(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗原性ポリペプチド、または抗原性ポリペプチドをコードする核酸を含む、免疫原性組成物であって、該抗原性ポリペプチドが、SEQ ID NO: 190のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、免疫原性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
肺炎連鎖球菌は、小児、高齢者、および免疫不全個体における細菌性肺炎、髄膜炎、中耳炎、および菌血症の共通原因である。肺炎連鎖球菌は、その生物の莢膜多糖に基づき、およそ90種の血清型に細分され得る。しかしながら、疾患は一般的に、およそ30タイプの肺炎連鎖球菌単離体によって引き起こされる。世界保健機関は、小児における肺炎球菌性の髄膜炎および敗血症による年間の死者は100万人であり、これらの死亡の98%は発展途上国において発生すると推定している。抗菌剤に耐性を有する肺炎球菌株の発生により、抗菌剤に加えて、方法によって肺炎球菌感染症を治療および予防することの必要性が強調されている。
【0049】
本発明の1つの局面は、哺乳動物において抗原特異的免疫応答を誘発する肺炎球菌の新規抗原の発見を包含する。このような新規抗原および/または該抗原をコードする核酸を免疫原性組成物中に組み込み、投与して免疫応答を誘発し、例えば、肺炎球菌コロニー形成、これに限定されないが敗血症などの侵襲性疾患、ならびに肺炎球菌生物によって引き起こされる疾患および障害からの保護を提供することができる。このような新規抗原および/または新規抗原に対する応答を検出して、肺炎球菌生物に対する免疫応答を同定するおよび/または特徴付けることができる。
【0050】
本発明の別の局面は、表1に収載される肺炎球菌タンパク質より選択される少なくとも1種の単離された肺炎球菌抗原、例えば、以下:
、またはその機能的断片、例えばSEQ ID NO: 153〜234に示される機能的断片などを含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)を提供する。いくつかの態様において、肺炎球菌、および敗血症などの肺炎球菌感染症から保護する、SP0785、SP1500、SP0346、SP1386、SP0084、SP1479、およびSP2145の肺炎球菌タンパク質より選択される少なくとも1種の単離された肺炎球菌抗原を含む免疫原性組成物。
【0051】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬等に限定されず、したがって変化し得ることが理解されるべきである。本明細書において用いられる専門用語は、特定の態様を説明する目的のために過ぎず、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0052】
定義
本明細書で用いられる「抗原」という用語は、特異的免疫応答を誘発する分子(例えば、ポリペプチド)を指す。抗原特異的な免疫学的応答は、適応免疫応答としても知られ、抗原受容体(例えば、T細胞受容体、B細胞受容体)を発現するリンパ球(例えば、T細胞、B細胞)によって媒介される。特定の態様において、抗原はT細胞抗原であり、細胞性免疫応答を誘発する。特定の態様において、抗原はB細胞抗原であり、液性(すなわち、抗体)応答を誘発する。特定の態様において、抗原はT細胞抗原およびB細胞抗原の両方である。本明細書で用いられる場合、「抗原」という用語は、全長ポリペプチド、およびそのような完全なポリペプチドの免疫原性断片(すなわち、抗原特異的なT細胞応答、B細胞応答、またはその両方を誘発する断片)に相当するポリペプチドの一部を包含する。いくつかの態様において、抗原は、ポリペプチド配列内に見出されるペプチドエピトープ(例えば、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子(例えば、MHCクラスIまたはMHCクラスII)が結合するペプチドエピトープ)である。したがって、5〜15アミノ酸長のペプチド、および例えば60、70、75、80、85、90、100、150、200、250個、またはそれ以上のアミノ酸を有する、より長いポリペプチドは、「抗原」であり得る。例示的な例において、本発明はSP0785ポリペプチド抗原を提供する。いくつかの態様において、SP0785ポリペプチド抗原は、全長SP0785ポリペプチドアミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO:34の全長SP0785ポリペプチド)を含む。いくつかの態様において、SP0785ポリペプチド抗原は、SP0785ポリペプチドの一部(例えば、SEQ ID NO:34のSP0785ポリペプチドの一部であって、SEQ ID NO:34の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む一部)を含む。いくつかの態様において、SP0785ポリペプチドの一部は、SEQ ID NO: 190のアミノ酸配列を有するタンパク質に相当する。いくつかの態様において、SP0785ポリペプチド抗原は、天然の野生型SP0785ポリペプチド配列からの1つまたは複数のアミノ酸変化(例えば、欠失、置換、および/または挿入)を含む。例えば、SP0785ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:34またはその一部(例えば、SEQ ID NO:34に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸)と少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含み得る。あるいは、SP0785ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:34またはSEQ ID NO: 190と少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一である配列の一部(例えば、少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸)を含み得る。SP0785ポリペプチド抗原は例として用いられる。この概念は、これらに限定されないが、SP1500、SP0346、SP1386、SP0084、SP1479、およびSP2145ポリペプチド抗原、ならびに表1に収載されるポリペプチド抗原のいずれかを含む、本明細書に記載される他のポリペプチド抗原にも適用可能である。
【0053】
「肺炎球菌抗原」という用語は、肺炎連鎖球菌生物等などの肺炎球菌属の任意の生物に対する抗原特異的免疫応答を誘発する抗原を指す。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、複数の種の肺炎連鎖球菌生物に対する抗原特異的免疫応答を誘発する。肺炎球菌抗原は、表1に示される肺炎球菌遺伝子によってコードされる全長ポリペプチド(SEQ ID NO: 1〜76)、および表2に示される該ポリペプチドの免疫原性部分(SEQ ID NO: 153〜234)を含む。
【0054】
本明細書で用いられる「免疫原性組成物」という用語は、対象に投与された場合に、抗体または細胞性免疫応答などの免疫応答を誘発することができる組成物を指す。いくつかの態様において、免疫原性組成物はポリペプチドまたはペプチド抗原を含む。本発明の免疫原性組成物は、免疫保護的または治療的であっても、またはなくてもよい。本発明の免疫原性組成物が、疾患を予防する、改善する、和らげる、または対象から疾患を排除する場合、免疫原性組成物は任意でワクチンと称され得る。しかしながら、本明細書で用いられる場合、免疫原性組成物という用語は、ワクチンに限定されることは意図されない。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、ポリペプチドまたはペプチド抗原をコードする核酸を含む。免疫原性組成物は、複数の抗原に対する免疫応答を誘導する分子を含み得る。
【0055】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、天然であるか、または完全にもしくは部分的に合成によって生成されたかにかかわらず、任意の免疫グロブリンを指す。特異的結合能を維持するその誘導体もすべて、この用語に含まれる。本用語はまた、免疫グロブリン結合ドメインと相同なまたは概して相同な結合ドメインを有する任意のタンパク質を網羅する。このようなタンパク質は、天然供給源に由来してもよく、または部分的にもしくは完全に合成によって生成されてもよい。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってよい。抗体は、ヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいずれかを含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであってよい。本明細書で用いられる場合、「抗体断片」または「抗体の特徴的部分」という用語は互換的に使用され、全長に満たない抗体の任意の誘導体を指す。一般に、抗体断片は、全長抗体の特異的結合能の少なくともかなりの部分を保持している。抗体断片の例には、これらに限定はされないが、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、Fv、dsFv ダイアボディ、およびFd断片が含まれる。抗体断片は任意の手段によって生成することができる。例えば、抗体断片は、無傷の抗体の断片化により酵素的もしくは化学的に生成することができ、および/または部分的抗体配列をコードする遺伝子から組換えによって生成することができる。その代わりにまたは加えて、抗体断片は、完全にまたは部分的に合成によって生成することができる。抗体断片は、任意で一本鎖抗体断片を含み得る。その代わりにまたは加えて、抗体断片は、例えばジスルフィド結合によって共に連結された複数の鎖を含み得る。抗体断片は、任意で多分子複合体を含み得る。機能的抗体断片は、典型的には少なくとも約50アミノ酸を含み、およびより典型的には少なくとも約200アミノ酸を含む。
【0056】
「細胞傷害性Tリンパ球」または「CTL」という用語は、標的化細胞においてアポトーシスまたは他の機構を介した死亡を誘導するリンパ球を指す。CTLは、標的細胞表面上のプロセシングされた抗原(Ag)とのTCRの相互作用を介して、標的細胞との抗原特異的複合体を形成し、標的化細胞のアポトーシスをもたらす。アポトーシス小体は、マクロファージによって排除される。「CTL応答」という用語は、CTL細胞によって媒介される一次免疫応答を指すために用いられる。
【0057】
本明細書で用いられる「細胞媒介性免疫」または「CMI」という用語は、抗体または補体を伴わず、むしろ、例えばマクロファージ、ナチュラルキラー細胞(NK)、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(T細胞)、Tヘルパー細胞、好中球の活性化、および標的抗原に応答した様々なサイトカインの放出を伴う免疫応答を指す。言い換えれば、CMIは、標的抗原を提示する他の細胞(抗原提示細胞(APC)など)の表面に結合し、応答を誘発する免疫細胞(T細胞および他のリンパ球など)を指す。応答は、他のリンパ球および/または他の白血球細胞(白血球)のいずれか、ならびにサイトカインの放出を伴い得る。細胞性免疫は、(i) ウイルス感染細胞および細胞内細菌を有する細胞などの、その表面上に外来抗原のエピトープを提示している体細胞を破壊することができる抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を活性化すること;(2) マクロファージおよびNK細胞を活性化し、それらが細胞内病原体を破壊できるようにすること;ならびに (3) 細胞を刺激して、適応免疫応答および自然免疫応答に関与するT細胞、マクロファージ、または好中球などの他の細胞の機能に影響を及ぼす種々のサイトカインまたはケモカインを分泌させることにより、身体を保護する。
【0058】
本明細書で用いられる「免疫細胞」という用語は、直接的または間接的な抗原刺激に応答してサイトカイン、ケモカイン、または抗体を放出し得る任意の細胞を指す。本明細書における「免疫細胞」という用語には、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞(CD4+および/またはCD8+細胞)、B細胞を含むリンパ球、マクロファージ;白血球;樹状細胞;肥満細胞;単球;ならびに直接または間接的な抗原刺激に応答してサイトカインまたはケモカイン分子を産生することができる任意の他の細胞が含まれる。典型的に、免疫細胞は、リンパ球、例えばT細胞リンパ球である。
【0059】
本明細書で用いられる「サイトカイン」という用語は、抗原による刺激に応答して免疫細胞から放出される分子を指す。このようなサイトカインの例には、これらに限定されないが、GM-CSF;IL-1α;IL-1β;IL-2;IL-3;IL-4;IL-5;IL-6;IL-7;IL-8;IL-10;IL-12;IL-17A、IL-17F、またはIL-17ファミリーの他のメンバー、IL-22、IL-23、IFN-γ;IFN-β;IFN-α;MIP-1α;MIP-1β;TGF-α;TNFα□またはTNFβが含まれる。「サイトカイン」という用語は抗体を含まない。
【0060】
本明細書で用いられる「インビトロ」という用語は、生物(例えば、動物、植物、および/または微生物)の内部ではなく、人工的な環境、例えば試験管または反応槽内、細胞培養物中等で起こる事象を指す。
【0061】
本明細書で用いられる「インビボ」という用語は、生物(例えば、動物、植物、および/または微生物)の内部で起こる事象を指す。
【0062】
本明細書で用いられる「単離された」という用語は、単離された実体が、それが以前に会合していた少なくとも1つの成分から分離されていることを意味する。他のほとんどの成分が除去された場合、その単離された実体は「精製されている」。単離および/または精製および/または濃縮は、例えば、クロマトグラフィー、分画、沈殿、または他の分離を含む、当技術分野において公知の任意の技法を用いて行うことができる。
【0063】
本明細書で用いられる「アジュバント」という用語は、標的抗原に対する細胞または対象による抗原応答(例えば、免疫応答)を増加させる任意の薬剤または実体を指す。いくつかの態様において、アジュバントは、対象に投与されるペプチド抗原に対する免疫応答を増強するために用いられる。いくつかの態様において、アジュバントは、対象に投与される核酸によってコードされる抗原に対する免疫応答を増強するために用いられる。
【0064】
本明細書で用いられる場合、「病原体」という用語は、対象において疾患または障害を引き起こす生物または分子を指す。例えば、病原体には、これらに限定されないが、ウイルス、真菌、細菌、寄生生物、および他の感染性生物、またはそれらに由来する分子、ならびに藻類、真菌、酵母、および原虫等の範疇内の分類学的に関連する肉眼的生物が含まれる。
【0065】
本明細書で用いられる場合、「原核生物病原体」という用語は、細菌病原体を指す。
【0066】
本明細書で用いられる場合、「ウイルス病原体」という用語は、HIVなどの疾病または疾患を引き起こすウイルスを指す。
【0067】
本明細書で用いられる場合、「寄生性病原体」という用語は、宿主から恩恵を受け、同時に疾病または疾患を引き起こす、宿主細胞または宿主生物内部に長期間存在する寄生性の微生物を指す。寄生性病原体は、細菌、ウイルス、真菌、および寄生生物、および原生生物であってよい。
【0068】
タンパク質「x」の免疫原(例えば、表1に収載される肺炎球菌抗原または免疫原)の機能的断片という文脈において用いられる「機能的断片」または「部分」という用語は、その(例えば断片の)由来元であるタンパク質またはペプチドと類似の細胞性および/または液性免疫応答を媒介する、もたらす、または誘発する、そのようなタンパク質またはペプチドの断片を指す。したがって、「誘導体」または「変種」または「断片」と共に用いられる場合の「機能的」という用語は、該誘導体または変種または断片の元である実体または分子の生物学的活性と実質的に類似している生物学的活性を有するポリペプチドを指す。この文脈における「実質的に類似している」とは、対応する野生型ペプチドの関連するまたは所望の生物学的活性の少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも50%が保持されていることを意味する。例えばSP0785(例えば、SEQ ID NO: 34)などの肺炎球菌抗原の断片の場合には、SEQ ID NO: 34またはSEQ ID NO: 190の機能的断片は、脾細胞またはヒトPMBCにおいてIL-17A応答を誘発する活性を保持し、かつ肺炎球菌生物によるコロニー形成から保護する、SEQ ID NO: 34またはSEQ ID NO: 190の一部を含むタンパク質またはペプチドである;好ましくは、SEQ ID NO: 34またはSEQ ID NO: 190の該断片は、全長SEQ ID NO: 34またはSEQ ID NO: 190と比較して、脾細胞またはヒトPMBCにおいてIL-17A応答を誘発し、かつ肺炎球菌によるコロニー形成から保護するための、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、またはさらにより高い(すなわち、該変種または誘導体は、野生型よりも高い活性を有する)、例えば、少なくとも110%、少なくとも120%、もしくはさらなる活性を保持する。例えば、実施例2において開示されているように、機能的断片がインビトロでマウス脾細胞もしくはヒトPMBCにおいてIL-17A応答を誘発するかどうか、または実施例3において開示されているように、マウスに、肺炎球菌抗原(または機能的断片)を週に2回免疫化した後に、ある血清型の肺炎球菌株(例えば、血清型6B、14F、または19F)を投与し、鼻咽頭における肺炎球菌コロニー形成の存在を評価するマウスコロニー形成モデルにおいて、機能的断片がインビボでコロニー形成から保護するかどうかを評価するために、表1に収載される免疫原(例えば、抗原)のそのような機能的断片を、実施例において開示されているようなアッセイによって評価することができる。
【0069】
表1の抗原または免疫原の「断片」は、その用語が本明細書において用いられる場合、少なくとも15アミノ酸長であり、例えば、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、もしくは少なくとも25アミノ酸、またはそれ以上(各数値を含む)であってよい。
【0070】
「細胞傷害性Tリンパ球」または「CTL」という用語は、標的化細胞においてアポトーシスを誘導するリンパ球を指す。CTLは、標的細胞表面上のプロセシングされた抗原(Ag)とのTCRの相互作用を介して、標的細胞との抗原特異的複合体を形成し、標的化細胞のアポトーシスをもたらす。アポトーシス小体は、マクロファージによって排除される。「CTL応答」という用語は、CTL細胞によって媒介される一次免疫応答を指すために用いられる。
【0071】
本明細書で用いられる「細胞媒介性免疫」または「CMI」という用語は、抗体または補体を伴わず、むしろ、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞(NK)、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(T細胞)の活性化、および標的抗原に応答した様々なサイトカインの放出を伴う免疫応答を指す。言い換えれば、CMIは、抗原を提示する他の細胞(抗原提示細胞(APS)など)の表面に結合し、応答を誘発する免疫細胞(T細胞およびリンパ球など)を指す。応答は、他のリンパ球および/または他の白血球細胞(白血球)のいずれか、ならびにサイトカインの放出を伴い得る。したがって、細胞媒介性免疫(CMI)は、抗体を伴わず、むしろ、マクロファージおよびNK細胞の活性化、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の産生、ならびに抗原に応答した様々なサイトカインの放出を伴う免疫応答である。細胞性免疫は、(i) ウイルス感染細胞、細胞内細菌を有する細胞、および腫瘍抗原を提示している癌細胞などの、その表面上に外来抗原のエピトープを提示している体細胞を破壊することができる抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を活性化すること;(2) マクロファージおよびNK細胞を活性化し、それらが細胞内病原体を破壊できるようにすること;ならびに(3) 細胞を刺激して、適応免疫応答および自然免疫応答に関与する他の細胞の機能に影響を及ぼす種々のサイトカインを分泌させることにより、身体を保護する。理論および背景によって縛られることは望まないが、免疫系は2つの部門に分類された:免疫化の保護機能が体液(無細胞体液または血清)中に見出され得る液性免疫、および免疫化の保護機能が細胞と関連する細胞性免疫。
【0072】
本明細書で用いられる「免疫細胞」という用語は、直接的または間接的な抗原刺激に応答してサイトカインを放出し得る任意の細胞を指す。本明細書における「免疫細胞」という用語には、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞(CD4+および/またはCD8+細胞)、B細胞を含むリンパ球、マクロファージおよび単球、Th細胞;Th1細胞;Th2細胞;Tc細胞;間質細胞;内皮細胞;白血球;樹状細胞;マクロファージ;肥満細胞および単球、ならびに直接または間接的な抗原刺激に応答してサイトカイン分子を産生することができる他の任意の他の細胞が含まれる。典型的に、免疫細胞は、リンパ球、例えばT細胞リンパ球である。
【0073】
本明細書で用いられる「核酸」という用語は、その最も広い意味において、オリゴヌクレオチド鎖内に組み込まれるかまたは組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの態様において、核酸は、ホスホジエステル結合を介してオリゴヌクレオチド鎖内に組み込まれるかまたは組み込まれ得る化合物および/または物質である。本明細書で用いられる場合、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され得る。いくつかの態様において、「核酸」は、RNA、ならびに一本鎖および/もしくは二本鎖DNAならびに/またはcDNAを包含する。さらに、「核酸」、「DNA」、「RNA」という用語、および/または同様の用語は、核酸類似体、すなわちホスホジエステル骨格以外の骨格を有する類似体を含む。「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」という用語は、互いの縮重型であり、かつ/または同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。核酸は、例えば、天然供給源から精製することができ、組換え発現系を用いて生成して任意で精製することができ、化学合成することができる。適切な場合、例えば化学合成された分子の場合、核酸は、化学修飾された塩基または糖、骨格修飾等を有する類似体などの、ヌクレオシド類似体を含み得る。別段の指示がない限り、核酸配列は5'から3'方向に示される。
【0074】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書で用いられる場合、一般的に、少なくとも3アミノ酸のポリマーというその当技術分野で認識されている意味を有する。しかしながら、本用語はまた、例えば、SP0785ポリペプチド、SP1500ポリペプチド、SP0346ポリペプチド、SP1386ポリペプチド、SP0084ポリペプチド、SP1479ポリペプチド、およびSP2145ポリペプチドなどの、特定のクラスの抗原ポリペプチドを指すために用いられる。各々のこのようなクラスについて、本明細書は、このようなポリペプチドの公知の配列のいくつかの例を提供する。しかしながら当業者は、「ポリペプチド」という用語が、「ポリペプチド抗原」を指すために本明細書で用いられる場合、本明細書において列挙される配列を有するポリペプチドを包含するのみならず、該ポリペプチドに対する抗原特異的応答を誘発する、該配列の変動を有するポリペプチドもまた包含するのに十分な一般性を有するように意図されることを理解するであろう。例えば、「SP0785ポリペプチド」は、SEQ ID NO:34に示されるSP0785ポリペプチド、および例えばSEQ ID NO: 190に示されるSP0785の断片のように、SEQ ID NO:34配列の変動を有し、かつSEQ ID NO:34のポリペプチドに対して抗原特異的応答を誘発する能力を維持するポリペプチドを含む。当業者は、タンパク質配列が一般的に、免疫原性および抗原特異性を破壊することなく、いくらかの置換を許容することを理解する。したがって、免疫原性を保持し、かつ同じクラスの別のポリペプチドと少なくとも約30〜40%、多くの場合に約50%、60%、70%、または80%超の全体的な配列同一性を共有し、およびさらに通常は、多くの場合に1つまたは複数の高度に保存された領域において90%超またはさらには95%、96%、97%、98%、もしくは99%であるはるかにより高い同一性の少なくとも1つの領域であって、通常少なくとも3〜4個および多くの場合に最大20個またはそれ以上のアミノ酸を包含する領域を含む任意のポリペプチドが、本明細書で用いられる関連用語「ポリペプチド」の範囲内に包含される。類似性および/または同一性の他の領域は、当業者により、本明細書に提示される様々なポリペプチド配列の解析によって決定され得る。抗原の定義を参照されたい。タンパク質またはポリペプチドは、一般に20種の天然アミノ酸と称される20種のアミノ酸以外のアミノ酸を含む場合が多いこと、ならびに末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸が、グリコシル化および他の翻訳後修飾などの自然過程、または当技術分野で周知である化学修飾技法のいずれかによって、所与のポリペプチド中で修飾され得ることが認識されよう。本発明のポリペプチド内に存在し得る公知の修飾には、これらに限定されないが、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、糖化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質への転移RNAによるアミノ酸の付加、およびユビキチン化が含まれる。
【0075】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントの決定に適しているアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、これは、Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402, 1977に記載されている。本開示の核酸およびタンパク質の配列同一性パーセントを決定するために、BLASTが本明細書に記載されるパラメータと共に用いられる。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、米国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information) を通じて公的に利用可能である(以下のインターネットアドレスにおいて利用可能:ncbi.nlm.nih.gov)。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合に一致するか、またはいくらかの正値の閾値スコアTを満たす、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することにより、高スコア配列対(HSP)を最初に同定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.、前記)。これらの初期隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始する際の出発点として働く。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致残基の対に対する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列については、累積スコアを計算するためにスコアリング行列が用いられる。ワードヒットの各方向への延長は、以下の場合に停止される:累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ減少した場合;1つまたは複数の負のスコアを有する残基アラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になった場合;またはいずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、初期設定としてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、初期設定としてワード長3、および期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:10915 (1989) を参照されたい)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。
【0076】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA, 90:5873-5787, 1993をを参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は最小和確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を提示する。例えば、被験核酸と参照核酸との比較における最小和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合、該核酸は該参照配列と類似していると見なされる。
【0077】
「対象」という用語は、本明細書において「患者」または「個体」と互換的に使用され、例えば実験、診断、および/または治療を目的として、本発明の組成物を投与することができる任意の生物を指す。典型的な対象には、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、飼育動物、およびヒトなどの哺乳動物が含まれる。いくつかの態様において、「対象」という用語は、免疫応答を誘発することが有用である任意の動物を指す。対象は、トリまたは哺乳動物などの野生動物、飼育動物、商業用動物、または伴侶動物であってよい。対象はヒトであってよい。本発明の1つの態様において、本明細書において開示される免疫原性組成物はまた、ヒトにおける治療的または予防的処置に適切であり得ることが企図されるが、それはまた温血脊椎動物、例えば哺乳動物、例えば非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシなど、および非哺乳動物、例えばニワトリ、アヒル、またはシチメンチョウなどにも適用可能である。別の態様において、対象は、野生動物、例えば鳥インフルエンザを診断するためなどのトリである。いくつかの態様において、対象は、疾患モデルとしての実験動物または動物代用物である。対象は、獣医学的治療を必要とする対象であってもよく、この場合、抗原に対する免疫応答の誘発は、疾患、例えばSIV、STL1、SFV、または家畜の場合には口蹄疫、またはトリの場合にはマレック病もしくは鳥インフルエンザ、および他のそのような疾患を予防するのに、および/または疾患の蔓延を制御するのに有用である。
【0078】
核酸分子を説明するために用いられる場合の「組換え」という用語は、その起源または操作によって、天然では会合しているポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部と会合していないゲノム、cDNA、ウイルス、半合成、および/または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または組換え融合タンパク質に関して用いられる組換えという用語は、組換えポリヌクレオチドからの発現によって産生されるポリペプチドを意味する。宿主細胞に関して用いられる組換えという用語は、組換えポリヌクレオチドが導入されている宿主細胞を意味する。組換えはまた、材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクター)に関して、該材料が異種材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクター)の導入によって改変されていることを指すために、本明細書において用いられる。
【0079】
「ベクター」という用語は、それと連結されている異種核酸を宿主細胞に輸送することができるか、またはその発現を媒介することができる核酸分子を指す;プラスミドは、「ベクター」という用語によって包含される属の種である。「ベクター」という用語は典型的に、複製開始点、ならびに宿主細胞における複製および/または維持に必要な他の実体を含む核酸配列を指す。それと機能的に連結されている遺伝子および/または核酸配列の発現を指示することができるベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。一般に、有用な発現ベクターは「プラスミド」の形態である場合が多く、プラスミドとは、そのベクター形態において染色体に結合しておらず、かつ典型的に安定発現もしくは一過性発現のための実体またはコード化DNAを含む環状二本鎖DNA分子を指す。本明細書において開示される方法において用いることができる他の発現ベクターには、これらに限定されないが、プラスミド、エピソーム、細菌人工染色体、酵母人工染色体、バクテリオファージ、またはウイルスベクターが含まれ、このようなベクターは宿主のゲノム中に組み込まれ得るか、または特定の細胞内で自律的に複製し得る。ベクターは、DNAまたはRNAベクターであってよい。同等の機能を果たす、当業者によって公知である他の形態の発現ベクター、例えば自己複製染色体外ベクター、または宿主ゲノム中に組み込まれるベクターもまた用いることができる。好ましいベクターは、それと連結されている核酸の自律複製および/または発現が可能なものである。
【0080】
疾患、障害、および/または病態に「罹患している」個体は、該疾患、障害、および/または病態と診断されているか、またはその1つもしくは複数の症状を示す。
【0081】
疾患、障害、および/または病態「に罹り易い」個体は、該疾患、障害、および/または病態とは診断されておらず、および/またはその症状を呈していない場合もある。いくつかの態様において、疾患、障害、および/または病態は、肺炎球菌感染症と関連している。理論に縛られることは望まないが、肺炎連鎖球菌は、市中肺炎の全エピソードの15〜50%、急性中耳炎の全症例の30〜50%、ならびに菌血症および細菌性髄膜炎のかなりの割合を占める。いくつかの態様において、肺炎球菌感染症に罹り易い個体は、肺炎球菌に曝露されている可能性がある(例えば、経口摂取、吸入、身体的接触等による)。いくつかの態様において、肺炎球菌感染症に罹り易い個体は、微生物に感染している個体に曝露されている可能性がある。いくつかの態様において、肺炎球菌感染症に罹り易い個体は、微生物が蔓延している場所にいる人(例えば、微生物が蔓延している場所を旅行中の人)である。いくつかの態様において、肺炎球菌感染症に罹り易い個体は、若齢(例えば、小児、青年、または若年成人)であるために罹り易い。いくつかの態様において、肺炎球菌感染症に罹り易い個体は、ヨブ症候群を有する対象(Th-17細胞媒介性応答を欠いている対象)または無ガンマグロブリン血症(aggamaglobunemic)対象(抗体媒介性応答を欠いている対象)である。いくつかの態様において、罹り易い個体は、免疫系が低下している対象、例えばHIVを抱えて生きているか、または自己免疫疾患を有するか、またはインフルエンザを有する対象などである。いくつかの態様において、肺炎球菌感染症に罹り易い個体は、これらに限定されないが、喫煙、注射薬物の使用、C型肝炎、およびCOPDなどの他のリスク因子を有する対象である。いくつかの態様において、疾患、障害、および/または病態に罹り易い個体は、該疾患、障害、および/または病態を発症する。いくつかの態様において、疾患、障害、および/または病態に罹り易い個体は、該疾患、障害、および/また病態を発症しない。
【0082】
本明細書で用いられる「治療有効量」という用語は、疾患、障害、および/または病態に罹患しているかまたはそれに罹り易い対象に投与された場合に、該疾患、障害、および/または病態の症状を治療し、緩和し、改善し、軽減し、緩和し、それを予防し、その発症を遅延させ、その進行を抑制し、その重症度を減少させ、および/またはその発生率を低下させるのに十分な治療剤、予防剤、および/または診断剤(例えば、本発明の免疫原性組成物)の量を意味する。
【0083】
本明細書で用いられる「治療剤」という用語は、対象に投与された場合に、治療的、予防的、および/もしくは診断的効果を有し、ならびに/または所望の生物学的および/もしくは薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指す。
【0084】
本明細書で用いられる「治療する」という用語は、特定の疾患、障害、および/または病態の1つまたは複数の症状または特徴を部分的にまたは完全に緩和し、改善し、軽減し、その発症を遅延させ、その進行を抑制し、その重症度を減少させ、および/またはその発生率を低下させることを指す。例えば、微生物感染症を「治療する」とは、微生物の生存、成長、および/または蔓延を抑制することを指し得る。治療は、疾患、障害、および/または病態に関連する病状が発症するリスクを減少させることを目的として、該疾患、障害、および/または病態の徴候を呈していない対象に、および/または該疾患、障害、および/または病態の初期徴候のみを呈する対象に施行することができる。いくつかの態様において、治療は、対象への免疫原性組成物(例えば、ワクチン)の送達を含む。
【0085】
本明細書で用いられる「ワクチン」という用語は、少なくとも1種の免疫原性成分(例えば、ペプチドもしくはタンパク質を含む免疫原性成分、および/または核酸を含む免疫原性成分)を含む実体を指す。特定の態様において、ワクチンは少なくとも2種の免疫原性成分を含む。いくつかの態様において、ワクチンは、T細胞およびB細胞の両方の免疫応答を刺激することができる。いくつかの態様では、当技術分野で利用可能な任意のアッセイを用いて、T細胞および/またはB細胞が刺激されたかどうかを判定することができる。いくつかの態様において、T細胞刺激は、サイトカインの抗原誘導性産生、T細胞の抗原誘導性増殖、および/またはタンパク質発現の抗原誘導性変化をモニターすることにより、評価することができる。いくつかの態様において、B細胞刺激は、抗体価、抗体親和性、中和アッセイにおける抗体性能、クラススイッチ組換え、抗原特異的抗体の親和性成熟、記憶B細胞の発生、大量の高親和性抗体を長時間産生し得る長命形質細胞の発生、胚中心反応、および/または中和アッセイにおける抗体性能をモニターすることにより、評価することができる。いくつかの態様において、ワクチンは、T細胞および/またはB細胞における免疫応答の刺激を助け得る少なくとも1つのアジュバントをさらに含む。
【0086】
「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性を伴わずに、哺乳動物に投与することができる化合物および組成物を指す。「薬学的に許容される担体」という用語は、組織培地を除外する。例示的な薬学的に許容される塩には、これらに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等などの鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等などの有機酸の塩が含まれる。薬学的に許容される担体は、当技術分野において周知である。
【0087】
本明細書で用いられる「野生型」という用語は、天然に存在するかまたはそれが通常インビボで存在するような、典型的なまたは最も一般的な形態を指す。
【0088】
「変異体」という用語は、その遺伝物質における任意の変化、特に野生型ポリヌクレオチド配列に対する変化(すなわち、欠失、置換、付加、または改変)、または野生型タンパク質配列に対する任意の変化を有する生物または細胞を指す。「変種」という用語は、「変異体」と互換的に使用され得る。遺伝物質における変化は、タンパク質の機能の変化をもたらすことが推測される場合が多いが、「変異体」および「変種」という用語は、その変化がタンパク質の機能を変更する(例えば、増加させる、減少させる、新たな機能を付与する)かどうか、またはその変化がタンパク質の機能に影響を及ぼさない(例えば、変異または変動はサイレントである)かどうかにかかわらず、野生型タンパク質の配列における変化を指す。
【0089】
本明細書で用いられる「低下した」または「低下する」または「減少する」という用語は、一般的に、参照に対する統計的に有意な量の減少を意味する。誤解を避けるために、「低下した」とは、本明細書において定義される用語である参照レベルと比較して少なくとも10%の統計的に有意な減少、例えば参照レベルと比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも80%、少なくとも90%もしくはそれ以上の減少で、最大100%(100%を含む)の減少(すなわち、参照試料と比較して非存在のレベル)、または10〜100%の間の任意の減少を意味する。
【0090】
本明細書で用いられる「低い」という用語は、一般的に、統計的に有意な量だけ、より低いことを意味する;誤解を避けるために、「低い」とは、参照レベルよりも少なくとも10%低い統計的に有意な値、例えば、参照レベルよりも少なくとも20%低い、参照レベルよりも少なくとも30%低い、参照レベルよりも少なくとも40%低い、参照レベルよりも少なくとも50%低い、参照レベルよりも少なくとも60%低い、参照レベルよりも少なくとも70%低い、参照レベルよりも少なくとも80%低い、参照レベルよりも少なくとも90%低い値で、参照レベルよりも最大100%(100%を含む)低い値(すなわち、参照試料と比較して非存在のレベル)を意味する。
【0091】
本明細書で用いられる「増加した」または「増加する」という用語は、一般的に、統計的に有意な量の増加;例として、本明細書において定義される用語である参照レベルと比較して少なくとも10%の統計的に有意な増加を意味し、これは、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%またはそれ以上(各数値を含む)の増加を含み、例えば、参照レベルと比較して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍の増加またはそれ以上を含む。
【0092】
本明細書で用いられる「高い」という用語は、一般的に、参照に対して統計的に有意な量だけ、より高いこと;例として、参照レベルよりも少なくとも10%高い、例えば、少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも60%高い、少なくとも70%高い、少なくとも80%高い、少なくとも90%高い、少なくとも100%高い(各数値を含む)、例として、参照レベルと比較して少なくとも2倍高い、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも10倍高いまたはそれ以上の統計的に有意な値を意味する。
【0093】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、文脈に明確な断りがない限り、単数形は複数の指示対象を含み、逆もまた同様である。実施例または断りがある以外は、本明細書で用いられる成分または反応条件の数量を示す数字はすべて、すべての場合に「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。
【0094】
本明細書で用いられる場合、数字に関連した「およそ」または「約」という用語は、特に指定されない限り、または文脈から別段に明らかでない限り、その数字の両方向(その数字よりも大きいまたは小さい)の5%、10%、15%、または20%の範囲内に入る数字を含む(そのような数字が可能値の0%未満であるかまたは100%を超える場合を除く)と一般的に解釈される。
【0095】
本明細書で用いられる場合、「含む」という用語は、表示される定義された要素に加えて、他の要素もまた存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなくむしろ包含を示す。
【0096】
「〜からなる」という用語は、その態様の説明において列挙されていないいかなる要素も除外した、本明細書に記載される組成物、方法、およびそのそれぞれの成分を指す。
【0097】
本明細書で用いられる場合、「本質的〜からなる」という用語は、所与の態様に必要とされるそれらの要素を指す。本用語は、本発明のその態様の基本的および新規のまたは機能的特徴に実質的な影響を及ぼさない要素の存在を許容する。
【0098】
特定された特許およびその他の出版物はすべて、例えば、本発明に関連して使用され得る、そのような出版物中に記載された方法論を説明および開示する目的で、参照により本明細書に明確に組み入れられる。これらの出版物は、本出願の出願日よりも前にそれらが開示されたというだけの理由で提供される。この点に関するいかなるものも、本発明者らが、先行発明または任意の他の理由でそのような開示を先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきでない。日付に関するすべての記載またはこれらの文書の内容に関する表現は、本出願人に利用可能な情報に基づいており、日付の正確さまたはこれらの文書の内容に関していかなる承認も構成しない。
【0099】
特に明記していない限り、本明細書で用いられる専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、任意の公知の方法、装置、および材料を用いることができるが、この点に関する方法、装置、および材料を本明細書に記載する。
【0100】
肺炎球菌抗原
本発明者らは、肺炎球菌コロニー形成から保護する1つの機構が、マウスにおいてコロニー形成および浸潤性疾患の両方からの保護を付与するWCV(全細胞ワクチン)を使用していることを以前に示した。(Malley et al., 69 Infect. Immun. 4870-73 (2001);Malley et al., 74 Infect. Immun. 4290-92 (2004).)。WCV(全細胞ワクチン)による免疫化後のコロニー形成からの保護は、抗体非依存的であり、CD4+ T細胞に依存的である(Malley et al., 102 P.N.A.S. USA 102,4848-53 (2005);Trzcinski et al., 73 Infect. Immun. 7043-46 (2005))。エフェクターT細胞はCD4+ Th17細胞であり、抗IL-17A抗体でIL-17A応答を中和すると、WCVによる保護は減少し、またIL-17A受容体ノックアウトマウスはWCVによって保護されない。対照的に、IFN-γまたはIL-4欠損マウス(それぞれ、TH1またはTH2応答から逸脱している)は完全に保護される(Lu et al., 4 PLoS Pathogens. e1000159 (2008))。WCVで免疫化されたラットおよびマウスは、2つの肺炎モデルにおいて、肺炎球菌敗血症から有意に保護されることが報告されている(Malley et al., 2001)。
【0101】
本明細書において開示されるバイオインフォマティクス解析を用いて、本発明者らは、肺炎球菌のコロニー形成および感染症、例えば肺炎球菌敗血症感染症から保護する、表1に収載される特異的肺炎球菌抗原を同定した。表1に収載されるこれらの肺炎球菌抗原は、アジュバントの存在下または非存在下でワクチンとして投与して、全身性IL-17A応答を誘発し、かつ鼻腔内の肺炎球菌コロニー形成を減少させるかまたは肺炎球菌コロニー形成から保護することができる。いくつかの態様において、表1に収載されるいずれかの肺炎球菌抗原は、粘膜ワクチンとして投与して、鼻腔内の肺炎球菌コロニー形成、および敗血症などの肺炎球菌感染症から保護することができる。
【0102】
(表1)肺炎球菌免疫原のアミノ酸配列同定番号を収載する。肺炎球菌抗原のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、ワールドワイドウェブサイト:「xbase.ac.uk/genome/streptococcus-pneumoniae-tigr4/NC_003028/features?page=1」において入手可能であり、これは全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0103】
場合によっては、他の適切な肺炎連鎖球菌抗原は、表1において開示された対応する野生型肺炎連鎖球菌タンパク質と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一である。上記のポリペプチド、およびそれらをコードする核酸の配列は公知である;例えば、GenBankアクセッション番号FM211187.1における肺炎連鎖球菌ATCC 700669全ゲノム配列、およびそこで関連づけられたポリペプチド配列を参照されたい。
【0104】
上記の表1に記載される核酸およびポリペプチドに加えて、本出願はまた、表2に収載されるポリペプチドもしくは遺伝子、または本明細書に記載されるそれらの変種もしくは断片のうちの1種または複数種を含む免疫原性組成物を提供する。各遺伝子およびタンパク質のDNAおよびタンパク質配列は、上記のように公的に利用可能なデータベース、Entrez GeneにおいてLocus Tagを検索することによって見出すことができる。
【0105】
本発明の1つの局面において、肺炎球菌タンパク質:
、またはその断片より選択される少なくとも1種の単離された肺炎球菌抗原を含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)を提供する。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、SEQ ID NO: 1〜76またはその機能的断片からのいずれかまたは組み合わせより選択されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1〜76に相当する肺炎球菌抗原は、SEQ ID NO: 77〜152の核酸によってコードされる。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原の断片、例えば表1に開示されるSEQ ID NO: 153〜234に相当する肺炎球菌抗原は、本明細書において開示される方法および組成物における使用のために包含される。肺炎球菌抗原の他の機能的断片も、本明細書において開示される方法および組成物における使用のために包含され、本明細書の実施例3において開示される方法に従って、それらが肺炎球菌コロニー形成からの保護を提供するかどうかを判定するために、当業者によって評価され得る。SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234の肺炎球菌抗原の機能的断片はまた、特に単独で、またはPdTとの融合タンパク質の一部として用いられる場合に、実施例4および5において開示される方法に従って、敗血症などの侵襲性疾患からの保護について当業者によって評価され得る。いくつかの態様において、SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234の肺炎球菌抗原の機能的断片はまた、特に単独で、またはPdTとのおよび/もしくはViと融合された融合タンパク質の一部として用いられる場合に、実施例5において開示される方法に従って、チフス菌からの保護について当業者によって評価され得る。
【0106】
いくつかの態様において、免疫原性組成物は、アミノ酸配列SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234を有する肺炎球菌抗原のいずれか1つまたは組み合わせより選択される、少なくとも1種の単離された肺炎球菌抗原を含む。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、以下:
の全長肺炎球菌タンパク質である。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、シグナル配列および/または膜貫通ドメインを欠いた肺炎球菌タンパク質を含む。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、全長肺炎球菌タンパク質と、発現宿主、例えば大腸菌または昆虫細胞株(例えば、バキュロウイルス発現系)または哺乳動物(例えば、ヒトまたはチャイニーズハムスター卵巣(CHO))細胞株によるシグナル配列のプロセシングまたは部分的プロセシングによって生じた断片との混合物を含む。本明細書で用いられる場合、「部分」および「断片」という用語または文法的同等物は、互換的に使用される。
【0107】
いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、以下:
の全長肺炎球菌タンパク質の断片、例えば、そのようなタンパク質の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸である。いくつかの態様において、全長肺炎球菌タンパク質の断片はSEQ ID NO: 153〜234に相当する。いくつかの態様において、肺炎球菌タンパク質の断片は、SEQ ID NO: 153〜234のいずれかの機能的断片、例えば、SEQ ID NO: 153〜234に相当する肺炎球菌抗原の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸である。
【0108】
いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、以下:
の肺炎球菌タンパク質、またはその断片、例えば、SEQ ID NO:153〜234に相当する肺炎球菌抗原の断片の7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0109】
本発明者らは本明細書において、肺炎球菌抗原SP0785が、タンパク質刺激に対するIL-17応答、および肺炎球菌コロニー形成からの保護を示したこと、ならびにSP0785-PdTが敗血症感染症からマウスの80%を保護し、およびSP0785-PdT-Viがチフス菌感染症から保護したことを実証する。本発明者らはまた、肺炎球菌抗原SP1500が、タンパク質刺激に対するIL-17応答を誘発し、かつ肺炎球菌コロニー形成から保護し、また結果として肺炎球菌感染症からマウスの50%を保護したこと、ならびに肺炎球菌抗原SP0346が、肺炎球菌感染症および敗血症からマウスの60%を保護したこと、ならびに肺炎球菌抗原SP1386、SP0084、およびSP1479が、肺炎球菌感染症からマウスの50%を保護したことを実証した。本発明者らはまた、SP2145がPdTと結合した場合に(SP2145-PdT)、敗血症感染症からマウスの80%を保護したこと、およびSP2145-PdT-Viがチフス菌感染症から保護したことを実証した。したがって、これらの抗原は、例えば肺炎球菌感染症および関連病原体から保護するために、有益な免疫応答を誘発することを目的として、免疫応答を誘発するための新規組成物を提供する。これらの抗原は、肺炎球菌感染症および肺炎球菌感染症に対する免疫応答を特徴付けるための新規標的を提供する。
【0110】
したがって、本発明の1つの局面において、SP0785ポリペプチド抗原、SP1500ポリペプチド抗原、SP0346ポリペプチド抗原、SP1386ポリペプチド抗原、SP0084ポリペプチド抗原、SP1479ポリペプチド抗原、SP2145ポリペプチド抗原、およびそれらの組み合わせより選択される単離された肺炎球菌抗原を含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)を提供する。
【0111】
いくつかの態様において、免疫原性組成物はSP0785肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、SP0785ポリペプチド抗原は、SP0785ポリペプチド配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP0785ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:34に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP0785ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:35に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、SP0785肺炎球菌ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO: 110またはその断片によってコードされる。いくつかの態様において、SP0785肺炎球菌ポリペプチド抗原の機能的断片は、SEQ ID NO: 190のアミノ酸を含むか、またはSEQ ID NO: 190に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0112】
いくつかの態様において、免疫原性組成物はSP1500肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、SP1500ポリペプチド抗原は、SP1500ポリペプチド配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP1500ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:51に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP1500ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:51に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、SP1500肺炎球菌ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO: 127またはその断片によってコードされる。いくつかの態様において、SP1500肺炎球菌ポリペプチド抗原の機能的断片は、SEQ ID NO: 209のアミノ酸を含むか、またはSEQ ID NO: 209に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0113】
いくつかの態様において、免疫原性組成物はSP0346肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、SP0346ポリペプチド抗原は、SP0346ポリペプチド配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP0346ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:15に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP0346ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:15に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、SP0346肺炎球菌ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO: 91またはその断片によってコードされる。いくつかの態様において、SP0346肺炎球菌ポリペプチド抗原の機能的断片は、SEQ ID NO: 166のアミノ酸を含むか、またはSEQ ID NO: 166に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0114】
いくつかの態様において、免疫原性組成物はSP1386肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、SP1386ポリペプチド抗原は、SP1386ポリペプチド配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP1386ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:46に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP1386ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:46に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、SP1386肺炎球菌ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO: 122またはその断片によってコードされる。いくつかの態様において、SP1386肺炎球菌ポリペプチド抗原の機能的断片は、SEQ ID NO: 204のアミノ酸を含むか、またはSEQ ID NO: 204に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0115】
いくつかの態様において、免疫原性組成物はSP0084肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、SP0084ポリペプチド抗原は、SP0084ポリペプチド配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP0084ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:4に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP0084ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:4に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、SP0084肺炎球菌ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO: 80またはその断片によってコードされる。いくつかの態様において、SP0084肺炎球菌ポリペプチド抗原の機能的断片は、SEQ ID NO: 156のアミノ酸を含むか、またはSEQ ID NO: 156に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0116】
いくつかの態様において、免疫原性組成物はSP1479肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、SP1479ポリペプチド抗原は、SP1479ポリペプチド配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP1479ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:50に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP1479ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:50に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、SP1479肺炎球菌ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO: 126またはその断片によってコードされる。いくつかの態様において、SP1479肺炎球菌ポリペプチド抗原の機能的断片は、SEQ ID NO: 208のアミノ酸を含むか、またはSEQ ID NO: 208に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0117】
いくつかの態様において、免疫原性組成物はSP2145肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、SP2145ポリペプチド抗原は、SP2145ポリペプチド配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP2145ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:70に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、SP2145ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO:70に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、SP2145肺炎球菌ポリペプチド抗原は、SEQ ID NO: 146またはその断片によってコードされる。いくつかの態様において、SP2145肺炎球菌ポリペプチド抗原の機能的断片は、SEQ ID NO: 70のアミノ酸を含むか、またはSEQ ID NO: 70に示される配列の少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、45、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、または400個の連続したアミノ酸と、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0118】
いくつかの態様において、免疫原性組成物は、2種またはそれ以上の単離された肺炎球菌抗原を含む。いくつかの態様において、2種またはそれ以上の単離された抗原は、表1より選択されるポリペプチド抗原のうちの2種またはそれ以上を含む。いくつかの態様において、2種またはそれ以上の単離された肺炎球菌抗原は、表1より選択されるポリペプチド抗原のうちの3種またはそれ以上を含む。いくつかの態様において、2種またはそれ以上の単離された肺炎球菌抗原は、表1より選択されるポリペプチド抗原のうちの4種またはそれ以上を含む。いくつかの態様において、2種またはそれ以上の単離された肺炎球菌抗原は、表1より選択されるポリペプチド抗原のうちの5種、6種、7種、またはそれ以上を含む。いくつかの態様において、2種またはそれ以上の単離された肺炎球菌抗原は、表1より選択される8種のポリペプチド抗原を含む。
【0119】
本明細書に記載される本発明の肺炎球菌抗原は、当技術分野で公知の肺炎球菌、例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許 WO/2000/037105、第7,217,791号および第7,585,669号、US2006/0121058、US2012/0251577、US2011/0159040、US2012/0189649、ならびにUS20110020386において開示されている肺炎球菌抗原などの、その他の肺炎球菌抗原と共に用いることができる。混合ワクチンに適切な他の肺炎連鎖球菌抗原には、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA);PspAの誘導体、コリン結合タンパク質A(CbpA) およびその誘導体;肺炎球菌表面付着因子A(PsaA);カゼイン分解プロテアーゼ;ソルターゼA(SrtA);線毛1 RrgA付着因子;PpmA;PrtA;PavA;LytA;Stk-PR;PcsB;RrgBおよびその誘導体が含まれる。さらなる詳細については、例えば、A.D Ogunniyi et al.,「Protection against Streptococcus pneumoniae elicited by immunization with pneumolysin and CbpA,」 Infect Immun. 2001 October; 69 (10):5997-6003を参照されたい;これは、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0120】
PspAの誘導体には、非プロリンブロックを有するプロリンリッチセグメント(PR+NPB、以下、およびDaniels, C. C. et al. (2010) Infection andImmunity 78:2163-72においてさらに記載される)、およびPspAのプロリンリッチ領域(例えば、配列PAPAP(SEQ ID NO: 262)、PKP、PKEPEQ(SEQ ID NO: 402)、およびPEKP(SEQ ID NO: 403) のうちの1つまたは複数を含み、および任意で非プロリンブロックを含む領域)のすべてまたは断片を含む関連構築物が含まれる。非プロリンブロックの一例は、例示的配列:
を有し、これは一般的に、PspAの非コイル領域のその他の点ではプロリンリッチである範囲にプロリン残基を有さない。PspAおよびその誘導体は、NPBを有するかまたは有しない、類似のプロリンリッチ構造(すなわち、PKP、PKEPEQ(SEQ ID NO: 402)、およびPEKP(SEQ ID NO: 403))を発現する遺伝子を含み得る。NPBの両端のアミノ酸が、プロリンリッチ領域の境界の印となる。一例において、PR領域に対するアミノ末端側の境界はDLKKAVNE(SEQ ID NO: 240) であり、およびカルボキシ末端側の境界は、以下:
である。NPBを含むペプチドは特に免疫原性があり、NPBが重要なエピトープであり得ることが示唆される。例示的な免疫原性PspAポリペプチドおよびその誘導体(例えば、コイルドコイル構造を有するおよび有しない)は、例えば、国際特許出願公開WO2013109995に記載されている;これは、全体として参照により本明細書に組み入れられる。免疫原性PspAポリペプチドは、PR配列およびNPB配列の両方を含む(PR+NPB)。免疫原性PspAポリペプチドは、PR配列のみを含み(PRのみ)、NPBを欠いてもよい。
【0121】
いくつかの態様において、免疫原性組成物は、表1より選択される単離された肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、表1より選択される2種、3種、4種、5種、またはそれ以上の単離された肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、異種ポリペプチド(例えば、エピトープタグ)と融合される。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原を含む免疫原性組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0122】
肺炎球菌抗原はWO/2000/037105において開示されているが、本発明とは異なりWO/2000/037105では、Th17細胞応答を誘導するその能力は評価されなかったか、または不明であった。加えて、肺炎球菌抗原は、US出願第2012/0189649号およびUS2012/0251577においても開示されている。しかしながら本発明とは異なり、'649および'577出願では、Th17応答を誘発する抗原をスクリーニングするために、精製タンパク質の代わりに全ゲノムライブラリーが用いられ、したがって免疫原性効果には、またはTh17応答を誘発するには、抗原の高発現レベルが必要である可能性が高い。本発明では、実施例において実証されるように、精製された肺炎球菌抗原タンパク質が用いられ、したがってバックグラウンドが非常に低いという利点を有し、免疫原性効果を誘導する、およびTh17応答を誘発するのに、各肺炎球菌抗原のより低い発現レベルを必要とする。
【0123】
本明細書に記載される肺炎球菌抗原は、組換えDNA技術を用いて調製することができ、天然供給源から精製することができ、または化学合成することができる。いくつかの態様において、本明細書に記載される肺炎球菌抗原がPdTと融合されるかまたは結合する場合、該PdTは天然の肺炎連鎖球菌ニューモリシンタンパク質由来のアミノ酸配列とは異なり得る。
【0124】
本明細書に記載される肺炎球菌抗原の切断型および/または変異型をコードする核酸は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって調製することができる。そのようなタンパク質をコードする核酸は、特定の発現系に好ましい、または好ましくないコドンを有するように選択され得る。例えば、該核酸は、その配列が大腸菌、酵母、ヒト、昆虫、またはCHO細胞における発現に最適となるように、少なくとも1つのコドン、好ましくはコドンの少なくとも10%または20%が改変されているものであってよい。
【0125】
本明細書に記載される肺炎球菌抗原の切断型および/または変異型をコードする核酸は、(1) 自己溶菌酵素、表面タンパク質A、ノイラミニダーゼ、ヒアルロン酸溶解物、コリン結合タンパク質Aなどの他の肺炎球菌タンパク質、または (2) インフルエンザ菌(hemophilus influenza)b、髄膜炎菌A、B、もしくはC群、または連鎖球菌B群などの生物由来の非肺炎球菌タンパク質をコードするヌクレオチド配列と融合させることができる。そのような融合タンパク質をコードする核酸は、発現系において発現される。
【0126】
ニューモリシン切断物は多糖の有用な担体であり得る。というのは、宿主はそのような担体ポリペプチドに対する既存の抗体を欠いている可能性があるからである。ニューモリシンは肺炎球菌感染症における病原性因子であり、異なるサブタイプを有する肺炎球菌間で、ニューモリシンの抗原性の変動はほとんどない。
【0127】
本明細書に記載される肺炎球菌抗原は、ヒトなどの哺乳動物に投与された場合、多糖と融合された場合に、量、タイプ、および/または期間の点で、多糖成分のみの哺乳動物への投与によって誘導される免疫応答を上回る免疫応答を誘導する。したがって、肺炎球菌抗原成分は、そのような増強された免疫応答を誘導するのに十分な長さでなければならない。本明細書に記載される天然肺炎球菌抗原の断片に関して、該断片は、少なくとも8、10、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、425、450、460、465、460、465、またはそれ以上のアミノ酸長である。本明細書に記載される天然肺炎連鎖球菌抗原とは配列が異なる肺炎球菌抗原に関して、該ポリペプチドは、本明細書において表1に記載される天然肺炎連鎖球菌抗原と、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上同一であってよい。
【0128】
本明細書に記載される肺炎球菌抗原のうちの1つまたは複数と結合させることができる多糖成分は、任意の肺炎連鎖球菌莢膜多糖であってよく、これにはサブタイプ1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、19A、20、22F、23A、23F、24F、27、33F、または34のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、莢膜多糖は、サブタイプ4、6B、9V、14、18C、19F、または23Fより選択される。いくつかの態様において、多糖は血清型14である。他の態様において、多糖は血清型18Cである。異なる莢膜多糖の1つまたは複数を、単一のポリペプチドまたは複数のポリペプチドと結合させることができる。例えば、多価結合体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10種の異なる莢膜多糖を含み得る。多糖は、例えば、単量体結合(多糖の一方の末端のみがポリペプチドに付着している)、環状結合(単一のポリペプチドが環状多糖に付着している)、または架橋(複数の多糖が複数のポリペプチドに付着している)を介して、ポリペプチドと結合させることができる。
【0129】
ポリペプチド、例えば本明細書に記載される肺炎球菌抗原を精製する方法は、当業者によって実施され得、ポリペプチドまたは多糖の精製および結合の工程は、例えば米国特許第4,242,501号;第4,686,102号;第5,623,057号;および第5,565,204号に記載されており、これらは全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0130】
本明細書に記載される免疫原性組成物を哺乳動物に投与して、該哺乳動物において肺炎連鎖球菌に対する免疫応答(予防的および/または治療的免疫応答)を誘発することができる。肺炎球菌抗原を単独でまたは結合体として含む薬学的組成物は、これらに限定されないが、生理食塩水または他の注射用液体を含む、ワクチンに適している薬学的に許容される担体、緩衝液、または保存剤中で送達することができる。ワクチンにおいて慣習的な添加物、例えば、ラクトースまたはソルビトールなどの安定化剤、ならびにリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、または硫酸アルミニウム、およびステアリルチロシンなどの免疫応答を増強させるためのアジュバントもまた存在してよい。製造されたワクチンはまた、複数の感染性病原体に対する免疫応答を誘発する多価ワクチンの成分として使用することもできる。
【0131】
前記組成物は、当技術分野で公知の任意の様式で、例えば、経口で、筋肉内に、静脈内に、動脈内に、髄腔内に、皮内に、腹腔内に、鼻腔内に、肺内に、眼内に、膣内に、直腸内に、または皮下に投与され得る。それらは、例えば、結合体を含む溶液または粉末の吸入により、胃腸管または気道中に導入され得る。いくつかの態様において、該組成物は皮膚パッチを介して投与され得る。
【0132】
薬学的組成物(例えば、ワクチン)は、免疫応答の一部である抗体の産生を誘発するのに十分な量で投与される。任意の所与の患者に対する投薬量は、患者のサイズ、健康状態、性別、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、投与時間および投与経路、ならびに同時に投与されている他の薬物を含む、多くの要因に依存する。最適な投薬量の決定は、通常の技能を有する薬理学者の能力の範囲内に十分に入る。
【0133】
組成物が宿主哺乳動物において免疫応答を誘発する能力は、免疫応答を測定するための当技術分野で周知の方法を用いることによって評価することができる。例えば、細胞傷害性T細胞の生成は、標準的な
51Cr放出アッセイにおいて、細胞内のサイトカインの発現もしくは分泌を測定することにより、または主要組織適合遺伝子複合体(MHC)四量体を用いることにより、実証され得る。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または酵素結合免疫スポット(ELISPOT)などの標準的なアッセイを用いて、T細胞活性化に起因するサイトカインプロファイルを測定することができる。T細胞増殖は、
3H-チミジンの取り込み、および当技術分野で公知の他のアッセイなどのアッセイを用いて測定することができる。B細胞応答は、ELISAなどの当技術分野で認識されているアッセイを用いて測定することができる。他の方法論を用いて、病原体関連の病変に対する、または他の病原体レベルに対する結合体の効果(例えば、該結合体を用いて処置された感染マウスにおける肺炎球菌の排除)を一般的に評価することもできる。
【0134】
本明細書に記載される組成物は、肺炎連鎖球菌による感染症またはそのような感染症に関連する病態を予防または治療するための医薬品の製造において使用することができる。
【0135】
アジュバント
いくつかの態様において、肺炎球菌抗原を含む免疫原性組成物はアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物はミネラル含有アジュバントを含む。いくつかの態様において、ミネラル含有アジュバントは水酸化アルミニウムを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、免疫調節性オリゴヌクレオチドを含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物はIC31(商標)アジュバント(Intercell AG)を含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、毒素を含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、エンドトキシンを含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、ムラミルジペプチドを含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、油性エマルションを含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、サポニンを含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、免疫刺激複合体(ISCOM)を含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、非イオン性ブロック共重合体を含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物はウイルス様粒子(VLP)、例えばコレラ毒素を含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物はレプリコンを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、リポソームを含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、微粒子を含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、生分解性マイクロスフェアを含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、サイトカインを含むアジュバントを含む。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、リポペプチドを含むアジュバントを含む。
【0136】
免疫原性組成物は、アジュバントを含み得る。いくつかの態様では、コレラ毒素(CT)が鼻腔内投与のためのアジュバントとして用いられ、肺炎球菌コロニー形成からの保護をもたらし得る。Alumは、皮下注射のための有効なアジュバントである。アジュバントは典型的に、同時に投与される抗原に対する免疫学的応答を増強する不均一な物質群である。場合によっては、アジュバントは、必要とするワクチンがより少なくてすむように免疫応答を改善するためにワクチンに添加される。アジュバントは、抗原、すなわち特異的保護免疫応答を刺激する物質を、免疫系と接触させるように作用し、生じる免疫のタイプおよび免疫応答の質(大きさまたは期間)に影響を及ぼす。アジュバントはまた、ある抗原の毒性を減少させ、いくつかのワクチン成分に対して溶解性を提供し得る。抗原に対する免疫応答を増強するために今日用いられるほとんどすべてのアジュバントは、粒子であるか、または抗原と共に粒子を形成する。「Vaccine Design - the subunit and adjuvant approach」(Ed: Powell & Newman, Plenum Press, 1995)という書籍において、ほとんどすべての公知のアジュバントが、その免疫学的活性およびその化学的特徴の両方に関して記載されている。粒子を形成しないアジュバントのタイプは、免疫学的シグナル物質として働き、かつ通常の条件下で微粒子アジュバントシステムの投与後の免疫学的活性化の結果として免疫系によって形成される物質からなる物質群である。
【0137】
ワクチンのためのアジュバントは、当技術分野において周知である。適切な付加的なアジュバントには、これらに限定されないが、フロイント完全アジュバント(CFA)、フロイント不完全アジュバント(IFA)、サポニン、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素エマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum) などの潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれる。アジュバントの選択は、ワクチン接種される動物対象に依存する。付加的な例には、これらに限定されないが、モノグリセリドおよび脂肪酸(例えば、モノオレイン、オレイン酸、およびダイズ油の混合物);無機塩、例えば、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムゲルまたはリン酸カルシウムゲル;油性エマルションおよび界面活性剤ベースの製剤、例えば、MF59(微小流動化洗浄剤安定化水中油型エマルション)、QS21(精製サポニン)、AS02 [SBAS2](水中油型エマルション + MPL + QS-21)、Montanide ISA-51、およびISA-720(安定化油中水型エマルション);微粒子アジュバント、例えば、ビロゾーム(インフルエンザ赤血球凝集素を組み入れる単層リポソーム媒体)、AS04([SBAS4] MPLを有するAl塩)、ISCOM(サポニンおよび脂質の構造複合体)、ポリラクチド コ-グリコリド(PLG);微生物誘導体(天然および合成)、例えば、モノホスホリルリピドA(MPL)、Detox(MPL + M. フレイ(M. Phlei)細胞壁骨格)、AGP [RC-529](合成アシル化単糖)、DC_Chol(リポソームへと自己組織化することができる類脂質性免疫賦活剤)、OM-174(リピドA誘導体)、CpGモチーフ(免疫賦活性CpGモチーフを含む合成オリゴヌクレオチド)、改変LTおよびCT(非毒性アジュバント効果を提供するように遺伝子改変された細菌毒素);内因性ヒト免疫調節剤、例えば、hGM-CSFまたはhIL-12(コードされるタンパク質またはプラスミドのいずれかとして投与され得るサイトカイン)、Immudaptin(C3dタンデムアレイ)、ならびに金粒子などの不活性媒体が含まれる。より新しいアジュバントが、米国特許第6,890,540号、米国特許出願公開第2005/0244420号、およびPCT/SE97/01003、およびUS2012/0135025において記載されており、これらの内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。アジュバントはまた、QS-21、Detox-PC、MPL-SE、MoGM-CSF、TiterMax-G、CRL-1005、GERBU、TERamide、PSC97B、Adjumer、PG-026、GSK-I、GcMAF、B-アレチン(alethine)、MPC-026、Adjuvax、CpG ODN、Betafectin、Alum、およびMF59からなる群より選択され得る。
【0138】
いくつかの態様において、薬学的に許容されるアジュバントなどの代替アジュバントを使用することができる。例えば、油または炭化水素エマルションアジュバントは、ヒトのワクチン接種のために用いられるべきではない。ヒトへの使用に適したアジュバントの一例は、alum(アルミナゲル)である。表1に開示される抗原を含むワクチンに添加されることが企図される一般的なアジュバントの詳細は、以下に考察される内容を含む。
【0139】
フロイント完全アジュバント(CFA):鉱油アジュバント;主に油である油中水型エマルションを用いる。何年もの間、選択されるアジュバントはフロイント完全アジュバントであった。このアジュバントは、免疫原として強力であるが、しばしば膿瘍、肉芽腫、および組織脱落を生じるという有意な経歴も有している。これはパラフィン油、死滅マイコバクテリア、およびモノオレイン酸マンニドを含む。パラフィン油は代謝されない;これは皮膚を通して(肉芽腫または膿瘍を介して)発現されるか、またはマクロファージによって貪食される。CFAに複数回曝露されると、重篤な過敏反応を引き起こす。人がCFAに偶発的に曝露されると、ツベルクリンに対する感作が起こり得る。
【0140】
フロイント不完全アジュバント(IFA):これも鉱油アジュバントである。CFAと類似の組成であるが、死滅マイコバクテリアを含まず、そのため重篤な反応を生じない。抗原-CFAによる初回注射後の追加免疫のために用いられる。抗原の免疫原性が強い場合、IFAが初回注射に使用され得る。
【0141】
Montanide ISA(Seppic社の不完全アジュバント):鉱油アジュバント。主要な界面活性剤成分としてオレイン酸マンニドを用いる。抗体応答は一般的に、IFAによる応答と類似している。Montanide ISAは、軽減された炎症応答を有し得る。
【0142】
Ribiアジュバントシステム(RAS):2%スクアレン中に無毒化エンドトキシンおよびマイコバクテリア細胞壁成分を含む水中油型エマルション。用途に応じて、複数の製剤が市販されている。CFAの代替である。CFAより粘度は低い。結果(力価)は、CFAによる結果に匹敵する場合が多い。スクアレン油は代謝可能である。RASの毒性反応の発生率はより低い。
【0143】
TiterMax:別の油中水型エマルションであり、この調製物は、合成アジュバントおよび微粒子シリカを代謝可能な油であるスクアレンと混合する。コポリマーは免疫調節剤成分である。抗原はコポリマーに結合して、高度に濃縮された形態で免疫細胞に提示される。CFAより毒性は低い。TiterMaxは通常、CFAと同じ結果を生じる。
【0144】
Syntexアジュバント製剤(SAF):予め形成された水中油型エマルション。界面活性剤としてブロックコポリマーを用いる。ムラミルジペプチド誘導体は免疫賦活成分である。すべて、代謝可能な油であるスクアレン中に存在する。SAFは、マウスにおいて液性応答をIgG2aに偏らせ得るが、CFAよりも毒性は低い。
【0145】
アルミニウム塩アジュバント:ワクチン抗原送達のためのアジュバントとして、最も頻繁に用いられる。一般的に、エマルションアジュバントよりも弱いアジュバント。アルミニウム塩アジュバントは、免疫原性が強い抗原と共に最も良好に用いられるが、一般的に軽度の炎症反応を引き起こす。
【0146】
ニトロセルロース吸着抗原:ニトロセルロースは基本的に不活性であり、ほとんど炎症反応を引き起こさない。ニトロセルロース濾紙がゆっくり分解することにより、抗原が持続的に放出される。CFAほど劇的な抗体応答を生じない。ニトロセルロース吸着抗原は、例えば動物免疫化のために、ゲルバンドから回収され得る抗原がごく少量である場合に用いるのに好ましい。
【0147】
封入または捕捉された抗原:抗原の経時的な持続的放出を可能にし;持続的放出のための調製物中に免疫賦活剤を有することもできる。封入または捕捉された抗原の調製は複雑である。
【0148】
免疫刺激複合体(ISCOM):抗原修飾サポニン/コレステロールミセル。流入領域リンパ節へと迅速に移動する安定した構造が形成される。細胞媒介性および液性免疫応答の両方が達成される。毒性は低い;ISCOMは、有意な抗体応答を誘発し得る。Quil Aは一例であり、QS-21は別の例である。
【0149】
GerbuRアジュバント:亜鉛プロリンと共に免疫賦活剤を用いる水相アジュバント。GerbuRは、デポー効果を有さず、最小限の炎症効果を有する。GerbuRは、高い力価を維持するために頻繁な追加免疫を必要とする。
【0150】
別の群のアジュバントは、サイトカインIL-12、IL-4、およびB7などの共刺激分子などの免疫刺激剤を含む。ICAMおよびLFAなどのアクセサリ分子を含む、免疫刺激効果を有する広範囲の分子が公知である。いくつかの態様において、GM-CSFが、初回免疫投与の前に患者に投与される。GM-CSFは、薬学的製剤においてウイルスベクターまたは単離されたタンパク質を用いて投与され得る。GM-CSF、ICAM、およびLFAなどのアジュバントの混合物が使用され得る。強い免疫応答は典型的に感染症抗原に対して生じるが、腫瘍関連抗原は典型的により弱い免疫応答をもたらす。このように、上記のような免疫刺激剤は好ましくはそれらと共に用いられる。
【0151】
いくつかの態様において、免疫原性を改善し、異なる投与経路を容易にするために、肺炎球菌ワクチンはいくつかの肺炎球菌抗原を含んでよく、かつ/または異なるもしくは新規アジュバントと共に製剤化することができ、または融合結合体(例えば、ニューモリソイドとの融合、およびLu et al, Infection and immunity, 2009において提唱される多糖との結合)などのワクチン骨格中に、もしくはPCT/US12/37412およびWO 2012/155007(これらは全体として参照により本明細書に組み入れられる)において開示されている骨格を用いて組み入れることができる。したがって、少なくとも2個、もしくは少なくとも約3個、もしくは少なくとも約4個、もしくは少なくとも約5個、もしくは少なくとも約6個、もしくは少なくとも約7個、もしくは少なくとも約8個、もしくは少なくとも約9個、もしくは少なくとも約10個、もしくは少なくとも約12個、もしくは少なくとも約14個、もしくは少なくとも約16個、もしくは少なくとも約18個、もしくは少なくとも約20個、もしくは少なくとも約25個、もしくは約2個〜約26個の間の任意の整数の異なる抗原、または25個よりも多くの異なる抗原を含む組成物を、単独でもしくはアジュバントと組み合わせて用いることができ、および/または多糖などのワクチン骨格を用いることができる。
【0152】
別の局面において、本発明は、哺乳動物において肺炎球菌に対する免疫応答を誘発する方法を提供する。本方法は、例えば、表1より選択される単離された肺炎球菌ポリペプチド抗原、またはその断片および組み合わせを含む免疫原性組成物、例えば本明細書に記載される免疫原性組成物を該哺乳動物に投与することを含む。
【0153】
いくつかの態様において、方法は、肺炎球菌に対する免疫応答を誘発する。いくつかの態様において、方法は、肺炎球菌抗原に対するT細胞応答(例えば、CD4+ T細胞媒介性免疫応答および/またはCD8+ T細胞媒介性免疫応答)を誘発する。いくつかの態様において、方法はTh1 T細胞応答を誘発する。いくつかの態様において、方法はTh17 T細胞応答を誘発する。いくつかの態様において、方法は、抗原特異的T細胞によるIFN-γ分泌を誘発する。いくつかの態様において、方法は抗体応答(例えば、IgG応答および/またはIgA応答)を誘発する。いくつかの態様において、方法は細胞傷害性T細胞(CTL)応答を誘発する。いくつかの態様において、方法はB細胞媒介性免疫応答を誘発する。いくつかの態様において、方法は、T細胞媒介性応答およびB細胞媒介性応答の両方を誘発する。いくつかの態様において、方法は自然免疫応答を誘発する。
【0154】
いくつかの態様において、方法は、組成物を投与された対象における肺炎球菌感染症の発生率を低下させる。いくつかの態様において、方法は、肺炎球菌による下部尿路感染症の可能性を減少させる。いくつかの態様において、方法は、肺炎球菌生物による上部尿路感染症の可能性を減少させる。いくつかの態様において、方法は、肺炎球菌生物による慢性感染症の可能性を減少させる。いくつかの態様において、方法は、肺炎球菌感染症に起因する骨盤内炎症性疾患に罹患する可能性を減少させる。いくつかの態様において、方法は、肺炎球菌感染症に続発する不妊症の可能性を減少させる。
【0155】
方法のいくつかの態様において、免疫原性組成物は、哺乳動物に少なくとも2回(例えば、2回、3回、4回、または5回)投与される。
【0156】
いくつかの態様において、初回投与後に(すなわちブーストとして)投与される免疫原性組成物は、最初に投与される組成物と異なり、例えば、組成物は、異なる肺炎球菌抗原もしくは異なるサブセットの肺炎球菌抗原、または異なる肺炎球菌抗原物質(ポリペプチドまたはそれをコードする核酸)、または異なる用量の抗原、または異なるアジュバント、または異なる用量のアジュバントを含む。いくつかの態様において、ブーストは、前回の投与と異なる経路により投与される。
【0157】
いくつかの態様において、哺乳動物は、肺炎球菌による感染症のリスクがある。いくつかの態様において、哺乳動物は肺炎球菌感染症に感染している。いくつかの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0158】
いくつかの態様において、本方法で投与される免疫原性組成物はアジュバントを含む。いくつかの態様において、アジュバントはミネラル含有アジュバントである。いくつかの態様において、本方法で投与される免疫原性組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0159】
いくつかの態様において、肺炎球菌抗原組成物はアジュバントを含む。いくつかの態様において、アジュバントはミネラル含有アジュバントを含む。ミネラル含有アジュバントは、ゲルとして、結晶形態に、非晶質形態に、粒子として等、製剤化され得る。ミネラル含有アジュバントは、例えば、アルミニウム塩および/またはカルシウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸カルシウム等)を含む。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原組成物は水酸化アルミニウムを含む。Alhydrogel(商標)は、水酸化アルミニウムゲルアジュバントの一例である。
【0160】
いくつかの態様において、アジュバントは免疫調節性オリゴヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、免疫調節性オリゴヌクレオチド配列は、CpG(非メチル化シトシン-グアノシン)モチーフを含む。CpGモチーフを有するオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド類似体および/または天然に存在しないヌクレオシド間結合(例えば、ホスホロチオエート結合)を含み得る。CpGモチーフを含む様々なオリゴヌクレオチドの例については、Kandimalla, et al., Nuc. Acids Res. 31(9): 2393-2400, 2003;WO02/26757;W099/62923;Krieg, Nat. Med. 9(7): 831-835, 2003;McCluskie, et al., FEMS Immunol. Med. Microbiol. 32:179-185, 2002;WO98/40100;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,239,116号;および米国特許第6,429,199を参照されたい。他の免疫調節性ヌクレオチド配列 二本鎖RNA配列、パリンドローム配列、およびポリ(dG) 配列。
【0161】
いくつかの態様において、アジュバントはIC31(商標)(Intercell AG) を含む。IC31(商標)は、抗菌ペプチドのKLKおよび免疫賦活性オリゴヌクレオチドのODN1aを含む合成アジュバントであり、Toll様受容体9(TLR9)アゴニストとして作用する。いくつかの態様において、アジュバントは毒素を含む。いくつかの態様において、毒素は、細菌性ADPリボシル化毒素、例えば、コレラ毒素(CT)、大腸菌易熱性毒素、または百日咳毒素である。いくつかの態様において、細菌毒素は無毒化形態のADPリボシル化毒素である(例えば、Beignon, et al., Inf. Immun. 70(6):3012-3019, 2002;Pizza, et al., Vaccine 19:2534-2541, 2001;Pizza, et al., Int. J. Med. Microbiol. 290(4-5):455-461, 2000;Scharton-Kersten et al., Inf. Immun.68(9):5306-5313, 2000;Ryan et al., Inf. Immun 67(12):6270-6280, 1999;Partidos et al., Immunol. Lett. 67(3):209-216, 1999;Peppoloni et al., Vaccines 2(2):285-293, 2003;およびPine et al., J. Control Release 85(1-3):263-270, 2002を参照されたい)。いくつかの態様において、アジュバントは、モノホスホリルリピドAまたは3-De-O-アシル化モノホスホリルリピドAなどのエンドトキシンを含む(米国特許第4,987,237号明細書およびGB 2122204Bを参照されたい)。
【0162】
いくつかの態様において、アジュバントは、ムラミルジペプチド(例えば、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-1-アラニル-d-イソグルタミン(nor-MDP)、およびN-アセチルムラミル-1-アラニル-d-イソグルタミニル-1-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-s- -n-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミンMTP-PE)を含む。一部では、アジュバントは、油性エマルションおよび/または乳化剤ベースのアジュバントを含む。いくつかの態様において、油性エマルションアジュバントは、フロイントアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント(CFA)またはフロイント不完全アジュバント(IFA))を含む。いくつかの態様において、油性エマルションアジュバントは、スクアレン水エマルション、例えばMF59(Novartis;例えば、WO9014837を参照されたい)またはSynexアジュバント製剤(SAF))などを含む。いくつかの態様において、油性エマルションは、分散剤、例えばソルビタンまたはマンニドのモノ-またはジ-C
12-C
24-脂肪酸エステル、例えば、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、またはモノオレイン酸マンニドを含む。スクアレンおよび分散剤を含む油性エマルションの例には、Arlacel(商標)、Montanide(商標)ISA-720、およびMontanide(商標)ISA-703が含まれる。他の油性エマルションは、例えばWO95/17210およびEP 0399842において記載されている。
【0163】
いくつかの態様において、アジュバントはサポニンを含む。サポニンは、キラヤ・サポナリア(Quillaja saponaria)、サボンソウ(Saponaria officianalis)、スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)、および宿根カスミソウ(Gypsophilla paniculata)などの植物に由来するステロイド配糖体および/またはトリテルペノイド配糖体である。記載があり、かつ肺炎球菌抗原用のアジュバントとして使用され得るサポニン含有抽出物の画分には、Quil(商標)A、QS21、QS7、QS17、QS18、QH-A、QH-B、QH-C、およびQuilAが含まれる(例えば、米国特許第5,057,540号を参照されたい)。いくつかの態様では、QS21がアジュバントとして用いられる。
【0164】
いくつかの態様において、アジュバントは免疫刺激複合体(ISCOM)を含む。ISCOMは、典型的にグリコシド(例えば、サポニン)および脂質を含む粒子である。いくつかの態様において、ISCOMはサポニンおよびコレステロールを含む。いくつかの態様において、ISCOMは、サポニン、コレステロール、およびリン脂質(例えば、ホスファチジルコリンおよび/またはホスファチジルエタノールアミン)を含む。いくつかの態様において、ISCOMは非イオン性ブロック共重合体を含む。ISCOMは、付加的なアジュバント、例えば本明細書に記載される付加的なアジュバント物質を含み得る(例えば、WO 05/002620を参照されたい)。いくつかの態様において、ISCOMはそれを粘膜に標的化する物質を含む(例えば、WO97/030728を参照されたい)。本明細書において提供される肺炎球菌抗原との組み合わせに適している他のISCOM組成物および該組成物の調製は、例えば、米国特許出願公開第20060121065号、WO 00/07621、WO 04/004762、WO 02/26255、およびWO 06/078213に記載されている。いくつかの態様において、アジュバントは、AbISCO(登録商標)アジュバント(例えば、Matrix-M(商標)、Isconova)を含む。いくつかの態様において、アジュバントはAbISCO(登録商標)-100を含む。いくつかの態様において、アジュバントはAbISCO(登録商標)-300を含む。
【0165】
いくつかの態様において、アジュバントは非イオン性ブロック共重合体を含む。非イオン性ブロック共重合体は典型的に、疎水性ポリオキシプロピレンのブロックと組み合わされた様々な長さの疎水性ポリオキシエチレンの2本の鎖を含む。いくつかの態様において、非イオン性ブロック共重合体は、水中油型エマルション中に(例えば、油およびスクアレンと共に)製剤化される。
【0166】
いくつかの態様において、アジュバントはウイルス様粒子(VLP)を含む。VLPは、典型的に1つまたは複数のウイルスタンパク質を含む非複製的非感染性粒子であり、任意でリン脂質などの付加的な成分と共に製剤化される。いくつかの態様において、VLPは、以下の1つまたは複数からのタンパク質を含む:インフルエンザウイルス(例えば、赤血球凝集素(HA) またはノイラミニダーゼ(NA) ポリペプチド)、B型肝炎ウイルス(例えば、コアまたはカプシドポリペプチド)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNAファージ、Q13ファージ(例えば、コートタンパク質)、GAファージ、frファージ、AP205ファージ、Ty(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)。例えば、WO03/024480、WO03/024481、WO08/061,243、およびWO07/098,186を参照されたい。いくつかの態様において、アジュバントはレプリコンを含む。レプリコンは、ウイルスタンパク質を含む非感染性粒子である点でVLPと類似しており、ポリペプチド(例えば、抗原)をコードする核酸をさらに含む。いくつかの態様において、レプリコンは、アルファウイルス由来のタンパク質を含む。アルファウイルスには、例えば、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、エバーグレイズ(Everglades)ウイルス、ムカンボ(Mucambo)ウイルス、ピクスナ(Pixuna)ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ミドルバーグ(Middleburg)ウイルス、チクングニアウイルス、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、バーマフォレストウイルス、ゲタウイルス、サギヤマ(Sagiyama)ウイルス、ベバル(Bebaru)ウイルス、マヤロ(Mayaro)ウイルス、ウナ(Una)ウイルス、アウラ(Aura)ウイルス、ワタロア(Whataroa)ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、キジラガッチェ(Kyzylagach)ウイルス、ハイランド(Highlands)Jウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ヌドゥム(Ndumu)ウイルス、およびバギークリーク(Buggy Creek)ウイルスが含まれる。いくつかの態様において、アジュバントは、本明細書に記載される1種または複数種の肺炎球菌抗原をコードする核酸を含むレプリコンを含む。いくつかの態様において、アジュバントは、サイトカイン(例えば、インターロイキン12(IL-12)、IL-23、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))をコードするレプリコンを含む。レプリコンの生成および使用は、例えば、WO08/058,035、WO08/085,557、およびWO08/033,966に記載されている)。いくつかの態様において、VLPまたはレプリコンアジュバントは、1種または複数種の肺炎球菌抗原を含む(すなわち、VLPまたはレプリコン粒子は、粒子の一部として肺炎球菌抗原を含む)。いくつかの態様において、VLPまたはレプリコンアジュバントは、肺炎球菌抗原ポリペプチドと同時投与される。
【0167】
いくつかの態様において、アジュバントはリポソームを含む。リポソームとは、人工的に構築された球状の脂質小胞である(例えば、米国特許第4,053,585号;第6,090,406号;および第5,916,588号を参照されたい)。特定の態様において、リポソームに使用されるべき脂質は、これらに限定されないが、以下のうちの1つまたは複数であってよい:ホスファチジルコリン、リピドA、コレステロール、ドリコール、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、セラミド、グリコシルセラミド、セレブロシド、スルファチド、フィトスフィンゴシン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、およびリゾホスファチド。いくつかの態様において、アジュバントは、リポソーム、およびToll様受容体(TLR;例えば、WO/2005/013891、WO/2005/079511、WO/2005/079506、およびWO/2005/013891を参照されたい)に対するリガンドを含む。いくつかの態様において、アジュバントはJVRS-100を含む。JVRS-100は、非コードオリゴヌクレオチドまたはプラスミドと組合わされた陽イオン性リポソームを含む。
【0168】
いくつかの態様において、アジュバントは、ポリマー、例えばアクリル酸もしくはメタクリル酸のポリマー、ポリホスファゼン、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸もしくはグリコール酸の共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、またはこれらのポリマーの単量体から調製された共重合体からなる微粒子を含む。いくつかの態様において、アジュバントは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、およびポリエチレングリコールからなる群より選択されるポリマーからなる微粒子を含む(例えば、米国特許第5,500,161号を参照されたい)。
【0169】
いくつかの態様において、アジュバントは、生分解性マイクロスフェア(例えば、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(D,L-グリコール酸)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物等からなるマイクロスフェア)を含む。
【0170】
いくつかの態様において、アジュバントはサイトカインを含む。いくつかの態様において、アジュバントはIL-12を含む。いくつかの態様において、アジュバントはIL-23を含む。いくつかの態様において、アジュバントはGM-CSFを含む。いくつかの態様において、アジュバントはリポペプチドを含む。いくつかの態様において、アジュバントはPam-3-Cysリポペプチドを含む。いくつかの態様において、リポペプチドを含むアジュバントは、Toll様受容体(TLR)を活性化する。
【0171】
ワクチンまたは免疫原性組成物の付加的な成分
上記の抗原およびアジュバントに加えて、ワクチン製剤または免疫原性組成物は、1つまたは複数の付加的な成分を含み得る。
【0172】
特定の態様において、ワクチン製剤または免疫原性組成物は、1つまたは複数の安定化剤、例えば、糖(スクロース、グルコース、またはフルクトースなど)、リン酸塩(リン酸二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、またはリン酸一ナトリウムなど)、グルタミン酸(L-グルタミン酸ナトリウムなど)、ゼラチン(加工処理ゼラチン、加水分解ゼラチン、またはブタゼラチンなど)、アミノ酸(アルギニン、アスパラギン、ヒスチジン、L-ヒスチジン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、リジン、フェニルアラニン、チロシン、およびそれらのアルキルエステルなど)、イノシン、またはホウ酸ナトリウムを含み得る。
【0173】
特定の態様において、ワクチン製剤または免疫原性組成物は、1つまたは複数の緩衝液、例えば炭酸水素ナトリウムとアスコルビン酸との混合物などを含む。いくつかの態様において、ワクチン製剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS) などの生理食塩水、または蒸留水中で投与され得る。
【0174】
特定の態様において、ワクチン製剤または免疫原性組成物は、1つまたは複数の界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(Tween 80)、Triton X-100、ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール 4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール(TRITON X-100);ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(TWEEN 20);ならびにホルムアルデヒドおよびオキシランを有する4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールポリマー(TYLOXAPOL)などを含む。界面活性剤は、イオン性または非イオン性であってよい。
【0175】
特定の態様において、ワクチン製剤または免疫原性組成物は、1つまたは複数の塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、または塩化カリウムなどを含む。
【0176】
特定の態様において、ワクチンまたは免疫原性組成物中に保存剤が含まれる。他の態様において、保存剤は使用されない。保存剤は、複数回用量ワクチンバイアルにおいて最も頻繁に使用され、単回用量ワクチンバイアルにおいてはそれほど頻繁に必要とされない。特定の態様において、保存剤は、2-フェノキシエタノール、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、ベンジルアルコール、ならびに/またはソルビン酸である。
【0177】
特定の態様において、ワクチン製剤または免疫原性組成物は制御放出製剤である。
【0178】
修飾
いくつかの態様において、ワクチンは、表1に収載される配列の少なくとも1つの免疫原、または機能的断片であるかまたは表1に収載される免疫原と実質的な同一性を有する免疫原を含み得る。混合ワクチンのための本明細書において開示されるさらなる肺炎連鎖球菌抗原は、結合した肺炎連鎖球菌多糖を含む。結合する多糖は、例えば、米国特許第5,623,057号、米国特許第5,371,197号、またはPCT/US2011/023526において記載されている通りであってよく、これらは全体として本明細書に組み入れられる。
【0179】
いくつかの態様において、本明細書に記載される肺炎球菌抗原は、修飾を伴ってまたは伴わずに使用され得る。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、所望の免疫応答を誘発するように修飾され得る。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、破傷風毒素、ニューモリシン、キーホールリンペットヘモシアニン等などの適切な免疫原性担体と結合される。
【0180】
いくつかの態様において、1種または複数種の肺炎球菌抗原は、融合結合体(例えば、ニューモリソイドとの融合、およびLu et al, Infection and immunity, 2009において提唱される多糖との結合)などの骨格中に、または全体として参照により本明細書に組み入れられるPCT/US12/37412、WO 2012/155007、およびUS2001/0206716において開示されている骨格を用いて存在する。
【0181】
いくつかの態様において、肺炎球菌ポリペプチド抗原はPdTと融合される。いくつかの態様において、PdTは、ニューモリシンの非溶血性変種、またはニューモリシンの非溶血性変種(PdT)(W433F、D385N、およびC428G)を表す。
【0182】
いくつかの態様において、肺炎球菌ポリペプチド抗原は、抗原性糖部分に対する相乗的免疫原性応答を提供するために、結合体として存在し得る。例えば、チフス菌のVi多糖を使用することができる。Vi莢膜多糖は、腸チフスなどの細菌腸内感染症に対して開発された(Robbins et al., 150(3) J. Infect. Dis. 436-49 (1984);Levine et al., 7 Baillieres Clin. Gastroenterol. 501-17 (1993))。Viは、C-2位にNアセチルおよびC-3位に可変O-アセチル化を有する、α-1→4-ガラクツロン酸のポリマーである。チフス菌の病原性は、この分子の発現と相関する(Sharma et al., 101 P.N.A.S. USA 17492-97 (2004))。チフス菌のVi多糖ワクチンは、いくつかの利点を有する:副作用は低頻度かつ軽度であり、単回投与は一貫した免疫原性および有効性をもたらす。Vi多糖は、他の多糖ワクチンについて検証された物理化学的方法によって確実に標準化され得、Viは室温で安定しており、かつ免疫原性および耐性に影響を及ぼすことなく他のワクチンと同時に投与され得る(Azze et al., 21 Vaccine 2758-60 (2003))。
【0183】
したがって、チフス菌のVi多糖を肺炎球菌ポリペプチド抗原の融合タンパク質と結合させることができ、この場合、該肺炎球菌ポリペプチド抗原はPdTまたは別のタンパク質と融合されており、結果として得られるワクチンは1つの病原体または2つの病原体に対する免疫を付与する:肺炎球菌ポリペプチド抗原が肺炎球菌からの保護を付与する場合、Vi-肺炎球菌抗原:PdT構築物は、チフス菌および肺炎球菌に対する免疫応答をもたらす。他の例は、2つの異なる病原体から保護するワクチンを提供するために、莢膜型細菌(髄膜炎菌、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、肺炎球菌等)由来の糖と結核タンパク質を組み合わせることを含む。
【0184】
デキストラン、肺炎球菌の細胞壁多糖(CWPS) 等の代わりに本発明において用いることができる他の多糖(PS) 部分には、癌の炭水化物抗原が含まれる。例えば、もっぱら癌細胞によって発現されるオリゴ糖であるTn抗原(Buskus et al., 44 Angew Chem. Int'l Ed. 5985-88 (2005))。いくつかの態様において、本発明は、CWPSと結合した、切断型肺炎球菌抗原および非溶血性ニューモリシンPdTタンパク質の融合タンパク質を含む、免疫原性組成物を提供する。
【0185】
本発明の1つの局面において、多糖は<500 kDaの分子量を有する。本発明の別の局面において、PSは<70 kDaの分子量を有する。
【0186】
いくつかの態様において、本明細書において開示される肺炎球菌抗原は、全体として参照により本明細書に組み入れられるWO 2012/155007において開示される免疫原性多重抗原提示系(MAPS)中に存在し、この場合、本明細書において開示される肺炎球菌抗原は、任意で抗原性であってよい少なくとも1つのタイプのポリマー、例えば多糖;本明細書において開示される少なくとも1種の肺炎球菌抗原;ならびに該ポリマーと該抗原性タンパク質またはペプチドとの間の間接的な連結として働く、(i) 該ポリマーと会合する第1親和性分子、および (ii) 該タンパク質またはペプチドと会合する相補的親和性分子を含む、少なくとも1つの相補的親和性分子対を含む、免疫原性結合体中に存在する。したがって、ポリマーは、少なくとも1種、または少なくとも2種、または複数種の同じかまたは異なるタンパク質またはペプチド抗原に付着し得る。いくつかの態様において、ポリマーは抗原性であり、例えばポリマーは肺炎球菌莢膜多糖である。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は組換え肺炎球菌抗原である。したがって、本発明の1つの局面は、ポリマー、少なくとも1種の肺炎球菌抗原、および少なくとも1つの相補的親和性分子対を含む免疫原性組成物に関し、この場合、該相補的親和性分子対は、該ポリマーと会合する第1親和性分子、および該肺炎球菌抗原と会合する相補的親和性分子を含み、そのため第1親和性分子が相補的親和性分子と会合した場合に、抗原とポリマーは間接的に連結される。
【0187】
いくつかの態様において、免疫原性結合体中の第1親和性分子は、架橋試薬、例えば、CDAP(1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート)、EDC(1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム;臭化シアン;または重炭酸アンモニウム/ヨード酢酸より選択される架橋試薬を用いて、ポリマーに架橋される。いくつかの態様において、第1親和性分子は、ポリマーのカルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、フェノキシル、ヘミアセタール、およびメルカプト官能基に架橋される。いくつかの態様において、第1親和性分子はポリマーに共有結合される。いくつかの態様において、第1親和性分子は、ビオチンもしくはその誘導体、またはビオチンと類似の構造もしくは物理的特性を有する分子、例えばアミン-PEG3-ビオチン((+)-ビオチン化-3-6,9-トリキサンデカンジアミン)、もしくはその誘導体である。
【0188】
いくつかの態様において、免疫原性結合体の肺炎球菌抗原は、相補的親和性結合分子と融合された肺炎球菌抗原性タンパク質を含む融合タンパク質である。融合物は、遺伝子構築物、すなわち、組換え融合ペプチドまたはタンパク質であってよい。いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、融合タンパク質として相補的親和性分子と共有結合させることができる。代替的な態様において、抗原は、相補的親和性分子と非共有結合により結合される。
【0189】
いくつかの態様において、免疫原性結合体中の相補的親和性分子は、ビオチン結合タンパク質、またはその誘導体もしくは機能的部分である。いくつかの態様において、相補的親和性分子は、アビジン様タンパク質またはその誘導体もしくは機能的部分、例えばリザビジンまたはその誘導体であるが、これに限定されない。いくつかの態様において、相補的親和性分子は、アビジンもしくはストレプトアビジン、またはその誘導体もしくは機能的部分である。
【0190】
いくつかの態様において、免疫原性組成物のポリマーは、分岐鎖ポリマー、例えば分岐多糖であるか、またはその代わりに直鎖ポリマー、例えば単一鎖ポリマー、例えば多糖であってよい。いくつかの態様において、ポリマーは、多糖、例えばデキストランまたはその誘導体である。いくつかの態様において、ポリマー、例えばデキストラン多糖は、425 kDa 500 kDa(各数値を含む)の、またはいくつかの態様においては500 kDaを超える平均分子量のものであってよい。いくつかの態様において、ポリマー、例えばデキストラン多糖は、60 kDa〜90 kDa(各数値を含む)の、またはいくつかの態様においては70 kDaよりも小さな平均分子量のものであってよい。デキストランポリマーは、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides) などの細菌に由来し得る。
【0191】
いくつかの態様において、本明細書において開示される免疫原性組成物は、少なくとも2種の抗原、または少なくとも3種の抗原、または少なくとも5種の抗原、または2〜10種の抗原、または10〜15種の抗原、または15〜20種の抗原、または20〜50種の抗原、または50 100種の抗原、または100種超の抗原(各数値を含む)を含む。いくつかの態様において、本明細書において開示される免疫原性組成物が少なくとも2種の抗原を含む場合、該抗原は同じ抗原または少なくとも2種の異なる抗原であってよい。いくつかの態様において、抗原は、同じもしくは異なる病原体に由来してよく、または同じ抗原性タンパク質の異なるエピトープもしくは部分であってよく、または同じ病原体の異なる血清型もしくは季節的変種(例えば、インフルエンザウイルスA、B、およびC)に特異的な同じ抗原であってよい。
【0192】
本明細書において開示される肺炎球菌抗原は、単独でまたは免疫原性結合体中に存在する場合に、1種または複数種の抗原に対する液性応答および細胞性応答の両方を同時に誘発し得る。免疫原性組成物は、長期の記憶応答を提供し、潜在的に将来の感染から対象を保護する。これは、機能的抗多糖抗体の高力価をもたらし、かつ従来の共役ワクチンによって誘導される抗体レベルと同様であるかまたは遜色がない、単一の免疫原性組成物を可能にする。
【0193】
本発明の別の態様において、免疫原性組成物は、PdTと融合された、表1より選択される肺炎球菌抗原からなる融合タンパク質多糖結合体を含み得、この場合、肺炎球菌抗原:PdT融合タンパク質は多糖と結合されており、そのため肺炎球菌抗原に対する免疫が増強される。多糖は、デキストラン、チフス菌のVi多糖、もしくは肺炎球菌の細胞壁多糖(CWPS)、または原核生物もしくは真核生物起源の別の多糖であってよい。
【0194】
肺炎連鎖球菌タンパク質抗原の切断型および/または変異型をコードする核酸は、(1) 自己溶菌酵素、表面タンパク質A、ノイラミニダーゼ、ヒアルロン酸溶解物、コリン結合タンパク質Aなどの他の肺炎球菌タンパク質、または (2) インフルエンザ菌b、髄膜炎菌A、B、もしくはC群、または連鎖球菌B群などの生物由来の非肺炎球菌タンパク質をコードするヌクレオチド配列と融合させることができる。そのような融合タンパク質をコードする核酸は、発現系において発現される。
【0195】
ニューモリシン切断物は多糖の有用な担体であり得る、というのは、宿主はそのような担体ポリペプチドに対する既存の抗体を欠いている可能性があるからである。ニューモリシンは肺炎球菌感染症における病原性因子であり、異なるサブタイプを有する肺炎球菌間で、ニューモリシンの抗原性の変動はほとんどない。
【0196】
多糖-タンパク質結合体は、ヒトなどの哺乳動物に投与された場合に、量、タイプ、および/または期間の点で、多糖成分のみの哺乳動物への投与によって誘導される免疫応答を上回る免疫応答を誘導する。したがって、ポリペプチド成分は、そのような増強された免疫応答を誘導するのに十分な長さでなければならない。天然肺炎球菌抗原の断片に関して、該断片は、少なくとも8、10、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、425、450、460、465、460、465、またはそれ以上のアミノ酸長である。天然肺炎球菌抗原とは配列が異なるポリペプチドに関して、該ポリペプチドは、表1に収載される天然肺炎球菌抗原と、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上同一であってよい。
【0197】
結合体の多糖成分は、任意の肺炎連鎖球菌莢膜多糖であってよく、これにはサブタイプ1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、19A、20、22F、23A、23F、24F、27、33F、または34のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、莢膜多糖は、サブタイプ4、6B、9V、14、18C、19F、または23Fより選択される。いくつかの態様において、多糖は血清型14である。他の態様において、多糖は血清型18Cである。異なる莢膜多糖の1つまたは複数を、単一のポリペプチドまたは複数のポリペプチドと結合させることができる。例えば、多価結合体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10種の異なる莢膜多糖を含み得る。多糖は、例えば、単量体結合(多糖の一方の末端のみがポリペプチドに付着している)、環状結合(単一のポリペプチドが環状多糖に付着している)、または架橋(複数の多糖が複数のポリペプチドに付着している)を介して、ポリペプチドと結合させることができる。
【0198】
ポリペプチド、例えば実施例および表1に記載される肺炎球菌抗原ポリペプチドを精製する方法、ならびに多糖をポリペプチドと結合させる方法は、例えば米国特許第4,242,501号;第4,686,102号;第5,623,057号;および第5,565,204号に記載されており、これらは全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0199】
本明細書に記載される結合体またはポリペプチドを哺乳動物に投与して、該哺乳動物において肺炎連鎖球菌に対する免疫応答(予防的および/または治療的免疫応答)を誘発することができる。結合体またはポリペプチドを含む薬学的組成物は、これらに限定されないが、生理食塩水または他の注射用液体を含む、ワクチンに適している薬学的に許容される担体、緩衝液、または保存剤中で送達することができる。ワクチンにおいて慣習的な添加物、例えば、ラクトースまたはソルビトールなどの安定化剤、およびリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、または硫酸アルミニウム、およびステアリルチロシンなどの免疫応答を増強させるためのアジュバントもまた存在してよい。製造されたワクチンはまた、複数の感染性病原体に対する免疫応答を誘発する多価ワクチンの成分とし使用することもできる。
【0200】
いくつかの態様において、肺炎球菌ポリペプチド抗原は、例えば、リン酸化、ミリストイル化、アシル化、グリコシル化、糖化等により、翻訳後修飾される。いくつかの態様において、肺炎球菌ポリペプチド抗原は脂質化される。脂質部分との結合は、直接的または間接的(例えば、リンカーを介する)であってよい。脂質部分は合成のものであってよく、または天然で生成されてもよい。いくつかの態様において、肺炎球菌ポリペプチド抗原は、脂質部分と化学的に結合される。いくつかの態様において、肺炎球菌ポリペプチド抗原をコードするDNA構築物が脂質化配列を含む。脂質化配列は、ポリペプチドのN末端側またはC末端側であってよく、シグナル配列または他の配列に組み込まれてもよい。例示的な脂質化配列は、大腸菌遺伝子RlpBのシグナル配列である。
【0201】
いくつかの態様において、肺炎球菌ポリペプチド抗原は別の分子と共有結合される。これによって、例えば、抗原の半減期、溶解度、生物学的利用能、または免疫原性が増加し得る。抗原と共有結合させることができる分子には、炭水化物、ビオチン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリシアル酸、N-プロピオニル化ポリシアル酸、核酸、多糖、およびPLGAが含まれる。いくつかの態様において、天然に生成される形態のポリペプチドが、免疫系を刺激する部分と共有結合される。そのような部分の例は、脂質部分である。場合により、脂質部分はTLR2またはTLR4などのToll様受容体(TLR) によって認識され、自然免疫系を活性化する。
【0202】
DNAワクチン;核酸組成物および抗原発現
特定の局面において、ワクチンは、本明細書において開示されるか、または本明細書に記載されるポリペプチドに対応する核酸のうちの1つまたは複数を含む。核酸ワクチンが患者に投与されると、対応する遺伝子産物(所望の抗原など)が患者の体内で産生される。いくつかの態様において、最適化された組換えポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンベクターを哺乳動物(ヒトを含む)に送達して、治療的または予防的免疫応答を誘導することができる。核酸は、例えば、DNA、RNA、または合成核酸であってよい。核酸は一本鎖または二本鎖であってよい。
【0203】
様々な種類のベクターが、発現系(例えば宿主細胞)における肺炎球菌抗原の発現に適している。いくつかの態様において、組成物は、例えばポリペプチド組成物を生成するための、インビトロ(細胞内であろうと、または無細胞系内であろうと)での発現に適したベクターを含む。「ベクター」という用語は、それと連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指し、例えば、プラスミド、コスミド、またはウイルスベクターを含み得る。ベクターは自律複製することができ、または宿主DNA中に組み込まれ得る。ウイルスベクターには、例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスが含まれる。他の種類のウイルスベクターが、当技術分野において公知である。
【0204】
核酸ワクチンベクター(例えば、アデノウイルス、リポソーム、パピローマウイルス、レトロウイルス等)は、インビボにおける細胞の形質導入のために、哺乳動物に直接投与され得る。核酸ワクチンは、非経口投与を含む任意の適切な様式で投与するために、薬学的組成物として製剤化され得る。プラスミドベクターは典型的に、筋組織への遺伝子導入に、より効率的である。経口投与によってDNAベクターを粘膜表面に送達する可能性もまた報告されており(PLGA封入ロタウイルスおよびB型肝炎)、DNAプラスミドは遺伝子の他の組織中への直接的導入に利用されている。DNAワクチンは、主として筋肉内注射により、遺伝子銃送達により、またはエレクトロポレーションにより、動物に導入されている。プラスミドは、導入された後、一般的に複製することなくエピソームで維持される。コードされるタンパク質の発現は、長時間にわたって持続することが示されており、B細胞およびT細胞の刺激を提供する。
【0205】
感染症または他の病態の治療または予防において投与されるべきベクターの有効量を決定する際には、医師は、ベクターの毒性、疾患の進行度、およびもし存在するのであれば抗ベクター抗体の産生を評価する。多くの場合、ベクター由来の裸の核酸に等価な用量は、典型的な70キログラムの患者に対して約1μg〜1 mgであり、核酸を送達するために使用されるベクターの用量は、等価な量の治療用核酸を生じるように計算される。投与は、単一用量または分割用量によって達成され得る。核酸ワクチンベクターの毒性および治療有効性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順を用いて決定され得る。
【0206】
核酸ワクチンは、DNA、RNA、改変核酸、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの態様において、ワクチンは、1つまたは複数のクローニングベクターまたは発現ベクターを含む;例えば、ワクチンは、それぞれが哺乳動物細胞中でヌクレオチドコード領域を自律発現して、少なくとも1種の免疫原性ポリペプチドを産生し得る複数の発現ベクターを含み得る。発現ベクターは、真核生物プロモーター配列、例えば、1つまたは複数のコード領域に機能的に連結された強力な真核生物プロモーターのヌクレオチド配列などを含む場合が多い。本明細書における組成物および方法は、任意の特定の真核生物プロモーターの使用を伴う場合があり、多種多様なもの、例えばCMVまたはRSVプロモーターなどが公知である。プロモーターは、宿主細胞に対して異種であってよい。使用されるプロモーターは、構成的プロモーターであってよい。
【0207】
本組成物および方法において有用なベクターは、環状または直鎖状、一本鎖または二本鎖であってよく、プラスミド、コスミド、またはエピソームであってよい。適切な態様において、各ヌクレオチドコード領域は、別個のベクター上にある;しかしながら、1つまたは複数のコード領域が単一のベクター上に存在してもよく、これらのコード領域は、単一または複数のプロモーターの制御下にあり得ることが理解されるべきである。
【0208】
核酸ワクチンの生産のために、数多くのプラスミドが使用され得る。核酸ワクチンの適切な態様は、プラスミドVR1012(Vical Inc.、San Diego Calif)、pCMVI.UBF3/2(S. Johnston、University of Texas)、またはpcDNA3.1(InVitrogen Corporation、Carlsbad, Calif.)をベクターとして用いる構築物を使用する。加えて、ベクター構築物は、動物の免疫系を刺激する、非メチル化dCpGモチーフなどの免疫賦活性配列(ISS)を含み得る。核酸ワクチンはまた、免疫原性ポリペプチドを含む融合産物をコードし得る。プラスミドDNAは、送達系として弱毒化細菌を使用して送達することもでき、これは経口投与されるDNAワクチンに適した方法である。細菌を独立複製プラスミドで形質転換し、そのプラスミドが、宿主細胞中での弱毒化細菌の死滅後に宿主細胞の細胞質中に放出される。
【0209】
所望の抗原をコードするDNAを含むDNAワクチンは、断片単独、線状化プラスミド、環状プラスミド、複製可能なプラスミド、エピソーム、RNA等を含む、任意の適切な形態で宿主細胞中に導入することができる。好ましくは、遺伝子はプラスミド内に含まれる。特定の態様において、プラスミドは発現ベクターである。遺伝物質を発現し得る個々の発現ベクターは、標準的な組換え技法を用いて生成することができる。一般的なクローニング方法については、例えば、Maniatis et al., 1985 Molecular Cloning: A Laboratory Manual、またはDNA Cloning, Vol. I and II (D. N. Glover, ed., 1985) を参照されたい。
【0210】
投与経路には、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、眼内、および経口、ならびに局所、経皮、吸入もしくは坐剤によるもの、または膣、直腸、尿道、頬側、および舌下組織に対する洗浄によるような粘膜組織へのものが含まれるが、これらに限定されない。典型的な投与経路には、筋肉内、腹腔内、皮内、および皮下注射が含まれる。遺伝子構築物は、これらに限定されないが、従来の注射器、無針注射装置、「微粒子銃遺伝子銃」、またはエレクトロポレーション(「EP」)、「流体力学的方法」、もしくは超音波などの他の物理的方法を含む手段によって、投与され得る。DNAワクチンは、細胞内でDNAが発現され、所望の抗原が作製される限り、DNAを送達するために使用され得る任意の方法により送達することができる。
【0211】
いくつかの態様において、DNAワクチンは、陽イオン性リポソーム、フッ化炭素エマルション、コクリエート、筒状剤(tubule)、金粒子、生分解性マイクロスフェア、または陽イオン性ポリマーなどの公知のトランスフェクション試薬によって送達される。コクリエート送達媒体は、ホスファチジルセリン、コレステロール、およびカルシウムからなる安定したリン脂質カルシウム沈殿剤である;この非毒性かつ非炎症性のトランスフェクション試薬は、消化器系に存在することができる。生分解性マイクロスフェアは、ポリマー、例えば、トランスフェクション用DNAのマイクロカプセルの生成に使用され得るポリエステルであるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などを含む。脂質ベースのマイクロチューブは、多くの場合に、らせん状に巻かれた2層の脂質からなり、その縁部を互いにつなぎ合わせて充填されている。筒状剤が用いられる場合、核酸は、動物の体内に送達および制御放出されるようにその中心の中空部分に配置され得る。
【0212】
いくつかの態様において、DNAワクチンは、マイクロスフェアによって粘膜表面に送達される。生体接着性マイクロスフェアは、様々な技法を用いて調製することができ、眼、鼻腔、尿路、結腸、および胃腸管に見出されるものを含む任意の粘膜組織に接着するよう適合させることができ、ワクチンの局在化および全身性制御放出の可能性を提供する。生体接着性マイクロスフェアの特定の粘膜組織への適用を、ワクチン作用の限局化に使用することもできる。いくつかの態様において、粘膜ワクチン送達のための代替的アプローチは、特定のタンパク質抗原の遺伝子をコードするプラスミドDNA発現ベクターを粘膜表面に直接投与することである。
【0213】
本発明によるDNAプラスミドワクチンは、用いられる投与様式に応じて製剤化される。DNAプラスミドワクチンが注射用組成物であるいくつかの態様において、それは無菌および/または発熱物質不含および/または粒子不含である。いくつかの態様において、等張製剤が好ましく用いられる。一般的に、等張性のための添加剤には、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースが含まれ得る。いくつかの態様において、リン酸緩衝生理食塩水などの等張液が好ましい。いくつかの態様において、安定化剤にはゼラチンおよびアルブミンが含まれる。いくつかの態様において、血管収縮剤が製剤に添加される。いくつかの態様において、製剤を室温または外気温で長時間安定させる安定化剤、例えばLGSまたは他のポリカチオンもしくはポリアニオンなどが、製剤に添加される。
【0214】
いくつかの態様において、DNAワクチンは、薬理学的に許容される担体または希釈剤をさらに含み得る。ワクチンに適した担体は当業者に周知であり、これらに限定されないが、タンパク質、糖類等が含まれる。このような担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液、およびマルションであってよい。非水性担体の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、エマルション、または懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル、または固定油が含まれる。静脈内用媒体には、体液および栄養補充液、電解質補充液、例えばリンゲルデキストロースに基づくもの等などが含まれる。保存剤および抗菌剤には、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等が含まれる。好ましい保存剤には、ホルマリン、チメロサール、ネオマイシン、ポリミキシンB、およびアムホテリシンBが含まれる。
【0215】
核酸を動物に送達するための代替的アプローチは、ウイルスまたは細菌ベクターの使用を伴う。適切なウイルスベクターの例には、アデノウイルス、ポリオウイルス、ポックスウイルス、例えば、ワクシニア、カナリア痘、および鶏痘など、ナマズヘルペスウイルスを含むヘルペスウイルス、アデノウイルス関連ベクター、ならびにレトロウイルスが含まれる。例示的な細菌ベクターには、弱毒化形態のサルモネラ菌、赤痢菌、エドワージエラ・イクタルリ(Edwardsiella ictaluri)、エルシニア・ルッケリ(Yersinia ruckerii)、およびリステリア菌(Listeria monocytogenes)が含まれる。いくつかの態様において、核酸は、免疫原性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を自己発現し得る、プラスミドなどのベクターである。
【0216】
ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した形態をした、肺炎球菌抗原をコードする核酸を含み得る。組換え発現ベクターは典型的に、発現させる核酸配列に機能的に連結された1つまたは複数の調節配列を含む。調節配列には、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。調節配列には、ヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、ならびに組織特異的な調節配列および/または誘導性配列が含まれる。肺炎球菌抗原をコードする配列は、該抗原が宿主細胞から分泌されるように、シグナルペプチド(例えば、異種シグナルペプチド)をコードする配列を含み得る。発現ベクターの設計は、形質転換する宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等のような因子に依存し得る。
【0217】
原核細胞または真核細胞において肺炎球菌抗原を発現および産生させるために、組換え発現ベクターを設計することができる。例えば、抗原は、大腸菌、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現ベクターを使用)、酵母細胞、または哺乳動物細胞内で発現させることができる。適切な宿主細胞は、Goeddel, Gene Expression Technology Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif, 1990においてさらに考察されている。あるいは、組換え発現ベクターは、インビトロで、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて転写および翻訳され得る。
【0218】
原核生物におけるポリペプチドの発現は、大腸菌内で、融合タンパク質または非融合タンパク質の発現を指示する構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含むベクターを用いて行われる場合が多い。融合ベクターは、例えば、組換えタンパク質の発現を増加させるため;組換えタンパク質の溶解度を増加させるため;および/またはアフィニティー精製においてリガンドとして作用することにより組換え抗原の精製を支援するために、その中でコードされるタンパク質に、例えば組換えタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端に、いくつかのアミノ酸を付加する。多くの場合に、融合タンパク質の精製後に組換え抗原を融合部分から分離することができるように、融合部分と組換え抗原との接合部にタンパク質分解切断部位が導入される。そのような酵素、およびそれらの同族認識配列には、第Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith, D. B. and Johnson, K. S. Gene 67:31-40, 1988)、pMAL(New England Biolabs、Beverly, Mass.)、およびpRITS(Pharmacia、Piscataway, N.J.)が含まれ、これらはそれぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合する。本明細書において提供される肺炎球菌抗原発現ベクターには、酵母発現ベクター、昆虫細胞での発現用ベクター(例えば、バキュロウイルス発現ベクター)、および哺乳動物細胞での発現に適したベクターが含まれる。
【0219】
哺乳動物細胞で使用するための発現ベクターは、ウイルス調節エレメントを含み得る。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびサルウイルス40に由来する。ベクターは、誘導性プロモーター、例えば、ステロイドホルモンによって、ポリペプチドホルモンによって(例えば、シグナル伝達経路を介して)、または異種ポリペプチドによって(例えば、テトラサイクリン誘導系、「Tet-On」および「Tet-Off」;例えば、Clontech Inc., CA, Gossen and Bujard, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547, 1992、およびPaillard, Human Gene Therapy 9:983, 1989を参照されたい)によって調節されるプロモーターを含み得る。
【0220】
宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であってよい。例えば、肺炎球菌抗原は、細菌細胞(大腸菌など)、昆虫細胞、酵母、または哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞(アフリカミドリザル腎細胞CV-1起源のSV40細胞など;Gluzman, Cell 23:175-182, 1981)において発現させることができる。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0221】
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技法によって宿主細胞に導入することができる。本明細書で用いられる場合、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介性のトランスフェクション、リポフェクション、遺伝子銃、またはエレクトロポレーションを含む、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための当技術分野で認識されている種々の技法を指すことが意図される。
【0222】
宿主細胞を用いて、肺炎球菌抗原を産生(すなわち、発現)させることができる。したがって、本発明はさらに、宿主細胞を用いて肺炎球菌抗原を産生させる方法を提供する。1つの態様において、本方法は、肺炎球菌抗原が産生されるように、宿主細胞(その中に肺炎球菌抗原をコードする組換え発現ベクターが導入されている)を適切な培地中で培養することを含む。別の態様において、本方法は、肺炎球菌抗原を培地または宿主細胞から単離することをさらに含む。精製された肺炎球菌抗原を哺乳動物に投与するために用いて、免疫応答を誘導すること、および/または該抗原に特異的な抗体を生成することができる。
【0223】
本発明はまた、例えば肺炎球菌抗原に対する免疫応答を誘発するためにインビボで対象に投与するための、該抗原をコードする核酸組成物を提供する。いくつかの態様において、インビボで投与するための核酸組成物には、肺炎球菌抗原をコードする裸のDNAプラスミドが含まれる。異種遺伝子を発現させるための細菌ベクター、レプリコンベクター、弱毒生菌、およびウイルスベクターもまた用いることができる。弱毒生ウイルスベクター(例えば、組換えワクシニア(例えば、改変ワクシニアAnkara(MVA)、IDT Germany)、組換えアデノウイルス、トリポックスウイルス(例えば、カナリア痘(例えば、ALVAC(商標)、Aventis Pasteur)または鶏痘)、ポリオウイルス、およびアルファウイルスビリオンベクター)は、抗原に対する細胞媒介性免疫応答の誘導に成功している。トリポックスウイルスは哺乳動物宿主内では欠損しているが、初期プロモーター下にある挿入された異種遺伝子を発現し得る。組換えアデノウイルスおよびポリオウイルスベクターは、腸内で増殖することができ、そのため効果的な粘膜免疫応答を刺激し得る。最後に、弱毒化細菌もまた、DNAワクチン送達用の媒体として使用することができる。適切な細菌の例には、サルモネラ菌(S. enterica)、ネズミチフス菌(S. tymphimurium)、リステリア、およびBCGが含まれる。細胞壁が弱い変異体細菌を使用すると、該細菌からのDNAプラスミドの放出が支援され得る。
【0224】
免疫化に用いられる核酸組成物は、核酸の取り込みを促進するために、アジュバント(例えば、ポリマー、サポニン、ムラミルジペプチド、リポソーム、免疫調節性オリゴヌクレオチド、または本明細書に記載される別のアジュバント)を含み得る。経路にかかわらず、アジュバントは、核酸の投与前、投与中、または投与後に投与することができる。いくつかの態様において、アジュバントにより、宿主細胞への核酸の取り込みが増加し、および/もしくは細胞内での核酸からの抗原の発現が増加し、抗原が発現される組織領域への抗原提示細胞の浸潤が誘導され、またはリンパ球によって提供される抗原特異的応答が増加する。
【0225】
「相同性」、「同一性」、および「類似性」という用語は、2つのペプチド間の、または2つの最適に整列化された核酸分子間の配列類似性の程度を指す。相同性および同一性はそれぞれ、比較目的のために整列化され得る各配列における位置を比較することによって決定することができる。例えばそれは、BLAST、バージョン2.2.14などの標準的な相同性ソフトウェアを、初期設定の位置で用いることに基づく。比較される配列における同等の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占有される場合、分子はその位置で同一である;同等の部位が類似の(例えば保存的アミノ酸置換などの、例えば立体的および/または電子的性質が類似している)アミノ酸残基によって占有される場合、分子はその位置で相同である(類似している)と称され得る。相同性/類似性または同一性の割合としての表記は、それぞれ、比較される配列によって共有される位置における類似または同一アミノ酸の数の関数を指す。「無関係」または「非相同」である配列は、本明細書において開示される配列と40%未満の同一性を共有するが、好ましくは25%未満の同一性を共有する。
【0226】
いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234の配列と実質的に同一である、表1の肺炎球菌抗原の変種である。本明細書で用いられる「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸が、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ、しばしば少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)の位置の比較ウィンドウにおいて、参照配列と比較して少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%〜95%の配列同一性、より一般的には少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むという、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特徴を意味し、ここで配列同一性の割合は、比較ウィンドウにおいて、参照配列を、該参照配列の合計20%以下となる欠失または付加を含み得る配列と比較することによって計算される。参照配列は、より大きな配列のサブセットであってもよい。「類似性」という用語は、ポリペプチドを記載するために用いられる場合、一方のポリペプチドのアミノ酸配列および保存的アミノ酸置換物を、第2ポリペプチドの配列と比較することによって決定される。
【0227】
いくつかの態様において、肺炎球菌抗原は、SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234の配列と相同である。本明細書で用いられる場合、「相同な」または「相同体」という用語は互換的に使用され、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを記載するために用いられる場合、2つのポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたはそれらの指定された配列が、例えばBLAST、バージョン2.2.14をアラインメントのための初期設定パラメータ(本明細書を参照されたい)で用いて最適に整列化され比較された場合に、適切なヌクレオチドの挿入もしくは欠失またはアミノ酸の挿入もしくは欠失を有して、ヌクレオチドの少なくとも60%、一般的には約75%〜99%、およびより好ましくはヌクレオチドの少なくとも約98〜99%において同一であることを示す。本明細書で用いられる「相同体」または「相同な」という用語はまた、構造および/または機能に関する相同性を指す。配列相同性に関して、配列は、それらが少なくとも60、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、または少なくとも99%同一である場合に、相同体である。本発明の遺伝子またはペプチドの相同体の決定は、当業者によって容易に確認され得る。
【0228】
場合によっては、細胞質よりもむしろ「表面発現」される抗原に基づいてワクチンを設計することが有利であると考えられる。注釈付きのゲノムは、同定された他のタンパク質との相同性に基づいてタンパク質の位置を記載する場合が多いが、2つの異なる生物からの相同なタンパク質は、双方において必ずしも同じ部位に位置しない(または同じ機能を有さない)可能性があることから、これは不完全であるか、またはしばしば不正確なアプローチであり得る。したがって、タンパク質(表面 対 その他)の位置の決定に関する付加的なツールは、非常に役立つ可能性があり、本明細書に記載されるクロロホルム法において使用することもできる。
【0229】
本発明の方法の1つの態様は、関心対象のタンパク質「X」を同定すること、次に生物からXをコードする遺伝子を除去すること、次にその遺伝子を、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体によって容易に検出され得るXタンパク質のタグ化型(例えば、とりわけHis、HA、OVAペプチドによるタグ化)をコードする遺伝子と交換することを含む。遺伝子構築物の確認後、次いで生物を成長させ、該タグを認識する(フルオロフォアにも融合されている)抗体で染色する。次にフローサイトメトリーを用いて、生物の表面に抗体が付着しているかどうかを評価し、抗体が付着していれば、抗原が表面に発現されていると推定することができる。磁気ビーズに付着した抗体を用いる類似の戦略も同様に用いることができる。例えば肺炎球菌の場合、生物をその莢膜型または非莢膜型で評価することができる。抗原は表面に発現することができるが、莢膜下に隠れており、抗原を選択する目的の場合、表面に発現されてしかも莢膜があっても近づくことができる抗原を選択することが有利であり得る。
【0230】
同定された免疫原性タンパク質またはそれらの混合物は、多価または個々のワクチン中で使用することができ、このワクチンを多くの形態(筋肉内、皮下、粘膜、経皮)で投与することができる。例えば、12種の肺炎球菌免疫原の組み合わせまたは順列は、コロニー形成 対 疾患に対してより有効であり得る。両方の特徴を有するいくつかの免疫原の混合物は、優れたワクチンを提供し得る。
【0231】
抗体
表1に開示される肺炎球菌抗原またはその機能的断片に対する抗体は、第1個体由来の免疫を第2個体に付与するため(例えば、肺炎連鎖球菌に対する第2個体の免疫応答を増大させるため、または第2個体が免疫不全患者である場合に応答を提供するため)の予防的または治療的適用において使用することができる。本明細書において開示される肺炎球菌抗原に対する抗体は、免疫応答性宿主において生成し(例えば、本明細書に記載される結合体を免疫応答性宿主に投与することにより)、該宿主から回収し、治療または予防の必要があるレシピエントに注入することができ、これによってニューモリシン毒素に対するのみならず、肺炎連鎖球菌、および該肺炎球菌抗原によって誘発される抗体と結合する他の任意の可能な細菌に対する耐性が、該レシピエントに付与される。
【0232】
本明細書に記載される組成物によって誘発される抗体は、薬学的組成物として製剤化し、予防的または治療的免疫応答を個体に付与するために使用することができる。薬学組成物の投与の適切な成分および方法は、本明細書に記載されている。受動免疫を誘発するために、薬学的組成物はポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体またはそれらの断片の誘導体を含み得る。薬学的組成物は、標準的な臨床的技法によって決定される、予防有効量または治療有効量の抗体、断片、または誘導体を含む。
【0233】
したがって本発明は、とりわけ、本明細書に記載される新規肺炎球菌抗原、例えば表1に収載されるもの、またはSP0785ポリペプチド抗原、SP1500ポリペプチド抗原、SP0346ポリペプチド抗原、SP1386ポリペプチド抗原、SP0084ポリペプチド抗原、SP1479ポリペプチド抗原、CT067ポリペプチド抗原、CT476ポリペプチド抗原、p6ポリペプチド抗原、SP2145ポリペプチド抗原、もしくは表1に収載される任意の肺炎球菌抗原、例えばSEQ ID NO: 1〜76もしくはSEQ ID NO: 153〜234)、またはその機能的断片もしくは変種に対する抗体またはその抗原結合断片を提供する。抗体は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA1、IgA2、IgD、またはIgEを含む様々なアイソタイプのものであってよい。いくつかの態様において、抗体はIgGアイソタイプ、例えばIgG1である。肺炎球菌抗原に対する抗体は、全長(例えば、IgG1またはIgG4抗体)であってよく、または抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab)
2、Fv、または一本鎖Fv断片)のみを含んでもよい。これらには、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、およびヒト化抗体、ならびに前述のものの抗原結合断片が含まれる。
【0234】
モノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、Kohler and Milstein, Nature 256: 495, 1975の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技法を含む種々の技法によって生成することができる。ポリクローナル抗体は、動物またはヒト対象の免疫化によって生成することができる。一般的には、Harlow, E. and Lane, D. Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988を参照されたい。本明細書に記載される肺炎球菌抗原に対する抗体は、例えば診断アッセイまたは治療的適用に使用することができる。
【0235】
本発明のいくつかの態様では、例えば、組成物の有効性を決定するため、および/または該組成物によって誘発された応答を、異なる組成物によって誘発された反応と比較するために、本明細書に記載される免疫原性組成物に対する対象の応答が評価される。
【0236】
肺炎球菌ポリペプチド抗原をコードする核酸
肺炎球菌ポリペプチド抗原または肺炎球菌ポリペプチドの断片もしくは変種をコードする核酸を哺乳動物(例えば、ヒト)に投与して、該哺乳動物において予防的および/または治療的免疫応答を引き起こすことができる。該免疫応答は、抗肺炎球菌の液性および/または細胞性免疫であり得る。
【0237】
核酸構築物によってコードされ得るポリペプチドは、単独であるか、または融合ポリペプチド、例えばPdT、および/もしくは多糖、および/もしくは別の抗原、例えばViと融合された、1種または複数種の肺炎球菌ポリペプチド抗原を含む。加えて、核酸は、2つまたはそれ以上のそのようなポリペプチド、断片、または変種の組み合わせをコードし得る。
【0238】
核酸発現構築物は、標準的な組換えDNA方法を用いて調製することができる。ポリペプチドをコードする核酸の発現を促進するために、構築物中に調節エレメントを含めることができる。これらのエレメントには、ヒトまたは他の哺乳動物細胞における発現を増強するための配列、例えば、プロモーター、コード配列の5'側および/または3'側のRNA安定化配列、イントロン(コード配列の内部またはこれに隣接する任意の位置に配置され得る)、およびポリ(A) 付加部位、ならびに複製開始点、ならびに構築物の複製および原核生物および/または真核生物宿主における選択を可能にする選択可能なマーカーをコードする1つまたは複数の遺伝子が含まれる。T7ポリメラーゼプロモーターまた他のタイプのプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、または筋特異的プロモーターのような細胞特異的プロモーター)が、コード配列の5'末端に任意で存在し、FLAGまたは他のmAb決定因子をコードする配列が、コード配列の3'末端に任意で存在する。構築物はまた、コザック配などの他の転写および翻訳シグナルを含み得る。
【0239】
構築物は、コードされたポリペプチドを所望の細胞内区画へと指向させる、該ポリペプチドに連結された標的化シグナルをコードする配列をさらに含み得る。標的指向シグナルは、コードされたポリペプチドを、小胞体(ER)、ゴルジ体、核、リソソーム、クラスIIペプチド負荷区画、またはエンドソームへと指向させることができ、これにはシグナルペプチド、ER保留ペプチド、およびリソソーム標的化ペプチドが含まれる。
【0240】
核酸は、哺乳動物の細胞内での発現を可能にする任意のベクター中で使用され得る。ベクターは、例えば、プラスミドもしくは細菌ベクターなどの非ウイルスベクター、組み込み型ウイルスベクター、または非組み込み型ウイルスベクターであってよい。適切なベクターの例は、pcDNA哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)のファミリーであり、これはPCR産物の直接かつ迅速なクローニングを可能にする。
【0241】
様々な送達系を用いて、ポリペプチドをコードする核酸を適切な細胞に送達することができる。ポリペプチドをコードする核酸は、希釈剤と共にまたはこれを伴わずに、生理食塩水などの薬学的に許容される担体中で、またはコロイド懸濁液として、または粉末として送達することができる。核酸は「裸」であってよく、または送達媒体と会合していてもよく、脂質、リポソーム、マイクロスフェア、微粒子もしくはマイクロカプセル、金粒子、ISCOM、ナノ粒子、ポリマー、縮合剤、多糖、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、QS21、吸着増強剤、アジュバント、または脂肪酸などの、当技術分野で公知の送達系を用いて送達することができる。核酸はまた、エレクトロポレーションを用いて、インビトロまたはインビボのいずれかにおいて、細胞、例えば骨格筋細胞に送達することもできる。
【0242】
核酸は、標準的な方法、例えば、Donnelly et al., J. Immunol. Methods 176: 145, 1994、およびVitiello et al., J. Clin. Invest. 95:341, 1995に記載されている方法を用いて投与することができ、対象に対して、当技術分野で公知の様式で、例えば、経口で 筋肉内に、静脈内に、動脈内に、髄腔内に、皮内に、腹腔内に、鼻腔内に、肺内に、眼内に、膣内に、直腸内に、または皮下に送達することができる。核酸は、例えば、該核酸を含む溶液または粉末の吸入により、胃腸管または気道中に導入され得る。投与は、局所的または全身的であってよい。
【0243】
およそ100〜2000μgの核酸という投薬量が個体に投与されると予測される。患者が成人のヒトである場合、ワクチン接種レジメンは、例えば、微粒子中で送達される場合には、10〜1000μgのプラスミドDNAを筋肉内、皮内、吸入、もしくは皮下投与すること、または約10〜2500μg、例えば100〜2000もしくは500〜1000μgの裸のプラスミドDNAを筋肉内もしくは皮内に3〜6回繰り返し送達することを含み得る。医療の技術分野で周知のように、任意の所与の患者に対する投薬量は、患者のサイズ、健康状態、性別、体表面積、年齢、投与されるべき特定の化合物、投与時間および投与経路、ならびに同時に投与されている他の薬剤を含む、多くの要因に依存する。最適な投薬量の決定は、通常の技能を有する薬理学者の能力の範囲内に十分に入る。
【0244】
他の標準的な送達方法、例えば微粒子銃移入またはエクスビボ処置を使用することもできる。エクスビボ処置では、樹状細胞、末梢血単核細胞、または骨髄細胞などの抗原提示細胞(APC) を患者または適切なドナーから採取し、核酸によってエクスビボで活性化し、次いで該患者に移植または再注入することができる。
【0245】
核酸は、単独で、または当技術分野で公知の他の治療法、例えば抗菌剤と組み合わせて投与することができる。加えて、核酸は、当技術分野で周知のように、免疫応答を増強するように設計された他の治療と組み合わせて、例えば、アジュバント、サイトカイン(またはサイトカインをコードする核酸)、またはCpGオリゴヌクレオチドとの同時投与によって、投与することができる。
【0246】
核酸が宿主哺乳動物において免疫応答を誘発する能力は、免疫応答を測定するための当技術分野で周知の方法を用いることによって評価することができる。例えば、細胞傷害性T細胞の生成は、標準的な
51Cr放出アッセイにおいて、細胞内のサイトカインの発現もしくは分泌を測定することにより、またはMHC四量体を用いることにより、実証され得る。ELISAまたはELISPOTなどの標準的なアッセイを用いて、T細胞活性化に起因するサイトカインプロファイルを測定することができる。T細胞増殖は、
3H-チミジンの取り込み、および当技術分野で公知の他のアッセイなどのアッセイを用いて測定することができる。B細胞応答は、ELISAなどの当技術分野で認識されているアッセイを用いて測定することができる。他の方法論を用いて、病原体関連の病変に対する、または他の病原体レベルに対する核酸の効果(例えば、結合体を用いて処置された感染マウスにおける肺炎球菌の排除)を一般的に評価することもできる。
【0247】
本明細書に記載される核酸は、肺炎連鎖球菌による感染症またはそのような感染症に関連する病態を予防または治療するための医薬品の製造において使用することができる。
【0248】
T細胞活性化に関する評価
いくつかの態様において、抗原もしくは組成物を特徴付ける、および/または免疫応答がT細胞もしくはT細胞群で刺激されたかどうかを判定するために、様々なアッセイを利用することができる。いくつかの態様では、アッセイを用いて、抗肺炎球菌応答を誘発するために免疫原性組成物を投与された対象におけるT細胞応答を特徴付ける(例えば、検出可能なT細胞応答が誘発されたかどうかを評価する、および/または該応答の効力を評価する)。本明細書に記載される新規肺炎球菌抗原はまた、肺炎球菌感染症に対する曝露を(例えば、ワクチン非接種の対象において)評価するための診断用薬剤を提供する。いくつかの態様では、アッセイを用いて、対象におけるT細胞応答を特徴付けて、該対象が肺炎球菌生物に感染しているかどうかを判定する。対象は、最近、肺炎球菌生物に曝露したことが疑われる対象であってよい(すなわち、応答を検出するためのアッセイは、肺炎球菌生物に対する曝露が疑われる約3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、14日後、30日後、またはそれ以上後に対象から採取された試料を用いて行うことができる)。対象は、アッセイの数週間前、数ヶ月前、または数年前に肺炎球菌生物に曝露したことが疑われる対象であってもよい。本明細書に記載される新規肺炎球菌抗原はまた、肺炎球菌生物に対する曝露の転帰を(例えば、肺炎球菌生物に感染したことが分かっている、または感染したことがある対象において)評価するための予後診断用薬剤を提供する。いくつかの態様では、アッセイを用いて、対象におけるT細胞応答を特徴付けて、肺炎球菌生物による感染症の続発症(例えば、敗血症)の可能性を評価する。
【0249】
いくつかの態様において、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞によるサイトカインの抗原誘導性産生を測定することによって判定される。いくつかの態様において、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞によるIFN-γ、IL-4、IL-2、IL-6、IL-10、IL-17、および/またはTNF-αの抗原誘導性産生を測定することによって判定され得る。いくつかの態様において、T細胞によるサイトカインの抗原誘導性産生は、細胞内サイトカイン染色とそれに続くフローサイトメトリーによって測定され得る。他の適切な方法には、表面捕捉染色とそれに続くフローサイトメトリー、またはELISAもしくはELISPOTアッセイなどの、活性化T細胞培養物の上清中のサイトカイン濃度を決定する方法が含まれる。
【0250】
いくつかの態様において、T細胞によるサイトカインの抗原生成性産生は、ELISPOTアッセイによって測定される。ELISPOTアッセイは典型的に、サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA) 技法と極めて類似した技法を用いる。抗体(例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等)を、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を敷いたマイクロプレート上に無菌的にコーティングする。抗体は、関心対象のサイトカインに対するその特異性について選択される。プレートを、(例えば、アッセイ中の抗体のいずれとも反応性のない血清タンパク質で)ブロッキングする。サイトカイン産生について試験する細胞を、抗原またはマイトジェンと共に様々な密度でプレーティングし、次いで加湿した37℃のCO
2インキュベーター内に特定の時間置いておく。活性化細胞によって分泌されたサイトカインは、大きな表面積のPVDF膜上にコーティングされた抗体によって局所的に捕捉される。ウェルを洗浄して細胞、細胞残屑、および培地成分を除去した後、サイトカインに特異的な二次抗体(例えば、ビオチン化ポリクローナル抗体)をウェルに添加する。この抗体は標的サイトカインの特有のエピトープと反応性を有し、したがって捕捉されたサイトカインの検出に用いられる。洗浄して非結合のビオチン化抗体をすべて除去した後、次にアビジン-HRPおよび沈殿基質(例えば、AEC、BCIP/NBT)を用いて、検出されたサイトカインを可視化する。着色された最終産物(スポット、通常は赤色または青色)は典型的に、個々のサイトカイン産生細胞を表す。スポットは、手動で(例えば、解剖顕微鏡により)、またはマイクロウェルの像を取得し、スポットの数およびサイズを解析するための自動化リーダーを用いて、計数され得る。いくつかの態様において、各スポットは単一のサイトカイン産生細胞と相関する。
【0251】
いくつかの態様において、T細胞における免疫応答は、抗原特異的T細胞の約1%〜約100%がサイトカインを産生する場合に、刺激されたと称される。いくつかの態様において、T細胞における免疫応答は、抗原特異的T細胞の少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または約100%がサイトカインを産生する場合に、刺激されたと称される。
【0252】
いくつかの態様において、T細胞における免疫応答は、免疫化された対象が、未感作対照よりも少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約10000倍、少なくとも約50000倍、少なくとも約100000倍、または少なくとも約100000倍超、多くのサイトカイン産生細胞を含む場合に、刺激されたと称される。
【0253】
いくつかの態様において、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞の抗原誘導性増殖を測定することによって判定され得る。いくつかの態様において、抗原誘導性増殖は、分裂T細胞における
3H-チミジンの取り込みとして測定され得る(場合により、「リンパ球芽球化試験」または「LTT」と称される)。いくつかの態様において、
3H-チミジンの取り込み(γカウンターからのカウント数として与えられる)が、未感作対照よりも少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約10000倍、または少なくとも約10000倍超高い場合に、抗原誘導性増殖が生じたと称される。
【0254】
いくつかの態様において、抗原誘導性増殖は、フローサイトメトリーによって測定され得る。いくつかの態様において、抗原誘導性増殖は、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE) 希釈アッセイによって測定され得る。CFSEは非毒性の蛍光性膜透過性色素であり、そのスクシンイミジル反応基によって細胞質タンパク質(例えば、T細胞タンパク質)のアミノ基と結合する。細胞が分裂すると、CFSE標識されたタンパク質は娘細胞の間で均等に分配され、したがって細胞蛍光は分裂ごとに半減する。その結果として、抗原特異的T細胞は、各々の抗原の存在下における培養後にその蛍光を失い(CFSE
低)、培養物の他の細胞(CFSE
高)と区別できる。いくつかの態様において、CFSE希釈(全CFSE
+細胞のうちのCFSE
低細胞の割合として与えられる)が、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%である場合に、抗原誘導性増殖が生じたと称される。
【0255】
いくつかの態様において、T細胞における免疫応答は、T細胞活性化の細胞マーカーが、非刺激細胞と比べて異なるレベル(例えば、より高いまたはより低いレベル)で発現される場合に、刺激されたと称される。いくつかの態様において、CD11a、CD27、CD25、CD40L、CD44、CD45RO、および/またはCD69は、非刺激T細胞よりも活性化T細胞において、より高度に発現される。いくつかの態様において、L-セレクチン(CD62L)、CD45RA、および/またはCCR7は、非刺激T細胞よりも活性化T細胞において、それほど高度に発現されない。
【0256】
いくつかの態様において、T細胞における免疫応答は、抗原パルス標的細胞に対するエフェクターCD8+ T細胞による細胞傷害性をアッセイすることによって測定される。例えば、
51クロム(
51Cr)放出アッセイを行うことができる。このアッセイでは、エフェクターCD8+ T細胞が、クラスI MHC上にウイルスペプチドを提示している感染細胞と結合し、その感染細胞にアポトーシスを起こすようにシグナル伝達する。該細胞を
51Crで標識してからエフェクターCD8+ T細胞を添加した場合、上清中に放出される
51Crの量は、死滅した標的の数に比例する。いくつかの態様において、T細胞における免疫応答はインビボ細胞傷害性アッセイによって測定され、この場合には、標的細胞を抗原パルスし、蛍光色素で標識し、次いで免疫化した動物に導入する。特異的細胞溶解性T細胞は、関連抗原でパルスされた蛍光標識細胞の消失を引き起こすが、対照抗原でパルスされた細胞は減少しない。例えば、Coligan et al., Current Protocols in Immunology, 3.11.14-16, John Wiley & Sons, Inc., 2007を参照されたい。いくつかの態様において、T細胞における免疫応答は、パーフォリン、グランザイムB、またはCD107aのうちの1つまたは複数の発現を(例えば、ELISPOTまたはフローサイトメトリーにより)検出することによって測定される。例えば、Betts et al., J. Immunol. Meth. 281(l-2):65-78, 2003を参照されたい。
【0257】
インビボ評価
いくつかの態様において、特定の病態(例えば、上部尿生殖路感染)または細菌負荷を典型的に発生させるクラミジア生物の用量を用いて免疫化および非免疫化マウスの群(例えば、ワクチン接種後3週間以上)へ感染させることによって、免疫原性組成物を特徴づけ得る(例えば、動物モデルにおいて有益な応答を誘導する場合の有効性を評価するために)。両群の感染に起因する病理または細菌負荷の大きさおよび持続時間をモニターし、比較する。一例において、B細胞応答は、「受動ワクチン」として、免疫マウスから血清を移し、感染の病理学的効果または負荷からの非免疫マウスの保護を評価することにより特徴づけられる。いくつかの態様において、浸潤する白血球集団を特徴づける(例えば、感染の領域において細胞の数と型を評価する、例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、または他の細胞型が存在するか否か)。クラミジア泌尿生殖器感染の動物モデルが記載されている。いくつかの態様において、クラミジア生物は、膣内接種材料として適用され、感染動物の下部および上部生殖器の1つまたは複数の感染および病理が特徴づけられる。例えば、マウスにおける膣内感染モデルを記載する、Barronら(J. Infect. Dis. 143(1):63-6, 1981)を参照のこと。いくつかの態様において、一次感染のクリアランスは、このモデルにおける保護免疫の目安である。いくつかの態様において、Th1サブタイプのCD4+T細胞応答の検出は、保護と相関する(Morrison et al., Infect. Immun 70: 2741-2751, 2002)。
【0258】
いくつかの態様において、免疫原性組成物が肺炎球菌感染の動物モデルにおいて評価される。いくつかの態様において、肺炎球菌による下部尿生殖路感染がモデルにおいて評価される(例えば、感染に起因する下部尿路細菌負荷および/または炎症が評価される)。いくつかの態様において、クラミジアによる上部尿路感染がモデルにおいて評価される(例えば、感染に起因する上部尿路細菌負荷、炎症、不妊症、コラーゲン沈着、瘢痕化のうちの1つまたは複数が評価される)。いくつかの態様において、下部尿路から上部生殖管までのクラミジア感染の上行を防止する能力が評価される。いくつかの態様において、下部尿路からの細菌クリアランスの速度を評価する。いくつかの態様において、上部尿路からの細菌クリアランスの速度を評価する。いくつかの態様において、鼻からの細菌クリアランスの速度を評価する。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、関心対象の動物の複数の系統(例えば、複数のマウス系統)における動物モデルにおいて評価される。いくつかの態様において、卵管留水腫(卵管の流動遮断)の存在およびサイズが評価される。
【0259】
いくつかの態様において、望ましい免疫原性組成物は、インビボで(例えば、動物モデルにおいて)上記効果の1つまたは複数を有するとして特徴づけられる。例えば、いくつかの態様において、免疫原性組成物は、クラミジア細菌による下部尿生殖路感染を減少させる。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、下部尿路の細菌負荷を減少させる。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、感染に起因する下部尿路炎症を減少させる。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、肺炎球菌による上部尿路感染を減少させる。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、下部尿路から上部生殖管への肺炎球菌感染の上行を減少させる。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、下部尿路および/または上部尿路の細菌クリアランスの速度を増加させる。いくつかの態様において、免疫原性組成物は、複数の動物系統(例えば、複数のマウス系統)において上記効果のうちの1つまたは複数を有する。
【0260】
いくつかの態様において、本明細書に開示する免疫原性組成物中での使用のための表1の肺炎球菌抗原またはその機能的断片は、実施例2に開示するように、マウス脾細胞もしくはヒトPBMCにおけるIL-17A応答をインビトロで誘発し、かつ/またはマウスコロニー形成モデルにおいてインビボでコロニー形成から保護する。このモデルでは、肺炎球菌抗原(または機能的断片)での隔週の免疫化の後に、マウスはある種の血清型の肺炎球菌株(例えば、血清型6B、14F、または19F)を接種され、実施例3に開示する、鼻中での肺炎球菌コロニー形成の存在について評価が行われる。
【0261】
当業者は、上記のアッセイが、T細胞活性化および/またはB細胞活性化が生じているか否かを決定するために利用することもできる唯一の例示的な方法であることを認識するであろう。T細胞および/またはB細胞の活性化が生じているか否かを決定するために使用することができる、当業者に公知の任意のアッセイは、本発明の範囲内に入る。本明細書に記載するアッセイならびにT細胞および/またはB細胞の活性化が生じているか否かを決定するために使用することもできる追加のアッセイが、Current Protocols in Immunology(John Wiley & Sons, Hoboken, N.Y., 2007;参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0262】
進行中の試験では、近交系動物系統において免疫原性を評価し、吸引/敗血症モデルにおいて侵襲性疾患からの保護におけるこれらのタンパク質の有効性を特徴づける。いくつかの態様において、標的抗原へのCMI応答を測定することにより、肺炎球菌抗原、例えば、表1に列挙された抗原、あるいは表1に列挙された抗原の相同体または機能的断片もしくは変種の、免疫応答をインビボで誘発する能力を試験することができる。CMIアッセイは、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願第2005/0014205号、WO/1987/005400、米国特許第5674698号、および商業的に入手可能なキット、例えば、IMMUNKOW(登録商標)CYLEX免疫細胞機能アッセイ製品番号4400において記載されており、本明細書において、本発明における使用のために、参照によりその全体が組み入れられる。
【0263】
免疫原性組成物の適用および使用
本明細書に記載する肺炎連鎖球菌ワクチンは、肺炎連鎖球菌の予防的および/または治療的処置のために使用され得る。したがって、本願は、本明細書に記載するワクチン製剤のいずれかの有効量を投与することを含む、肺炎連鎖球菌感染に罹患しているかまたはそれに感受性である対象を処置するための方法を提供する。一部の局面において、本方法は、個体における肺炎連鎖球菌のコロニー形成を阻害する。一部の局面において、本方法は、肺炎連鎖球菌の症状または続発症(例えば敗血症など)を阻害する。ワクチン接種を受けた対象は、男性または女性であってもよく、小児または成人であってもよい。いくつかの態様において、処置される対象はヒトである。他の態様において、対象は非ヒト動物である。
【0264】
したがって、本明細書に記載する免疫原性組成物および方法は、任意の肺炎球菌感染、肺炎球菌疾患、肺炎球菌障害、および/または状態、あるいは肺炎球菌感染(例えば敗血症)の予防および/または処置のために使用することができる。本明細書において使用するように、「予防」は、肺炎球菌感染、肺炎球菌疾患、肺炎球菌障害、および/または状態に起因する症状の発症の前、ならびに/あるいは肺炎連鎖球菌生物への公知の曝露前での使用を指す。対象は、ヒトおよび/または他の霊長類;ならびに肺炎連鎖球菌生物による感染に感受性である他の動物(商業的に関連する哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、および/またはイヌ;ならびに/あるいは商業的に関連する鳥類、例えばニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/またはシチメンチョウを含む)を含むが、これらに限定されない。
【0265】
1. 予防的使用
予防的な態様において、本明細書に開示するワクチンまたは免疫原性組成物を対象に投与し、例えば、疾患における最初の必要な段階であるコロニー形成から保護することにより、肺炎連鎖球菌の確立から保護することを助けることができる免疫応答を誘導する。このように、一部の局面において、本方法は、非コロニー形成または非感染対象における肺炎連鎖球菌による感染を阻害する。別の局面において、本方法は、既にコロニー形成している個体においてコロニー形成の持続時間を減少させ得る。
【0266】
いくつかの態様において、本明細書に開示されたワクチンまたは免疫原性組成物は、保護免疫を付与し、対象のワクチンへの曝露の結果として、ワクチン接種された個体が、症状または続発症の発症の遅延、あるいは症状または続発症の重症度の低下を示すことを可能にする。特定の態様において、症状または続発症の重症度における低下は、少なくとも25%、40%、50%、60%、70%、80%、またはさらに90%である。特定の態様において、ワクチン接種された個体は、肺炎連鎖球菌との接触時に症状または続発症を示さない場合もあり、肺炎連鎖球菌によるコロニー形成がないか、あるいはこれらの両方である。保護免疫は、典型的には、以下の機構のうち1つまたは複数により達成される:粘膜、体液性、または細胞性免疫。粘膜免疫は、主に、呼吸器、消化管、および尿生殖路の粘膜表面での分泌型IgA(sIGA)抗体の結果である。sIGA抗体は、体の粘膜が並ぶ組織上のBリンパ球によるsIGA産生をもたらす、抗原処理細胞、Bリンパ球およびTリンパ球により媒介される一連の事象後に生成される。体液性免疫は、典型的には、血清中のIgG抗体およびIgM抗体の結果である。細胞性免疫は、傷害性Tリンパ球を介して、またはマクロファージおよびTリンパ球を含む遅延型過敏を介して、ならびに、抗体を必要としない、T細胞を含む他の機構を介して達成することができる。特に、細胞性免疫は、Th1細胞またはTh17細胞により媒介され得る。
【0267】
本質的に任意の個体は、肺炎連鎖球菌に感染する特定のリスクを有する。しかし、特定の亜集団は、感染リスクの増加を有する。いくつかの態様において、本明細書に記載するワクチン製剤(例えば、表1または表2からの、1つまたは複数のポリペプチド、またはポリペプチドをコードする核酸、またはポリペプチドと反応性の抗体を含む、組成物)は、免疫不全状態である患者に投与される。
【0268】
医学的処置から生じる免疫不全状態は、問題の個体を、肺炎連鎖球菌でのより高い感染リスクに曝露する可能性が高い。免疫機能を損なうことが公知である治療の前または間に、免疫不全状態を有する個体において予防的に感染を処置することが可能である。抗原性組成物(例えば、表1または表2からの、2種またはそれ以上の抗原、あるいは抗原をコードする核酸)で、あるいは表1または表2からの、2種またはそれ以上の抗原に反応性の抗体で、免疫機能を損なうことが公知である処置の前または処置中に予防的に処理することにより、続く肺炎連鎖球菌感染を予防するか、または免疫不全状態に起因する感染に罹患する個体のリスクを低下させることが可能である。万一、個体が、例えば、免疫不全状態に導く処置後、肺炎連鎖球菌感染に罹患する場合、個体に抗原組成物を投与することにより感染を処置することも可能である。
【0269】
以下の群は、肺炎球菌疾患またはその合併症のリスクの増加にあり、したがって、本明細書に記載するワクチン製剤を受けることが、これらの群の1つまたは複数に該当する対象にとって有利である:小児、特に1ヶ月〜5歳または2ヶ月〜2歳の小児;少なくとも年齢2歳であり、無脾症、脾臓機能不全、または鎌状赤血球疾患を伴う小児;少なくとも年齢2歳であり、ネフローゼ症候群、慢性脳脊髄液漏出、HIV感染、または免疫抑制に関連する他の状態を伴う小児。
【0270】
別の態様において、肺炎球菌抗原組成物の少なくとも1用量が、肺炎球菌疾患またはその合併症のリスクの増加にある以下の群の成人に与えられる:年齢65歳の全ての人;無脾症を伴う成人、ジョブズ症候群を伴う対象(Th-17細胞媒介性応答を欠く対象)、無ガンマグロブリン血症(抗体媒介性応答を欠く対象)、脾臓機能不全、または鎌状赤血球疾患を伴う対象;以下の状態を伴う成人:慢性心肺疾患、肝硬変、アルコール依存症、慢性腎疾患、ネフローゼ症候群、糖尿病、慢性脳脊髄液漏出、HIV感染、AIDS、および免疫抑制に関連する他の状態(ホジキン病、リンパ腫、多発性骨髄腫、臓器移植のための免疫抑制)、人工内耳を伴う個体;長期的な健康問題(例えば心臓疾患および肺疾患など)を伴う個体、ならびに感染に対する身体の抵抗力を下げる任意の薬物を摂取しているかまたは処置を受けている個体(例えば長期的なステロイド、特定の抗癌剤、放射線治療);アラスカ先住民、および特定のネイティブアメリカン集団。
【0271】
2. 治療用途
治療的な適用において、本明細書に開示するワクチンまたは免疫原性組成物を、患者を処置するのに十分な量で、肺炎連鎖球菌感染に罹患している患者に投与してもよい。患者を処置することは、この場合、感染した個体において肺炎連鎖球菌の症状および/または細菌負荷および/または続発症を減少させることを指す。いくつかの態様において、患者を処置することは、症状または続発症の期間を減少させること、あるいは症状または続発症の強度を低下させることを指す。いくつかの態様において、ワクチンは、ワクチン接種された患者からの肺炎連鎖球菌の伝播性を減少させる。特定の態様において、上記の減少・低下は、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはさらに90%である。
【0272】
治療的な態様において、ワクチンは、感染後の個体に投与される。ワクチンは、感染後すぐに、例えば症状または続発症が発現する前に投与してもよく、あるいは症状または続発症の発現後に投与してもよい。
【0273】
治療的肺炎球菌ワクチンは、肺炎連鎖球菌感染の種々の症状および続発症の強度を低下させる、かつ/または持続時間を減少させることができる。肺炎連鎖球菌感染の症状または続発症は、多くの形態を取ることができる。侵襲性肺炎球菌疾患は、急性副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎、菌血症、敗血症、骨髄炎、敗血症性関節炎、心内膜炎、腹膜炎、心膜炎、蜂巣炎、および脳膿瘍を含む。したがって、一部の場合において、感染した患者は、肺炎、急性副鼻腔炎、中耳炎(耳の感染)、髄膜炎、菌血症、敗血症、骨髄炎、敗血症性関節炎、心内膜炎、腹膜炎、心膜炎、蜂巣、または脳膿瘍を発生する。
【0274】
敗血症は、肺炎連鎖球菌感染の、稀ではあるが、生命を脅かす合併症であり、細菌が血流に侵入し全身性炎症を招く。典型的には、発熱が観察され、白血球細胞数が増加する。敗血症のさらなる記載は、Goldstein, B. et al. "International pediatric sepsis consensus conference: definitions for sepsis and organ dysfunction in pediatrics." Pediatr Crit. Care Med. January 2005; 6 (1): 2-8に見出される。
【0275】
いくつかの態様において、本発明に従った免疫原性組成物を、肺炎球菌疾患、肺炎球菌障害、および/または状態の1つまたは複数の症状または特徴の処置、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、感染リスクの低下、および重症度の低下、および/または発生率の低下のために使用してもよい。いくつかの態様において、本発明の免疫原性組成物を、肺炎球菌感染の1つまたは複数の症状または特徴(例えば、限定するものではないが、敗血症、肺炎、急性中耳炎、菌血症、および細菌性髄膜炎)の処置、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の低下、および/または発生率の低下のために使用してもよい。
【0276】
本発明の一局面において、肺炎球菌感染の予防および/または処置のための方法が提供される。いくつかの態様において、肺炎球菌感染の予防および/または処置は、本明細書に記載する免疫原性組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に、所望の結果を達成するために必要である量で、かつ所望の結果を達成するために必要である時間にわたり投与することを含む。本発明の特定の態様において、本発明の免疫原性組成物の「治療有効量」は、感染のリスクを低下させる、あるいは肺炎球菌感染の1つまたは複数の症状または特徴の処置、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の低下、および/または発生率の低下のために効果的な量である。治療有効量は、集団に基づいて決定され得、特定の対象において保護応答を自然に誘導する量であることは要求されない。
【0277】
いくつかの態様において、本発明の予防的および/または治療的プロトコールは、健康な対象(すなわち、クラミジア感染の任意の症状を呈さない、および/または肺炎球菌感染と診断されていない対象)へ1つまたは複数の本発明の免疫原性組成物の治療有効量を投与することを含む。例えば、健康な個体は、肺炎球菌感染の発生および/または肺炎球菌感染の症状の発症に先立ち、本発明の免疫原性組成物を使用してワクチン接種されてもよい;リスクのある個体(例えば、肺炎球菌感染に罹患している個体に曝露された患者、HIVまたは免疫不全を伴う患者、あるいは肺炎球菌感染に感受性のある対象、例えばジョブズ症候群を伴う対象(Th-17細胞媒介性応答を欠く対象)または無ガンマグロブリン血症を伴う対象(抗体媒介性応答を欠く対象))を、肺炎球菌感染の症状の発症および/またはそれへの曝露と実質的に同時に(例えば、その48時間以内、24時間以内、または12時間以内に)処置することができる。もちろん、肺炎球菌感染または敗血症を有することが公知である個体は、任意の時に処置を受けてもよい。
【0278】
いくつかの態様において、本発明の予防的および/または治療的プロトコールは、免疫応答が、T細胞およびB細胞の両方において刺激されるように、対象へ1つまたは複数の本発明の免疫原性組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0279】
いくつかの態様において、1種または複数種の肺炎球菌抗原およびアジュバントを組み合わせることにより、免疫応答(例えば、T細胞および/またはB細胞応答)を、所与の指示についての免疫応答の最も望ましい型(例えば、体液性応答、Th1 T細胞応答、Th17 T細胞応答、抗原特異的T細胞によるIFN-γ分泌、細胞傷害性T細胞応答、抗体応答、B細胞応答、先天性免疫応答、またはこれらの応答の組み合わせ)を優先的に誘発するように調整することができる。
【0280】
ワクチン接種の有効性を評価する
本明細書に開示するワクチンまたは免疫原性組成物を用いたワクチン接種の有効性を、上記の臨床転帰に加えて、多数の方法において決定してもよい。最初に、ワクチン接種後の対象に由来するT細胞を刺激することにより、IL-17レベル(特にIL-17A)を評価してもよい。IL-17レベルを、ワクチン接種前の同じ対象におけるIL-17レベルと比較してもよい。IL-17(例えば、IL-17A)レベルの増加、例えば1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、あるいは100倍またはそれ以上の増加などは、ワクチンへの応答の増加を示す。あるいは(または組み合わせにおいて)、患者からのT細胞または抗体の存在下で、肺炎球菌の殺菌について好中球が評価されてもよい。肺炎球菌の殺菌の増加、例えば1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、あるいは100倍またはそれ以上の増加は、ワクチンへの応答の増加を示す。加えて、Th17細胞活性化を測定してもよく、Th17細胞活性化の増加、例えば1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、あるいは100倍またはそれ以上の増加は、ワクチンへの応答の増加と相関する。また、ワクチンに特異的な抗体のレベルを測定してもよく、特異的抗体のレベルの増加、例えば1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、あるいは100倍またはそれ以上の増加は、ワクチンの有効性の増加と相関する。特定の態様において、これらのアッセイの2つまたはそれ以上を使用する。例えば、IL-17レベルおよびワクチン特異的抗体のレベルを測定し得る。あるいは、ワクチン未接種個体と比較し、ワクチン接種個体における肺炎球菌感染の疫学的マーカー、例えば発生率、重症度、または持続期間などに従ってもよい。
【0281】
ワクチンの有効性は、また、種々のモデル系(例えばマウスモデルなど)において評価してもよい。例えば、マウスのBALB/cまたはC57BL/6系統を使用してもよい。対象に試験ワクチンを投与した後(単一用量または複数用量として)、実験者は、肺炎連鎖球菌の接種用量を与える。一部の場合において、鼻腔内投与された接種用量は、ワクチン未接種動物において肺炎連鎖球菌のコロニー形成(特に鼻腔コロニー形成)を起こすのに十分であり、一部の場合において、吸引を介して投与された接種用量は、ワクチン未接種動物において敗血症および高い致死率を起こすのに十分である。次に、ワクチン接種動物でのコロニー形成の減少または致死性の減少を測定することができる。実施例1〜3で実証されるように、マウスモデルにおける鼻腔内接種後の肺炎連鎖球菌の鼻腔コロニー形成を阻害する場合の、表1のポリペプチドの有効性を評価することができる。実施例3および4は、マウスモデルにおける、吸引を介した肺炎連鎖球菌での感染後の、敗血症および死亡から保護する場合の、表1のポリペプチドの有効性を示す。
【0282】
免疫原性組成物および製剤
一態様において、本明細書に開示する免疫原性組成物、例えば、本明細書に記載するワクチンまたは免疫原性組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。別の態様において、本明細書に記載するワクチン組成物は、哺乳動物への投与のために製剤化される。適切な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th and 18th Eds., Mack Publishing, Easton, Pa.(1980 and 1990)、およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th Edition, Lea & Febiger, Philadelphia (1985)において見出すことができ、これらの各々が参照により本明細書に組み入れられる。
【0283】
一態様において、本明細書に記載するワクチン組成物は、本質的に非毒性であり、非治療的である薬学的に許容される担体を含む。そのような担体の例は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、およびポリエチレングリコールを含む。全ての投与について、従来のデポー形態が適切に使用される。そのような形態は、例えば、マイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、および徐放性製剤を含む。持続放出組成物の例については、米国特許第3,773,919号、第3,887,699号、EP 58,481 A、EP 158,277A、カナダ特許第1176565号;U. Sidman et al., Biopolymers 22: 547 (1983)およびR. Langer et al., Chem. Tech. 12: 98 (1982)を参照のこと。タンパク質は、通常、患者1人当たり、1回の適用当たり0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度で製剤化される。
【0284】
一態様において、以下を含む他の成分をワクチン製剤に加えることができる:抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン;単糖類、二糖類、および他の炭水化物(セルロースまたはその誘導体を含む)、グルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;および糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール。
【0285】
一態様において、投与のための本明細書に記載するワクチン組成物は、無菌的でなければならない。無菌性は、無菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)を介した濾過により容易に達成される。
【0286】
いくつかの態様において、本明細書に記載するワクチン組成物は、さらに、薬学的賦形剤(生体適合性油、生理食塩溶液、保存剤、炭水化物、タンパク質、アミノ酸、浸透圧調整剤、キャリアガス、pH調整剤、有機溶剤、疎水性薬剤、酵素阻害剤、吸水性ポリマー、界面活性剤、吸収促進剤、および抗酸化剤を含むが、これらに限定されない)を含む。炭水化物の代表的な例は、可溶性糖、例えばヒドロプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ヒアルロン酸、キトサン、アルギン酸、グルコース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、サッカロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸などを含む。タンパク質の代表的な例は、アルブミン、ゼラチンなどを含む。アミノ酸の代表的な例は、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アルギニン、リジン、およびそれらの塩を含む。
【0287】
いくつかの態様において、本明細書に記載する免疫原を、水、溶剤(例えばメタノールなど)、または緩衝液中に可溶化することができる。適切な緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水Ca
2+/Mg
2+不含(PBS)、通常の生理食塩水(水中150mM NaCl)、およびトリス緩衝液を含むが、これらに限定されない。中性緩衝液中では溶解しない抗原を10mM酢酸中に溶解し、次に、中性緩衝液(例えばPBSなど)で所望の体積に希釈することができる。酸性pHだけで可溶性の抗原の場合は、希酢酸中での可溶化後に、酸性pHの酢酸-PBSを希釈剤として使用することができる。グリセロールは、本発明における使用のための、適切な非水性緩衝液でありうる。
【0288】
本明細書に開示する免疫原がそれ自体可溶性ではない場合、免疫原は、懸濁液または凝集体として製剤中に存在することができる。いくつかの態様において、疎水性抗原を、界面活性剤中に可溶化することができる(例えば、膜貫通ドメインを含むポリペプチド)。さらに、リポソームを含む製剤について、界面活性剤溶液中の抗原(例えば、細胞膜抽出物)を脂質と混合してもよく、次にリポソームを、希釈、透析、またはカラムクロマトグラフィーによる界面活性剤の除去により形成してもよい。
【0289】
いくつかの態様において、ワクチン組成物は、他の治療的成分(例えば、γインターフェロン、サイトカイン、化学療法剤、または抗炎症剤もしくは抗ウイルス剤を含む)との組み合わせで投与される。
【0290】
いくつかの態様において、ワクチン組成物は、純粋なまたは実質的に純粋な形態で投与されるが、それは、薬学的組成物、製剤、または調製物として提供することが好ましい。そのような製剤は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および、任意で、他の治療的成分と一緒に、本明細書に記載するポリペプチドを含む。他の治療的成分は、抗原提示を増強する化合物(例えば、γインターフェロン、サイトカイン、化学療法剤、または抗炎症剤)を含む。製剤は、便利には、単位投与形態で提供することができ、薬学的な技術分野において周知の方法により調製されることができる。例えば、Plotkin and Mortimer(In 'Vaccines', 1994, W.B. Saunders Company; 2nd edition)には、特定の病原体について特異的な免疫応答を誘導するための動物またはヒトのワクチン接種、ならびに、抗原を調製する、抗原の適切な用量を決定する、および免疫応答の誘導についてアッセイする方法が記載されている。
【0291】
いくつかの態様において、本明細書に記載するワクチン組成物は、さらに、本明細書に記載するアジュバントを含む。
【0292】
静脈内、筋肉内、鼻腔内、経口、皮下、または腹腔内投与のための適切なワクチン組成物の製剤は、便利には、好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液を伴う、活性成分の無菌水溶液を含む。そのような製剤は、便利には、生理学的に適合性のある物質、例えば塩化ナトリウム(例えば、0.1〜2.0M)、グリシンなどを含みかつ水溶液を産生するために生理的条件と適合性のある緩衝pHを有する水中に固体活性成分を溶解し、溶液を滅菌することによって調製することができる。これらは、単位容器または複数用量容器(例えば、密封されたアンプルまたはバイアル)中に存在してもよい。
【0293】
リポソーム懸濁剤も薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように調製することができる。
【0294】
鼻腔内送達のための製剤は、米国特許番号第5,427,782号、第5,843,451号、および第6,398,774号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。粘膜投与の他の手段も、本明細書に包含される。
【0295】
本明細書に開示するワクチン組成物の製剤にはまた、安定化剤を組み入れることができる。例示的な安定化剤は、それ自体で、または混合剤として使用され得るポリエチレングリコール、タンパク質、糖類、アミノ酸、無機酸、および有機酸である。2つまたはそれ以上の安定化剤を、適当な濃度および/またはpHで、水溶液中で使用してもよい。そのような水溶液中での特定の浸透圧は、一般的には0.1〜3.0浸透圧の範囲中、好ましくは0.80〜1.2の範囲中にある。水溶液のpHは、5.0〜9.0の範囲内、好ましくは6〜8の範囲内にあるように調整される。
【0296】
経口調製物が望ましい場合、ワクチン組成物は、とりわけ、典型的な担体、例えばラクトース、スクロース、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、またはアラビアゴムなどと組み合わせることができる。
【0297】
本発明は、新規の肺炎球菌抗原、例えば、表1から選択されるポリペプチド抗原またはその機能的断片およびその任意の組み合せの1つまたは複数、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む免疫原性組成物(例えば、ワクチン)を提供する。いくつかの態様に従い、それを必要とする対象に本発明の免疫原性組成物を投与する方法が提供される。いくつかの態様において、本発明の組成物はヒトに投与される。本発明の目的のために、語句「活性成分」は概して、少なくとも1つのクラミジア抗原を含み、任意で、1つまたは複数の追加の薬剤(例えばアジュバント)を含む本発明の免疫原性組成物を指す。
【0298】
本明細書に提供する免疫原性組成物の記載は、主に、ヒトへの投与のために適している組成物に関するが、そのような組成物は概して、全ての種類の動物への投与のために適していることが当業者により理解されるであろう。組成物を種々の動物への投与に適するようにするための、ヒトへの投与のための適切な免疫原性組成物の修飾が十分に理解されており、当業者の獣医薬理学者は、仮にある場合、単に普通の実験法でそのような修飾をデザインおよび実施することができる。本発明の免疫原性組成物の投与が検討されている対象は、ヒトおよび/または他の霊長類;哺乳動物、商業的に関連する哺乳動物(例えば家畜、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、および/またはイヌを含む);および/または鳥類、商業的に関連する鳥類(例えばニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/またはシチメンチョウ)を含むが、これらに限定されない。
【0299】
本明細書に記載する免疫原性組成物の製剤は、公知のまたは今後のワクチンの当技術分野において開発される任意の方法により調製され得る。いくつかの態様において、そのような調製方法は、抗原(または核酸ベースの適用のための、抗原をコードする核酸)を、1つもしくは複数の賦形剤および/または、1つもしくは複数の他の補助成分との関連中にもたらし、次に、必要である場合、および/または望まれる場合、所望の単回用量単位または複数用量単位中に産物を成形および/またはパッケージングする段階を含む。
【0300】
本発明の免疫原性組成物は、大量に、単回の単位用量として、および/または複数の単回の単位用量として、調製、パッケージング、および/または販売されてもよい。本明細書で使用するように、「単位用量」は、所定量の抗原を含む免疫原性組成物の個別の量である。
【0301】
本発明の組成物中の抗原、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の追加の成分(例えば、アジュバント)の相対量は、同一性、サイズ、および/または処置される対象の状態に依存し、さらに、組成物が投与される経路に依存して変動する。
【0302】
本発明の免疫原性製剤は、追加的に、薬学的に許容される賦形剤を含んでもよく、本明細書で使用されるように、任意および全ての溶剤、分散媒質、希釈剤、または他の液体賦形剤、分散剤もしくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などを含み、これらは所望の特定の投与形態に適している。Remington's The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, A. R. Gennaro, (Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, Md., 2006;参照により本明細書に組み入れられる)は、薬学的組成物を製剤化する際に使用される種々の賦形剤およびそれらの調製のための公知の技術を開示する。任意の従来の賦形剤が、物質またはその誘導体と不適合である場合を除き(例えば、任意の望ましくない生物学的効果が発生する、または、そうでなければ、免疫原性組成物の任意の他の成分と有害な様式で相互作用することによる)、その使用は、本発明の範囲内であるように検討される。
【0303】
いくつかの態様において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋である。いくつかの態様において、賦形剤は、ヒトにおける使用のために、および獣医学的使用のために承認されている。いくつかの態様において、賦形剤は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)により承認されている。いくつかの態様において、賦形剤は、医薬品グレードである。いくつかの態様において、賦形剤は、米国薬局方(United States Pharmacopoeia/USP)、欧州薬局方(European Pharmacopoeia/EP)、英国薬局方(British Pharmacopoeia)、および/または国際薬局方(International Pharmacopoeia)の基準を満たす。
【0304】
免疫原性組成物の製造において使用される薬学的に許容される賦形剤は、不活性希釈剤、分散剤および/または造粒剤、界面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、潤滑剤、および/または油を含むが、これらに限定されない。そのような賦形剤は、任意で、本発明の製剤中に含まれてもよい。
【0305】
注射用製剤、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用し、公知の技術に従って製剤化されてもよい。無菌注射用調製物は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶剤中の、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としての無菌注射用溶液、懸濁液、または乳剤であり得る。用いてもよい許容可能な賦形剤および溶剤の中で、水、リンゲル溶液、U.S.P.、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。また、無菌固定油は、従来、溶剤または懸濁媒質として用いられる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無菌性の固定油を用いることができる。加えて、脂肪酸(例えばオレイン酸)を注射剤の調製において使用する。
【0306】
注射用製剤を、例えば、細菌保持フィルターを介した濾過により、または使用に先立ち無菌水もしくは他の無菌注射用媒質に溶解もしくは分散することができる無菌固体組成物の形態で無菌薬剤を取り込ませることによって、滅菌することができる。
【0307】
免疫原性組成物の放出を延長し、注射部位の近傍において抗原提示細胞による最大の取り込みを刺激するために、皮下または筋肉内注射からの吸収を遅らせることがしばしば望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶または非結晶材料の液体懸濁液の使用により達成され得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の吸収遅延は、薬物を油賦形剤中に溶解または懸濁させることにより達成され得る。
【0308】
いくつかの態様において、免疫原性組成物は、粘膜表面に投与される。直腸または膣投与用の組成物は、本発明の免疫原性組成物を、適切な賦形剤(例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックス)と混合することにより調製することができる坐剤を含むことができ、これは、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔中で溶融して抗原を放出する。
【0309】
いくつかの態様において、免疫原性組成物は経口投与される。経口投与のための固体投与形態は、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒を含む。そのような固体投与形態において、抗原は、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容される賦形剤、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、ならびに/あるいはa)充填剤または増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアラビアゴム、c)湿潤剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土など、ならびにi)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合することができる。カプセル、錠剤、および丸剤の場合において、投与形態は緩衝剤を含んでもよい。
【0310】
本明細書に記載する皮内経路により免疫原性組成物を送達する場合の使用のための適切なデバイスは、短針デバイス、例えば、米国特許第4,886,499号;第5,190,521号;第5,328,483号;第5,527,288号;第4,270,537号;第5,015,235号;第5,141,496号;および第5,417,662号において記載されるものを含む。液体ジェット式注射器を介して、かつ/または角質層を貫通し真皮に達する噴流を産生する針を介して、真皮に液体の免疫原性組成物を送達するジェット式注射デバイスが適している。ジェット式注射デバイスは、例えば、米国特許第5,480,381号;第5,599,302号;第5,334,144号;第5,993,412号;第5,649,912号;第5,569,189号;第5,704,911号;第5,383,851号;第5,893,397号;第5,466,220号;第5,339,163号;第5,312,335号;第5,503,627号;第5,064,413号;第5,520,639号;第4,596,556号;第4,790,824号;第4,941,880号;第4,940,460号;ならびにPCT公開WO 97/37705およびWO 97/13537に記載されている。皮膚の外層を介して真皮に粉末形態の免疫原性組成物の送達を促進するために圧縮ガスを使用する粉末/粒子送達用バリスティックデバイスが適している。あるいは、または追加的に、従来のシリンジは、皮内投与の古典的なマントー方法において使用してもよい。
【0311】
薬学的薬剤の製剤化および/または製造における一般的な考慮は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 21st ed., Lippincott Williams & Wilkins, 2005において見出され得る。
【0312】
ワクチン製剤または免疫原性組成物は、ヒト患者への投与のために適し得るが、ワクチンまたは免疫原性組成物の調製は、USFDAガイドラインに準拠し得る。いくつかの態様において、ワクチン製剤または免疫原性組成物は、非ヒト動物への投与のために適している。いくつかの態様において、ワクチンまたは免疫原性組成物は、内毒素または外毒素のいずれも実質的に含まない。内毒素は、発熱物質、例えばリポポリサッカライド(LPS)分子を含み得る。ワクチンまたは免疫原性組成物は、発熱または他の副作用を起こし得る不活性なタンパク質断片を実質的に含み得ない。いくつかの態様において、組成物は、内毒素、外毒素、および/または不活性なタンパク質断片を1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、または0.0001%未満含む。いくつかの態様において、ワクチンまたは免疫原性組成物は、工業用水、水道水、または蒸留水よりも低いレベルの発熱物質を有する。他のワクチンまたは免疫原性組成物の成分は、当技術分野において公知の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、限外濾過、または蒸留を使用して精製され得る。他の態様において、発熱物質を、患者への投与前に、不活性化または破壊してもよい。ワクチンのための原材料、例えば水、緩衝液、塩、および他の化学物質をまた、スクリーニングして、脱パイロジェン化してもよい。ワクチン中の全ての材料は無菌的であり得るが、ワクチンの各ロットは、無菌性について試験され得る。このように、特定の態様において、ワクチン中の内毒素レベルは、USFDAにより設定されたレベル、例えば、髄腔内注射組成物について、産物1kgあたり0.2内毒素(EU);非髄腔内注射組成物について、産物1kgあたり5EU、および無菌水について、0.25〜0.5EU/mLを下回る。
【0313】
特定の態様において、調製物は、(乾燥重量で)50%、20%、10%、または5%未満の混入タンパク質を含む。特定の態様において、所望の分子は、他の生物学的高分子、例えば他のタンパク質など(特に、精製調製物として、または対象の再構成混合物中でのそれらの機能においてのいずれかで、成分タンパク質の特徴を実質的にマスク、減弱、混乱、または変化させ得る他のタンパク質)の実質的な非存在において存在する。特定の態様において、同じ型の生物学的高分子の(乾燥重量で)少なくとも80%、90%、95%、99%、または99.8%が存在する(しかし、水、緩衝液、および他の小分子、特に5000未満の分子量を有する分子が存在することができる)。いくつかの態様において、精製サブユニットタンパク質を含むワクチンまたは免疫原性組成物は、精製サブユニットの量と比べ、サブユニットタンパク質が発現された宿主細胞からのタンパク質の5%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%未満を含む。いくつかの態様において、所望のポリペプチドは、核酸および/または炭水化物を実質的に含まない。例えば、いくつかの態様において、ワクチンまたは免疫原性組成物は、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1%未満の宿主細胞DNAおよび/またはRNAを含有する。特定の態様において、同じ型の生物学的高分子の少なくとも80%、90%、95%、99%、または99.8%(乾燥重量)が、調製物中に存在する(しかし、水、緩衝液、および他の小分子、特に5000未満の分子量を有する分子が存在することができる)。
【0314】
ワクチンまたは免疫原性組成物は、合理的なリスク・ベネフィット比の範囲内で、低毒性または無毒性であることが好ましい。特定の態様において、ワクチンまたは免疫原性組成物は、ワクチン接種された動物についてのLD50測定値未満である濃度で、成分を含む。LD50測定値は、マウスまたは他の実験モデル系で得てもよく、ヒトおよび他の動物に外挿してもよい。ヒトおよび他の動物における化合物のLD50を推定するための方法は、当技術分野において周知である。ワクチン製剤または免疫原性組成物、およびその中の任意の成分は、ラットにおいて、100g/kgを上回る、50g/kgを上回る、20g/kgを上回る、10g/kgを上回る、5g/kgを上回る、2g/kgを上回る、1g/kgを上回る、500mg/kgを上回る、200mg/kgを上回る、100mg/kgを上回る、50mg/kgを上回る、20mg/kgを上回る、または10mg/kgを上回るLD50値を有し得る。毒素、例えばボツリヌス毒素(アジュバントとして使用することができる)を含むワクチン製剤または免疫原性組成物は、ボツリヌス毒素のLD50よりも有意に少なく含むべきである。
【0315】
ワクチン製剤または薬学的組成物の導入のための適切な製剤は、投与経路に従って変動する。例えば、関節内(関節における)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、鼻腔内、および皮下経路などによる非経口投与のための適切な製剤は、水性および非水性の等張無菌注射溶液を含み、抗酸化物質、緩衝剤、静菌剤、および意図されたレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存剤を含むことができる水性および非水性無菌懸濁液を含有することができる。製剤は、単位用量また複数用量密封容器(例えばアンプルおよびバイアル)中で提供することができる。
【0316】
注射溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の無菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。治療的T細胞の養子移入の場合において、細胞は、静脈内または非経口的に投与することができる。
【0317】
経口投与のための適切な製剤は、(a)液体溶液、例えば希釈剤(例えば水、生理食塩水、またはPEG400)中に懸濁されたポリペプチドまたはパッケージされた核酸の有効量;(b)カプセル、サッシェまたは錠剤(各々が、液体、固体、顆粒、またはゼラチンとして、所定量の活性成分を含む);(c)適当な液体中の懸濁液;および(d)適切な乳剤からなることができる。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トラガント、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸および他の賦形剤、着色剤、増量剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、着色料、崩壊剤、ならびに薬学的に適合性のある担体のうちの1つまたは複数を含むことができる。ロゼンジ形態は、香料中の活性成分、通常は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント、ならびに不活性基剤中の活性成分を含むトローチ剤、例えば、活性成分に加えて、当技術分野において公知の担体を含む、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア乳剤、ゲルなどを含むことができる。薬学的組成物は、例えば、リポソーム中で、または活性成分の徐放を提供する製剤中でカプセル化されることができる。
【0318】
抗原は、単独で、または他の適切な成分との組み合わせにおいて、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤(例えば、それらは「噴霧」することができる)中に作製することができる。エアロゾル製剤は、加圧された許容可能な噴射剤(例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に置くことができる。エアロゾル製剤は、経口または経鼻で送達することができる。
【0319】
膣または直腸投与のための適切な製剤は、例えば坐剤を含み、それは、坐剤基剤を伴うポリペプチドまたはパッケージされた核酸からなる。適切な坐剤基剤は、天然もしくは合成トリグリセリドまたはパラフィン炭化水素を含む。加えて、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、およびパラフィン炭化水素を含む、基剤を伴うポリペプチドまたはパッケージされた核酸の組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを使用することも可能である。
【0320】
投薬量および投与経路
1. 投与形態、量、およびタイミング
各々のワクチンまたは免疫原性組成物の用量中の抗原の量は、上記のように、単一用量または複数用量のいずれかにおいて、予防的または治療的応答を誘導する有効量として選択される。好ましくは、用量は、典型的なワクチン接種者において有意な有害な副作用を伴わない。そのような量は、いずれの特定の抗原が用いられるかに依存して変動する。一般的に、用量は、1〜1000μgの各タンパク質、一部の例において2〜100μg、例えば4〜40μgを含むことが予想される。一部の局面において、ワクチン製剤は、1〜1000μgのポリペプチドおよび1〜250μgのアジュバントを含む。いくつかの態様において、送達される抗原の適当な量は、対象の年齢、体重、および健康(例えば、免疫不全状態)に依存する。存在する場合、典型的には、アジュバントは、1用量当たり1μg〜250μg、例えば50〜150μg、75〜125μgまたは100μgの量で存在する。
【0321】
いくつかの態様において、1用量のワクチンだけが、上記の結果を達成するために投与される。他の態様において、最初のワクチン接種後、対象は、合計2、3、4、または5回のワクチン接種のために、1つまたは複数のブーストワクチン接種を受ける。有利には、数は3またはそれより少ない。ブーストワクチン接種は、1つのワクチン接種レジメンが0、0.5〜2、および4〜8ヶ月での投与を含むように、例えば、最初のワクチン接種後約1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、または12ヶ月に投与されてもよい。同一または異なる経路により投与し得るワクチンの分割用量を投与することが有利であり得る。
【0322】
本明細書に記載するワクチンおよび免疫原性組成物は、種々の投与形態を取り得る。特定の態様において、組成物は、固体または粉末(例えば、凍結乾燥)形態で提供される;それは、また、溶液形態で提供されてもよい。特定の態様において、投与形態は、凍結乾燥組成物の用量および希釈剤の少なくとも1つの個別の無菌容器として提供される。
【0323】
いくつかの態様において、組成物は、組成物の連続投与が、以前の投与よりも高い濃度の組成物を含むように用量漸増様式で投与される。いくつかの態様において、組成物は、組成物の連続投与が、以前の投与よりも低い濃度の組成物を含むように投与される。
【0324】
製剤中に用いられる正確な用量は、投与経路にも依存し、かつ開業医の判断および各々の患者の状況に従って決定すべきである。例えば、25μg〜900μgの総免疫原タンパク質の範囲を、3ヶ月間にわたり毎月皮内に投与することができる。最終的には、担当医師が、特定の個体に投与するタンパク質またはワクチン組成物の量を決定する。
【0325】
いくつかの態様において、本発明の免疫原性組成物の治療有効量は、患者および/または動物に、クラミジア生物への曝露あるいはクラミジア疾患、クラミジア障害、および/または状態の診断に先立ち、同時に、および/または後に送達される。いくつかの態様において、本発明の組成物の治療量は、患者および/または動物に、クラミジア疾患、クラミジア障害、および/または状態の症状の発症に先立ち、同時に、および/または後に送達される。いくつかの態様において、免疫原性組成物の量は、感染のリスクを低下させる、あるいは、クラミジア疾患、クラミジア障害、および/または状態の1つまたは複数の症状または特徴の処置、緩和、寛解、軽減、発症の遅延、進行の阻害、重症度の低下、および/または発生率の低下に十分である。
【0326】
免疫原性組成物は、本発明の方法に従い、処置のために効果的な任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得る。要求される正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、感染の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式などに依存して、対象間で変動し得る。任意の特定の対象または生物についての特定の有効用量レベルは、用いられる抗原組成物の免疫原性を含む種々の因子;用いられる特定の組成物;使用されるアジュバントの性質;対象の年齢、体重、全身健康、性別、および食事;投与時間、投与経路、および医学的な技術分野において周知の因子に依存する。
【0327】
治療的適用において、組成物は、患者を治療するのに十分な量で、疾患に罹患している患者に投与される。本明細書に記載する組成物の治療的な適用は、組成物で処置されていない個体において生じうるレベルの、例えば90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%だけ伝播性を減少させること、疾患進行を遅らせること、細菌生存能または複製を減少させること、または毒性のために要求されるタンパク質の発現を阻害することを含む。
【0328】
予防的な態様において、組成物は、感染性疾患または他の状態の確立を阻害することができる免疫応答を誘導するために、ヒトまたは他の哺乳動物に投与される。いくつかの態様において、組成物は、細菌が、感染を確立することを部分的に遮断し得る。
【0329】
いくつかの態様において、組成物は、抗生物質との組み合わせで投与される。この同時投与は、薬学的組成物が、肺炎連鎖球菌に最近曝露された(または最近曝露された疑いのある)患者に投与される場合、特に適当である。多くの抗生物質は、肺炎球菌感染を処置するために使用され、ペニシリン、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、セフロキシム、セフォタキシム、セフトリアキソン、およびバンコマイシンを含む。適当な抗生物質は、感染の種類および重症度、ならびに感染の任意の公知の抗生物質耐性に基づいて選択され得る(Jacobs M R "Drug-resistant Streptococcus pneumoniae: rational antibiotic choices" Am J. Med.1999 May 3; 106 (5A): 19S-25S)。
【0330】
2.投与
肺炎球菌感染に対して、哺乳動物を免疫化または哺乳動物にワクチン接種する方法は、本明細書に記載のワクチン組成物を投与することを含む。
【0331】
いくつかの態様において、本明細書に記載する免疫原性組成物またはワクチン組成物は、静脈内、鼻腔内、筋肉内、皮下、腹腔内へ、または経口で投与することができる。好ましい投与経路は、鼻腔内、または他の粘膜経路によるものである。
【0332】
ワクチン接種は、従来の方法により行うことができる。例えば、表1に開示するポリペプチドとしての免疫原は、任意で、完全または不完全アジュバントとともに、適当な希釈剤(例えば生理食塩水または水)中で使用することができる。ワクチンは、免疫応答を誘発するための任意の適当な経路により投与することができる。ワクチンは、免疫応答が誘発されるまで、1回または定期的な間隔で投与することができる。免疫応答は、当業者に公知の種々の方法(抗体産生、細胞傷害性アッセイ、増殖アッセイ、およびサイトカイン放出アッセイを含むが、これらに限定されない)により検出することができる。例えば、免疫化した哺乳動物から血液試料を採取し、ワクチン接種において使用される免疫原タンパク質に対する抗体の存在についてELISAにより分析することができ、これらの抗体の力価を、当技術分野において公知の方法により決定することができる。
【0333】
本発明の免疫原性組成物は、免疫応答を誘発する任意の経路により投与してもよい。いくつかの態様において、免疫原性組成物は皮下に投与される。いくつかの態様において、免疫原性組成物は筋肉内投与される。いくつかの態様において、本発明の免疫原性組成物は、種々の経路(経口、静脈内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏剤、クリーム剤、および/または液滴として)、経皮、粘膜、経鼻、頬側、経腸、舌下)により;気管内滴下注入、気管支滴下注入、および/または吸入により;ならびに/あるいは経口スプレー、鼻スプレー、および/またはエアロゾルとして投与される。
【0334】
本明細書におけるワクチン製剤および薬学的組成物は、典型的には全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、皮下、真皮下、経皮、頭蓋内、鼻腔内、粘膜、肛門、膣、経口、頬側経路で、またはそれらを吸入することが可能)により、個体への投与によって送達することができるか、あるいはそれらを局所適用により投与することができる。いくつかの態様において、投与経路は筋肉内である。他の態様において、投与経路は皮下である。さらに他の態様において、投与経路は粘膜である。特定の態様において、投与経路は経皮または皮内である。
【0335】
特定の投与経路は、特定のアジュバントを含むワクチン製剤および免疫原性組成物のために特に適当である。特に、経皮投与は、毒素(例えば、コレラ毒素または不安定毒素)を含む肺炎連鎖球菌ワクチンのための1つの適切な投与経路である;他の態様において、投与は鼻腔内である。アルファウイルスレプリコンで製剤化されたワクチンは、例えば、筋肉内または皮下経路により投与され得る。モノホスホリル リピドA(MPL)、トレハロースジコリノミコレート(TDM)、およびジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDA)を含むワクチンは、(とりわけ)筋肉内および皮下投与のために適する。レシキモドを含むワクチンは、例えば、局所または皮下に投与することができる。
【0336】
特定の態様において、本発明の免疫原性組成物は、1μg〜500μgの範囲のタンパク質抗原を含む量で投与し得る。いくつかの態様において、約10μg、20、30μg、50μg、または100μgの用量をヒトに投与する。
【0337】
いくつかの態様において、免疫原性組成物は複数回(例えば、2回、3回、4回、5回)投与される。いくつかの態様において、ブーストは、最初の免疫後1週間、2週間、3週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年またはそれ以上で与える。
【0338】
ワクチンの製剤および免疫原性組成物の調製および保存
本明細書に記載する肺炎連鎖球菌ワクチンおよび免疫原性組成物は、種々の技術を使用して産生され得る。例えば、ポリペプチドは、適切な宿主細胞中で組換えDNA技術を使用して産生され得る。適切な宿主細胞は、細菌、酵母、哺乳動物、または他の細胞型でもよい。宿主細胞は、関連するポリペプチド遺伝子の1つの外来性コピーを発現するように改変され得る。典型的には、遺伝子は、適当な調節配列(例えば強いプロモーターおよびポリアデニル化配列)に、機能的に連結される。いくつかの態様において、プロモーターは誘導性または抑制性である。他の調節配列は、ポリペプチドを精製することが望まれるかどうかに依存して、関心対象のポリペプチドの分泌もしくは排出または細胞質中もしくは膜中の関心対象のポリペプチドの保持を提供し得る。遺伝子は、染色体外プラスミド上に存在してもよく、または宿主ゲノムに組み込まれてもよい。当業者は、天然に存在する配列と100%同一の核酸を使用する必要はないことを認識するであろう。むしろ、これらの配列の一部の変化が許容され、望ましい場合がある。例えば、核酸は、コードされたポリペプチドが同じままであるように、遺伝子コードの縮重をうまく利用するように変化させてもよい。いくつかの態様において、遺伝子は、特定の宿主における発現を改善するためにコドン最適化がなされる。核酸は、例えば、PCRにより、または化学合成により産生され得る。
【0339】
一度、組換え細胞株が産生された場合、ポリペプチドがそこから単離され得る。分離は、例えば、親和性精製技術により、または物理的分離技術(例えば、サイズカラム)により達成され得る。
【0340】
本開示のさらなる局面において、1種または複数種のポリペプチドまたは免疫原性断片またはそれらの変種を、担体および/またはアジュバントと混合することを含む製造の方法が提供される。
【0341】
いくつかの態様において、封入のための、抗原、ワクチン製剤および免疫原性組成物を細胞培養中で産生し得る。1つの方法は、1つまたは複数の発現ベクターと、表1のアミノ酸配列(例えばSEQ ID NO:1〜76または153〜234)を有するポリペプチドより選択される1つまたは複数のポリペプチドをコードするクローニングされたヌクレオチドとを提供し、次に、ポリペプチドを発現および単離することを含む。
【0342】
本明細書に記載する免疫原性ポリペプチド、およびポリペプチドを発現する核酸組成物は、哺乳動物に核酸組成物を投与するためのパック、ディスペンサーデバイス、およびキットにパッケージすることができる。例えば、1つまたは複数の単位投与形態を含有するパックまたはディスペンサーデバイスが提供される。典型的には、化合物の投与のための説明書は、化合物が適応対象の状態の処置のために適しているとのラベル上の適切な効能と共に、パッケージングで提供される(例えば本明細書に開示するもの)。
【0343】
免疫原性組成物の使用
1. 肺炎連鎖球菌感染からの保護
本発明の免疫原性組成物は、肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘発するようにデザインされている。本明細書に記載する組成物(例えば、表1または表2の、1つまたは複数のポリペプチドを含む組成物、あるいはポリペプチドをコードする核酸)は、それが投与される哺乳動物において、抗体応答もしくは細胞性免疫応答、またはそれらの両方を刺激し得る。いくつかの態様において、組成物は、Th1バイアスのCD4+T細胞応答、Th17バイアスのCD4+T細胞応答、および/またはCD8+T細胞応答を刺激する。いくつかの態様において、組成物は、抗体応答を刺激する。いくつかの態様において、組成物は、Th1バイアスのCD4+T細胞応答、Th17バイアスのCD4+T細胞応答、および/またはCD8+T細胞応答、ならびに抗体応答を刺激する。
【0344】
特定の態様において、組成物(例えば、表1または表2の、1つまたは複数のポリペプチドを含む組成物、あるいはポリペプチドをコードする核酸、あるいはペプチドと反応性の抗体)は、サイトカイン、またはサイトカイン(例えばIL-17)をコードするヌクレオチドコード領域を含み、哺乳動物の免疫系に追加の刺激を提供する。特定の態様において、組成物は、サイトカイン(例えばIL-17)を含む。
【0345】
理論により拘束されることを望まないが、いくつかの態様において、THl7細胞応答は、本明細書に開示する組成物(例えば、表1または表2の、1つまたは複数のポリペプチドを含む組成物)への免疫応答を開始する際に望ましい。特定の態様において、活性Th17応答は、肺炎球菌感染を除去する際に有益である。例えば、IL-17A受容体を欠損したマウスでは、全細胞ワクチンに基づく肺炎球菌攻撃からの保護が減少する(Lu et al., "Interleukin-17A mediates acquired immunity to pneumococcal colonization." PLoS Pathog. 2008 Sep. 19; 4 (9))。
【0346】
このように、本明細書に記載する組成物(例えば、表1または表2の、1つまたは複数のポリペプチドを含む組成物)を対象に投与することによりIL-17産生を増加させる方法を本明細書に提供する。さらに、本願は、該組成物を対象に投与することによりTh17細胞を活性化する方法を提供する。特定の態様において、IL-17Aレベルの増加は、例えば、好中球様細胞の好中球の動員および活性化を誘導することにより、好中球または好中球様細胞による肺炎球菌の死滅の増加をもたらす。特定の態様において、この肺炎球菌の死滅は、抗体および補体に非依存的である。しかし、特定の抗体産生および補体活性化は、肺炎球菌感染の除去に寄与する有用な追加の機構であり得る。
【0347】
薬学的担体と一緒に、免疫原性ポリペプチドまたは免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む免疫原性組成物も提供される。
【0348】
一部の例において、免疫原性組成物は、SEQ ID NO:1〜76のうちの1つまたは複数のポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸、例えばSEQ ID NO:77〜152より選択される1つまたは複数の核酸を含む。いくつかの態様において、これらの核酸は、免疫化された個体内で発現され、コードされた肺炎連鎖球菌抗原を産生し、このようにして産生された肺炎連鎖球菌抗原は、免疫化された個体において免疫刺激効果を産生することができる。
【0349】
そのような核酸を含む免疫刺激性組成物は、例えば、複製起点、およびSEQ ID NO:1〜76のうちの1つまたは複数のポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸の発現を推進するプロモーターを含んでもよい。そのような組成物は、また、プロモーター(時折、強いウイルスプロモーター)が挿入された細菌プラスミドベクター、SEQ ID NO:1〜76のうちの1つまたは複数のポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸、およびポリアデニル化/転写終結配列を含んでもよい。一部の例において、核酸はDNAである。
【0350】
診断的使用
本願は、とりわけ、患者における肺炎連鎖球菌の検出のための、迅速で、安価で、高感度で、特異的な方法を提供する。この点において、それは、肺炎連鎖球菌感染を有するかまたはそのリスクのある患者を検査および処置する全ての病院および医師に有用であるはずである。検出キットは、任意の地域の病院検査室において設定されるのに十分に簡単であることができ、抗体およびその抗原結合部分は、肺炎連鎖球菌感染を有するかまたはそのリスクのある患者を治療する全ての病院で容易にまたは利用可能にすることができる。本明細書で使用するように、「患者」は、肺炎連鎖球菌感染を有するか、または肺炎連鎖球菌感染に罹患する可能性がある個体(例えばヒト)を指す。患者は、肺炎連鎖球菌感染を有する、肺炎球菌感染に罹患する可能性がある、肺炎球菌感染から回復した個体(例えばヒト)、および/または感染状況が不明である個体であり得る。
【0351】
いくつかの態様において、2つまたはそれ以上の抗体を使用する診断アッセイを実施してもよく、それらの各々が、表1の抗原の1つに結合し、個体において肺炎連鎖球菌を検出する。実施例5に開示するように、SP0785で免疫化されたマウスからの血清は、4型TIGR4肺炎連鎖球菌株の存在を検出した。したがって、いくつかの態様において、診断における使用のための抗原の1つは、SEQ ID NO:1〜76より選択されるいずれかの肺炎球菌抗原である。本開示はまた、肺炎連鎖球菌感染を有することが疑われる患者からの生物学的試料の表現型を決定する方法を提供する:(a)患者から生物学的試料を得る段階;(b)肺炎連鎖球菌のエピトープへの抗体または抗原結合部分の結合を可能にする条件下で、試料を、2つまたはそれ以上の肺炎連鎖球菌特異的抗体またはその抗原結合部分と接触させる段階(ここで、結合は、試料中での肺炎連鎖球菌の存在を示す)。いくつかの態様において、生物学的試料への結合を、陰性対照組織への同じ抗体の結合と比較し、そこで生物学的試料が、陰性対照組織と比較して肺炎連鎖球菌の存在を示す場合、患者は、肺炎連鎖球菌感染を有する可能性が高いとして同定される。一部の場合において、1つの抗体の結合は、肺炎連鎖球菌の存在を示し;他の場合において、2つまたはそれ以上の抗体の結合は、肺炎連鎖球菌の存在を示す。上記の試験は、例えば、表1に記載するタンパク質の1つのホモログ(別の細菌種からの)に免疫反応性の抗体を使用することにより、他の細菌感染を検出するように適当に調整してもよい。いくつかの態様において、表1中の肺炎連鎖球菌タンパク質に対して産生された抗体はまた、特にホモログが高いパーセンテージの配列同一性を有する場合、別の連鎖球菌種におけるホモログに結合する。
【0352】
あるいは、表1(例えばSEQ ID NO:1〜76など)の抗原を使用して個体における抗肺炎連鎖球菌抗体を検出し得る。本開示はまた、肺炎連鎖球菌感染を有することが疑われる患者からの生物学的試料の表現型を決定する方法を提供する:(a)患者から生物学的試料を得る段階;(b)試料中に存在する任意の宿主抗体への抗原(またはその部分)の結合を可能にする条件下で、試料を、表1より選択される2種またはそれ以上の肺炎連鎖球菌特異的抗原またはその部分もしくは機能的断片と接触させる段階(ここで、結合は、試料中での肺炎連鎖球菌の存在を示す)。いくつかの態様において、生物学的試料への結合を、陰性対照組織への同じ抗原の結合と比較し、そこで生物学的試料が、陰性対照組織と比較し、抗肺炎連鎖球菌抗体の存在を示す場合、患者は、(1)肺炎連鎖球菌感染を有する、または(2)過去に肺炎連鎖球菌感染を有していた可能性が高い、として同定される。一部の場合において、1つの抗体の検出は、現在または過去の肺炎連鎖球菌による感染を示し;他の場合において、2つまたはそれ以上の抗体の検出は、現在または過去の肺炎連鎖球菌による感染を示す。上記の試験は、例えば、表1に記載するタンパク質の(別の細菌種(例えば、連鎖球菌種)からの)ホモログを使用することにより、他の細菌感染を検出するように適当に調整してもよい。
【0353】
いくつかの態様において、哺乳動物細胞の免疫細胞応答は、エクスビボで定量化してもよい。そのような定量化のための方法は、本明細書に開示する組成物をエクスビボで哺乳動物T細胞に投与すること、および組成物に応答した哺乳動物T細胞のサイトカイン産生における変化を定量化することを含む。これらの方法において、サイトカインは、例えば、IL-17であり得る。
【0354】
抗原(例えば、表1のポリペプチド、例えばSEQ ID NO:1〜76)への肺炎連鎖球菌抗体の結合は、任意の適当な方法を使用して測定し得る。そのような方法は、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、ウエスタンブロット法、競合アッセイ、およびスポットブロットを含む。検出段階は、例えば、化学発光、蛍光、または比色であり得る。抗体−タンパク質結合を測定するための1つの適切な方法は、Luminex xMAPシステムであって、ここでペプチドは色素含有マイクロスフェアに結合している。特定のシステム(xMAPシステムを含む)は、マルチプレックスにおいていくつかの異なるマーカーの測定を受け入れ、かつ抗体のレベルを一度に測定するために使用することもできる。いくつかの態様において、他のシステムは、マルチプレックスにおいて複数のマーカーを評価するために使用される。例えば、プロファイリングを、以下のシステムのいずれかを使用して実施し得る:抗原マイクロアレイ、ビーズマイクロアレイ、ナノバーコード粒子技術、cDNA発現ライブラリーからのアレイタンパク質、タンパク質インサイチューアレイ、生形質転換体のタンパク質アレイ、ユニバーサルタンパク質アレイ、ラボ・オン・チップマイクロ流体、およびピン上のペプチド。臨床アッセイの別の型は、抗体結合を検出するための化学発光アッセイである。一部のそのようなアッセイ(VITROS Eci抗HCVアッセイを含む)において、抗体は、液体懸濁液中の微粒子で構成された固相支持体に結合され、表面蛍光は、蛍光産物の酵素的生成を定量化するために使用される。
【0355】
いくつかの態様において、生物学的試料が肺炎連鎖球菌の存在を示す場合(例えば、表1の、1つまたは複数のポリペプチド(例えばSEQ ID NO:1〜76)、あるいは該ポリペプチドの1つに結合する抗体を検出することによる)、患者に本明細書に記載する組成物および治療の治療有効量を投与してもよい。生物学的試料は、例えば、血液、精液、尿、膣液、粘液、唾液、糞便、尿、脳脊髄液、または組織試料を含み得る。いくつかの態様において、生物学的試料は、移植を意図される器官である。特定の態様において、検出段階の前に、生物学的試料は、肺炎連鎖球菌の増殖を促進する培養条件に曝露される。
【0356】
本明細書における診断試験(例えば、表1のポリペプチド(例えばSEQ ID NO:1〜76)を検出する診断試験、または該ポリペプチドの1つに結合する抗体)を、種々の試料(患者から採取した試料および他の供給源から採取した試料を含む)において肺炎連鎖球菌を検出するために使用してもよい。例えば、診断試験を使用し、食品、飲料、または食品および飲料用の成分中で肺炎連鎖球菌を以下の対象物で検出し得る:例えば医療機器、医療デバイス(例えば人工内耳およびペースメーカー)、シューズ、衣服、家具(病院の家具を含む)、およびカーテン(病院のカーテンを含む);または環境から採取した試料中(例えば植物試料)。いくつかの態様において、本明細書における試験は、動物、例えば農業用動物(ウシ、ブタ、ニワトリ、ヤギ、ウマなど)、愛玩動物(イヌ、ネコ、鳥類など)、または野生動物などから採取した試料で実施され得る。特定の態様において、本明細書における試験は、細胞培養物から採取した試料、例えば治療的タンパク質を産生するヒト細胞の培養物、有用な生物学的分子を産生することを意図した細菌の培養物、または研究目的のために増殖させた細胞の培養物などで実施され得る。
【0357】
本開示はまた、以下を含む、患者における肺炎連鎖球菌感染の位置を決定する方法を提供する:(a)標識された肺炎連鎖球菌抗体またはその抗原結合部分を含む薬学的組成物を患者に投与する段階、および(b)標識を検出する段階(ここで、結合は、患者における特定の位置における肺炎連鎖球菌感染を示す)。そのような診断は、また、患者における結合のレベルを対照と比較することを含んでもよい。特定の態様において、本方法は、さらに、患者が肺炎連鎖球菌感染を有する場合、肺炎連鎖球菌結合抗体またはその抗原結合部分の治療有効量を患者に投与することにより、感染を処置する段階を含む。特定の態様において、本方法は、さらに、患者が肺炎連鎖球菌感染を有する場合、表1もしくは2の肺炎連鎖球菌タンパク質またはその免疫原性部分の治療有効量を患者に投与することにより感染を処置する段階を含む。本方法は、さらに、患者における肺炎連鎖球菌の位置および/または体積を決定する段階を含んでもよい。本方法は、患者における肺炎連鎖球菌の拡散を評価し、かつ局所治療が適当であるか否かを決定するために使用され得る。
【0358】
いくつかの態様において、本明細書に記載する抗肺炎連鎖球菌抗体またはT細胞は、感染の経過の予後を検討するために使用され得る。いくつかの態様において、本明細書における抗肺炎連鎖球菌抗体またはT細胞は、患者から採取した試料中で検出され得る。抗体またはT細胞が正常なレベルで存在する場合、患者は、抗肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を生じたことを示し得る。抗体またはT細胞が存在しない、あるいは低いレベルで存在する場合、患者は、抗肺炎連鎖球菌に対する十分な応答を生じることに失敗していることを示し、より積極的な処置が推奨されるであろう。いくつかの態様において、低いレベルで存在する抗体またはT細胞は、正常な免疫系を有する患者における典型的な抗体またはT細胞のレベルの50%、20%、10%、5%、2%、または1%未満で存在する抗体を指す。抗体は、例えば、ELISAを使用し、本明細書に記載する抗原(例えば、表1および/または表2中の抗原)のいずれかについての親和性により検出され得る。T細胞は、例えば、ELISAまたはELISPOTアッセイを使用し、本明細書に記載する抗原(例えば、表1および/または表2中の抗原)のいずれかについて、エクスビボでの応答により検出され得る。
【0359】
いくつかの態様において、特定の肺炎連鎖球菌抗原(例えば、表1および/または表2中の抗原、例えばSEQ ID NO:1〜76および/またはSEQ ID NO:153〜234)の検出は、患者における肺炎連鎖球菌感染の進行および症状を予測するために使用され得る。本明細書における方法が、肺炎連鎖球菌の検出に限定されないことが、当業者により理解されるであろう。他の態様は、表1または表2に記載するタンパク質に相同なタンパク質を有する細菌を含む、関連する細菌の検出を含む。そのような関連する細菌は、例えば、連鎖球菌の他の株を含む。したがって、いくつかの態様において、表1のそのような肺炎球菌抗原タンパク質または免疫原混合物は、診断において有用であり得る。
【0360】
キット
本発明の別の態様は、本明細書に記載する肺炎球菌抗原の1種または複数種を含む種々のキットを提供する。例えば、本発明は、新規の肺炎球菌抗原および使用のための説明書を含むキットを提供する。キットは、複数の異なる肺炎球菌抗原を含み得る。キットは、任意の組み合わせにおいて多数の追加の成分または試薬のいずれかを含み得る。種々の組み合せの全てが明示されているわけではないが、各々の組み合わせが、本発明の範囲に含まれる。
【0361】
本発明の特定の態様に従い、キットは、例えば、(i)以下のクラミジア抗原の少なくとも1種を含む免疫原性組成物:SP0785、SP1500、SP0346、SP1386、SP0084、SP1479、およびSP2145ポリペプチド抗原;ならびに(ii)組成物を、それを必要とする対象に投与するための説明書を含む。いくつかの態様において、キットは、さらに、アジュバントを含む。
【0362】
クラミジア抗原をコードする核酸を含むキットも提供される。特定の態様において、キットは、例えば、(i)肺炎球菌抗原をコードする核酸を含む組成物;(ii)核酸合成での使用のための説明書(例えば、抗原を産生するために核酸を発現するための説明書、または肺炎球菌に対する応答を誘発するために、それを必要とする対象に組成物を投与するための説明書)を含み得る。
【0363】
キットと共に含まれる説明書は、例えば、プロトコールを含み、かつ/あるいは、免疫原性組成物の産生および/またはそれを必要とする対象への免疫原性組成物の投与のための条件を記載する。キットは、一般的に、個々の成分および試薬の一部または全てが個別に収容され得るように、1つまたは複数の器または容器を含む。キットは、また、商業的な販売のために比較的近接した拘束状態で個々の容器を同封するための手段(例えば、プラスチックボックス)を含み得るが、その中に説明書、パッケージング材料(例えば発泡スチレンなど)が同封され得る。識別子、例えば、バーコード、無線周波数識別(ID)タグなどが、キット中もしくは上に、またはキット中に含まれる器もしくは容器の1つまたは複数において存在し得る。識別子を使用して、例えば、品質管理、在庫管理、追跡、ワークステーションの間での移動などの目的のためのキットを独自に特定することができる。
【0364】
本明細書に記載する技術のいくつかの態様は、以下の番号を付けた段落のいずれかに従って定義することができる:
1. SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234より選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1種の単離された肺炎球菌抗原またはその断片を含む免疫原性組成物であって、哺乳動物に投与された場合に、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に対する免疫応答を誘発する、免疫原性組成物。
2. 肺炎球菌抗原またはその断片が融合結合体として存在する、項1に記載の免疫原性組成物。
3. 融合結合体が多糖結合体である、項2に記載の免疫原性組成物。
4. 融合結合体が、肺炎球菌ニューモリソイド(pneumolysoid)PdTと融合された肺炎球菌抗原またはその断片を含み、該肺炎球菌ニューモリソイドPdTが多糖と結合している、項3に記載の免疫原性組成物。
5. 多糖が、デキストラン、チフス菌(Salmonella typhi)のVi多糖、もしくは肺炎球菌の細胞壁多糖(CWPS)、または原核生物もしくは真核生物起源の別の多糖である、項2〜4のいずれかに記載の免疫原性組成物。
6. 対象においてIL-17A(Th17細胞)応答を誘導する、項1〜5のいずれかに記載の免疫原性組成物。
7. 肺炎球菌コロニー形成を減少させるか、または肺炎球菌コロニー形成から哺乳動物を保護するワクチンとしてさらに調製される、項1〜6のいずれかに記載の免疫原性組成物。
8. アジュバントをさらに含む、項1〜7のいずれかに記載の免疫原性組成物。
9. 粘膜から投与される、項1〜8のいずれかに記載の免疫原性組成物。
10. SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234より選択されるアミノ酸配列を有する、少なくとも2種の肺炎球菌抗原または断片を含む、項1〜9のいずれかに記載の免疫原性組成物。
11. SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234より選択されるアミノ酸配列を有する、少なくとも3種の肺炎球菌抗原または断片を含む、項1〜10のいずれかに記載の免疫原性組成物。
12. SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234より選択されるアミノ酸配列を有する、少なくとも5種の肺炎球菌抗原または断片を含む、項1〜11のいずれかに記載の免疫原性組成物。
13. SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234より選択されるアミノ酸配列を有する、5〜20種の肺炎球菌抗原またはその断片を含む、項1〜12のいずれかに記載の免疫原性組成物。
14. SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234より選択されるアミノ酸配列を有する、20種を超える肺炎球菌抗原またはその断片を含む、項1〜13のいずれかに記載の免疫原性組成物。
15. 肺炎球菌タンパク質またはタンパク質断片が、肺炎球菌タンパク質SP0785、SP1500、およびSP2145のうちの少なくとも1種である、項1〜14のいずれかに記載の方法。
16. 免疫応答が液性免疫応答を含む、項1〜15のいずれかに記載の方法。
17. 免疫応答が細胞性免疫応答を含む、項1〜15のいずれかに記載の方法。
18. 対象においてIL-17A応答を誘導する方法であって、該対象において肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘導するのに効果的な、項1〜17のいずれかに記載の少なくとも1つの免疫原性組成物を該対象に投与する段階を含む、方法。
19. 肺炎球菌コロニー形成から保護する方法であって、項1〜17のいずれかに記載の少なくとも1つの免疫原性組成物を対象に投与する段階を含む、方法。
20. 哺乳動物において肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘発する方法であって、対象において肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘導するのに効果的な、SEQ ID NO: 1〜76またはSEQ ID NO: 153〜234より選択されるアミノ酸配列を有する、1種または複数種の単離された肺炎球菌抗原またはその断片を含む少なくとも1つの免疫原性組成物を該哺乳動物に投与する段階を含む、方法。
21. 哺乳動物において肺炎連鎖球菌またはチフス菌コロニー形成から保護する方法であって、対象において肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘導するのに効果的な、項1〜17のいずれかに記載の少なくとも1つの免疫原性組成物を該哺乳動物に投与する段階を含む、方法。
22. 免疫原性組成物が、SP0785またはSP1500である少なくとも1種の単離された肺炎球菌抗原またはその断片を含む、項18〜21のいずれかに記載の方法。
23. 肺炎球菌抗原またはその断片が、SEQ ID NO: 34(SP0785)またはSEQ ID NO: 51(SP1500)より選択されるアミノ酸配列を有する、項22に記載の方法。
24. 対象において肺炎連鎖球菌の侵襲性疾患から保護する方法であって、該対象において肺炎連鎖球菌に対する免疫応答を誘導するのに効果的な、項1〜17のいずれかに記載の免疫原性組成物を該対象に投与する段階を含む、方法。
25. 侵襲性疾患が敗血症である、項24に記載の方法。
26. 免疫原性組成物が、SP1386、SP1500、SP0084、およびSP1479、およびSP0346である、少なくとも1種の単離された肺炎球菌抗原またはその断片を含む、項24に記載の方法。
27. 肺炎球菌抗原またはその断片が、SEQ ID NO: 46(SP1386)、SEQ ID NO: 51(SP1500)、SEQ ID NO: 4(SP0084)、SEQ ID NO: 50(SP1479)、およびSEQ ID NO: 15(SP0346) より選択されるアミノ酸配列を有する、項26に記載の方法。
28. 肺炎球菌抗原またはその断片が、肺炎球菌ニューモリソイドPdTと結合している、項18〜27のいずれかに記載の方法。
29. 肺炎球菌抗原またはその断片が、チフス菌のVi多糖と結合している、項18〜27のいずれかに記載の方法。
30. 肺炎球菌抗原またはその断片が、肺炎球菌ニューモリソイドPdTおよびチフス菌のVi多糖と結合している、項18〜29のいずれかに記載の方法。
31. 投与が粘膜投与である、項18〜30のいずれかに記載の方法。
32. 投与が、静脈内、皮下、または腹腔内(IP)投与である、項18〜31のいずれかに記載の方法。
33. 免疫応答が液性免疫応答を含む、項18〜32のいずれかに記載の方法。
34. 免疫応答が細胞性免疫応答を含む、項18〜32のいずれかに記載の方法。
【実施例】
【0365】
材料および方法:
材料: 水酸化アルミニウム(alum)は、Brenntag North Americaから入手した(2%アルヒドロゲル)。Ni-NTA樹脂は、Qiagen社から購入した。CloneEZ PCRクローニングキットは、GenScript Inc.から入手した。全ての他の試薬は、SigmaまたはThermo Fisher Scientificから得た。
【0366】
発現ライブラリーの構築
鋳型としてTIGR4ゲノムDNAを使用して、選択されたタンパク質の細胞外ドメインをPCRにより増幅し、次に、CloneEZ PCRクローニングキットを使用してpET21b発現ベクター中に組み込んだ。シグナル配列および膜貫通配列は、クローニングから除外した。詳細なクローニング領域およびプライマー配列を、表Iに列挙する。異常に大きく(SP0648、SP0664、およびSP1154、250kDaより大きい)、完全長として精製することが困難であることが証明されたタンパク質について、本発明者らは、それらの配列を3つの部分に分割し、各々を個別に精製した。本発明者らは、BCL:: Jufo(http://meilerlab.org/index.php/servers/show?s_id=5)によるそれらの二次構造の予測に基づいてタンパク質を分割し、アミノ酸配列が保存されていない領域で切断部を作製した。かくして、最終的なタンパク質ライブラリーは、80のタンパク質/ペプチドからなる。プラスミド配列は、Genewiz Inc.により検証された。
【0367】
タンパク質精製。関連するクローニングタンパク質を含む大腸菌(E. coli)形質転換体を、OD600=0.6まで増殖させ、0.2mM IPTGを用いて、16℃で一晩、タンパク質発現を誘導した。細胞を沈降させ、ペレットを溶解緩衝液(20mMトリス−HCl、500mM NaCl、pH8.0)中に再懸濁し、次に、超音波処理により溶解した。関心対象のタンパク質をNi-NTAカラムで上清から精製した;タンパク質は、イミダゾール緩衝液中に溶出した。タンパク質を含む溶出液を合わせ、ゲル濾過カラムで精製し、PBS緩衝液中に溶出した。
【0368】
Vi結合体の生成。緩衝液A(0.2M MES、150mM NaCl、pH5.9)中でViを5mg/mlに再懸濁し、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびNHSスルホを、粉末として、4℃で30分間にわたり溶液中に加えた。反応緩衝液を、1M Na
2HP0
4の添加によりpH7.5まで上げた。タンパク質を、次に、2mg/mgタンパク質/糖として反応に加えた。反応は、回転させながら、4℃で48時間にわたり行った。結合体を、Sephacryl S500ゲル濾過カラムを介した溶出および空隙容量分画の回収によって分離した。
【0369】
マウス脾細胞およびヒト末梢血単核細胞(PBMC)の刺激。脾臓を、全細胞ワクチン(WCV)で免疫化したC57BL/6マウス、または肺炎連鎖球菌で繰り返しコロニー形成されたマウスから収集し、細胞懸濁液へと処理し、異なる濃度の組換えタンパク質で刺激した。脾細胞を3日間にわたりインキュベートした;プレートを次に遠心して細胞を沈殿させ、その後上清を回収し、マウスIL-17A ELISAキット(R&D Systems, Inc)を使用してIL-17Aについて評価した。
【0370】
ヒトPBMCを健常成人ボランティアから分離し、96ウェルプレート中で培養した。細胞を異なる濃度の組換えタンパク質で4日間にわたり刺激し、次に、ヒトIL-17A ELISAキット(ebioscience)を使用して上清中のIL-17Aについて分析した。
【0371】
抗原調製物
鼻腔内(i.n.)免疫化について: ワクチンは、最終20μlの生理食塩水中に、マウス1匹当たり精製タンパク質(5μg)と1μgコレラ毒素(CT)を混合することにより、免疫化と同じ日に調製した。皮下(s.c.)免疫化について: 免疫化の1日前に、ワクチンを以下のように調製した。凍結アリコートを解凍し、または凍結乾燥バイアルを無菌水で再構成し、適当な濃度まで希釈し、15mlコニカルチューブ中で、示された濃度で水酸化アルミニウム(alum)と混合し、これを次に4℃で一晩混転させ、吸着を可能にした。
【0372】
マウスの免疫化および攻撃。C57BL/6Jマウスを全ての実験において使用した。初回免疫化時の週齢は、4〜6週間の間であった。i.n.免疫化は、20μlの生理食塩水、アジュバントだけ、または特定された抗原と混合させたアジュバントを無麻酔マウスに非侵襲的に滴下注入することにより行った(肺中に免疫原を入れない手順);二次免疫化は、1週間後に実施した。s.c.免疫化を隔週で3回実施した。穏やかに拘束された非麻酔マウスは、2週間隔で、抗原を有するかまたは有しないアジュバントを含有する200μlの注射を背中の下部分に受けた。血液を最後の免疫化から2週間後に採取し、WCAでの刺激時に、抗体について、およびIL-17A産生についてインビトロで評価した。臨床的な肺炎球菌単離株0603(血清型6B)による鼻咽頭コロニー形成は、以前に記載されたように行った[4]。腹腔内(IP)接種は、200μlのPBS中の1000cfuのWU2-ply株(plyをHisタグ化plyで置換した遺伝子操作株)で実施され、マウスの病気または死亡を14日間にわたり毎日2回モニターした。全ての動物試験が、本発明者らの地域の動物倫理委員会により承認された。
【0373】
全血試料中での酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびIL-17A産生。全血中での個々のタンパク質およびIL-17A産生に関するマウス抗体についてのアッセイを、以前に記載されたように行った[2]。
【0374】
莢膜型Tigr4株への抗体の結合。肺炎連鎖球菌Tigr4株を、OD600=0.8まで増殖させ、遠心分離により回収した。細菌を、58℃で1時間にわたり死滅させ、PBSで2回洗浄した。細菌を、4℃で一晩、回転させながら、1mlのPBS/1% BSAでブロッキングした。細胞を沈降させ、熱不活性化マウス血清の1:50希釈を伴う250μlのPBS-Tween/1% BSA中に再懸濁した。試料を室温(RT)で1時間にわたって回転させ、PBS-Tween/1% BSAで2回洗浄した。抗マウスalexa Fluro 488の1:50希釈を伴う250μlのPBS-Tween/1% BSAを細胞に加え、試料を室温で1時間にわたって回転させた。試料を、PBS-Tween/1% BSAで2回洗浄し、次に500μlのPBS中に再懸濁した。フローサイトメトリーをChildren's Hospital Bostonにおいて実施した。
【0375】
統計分析。抗体およびIL-17A濃度ならびにNPコロニー形成密度は、マン・ホイットニー(Mann-Whitney)のU検定により、PRISM(バージョン4.0a、GraphPad Software, Inc)を使用して比較した。生存における差を、カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)検定で、PRISMも使用して分析した。
【0376】
実施例1
バイオインフォマティクス分析によるタンパク質候補の選択
現在では、統合された微生物ゲノムウェブサイトから入手可能な少なくとも42の肺炎連鎖球菌配列(ワールド・ワイド・ウェブ://img.jgi.doe.gov/cgi-bin/w/main.cgi)がある。配列決定されたTIGR4株から開始し、本発明者らは、予測された分泌シグナルペプチドおよび細胞壁アンカーモチーフについてゲノムを分析した。本発明者らは、TIGR4における分泌シグナルペプチドを有する335のタンパク質、および可能性のある細胞壁アンカーモチーフを有する15のタンパク質を同定した。
【0377】
タンパク質ライブラリーは、さらに、先験的に選ばれた以下のパラメータに基づいて、76のタンパク質に絞られた:
(a)全ての配列決定された肺炎球菌にわたる保存(アミノ酸レベルで90%超の同一性)。
(b)ヒトゲノム中のタンパク質と40%超の相同性を有していた任意のタンパク質の排除。
(c)100アミノ酸より小さい細胞外ドメインを含有するタンパク質の排除。
【0378】
76のタンパク質の内訳は、以下のとおりである:23の仮説タンパク質、基質結合および輸送において役割を果たす17のタンパク質、酵素活性を有する17のタンパク質、および未知のまたは仮説的な機能の他の19のタンパク質。タンパク質およびそれらの配列の完全なリストを表2に示す。
【0379】
(表2)肺炎球菌タンパク質のSEQ ID NO:1-83ならびに単離および増幅用のプライマー配列のリスト。*クローニングのために使用されるアミノ酸残基;末端はC末端を意味する。
【0380】
実施例2
マウス脾細胞およびヒト末梢血単核細胞(PBMC)からの抗原のスクリーニング
80の遺伝子構築物のうち60のタンパク質のクローニングに成功し、次に、大腸菌から精製形態で発現させた。次にこれらのタンパク質を、強力なIL-17A応答をリコールするこれらのタンパク質の能力を評価するために、マウス脾臓細胞またはヒトPBMCのいずれかでの刺激実験において使用した(IL-17A応答の誘発は、肺炎連鎖球菌抗原による免疫原性、およびコロニー形成から保護の予測因子である -(Moffitt KL, Gierahn TM, Lu YJ, et al.T(H)17-Based Vaccine Design for Prevention of Streptococcus pneumoniae Colonization.Cell Host Microbe 2011; 9: 158-65を参照のこと)。
【0381】
マウス脾細胞を3つの供給源から得た: 1. 全細胞ワクチン(WCV)で以前に免疫化されたマウス;2. 10日間にわたり肺炎連鎖球菌の単一株で以前にコロニー形成されたマウス;3. マウスを、肺炎連鎖球菌血清型6B、14F、および19F株で連続的にコロニー形成した。これらの3つの異なるモデルを、推定上の保護表面抗原を同定するために使用した。なぜなら、本発明者らは、これらの抗原がコロニー形成の間に十分に発現され、コロニー形成後に免疫細胞による応答を誘発したか否かを評価したからである。さらに、本発明者らは、表面タンパク質の一部がまた、マウスにおいてコロニー形成および/または侵襲性疾患からの保護を付与し得るか否かを評価した。任意の所与のタンパク質が、コロニー形成、侵襲性疾患、またはその両方からの保護を提供し得る;なぜなら、コロニー形成および侵襲性疾患の両方からの保護が、ワクチン接種の重要な目標であるため、いずれかのモデルにおいて保護を付与する能力の評価が含まれたからである。本発明者らは、一生の間に自然に肺炎球菌に曝露されている全てのヒトが、このタンパク質がヒトでのコロニー形成の間に発現され得るとのより多くの証拠として、タンパク質に応答することもまた可能であるか否かも評価した。異なるスクリーニングにおける各タンパク質への応答が、表3に要約されている(タンパク質が、コロニー形成から保護的であるか否かも含まれており、以下に考察する)。
【0382】
(表3)コロニー形成に対するタンパク質刺激および保護へのIL-17A応答の概要。*タンパク質刺激に応答したIL-17A産生:-、<25pg/ml、+、>25pg/ml、++、>100pg/ml、+++、>250pg/ml、**ND、未決定
【0383】
実施例3
SP0785およびSP1500は、コロニー形成からの保護を提供する
次に、本発明者らは、本発明者らがマウスコロニー形成モデルにおいて保護を提供することができるか否かを見るために14の抗原を試験した。試験される各タンパク質について、5μgの各抗原をアジュバントCTと混合し、毎週2回マウスを免疫化するために使用した。マウスを血清型6B肺炎球菌株で攻撃し、保護については、鼻中での肺炎球菌コロニー形成について、7日後に評価した。2つのタンパク質、SP0785およびSP1500は、アジュバント単独群と比較して有意な保護を示した(SP0785およびSP1500についてp=0.0023およびp=0.0009)(
図1)。試験された他の12の抗原は、このコロニー形成モデルにおいて保護しなかった。
【0384】
実施例4
敗血症攻撃からの保護
同時に、本発明者らは、これらのタンパク質が、免疫原として使用される場合に、侵襲性疾患からの保護を与えることができるか否かを評価した。C57/BL6マウスの群(1群当たりn=10匹のマウス)を、皮下アジュバントとして水酸化アルミニウムを用い、15のタンパク質のいずれかで皮下に免疫化し、次に、遺伝子操作されたWU2株(野生型plyがタグ付きplyで置換されたもの)で、腹腔内(IP)感染モデルにおいて攻撃した。この感染は、感染後3〜4日に始まる対照マウスの80%死亡を導く。表4に要約するように、タンパク質SP0346は、alum群の20%と比較し、免疫化マウスの60%を保護した(p=0.0254)。4種のタンパク質は、マウスの50%を保護した(例えばSP1386、SP1500、SP0084、およびSP1479)。残りの10のタンパク質からの保護は、50%より低かった。
【0385】
(表4)アジュバントとして水酸化アルミニウムを使用する、皮下経路による免疫後の敗血症からの保護
【0386】
実施例5
PdTに融合したタンパク質による、敗血症からの保護
本発明者らは、融合結合体(ここで、肺炎球菌タンパク質は、肺炎球菌ニューモリソイドPdTと遺伝学的に融合され、次に、多糖と共有結合している)での免疫化によって、免疫応答および保護を強化することができることを以前に示している(Lu YJ et al., Protection against Pneumococcal colonization and fatal pneumonia by a trivalent conjugate of a fusion protein with the cell wall polysaccharide.Infect Immun 2009; 77:2076-83.; Lu et al., A bivalent vaccine to protect against Streptococcus pneumoniae and Salmonella typhi.Vaccine 2012; 30:3405-12)。本発明者らは、次に、PdTとの融合タンパク質および、また、チフス菌多糖Viに結合された融合タンパク質中の幾つかの抗原を試験した(タンパク質XおよびPdT、次にViに結合された融合タンパク質について、本発明者らの命名では、X-PdT-Viとなる)。
図2に示すように、SP0785-PdTからなる融合タンパク質での免疫化は、敗血症に対して80%のマウスを保護し、融合タンパク質SP2145-PdTは90%を保護した。保護はPdT単独には起因せず、それは感染マウスのわずか30%を保護し、対照マウスの死亡率と統計的に異ならない。融合タンパク質SP0785-PdT、SP2145-PdT、およびSP1500-PdTは、以前に記載したように、Vi多糖と結合させた。これらのマウスは、全細胞ワクチン(WCV)で刺激した場合、高レベルのIL-17Aを産生し(
図3A)、これら2つのコンストラクトが、肺炎球菌コロニー形成および疾患の両方から保護し得る強い可能性を生じる。
図3Bは、これらの融合結合体がVi多糖に対する頑強な抗体を誘発することも示しており、腸チフス菌からの保護も予測される。
【0387】
融合タンパク質と同様に、SP2145-PdT-ViおよびSP0785-PdT-Viは、alum単独での免疫と比較した場合、マウスを有意に保護した(alum群における20%生存と比較し、いずれの群でも80%生存。いずれの比較についてもP<0.006;
図4)。
【0388】
実施例6
SP0785で免疫化したマウスからの血清は、莢膜型Tigr4株に特異的に結合する
これらの抗原(SP0785、SP1500、SP2145)に対する抗体が、莢膜型肺炎球菌株の表面に結合することができるか否かを試験するために、フローサイトメトリーアッセイを実施した。4型臨床分離株TIGR4株を、後期対数期まで培養し、熱固定した。マウス抗血清の結合は、FITC標識抗マウスIgGにより検出した。
図5に示すように、SP0785(黒)で免疫化したマウスからの血清は、alum単独(灰色)で免疫化したマウスから得た血清と比較した場合、細菌を標識することができ、このことは、抗SP0785抗体が莢膜型肺炎球菌株に結合することができることを示す。
【0389】
要約すると、本発明者らは、肺炎球菌のコロニー形成から保護する2種のタンパク質であるSP0785およびSP1500、ならびに敗血症から保護するSP0346を同定した。融合タンパク質SP0785-PdTおよびSP2145-PdT、あるいは、Viへのこれら2種のタンパク質の結合は、敗血症攻撃に対してマウスを保護した。
【0390】
実施例7
MAPS複合体は、ビオチン化1型肺炎球菌多糖を使用して、リザビジンおよびSP0785、SP1500、SP0435、またはPdTからなる融合タンパク質と結合させて作製した。C57/BL6マウスを、水酸化アルミニウム上の、各抗原6.7μgという投薬量で、SP0785、SP1500、およびPdTを含む3MAPS複合体の混合物、または上記の全ての4MAPS複合体の混合物で免疫化した。対照マウスは、水酸化アルミニウム単独(alum、陰性対照)またはalum中の全細胞ワクチン(陽性対照として)のいずれかを受けた。免疫化を、皮下に3回、2週間離して実施した。血液を3回目の免疫後に採取し、10μg/mlの肺炎連鎖球菌の全細胞抗原、または5μg/mlの精製SP0785、SP1500、もしくはPdTタンパク質で刺激した。抗原特異的または全細胞(WCB)IL-17A産生を、刺激から7日後、ELISAにより測定した(
図6A)。採血から1週間後にマウスを肺炎球菌603B株で攻撃し、鼻中での細菌のコロニー形成率を、攻撃から10日後に決定した(
図6B)。3MAPS複合体または4MAPS複合体のいずれかの免疫化を受けたマウスは、肺炎球菌のコロニー形成から保護された。
【0391】
C57BL/6マウスを、2週間の間隔で、皮下に3回、alumに吸着させた5μgのタンパク質抗原(チフス菌のVi多糖に結合させたSP0785、SP1500、およびPdTの融合タンパク質)を含むワクチンで免疫化した。対照マウスは、alum単独を受けた。最後の免疫化から2週間後、マウス鼻腔内を肺炎球菌603B株で攻撃し、鼻中での細菌のコロニー形成率を鼻洗浄により決定した。融合結合体で免疫化したマウスは、対照群のマウスと比較して、肺炎球菌のコロニー形成に対して有意に保護された(
図7)。
【0392】
ニュージーランド白ウサギを、精製SP0785、SP1500、またはPdTで免疫化した。ウサギの免疫前 対 免疫後の各血清の等量混合物(この場合、各々67μl)を、腹腔内経路を介して、10匹のマウスの群に与えた。次にマウスを、24時間後に血清型3株で腹腔内感染させ、マウスの生存を8日間にわたりモニターした。免疫前血清群での0%生存率と比較して、免疫後血清を受けた群は60%の生存率を有し(高度に統計的に有意であった差)、肺炎球菌侵襲性疾患についてのこれらのタンパク質に対する抗体の保護能力が証明される(
図8)。
【0393】
参考文献
本明細書に記載する全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0394】
配列: