【課題を解決するための手段】
【0010】
(第一の発明)
第一の発明は、X線CT装置(30)を収納可能なCT室(21)、および前記のX線CT装置(30)を作動させるために必要な電源を収納可能な電源室(22)を備えたコンテナ(20)に係る。
前記の電源室(22)および前記のCT室(21)に挟まれた位置には、前記のX線CT装置(30)を操作するための操作室(23)を位置させるとともに、その操作室(23)および前記のCT室(21)の間には、前記のX線CT装置(30)が作動時に発するX線を遮蔽可能な遮蔽壁(鉛入り壁24)を備える。
【0011】
(用語説明)
「コンテナ」とは、40ft型と呼ばれるISO規格の海上コンテナ、またはその40ft型よりも内側空間寸法が大きな輸送用コンテナである。 本発明に係る「医療用コンテナ」は、X線CT装置(30)を予め収納したコンテナとして提供する場合の他、X線CT装置(30)を収納していないコンテナとして提供しても、本願発明に含まれることを意図している。
「X線CT装置」とは、患部を透過させたX線のデータから画像を得るための装置である。一般には、アナログのX線データを画像はデジタルデータにまで加工する。
「電源室(22)」は、発電機(40)を内装する場合の他、外部電源と接続してその変圧などを実行できる中継機器を内装する場合、蓄電池を内装する場合などを選択できるものとする。
【0012】
(作用)
電源室(22)に電源(たとえば発電機40)を設置し、CT室(21)にてX線CT装置(30)を設置し、操作室(23)にX線CT装置(30)を操作するための設備を設置する。 電源(40)から電気エネルギをX線CT装置(30)へ供給して作動させれば、X線CT装置(30)を独立して作動させることができる。
X線CT装置(30)を独立して作動させることができるので、このコンテナ(20)を輸送した場所において、X線CT装置(30)を用いた検査が可能である。
【0013】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記のCT室(21)は、前記の遮蔽壁(24)以外の五面もX線の遮蔽が可能な遮蔽壁で覆われているとともに、 前記のCT室(21)の内壁の隅は曲面を形成する。
上記の「曲面」は、たとえば、床の最上面を形成する床材を壁の所定高さまで立ち上げることで、半径5〜10ミリメートル程度のアールを形成する。
【0014】
(作用)
CT室(21)の内壁の隅は角張っておらず、曲面となっているため、清掃がしやすく、清掃後にも早く乾燥する。そのため、雑菌の繁殖を抑制しやすく、感染症の原因を減らすことに寄与できる。
【0015】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記のX線CT装置(30)は、検査を受ける被検査者が横たわる寝台(32)と、その寝台(32)に対して長手方向を相対的に移動するスキャナ本体(31)とを備える。その寝台(32)の長手方向がコンテナ(20)の長手方向と一致するように、寝台(32)およびスキャナ本体(31)を設置する。
なお、「スキャナ本体(31)」について、「寝台(32)に対して長手方向を相対的に移動する」としたのは、後述する実施形態のように寝台(32)がスキャナ本体(31)に対して移動する場合の他、スキャナ本体(31)が寝台(32)に対して移動しても良いし、スキャナ本体(31)および寝台(32)が互いに移動しても良い、という趣旨である。
【0016】
(作用)
寝台(32)の長手方向は、CT室(21)へ収納すべき部材の中で、最も長い寸法である。これをコンテナ(20)の長手方向と一致するように設置したことで、寝台(32)およびスキャナ本体(31)を合理的に配置することとなる。たとえば、コンテナ(20)の幅寸法が40ft型にて足りることとなり、コンテナ(20)の選択、およびその運搬方法についての選択肢を狭めなくて済む。
【0017】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記の操作室(23)にはコンテナ(20)内への出入りを可能とするための出入り口(横扉29)を備える。
前記の遮蔽壁(鉛入り壁24)には、前記のCT室(21)と前記の操作室(23)との間で前記X線CT装置(30)での被検査者が行き来可能とする扉(鉛入り扉25)と、前記の操作室(23)から前記のCT室(21)の中を目視できるようにするための窓(鉛入りガラス26)と、を備える。
【0018】
(作用)
X線CT装置(30)による検査を受けるべき被検査者や、線CT装置(30)を操作する操作者は、出入り口(横扉29)からコンテナ(20)内へ出入りする。前記の被検査者は、操作室(23)から扉(鉛入り扉25)を使ってCT室(21)へ出入りする。
前記の操作者は、窓(鉛入りガラス26)からCT室(21)の中にいる被検査者を目視することができる。
【0019】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明における前記バリエーション3は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、前記のスキャナ本体(31)は、前記の遮蔽壁(24)から遠い側に位置するように設置するのである。
【0020】
スキャナ本体(31)は、前記の遮蔽壁(24)から遠い側に位置するように設置されていると、結果として寝台(32)が遮蔽壁(24)に近い位置に設置されていることとなる。そのため、被検査者は、操作室(23)から検査を受けるためにCT室(21)へ移動する場合の移動距離が短くなる。
【0021】
(第一の発明のバリエーション5)
第一の発明における前記バリエーション4は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、コンテナ(20)におけるCT室(21)に対応する側壁には、スキャナ本体(31)に相当する位置へ、観音開きとなるメンテナンス用扉(27)を備える。
【0022】
(作用)
CT室(21)において最も大きな部材であるスキャナ本体(31)は、コンテナ(20)における長手方向に垂直な断面形状に対して、余裕があまりない状態で配置されている。したがって、X線CT装置(30)にメンテナンスの必要が生じた場合などにおいては、メンテナンス作業がしにくい。
メンテナンス用扉(27)を備えたことで、メンテナンス作業のしやすい状態をつくり出すことができた。観音開きであるので、スキャナ本体(31)に干渉するおそれがなく、引き戸ではないので、CT室(21)の内部空間を狭めることもない。
【0023】
(第一の発明のバリエーション6)
第一の発明に係る医療用コンテナは、前記のX線CT装置(30)が取得した画像データを遠隔地へ送信可能なデータ送信装置を備えると、より好ましい。
「遠隔地」とは、本発明に係る医療用コンテナと物理的に離れた場所にあることを意味する。例えば、本発明に係る医療用コンテナの操作室に医師がいない場合、X線CT装置(30)が取得した画像データを見て診断などをすることができる医師がいる病院が「遠隔地」となる。
【0024】
(作用)
X線CT装置(30)が取得した画像データは、データ送信装置が遠隔地へ送信する。これによって、本発明に係る医療用コンテナと物理的に離れた場所にいる医師が、送信された画像データを見て診察をするなどのことが可能となる。結果として、医師が本発明に係る医療用コンテナのある場所へ移動しなくて済む、ということとなる。
【0025】
(第一の発明のバリエーション7)
前述した第一の発明のバリエーション6は、以下のように形成すると、より好ましい。
すなわち、 前記のCT室、電源室および操作室には、各室の気温や湿度などの環境データを取得可能な環境監視装置と、 前記のCT室、電源室および操作室における少なくとも気温を変更可能な空気調和機と、を備え、 前記のデータ送信装置は、前記の環境データをも遠隔地へ送信可能とするのである。
なお、ここでの「遠隔地」は、バリエーション6の「遠隔地」と異なっていても良いし、同じでも良い。
【0026】
(作用)
環境監視装置は、CT室、電源室および操作室における各室の気温や湿度などの環境データを取得する。そして、取得した環境データを、データ送信装置にて遠隔地へ送信する。
CT室、電源室および操作室における気温を空気調和機が変更可能であるので、空気調和機の操作指示を遠隔地から連絡したり、空気調和機を遠隔地から直接操作したりすることができる。
【0027】
(第一の発明のバリエーション8)
第一の発明に係る医療用コンテナは、前記のX線CT装置(30)を遠隔地から操作可能な操作データを受信可能な操作データ受信装置を備えることとすれば、より好ましい。
なお、ここでの「遠隔地」もまた、バリエーション6の「遠隔地」と異なっていても良いし、同じでも良い。
また、「操作データ」は、X線CT装置(30)のほか、前述の空気調和機、発電機(40)などを操作するためのデータを含むこととしても良い。
【0028】
遠隔地からX線CT装置を操作するための操作データが送信された場合、その操作データは操作データ受信装置が受信する。そして、その操作データによって、X線CT装置を遠隔地から操作することができる。