弱部15Dから生じる亀裂の方向は、第二脆弱部16Dに向かって誘導され難く、同様に、第二脆弱部16Dから生じる亀裂の方向も、第一脆弱部15Dに向かって誘導され難い。そのため、上記態様によれば、粘着シート10Dを引き延ばしたときに、基材フィルム11D自体が破断したり、裂けたりすることをより低減できる。
また、この態様では、第一基材13Dおよび第二基材14Dを積層させて基材フィルム11Dを形成した後に、脆弱付与処理を、基材フィルム11Dの表裏面に対して実施する製造方法に適しており、第一脆弱部15Dおよび第二脆弱部16Dを一工程で形成できる。
【0039】
〔第六実施形態〕
以下、本発明に係る第六実施形態の粘着シートを説明する。
図7(A)には、本実施形態に係る粘着シート10Eの平面図が示され、
図7(B)には、粘着シート10Eの断面図が示されている。
図7(B)は、
図7(A)のB−B線断面図である。
図7(A),
図7(B)に示すように、本実施形態の粘着シート10Eでは、第一基材13Eに設けられた複数の第一脆弱部15E、第二基材14Eに設けられた複数の第二脆弱部16Eは、少なくとも、被着体19が貼着される領域に対応する部位に設けられる。粘着剤層12Eの上には被着体19が貼着される。本実施形態では、被着体19は複数の半導体チップである。複数の半導体チップ間には、ダイシングによって、ダイシングソーの厚みに応じた間隔が形成されている。
【0040】
本実施形態によれば、第一脆弱部15Eおよび第二脆弱部16Eが、被着体19が貼着される領域に対応する部位に設けられる。
被着体19が複数の半導体チップの場合、
図8に示すように、粘着シート10Eを引き延ばしたときに、被着体19が貼着された領域に対応する部位に設けられた第一脆弱部15Eおよび第二脆弱部16Eに沿って各基材が分離し、分離した領域間の間隔が拡がる。一方で、被着体19が貼着されていない領域に対応する部位には第一脆弱部15Eおよび第二脆弱部16Eが設けられていない。そのため、粘着シート10Eを引き延ばしても、被着体19が貼着されていない領域は、被着体19が貼着された領域に比べて大きく拡がらない。このように、被着体19が貼着された領域が延び易い構成とすることで、被着体19同士の間隔を大きく拡げることができる。
【0041】
また、この態様では、例えば、ステルスダイシング方式の分割方法において、被着体として内部に変質層が形成されたウエハの分割工程、および分割後の複数の半導体チップのエキスパンド工程での使用に適している。ステルスダイシング方式の分割方法は、ウエハの表面に格子状に配列された分割予定ラインに沿って、ウエハに対して透過性を有するパルスレーザー光線を照射して変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って半導体ウエハを分割する方法である。
ステルスダイシング方式の分割方法では、まず、粘着シートにウエハを貼着し、ウエハの表面に格子状に配列された分割予定ラインに沿って、ウエハに対して透過性を有するパルスレーザー光線を照射する。パルスレーザー光線の照射でウエハ内部に変質層が連続的に形成される。そして、粘着シートを引き延ばすと、ウエハが貼着された領域に対応する部位に設けられた第一脆弱部および第二脆弱部に沿って各基材が分離し、分離した領域間の間隔が拡がる。この拡張によって、ウエハが変質層から複数のチップに分割され、分割されて生じた複数の半導体チップ同士の間隔を大きく拡げることができる。
【0042】
〔第七実施形態〕
以下、本発明に係る第七実施形態の半導体装置の製造方法を説明する。
本実施形態では、上記実施形態の粘着シートを、ダイシングする際に半導体ウエハWを貼着させるダイシングシート100として使用する。
【0043】
図9(A)には、ダイシングシート100に貼着された半導体ウエハWが示されている。ダイシングシート100は、基材フィルム101と、この基材フィルム101に積層された粘着剤層102とを有する。基材フィルム101は、粘着剤層102と隣接する第一基材103と、第一基材103の粘着剤層102と対向する面とは反対の面側に積層された第二基材104とを有する。また、第一基材103には、複数の第一脆弱部(図示省略)が設けられ、第二基材104には、複数の第二脆弱部(図示省略)が設けられている。複数の第一脆弱部と、複数の第二脆弱部とは、基材フィルム101の平面視において、互いに重ならない領域に設けられている。
半導体ウエハWは、回路面W1を有し、回路面W1には、回路W2が形成されている。ダイシングシート100は、半導体ウエハWの回路面W1とは反対側の裏面W3に貼着されている。
半導体ウエハWは、例えば、シリコンウエハであってもよいし、ガリウム・砒素などの化合物半導体ウエハであってもよい。半導体ウエハWの回路面W1に回路W2を形成する方法としては、汎用されている方法が挙げられ、例えば、エッチング法、およびリフトオフ法などが挙げられる。
半導体ウエハWは、予め所定の厚みに研削して、裏面W3を露出させてダイシングシート100に貼着されている。半導体ウエハWを研削する方法としては、特に限定されず、例えば、グラインダーなどを用いた公知の方法が挙げられる。半導体ウエハWを研削する際には、回路W2を保護するために、表面保護シートを回路面W1に貼着させる。ウエハの裏面研削は、半導体ウエハWの回路面W1側、すなわち表面保護シート側をチャックテーブル等により固定し、回路W2が形成されていない裏面側をグラインダーにより研削する。研削後の半導体ウエハWの厚みは、特に限定はされず、通常は、20μm以上500μm以下である。
【0044】
ダイシングシート100は、半導体ウエハWおよび第一リングフレームに貼着されていてもよい。この場合、ダイシングシート100の粘着剤層102の上に、第一リングフレームおよび半導体ウエハWを載置し、これらを軽く押圧し、固定する。
【0045】
[第一ダイシング工程]
図9(B)には、ダイシングシート100に保持された複数の半導体チップCPが示されている。
ダイシングシート100に保持された半導体ウエハWは、ダイシングにより個片化され、複数の半導体チップCPが形成される。ダイシングには、ダイシングソーなどの切断手段が用いられる。ダイシングの際の切断深さは、半導体ウエハWの厚さと、粘着剤層102の厚さとの合計、並びにダイシングソーの磨耗分を加味した深さに設定する。
また、ダイシングによって個片化された複数の半導体チップCP間には、ダイシングソーなどの切断手段の厚みに応じた間隔が形成される。本実施形態では、ダイシングによって生じた半導体チップCP間の間隔をDとする。
【0046】
粘着剤層102へのエネルギー線の照射は、半導体ウエハWをダイシングシート100に貼着させた後から、ダイシングシート100を剥離する前までのいずれの段階で行ってもよい。エネルギー線の照射は、例えば、ダイシングの後に行ってもよいし、後述するエキスパンド工程の後に行ってもよい。エネルギー線は、複数回に分けて照射してもよい。
【0047】
[エキスパンド工程]
図9(C)には、複数の半導体チップCPを保持するダイシングシート100を引き延ばす工程(エキスパンド工程と称する場合がある。)を説明する図が示されている。
エキスパンド工程では、ダイシングにより複数の半導体チップCPに個片化した後、ダイシングシート100を引き延ばして、複数の半導体チップCP間の間隔を拡げる。ダイシングシート100を引き延ばすと、引き延ばしの応力が第一脆弱部および第二脆弱部に集中して、第一脆弱部および第二脆弱部に沿って各基材が分離し、分離した領域間の間隔が拡がる。結果として、ダイシングシート100が所望の間隔で引き延ばされ、ダイシングシート100に貼着された複数の半導体チップCP間の間隔が拡がる。
エキスパンド工程においてダイシングシート100を引き延ばす方法は、特に限定されない。ダイシングシート100を引き延ばす方法としては、例えば、環状または円状のエキスパンダを押し当ててダイシングシート100を引き延ばす方法や、把持部材などを用いてダイシングシート100の外周部を掴んで引き延ばす方法などが挙げられる。
本実施形態では、
図9(C)に示されているように、エキスパンド工程後の半導体チップCP間の間隔をD1とする。間隔D1としては、例えば、200μm以上5000μm以下とすることが好ましい。
【0048】
[転写工程]
図10(A)には、エキスパンド工程の後に、複数の半導体チップCPを転写用シート200に転写する工程(転写工程と称する場合がある。)を説明する図が示されている。
ダイシングシート100を引き延ばして複数の半導体チップCP間の間隔D1を拡げた後、半導体チップCPの回路面W1に転写用シート200を貼着する。
【0049】
転写用シート200は、第一基材フィルム203と、第一粘着剤層204とを有する。転写用シート200は、回路面W1を第一粘着剤層204で覆うように貼着されることが好ましい。
第一基材フィルム203の材質は、特に限定されない。第一基材フィルム203の材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリスチレン樹脂などが挙げられる。
【0050】
第一粘着剤層204に含まれる粘着剤は、特に限定されず広く適用できる。第一粘着剤層204に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、およびウレタン系等が挙げられる。なお、粘着剤の種類は、用途や貼着される被着体の種類等を考慮して選択される。
図10(B)には、ダイシングシート100を剥離した後の、転写用シート200に保持された複数の半導体チップCPが示されている。
転写用シート200を貼着した後、ダイシングシート100を剥離すると、複数の半導体チップCPの裏面W3が露出する。ダイシングシート100を剥離した後も、エキスパンド工程で引き延ばした、複数の半導体チップCP間の間隔D1は維持されている。
【0051】
[封止工程]
図11には、封止部材30を用いて複数の半導体チップCPを封止する工程(封止工程と称する場合がある。)を説明する図が示されている。
封止工程は、エキスパンド工程の後に実施される。回路面W1を残して複数の半導体チップCPを封止部材30によって覆うことにより封止体3が形成される。複数の半導体チップCPの間にも封止部材30が充填されている。本実施形態では、転写用シート200により回路面W1および回路W2が覆われているので、封止部材30で回路面W1が覆われることを防止できる。
【0052】
封止工程により、所定距離ずつ離間した複数の半導体チップCPが封止部材に埋め込まれた封止体3が得られる。封止工程においては、複数の半導体チップCPは、間隔D1が維持された状態で、封止部材30により覆われることが好ましい。
封止部材30で複数の半導体チップCPを覆う方法は、特に限定されない。例えば、金型内に、転写用シート200で回路面W1を覆ったまま複数の半導体チップCPを収容し、金型内に流動性の樹脂材料を注入し、樹脂材料を硬化させる方法を採用してもよい。
また、シート状の封止樹脂を複数の半導体チップCPの裏面W3を覆うように載置し、封止樹脂を加熱することで、複数の半導体チップCPを封止樹脂に埋め込ませる方法を採用してもよい。封止部材30の材質としては、例えば、エポキシ樹脂などが挙げられる。封止部材30として用いられるエポキシ樹脂には、例えば、フェノール樹脂、エラストマー、無機充填材、および硬化促進剤などが含まれていてもよい。
【0053】
封止工程の後、転写用シート200が剥離されると、半導体チップCPの回路面W1および封止体3の転写用シート200と接触していた面3Aが露出する。
[半導体パッケージの製造工程]
図12および
図13には、複数の半導体チップCPを用いて半導体パッケージを製造する工程を説明する図が示されている。本実施形態は、このような半導体パッケージの製造工程を含んでいることが好ましい。
【0054】
[再配線層形成工程]
図12(A)には、転写用シート200を剥離した後の封止体3の断面図が示されている。本実施形態では、転写用シート200が剥離された後の封止体3に再配線層を形成する再配線層形成工程をさらに含むことが好ましい。再配線層形成工程においては、露出した複数の半導体チップCPの回路W2と接続する再配線を、回路面W1の上および封止体3の面3Aの上に形成する。再配線の形成に当たっては、まず、絶縁層を封止体3に形成する。
【0055】
図12(B)には、半導体チップCPの回路面W1および封止体3の面3Aに第一絶縁層41を形成する工程を説明する断面図が示されている。絶縁性樹脂を含む第一絶縁層41を、回路面W1および面3Aの上に、回路W2または回路W2の内部端子電極W4を露出させるように形成する。絶縁性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、およびシリコーン樹脂などが挙げられる。内部端子電極W4の材質は、導電性材料であれば限定されず、例えば、金、銀、銅やアルミニウムなどの金属、並びに合金などが挙げられる。
【0056】
図12(C)には、封止体3に封止された半導体チップCPと電気的に接続する再配線5を形成する工程を説明する断面図が示されている。本実施形態では、第一絶縁層41の形成に続いて再配線5を形成する。再配線5の材質は、導電性材料であれば限定されず、例えば、金、銀、銅やアルミニウムなどの金属、並びに合金などが挙げられる。再配線5は、公知の方法により形成できる。
【0057】
図13(A)には、再配線5を覆う第二絶縁層42を形成する工程を説明する断面図が示されている。再配線5は、外部端子電極用の外部電極パッド5Aを有する。第二絶縁層42には開口などを設けて、外部端子電極用の外部電極パッド5Aを露出させる。本実施形態では、外部電極パッド5Aは、封止体3の半導体チップCPの領域(回路面W1に対応する領域)内および領域外(封止部材30上の面3Aに対応する領域)に露出させている。また、再配線5は、外部電極パッド5Aがアレイ状に配置されるように、封止体3の面3Aに形成されている。本実施形態では、封止体3の半導体チップCPの領域外に外部電極パッド5Aを露出させる構造を有するので、ファンアウト型のWLPを得ることができる。
【0058】
[外部端子電極との接続工程]
図13(B)には、封止体3の外部電極パッド5Aに外部端子電極6を接続させる工程を説明する断面図が示されている。第二絶縁層42から露出する外部電極パッド5Aに、はんだボール等の外部端子電極6を載置し、はんだ接合などにより、外部端子電極6と外部電極パッド5Aとを電気的に接続させる。はんだボールの材質は、特に限定されず、例えば、含鉛はんだや無鉛はんだ等が挙げられる。
【0059】
[第二ダイシング工程]
図13(C)には、外部端子電極6が接続された封止体3を個片化させる工程(第二ダイシング工程と称する場合がある。)を説明する断面図が示されている。この第二ダイシング工程では、封止体3を半導体チップCP単位で個片化する。封止体3を個片化させる方法は、特に限定されない。例えば、前述の半導体ウエハWをダイシングした方法と同様の方法を採用して、封止体3を個片化することができる。封止体3を個片化させる工程は、封止体3をダイシングシート等の粘着シートに貼着させて実施してもよい。
【0060】
封止体3を個片化することで、半導体チップCP単位の半導体パッケージ1が製造される。上述のように半導体チップCPの領域外にファンアウトさせた外部電極パッド5Aに外部端子電極6を接続させた半導体パッケージ1は、ファンアウト型のウエハレベルパッケージ(FO−WLP)として製造される。
【0061】
[実装工程]
本実施形態では、個片化された半導体パッケージ1を、プリント配線基板等に実装する工程を含むことも好ましい。
【0062】
本実施形態によれば、上記実施形態の粘着シートを、ダイシングする際に半導体ウエハWを貼着させるダイシングシート100として使用する。
ダイシングシート100に貼着された半導体ウエハWをダイシングにより個片化して複数の半導体チップCPを形成した後、外周部を掴んでダイシングシート100を引き延ばすことで、複数の半導体チップCP間の間隔を大きく拡げることができる。
【0063】
〔実施形態の変形〕
本発明は、上述の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲で、上述の実施形態を変形した態様などを含む。
第一脆弱部15および第二脆弱部16の位置、形状、数は限定されない。
また、第一脆弱部15および第二脆弱部16は、
図1の平面視で、縦長の矩形状に形成したが、これに限定されない。例えば、縦長の楕円形状に形成してもよい。
【0064】
また、第一脆弱部および第二脆弱部を基材厚み方向に対して溝状に設ける構成としたが、これに限定されない。第一脆弱部および第二脆弱部のいずれかを基材厚み方向に対して貫通するように形成してもよい。
図14には、変形例に係る粘着シート10Fの平面図が示されている。
図14に示すように、変形例の粘着シート10Fは、基材フィルム11Fと、粘着剤層12Fとを有する。粘着剤層12Fは、基材フィルム11Fに積層されている。基材フィルム11Fは、第一基材13Fと、第二基材14Fとを有する。第一基材13Fは、粘着剤層12Fと隣接する。第二基材14Fは、第一基材13Fの粘着剤層12Fと対向する面とは反対の面側に積層される。
第一基材13Fには、複数の第一脆弱部15Fが、第一基材13Fの厚み方向に対して貫通して設けられている。また、第二基材14Fには、第二脆弱部16Fが、第二基材14Fの厚み方向に対して貫通して設けられている。
この態様によれば、基材厚み方向に対して貫通するように形成された脆弱部は、溝状などの貫通していない脆弱部に比べて、引っ張り強度が弱くなるため分離、拡張し易い。そのため、脆弱部に沿った各基材の分離と、分離した領域間の間隔の拡張とを小さな引き延ばし力で行うことができる。
なお、
図14では、第一脆弱部15Fおよび第二脆弱部16Fを、基材厚み方向に貫通して変質層が構成されている例で説明したが、貫通孔により構成されてもよい。
【0065】
また、第一実施形態の粘着シートの製造方法において、基材フィルム11を形成した後に、脆弱付与処理を施したが、本発明は、このような態様に限定されない。例えば、第一基材13に第一脆弱部15、第二基材14に第二脆弱部16をそれぞれ形成した後に、第一基材13および第二基材14を積層することで基材フィルム11を形成してもよい。
また、第一実施形態の粘着シートの製造方法において、脆弱付与処理として歯形加工を実施して溝状の第一脆弱部および溝状の第二脆弱部を設けたが、これに限定されない。例えば、脆弱付与処理としてレーザー加工を実施して変質層を形成してもよい。
レーザー加工は、第一基材13の脆弱部形成領域に沿って、第一基材13の表面に対して、レーザーを照射することにより行われる。また、第二基材14の脆弱部形成領域に沿って、第二基材14の表面に対して、レーザーを照射することにより行われる。レーザー加工は、上記歯形加工に比べて、脆弱部の位置の変更や脆弱部の数の変更に対応し易い。
【0066】
また、第三実施形態では、第一基材13および第二基材14のそれぞれに格子形状が形成されることを説明したが、本発明は、このような態様に限定されない。例えば、第一基材13のみ、あるいは第二基材14のみに格子形状が形成された構成としてもよい。
【0067】
また、第四実施形態の同心円において、内側に位置する同心円(第一の円)に沿って設けられた脆弱部同士の間隔が、当該内側の同心円(第一の円)よりも外側に位置する同心円(第二の円)に沿って設けられた脆弱部同士の間隔よりも狭くてもよい。
図15には、変形例に係る粘着シート10Gの平面図が示されている。なお、
図15では、本変形例の理解を容易にするために、粘着剤層の図示を省略し、基材フィルム11G(第一基材13Gおよび第二基材14G)を示している。また、第一脆弱部のみを示し、第二脆弱部の図示を省略している。また、内側に位置する第一の円C1の位置を実線で、外側に位置する第二の円C2の位置を点線で示している。さらに、第一の円C1に沿って設けられた第一脆弱部を18A、第二の円C2に沿って設けられた第一脆弱部を18Bで表している。
図15に示すように、内側に位置する第一の円C1に沿って設けられた第一脆弱部18A同士の間隔P1は、当該内側の第一の円C1よりも外側に位置する第二の円C2に沿って設けられた第一脆弱部18B同士の間隔P2よりも狭い。
なお、
図15では、2つの同心円(第一の円C1,第二の円C2)が形成された例を示したが、3以上の同心円が形成されている場合についても、本変形例に適用される。例えば、最も内側に設けられた同心円に沿って設けられた脆弱部同士の間隔が最も狭く、最も外側に設けられた同心円に沿って設けられた脆弱部同士の間隔が最も広く形成される。最も内側に設けられた同心円と最も外側に設けられた同心円との間に設けられた同心円において、同心円に沿って設けられた脆弱部同士の間隔は、粘着シートの外縁側から中心部に向かうにつれて順に間隔が狭くなるように形成される。
この態様によれば、第一の円C1に沿って設けられた第一脆弱部18A同士の間隔P1は、脆弱部同士の間隔が狭く、第二の円C2に沿って設けられた第一脆弱部18B同士の間隔P2に比べて引っ張り強度が弱くなる。そのため第一の円C1を構成する第一脆弱部18Aは、第二の円C2を構成する第一脆弱部18Bに比べて破断し易い。一方、間隔P2は、脆弱部同士の間隔が広いため、破断し難い。このため、円周方向と直交する方向に沿って粘着シート10Gを引き延ばしたときに、内側に位置する第一の円C1に沿って設けられた第一脆弱部18Aおよびその脆弱部同士の間隔P1が先に破断し、外側に位置する第二の円C2に沿って設けられた第一脆弱部18Bおよびその脆弱部同士の間隔P2が後から破断する。
【0068】
また、第四実施形態の同心円において、複数の同心円(第三の円、第四の円、第五の円)の半径寸法が所定寸法ごとに増加するように形成してもよい。
図16には、変形例に係る粘着シート10Hの平面図が示されている。なお、
図16では、本変形例の理解を容易にするために、粘着剤層の図示を省略し、基材フィルム11H(第一基材13Hおよび第二基材14H)を示している。また、第一脆弱部のみを示し、第二脆弱部の図示を省略している。また、第三の円C3、第四の円C4、第五の円C5の位置を実線で示している。さらに、第三の円C3に沿って設けられた第一脆弱部を18C、第四の円C4に沿って設けられた第一脆弱部を18D、第五の円C5に沿って設けられた第一脆弱部を18Eで表している。
図16に示すように、隣接する第三の円C3、第四の円C4、第五の円C5同士の半径寸法の差ΔDが、それぞれ一定となるように形成されている。隣接する同心円同士の間隔が等間隔に形成されているため、粘着シート10Hを引き延ばして、複数の同心円(第三の円C3、第四の円C4、第五の円C5)を構成する第一脆弱部18C,18D,18Eがそれぞれ分離、拡張されるため、粘着シートを等間隔に分離、拡張できる。