特許第6494438号(P6494438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494438
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】ガスセンサパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   G01N27/12 B
   G01N27/12 M
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-115026(P2015-115026)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-230316(P2015-230316A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】14171633.2
(32)【優先日】2014年6月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510014375
【氏名又は名称】センシリオン アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー フンツィカー
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト プスタン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ビューラー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス マイアー
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3173006(JP,U)
【文献】 特開平09−021774(JP,A)
【文献】 特開昭62−266450(JP,A)
【文献】 特開昭59−183356(JP,A)
【文献】 特開2004−093470(JP,A)
【文献】 特開2014−020853(JP,A)
【文献】 特開2014−062885(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0075140(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0056703(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサパッケージの製造方法において、
−半導体チップ(3)を担体(2)に取り付けるステップと、
−前記半導体チップ(3)を少なくとも部分的に包囲するモールド材料(1)を供給し、該モールド材料(1)によって覆われていない前記半導体チップ(3)の部分との接触部を提供する開口部(11)を前記モールド材料(1)に形成するステップと、
−前記開口部(11)を介して、前記半導体チップ(3)の前記覆われていない部分に感応材料を供給し、ガスに対して感応性の感応層(31)を形成するステップと、
を備えていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記モールド材料(1)を供給する前に、前記半導体チップ(3)を取り付け、
前記モールド材料(1)が供給された後に、前記感応材料を供給する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
−複数の半導体チップ(3)を受容するように構成されている共通の担体(2)である、前記担体(2)上に複数の半導体チップ(3)を取り付けるステップと、
−各半導体チップ(3)に対して、少なくとも部分的に前記半導体チップ(3)を包囲するモールド材料(1)を供給し、前記モールド材料(1)によって覆われていない前記半導体チップ(3)の部分との接触部を提供する開口部(11)を形成するステップと、
−各半導体チップ(3)に対して、前記開口部(11)を介して、前記半導体チップ(3)の前記覆われていない部分に前記感応材料を供給し、ガスに対して感応性の感応層(31)を形成するステップと、
によって、複数のガスセンサパッケージを製造する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
一つ以上の前記半導体チップ(3)を前記担体(2)に取り付ける前に、
−前記半導体チップ(3)の表面(fs)に処理回路(36)を集積し、
−前記半導体チップ(3)の表面(fs)にヒータ(34)を集積し、
−前記ヒータ(34)の直下において、前記半導体チップ(3)の裏面(bs)に凹部(32)を形成して、前記半導体チップ(3)にダイヤフラム(39)を形成することによって、
一つ以上の前記半導体チップ(3)を準備する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
−前記半導体チップ(3)が前記共通の担体(2)に配置されている間に、前記半導体チップ(3)の前記ヒータ(34)を加熱するステップを備えており、
−前記共通の担体(2)又は該共通の担体(2)の少なくとも一部に電流を供給することによって前記ヒータ(34)を加熱し、
−前記電流の供給時間及び大きさを、前記感応層(31)の熱処理に関して設定する、
請求項4と組み合わされた請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記モールド材料(1)を、一つの共通の製造ステップにおいて、前記共通の担体(2)上の全ての半導体チップ(3)に供給し、前記共通の担体(2)にわたり途切れのないモールド材料(1)を形成する、
請求項3又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記共通の担体(2)は、導電性のリードフレーム(4)を含み、
前記リードフレーム(4)は、前記半導体チップ(3)を取り付けるためのダイパッド(21)と、前記ガスセンサパッケージの電気的な接触接続を行うための複数のコンタクトパッド(22〜27)と、前記ダイパッド(21)及び前記コンタクトパッド(22〜27)に接続されている支持リード(41,411,412,42,421)とを含み、
前記方法は、
前記モールド材料(1)を供給し、前記開口部(11)を、前記モールド材料(1)の表面(FS)に配置し、前記ダイパッド(21)と、前記コンタクトパッド(22〜27)の少なくとも一部とを、前記表面(FS)とは反対側の、前記モールド材料(1)の裏面(BS)において、前記モールド材料(1)から露出させるステップ、
を備えている、
請求項3,5,6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コンタクトパッド(22〜27)に接続されている前記支持リード(41,411,42,421)又は前記コンタクトパッド(22〜27)を前記裏面(BS)から切断し、
記支持リード(411)又は前記コンタクトパッド(22〜27)を鋸引きによって切断する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各ダイパッド(21)は、それぞれが四つの角を持つ矩形の形状を有しており、
前記コンタクトパッド(22〜27)は、対応するダイパッド(21)の対向する辺に配置されており、
各ダイパッド(21)に接続されている前記支持リード(421)は、他の二つの辺のうちの少なくとも一つの辺において、前記ダイパッド(21)から延びており、
対応する前記ダイパッド(21)の一つの辺に配置されている前記コンタクトパッド(22〜27)、又はそれぞれの前記支持リード(411)を、鋸引きによって同時に切断し、
前記ダイパッド(21)に接続されている前記支持リード(421)は未だ切断しない、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のコンタクトパッドのうちの一つのコンタクトパッド(26)を、各ガスセンサチップ(3)のための前記ヒータ(34)に電流を供給するためのピンとして使用し、
前記複数のコンタクトパッドのうちの別の一つのコンタクトパッド(24)を、前記ヒータ(34)を除いて前記ガスセンサチップ(3)を動作させる電力を供給するための給電ピンとして使用し、
前記共通の担体(2)に配置されている各ガスセンサチップ(3)に関して、加熱電流を、ヒータピンとして使用される前記コンタクトパッド(26)に供給する、
請求項9と組み合わされた請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のコンタクトパッドのうちの第3のコンタクトパッド(23)を接地ピンとして使用し、且つ、前記ダイパッド(21)に電気的に接続し、
前記共通の担体(2)に配置されている各ガスセンサチップ(3)に関して、加熱電流を、ヒータピンとして使用される前記コンタクトパッド(26)と、接地ピンとして使用される前記第3のコンタクトパッド(23)と、の間に供給する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記感応層(31)を熱処理した後に、前記モールド材料(1)及び前記共通の担体(2)をダイシングし、前記複数のガスセンサパッケージに個別化する、
請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記感応層(31)を熱処理した後に、且つ、個別のガスセンサパッケージにダイシングする前に、前記ガスセンサチップ(3)を検査及び/又は較正する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モールド材料(1)を供給した後、且つ、前記感応材料を供給した後に、前記切断ステップを実施する、
請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記感応材料を、非接触式の分配によって、又は、インクジェット印刷によって、一つ以上の前記半導体チップ(3)の前記覆われていない部分に供給する、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサが半導体チップに集積される傾向が高まっている。その種のガスセンサの仕様及びガスセンサの動作を考慮して、ガスセンサパッケージの製造方法には、それらの仕様に対応することが要求されている。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0003】
半導体チップを担体に取り付けるステップと、半導体チップを少なくとも部分的に包囲するモールド材料を供給し、それによってモールド材料において開口部を形成するステップと、を備えている、ガスセンサパッケージの製造方法が提供される。開口部は、モールド材料によって覆われていない半導体チップの部分との接触部を提供する。感応材料が開口部を介して、半導体チップの覆われていない部分に供給され、それによってガスに対して感応性の感応層が形成される。
【0004】
有利には、複数の半導体チップを配置することができる担体を使用することによって、複数のガスセンサパッケージが同一の処理ステップで製造される。半導体チップが共通の担体に取り付けられた後に、担体にモールド材料が供給され、それによって、担体上の各半導体チップにもモールド材料が供給される。モールディング後に、感応材料が各開口部を介して、各半導体チップの覆われていない部分に供給され、それによってガスに対して感応性の感応層が形成される。例えばインクジェット印刷のような非接触式の分配によって、感応材料を供給することができる。モールド材料によって覆われていない部分全体が感応材料によって満たされることは必要とされない。感応材料を、その覆われていない部分の一部に供給することができる。つまり、パッケージがモールディングによって処理された後に感応層が形成される。
【0005】
パッケージを処理した後にそのパッケージの開口部を介して感応層を作製するという、上記の処理ステップの順序は、それとは逆の順序よりも有利である。つまり、感応層が既に形成されている場合には、パッケージの製造中、即ちモールディング中に感応層を保護することが必要になる。パッケージに先行して感応層が製造されているにもかかわらず、保護措置が講じられない場合には、モールディングプロセス及び/又は他の処理ステップが感応層に影響を及ぼし、例えば、感応層に機械的な損傷を与えるか、若しくは、モールディングプロセスに由来する粒子が感応層に付着するか、又は、感応層内に進入する場合には、検出特性に影響を及ぼす。これは特に、感応層が多孔性の層、例えば金属酸化物材料を含む層である場合である。周囲環境に直接的に接触させる必要がある他のセンサを用いる場合とは異なり、ガスセンサは有利には、そのような接触部をモールド材料における開口部の形態で必要とする。従って、感応材料を供給する前にモールディングが行われる場合、本発明に即していずれにせよ形成される、モールド材料における開口部は二重の用途を有する開口部である。つまり、その開口部を介してガスが測定動作中に感応素子に到達するだけでなく、その開口部を介して感応材料を半導体チップに供給し、それによって感応層を形成することもできる。
【0006】
製造ステップのこのような順序は、デバイスの処理においても利点を提供する。感応材料の分配を、担体に半導体チップを取り付けるためのツールとは異なるツールによって実行することができる場合、及び/又は、担体に半導体チップを取り付けるための場所とは異なる場所で実行することができる場合、デバイスは有利にはピッカーによってある場所から別の場所へと搬送される。モールド材料が既に供給されている場合、ピッカーは、デバイスを保護されていない半導体チップにおいてではなく、モールド材料において拾い上げることができる。このことは、個々の半導体チップが依然として共通の担体上にある状態でデバイスに対して更に何らかの処理を行う場合に該当するか、又はそれどころか、後になって、それらの個々のガスセンサパッケージが相互に個別化された後に該当する。
【0007】
従って、モールド材料を早期に設けることは取り扱いを簡略化し、また更なる製造ステップの間の保護を強化する。一つの特別な実施の形態においては、例えば開口部の内側における感応層を保護するために、薄膜又はテープによって開口部を一時的に閉鎖することができる。
【0008】
上記の製造ステップの順序では、感応材料の分配中に、半導体チップの大部分もモールド材料によって保護される。
【0009】
感応層を、一種類又は複数の検体に対して感応性である材料から形成することができる。感応層は複数の個別の層セクションを有することができ、それらの層セクションは相互に隣接して配置されており、且つ、センサセルのセットを含んでいるセンサアレイを形成するために相互に離隔されている。センサセルは個別に読み出すことができるガスセンサの構成要素であると解される。有利には、センサアレイのこの実施の形態においては、各層セクション又はそれらの層セクションのうちの少なくとも一部は複数の検体、特に異なる検体の検出に適している。検体は、例えばH2O、CO2、NOX、エタノール、CO、オゾン、アンモニア、ホルムアルデヒド又はキシレンのうちの一つ又は複数を含むことができるが、検体はそれらに限定されるものではない。特に、感応層は金属酸化物材料、とりわけ半導体金属酸化物材料を含むことができ、また特に、層セクション毎に組成が異なっている金属酸化物材料を含むことができる。金属酸化物材料は一般的に、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン、酸化インジウム及び酸化ガリウムのうちの一つ又は複数を含むことができる。その種の金属酸化物は、VOC、一酸化炭素、二酸化窒素、メタン、アンモニア又は硫化水素のような検体を検出するために使用することができる。金属酸化物センサは、100℃を超える範囲、特に250℃から350℃までの間の範囲に感応層の温度が上昇すると、ガス状の検体が金属酸化物層に作用するというコンセプトを基礎としている。触媒反応の結果として、感応層の導電性が変化し、この変化を測定することができる。従ってその種の化学センサは、感応層が高温になったときに検体の化学特性が電気抵抗に変換されることから、高温化学抵抗器とも称される。有利には、その種のガスセンサを用いることによって、少なくとも、そのガスセンサが感応する一種類又は複数の被検体の存在の有無に関して、ガスを検査することができる。従って、感応層を用いることによって、感応層が感応する化学物質又は化学成分は、供給されたガス内に存在するか否か、又は、感応層が感応する化学物質又は化学成分のうちのどの化学物質又は化学成分が、供給されたガス内に存在するかに関して、ガスセンサに供給されたガスを分析することができる。供給されたガスにおいて検出された検体の組み合わせは、特定の臭気又は特定のガスを示唆することができる。どれ程の数の検体にガスセンサが感応するか、及び/又は、検体のどれ程の数の特性にガスセンサが感応するかは、ガスセンサの設計においては常に問題となる。
【0010】
別の実施の形態においては、感応材料はポリマーを含むことができ、一つの実施の形態において、ポリマーはH2Oに対して感応することができるので、センサは湿度センサとなる。その種のポリマー層の容量又は抵抗を、感応層に作用する可能性があるガスに関する情報を導出するために測定することができる。
【0011】
感応材料が半導体チップに供給された後に、感応材料を加熱することによって、熱処理を行う必要になると考えられる。その段階でのアセンブリから各ガスセンサパッケージを個別化して、各感応層を個別に加熱するのではなく、一つの非常に有利な実施の形態においては、複数のガスセンサチップが共通の担体上に依然として残存している間に、即ちガスセンサパッケージを相互に個別化する前に、それらのガスセンサチップの感応層を熱処理することが想定される。しかしながら、慣例の熱処理ステップ、例えばガスセンサパッケージを備えている担体を外部から生成された熱に例えば炉内で晒す熱処理ステップは、そのような熱にモールド材料が晒された際にモールド材料が溶融する虞があるということを考慮すると適切ではない。従って、有利には、モールド材料又は他の有機材料に影響を及ぼすことなく、感応層が局所的に加熱される。このことは、一つの実施の形態において、ガスセンサチップを動作させるためにヒータが必要とされる場合、つまり、測定を実施するために所定の温度に感応層を加熱する必要がある場合に、各半導体チップにいずれにせよ設けられているヒータに電流を供給することによって達成することができる。この場合には、関連する感応層/感応材料を熱処理するために、各半導体チップのヒータに電流を供給することができる。
【0012】
一つの実施の形態においては、種々の半導体チップのための担体は少なくとも、導電性のリードフレームを含み、このリードフレームは例えば金属板の打ち抜き又はエッチングによって形成された金属製の複数のリードを含む導電性構造体であると解される。複数のガスセンサパッケージを単一の担体上に製造すべき場合には、その種のリードフレームは有利には、半導体チップを取り付けるためのダイパッドを有しており、このダイパッドは、半導体チップ毎に一つずつ設けられており、また、リードフレームの平坦な部分であると解される。例えばASIC等の他のチップが同一のガスセンサパッケージに配置されるべき場合には、ガスセンサパッケージ毎に複数のダイパッドを設けることができる。別の実施の形態においては、他のチップが、ガスセンサチップを表す半導体チップと同一のダイパッドに配置される。更に、リードフレームは各ガスセンサパッケージのための複数のコンタクトパッドを有しており、それらのコンタクトパッドは、ガスセンサパッケージの後の電気的な接触接続のために作製されるべきものである。単一部品から成る担体を提供するために、ダイパッド及びコンタクトパッドに接続するための支持リードがリードフレームに設けられている。各半導体チップがヒータを有している場合、有利には、各ガスセンサパッケージのコンタクトパッドのうちの一つが、ヒータに電流を供給するためのヒータピンとして構成されており、その一方で、別のコンタクトパッドは、ヒータを除いてガスセンサパッケージに電力を供給するためのピンとして使用される。
【0013】
関連するヒータによって感応層が熱処理される場合、ヒータピンを表すコンタクトパッドのみに加熱電流を選択的に供給することが所望される。しかしながら、その時点の製造段階では、リードフレームは依然として、全てのコンタクトパッド及びダイパッドに達している導電性構造体を提供している。熱処理のために必要とされるような大きさ及び時間の電流を全てのコンタクトパッドに供給することは望ましくない。何故ならば、そのような大きい加熱電流で動作するようには設計されていない半導体チップに影響が及ぼされる及び/又は損傷が生じる危険があるからである。
【0014】
従って、全てのコンタクトパッドを相互に電気的に絶縁させることが望ましい。そのような絶縁を行うために、有利には、必要に応じてコンタクトパッドを相互に電気的に分離させ、またリードフレームの残部から電気的に分離させるために、支持リードが切断される。
【0015】
コンタクトパッドの電気的な分離は、有利には、コンタクトパッドに接続されている支持リードを切断することによって達成される。この切断には、それらの支持リードの機械的な分断も含まれる。切断ステップは有利には、モールド材料の供給後、且つ、感応材料の供給後に実施される。切断ステップは有利には、コンタクトパッドに接続されている支持リード又はコンタクトパッド自体に対して、本発明によるデバイスの裏面から実施される。一般的に、裏面においてはリードフレームの一部に接触することができる。本発明によるデバイスの表面には有利には、ダイシング中にダイシングテープが取り付けられ、それによって、モールド材料における開口部が覆われ、従って開口部が保護される。
【0016】
有利には、各ダイパッドは4つの辺を有する矩形の形状を有しており、その場合、コンタクトパッドは対応するダイパッドの対向する辺に配置されている。その代わりに、各ダイパッドに接続されている支持リードは、他の二つの辺のうちの少なくとも一つの辺において、ダイパッドから延びている。これによって、一回の切断ステップ、例えば一回の鋸引きステップによって、対応するダイパッドの一つの辺に配置されている各支持リード又はコンタクトパッドを切断することができる。有利には、ダイパッドに接続されている支持リードは、この段階においては未だ切断されず、感応層の熱処理が終わった後にガスセンサパッケージを個別化するための最終的なダイシングステップにおいてのみ切断される。
【0017】
一つの有利な実施の形態においては、切断すべき個所を、例えばエッチングによって、マーキングすることができる。
【0018】
担体が準備され、また特に、担体のリードフレームがそのようにして準備されると、ヒータピンとして使用されるコンタクトパッドの内の一つ又は複数に加熱電流を供給することができ、それによって、例えば熱処理を実施することを目的として、半導体チップのヒータが加熱される。
【0019】
熱処理の後に、複数のガスセンサチップが依然として共通の担体を介して機械的に結合されている状態で、それらのガスセンサチップを、例えばコンタクトパッドにプローブを接触させることによって、検査及び/又は較正することができる。最終的に、担体、特にリードフレーム、また場合によってはモールド材料をダイシングし、ガスセンサパッケージを個別化することができる。一つの実施の形態においては、本発明によるデバイスの表面にダイシングテープが取り付けられ、それによって、モールド材料における開口部が覆われる。続いてデバイスが裏面からダイシングされ、それによって個別化されたガスセンサチップが得られる。そのようにして、開口部を介して接触することができる感応層がダイシング中に保護されるので、水又はダイシングされた材料によって感応層に影響が及ぼされることもない。
【0020】
半導体チップに関して、有利には、一つ以上の半導体チップを担体に取り付ける前に、半導体チップの表面に、有利には感応層からの信号を事前に処理し、且つ、ヒータを制御する処理回路を集積し、半導体チップの表面にヒータを集積し、また、ヒータの直下において、半導体チップの裏面に凹部を形成し、それによって半導体チップにダイヤフラムを形成することによって、一つ以上の半導体チップが準備される。半導体チップの裏面から材料を、例えばバルク基板材料をエッチング、例えばドライエッチング又はウェットエッチングするか、又は他の方式でそのような材料を除去することによって、凹部を作製することができる。凹部の上に残存する半導体チップの材料がダイヤフラムを形成し、このダイヤフラムは例えばCMOS層及び/又はバルク基板材料の一部を含むことができる。その種の凹部は、有利には処理回路を支持している半導体チップのその他の部分からダイヤフラムを断熱するために使用される。感応層がダイヤフラムに設けられ、またヒータがダイヤフラム上又はダイヤフラム内に存在する場合、ヒータによって生成された熱は、僅かな程度しか半導体チップの他の部分には伝達されない。モールド材料は有利には、その加熱された部分に接触しないようにするために、ダイヤフラムには供給されない。ガスセンサチップをダイパッドに取り付けた後に、半導体チップの凹んだ部分とダイパッドとによってダイヤフラムの直下に空所が形成される。動作中にヒータによってダイヤフラム内に生じた熱を、空所内のガスを介して、ヒートシンクとして機能するダイパッドに伝達することができる。ダイパッドを有利には、リードフレームと同様に、導電性且つ熱伝性の材料、例えば金属から形成することができる。一つの例においては、半導体チップをダイパッドに取り付けることができ、それによってダイパッドを介してガスセンサチップの基板を接地することができる。ダイパッドは、半導体チップのフットプリントにほぼ等しいフットプリントを有することができる。一つの実施の形態においては、孔又は他の種類のチャネルが作製されており、圧力均衡の関係から、そのような孔又はチャネルを介して空所の換気が行われ、また空所から湿気が除去される。そのような孔を、一般的にダイパッド及び/又は担体の材料に応じて、例えばエッチング、穴開け、レーザ穿孔、機械的な穿孔等によって作製することができる。
【0021】
一つの有利な実施の形態においては、コンタクトパッドを含む担体に一つ以上の半導体チップを取り付けた後に、且つ、モールド材料を供給する前に、その一つ以上の半導体チップは、直接的に又は別個のASICを介して、有利にはワイヤボンディングを用いて、対応するコンタクトパッドに電気的に接続される。
【0022】
一つの代替的な実施の形態においては、担体は、金属化部によって形成されている複数のコンタクトパッドを表面及び裏面にそれぞれ備えているプリント回路基板でよい。裏面に形成されているコンタクトパッドは、それらのコンタクトパッドの接続のために、プリント回路基板を貫通するビアを付加的に必要とする。プリント回路基板の代わりに、別の担体、例えばセラミック基板又はガラス基板を使用することもできる。
【0023】
モールド材料は有利には充填粒子を有するエポキシであり、この充填粒子は例えばガラスであり、特にSiO2でよい。またモールド材料は、感応層が供給される前に各半導体チップに供給される。そのようなモールド材料は有利には、半導体チップを少なくとも部分的に包囲及び/又は封止するように構成されている。複数のガスセンサパッケージが製造される場合、モールド材料は、一つの共通の製造ステップで、共通の担体上の全ての半導体チップに供給され、それによって、その共通の担体にわたる連続的な、即ち途切れのないモールド材料が形成され、また、他のチップも設けられている場合には、それらの他のチップも封止される。
【0024】
別の実施の形態においては、独立した複数のモールド材料ブロックが、後のガスセンサパッケージにモールディングされ、それらのモールド材料ブロックは、リードフレームの支持リードを介して相互に接続されている。
【0025】
モールド材料における開口部によって、測定すべきガスは、ガスセンサチップを集合的に形成する半導体チップにおける感応層と接触することができる。それと同時に、開口部によって、その開口部を介して感応層を形成することができる。
【0026】
感応材料を供給した後に、モールド材料はガスセンサチップを封止し、また実質的に感応層を除いてガスセンサチップを覆っているので、ガスセンサチップ自体、ガスセンサチップと担体との間の接着部、又は、担体自体等からのガス放出はいずれも測定に何の影響も及ぼさない。何故ならば、それらの構成要素は、感応層と共通の容積を共有しないからである。そのような共通の容積は、その種のパッケージ内のデッドボリュームを表し、またそれらの構成要素のいずれかからのガス放出は、特に感応層の動作に必要とされる加熱を考慮すると、測定に一時的に影響を及ぼすか、それどころか永続的に影響を及ぼす虞がある。しかしながら、本発明の実施の形態においては、このデッドボリュームは低減されており、また感応層に作用するあらゆるガス放出も制限されている。従って有利には、感応層と、担体、ガスセンサチップ及びそれらの間のあらゆる接着部とは、共通の容積を共有していない。
【0027】
開口部を有するパッケージを製造するために、モールディングプロセスにおいて使用されるモールドは突出部を有することができる。その場合、ガスセンサチップをモールディング中の機械的な影響から保護することができ、また所定の感応層の領域を、有利にはその領域における半導体チップの上面に配置された弾性層によって、及び/又は、モールドの突出部又はその少なくとも一部に配置された弾性層によってシールすることができる。モールディング後は、弾性層を再び除去することができる。一つの別の実施の形態においては、感応層が配置されることが予想される領域の周囲にシーリングフレームを設けることができる。開口部を作製するためのモールドの突出部を、モールディング中に応力解消フレーム上に載置することができる。シーリングフレームをモールディング後に除去する必要はない。このシーリングフレームを弾性材料から形成することができる。別の実施の形態においては、ガスセンサチップの上面に壁エレメントを配置することができ、その壁エレメントによって、感応層が配置されることが予想される領域が取り囲まれる。その種の壁エレメントを、例えば、ガスセンサチップに結合させることができるか、又は、フォトリソグラフィステップによって作製することができ、またモールド材料とは異なる材料から形成することもできる。更にこの壁エレメントは、感応層のために選定された領域にモールド材料が進入することを阻止するバリアとして機能する。この実施の形態においては、モールドは突出部を必ずしも必要とせず、それどころか平坦であってもよく、またモールディング中にモールドを壁エレメントに、例えばそのシーリング層に直接載置することもできる。壁エレメントは成形後に除去することはできないが、モールド材料が壁エレメントに留められるのであれば、そのモールド材料内の開口部を規定し続ける。壁エレメントは有利には、モールド材料とは異なる材料から形成されている。
【0028】
この実施の形態においては、ガスセンサチップをダイパッドに結合することができ、またその種のデバイスを、ガスセンサチップの部分的な封止部として使用されるだけでなく、コンタクトパッド及びダイパッドのための機械的な固定部としても使用されるモールド材料によってモールディングすることができる。
【0029】
本発明の別の態様によれば、上述の方法のいずれかの実施形態に応じて製造されたガスセンサパッケージが提供される。そのようなガスセンサパッケージでは、センサチップのための給電部として使用されるコンタクトパッドを介しては、ヒータに電力が供給されないことが想定される。ヒータピンとして使用される専用のコンタクトパッドを介して、ヒータに電力が供給される。このコンタクトパッドを、電気的な接続部及びガスセンサチップにおける金属化部を介して、直接的にヒータに接続することができる。ヒータが10mAを上回る電流、また場合によっては100mAにまで達する電流を必要とする場合、有利には、数mAのオーダにある電流、例えば1.8mAの電流が供給されるガスセンサチップの通常の動作のための給電部を、ヒータのための給電部から切り離すことができる。そのようにして、ガスセンサパッケージの動作の総合的な信頼性が高められる。ガスの信頼性の高い測定を実施するために、ガスセンサチップに対して、また有利にはその処理回路に対して、安定した精密な給電部が必要とされる。ヒータのための電流をガスセンサチップにおいて標準給電部から得ることになるならば、その種の標準給電部は変動を示す可能性があり、これは望ましいものではない。一つの有利な実施の形態においては、ヒータを動作させるためのピンとして使用されるコンタクトパッドと、ヒータを除いてガスセンサチップを動作させる電力を供給するための給電ピンとして使用される他のコンタクトパッドとは相互に離隔されており、また例えば、ガスセンサパッケージの裏面の異なる縁部に配置されている。このようにして、ガスセンサチップ及びその周囲の加熱が異なる端部から誘導され、また、それらのコンタクトパッドが隣接して設けられるとしても、一つのホットスポットにその熱が蓄積されることはない。一つの実施の形態においては、処理回路がガスセンサチップに集積されているか、又は、別個のASICとして設けられている処理回路がヒータの加熱を制御することができる。
【0030】
有利には、モールド材料における開口部はガスセンサパッケージの表面に配置されており、それに対して、コンタクトパッド及びダイパッドはガスセンサパッケージの裏面に配置されている。これによって、携帯可能な電子機器、例えば携帯電話、タブレット型コンピュータ等への使用に適している簡潔で小型のパッケージが提供される。この関係において、一つの有利な実施の形態では、ガスセンサパッケージが立方体の形状を有している。モールド材料における開口部は有利には環状のフットプリントを有しており、またその開口部を、一つの実施の形態においてはガスセンサパッケージの表面の中心に配置することができ、また別の実施の形態においては表面の中心から外れた位置に配置することができる。一つの実施の形態においては、接触開口部の幾何学は主に、感応層が配置されるべきダイヤフラムの寸法サイズに依存するので、ガスセンサパッケージの全体のサイズを最小するためには、可能であれば開口部の外側におけるモールド材料のフットプリントを縮小することが所望される。しかしながら、アクセス開口部のフットプリントを可能な限り小さく維持することも所望される。何故ならば、開口部によって規定される容積は、感応層に関するデッドボリュームであると考えられ、そのデッドボリュームを規定するモールド材料の表面が小さくなるほど、感応層に影響を及ぼすモールド材料のあらゆるガス放出を低減できるからである。一般的にその種の小型のサイズのパッケージは、携帯可能な電子機器にその種のガスセンサパッケージを適用するという観点から望ましいだけでなく、既に製作されたモールド材料の開口部を介して、感応層をガスセンサチップに提供できる製造方法も可能であるという観点からも望ましい。複数のガスセンサパッケージが依然として、その製造ステップ中に一つの共通の担体上に残存する場合、感応層をガスセンサパッケージに提供する作業ツールはいずれも、隣接するガスセンサパッケージの開口部間の移動距離が短くなるほどより高速に機能する。ここで、モールド材料は、例えばインクジェット印刷によって感応層が供給される場合には、ガスセンサパッケージに関する機械的な安定性を提供する。何故ならば、ダイヤフラムを含むガスセンサチップは既にモールド材料内で固定されているからである。更に、小型のサイズのパッケージは、デッドボリュームが低減されているという点で有利であり、また感応層に作用するあらゆるガス放出も制限する。
【0031】
従って、一つの有利な実施の形態においては、立方体状のガスセンサパッケージは、長さl×幅wのフットプリント(単位mm2)を有している。特に、立方体状のガスセンサパッケージはl(但し、l∈[2.3,2.6]mm)×w(但し、w∈[2.3,2.6]mm)mm2のフットプリントを有している。有利には、開口部の直径dは2mm未満であり、特にd∈[1.4,1.6]mmである。開口部の直径がガスセンサチップに向かって変化する場合、例えば狭くなる場合、直径dはその種の開口部の最大直径である。直径が狭くなる場合には、直径dはモールド材料の上部表面における直径である。それら全ての実施の形態は、小型のガスセンサパッケージを達成することを目的としており、またそれと同時に、ガス放出の影響に関連するデッドボリュームを限定し、且つ、感応層の効果的な断熱を実現することも目的としている。
【0032】
一つの実施の形態においては、ガスセンサパッケージが6個のコンタクトパッドを有している。上記において述べたように、それらのコンタクトパッドのうちの第1のコンタクトパッドは、ヒータに電流を供給するためのピンとして使用される。コンタクトパッドのうちの第2のコンタクトパッドは、ヒータを除いてガスセンサチップを動作させる電力を供給するための給電ピンとして使用することができる。コンタクトパッドのうちの第3のコンタクトパッドは接地ピンとして使用される。コンタクトパッドのうちの第4のコンタクトパッドは、通信プロトコルに準拠して通信された、ガスセンサチップからの測定データを少なくとも受信するためのデータピンとして使用される。コンタクトパッドのうちの第5のコンタクトパッドは、通信プロトコル、例えばI2Cプロトコルを動作させるクロックのためのピンとして使用される。コンタクトパッドのうちの第6のコンタクトパッドは、ガスセンサチップをプログラミングするためのプログラム可能なピンとして使用される。
【0033】
有利には、6個のコンタクトパッドはガスセンサパッケージの裏面において、3個ずつ2列になって配置されており、またダイパッドはそれらの3個ずつのコンタクトパッドから成る二つの列の間に配置されている。これによって、特にダイパッドが矩形の形状である場合には、密な配置構成が実現される。
【0034】
一つの有利な実施の形態においては、ガスセンサパッケージの表面は少なくとも一つのマーキングを有している。ガスセンサパッケージのフットプリントが矩形の形状である場合には、各マーキングは表面の一つの角に配置されている。有利には、複数ある角のうちの一つの角にマーキングが一つだけ設けられ、それによってガスセンサパッケージの向きが規定される。
【0035】
本明細書においては、モールド材料又はプレモールド材料は、少なくとも、何らかのプラスチック材料又はドライレジストを含むべきであり、それらは何らかの形でモールディングされ、例えば射出成形又はトランスファ成形されるか、若しくは他の方式でモールディングされる。
【0036】
本発明によるガスセンサパッケージは、種々の実施の形態において、その寸法が小型であるだけでなく、それと同時に、測定に影響を及ぼす可能性があるガス放出を低減し、安定した/「完全な」給電VDDを保証し、それと同時にガスセンサチップへの給電と干渉することなく、ヒータに大電流を供給する。感応層の加熱は局所的にしか行われず、そこでは温度が200℃を超え、また時にはそれよりも遙かに高い温度に到達することも考えられる。それに対し、ヒータ及び感応層を有しているダイヤフラムの外側では、センサ信号の処理への影響を回避するために、温度は例えば85℃を超えることはない。対応する処理回路は有利にはダイヤフラムの外側に配置されており、有利には、ディジタル信号をコンタクトパッドのうちの一つに供給する。本発明によるガスセンサパッケージは有利には、最終的に外部の支持部にSMD実装可能である。このプロセスステップにおいては、好適には、半導体チップが損傷することなく、モールドにおいてピッカーによってガスセンサパッケージを拾い上げることができる。
【0037】
ガスセンサパッケージの他の有利な実施の形態は従属請求項に記載されており、また以下においても説明する。
【0038】
本発明の種々の実施の形態、態様及び利点は、本発明の以下の詳細な説明より明らかになる。説明にあたり添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明による方法の実施の形態において実施される製造ステップa)からc)を示す。
図2】本発明による方法の実施の形態において実施される製造ステップa)からe)を示す。
図3】本発明の実施の形態によるガスセンサパッケージを斜視図(図3a))、上面図(図3b))、下面図(図3c))及び断面図(図3d))でそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、本発明の一つの実施の形態によるガスセンサパッケージを製造するための方法において実施される製造ステップa)からc)が示されている。これらのステップに基づき、後にパッケージングされてガスセンサパッケージとなる適切な半導体チップの製造を説明する。図1a)においては、半導体基板37及び積層体38を有しているウェハが準備される。積層体38は、ウェハの表側fsにおいて半導体基板37上に配置されている。そのようなウェハは標準CMOSウェハでよく、この標準CMOSウェハ内に、例えば集積処理回路36並びにコンタクトパッド35が作製される。ウェハ内の垂直方向の破線はダイシング溝を表しており、後にそれらのダイシング溝に沿ってウェハがダイシングされて、複数の半導体チップが得られる。ボンディングパッド35及び集積処理回路36に加え、ウェハの表側fsにはヒータ34も作製され、例えば積層体38のパターニングされた金属層のうちの一つに実現される。
【0041】
図1a)に示したウェハが準備されると、複数の凹部32がウェハの裏側bsに作製され、殊に各ヒータ34の直下に作製される。一つの実施の形態においては、凹部32を半導体基板37のエッチングによって作製することができる。そのようにして凹部32を作製することによって、後の半導体チップにはそれぞれダイヤフラム39が含まれることになる。ダイヤフラム39を積層体38から形成することができ、また場合によっては半導体基板の薄い部分から形成することができる。ダイヤフラム39は有利には断熱に利用される。
【0042】
図1c)によれば、ウェハはダイシングされて個別の半導体チップ3となる。各半導体チップ3はその表側fsに、ダイヤフラム39と、ダイヤフラム39上に配置されているか、又はダイヤフラム39内に集積されているヒータ34と、集積処理回路36と、半導体チップ3の電気的な接触接続を行うためのボンディングパッド35と、を有している。有利には、集積処理回路36及びボンディングパッド35はダイヤフラム39の外側に配置されている。
【0043】
図2には、本発明の一つの実施の形態による方法において実施される製造ステップa)からe)が示されている。
【0044】
図2a)によれば、リードフレーム4が準備される。図2a)には、その一部を切り取ったものが示されている。リードフレームは一般的に、導電性材料から形成されたグリッド状の構造体である。相互に接続されている個々のリードを、金属薄板のエッチング又は打ち抜きによって作製することができる。リードフレーム4上にガスセンサパッケージのセットを作製することを目的として、リードフレーム4が既に図2a)に示されているような形状で準備されると考えられる。この実施例ではリードフレーム4が、そのリードフレーム4上にガスセンサパッケージを形成するためのプラットフォームを二つしか含んでいないが、実際の製造においては、例えばそのリードフレーム4上に数十個又は数百個のセンサパッケージを形成するために、リードフレーム4は二つより遙かに多いプラットフォームを含むことができると解される。従って、リードフレーム4によって、共通の製造プロセスで製造されることが所望される全てのガスセンサパッケージに共通する担体2が与えられる。
【0045】
ここに示されているリードフレーム4は、例えば、複数の水平方向の支持リード41及び複数の垂直方向の支持リード42を含んでいる。リードフレーム4は更に複数のダイパッド21を含んでおり、各ダイパッド21は、半導体チップを取り付けるためのプラットフォームとして使用される。各ダイパッド21は、ダイパッド支持部とも称することができる支持リード421によって垂直方向の支持リード42に接続されている。水平方向の支持リード41は延長部のようなフィンガを含んでおり、各フィンガの端部セクションは、後のガスセンサパッケージのコンタクトパッド22〜27を表している。それらの端部セクションは破線によって示唆されており、そのような延長部は支持リード411とも称される。
【0046】
図2b)に示されている後続のステップにおいては、半導体チップ3が各ダイパッド21に取り付けられる。半導体チップ3は、図1に応じて準備された半導体チップでよい。各半導体チップ3の裏側bsがダイパッド21と対向するように、各半導体チップ3をダイパッド21に配置することができ、それによって、半導体チップ3の凹んだ部分とダイパッド21とから空所が形成される。後続のステップにおいては、ボンディングワイヤ4’によって示唆されているように、ワイヤボンディングによって、半導体チップ3がコンタクトパッド22,24〜27に電気的に接続される。
【0047】
図2c1)に示されている後続のステップにおいては、モールド材料1が構造体の上面に供給され、対応する半導体チップ3が封止されるが、その際、開口部11が残される。その開口部11を介して、半導体チップ3の一部、有利にはダイヤフラム39との接触部が提供される。モールド材料1は機械的な安定性を提供し、且つ、半導体チップ3を保護する。モールド材料1は有利には絶縁材料から成り、例えばガラス、特にSiO2のような充填粒子を含むエポキシから成る。モールド材料1を作製するために、図2c1)のデバイスがモールド内に挿入される。続いて、例えば液体のモールド材料がモールドに注入される。その後、モールド材料1を硬化させることができ、その結果、図2c1に示されているような固体のモールド材料1が得られる。この図からも見て取れるように、モールド材料は、担体2全体にわたり広がっており、従って、開口部31を除いて途切れのないモールド材料を形成している。図2c2)に示されている別の実施の形態においては、モールド材料1が独立したブロックとして後のガスセンサパッケージ各々に供給される。各ブロックは相互に分離されている。それらのモールド材料ブロックを作製するために、モールドは、図2c1)のモールド材料を作製するためのモールドの形状とは異なる形状を有している。
【0048】
図2d)に示されているステップにおいては、感応材料が各開口部11を介して、各半導体チップ3の一部に供給され、それによって感応層31が形成される。感応材料を非接触式に開口部11内に分配することができ、例えば溶液又は懸濁液の形態で感応材料を供給するインクジェットプリンタの印刷ヘッドを用いて分配することができる。
【0049】
感応材料が半導体チップ3に供給された後に、感応材料を熱によって熱処理することができる。ここに示されているアセンブリから各ガスセンサパッケージを個別化して、各感応層を個別に加熱するのではなく、全てのガスセンサチップが共通の担体2上に依然として残存している間に、即ちモールド材料1及び担体2をダイシングして個別のガスセンサパッケージを形成する前に、それら全てのガスセンサチップの感応層31を熱処理することが想定される。モールド材料1がデバイス全体の外部からの加熱に耐えられないシナリオも考えられるので、一つの実施の形態においては、有利には、半導体チップ3に集積されているヒータ34を用いて感応層31が局所的に加熱される。
【0050】
ヒータ34を用いて熱処理が行われる場合であっても、この段階ではリードフレーム4に対する電圧又は電流は最終的に全てのコンタクトパッドに供給されるので、この段階でのデバイスは未だ、ヒータに対してのみ加熱電流を選択的に供給することはできない。加熱電流が大きいこと、また熱処理プロセスの継続時間が長いことを考慮すると、ヒータに接続されているコンタクトパッドに対してのみ加熱電流を供給することが望ましい。この理由から、全てのコンタクトパッド22〜27を相互に電気的に絶縁させることが望ましい。そのような絶縁を行うために、好適には、コンタクトパッド22〜27に接続されている給電リード411が切断されるか、又は、コンタクトパッド22〜27自体が切断されるが、これはむしろ定義上の問題である。
【0051】
上記の目的から給電リードを切断するために、好適には、それらの給電リードがデバイスの裏側から切断される。この段階の裏側は図2eに示されている。切断の結果は、図2e)の下面図から見て取ることができる。鋸引き線9が示されており、この鋸引き線9に沿って、各ガスセンサパッケージのコンタクトパッド22〜27の支持リード411は切断される。図2e)に示されている二本の細い鋸引き線9の代わりに、異なる二つのダイパッドに割り当てられている複数のコンタクトパッドを一回の鋸引きステップで切断するために、二つのガスセンサパッケージ間に一本の太い鋸引き線を設けることもできる。ダイパッド21に接続されている支持リード421に対しては何もされない。つまり、鋸引きは水平方向においてのみ行われる。鋸引きステップの終了後に、電流をコンタクトパッド26及び支持リード42に供給することができる。支持リード42は、ダイパッド21を介して、接地ピンとして使用されるコンタクトパッド23に接続されている。この電流の供給によって、感応材料を含む感応層31を熱処理することができる。
【0052】
更なるステップにおいては、共通の担体2上の複数のガスセンサパッケージを較正及び/又は検査することができ、これは例えば、裏側からコンタクトパッド22〜27に電極を接触させることによって行われる。
【0053】
最後のステップでは、有利には、開口部を保護するためにデバイスの表面を用いてデバイスをダイシングテープに取り付けた後に裏面から、リードフレーム4及びモールド材料1をダイシングすることによって、ガスセンサパッケージを個別化することができる。
【0054】
図3には、本発明の一つの実施の形態による、個別化されたガスセンサパッケージが示されており、このガスセンサパッケージは有利には本発明の製造方法の実施の形態に即して製造されたものであり、特に図2に示した製造方法に即して製造されたものである。ガスセンサパッケージは、図3a)において斜視図で示されており、図3b)において上面図で示されており、図3c)において下面図で示されており、また図3d)において図3a)の線A−A’に沿った断面図で示されている。
【0055】
ガスセンサパッケージは、モールド材料1によって規定されており、且つ、表面FSと、その表面FSとは反対側に位置する裏面BSとを備えている立方体の形状を有している。モールド材料1における開口部11は、ガスセンサチップ3の感応層31との接触部を提供する。モールド材料1の表面FSにおける各角のうちの一つの角には、例えばレーザ処理、インクジェット印刷等によってマーキング6が設けられている。このマーキングは有利には、ガスセンサパッケージの向きを示すために使用されるが、しかしながらその代わりに、又はそれ以外にも、デバイス番号、シリアル番号、製造業者等のうちの少なくとも一つを表すことができる。側壁SWにおいては、コンタクトパッド22,23,24の前端並びに支持リード421がモールド材料1から露出されている。
【0056】
しかしながら一つの異なる実施の形態においては、複数設けられているコンタクトパッド及び/又はダイパッド支持部421のうちの少なくとも一つを、図1に示されているようにガスセンサパッケージの下端に接するように設けるのではなく、図1の右側に切り出して示したように、下端よりも高い位置に設けることができる。ここでは、ダイパッド支持部421が下端から例えば100μmから200μmの間の距離に配置されている。
【0057】
この実施例のガスセンサパッケージは、有利には0.7mmから0.8mmの間の高さhを有している。開口部11は円形の形状であり、また2mm未満の直径d、有利には1.4mmから1.6mmの間の直径dを有している。ガスセンサパッケージは、それぞれが有利には2.3mmから2.7mmの間の範囲にある長さlと幅wとからなる、l×wのフットプリントを有している。この感応層31は有利には、開口部の直径dよりも僅かに小さい直径を有しているので、従って、上から見ると感応層31の外側にあるガスセンサチップ3の一部が僅かながら見て取れる。
【0058】
図3c)からも見て取れるように、ガスセンサパッケージの裏面BSには6個のコンタクトパッド22〜27が設けられている。それらのコンタクトパッド22〜27は3個ずつ2列になって、ガスセンサパッケージの対向する2つの縁部に配置されている。有利には、各コンタクトパッドは0.5mm×0.5mm未満の寸法を有しており、また各列の各コンタクトピン間のピッチは0.8mmの範囲にある。有利には、コンタクトパッド26はヒータに電流を供給するためのヒータピンとして使用される。コンタクトパッド24は、ヒータを除いてガスセンサチップ3を動作させる電力を供給するための給電ピンとして使用される。コンタクトパッド23は接地ピンとして使用される。コンタクトパッド22は、I2Cプロトコルのような通信プロトコルに準拠して通信された、ガスセンサチップからの測定データを少なくとも受信するためのデータピンとして使用される。コンタクトパッド27は、通信プロトコル、例えばI2Cプロトコルを動作させるクロックのためのピンとして使用される。コンタクトパッド25は、例えば較正データを用いてガスセンサチップ3をプログラミングするためのプログラム可能なピンとして使用される。2つの列の間にはダイパッド21が設けられており、このダイパッド21はガスセンサチップ3の支持部として使用される。ダイパッド21は矩形の形状であるが、一つの角は面取りされており、その角をガスセンサパッケージの向きに関する視覚的及び/又は機械的なコーディング部として使用することができる。コンタクトパッド22〜27とダイパッド21とはモールド材料1によって機械的に繋がっている。
【0059】
図3d)の断面図によれば、ガスセンサチップ3はダイパッド21の上面に配置されており、例えば上面に結合されている。ガスセンサチップ3は表面fs及び裏面bsを有している。一つの実施の形態において、ガスセンサチップ3は、半導体基板と、その基板の上面に配置されているCMOS層と、を有することができる。ガスセンサチップ3の裏面bsに凹部32が形成されるように、基板を裏面bsからエッチングすることができるか、又は他の方式で部分的に除去することができる。ガスセンサチップ3に凹部32を形成した結果、ガスセンサチップ3には薄くなった構造部、つまりダイヤフラム39と称される構造部が生じている。感応層31はダイヤフラム39上又はダイヤフラム39内に配置されている。
【0060】
一つの特別な実施の形態においては、感応層31が金属酸化物層を含んでおり、この金属酸化物を加熱することによって化学的な検体を検出することができる。このために、抵抗性加熱器のようなヒータ34が、感応層31を加熱するために、ダイヤフラム33内又はダイヤフラムの下に配置されている。従って、ガス感応層31及びヒータ34のいずれも、凹部32の上方にあるダイヤフラム39上又はダイヤフラム39内に配置することができる。この配置構成は、ダイヤフラム39によってもたらされる断熱に負うものであり、また断熱によって測定の精度が改善される。
【0061】
一つの有利な実施の形態においては、ダイパッド21が、空所5と外部空間とを繋ぐための孔212を有している。空所5内のガスを介して、熱をヒートシンクとして機能するダイパッド21に伝達することができる。ダイパッドにおける孔212によって圧力の均衡を保つことができ、これは、ヒータによる加熱を考慮すると有利であると考えられる。
【0062】
上記においては本発明の複数の実施の形態を開示及び説明したが、本発明はそれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明を、添付の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々に実施及び実践できることは明らかである。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図3