(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494465
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20190325BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20190325BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
H01L23/50 A
H01L23/50 G
H01L23/50 U
H01L21/56 R
H01L23/28 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-153577(P2015-153577)
(22)【出願日】2015年8月3日
(65)【公開番号】特開2017-34130(P2017-34130A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】窪田 晋也
【審査官】
木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−199664(JP,A)
【文献】
特開2001−024112(JP,A)
【文献】
特開平05−226532(JP,A)
【文献】
特開平06−302736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48−23/50
H01L 21/56
H01L 23/28−23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを載置するアイランドの裏面が封止樹脂から露出している半導体装置の製造方法において、
アイランドとインナーリードとアウターリードからなるリードフレームを成形する工程と、
前記アイランド上に半導体チップを載置する工程と、
前記半導体チップと前記インナーリードとをワイヤーを介して接続する工程と、
前記アイランド、前記半導体チップ、前記インナーリードおよび前記ワイヤーを樹脂封止する工程とからなり、
前記リードフレームを成形する工程は、アイランドとなるシート材をダイに置き、インナーパンチとパンチガイドとアウターパンチからなる成形金型を押し当て前記インナーパンチと当接する凹部と、前記パンチガイドと当接する突出壁と、前記アウターパンチと当接する薄肉部と、を同時に成形することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記リードフレームを成形する工程において、前記インナーパンチと前記パンチガイドとの段差が可変である成形金型を用いることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法
【請求項3】
前記リードフレームを成形する工程において、前記インナーパンチと前記アウターパンチとの間隔が可変である成形金型を用いることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂封止する工程において、金型内のキャビティの縦方向の中央にゲートと、前記キャビティの縦方向の中央より下方に前記薄肉部を設け、前記ゲートから樹脂注入することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を載置するアイランドの裏面が封止樹脂から露出する半導体装置およびの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体チップを載せるアイランドの裏面が封止樹脂から露出している高放熱タイプの半導体装置では、素子搭載部の裏面を封止金型に押し当てて封止樹脂を充填する際に、封止樹脂が素子搭載部の裏面と封止金型との間に流れ込み、アイランドの裏面側に薄バリが発生することがある。この場合、アイランドの裏面側の露出部の実効的な面積が減少して放熱効果が低下するという問題が生じる。
【0003】
そこで、アイランドの裏面側に凹形(くりぬき)とアイランド裏面の突出壁を形成することで、封止時の突出壁の下金型への押圧を向上させて、アイランドの裏面部の中央部までの薄バリの侵入を防ぐ対策を講じている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−175795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すように、アイランドの裏面側に凹形(くりぬき)を形成することで、アイランドの裏面への薄バリの侵入をある程度抑制することは可能であるが、完全に抑制されるわけではない。また、凹形の形状によっては、樹脂バリ除去工程において凹部に入り込んだ樹脂バリが十分に除去できずに、基板実装時に樹脂バリが起因となるボイドが発生し、放熱特性が低下する可能性があった。
本発明は、上記不具合に鑑みなされたもので、アイランド裏面への薄バリ付着を防止する半導体装置の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題解決のために以下の手段を用いた。
まず、半導体チップを載置するアイランドの裏面が封止樹脂から露出する半導体装置の製造方法において、前記アイランドとインナーリードとアウターリードからなるリードフレームを成形する工程と、前記アイランド上に半導体チップを載置する工程と、前記半導体チップと前記インナーリードとをワイヤーを介して接続する工程と、前記アイランドと前記半導体チップと前記インナーリードとワイヤーとを樹脂封止する工程とからなり、前記リードフレームを成形する工程は、アイランドとなるシート材をダイに置き、インナーパンチとパンチガイドとアウターパンチからなる成形金型を押し当てインナーパンチと当接する凹部と、パンチガイドと当接する突出壁と、アウターパンチと当接する薄肉部と、を同時に成形することを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【0007】
また、前記リードフレームを成形する工程において、前記インナーパンチと前記パンチガイドとの段差が可変である成形金型を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【0008】
また、前記リードフレームを成形する工程において、前記インナーパンチと前記アウターパンチとの間隔が可変である成形金型を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【0009】
また、前記樹脂封止する工程において、金型内のキャビティの中央にゲートと、前記キャビティの中央より下方に前記薄肉部を設け、前記ゲートから樹脂注入することを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【発明の効果】
【0010】
上記手段を用いることにより、アイランドの裏面側に発生する薄バリを抑制し、アイランドの露出部の実効的な面積が確保されて、高い放熱特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る半導体装置に使用するリードフレーム(アイランド)の製造工程を示す側面図である。
【
図3】本発明の第一の実施の形態に係わる半導体装置の(透過)平面図である。
【
図4】本発明の第一の実施の形態に係わる半導体装置の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。
半導体チップ2がアイランド7上に載置され、半導体チップ2上の電極(図示せず)はワイヤー3を介してインナーリード5と電気的に接続されている。アイランド7、半導体チップ2、ワイヤー3は封止樹脂4によって覆われている。そして、放熱性を向上させるためにアイランド7の裏面は封止樹脂4から露出している。インナーリード5から延伸されたアウターリード6もまた封止樹脂4から露出して、その端部が配線基板等に接続される。
【0013】
ここで、本発明の半導体装置1の特徴とするところは、アイランド7は、裏面の周囲の全周に渡って下方に突出する突出壁8とそれに囲まれた凹部14を有するとともに、アイランド7の側面の上端部に側方に突出する薄肉部9を有する点である。アイランド7の表面と薄肉部9の上面とは同じ高さであり、平面を形成している。突出壁8は、その高さが0.05〜0.10mm、幅は0.05〜0.20mmの範囲で制御可能である。アイランド7の裏面の周囲にこのような高さを有する突出壁7を設けることで、アイランド7上に載置された半導体チップ2を樹脂封止する際に突出壁8が樹脂封止用の下金型(図示せず)に押圧され、以下の理由により封止樹脂の浸入を防ぎ薄バリの発生を抑制することが可能になる。
【0014】
即ち、本発明ではアイランド7の側面の上端部に側方に突出する薄肉部9が設けられており、この薄肉部9は樹脂封止の際にアイランド7を下金型に押し付けるという役目を果たす。図示されていないが、樹脂を注入するゲートは上金型と下金型によって形成されるキャビティの縦方向の中央付近に設けられ、ここから周囲の金型に向かって樹脂が供給される。アイランド7の薄肉部9は上記中央付近よりも下方にあるため薄肉部9の上方の樹脂体積が下方の樹脂体積に比べはるかに大きく、アイランド7を下金型に押し付けるので、突出壁8の下を通って凹部14へ樹脂が浸入することを防ぐことになる。
【0015】
以上説明したように、本発明では、アイランドの周囲の下端部に下方に突出する突出壁とそれに囲まれた凹部を設けるとともにアイランド7の周囲の上端部に側方に突出する薄肉部を設けてあるので、アイランドの裏面に薄バリが発生するのを抑制し、露出部の実効面積が縮小される懸念を減らして、高い放熱性を確保できる。
【0016】
図2は、半導体装置のアイランド部の成形工程を示す側面図である。
ここでは、
図1に示すアイランド7を上下逆に図示している。アイランド7の厚さを誇張して描いている。ダイ13の平坦面上にアイランドの材料である銅または銅合金からなるシート材を、アイランド7の半導体チップ載置面が下になるように置かれ、アイランド7の裏面は成形金型によって成形されている。成形金型はインナーパンチ10とパンチガイド11とアウターパンチ12からなり、インナーパンチ10によってアイランド7の裏面に凹部14が形成される。インナーパンチ10の両端にはパンチガイド11が設けられ、これによって突出壁8の高さが決められ、パンチガイド11の外側に設けられたアウターパンチ12によって薄肉部9が形成される。
【0017】
すなわち、凹部14がインナーパンチ10と当接し、突出壁8がパンチガイド11と当接し、薄肉部9がアウターパンチ12と当接するように成形される。本発明ではインナーパンチ10とアウターパンチ12の両方からアイランド7が押されるためガイドパンチ11部には大量の銅部材がせり上がることになる。このため、突出壁8は最大0.10mmまでの高さとすることが可能であること、そして、この突出壁8と同時に形成された薄肉部9の存在によって樹脂封止時に封止樹脂の浸入を防ぎ薄バリの発生を抑制することが可能となる。
【0018】
なお、成形金型のインナーパンチ10とパンチガイド11とアウターパンチ12の相互高さと成形金型のシート材への押し当て圧の調整により、凹部14の深さと突出壁8の高さと薄肉部9厚さを調整することが可能となる。ここで用いる成形金型はインナーパンチ10とパンチガイド11との段差を可変とし、また、インナーパンチ10とアウターパンチ12との間隔を可変とすることができ、これにより、所望の高さと幅の突出壁が得られる。
【0019】
また、銀めっきを施した銅または銅合金からなるシート材からインナーリード5、アウターリード6、アイランド7を打ち抜きにより形成する。アイランド7は打ち抜き後にディプレス加工を行う。アイランド7は打ち抜き後に必要に応じて反り矯正を行う。シート材をディプレス加工後にフレームサイズにカットし、リードフレームの製作が完了する。
【0020】
図3は、本発明の第一の実施の形態に係わる半導体装置の透視平面図である。アイランド7の上には、導電性または絶縁性接合膜を介して半導体チップ2が載置され、半導体チップ2上の電極(図示せず)は金(Au)や銅(Cu)からなるワイヤー3を介してインナーリード5と電気的に接続されている。アイランド7、半導体チップ2、ワイヤー3は封止樹脂4によって覆われている。インナーリード5から延伸されたアウターリード6は封止樹脂4から露出して、その端部が配線基板等に接続される構成である。また、薄肉部9はアイランド7の全周囲に設けられることで封止樹脂4とアイランド7の接触面積を増加させ、密着性を向上させることでアイランド7が封止樹脂4から抜け落ちることを防止するという役目も果たしている。
【0021】
図4は、本発明の第一の実施の形態に係わる半導体装置の裏面図である。
封止樹脂4の側面から複数のアウターリード6が出て、封止樹脂の中央領域には全周囲に突出壁8を設けたアイランド7が配置されている。このアイランド7裏面の凹部14は露出しており、高い放熱性を確保できるようになっている。
【符号の説明】
【0022】
1 半導体装置
2 半導体チップ
3 ワイヤー
4 封止樹脂
5 インナーリード
6 アウターリード
7 アイランド
8 突出壁
9 薄肉部
10 インナーパンチ
11 パンチガイド
12 アウターパンチ
13 ダイ
14 凹部