(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業者の背中部側に位置するメインフレームと、前記メインフレームの左右にそれぞれ取り付けられる腰フレームと、が設けられ、作業者の腰周り部に取り付けられる取付部と、
左右方向に沿った揺動軸心周りに揺動可能に左右の前記腰フレームにそれぞれ取り付けられ、作業者の太腿部に補助力を伝達可能な揺動アーム部と、
左右の前記揺動アーム部を揺動駆動可能な駆動装置と、
左右の前記腰フレームを前記メインフレームに対してスライド案内させる長孔部を有する案内機構と、
前記長孔部と前記腰フレームに設けられた挿通孔とに挿通されて締め付け固定される締結具と、
左右の前記腰フレームに取り付けられ、長さを調整しながら作業者の腰周りに巻き付けて装着可能な腰ベルトと、が備えられ、
前記締結具によって、前記腰フレームが前記メインフレームに上下方向及び左右方向に位置固定されているアシストスーツ。
前記案内機構に、右の前記腰フレームに左右方向に沿って備えられている右のラックギヤと、左の前記腰フレームに左右方向に沿って備えられ、前記右のラックギヤと対向するように配置された左のラックギヤと、前記左のラックギヤと前記右のラックギヤとの間に位置し、前記左のラックギヤと前記右のラックギヤとに咬合するピニオンギヤと、が備えられ、
左右の前記腰フレームのうち一方の腰フレームの左右方向のスライド移動が、前記ピニオンギヤを介して、左右の前記腰フレームのうち他方の腰フレームに伝達されて、前記他方の腰フレームが前記一方の腰フレームと逆方向にスライド移動するように構成されている請求項1に記載のアシストスーツ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」の表記は、特に説明の無い限り、アシストスーツを背中に装着した作業者Wにとっての「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」を意味する。
【0012】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の実施形態の一例である第一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図5等に示されるアシストスーツには、作業者Wの背中部側に位置するメインフレーム10、作業者Wの肩部に取り付けられる左右の帯状の肩ベルト11、メインフレーム10に取り付けられる荷物持ち上げ部12、作業者Wの腰周り部に取り付けられる帯状の腰ベルト13、メインフレーム10に取り付けられる左右の脚作用部14が備えられている。
【0013】
図2、
図3等に示されるように、メインフレーム10には、縦方向に沿って延びる左右の縦フレーム15、左右の縦フレーム15の上端部からそれぞれ延出される延出アーム部16、左右の縦フレーム15の下部同士を連結支持する下部支持板17、左右の縦フレーム15の上下中間部同士を連結支持する中間支持板18、左右の縦フレーム15の上部同士を連結支持する上部支持板19等が備えられている。これにより、メインフレーム10は、枠状に構成されている。
【0014】
図1〜
図3等に示されるように、左右の延出アーム部16は、それぞれ、対応する縦フレーム15の上端部から斜め上方前方に向けて延ばされ、作業者Wの肩部を越えて延出されている。左右の延出アーム部16は、後方から前方に向かうにつれて、互いの左右間隔が広がるようになっている。左右のそれぞれの縦フレーム15と延出アーム部16とは、単一のパイプフレームを曲げることにより一体的に構成されている。左右の延出アーム部16の上端部には、ぞれぞれ、案内プーリ20が回転自在に支持されている。
【0015】
図1〜
図3、
図5等に示される左右の肩ベルト11は、それぞれ、メインフレーム10に取り付けられている。左右の肩ベルト11は、それぞれ、係止部と被係止部を備えるバックル機構等からなる第一長さ調整機構11Aにより、長さを調整しながら作業者Wの肩部に装着可能となっている。
図5に示されるように、左右の肩ベルト11とメインフレーム10との間には、それぞれ、作業者Wの背中部に当接可能なクッション材からなる背パッド11Bが備えられている。
【0016】
図1、
図2等に示されるように、中間支持板18の後面には、制御装置21が連結支持されている。制御装置21の後側を覆うように中間支持板18に連結された連結支持板22には、バッテリ23が連結されている。説明を加えると、バッテリ23は、メインフレーム10の後面側に設けられている。また、
図2に示されるように、バッテリ23は、制御装置21の後面側に位置している。つまり、バッテリ23は、後面視で、制御装置21と重複するようになっている。
【0017】
図1〜
図4に示されるように、荷物持ち上げ部12には、ウインチ機構を備える作動装置24、左右のメインワイヤ25、左右のバックアップワイヤ26、左右のハンド部27等が備えられている。バックアップワイヤ26は、メインワイヤ25よりも横内側に位置しており、緩められた状態にある。左右のメインワイヤ25の一端部、及び、左右のバックアップワイヤ26の一端部は、作動装置24に連結されている。作動装置24は、ハーネス(図示せず)を介して、制御装置21に接続されている。作動装置24の駆動により、左右のメインワイヤ25、及び、左右のバックアップワイヤ26の巻き取りと繰り出しとを行うことが可能となっている。
【0018】
左のメインワイヤ25、及び、左のバックアップワイヤ26は、管状のアウタケーブル28を通って左の案内プーリ20に案内されて、左の案内プーリ20から吊り下げられ、左のメインワイヤ25、及び、左のバックアップワイヤ26の他端部が、左のハンド部27に連結されている。右のメインワイヤ25、及び、右のバックアップワイヤ26は、管状のアウタケーブル28を通って右の案内プーリ20に案内されて、右の案内プーリ20から吊り下げられ、右のメインワイヤ25、及び、右のバックアップワイヤ26の他端部が、右のハンド部27に連結されている。
【0019】
図1〜
図3に示されるように、左のメインワイヤ25、及び、左のバックアップワイヤ26における左の案内プーリ20と左のハンド部27との間の箇所に亘って、左の駒状の係止片29が取り付けられている。右のメインワイヤ25、及び、右のバックアップワイヤ26における右の案内プーリ20と右のハンド部27との間の箇所に亘って、右の駒状の係止片29が取り付けられている。
【0020】
図2、
図3等に示されるように、左右のハンド部27は、それぞれ、金属製の板材を断面コ字状(フック状)に折り曲げて構成されている。左右のハンド部27は、互いに左右対称の形状となっている。
【0021】
図1〜
図3に示されるように、右のハンド部27には、押しボタン型式の手動操作部である上昇操作スイッチ30が備えられている。左のハンド部27には、押しボタン型式の手動操作部である下降操作スイッチ31が備えられている。上昇操作スイッチ30、及び、下降操作スイッチ31は、ハーネス(図示せず)を介して、制御装置21に接続されている。
【0022】
アシストスーツを装着した作業者Wは、右手で右のハンド部27を握るようにして持ち、左手で左のハンド部27を握るようにして持つ。作業者Wは、右手の親指で上昇操作スイッチ30を押し操作し、左手の親指で下降操作スイッチ31を押し操作する。
【0023】
なお、上昇操作スイッチ30、及び、下降操作スイッチ31は復帰型に構成されている。つまり、作業者Wが、上昇操作スイッチ30、及び、下降操作スイッチ31を押し操作している間は、上昇操作スイッチ30、及び、下降操作スイッチ31から信号が出力される。また、作業者Wが、上昇操作スイッチ30、及び、下降操作スイッチ31の押し操作を止めると、上昇操作スイッチ30、及び、下降操作スイッチ31からの信号の出力は停止される。
【0024】
さらに、
図1〜
図10に示されるように、このアシストスーツには、作業者Wの腰周り部に取り付けられる取付部33と、作業者Wの太腿部に補助力を伝達可能な左右の揺動アーム部34と、制御装置21により駆動される駆動装置32と、作業者Wの太腿部に装着される左右の脚ベルト35と、が備えられている。
【0025】
[取付部について]
図1〜
図8に示される取付部33として、メインフレーム10の下部支持板17と、左右の腰フレーム36と、が設けられている。左右の脚作用部14に、それぞれ、腰フレーム36、揺動アーム部34、脚ベルト35等が備えられている。
【0026】
[腰フレームについて]
図2、
図3、
図5〜
図8に示されるように、左右の腰フレーム36は、メインフレーム10の下部支持板17の横外側にそれぞれ取り付けられる。
図4、
図8に示されるように、腰フレーム36は、上面視で、略L字状の形状となっている。左右の腰フレーム36の外形は、互いに略左右対称となっている。
【0027】
図2、
図3、
図5〜
図8に示されるように、腰フレーム36は、メインフレーム10側に取り付け支持される左右方向に沿って延びる基部37と、基部37の横外側部に連結され、前後方向に沿って延び、補助力を伝達するための駆動部38と、が備えられている。
図3、
図5〜
図8に示されるように、基部37には、強度の確保を図るべく、複数の補強リブが設けられている。
【0028】
図4、
図5等に示されるように、左右の腰フレーム36のそれぞれに、腰ベルト13が取り付けられている。
図4に示されるように、左右の腰ベルト13には、それぞれ、作業者Wの腰周り部に当接するクッション材からなる腰パッド13Aが備えられている。腰パッド13Aは、腰ベルト13を挿通することにより、腰ベルト13に保持されている。腰ベルト13は、係止部と被係止部を備えるバックル機構等からなる第二長さ調整機構39により、長さを調整しながら作業者Wの腰周りに巻き付けて装着可能となっている。
【0029】
図7等に示されるように、左右の腰フレーム36と下部支持板17との間には、それぞれ、第一調節機構40が備えられている。左右の第一調節機構40には、それぞれ、下部支持板17において左右方向に沿って延びる上下一対の長孔部41、ボルト・ナットの組み合わせ等により構成される上側の左右2つ、下側の左右2つの合計4つの締結具42と、左右の2つの締結具42を挿通する左右方向に延びる上下一対のプレート43と、が備えられている。プレート43の後面には、左右の2つの締結具42のナットを収容可能な凹部が設けられている。左右の腰フレーム36には、それぞれ、締結具42を挿通する挿通孔が設けられている。つまり、締結具42とプレート43とは、腰フレーム36の基部37と一体的に移動するように構成されている。
【0030】
各締結具42は、六角レンチ等の工具を用いて、前面側から締結及び締結解除操作を行うことが可能となっている。左右の腰フレーム36のそれぞれは、各締結具42を緩めて、基部37を長孔部41内で左右方向にスライド移動させてから所定の箇所に各締結具42を締結することにより、メインフレーム10の下部支持板17に対する腰フレーム36の位置を調節できる。このようにして、メインフレーム10に対する左右の腰フレーム36の位置を調節することにより、左右の脚作用部14間の左右幅を容易に調節できる。
【0031】
[揺動アーム部について]
図1〜
図8に示される左右の揺動アーム部34は、それぞれ、剛性部材からなる板部材により構成されている。左右の揺動アーム部34は、それぞれ、左右方向に沿った揺動軸心P1周りに揺動可能に、取付部33の腰フレーム36に取り付けられている。
【0032】
揺動アーム部34は、作業者Wの太腿部に補助力を伝達可能に構成されている。揺動アーム部34は、左右方向に沿った揺動軸心P1周りに揺動可能に腰フレーム36の前部側に取り付けられている。
【0033】
[駆動装置について]
図2〜
図8に示されるように、左右の駆動装置32は、それぞれ、対応する腰フレーム36に設けられ、揺動アーム部34を揺動駆動可能に構成されている。左右の駆動装置32には、それぞれ、ギヤ機構44と、電動式の駆動モータ45と、が備えられている。ギヤ機構44は、アシストスーツを装着する作業者Wの横外側に位置している。駆動モータ45は、アシストスーツを装着する作業者Wの腰周り部の後面側に位置している。
【0034】
図6、
図8に示されるように、ギヤ機構44は、腰フレーム36に設けられている。ギヤ機構44は、駆動モータ45と揺動アーム部34とに連繋されている。腰フレーム36の駆動部38には、ギヤ機構44を収容するギヤケース46が備えられている。ギヤケース46は、基部37に連結される本体ケース部47と、本体ケース部47に対してボルト等により着脱可能なカバー部48と、が備えられている。ギヤ機構44は、本体ケース部47と、カバー部48との間に位置している。
【0035】
図1〜
図8等に示されるように、カバー部48の横側部側には、揺動アーム部34が固定して取り付けられる駆動軸57の回動角度(揺動アーム部34の揺動角度)を検出可能なロータリエンコーダにより構成される角度検出装置49が備えられている。角度検出装置49は、ハーネス(図示せず)を介して、制御装置21に接続されている。
【0036】
図6、
図8に示されるように、ギヤ機構44には、平ギヤからなる複数のギヤが備えられている。具体的には、複数のギヤとして、伝動上手側から伝動下手側に向かうにつれて、順に、駆動モータ45の出力軸55に固定される第一ギヤ50と、第一ギヤ50に咬合される第二ギヤ51と、第二ギヤ51と一体で第二ギヤ51よりも小径の第三ギヤ52と、第三ギヤ52に咬合される第四ギヤ53と、第四ギヤ53と一体で第四ギヤ53よりも小径の第五ギヤ54と、第五ギヤ54に咬合する扇状ギヤ56と、が備えられている。扇状ギヤ56の中心には、駆動軸57が一体的に取り付けられており、駆動軸57には、回動フランジ58を介して、揺動アーム部34が一体的に揺動可能となるように取り付けられていう。駆動軸57の回動軸心が、揺動アーム部34の揺動軸心P1となっている。
【0037】
図8等に示されるように、これら複数のギヤによる動力伝動の方向は、略前後方向に沿うようになっている。駆動モータ45の出力軸55の駆動軸心P2が左右方向に沿っているので、駆動モータ45とギヤ機構44との間にベベルギア機構が不要となり、簡素な構造にできるとともに、ベベルギア機構による異音の発生等の不都合を回避できる。
【0038】
図6、
図8に示されるように、ギヤ機構44における複数のギヤのうち伝動最下手側に位置するギヤは、略半月形状の扇状ギヤ56により構成されている。ギヤケース46内には、扇状ギヤ56における一端部と他端部との両端部に当接可能なストッパ59が備えられている。ストッパ59により、揺動アーム部34の揺動角度が規制されるように構成されている。
【0039】
[駆動モータについて]
図1〜
図8に示される駆動モータ45は、ギヤ機構44に駆動力を付与する。駆動モータ45を駆動する電力は、バッテリ23から供給されるようになっている。駆動モータ45は、駆動モータ45の駆動軸心P2が左右方向に沿うように配置されている。駆動モータ45は、バッテリ23よりも後方に突出しない状態で配置されている。駆動モータ45は、腰フレーム36の後部側に設けられている。駆動モータ45は、ギヤケース46の後端部よりも前方に配置されている。駆動モータ45は、腰フレーム36の基部37内に収容されている。
【0040】
[脚ベルトの具体構造について]
図1〜
図3、
図5に示される脚ベルト35は、幅広の帯形状とされている。脚ベルト35は、可撓性及び弾性を有する樹脂部材により構成されている。具体的には、脚ベルト35は、ポリプロピレン製とされている。脚ベルト35は、揺動アーム部34の横内側に取り付けられている。脚ベルト35の幅の長さは、揺動アーム部34の長手方向の長さの1/2よりも長くなっている。なお、揺動アーム部34の長手方向とは、揺動軸心P1の近傍の揺動基端部と、揺動基端部とは反対側に位置する遊端部とを結ぶ方向である。
【0041】
図1、
図5〜
図7に示されるように、脚ベルト35は、脚ベルト35の幅方向の一端部側の箇所である、揺動アーム部34の揺動軸心P1側の第一固定部60と、脚ベルト35の幅方向の一端部側の箇所とは反対側に位置する脚ベルト35の幅方向の他端部側の箇所である第二固定部61と、の少なくとも2箇所で、揺動アーム部34に固定されている。
【0042】
また、
図1、
図5〜
図7に示されるように、脚ベルト35は、脚ベルト35の幅方向の一端部側の箇所である第一固定部60と脚ベルト35の幅方向の他端部側の箇所である第二固定部61との間に位置する箇所である第三固定部62、及び、第四固定部63においても、揺動アーム部34に固定されている。
【0043】
第一固定部60、第二固定部61、第三固定部62、第四固定部63においては、それぞれ、ネジ等の締結部材により、揺動アーム部34に脚ベルト35が固定されている。
【0044】
図1、
図5に示されるように、脚ベルト35を揺動アーム部34に固定する箇所である第一固定部60、第二固定部61、第三固定部62、第四固定部63は、脚ベルト35の幅方向に沿って並んでいる。また、
図1、
図5〜
図7に示されるように、脚ベルト35を揺動アーム部34に固定する箇所である第一固定部60、第二固定部61、第三固定部62、第四固定部63は、長手方向と直交する直線状に並ぶようになっている。このように、脚ベルト35は、複数(例えば4つ)の箇所で、揺動アーム部34に固定されている。
これにより、揺動アーム部34を駆動した際に、脚ベルト35が捻れにくく、脚ベルト35により揺動アーム部34から作業者Wの太腿部に補助力が好適に伝達されるものとなる。
【0045】
[連結部について]
図1〜
図3に示されるように、脚ベルト35は、作業者Wの太腿部の全周に巻き付けて装着されるようになっている。
図1〜
図3、
図5に示されるように、脚ベルト35の長手方向の一端部64と脚ベルト35の長手方向の他端部65とを連結及び連結解除可能な連結部66が備えられている。連結部66は、面ファスナ機構により構成されている。
図5に示されるように、連結部66には、一端部64に設けられる面ファスナの第一接着部67と、他端部65に設けられ、第一接着部67に連結及び連結解除可能な第二接着部68と、が備えられている。他端部65には、手で操作可能な操作部65Aが設けられている。
【0046】
図5に示されるように、脚ベルト35の長手方向の一端部64、及び、脚ベルト35の長手方向の他端部65は、揺動アーム部34に固定された固定部(第一固定部60、第二固定部61、第三固定部62、第四固定部63)とは異なる箇所に位置する自由端部となっている。
【0047】
図1〜
図3に示されるように、脚ベルト35は、脚ベルト35の装着状態において、作業者Wの太腿部の付け根から足先に向かうにつれて脚ベルト35で取り囲まれる断面積が小さくなる円錐状となるように構成されている。説明を加えると、
図5に示されるように、脚ベルト35は、展開すると、略扇状の形状となっている。
【0048】
〔アシストスーツの装着について〕
まず、作業者Wの腰周り部に合せて、
図7等に示される第一調節機構40により、メインフレーム10の下部支持板17に対する左右の腰フレーム36の位置を調節することにより、脚作用部14間の左右幅を調節する。この際、第一調節機構40に長孔部41を採用しているので、締結具42を緩めた状態にして、腰フレーム36をメインフレーム10から取り外すことなく、左右方向にスライド移動させ、再度、長孔部41の適切な箇所で締結具42を締結するだけで、簡単に、脚作用部14間の左右幅を調節できる。
【0049】
次に、
図1〜
図3等に示されるように、左右の肩ベルト11に作業者Wの左右の腕部(左右の肩部)を入れ、腰ベルト13を作業者Wの腰周り部に巻き付けて固定することにより、作業者Wの背中部にメインフレーム10が取り付けられる。
【0050】
次に、
図1〜
図3、
図5に示される左右の脚ベルト35を、対応する太腿部に取り付ける。脚ベルト35は、作業者Wの太腿部の前側、内側、後側を順に通過するようにして作業者Wの太腿部に巻き付けられてから連結部66の連結により作業者Wの太腿部に装着されるように構成されている。ここで、
図1、
図2に示されるように、連結部66は、脚ベルト35の装着状態において、作業者Wの太腿部の後側付近(太腿部の横外側)の箇所に位置している。このため、脚ベルト35の締め付け具合等の調節を容易に行うことができる。以上のようにして、作業者Wは、アシストスーツの装着を行う。
【0051】
〔アシストスーツの動作について〕
一般的に、作業者Wは、床面に置かれた荷物を、床面よりも高い載置面(例えば、高い棚やトラックの荷台等の載置面)に移動させる場合、しゃがんで床面に置かれた荷物を手で持ち、次に手を下方に向けて延ばした状態で荷物を持ちながら立ち上がり、載置面まで荷物を手で持ち上げて置くような動作を行う。このような動作を、アシストスーツを装着した作業者Wが行う場合について、以下に説明する。
【0052】
アシストスーツを装着した作業者Wが、
図1〜
図4に示される上昇操作スイッチ30、及び、下降操作スイッチ31の両方を押し操作していない場合、作動装置24が停止するとともに、左右の脚作用部14の駆動モータ45が停止状態(自由回転状態)となる。これにより、作業者Wが歩行する場合や、作業者Wが膝部を曲げて腰部を落とす場合(しゃがむ場合)、作業者Wの太腿部に追従するように揺動アーム部34が揺動され、作業者Wの動作が妨げられることはない。
【0053】
次に、作業者Wがしゃがんで床の荷物を手で持つ場合、作業者Wが左のハンド部27の下降操作スイッチ31を押し操作すると、左右のメインワイヤ25、及び、左右のバックアップワイヤ26が作動装置24から繰り出され、左右のハンド部27が下降する。下降操作スイッチ31の押し操作を止めると、作動装置24が停止して、左右のハンド部27の下降が停止する。
【0054】
作動装置24には、ブレーキ機能が備えられている。作動装置24が停止した状態において、左右のメインワイヤ25、及び、左右のバックアップワイヤ26が、作動装置24から繰り出されることはない。つまり、作動装置24が停止した状態では、左右のハンド部27に荷物の重量が掛かっても、左右のハンド部27が下降することはない。
【0055】
次に、作業者Wは、左手で左のハンド部27を持ち、かつ、右手で右のハンド部27を持つ。そして、左右のハンド部27を荷物に掛けた状態で、作業者Wが立ち上がることにより荷物が床から持ち上がる。この状態において、作業者Wが上昇操作スイッチ30を押し操作すると、左右の脚作用部14が下方に操作され、左右の脚作用部14から作業者Wの左右の太腿部を下方に押圧する補助力が作用し、これにより、作業者Wの立ち上がりが補助される。作業者Wが立ち上がる際には、作動装置24のブレーキ機能により、左右のハンド部27は下降することがなく、荷物の落下が生じないようになっている。
【0056】
作業者Wが上昇操作スイッチ30を押し操作した状態で立ち上がった後、左右の脚作用部14が略真下に向く位置に達したことが検出されると、作業者Wが完全に立ち上がったと判断されて、左右の脚作用部14の駆動モータ45は停止状態(自由回転状態)となる。
【0057】
次に、作動装置24が作動して、左右のメインワイヤ25、及び、左右のバックアップワイヤ26が作動装置24に巻き取られ、左右のハンド部27が上昇して荷物が持ち上がる。所望の高さ位置まで荷物が持ち上がると、作業者Wが上昇操作スイッチ30の押し操作を止めることにより、作動装置24が停止して、左右のハンド部27の上昇が停止する。
【0058】
なお、左右のメインワイヤ25、及び、左右のバックアップワイヤ26が必要以上に巻き取られようとすると、案内プーリ20に係止片29(
図1〜
図3参照)が当接して、左右のメインワイヤ25、及び、左右のバックアップワイヤ26が、それ以上巻き取られないように規制される。
【0059】
次に、作業者Wは、荷物を置くべき載置面が設けられた高い棚やトラックの荷台等へ歩いて移動する。次に、作業者Wが載置面の近傍に到着すると、下降操作スイッチ31を押し操作して、左右のメインワイヤ25、及び、左右のバックアップワイヤ26を繰り出して、左右のハンド部27を下降させて、荷物を降ろす。そして、荷物が載置面に置かれると、左右のハンド部27を荷物から外す。
【0060】
以上の動作を繰り返すことにより、アシストスーツを装着した作業者Wは、荷物の持ち上げ移動を楽に行うことができる。
【0061】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の一例である第二実施形態について説明する。第二実施形態におけるアシストスーツの構成は、説明している事項以外は、第一実施形態におけるアシストスーツと同様である。なお、第二実施形態は、第一実施形態の第一調節機構40を、
図9、
図10に示される第二調節機構100に変更したものである。
【0062】
図9に示されるように、このアシストスーツには、取付部33と、揺動アーム部34と、駆動装置32と、第二調節機構100と、が備えられている。
【0063】
取付部33は、作業者Wの腰周り部に取り付けられる。取付部33には、メインフレーム10の下部支持板17と、腰フレーム36と、が設けられている。メインフレーム10は、作業者Wの背中部側に位置するものとなっている。腰フレーム36は、メインフレーム10の左右にそれぞれ取り付けられる。
【0064】
揺動アーム部34は、左右方向に沿った揺動軸心P1周りに揺動可能に左右の腰フレーム36にそれぞれ取り付けられている。左右の揺動アーム部34は、それぞれ、作業者Wの太腿部に補助力を伝達可能に構成されている。
【0065】
駆動装置32は、左右の揺動アーム部34のそれぞれを独立して揺動駆動可能に構成されている。
【0066】
第二調節機構100は、作業者Wの腰周り部に適合するように左右の脚作用部14間の左右幅を調節可能に構成されている。第二調節機構100として、左右の腰ベルト13、案内機構101が備えられている。
【0067】
[腰ベルトについて]
図9に示されるように、腰ベルト13は、左右の腰フレーム36にそれぞれ取り付けられている。具体的には、左右の腰ベルト13は、それぞれ、対応する腰フレーム36の駆動部38の内端部側に取り付けられている。腰ベルト13は、係止部と被係止部を備えるバックル機構等からなる第二長さ調整機構39により、長さを調整しながら作業者Wの腰周りに巻き付けて装着可能となっている。
【0068】
[案内機構について]
図9、
図10に示される案内機構101は、左右の腰フレーム36をメインフレーム10の下部支持板17に対してスライド案内させるように構成されている。案内機構101には、右のラックギヤ102と、左のラックギヤ102と、ピニオンギヤ103と、が備えられている。つまり、案内機構101は、ラックアンドピニオン機構により構成されている。
【0069】
図10に示されるように、右のラックギヤ102は、右の腰フレーム36に左右方向に沿って備えられている。左のラックギヤ102は、左の腰フレーム36に左右方向に沿って備えられている。左のラックギヤ102は、右のラックギヤ102と対向するように配置されている。ピニオンギヤ103は、左のラックギヤ102と右のラックギヤ102との間に位置している。ピニオンギヤ103は、左のラックギヤ102と右のラックギヤ102とに咬合するようになっている。ピニオンギヤ103は、前後方向に沿った前後軸心Z周りに回動自在となるように、メインフレーム10の下部支持板17の左右中央箇所に支持されている。左右の腰フレーム36は、メインフレーム10の下部支持板17に対して非固定状態となっている。
【0070】
図10に示される案内機構101では、メインフレーム10の下部支持板17に対する左右の腰フレーム36のうち一方の腰フレーム36の左右方向のスライド移動が、ピニオンギヤ103を介して、左右の腰フレーム36のうち他方の腰フレーム36に伝達されて、他方の腰フレーム36が、メインフレーム10の下部支持板17に対して、一方の腰フレーム36と左右方向における逆方向にスライド移動するように構成されている。
【0071】
このような第二調節機構100によれば、腰ベルト13を作業者Wの腰周り部に取り付ける際に、左右の腰フレーム36が、腰ベルト13に引っ張られて、案内機構101により、メインフレーム10の下部支持板17に対して左右対称に移動し、作業者Wの腰周り部に適合する横幅に自動的に調節される。これにより、脚作用部14間の左右幅が作業者Wの体格に適合するように自動的に調節されるので、調節作業を容易に行うことができる。
【0072】
〔その他の実施形態〕
以下、第一実施形態または第二実施形態に変更を加えた別実施形態について説明する。
第一実施形態、第二実施形態、及び、各別実施形態は、矛盾が生じない限り、選択的に組み合わせることが可能である。なお、本発明の範囲は、各実施形態の内容に限られるものではない。
【0073】
(1)上記第一実施形態または第二実施形態では、揺動アーム部34は、剛性部材からなる板部材により構成されているものが例示されているが、これに限られない。例えば、
図11に示されるように、揺動アーム部34として、前面視で角張ったU字状に形成された剛性を有する取付フレーム200と、取付フレーム200の左右方向における横内側面に取り付けられる弾性を有する薄板状の弾性プレート201と、が備えられていてもよい。
取付フレーム200と弾性プレート201は揺動軸心P1周りに一体的に揺動するように構成されている。このような弾性を有する薄板状の弾性プレート201は、板バネとして機能し、作業者Wが太腿部を外に開くと、弾性プレート201が、作業者Wの太腿部に沿って変形し、作業者Wの太腿部を内側(左右の太腿部を閉じる側)に向けて押圧するようになっている。なお、この場合、弾性プレート201は、脚ベルト35の横内側(作業者Wの太腿部側)に取り付けられていてもよい。
【0074】
(2)上記第一実施形態または第二実施形態では、脚ベルト35の一端部64が自由端部となっているものが例示されているが、これに限られない。例えば、
図12に示されるように、脚ベルト35の一端部64が、揺動アーム部34に固定された箇所である固定端部となっていてもよい。また、この一端部64に、連結部66の第一接着部67が形成されていてもよい。
【0075】
(3)上記第一実施形態または第二実施形態では、脚ベルト35は、揺動アーム部34の横内側に取り付けられているものが例示されているが、これに限られず、
図11、
図12に示されるように、揺動アーム部34の横外側に、脚ベルト35が取り付けられていてもよい。
【0076】
(4)上記第一実施形態または第二実施形態では、脚ベルト35が、第一固定部60、第二固定部61、第三固定部62、第四固定部63の四箇所で揺動アーム部34に固定されているものが例示されているが、これに限られない。第一固定部60、第二固定部61、第三固定部62、第四固定部63以外にも脚ベルト35を揺動アーム部34に固定する固定部が備えられていてもよい。また、脚ベルト35が、脚ベルト35の幅方向の両端部側に位置する第一固定部60、第二固定部61の2箇所において揺動アーム部34に固定されているものであってもよい。また、第三固定部62、第四固定部63を省略し、第一固定部60と、第二固定部61との中間位置において揺動アーム部34に固定される中間固定部が備えられていてもよい。
【0077】
(5)上記第一実施形態または第二実施形態では、バッテリ23が、後面視で、制御装置21と重複しているものが例示されているが、これに限られない。例えば、
図13に示されるように、バッテリ23が、後面視で、制御装置21と重複せず、制御装置21の下方に位置していてもよい。この場合、駆動モータ45の後端部は、バッテリ23よりも前方に位置している。
【0078】
(6)上記第一実施形態または第二実施形態では、連結部66は、面ファスナ機構により構成されているものが例示されているが、これに限られない。例えば、連結部66が、バックル機構や、ジッパー機構等により構成されていてもよい。
【0079】
(7)上記第一実施形態または第二実施形態では、脚ベルト35が、ポリプロピレン製のものが例示されているが、これに限られない。脚ベルト35が、例えば、塩化ビニルやシリコン等の可撓性及び弾性を有する他の樹脂部材製であってもよい。
【0080】
(8)上記第一実施形態または第二実施形態では、脚ベルト35をネジ等の締結部材により揺動アーム部34に固定しているものが例示されているが、これに限られない。例えば、揺動アーム部34に脚ベルト35が溶着により固定されていてもよい。
【0081】
(9)上記第一実施形態または第二実施形態では、荷物持ち上げ部12と脚作用部14の両方を備えたアシストスーツが例示されているが、これに限られない。例えば、荷物持ち上げ部12が備えられておらず、脚作用部14のみが備えられたアシストスーツであってもよい。
【0082】
(10)上記第二実施形態では、案内機構101のピニオンギヤ103は、前後方向に沿った前後軸心Z周りに回動自在となるようになっているものが例示されているが、これに限られない。左右の腰フレーム36が、メインフレーム10の下部支持板17に対して左右方向に沿ってスライド移動すればよいので、ピニオンギヤ103の回動軸心は、左右方向と直交する方向(例えば、上下方向)を向いていればよい。