特許第6494484号(P6494484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友理工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6494484-フレキソ印刷版原版 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494484
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】フレキソ印刷版原版
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/12 20060101AFI20190325BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B41N1/12
   G03F7/00 502
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-191468(P2015-191468)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-64996(P2017-64996A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森原 康滋
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 英幸
(72)【発明者】
【氏名】松岡 甲樹
(72)【発明者】
【氏名】所 圭輔
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/037289(WO,A1)
【文献】 特開2015−123714(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0236705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/12
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の面上に弾性体層を有し、
前記弾性体層が、下記(a)〜(c)を含有する組成物の架橋体からなることを特徴とするフレキソ印刷版原版。
(a)ゴムポリマー
(b)架橋剤
(c)塩酸吸液量15.0ml/5g以上のアセチレンブラック
【請求項2】
前記(a)が、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載のフレキソ印刷版原版。
【請求項3】
前記(b)が、過酸化物であることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキソ印刷版原版。
【請求項4】
前記(c)の嵩密度が、0.10g/cm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のフレキソ印刷版原版。
【請求項5】
前記(a)が、さらに1,2−ポリブタジエンを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフレキソ印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版原版に関し、さらに詳しくは、レーザ彫刻によって凸版を形成する原版として好適なフレキソ印刷版原版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷版を用いて、包装材やラベル、雑誌等の被刷体に、凸版印刷、凹版印刷、あるいは、平版印刷が行われている。このうち、凸版印刷は、凸版を用いて行われる。この凸版には、材質が柔らかいことから被刷体を選ばず、種々の被刷体に適用可能なフレキソ印刷版がある。
【0003】
フレキソ印刷版の原版から凸版を形成する方法としては、感光性樹脂層に所定の画像を露光して硬化した部分を浮き彫りにする方法とともに、架橋樹脂層にレーザ彫刻を行って所定の画像を浮き彫りにする方法がある。レーザ彫刻法による凸版形成に用いられるフレキソ印刷版原版としては例えば特許文献1に記載のものなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−30121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高精細な印刷物が求められる中、レーザ彫刻法による凸版形成に用いられるフレキソ印刷版原版においては、彫刻速度や彫刻ムラに課題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、レーザ彫刻可能なフレキソ印刷版原版において、彫刻速度に優れるとともに、彫刻ムラが抑えられたフレキソ印刷版原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係るフレキソ印刷版原版は、支持体の面上に弾性体層を有し、前記弾性体層が、下記(a)〜(c)を含有する組成物の架橋体からなることを要旨とするものである。
(a)ゴムポリマー
(b)架橋剤
(c)塩酸吸液量15.0ml/5g以上のアセチレンブラック
【0008】
前記(a)は、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体を含むことが好ましい。前記(b)は、過酸化物であることが好ましい。前記(c)の嵩密度は、0.10g/cm以下であることが好ましい。前記(a)は、さらに1,2−ポリブタジエンを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフレキソ印刷版原版によれば、弾性体層がアセチレンブラックを含有しており、アセチレンブラックは結晶性が高く熱安定性に優れるため、比較的高温まで発熱することができる。これにより、燃焼速度が向上するため、彫刻速度に優れる。また、アセチレンブラックの塩酸吸液量を15.0ml/5g以上とすることで、アセチレンブラックの分散性が向上する。これにより、彫刻ムラが抑えられる。
【0010】
前記(a)がエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を含むことで、インキによる膨潤がより抑えられる。前記(b)が過酸化物であることで、架橋密度が向上し、耐久性に優れる。前記(c)の嵩密度が0.10g/cm以下であることで、アセチレンブラックの分散性がより向上する。前記(a)がさらに1,2−ポリブタジエンを含むことで、アセチレンブラックの分散性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るフレキソ印刷版原版の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るフレキソ印刷版原版の断面図である。図1に示すように、一実施形態に係るフレキソ印刷版原版10は、支持体12と、接着剤層14と、弾性体層16と、を備える。支持体12の面上に、接着剤層14と弾性体層16とがこの順で積層されている。接着剤層14は、支持体12に接して設けられ、弾性体層16は、接着剤層14に接して設けられている。接着剤層14は、支持体12に弾性体層16を接着するものであり、支持体12の面上に弾性体層16を直接形成しても良好に密着するのであれば、接着剤層14はなくてもよい。
【0014】
支持体12は、その上に積層される弾性体層16などの層を支持する。支持体12としては、特に限定されるものではないが、例えば樹脂製フィルムが挙げられる。樹脂製フィルムとしては、寸法安定性に優れることから、PETフィルムなどのポリエステルフィルムが挙げられる。支持体12の厚さは、特に限定されるものではないが、その上に積層される弾性体層16などの層を支持するのに十分な強度が得られるなどの観点から、例えば50〜300μmの範囲内とすればよい。
【0015】
接着剤層14は、接着剤成分を含有する。接着剤成分としては、特に限定されるものではないが、支持体12および弾性体層16との密着性に優れるなどから、ポリエステル系接着剤が挙げられる。ポリエステル系接着剤のバインダー樹脂は、ポリエステル樹脂からなる。接着剤層14の厚さは、特に限定されるものではないが、密着性に優れるなどから1〜100μmの範囲内とすればよい。また、支持体12の表面には、活性基を付与する表面処理(プラズマ処理、UV処理、EB処理、コロナ処理など)を行ってもよい。
【0016】
弾性体層16は、下記(a)〜(c)を含有する組成物の架橋体からなる。
(a)ゴムポリマー
(b)架橋剤
(c)塩酸吸液量15.0ml/5g以上のアセチレンブラック
【0017】
(a)ゴムポリマーとしては、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ウレタンゴム(PUR)、フッ素ゴム(デュポンエラストマー社製「バイトン」など)、ポリサルファイドポリマー(東レ社製「チオコール」など)、これらの部分水添物などが挙げられる。ポリブタジエン(BR)としては、1,2−ポリブタジエン(1,2−BR)、1,4−ポリブタジエン(1,4−BR)が挙げられる。1,2−ポリブタジエンは、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンである。
【0018】
(a)ゴムポリマーとして例示する上記各ゴムポリマーは、(a)ゴムポリマーとして、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。これらのうちでは、耐インキ性に優れる(インキによる膨潤が抑えられる)ことから、(a)ゴムポリマーとして、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、ポリブタジエン(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)の1種または2種以上を含むことが好ましい。特に、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)を含むことが好ましい。また、耐インキ性に優れる(インキによる膨潤が抑えられる)とともに(c)の分散性を向上できるなどの観点から、(a)ゴムポリマーとして、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)と1,2−ポリブタジエンを合わせて含むことが好ましい。1,2−ポリブタジエンは、練りのときに、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)を含むポリマーの粘度を安定させることができ、これによって練りのせん断が安定し、分散性が安定して彫刻ムラが抑えられる。
【0019】
(a)ゴムポリマーとしてエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)を含む場合には、その含有量は、(a)ゴムポリマーを含むポリマー成分全体に対し、50〜100質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、75〜95質量%の範囲内である。
【0020】
(b)架橋剤は、(a)ゴムポリマーを架橋する架橋剤である。(b)架橋剤としては、硫黄、過酸化物、ヒドロシリル化合物、チオウレアなどが挙げられる。これらのうちでは、架橋密度などの観点から、過酸化物が好ましい。
【0021】
過酸化物は、特に限定されるものではない。熱的安定性と熱的分解性のバランスを考慮して適宜選択すればよい。過酸化物としては、具体的には、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタネート、ビス(3,5,5−トリメチル−1−オキソヘキシル)ペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、n−ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。過酸化物の含有量は、特に限定されるものではないが、(a)ゴムポリマーを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜10質量部などであればよい。
【0022】
(c)は、レーザ彫刻を容易にするためのエネルギー吸収体であり、赤外線吸収物質である。(c)は、アセチレンブラックからなる。他のカーボンブラックと比べて、アセチレンブラックは不純物が少なく結晶性が高い。このため、熱安定性に優れるので、比較的高温まで発熱することができる。これにより、燃焼速度が向上するため、彫刻速度に優れる。そして、(c)は、塩酸吸液量15.0ml/5g以上のアセチレンブラックである。これにより、アセチレンブラックの分散性が向上するため、彫刻ムラが抑えられる。塩酸吸液量が高いアセチレンブラックは、塩酸をより多く吸液可能であることから、表面が電子的にマイナスを帯びていると推察される。これにより、アセチレンブラック同士は電気的作用により相互反発し、練りのせん断力によって崩れやすくなる(分散しやすくなる)とともに、分散後の再凝集も電気的作用によって抑制されるために、分散性が向上すると推察される。したがって、(c)が塩酸吸液量15.0ml/5g以上のアセチレンブラックであることにより、彫刻速度に優れるとともに、彫刻ムラが抑えられる。
【0023】
アセチレンブラックの塩酸吸液量は、分散性がより向上するなどの観点から、より好ましくは20.0ml/5g以上、さらに好ましくは25.0ml/5g以上である。アセチレンブラックの塩酸吸液量は、JIS K1469(2003)に準拠して測定される。
【0024】
(c)は、また、嵩密度が0.10g/cm以下であることが好ましい。嵩密度が小さいことで、分散性がより向上し、彫刻ムラが抑えられる。この観点から、(c)の嵩密度は、より好ましくは0.08g/cm以下、さらに好ましくは0.05g/cm以下である。一方、(c)の嵩密度の下限は特に限定されるものではないが、練り加工時の飛散性などから、0.01g/cm以上とされる。(c)の嵩密度は、JIS K6219−2に準拠して測定される。
【0025】
(c)の含有量は、(a)ゴムポリマーを含むポリマー成分100質量部に対し、5〜40質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは10〜25質量部の範囲内である。ポリマー成分100質量部に対し、(c)の含有量が5質量部以上であると、彫刻しやすい。ポリマー成分100質量部に対し、(c)の含有量が40質量部以下であると、彫刻速度に優れる。
【0026】
組成物中には、上記(a)〜(c)以外に、他の添加剤が含まれてもよい。このような他の添加剤としては、加工助剤、充填材、可塑剤、共架橋剤、老化防止剤などが挙げられる。加工助剤としては、脂肪酸亜鉛、脂肪酸エステル、オルガノシリコーンなどが挙げられる。充填材としては、炭酸カルシウム、シリカ、クレーなどが挙げられる。
【0027】
可塑剤の種類は特に限定されるものではなく、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル、エステル系、エーテル系、エステルエーテル系、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、ポリイソブテンなどが挙げられる。可塑剤の含有量は加工性や取扱いの観点からポリマー成分100質量部に対し1〜100質量部の範囲内であることが好ましい。
【0028】
共架橋剤の種類は特に限定されるものではなく、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリル変性重合体、(メタ)アクリル金属塩、ビスマレイミドなどが挙げられる。共架橋剤の含有量は硬度などの観点からポリマー成分100質量部に対し1〜30質量部の範囲内であることが好ましい。
【0029】
老化防止剤の種類は特に限定されるものではなく、アミン系、フェノール系、ベンゾイミダゾール系、ジチオカルバミン酸ニッケル系、リン酸系、有機チオ酸系などが挙げられる。貯蔵安定性やブリードなどの観点からポリマー成分100質量部に対し0.1〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0030】
弾性体層16の厚みは、特に限定されるものではないが、生産性の観点から0.5〜5mmの範囲内であることが好ましい。
【0031】
フレキソ印刷版原版10は、例えば支持体12の面上に接着層14を介して上記の組成物を押出することにより弾性体層16を得るための架橋前の前駆体層を支持体12の面上に形成し、この前駆体層を架橋することにより得ることができる。
【0032】
以上の構成のフレキソ印刷版原版10によれば、弾性体層16がアセチレンブラックを含有しており、アセチレンブラックは結晶性が高く熱安定性に優れるため、比較的高温まで発熱することができる。これにより、燃焼速度が向上するため、彫刻速度に優れる。また、アセチレンブラックの塩酸吸液量を15.0ml/5g以上としているため、アセチレンブラックの分散性が向上する。これにより、彫刻ムラが抑えられる。このとき、(c)の嵩密度が0.10g/cm以下であることで、アセチレンブラックの分散性がより向上する。また、(a)がエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)とともに1,2−ポリブタジエンを含むことで、アセチレンブラックの分散性がより安定する。
【0033】
得られたフレキソ印刷版原版10は、弾性体層16にレーザ彫刻を行うことによりレリーフ像が形成される。レーザ彫刻後の表面には彫刻カスが付着するため、水等の洗浄液を用いて彫刻カスを洗い流した後、乾燥するなどの処理を行うとよい。これにより、所定のレリーフ像を有するフレキソ印刷版が得られる。
【0034】
レーザ彫刻の際に用いるレーザとしては、特に限定されるものではなく、公知のレーザを用いることができる。レーザとしては、炭酸ガスレーザ、半導体レーザ、YAGレーザなどが挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0036】
<弾性体層用組成物の調製>
表1に記載の配合組成(質量部)となるように各成分を配合し、100℃にてニーダー中で混練することにより弾性体層用組成物を調製した。
【0037】
使用した各成分は以下の通りである。
・EPDM:住友化学社製「エスプレン305」
・1,2−BR<1>:シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、JSR社製「RB810」
・1,2−BR<2>:シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、JSR社製「RB820」
・エチレン−ブテン共重合体:DOW製「ENGAGEHM7447、融点35℃」
・可塑剤:出光興産社製「ダイアナプロセスオイルPW−380」
・カーボン<1>:アセチレンブラック(塩酸吸液量25.8ml/5g、嵩密度0.05g/ml)、電気化学工業製「デンカブラックFX−35」
・カーボン<2>:アセチレンブラック(塩酸吸液量16.8ml/5g、嵩密度0.04g/ml)、電気化学工業製「デンカブラック粉状品」
・カーボン<3>:アセチレンブラック(塩酸吸液量10.4ml/5g、嵩密度0.15g/ml)、電気化学工業製「デンカブラックHS−100」
・カーボン<4>:アセチレンブラック(塩酸吸液量14.0ml/5g、嵩密度0.25g/ml)、電気化学工業製「デンカブラック粒状品」
・カーボン<5>:ファーネスブラック(嵩密度0.38g/ml)、東海カーボン製「シースト3」
・過酸化物:日油社製「パーブチルP」
なお、各カーボンの塩酸吸液量は、JIS K1469(2003)に準拠して測定した値である。また、各カーボンの嵩密度は、JIS K6219−2に準拠して測定した値である。
【0038】
<フレキソ印刷版原版の作製>
支持体として125μm厚のPETフィルムを用いた。この支持体の面上に、乾燥後の厚みが10μmとなるようにポリエステル樹脂溶解液(東洋紡製「バイロン30SS」、固形分30質量%)を含む接着剤層用塗工液をバーコートで塗工し、120℃で10分間乾燥させることにより、支持体上に接着剤層を形成した。次いで、支持体に形成された接着剤層の面上に100℃で弾性体層用組成物を100mm/分の速さで厚み1mm、幅50mm、長さ100mmで押出することにより前駆体層を形成した。次いで、1mmのスペーサーを設置した鉄板の間に前駆体層を挟み170℃のオーブン中で30分間加熱架橋処理を行うことにより、弾性体層の厚さが1mmのフレキソ印刷版原版を作製した。
【0039】
作製したフレキソ印刷版原版について、レーザ彫刻機を用いて所定のレリーフ像が形成されたフレキソ印刷版を作製し、その彫刻速度および彫刻ムラを評価した。また、弾性体層用組成物の練り加工性を評価した。評価方法および評価基準を以下に示す。弾性体層用組成物の配合組成および評価結果を表1に示す。
【0040】
<彫刻速度>
作成したフレキソ印刷版原版をパナソニックデバイスSUNX株式会社製LP−S502(波長1064nmのYAGレーザー)を用いて平均出力34W、50mm/sで1回彫刻し白抜き線を彫刻した。彫刻した印刷版の白抜き線を線に対し垂直方向に切断し、その断面からマイクロスコープで彫刻深度を測定した。彫刻深度100μm以上の場合を「○」、100μm未満を「×」とした。
【0041】
<彫刻ムラ>
作製したフレキソ印刷版原版をパナソニックデバイスSUNX株式会社製LP−S502(波長1064nmのYAGレーザー)を用いて平均出力34W、50mm/sで1回彫刻し白抜き線を彫刻した。彫刻した印刷版の白抜き線を線に対し垂直方向に切断し、その断面からマイクロスコープで彫刻深度を5点測定した。彫刻深度中央値±10%以内の場合を「○」、その範囲外の場合を「×」とした。さらに彫刻ムラが良いものとして彫刻深度中央値±5%以内の場合を「◎」とした。
【0042】
【表1】
【0043】
比較例3では、弾性体層のカーボンがファーネスブラックであり、彫刻速度に劣っている。比較例1〜2では、弾性体層のカーボンがアセチレンブラックであるが、その塩酸吸液量が15.0ml/5g未満と低く、彫刻ムラが大きい。これに対し、実施例では、弾性体層のカーボンがアセチレンブラックであり、その塩酸吸液量が15.0ml/5g以上と高く、彫刻速度に優れ、彫刻ムラも小さい。したがって、弾性体層のカーボンがアセチレンブラックであり、その塩酸吸液量が15.0ml/5g以上と高いことで、レーザ彫刻可能なフレキソ印刷版原版において、彫刻速度に優れるとともに、彫刻ムラが抑えられることがわかる。また、実施例における比較から、EPDMに加えて1,2−BRを含むことで、練りのせん断が安定し、分散性が安定して彫刻ムラがより抑えられることがわかる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 フレキソ印刷版原版
12 支持体
14 接着剤層
16 弾性体層
図1