特許第6494533号(P6494533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6494533細胞結合剤及び細胞毒性剤としてのマイタンシノイドを含む複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494533
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】細胞結合剤及び細胞毒性剤としてのマイタンシノイドを含む複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20190325BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20190325BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   A61K47/69
   A61K31/537
   C07D401/12
【請求項の数】30
【全頁数】88
(21)【出願番号】特願2015-560359(P2015-560359)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-514103(P2016-514103A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】US2014019502
(87)【国際公開番号】WO2014134483
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年2月28日
(31)【優先権主張番号】61/770,794
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504039155
【氏名又は名称】イミュノジェン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】ウィジソン,ウェイン・シー
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−519864(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/031243(WO,A1)
【文献】 Cancer Research, 2006, Vol. 66, No. 8, pp. 4426-4433
【文献】 Bioconjugate Chemistry, 2010, Vol. 21, No. 1, pp. 84-92
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry, 2011, Vol. 54, No. 10, pp. 3606-3623
【文献】 Bioconjugate Chemistry, 2011, Vol. 22, No. 4, pp. 717-727
【文献】 Chemical Biology & Drug Design, 2013.01, Vol. 81, No. 1, pp. 113-121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/69
A61K 31/537
C07D 401/12
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】
により表される複合体、またはその薬学的に許容できる塩であって、
式中、
CBAは細胞結合剤であり;
DMは以下の式:
【化2】
により表される薬物部であり;
およびRは、独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
nは0〜10の整数であり;
CB’は、
【化3】
であり、s1は前記CBAに共有結合する部位であり、s2は(CR1011基に共有結合する部位であり;
Zは−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−(CHCHO)−もしくは−NR−C(=O)−(CHCHO)−であり;
pは1〜1000の整数であり;
QはH、または−SOHもしくはその塩であり;
、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
q及びrはそれぞれ独立して0〜10の整数であり;ならびに
wは1〜20の整数である
前記複合体、またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
Zが−C(=O)−NR−または−NR−C(=O)−である請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
、R10、R11、R12およびR13すべてHであり;qが0または1〜5の整数であり;および、rが1〜5の整数である;請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
およびRがともにメチルであり;および、nが2である;請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
以下の式:
【化4】
のいずれか1つにより表される請求項1記載の複合体、またはその薬学的に許容できる塩であって、式中、
pが1〜24の整数であり;および、
DMが以下の式:
【化5】
により表される薬物部である前記複合体、またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
前記細胞結合剤が抗体、単鎖抗体、標的細胞に特異的に結合する抗体断片、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体、標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片、キメラ抗体、標的細胞に特異的に結合するキメラ抗体断片、ドメイン抗体、標的細胞に特異的に結合するドメイン抗体断片、リンホカイン、ホルモン、ビタミン、増殖因子、コロニー刺激因子または栄養輸送分子である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
前記細胞結合剤がモノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体または標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片である請求項6記載の複合体。
【請求項8】
前記抗体が表面再形成抗体、表面再形成単鎖抗体または表面再形成抗体断片である請求項6または7に記載の複合体。
【請求項9】
前記抗体がヒト化抗体、ヒト化単鎖抗体またはヒト化抗体断片である請求項6〜8のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項10】
以下の式:
【化6】
により表される細胞毒性化合物またはその塩であって、
式中、
DMは以下の式:
【化7】
により表される薬物部であり;
およびRは、独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
nは0〜10の整数であり;
CBは、マレイミド(
【化8】
)であり;
Zは−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−(CHCHO)−もしくは−NR−C(=O)−(CHCHO)−であり;
pは1〜1000の整数であり;
QはH、または−SOHもしくはその塩であり;
、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;ならびに
q及びrはそれぞれ独立して0〜10の整数である
前記細胞毒性化合物またはその塩。
【請求項11】
Zが−C(=O)−NR−または−NR−C(=O)−である請求項10に記載の細胞毒性化合物。
【請求項12】
、R10、R11、R12およびR13すべてHであり;qが0または1〜5の整数であり;および、rが1〜5の整数である;請求項11に記載の細胞毒性化合物。
【請求項13】
およびRがともにメチルであり;および、nが2である;請求項10〜12のいずれか1項に記載の細胞毒性化合物。
【請求項14】
以下の式:
【化9】
のいずれか1つにより表される請求項10記載の細胞毒性化合物、またはその塩であって、式中、
pが1〜24の整数であり;および、
DMが以下の式:
【化10】
により表される薬物部である前記細胞毒性化合物、またはその塩。
【請求項15】
以下の式:
【化11】
により表されるリンカー化合物またはその塩であって、
式中、
CBは、マレイミド(
【化12】
)であり;
Zは−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−(CHCHO)−もしくは−NR−C(=O)−(CHCHO)−であり;
pは1〜1000の整数であり;
QはH、または−SOHもしくはその塩であり;
、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
q及びrはそれぞれ独立して0〜10の整数であり;ならびに
は−SH、−SSRまたは−SC(=O)Rであり、Rはフェニル、ニトロフェニル、ジニトロフェニル、カルボキシニトロフェニル、ピリジルまたはニトロピリジルであり;及び、Rはアルキルである;
前記リンカー化合物またはその塩。
【請求項16】
が−SHまたは−SSRである請求項15に記載のリンカー化合物。
【請求項17】
Zが−C(=O)−NR−または−NR−C(=O)−である請求項15または16に記載のリンカー化合物。
【請求項18】
、R10、R11、R12およびR13すべてHであり;qが0または1〜5の整数であり;および、rが1〜5の整数である;請求項15〜17のいずれか1項に記載のリンカー化合物。
【請求項19】
以下の式:
【化13】
のいずれか1つにより表される請求項15記載のリンカー化合物、またはその塩であって、Jが−SSRである前記リンカー化合物、またはその塩。
【請求項20】
請求項1〜のいずれか1項に記載の複合体または請求項10〜14のいずれか1項に記載の化合物;及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項21】
哺乳動物におけるがんを治療するための医薬組成物であって、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合体、請求項10〜14のいずれか1項に記載の化合物、または請求項2記載の組成物;及び任意に第2治療薬;の治療有効量を含む、前記医薬組成物。
【請求項22】
以下の式:
【化14】
により表される修飾細胞結合剤またはその塩であって、
式中、
CBAは細胞結合剤であり;
CB’は、
【化15】
であり、s1は前記CBAに共有結合する部位であり、s2は(CR1011基に共有結合する部位であり;
Zは−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−(CHCHO)−もしくは−NR−C(=O)−(CHCHO)−であり;
pは1〜1000の整数であり;
QはH、または−SOHもしくはその塩であり;
、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
q及びrはそれぞれ独立して0〜10の整数であり;
は−SH、−SSRまたは−SC(=O)Rであり、Rはフェニル、ニトロフェニル、ジニトロフェニル、カルボキシニトロフェニル、ピリジルまたはニトロピリジルであり;及び、Rはアルキルであり;ならびに
wは1〜20の整数である
前記修飾細胞結合剤またはその塩。
【請求項23】
が−SHまたは−SSRである請求項22に記載の修飾細胞結合剤。
【請求項24】
Zが−C(=O)−NR−または−NR−C(=O)−である請求項22または23に記載の修飾細胞結合剤。
【請求項25】
、R10、R11、R12およびR13すべてHであり;qが0または1〜5の整数であり;および、rが1〜5の整数である;請求項22〜24のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。
【請求項26】
以下の式:
【化16】
のいずれか1つにより表される請求項22に記載の修飾細胞結合剤、またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項27】
前記細胞結合剤が抗体、単鎖抗体、標的細胞に特異的に結合する抗体断片、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体、標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片、キメラ抗体、標的細胞に特異的に結合するキメラ抗体断片、ドメイン抗体、標的細胞に特異的に結合するドメイン抗体断片、リンホカイン、ホルモン、ビタミン、増殖因子、コロニー刺激因子または栄養輸送分子である請求項22〜26のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。
【請求項28】
前記細胞結合剤がモノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体または標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片である請求項27記載の修飾細胞結合剤。
【請求項29】
前記抗体が表面再形成抗体、表面再形成単鎖抗体または表面再形成抗体断片である請求項27または28に記載の修飾細胞結合剤。
【請求項30】
前記抗体がヒト化抗体、ヒト化単鎖抗体またはヒト化抗体断片である請求項27〜29のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2013年2月28日に提出した米国仮特許出願第61/770,794号の提出日に基づく優先権を主張する。該仮出願の全内容は、参照により本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
抗体−薬物複合体(ADC)及び細胞結合剤−薬物複合体は、広範囲のがんわたり有効性を有する強力なクラスの抗腫瘍剤として出現してきている。細胞結合剤−薬物複合体(ADCs等)は一般的に3つの異なる要素:細胞結合剤(抗体等);リンカー;及び細胞毒性部で構成されている。ADCのリンカー成分は、最適な治療濃度域を有する標的抗がん剤、すなわち無毒性の低投与量で治療活性を有する標的抗がん剤の開発において重要な要素である。
【0003】
したがって、新しいクラスのリンカー成分を有する、ADCsや他の細胞結合剤−薬物複合体等の標的治療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1実施形態は、以下の式により表される複合体またはその薬学的に許容できる塩を特徴とする。
【化1】
【0005】
上記の式(I)において、CBAは細胞結合剤であり;DMは以下の式:
【化2】
により表される薬物部であり、R、R’及びR’’はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;Yは‐(CRCR‐であり;R〜Rはそれぞれ独立してH、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたヘテロアリールであり;nは0〜15の整数であり;ならびに、wは1〜20の整数である。一実施形態においては、式(I)の複合体で、CBAは、本発明の細胞毒性化合物との複合化に使用される遊離チオール(‐SH)基を有する修飾リジンアミノ酸残基を含まない。
【0006】
本発明の第2実施形態は、以下の式により表される複合体またはその薬学的に許容できる塩を特徴とする。
【化3】
【0007】
上記の式(III)または(III’)において、JCB’は、
【化4-1】
【化4-2】
であり、s1はCBAに共有結合する部位であり、s2は式(III)または(III’)の(CR1011基に共有結合する部位であり、ならびに、Arは任意に置換されたアリーレンまたは任意に置換されたヘテロアリーレンであり;R、R、R及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;Zは存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR‐(CHCHO)‐、‐NR‐C(=O)‐(CHCHO)‐、‐(OCHCH‐C(=O)NR‐もしくは‐(OCHCH‐NR‐C(=O)‐であり;pは1〜1000(好ましくは1〜24、2〜8、2〜4、または2、4、8もしくは24)の整数であり;式(III’)において、Zは存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐(CHCHp’NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR(CHCHp’、‐(CHCHp’‐C(=O)NR‐、‐NRC(=O)(CHCHp’‐、‐C(=O)‐O‐もしくは‐O‐C(=O)‐であり;p’は1〜10(好ましくは1〜5、より好ましくは2、3または4)の整数であり;QはH、電荷をもつ置換基、またはイオン化できる基であり;R、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;q及びrはそれぞれ独立して0〜10の整数であり;Cyは任意に置換されたシクロアルキンまたは任意に置換されたヘテロシクロアルキンの非アルキン残基であり(以下の第4実施例を参照のこと);R201、R202及びR203はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり(好ましくは、R201、R202及びR203は全てHであるか;またはR201が‐CHであり、且つR202及びR203が両方ともにHであり);Zはピリジルまたは
【化5】
であり、R204及びR205はそれぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり(好ましくは、R204及びR205は両方ともにメチルまたはエチルであり)、ならびに、Cy’は任意に置換されたひずんだシクロアルケンまたは任意に置換されたひずんだヘテロシクロアルケンの非アルケン残基であり(以下の第4実施形態を参照のこと);ならびに、R301はHまたは任意に置換されたアルキルである(好ましくは、R301はHである)。残りの変数は、第1実施形態において規定されるとおりである。
【0008】
本発明の第3実施形態は、以下の式により表される細胞毒性化合物またはその塩(例えば薬学的に許容できる塩等)を特徴とする。
【化6】
【0009】
上記の式(IV)または(IV’)において、JCBは、マレイミド(
【化7】
)、X’‐CR‐C(=O)‐、X’‐CR‐C(=O)‐NR‐、R‐C(=O)‐、R‐C(=O)‐Ar‐、NH‐NR‐、NH‐NR‐C(=O)‐、NH‐NR‐Ar‐、NH‐O‐、
【化8-1】
‐C≡CH、
【化8-2】
‐N3、
【化8-3】
であり、X’はハロゲンであり、
【化9】
は任意に置換されたシクロアルキンまたは任意に置換されたヘテロシクロアルキンであり、
【化10】
は任意に置換されたひずんだシクロアルケンまたは任意に置換されたひずんだヘテロシクロアルケンであり、残りの変数は、上記の第2実施形態において規定されるとおりである。好ましくは、
【化11】
は、任意に置換されたシクロアルキンまたは任意に置換されたヘテロシクロアルキンであり、それらはアジドと直ちに反応して銅を含まないクリック化学によりトリアゾールを形成することができるか、またはテトラジンと直ちに反応することができる(例えば、J.Am.Chem.Soc.(2012)134:9199−9208;WO2011/136645;US2009/0068738、Lang K.ら、J.Am.Chem.Soc.(2012)134:10317−10320を参照のこと。これらの参考文献の全ての教示はその全体が本明細書に取り込まれる)。より好ましくは、
【化12】
はシクロオクチンである。他の好ましい実施形態においては、
【化13】
は、
【化14】
である。
【0010】
本発明の第4実施形態は、以下の式により表されるリンカー化合物またはその塩(例えば薬学的に許容できる塩等)を特徴とする。
【化15】
【0011】
式(V)または(V’)において、JはSH、SSRまたは‐S‐C(=O)Rであり、Rはフェニル、ニトロフェニル、ジニトロフェニル、カルボキシニトロフェニル、ピリジルまたはニトロピリジルであり;及び、Rはアルキルであり;ならびに、残りの変数は上記の第3実施形態において規定されるとおりである。
【0012】
本発明の第5実施形態は、以下の式により表される修飾細胞結合剤またはその塩(例えば薬学的に許容できる塩等)を特徴とする。
【化16】
【0013】
式(VI)または(VI’)において、Jは第4実施形態において規定されるとおりであり、残りの変数は上記の第2実施形態において規定されるとおりである。
【0014】
代替実施形態においては、式(III’)、(III)、(IV’)、(IV)、(V’)、(V)、(VI’)または(VI)において、Arはフェニレンである。他の代替実施形態においては、式(III)、(III’)、(IV’)、(IV)、(V’)、(V)、(VI’)または(VI)において、q及びrはそれぞれ独立して2〜5の整数である。さらに他の代替実施形態においては、式(III’)、(III)、(IV’)、(IV)、(V’)、(V)、(VI’)または(VI)において、Arはフェニレンであり、ならびに、q及びrはそれぞれ独立して2〜5の整数である。上記の各代替実施形態における残りの変数は、第1、第2、第3、第4または第5実施形態において規定されるとおりである。
【0015】
他の代替実施形態においては、式(III)、(IV)、(V)または(VI)において、Zは存在しないか、または‐C(=O)NR‐もしくは‐NRC(=O)‐である。あるいは、Zは存在しない。他の代替においては、Zは‐NRC(=O)‐である。他の代替においては、Zは、‐NR‐C(=O)‐(CHCHO)‐または‐(OCHCH‐C(=O)NR‐である。
【0016】
式(I)、(III’)もしくは(III)により表される複合体、式(IV’)もしくは(IV)により表される細胞毒性化合物、またはそれらの塩(例えば薬学的に許容できる塩等)を含む組成物(例えば医薬組成物等)も本発明の範囲内である。この組成物は担体(例えば薬学的に許容できる担体等)も含んでよい。この組成物は第2治療薬(例えば化学療法薬)をさらに含むことができる。
【0017】
本発明には、異常細胞増殖を阻害する方法、または哺乳動物(例えばヒト等)において増殖性障害、破壊性骨障害、自己免疫性障害、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、免疫不全、炎症性疾患、感染症、ウイルス性疾患、線維性疾患、神経変性障害、膵炎もしくは腎疾患を治療する方法も含まれる。これらの方法は、式(I)、(III’)もしくは(III)のいずれか1つにより表される複合体、式(IV’)もしくは(IV)により表される細胞毒性化合物、またはそれらの塩(例えば薬学的に許容できる塩等)の治療有効量を、上記の哺乳動物に投与することを含む。
【0018】
関連実施形態においては、上記の方法は、第2治療薬(例えば化学療法薬等)を順次にまたは連続して、上記の哺乳動物に投与することをさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これより、本発明の特定の実施形態について詳細に言及し、その実施例を添付の構造及び式で説明する。本発明を、列挙する実施形態と共に記載するが、本発明がそれらによって、それらの実施形態に限定されることを意図するものではないことが理解されるであろう。これに反して、本発明は全ての代替、改造及び同等物を包含することを意図するものであり、特許請求の範囲によって規定されるとおり、それらは本発明の範囲に含まれてもよい。本明細書において記載される方法及び物質と類似または同等な、多くの方法及び物質を当業者が認識するであろう。それらを本発明の実施において使用し得る。
【0020】
明確に否認されない限り、または明らかに不適当でない限り、本発明の異なる態様(例えば、化合物、複合体、組成物、作製方法及び使用方法等)において記載される実施形態、ならびに明細書の異なる部分において記載される実施形態(実施例においてのみ記載される実施形態を含む)を含む、本明細書において記載されるいずれの実施形態も、1個以上の本発明の他の実施形態と組み合わせることができることが理解される必要がある。実施形態の組合せは、多項従属請求項により請求される特定の組合せに限定されない。
【0021】
規定
本明細書において使用する場合、「アルキル」は、1〜20個の炭素原子の、1価の直鎖または分岐飽和炭化水素ラジカルを指す。「1価」とは、アルキルが、分子の残りの部分と1点で結合することを意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、1‐プロピル、2‐プロピル、1‐ブチル、2‐メチル‐1‐プロピル、‐CHCH(CH、2‐ブチル、2‐メチル‐2‐プロピル、1‐ペンチル、2‐ペンチル、3‐ペンチル、2‐メチル‐2‐ブチル、3‐メチル‐2‐ブチル、3‐メチル‐1‐ブチル、2‐メチル‐1‐ブチル、1‐ヘキシル、2‐ヘキシル、3‐ヘキシル、2‐メチル‐2‐ペンチル、3‐メチル‐2‐ペンチル、4‐メチル‐2‐ペンチル、3‐メチル‐3‐ペンチル、2‐メチル‐3‐ペンチル、2,3‐ジメチル‐2‐ブチル、3,3‐ジメチル‐2‐ブチル、1‐ヘプチル及び1‐オクチル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは、アルキル基は1〜10個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキル基は1〜4個の炭素原子を有する。
【0022】
本明細書において使用する場合、「アルキレン」は、1〜20個の炭素原子の、2価の直鎖または分岐飽和炭化水素ラジカルを指す。アルキレンの例としては、上で例示したアルキル基と同じコア構造を有するものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。「2価」とは、アルキレンが、分子の残りの部分と2点で結合することを意味する。好ましくは、アルキレン基は1〜10個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキレン基は1〜4個の炭素原子を有する。
【0023】
本明細書において使用する場合、明白にそうではないと他に示さない限り、x「〜」yの整数はx及びyを含む。例えば1〜5の整数は、1、2、3、4または5であることができる。
【0024】
「環式アルキル」及び「シクロアルキル」という用語は、互換に使用することができる。それらは1価の飽和炭素環式環ラジカルを指す。「1価」とは、シクロアルキルが、分子の残りの部分と1点で結合することを意味する。飽和炭素環式環は、単環式または二環式(縮合二環式、架橋二環式またはスピロ二環式)であることができる。好ましくは、シクロアルキルは3〜7員単環式環ラジカルである。7〜12個の原子を有する二環式シクロアルキルを、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系として配置することができ、9または10個の環原子を有する二環式シクロアルキルを、ビシクロ[5,6]もしくは[6,6]系、またはビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン及びビシクロ[3.2.2]ノナン等の架橋系として配置することができる。二環式シクロアルキルには、1個の原子のみを介して結合する環を有するスピロシクロアルキルも含まれる。単環式シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。より好ましくは、シクロアルキルはシクロヘキシルである。
【0025】
本明細書において使用する場合、「シクロアルキレン」は、単環式環として3〜12個の炭素原子を有するか、または二環式環として7〜12個の炭素原子を有する2価の飽和炭素環式環ラジカルを指す。「2価」とは、シクロアルキレンが、分子の残りの部分と2点で結合することを意味する。好ましくは、シクロアルキレンは3〜7員の単環式である。環式アルキレン基の例としては、上で例示したシクロアルキル基と同じコア構造を有するものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。より好ましくは、シクロアルキレン基はシクロヘキシレンである。
【0026】
本明細書において使用する場合、「シクロアルキン」は、1個以上の三重結合を有する炭素環式環を指す。シクロアルキンは単環式、二環式または三環式であることができ、二環式及び三環式は、架橋または縮合であることができる。炭素環式環は、任意に1個以上の二重結合を含有し、かつ/または任意に1個以上の芳香環(例えばフェニル環等)もしくは芳香族複素環と縮合している。シクロアルキンの例としては、J.Am.Chem.Soc.(2012)134:9199−9208;WO2011/136645、US2009/0068738、Lang K.ら、J.Am.Chem.Soc.(2012)134:10317−10320に記載されているもの、例えばシクロオクチン、モノフルオロシクロオクチン、ジフルオロオクチン、DIFO、DIFO、DIFO、ビシクロ[6.1.0]ノナ‐4‐イン、ベンゾシクロオクチン、ジフルオロベンゾシクロオクチン、ジベンゾシクロオクチン、DIBO、ならびにDebets,M.F.ら、Acc.Chem.Res.,(2011)44(9):805-815;及びGold B.ら、J.Am.Chem.Soc.(2013)135(4):1558-1569に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、シクロアルキンはシクロオクチンである。
【0027】
本明細書において使用する場合、「ヘテロシクロアルキン」は、1個以上の三重結合を有する複素環式環を指す。ヘテロシクロアルキンの例としては、ジベンゾアザシクロオクチン(DIBAC)、ビアリールアザシクロオクチノン(BARAC)、チアシクロオクチン、チアベンゾシクロオクチン、チアシクロヘプチン及びテトラメチルチアシクロヘプチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において使用する場合、「ひずんだシクロアルケン」は、1個以上の二重結合を有し、1個以上の二重結合がトランス配置であり、構造的な制約により強制的に、ひずんでいないアルケンの典型的な角度120°とは異なる結合角を有する炭素環式環を指す。ひずんだシクロアルケンは、ひずんでいないアルケンよりも反応性が高い。ひずんだシクロアルケンの例としては、トランス‐シクロオクテン、ノルボルネン及びDebets,M.F.ら、Acc.Chem.Res.(2011)44(9):805-815において記載される他のシクロアルケンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本明細書において使用する場合、「ひずんだヘテロシクロアルケン」は、1個以上の二重結合を有し、1個以上の二重結合がトランス配置であり、構造的な制約により強制的に、ひずんでいないヘテロシクロアルケンの典型的な角度120°とは異なる結合角を有する複素環式環を指す。ひずんだヘテロシクロアルケンは、ひずんでいないヘテロシクロアルケンよりも反応性が高い。
【0030】
「アリール基」という用語は、6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素環系を意味する。「アリール」という用語は、「アリール環」「芳香環」「アリール基」及び「芳香族基」という用語と互換に使用してもよい。「アリール基」は、シクロアルキル基等の非芳香族炭素環式環と縮合した芳香族炭化水素環系も含む。例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、1,2‐ジヒドロナフチル、1,2,3,4‐テトラヒドロナフチル、フルオレニル、インダニル及びインデニル等が挙げられる。アリール基は1価であり、すなわち分子の残りの部分と1点で結合する。「置換アリール基」は、1個以上の任意の置換可能な環原子において置換されており、この環原子は水素に結合した環炭素原子である。
【0031】
本明細書において使用する場合、「アリーレン」は2価のアリール基を指し、すなわち分子の残りの部分と2点で結合するアリール基である。「2価」とは、アリーレンが、分子の残りの部分と2点で結合することを意味する。アリール基及びアリーレン基は両方ともに、本明細書において「Ar」によって表されることもある。アリーレンは好ましくはフェニレンである。
【0032】
「ヘテロアリール」(「ヘテロ芳香族」、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、「芳香族複素環」及び「ヘテロ芳香族基」と互換に使用する)は、炭素及び1個以上(典型的には1〜4個、より典型的には1または2個)のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素または硫黄)から選択される5〜14個の環原子を有する芳香族環系を指す。「ヘテロアリール」には、単環式環及び単環式芳香族複素環が1個以上の他の芳香環または芳香族複素環と縮合している多環式環(例えば二環式等)が含まれる。よって、「5〜14員ヘテロアリール」には、単環式、二環式または三環式環系が含まれる。ヘテロアリールは1価であり、これは分子の残りの部分と1点で結合することを意味する
【0033】
「単環式5〜6員ヘテロアリール」とは、炭素及び1個以上(典型的には1〜3個、より典型的には1または2個)のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素または硫黄)から選択される5〜6個の環原子を有する単環式芳香環系を意味する。単環式5〜6員ヘテロアリール基の例としては、フラニル(例えば、2‐フラニル、3‐フラニル)、イミダゾリル(例えば、N‐イミダゾリル、2‐イミダゾリル、4‐イミダゾリル、5‐イミダゾリル)、イソオキサゾリル(例えば、3‐イソオキサゾリル、4‐イソオキサゾリル、5‐イソオキサゾリル)、オキサジアゾリル(例えば、2‐オキサジアゾリル、5‐オキサジアゾリル)、オキサゾリル(例えば、2‐オキサゾリル、4‐オキサゾリル、5‐オキサゾリル)、ピラゾリル(例えば、3‐ピラゾリル、4‐ピラゾリル)、ピロリル(例えば、1‐ピロリル、2‐ピロリル、3‐ピロリル)、ピリジル(例えば、2‐ピリジル、3‐ピリジル、4‐ピリジル)、ピリミジニル(例えば、2‐ピリミジニル、4‐ピリミジニル、5‐ピリミジニル)、ピリダジニル(例えば、3‐ピリダジニル)、チアゾリル(例えば、2‐チアゾリル、4‐チアゾリル、5‐チアゾリル)、イソチアゾリル、トリアゾリル(例えば、2‐トリアゾリル、5‐トリアゾリル)、テトラゾリル(例えばテトラゾリル)、及びチエニル(例えば、2‐チエニル、3‐チエニル)が挙げられる。多環式芳香族ヘテロアリール基の例としては、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、インダゾリル、イソインドリル、アクリジニルまたはベンズイソオキサゾリルが挙げられる。「置換アリール基」は、1個以上の任意の置換可能環原子において置換されており、この環原子は水素に結合した環炭素原子または環窒素原子である。
【0034】
本明細書において使用する場合、「ヘテロアリーレン」は2価のヘテロアリールを指し、すなわち分子の残りの部分と2点で結合するヘテロアリールである。
【0035】
「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式」及び「複素環式環」という用語は、本明細書において互換に使用され、飽和または不飽和の非芳香族3〜12員環ラジカルを指し、任意に1個以上の二重結合を含有する。「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式」及び「複素環式環」は、単環式、二環式または三環式であることができ、二環式及び三環式は、架橋または縮合であることができる。複素環は1〜4個のヘテロ原子を含有し、ヘテロ原子は同じであるかまたは異なってもよく、N、OまたはSより選択される。複素環は任意に1個以上の二重結合を含有し、かつ/または任意に1個以上の芳香環(例えば、フェニル環)もしくは芳香族複素環と縮合している。「3〜7員単環式複素環」とは、3〜7個の原子(1〜3個のヘテロ原子を含む)が1個の単環式環に配置したラジカルを意味する。「複素環」という用語は、可能な全異性体型を含むことを意図する。複素環は3〜7個の環員(例えば、2〜6個の炭素原子ならびにN、O、P及びSより選択される1〜4個のヘテロ原子)を有する単環であってもよく、または7〜10個の環員(例えば、4〜9個の炭素原子ならびにN、O、P及びSより選択される1〜6個のヘテロ原子)を有する二環であってもよく、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系である。複素環は、Paquette,Leo A.、Principles of Modern Heterocyclic Chemistry(W.A.Benjamin、New York、1968年)、特に1、3、4、6、7及び9章;The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs(John Wiley&Sons、New York、1950年〜現在)、特に13、14、16、19及び28巻;ならびにJ. Am. Chem. Soc.(1960)82:5566において記載されている。
【0036】
複素環式環の例としては、アジリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピロリル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2‐ピロリニル、3‐ピロリニル、インドリニル、イソインドリニル、2H‐ピラニル、4H‐ピラニル、ジオキサニル、1,3‐ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3‐アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3‐アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル及びアザビシクロ[2.2.2]ヘキサニルが挙げられるがこれらに限定されるものではない。スピロ部もこの規定の範囲に含まれる。環原子がオキソ(=O)部で置換された複素環基の例は、ピリミジノニル及び1,1‐ジオキソ‐チオモルホリニルである。
【0037】
複素環基、ヘテロアリール基またはヘテロアリーレン基は、可能であるならば、炭素に結合(炭素‐連結)または窒素に結合(窒素‐連結)してもよい。例として、炭素結合複素環基、ヘテロアリール基またはヘテロアリーレン基は、ピリジンの2、3、4、5または6位で、ピリダジンの3、4、5または6位で、ピリミジンの2、4、5または6位で、ピラジンの2、3、5または6位で、フラン、テトラヒドロフラン、チオフェン、ピロールもしくはテトラヒドロピロールの2、3、4または5位で、オキサゾール、イミダゾールもしくはチアゾールの2、4または5位で、イソオキサゾール、ピラゾールもしくはイソチアゾールの3、4または5位で、アジリジンの2または3位で、アゼチジンの2、3または4位で、キノリンの2、3、4、5、6、7または8位で、またはイソキノリンの1、3、4、5、6、7または8位で結合しているが、これらに限定されるものではない。
【0038】
例として、窒素結合複素環基、ヘテロアリール基またはヘテロアリーレン基は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2‐ピロリン、3‐ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2‐イミダゾリン、3‐イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2‐ピラゾリン、3‐ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H‐インダゾールの1位で、イソインドールまたはイソインドリンの2位で、モルホリンの4位で、及びカルバゾールまたはO‐カルボリンの9位で結合しているが、これらに限定されるものではない。
【0039】
ヘテロアリール、ヘテロアリーレンまたはヘテロシクリルに存在するヘテロ原子には、NO、SO及びSO等の酸化形態が含まれ得る。
【0040】
「ハロゲン」はF、Cl、BrまたはIを指す。
【0041】
「任意に置換された」として基が記載されている場合、その基は(1)置換されていないか、または(2)置換されているかのいずれかであってもよい。1個以上の一覧の置換基で任意に置換されたとして基の炭素が記載されている場合、1個以上の炭素原子上の水素原子(存在する範囲まで)が、独立して選択された任意の置換基で別々に置換されてもよく、かつ/または共に置換されてもよい。
【0042】
アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルケン、ヘテロシクロアルケン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルキン、シクロアルキレン、アリーレン及びヘテロアリーレンに対する好適な置換基は、複合体の生物学的活性に有意に不利に影響しないものである。他に明記されない限り、これらの基に対する例示的置換基には、1〜10個の炭素原子を有する直鎖、分岐または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ハロゲン、グアニジウム[‐NH(C=NH)NH]、‐OR100、NR101102、‐NO、‐NR101COR102、‐SR100、‐SOR101により表されるスルホキシド、‐SO101により表されるスルホン、スルホン酸塩‐SOM、硫酸塩‐OSOM、‐SONR101102により表されるスルホンアミド、シアノ、アジド、‐COR101、‐OCOR101、‐OCONR101102及びポリエチレングリコールユニット(‐OCHCH101が含まれ、MはHまたは陽イオン(NaもしくはK等)であり;R101、R102及びR103はそれぞれ独立してH、1〜10個の炭素原子を有する直鎖、分岐または環式のアルキル、アルケニルまたはアルキニル、nが1〜24の整数であるポリエチレングリコールユニット(‐OCHCH104、6〜10個の炭素原子を有するアリール、3〜10個の炭素原子を有する複素環式環、及び5〜10個の炭素原子を有するヘテロアリールから選択され;R104はHまたは1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキルであり、R100、R101、R102、R103及びR104によって表される基におけるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、ハロゲン、‐OH、‐CN、‐NO及び1〜4個の炭素原子を有する非置換直鎖または分岐アルキルから独立して選択される1個以上(例えば、2、3、4、5、6以上)の置換基で任意に置換されている。好ましくは、上記の任意に置換されたアルキル、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン及びヘテロアリーレンに対する置換基は、ハロゲン、‐CN、‐NR101102、‐CF、‐OR100、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、‐SR101、‐SOR101、‐SO101及び‐SOMから成る群より選択される。あるいは、好適な置換基は、‐ハロゲン、‐OH、‐NO、‐CN、C1−4アルキル、‐OR100、NR101102、‐NR101COR102、‐SR100、‐SO101、‐SONR101102、‐COR101、‐OCOR101及び‐OCONR101102から成る群より選択され、R100、R101及びR102はそれぞれ独立して‐HまたはC1−4アルキルである。
【0043】
本明細書において使用する場合、「アルケニル」は、1個以上の炭素‐炭素二重結合を有する、2〜20個の炭素原子の、1価の直鎖または分岐脂肪族炭化水素ラジカルを指す。アルケニルラジカルには、「シス」及び「トランス」配置、または代替命名法で「E」及び「Z」配置を有するラジカルが含まれる。「1価」とは、アルケニルが、分子の残りの部分と1点で結合することを意味する。例としては、エチレニルまたはビニル(‐CH=CH)、及びアリル(‐CHCH=CH)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは、アルケニルは2〜10個の炭素原子を有し、これを「C2−10アルケニル」とも呼ぶ。より好ましくは、アルケニルは2〜4個の炭素原子を有し、これを「C2−4アルケニル」とも呼ぶ。
【0044】
本明細書において使用する場合、「アルキニル」は、1個以上の炭素‐炭素三重結合を有する、2〜20個の炭素原子の、1価の直鎖または分岐脂肪族炭化水素ラジカルを指す。「1価」とは、アルキニルが、分子の残りの部分と1点で結合することを意味する。例としては、エチニル、プロピニル、1‐ブチニル、2‐ブチニル、1‐ペンチニル、2‐ペンチニル、3‐ペンチニル及びヘキシニル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは、アルキニルは2〜10個の炭素原子を有し、これを「C2−10アルキニル」とも呼ぶ。より好ましくは、アルキニルは2〜4個の炭素原子を有し、これを「C2−4アルキニル」とも呼ぶ。
【0045】
「イオン化できる基」という用語は、酸を用いたプロトン化または塩基を用いた脱プロトン化により電荷をもつ置換基に変換することができる官能基を指す。イオン化できる基の例としては、‐SOH、‐Z’‐SOH、‐OPO、‐Z’‐OPO、‐PO、‐Z’‐PO、‐COH、‐Z’COH、‐NR1112または‐Z’‐NR1112が挙げられ、R11及びR12はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;Z’には任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンが含まれる。特定の実施形態においては、Z’はアルキレンである。
【0046】
「電荷をもつ置換基」という用語は、正電荷または負電荷をもつ置換基を指す。このような置換基における電荷は、塩基または酸を用いた処理により取り除くことが可能ではなく、したがって永久的である。電荷をもつ置換基の例としては、‐N131415及び‐Z’‐N131415が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、R13〜R15はそれぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり;Z’には任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンが含まれる。特定の実施形態においては、Z’はアルキレンである。
【0047】
電荷をもつ置換基は、対イオンを含有してもよい。正電荷をもつ置換基では対イオンは負電荷をもち、「X」により表すことができ、例えば‐N131415及び‐Z’‐N131415のように表すことができる。正電荷をもつ置換基の対イオンは陰イオン(好ましくは、薬学的に許容できる陰イオン)であり、この陰イオンには酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、安息香酸イオン、炭酸水素イオン、酒石酸水素イオン、臭化物イオン、エデト酸カルシウムイオン、カンシル酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、クエン酸イオン、二塩酸イオン、エデト酸イオン、エジシル酸イオン、エストレート、エシル酸イオン、フマル酸イオン、グルセプト酸イオン、グルコン酸塩、グルタミン酸イオン、グリコリルアルサニレートイオン、ヘキシルレゾルシン酸イオン、ヒドロキシナフトエ酸イオン、ヨウ化物イオン、イセチオン酸イオン、乳酸イオン、ラクトビオン酸イオン、リンゴ酸イオン、マレイン酸イオン、マンデル酸イオン、メシル酸イオン、メチル硫酸イオン、ムチン酸イオン、ナプシル酸イオン、硝酸イオン、パモ酸イオン、パントテン酸イオン、リン酸イオン/二リン酸イオン、ポリガラクツロン酸イオン、サリチル酸イオン、ステアリン酸イオン、塩基性酢酸イオン、コハク酸イオン、硫酸イオン、タンニン酸イオン、酒石酸イオン、テオクル酸イオン、トシル酸イオン及びトリエチオジドが含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、正電荷をもつ置換基の対イオンは塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン及びリン酸イオンである。
【0048】
負電荷をもつ置換基の対イオンには、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウム及びカリウム)、アルカリ土類金属イオン(例えば、カルシウム及びマグネシウム)、アルミニウムイオン、アンモニウム、プロトン化トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン及びトリエチルアミン)、テトラアルキルアンモニウム(例えば、テトラメチルアンモニウム及びテトラブチルアンモニウム)、ならびにプロトン化ヘテロ芳香族基(例えば、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、テトラジン)が含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、負電荷をもつ置換基の対イオンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、プロトン化トリエチルアミン、プロトン化ピリジンである。最も好ましくは、負電荷をもつ置換基の対イオンは、ナトリウム及びカリウムである。負電荷及び正電荷をもつ置換基の対イオンは、続く精製工程において取り除かれるかまたは置き換えられてもよい。
【0049】
本明細書において使用する場合、「反応性エステル」という用語は、アミノ基によって直ちに置き換えられる脱離基を有するエステル基を指す。反応性エステルの例としては、N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、N‐ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、ニトロフェニル(例えば、2または4‐ニトロフェニル)エステル、ジニトロフェニル(例えば、2,4‐ジニトロフェニル)エステル、スルホ‐テトラフルオロフェニル(例えば、4‐スルホ‐2,3,5,6‐テトラフルオロフェニル)エステル及びペンタフルオロフェニルエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本明細書において使用する場合、「DARPin」及び「(設計した)アンキリン反復タンパク質」という用語は互換に使用し、通常、優先的(時には特異的)標的結合を示す、特定の遺伝子改変した抗体擬似タンパク質を指す。標的は、タンパク質、炭水化物または他の化学的実在物であってもよく、結合親和性は極めて高いことができる。DARPinを天然アンキリン反復−含有タンパク質から誘導してもよく、好ましくは、DARPinは3個以上、通常4〜5個のこれらのタンパク質のアンキリン反復モチーフ(典型的には、各アンキリン反復モチーフ中、約33残基)から成る。特定の実施形態においては、DARPinは約4−反復または5−反復を含有し、それぞれ約14kDaまたは18kDaの分子量を有してもよい。ピコモルの親和性及び特異性で所望の標的に結合する(例えば、レセプターアゴニストもしくはアンタゴニスト、インバースアゴニスト、酵素阻害剤、または単純な標的タンパク質結合剤として作用する)DARPinの選択において使用するため、リボソームディスプレイまたはシグナル識別粒子(SRP)ファージディスプレイなどの様々な技術を使用して、1012超の変異体の多様性を有する、ランダム化した有望な標的相互作用残基を有するDARPinのライブラリーをDNAレベルで生成することができる。例えば、米国特許公開第2004/0132028号、同第2009/0082274号、同第2011/0118146号及び同第2011/0224100号、WO02/20565及びWO06/083275(これらの教示の全体は、参照により本明細書に取り込まれる)を参照のこと、ならびにC.Zahndら、(2010)Cancer Res.,70:1595−1605;Zahndら、(2006)J.Biol.Chem.,281(46):35167−35175;及びBinz,H.K.,Amstutz,P.&Pluckthun,A.、(2005)Nature Biotechnology,23:1257−1268(全ては参照により本明細書に取り込まれる)も参照のこと。関連するアンキリン様反復タンパク質または合成ペプチドについては、米国特許公開第2007/0238667号;米国特許第7,101,675号;WO2007/147213;及びWO2007/062466も参照のこと(これらの教示の全体は、参照により本明細書に取り込まれる)。本明細書において使用する場合、「AVIBODY(商標)」細胞結合剤(または短く言えば「AVIBODY CBA」)には、所望の標的に特異的に結合する細胞結合剤としてのタンパク質のファミリーが含まれる。公知のとおり、抗体は、このような所望の標的と、「標的結合領域」(TBRs)またはFvドメインで結合する。AVIBODY(商標)CBAは、通常2、3または4つのTBRsを含有し、二重、三重及び四重特異性抗体としてより一般的に公知である。これらのTBRs/Fvドメインは、「頭−尾」配向でFv V−ドメインを共に融合することにより共に結合し、安定で特異的かつ大いにカスタマイズ可能な多量体抗体様タンパク質をAVIBODY(商標)CBAとして形成する。詳細については、例えば、米国特許公開第2008/0152586号及び同第2012/0171115号を参照のこと。これらの教示の全体は、参照により本明細書に取り込まれる
【0051】
本明細書において使用する場合、「細胞結合剤」という用語は、特異的方法または非特異的方法のいずれかで、細胞を(例えば、細胞表面リガンド上に)結合させることができる化合物、または細胞に付随するリガンドもしくは細胞近傍のリガンドを結合させることができる化合物を指す。特定の実施形態においては、細胞または細胞上のリガンドもしくは細胞近接のリガンドへの結合は特異的である。細胞結合剤は、現在公知の任意の種類のものであるか、または公知となる任意の種類のものであってもよく、細胞結合剤にはペプチド及び非ペプチドが含まれる。
【0052】
特定の実施形態においては、細胞結合剤はタンパク質もしくはポリペプチドであるか、またはタンパク質もしくはポリペプチドを含む化合物であり、細胞結合剤には抗体及び非抗体タンパク質または非抗体ポリペプチドが含まれる。好ましくは、細胞結合剤(例えば、タンパク質またはポリペプチド)は、1個以上のCys残基を含む。Cys残基の側鎖‐SH基は、未変化であってもよく、または還元することのできるジスルフィド結合中にあってもよい。好ましくは、ジスルフィド結合(複数可)の還元は、タンパク質またはポリペプチドの細胞結合機能に有意に不利な影響を及ぼさない(例えば、抗体またはその抗原結合部の場合、ジスルフィド結合の還元は、軽鎖/重鎖の解離を実質的に増加させない)。あるいは、またはそれに加えて、細胞結合剤(例えばタンパク質またはポリペプチド)は、本発明のリンカー(例えば、式(V’)もしくは(V))または細胞毒性化合物(例えば、式(IV’)もしくは(IV))と反応することができる反応性官能基を含有するよう修飾された1個以上のアミノ酸を含む。例えば、反応性官能基は‐SH、‐C(=O)‐、‐NHNH、‐N、‐アルキン、テトラジン、ひずんだシクロアルケンもしくはひずんだヘテロシクロアルケン、ジチオエステルまたはジエンである(例えば、Vu Hongら、Bioconjugate Chem.(2010)21(10):1912-1916;Glassner,M.ら、J.Am.Chem.Soc.(2012)134:7274−7277;Hansell,C.F.ら、J.Am.Chem.Soc.(2011)133:13828−13831;Neal K.Devaraj、Synlett(2012)23(15):2147−2152;Chenoweth,K.ら、Organic&Biomolecular Chemistry(2009)7(24):5255;Jewett,J.C.ら、J.Am.Chem.Soc.(2010)132(11):3688-3690;Seitchik,J.L.ら、J.Am.Chem.Soc.(2012)134(6):2898-2901;及びSletten E.M.ら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.(2009)48(38):6974-6998)を参照のこと)。当業者に公知の任意の化学的方法または酵素的方法により、反応性官能基を細胞結合剤に導入することができる。例えば、Davis L.K.ら、J.Am.Chem.Soc.(2012)134:10317−10320;Boeggeman E.ら、Bioconjug Chem.(2009年6月20日)(6):1228−1236;Stan,ACら、Cancer Res.(1999年1月1日)59(1):115−121;Mahal,L.K.ら、Science(1997)276:1125-1128;Saxon,E.及びBertozzi,C.R.、Science(2000)287:2007-2010;Hang,H.C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2003)100:14846-14851;Vocadlo,D.J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(2003)100:9116-9121;Prescher,J.A.ら、Nature(2004)430:873-877;Dube,D.H.ら、(2006)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:4819-4824;Jeger S.ら、Angew Chem Int Ed Engl.(2010年12月17日)49(51):9995−9997;ならびにLang K.ら、J.Am.Chem.Soc.(2012)134:10317−10320を参照のこと。
【0053】
細胞結合剤は、ファージディスプレイ(例えば、Wangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2011)108(17),6909−6914を参照のこと)またはペプチドライブラリー技術(例えば、Daneら、Mol.Cancer.Ther.(2009)8(5):1312−1318を参照のこと)から誘導されるペプチドであることもできる。
【0054】
一実施形態においては、当業者に公知の任意の方法により、本発明のリンカー(式(V’)もしくは(V))または細胞毒性化合物(式(IV’)もしくは(IV))と反応することができる1個以上の反応性官能基を、細胞結合剤に導入することができる。例えば、アミノ基転移反応により、細胞結合剤の末端アミノ基をカルボニル基に変換することができる(例えば、US2010/0099649;Angew.Chem.Int.(2006)Ed.,45(32):5307;Chem.Biol.,2(4),247,2007;J.Am.Chem.Soc.(2008)130(35):11762を参照のこと)。あるいは、当業者に公知の任意の方法(例えば、US7,521,541を参照のこと)に従って、細胞結合剤を、1個以上の遊離システイン残基(すなわち、本発明のリンカーまたは細胞毒性化合物と反応することができる遊離の‐SH基を有するシステイン残基)を含むように操作することができる。他の代替においては、米国特許第7,659,241号、同第8,309,300号;同第7,855,275号;同第7,723,485号及び同第7,521,541号において記載のとおり、抗体の鎖間ジスルフィドを制御還元することによりチオール基(‐SH)を生成させ、その後マレイミド基を有する細胞毒性剤と処理することができる。例えば、鎖間ジスルフィドを部分還元または完全還元し、その後マレイミド基を有する細胞毒性剤と複合化させることにより、各抗体分子と共有結合した2、3、4、5、6、7または8個の細胞毒性剤分子との複合体を得ることができる。あるいは、抗体の鎖間ジスルフィドを完全還元し、その後部分的に再酸化し、次に細胞毒性剤と複合化させることにより、各抗体分子と共有結合した2、3、4、5、6個、特に4または6個の細胞毒性剤分子を有する複合体を調製することができる。他の代替においては、抗体の鎖間ジスルフィドを部分還元または完全還元し、その後細胞毒性剤と複合化させ、次に部分的に再酸化することにより、これらの複合体を調製することができる。2‐イミノチオラン等の架橋結合剤と反応させることによりチオール基を細胞結合剤(例えば、抗体)に導入し(例えばGoff及びCarroll、Bioconjugate Chem.(1990)1(6):381−386を参照のこと)、その後マレイミド基を有する細胞毒性剤(例えば、式(IV’)もしくは(IV)の化合物)と反応させて、複合体を得ることもできる。反応性官能基を導入するこれらの全方法は、抗体ではない細胞結合剤に適用可能である。この抗体ではない細胞結合剤には、例えばセンチリン(centyrin)、Darpin、Avibody、アドネクチン(adnectin)またはミニボディ(minibodies)、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ナノボディ(nanobodies)、プロボディ(probodies)、ドメインボディ(domain bodies)もしくはユニボディ(unibodies)等の抗体断片が含まれる。
【0055】
一実施形態においては、細胞結合剤がセンチリンである場合、US2010/0255056、US2010/0216708及びUS2011/0274623において記載の方法に従って、1個以上の反応性官能基(例えば、遊離チオール基を有するシステイン)を導入することができる。
【0056】
他の実施形態においては、細胞結合剤はDarpinであり、米国特許公開第2004/0132028号、同第2009/0082274号、同第2011/0118146号及び同第2011/0224100号、WO02/20565ならびにWO06/083275において記載の方法に従って調製することができる。好ましくは、Darpinは、抗原結合を妨げない特異的位置に1個以上のシステイン残基を含む。このようなシステイン残基は、本発明のリンカー(例えば、式(V’)もしくは(V))または細胞毒性化合物(例えば、式(IV’)もしくは(IV))と反応することができる。
【0057】
さらに他の実施形態においては、US2008/0139791及びUS2012/0171115において記載される方法に従って、1個以上のシステイン残基を有するAvibodyを調製することができる。
【0058】
Cys側鎖‐SH基または他の上記反応性官能基をリンカー(例えば、式(V’)または(V)のリンカー)に共有結合させ、次にこのリンカーを細胞毒性化合物に結合させてもよく、このようにして細胞結合剤を細胞毒性化合物に複合化させて、本発明の複合体(例えば、式(III’)または(III)の複合体)を得る。あるいは、Cys側鎖‐SH基または他の上記反応性官能基を、本発明の細胞毒性化合物に結合したリンカーを有する本発明の細胞毒性化合物(例えば、式(IV’)または(IV)の細胞毒性化合物)に共有結合させてもよい。各プロテイン系細胞結合剤は、Cys側鎖‐SH基及び/または本発明の化合物を結合させるのに有用な反応性官能基を複数含有してもよい。
【0059】
細胞結合剤の例としては、抗体、単鎖抗体、標的細胞に特異的に結合する抗体断片、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体、標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片、キメラ抗体、標的細胞に特異的に結合するキメラ抗体断片、二重特異性抗体、ドメイン抗体、標的細胞に特異的に結合するドメイン抗体断片、インターフェロン、リンホカイン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4及びIL−6)、ホルモン(例えば、インスリン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモンならびにステロイドホルモン(例えば、アンドロゲン及びエストロゲン))、ビタミン(例えば、葉酸)、増殖因子(例えば、EGF、TGF−アルファ、FGF、VEGF)、コロニー刺激因子、栄養輸送分子(例えば、トランスフェリン;O’Keefeら、(1985)J.Biol.Chem.260:932−937を参照のこと、参照により本明細書に取り込まれる)、センチリン(フィブロネクチンIII型(FN3)反復の共通配列に基づくタンパク質骨格;米国特許公開第2010/0255056号、同第2010/0216708号及び同第2011/0274623号を参照のこと、参照により本明細書に取り込まれる)、アンキリン反復タンパク質(例えば、DARPinとして公知である、設計されたアンキリン反復タンパク質;米国特許公開第2004/0132028号、同第2009/0082274号、同第2011/0118146号及び同第2011/0224100号を参照のこと、参照により本明細書に取り込まれる、ならびにC.Zahndら、Cancer Res.(2010)70:1595−1605;Zahndら、J.Biol.Chem.(2006)281(46):35167−35175;及びBinz,H.K.,Amstutz,P.&Pluckthun,A.、Nature Biotechnology(2005)23:1257−1268も参照のこと、参照により本明細書に取り込まれる、)、アンキリン様反復タンパク質または合成ペプチド(米国特許公開第2007/0238667号;米国特許第7,101,675号;WO2007/147213;及びWO2007/062466、参照により本明細書に取り込まれる)、アドネクチン(フィブロネクチンドメイン骨格タンパク質;米国特許公開第2007/0082365号;同第2008/0139791号を参照のこと、参照により本明細書に取り込まれる)、Avibody(二重特異性抗体、三重特異性抗体及び四重特異性抗体を含む;米国特許公開第2008/0152586号及び同第2012/0171115号を参照のこと)、ならびに他の細胞結合分子または細胞結合物質が挙げられる。
【0060】
特定の実施形態においては、細胞結合剤は、抗体、単鎖抗体、標的細胞に特異的に結合する抗体断片、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体、標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片、キメラ抗体、標的細胞に特異的に結合するキメラ抗体断片、ドメイン抗体、標的細胞に特異的に結合するドメイン抗体断片、リンホカイン、ホルモン、ビタミン、増殖因子、コロニー刺激因子または栄養輸送分子である。あるいは、細胞結合剤は、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体または標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片である。
【0061】
特定の実施形態においては、細胞結合剤は、二重特異性抗体、アンキリン反復タンパク質、センチリンまたはAvibodyである。
【0062】
「抗体断片」は、Fab、Fab’及びF(ab’)、Fv、ミニボディ、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ナノボディ、プロボディ、ドメインボディならびにユニボディ等を指す(Parham、J.Immunol.131:2895−2902(1983);Springら、J.Immunol.113:470−478(1974);Nisonoffら、Arch.Biochem.Biophys.89:230−244(1960);Kimら、Mol,Cancer Ther.,7:2486−2497(2008);Carter、Nature Revs.,6:343−357(2006);R.Kontermann&S.Dubel、(2001)Antibody Engineering、Springer−Verlag、ハイデルベルグ−ニューヨーク)。
【0063】
特定の実施形態においては、細胞結合剤は、ミニボディ、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ナノボディ、プロボディ、ドメインボディまたはユニボディである。
【0064】
モノクローナル抗体技術は、特異性モノクローナル抗体の形態の、極めて特異的な細胞結合剤の作製を可能にする。当業者に特によく知られるのは、マウス、ラット、ハムスター、または未変化標的細胞もしくは標的細胞から単離した抗原、全ウイルス全体、弱毒全ウイルス及びウイルスコートタンパク質等のウイルスタンパク質等の、関心ある抗原を有する他の任意の哺乳動物を免役することにより作製されるモノクローナル抗体を作る技術である。増感ヒト細胞も使用することができる。モノクローナル抗体を作る他の方法は、scFv(単鎖可変領域)、特にヒトscFvのファージライブラリーの使用である(例えば、Griffithsら、米国特許第5,885,793号及び同第5,969,108号;McCaffertyら、WO92/01047;Limingら、WO99/06587を参照のこと)。さらに、米国特許第5,639,641号において開示される表面再形成(resurfaced)抗体も使用してよく、キメラ抗体及びヒト化抗体も使用してよい。
【0065】
適切な細胞結合剤の選択は、標的となる特定の細胞集団に依存する選択事項であるが、適切なものが入手可能であるならば、一般的にヒトモノクローナル抗体が好ましい。例えば、モノクローナル抗体MY9はCD33抗原に特異的に結合するマウスIgG抗体であり(J.D.Griffinら、Leukemia Res.,8:521(1984))、標的細胞が急性骨髄性白血病(AML)疾患の様にCD33を発現する場合に使用することができる。
【0066】
一実施形態においては、細胞結合剤は表面再形成抗体、表面再形成単鎖抗体または表面再形成抗体断片である。
【0067】
他の実施形態においては、細胞結合剤はヒト化抗体、ヒト化単鎖抗体またはヒト化抗体断片である。特定の実施形態においては、ヒト化抗体はhuMy9−6または他の関連抗体であり、これは米国特許第7,342,110号及び同第7,557,189号において記載されている。他の特定の実施形態においては、ヒト化抗体は、米国特許仮出願第61/307,797号、同第61/346,595号及び同第61/413,172号ならびに米国特許出願第13/033,723号(US2012/0009181 A1として公開)において記載されている、抗葉酸受容体抗体である。これらの全出願の教示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0068】
特定の実施形態においては、細胞結合剤は、米国特許第7,342,110号及び同第7,557,189号(参照により本明細書に取り込まれる)において記載されているhuMy9−6または他の関連抗体等の、本明細書において開示される抗体との抗原結合に重要である配列を共有する、モノクローナル抗体の抗原結合部である。これらの誘導体抗体は、本明細書において記載される抗体と対照して、実質的に同じ(same)または同一の(identical)(1)軽鎖及び/もしくは重鎖CDR3領域;(2)軽鎖及び/もしくは重鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域;または(3)軽鎖及び/もしくは重鎖領域を有してもよい。これらの領域内の配列は、CDR領域内での置換を含む、保存的アミノ酸置換を含有してもよい。好ましくは、1、2、3、4または5個以下の保存的置換が存在する。あるいは、誘導体抗体は、本明細書において記載される抗体と約90%、95%、99%または100%以上同一である軽鎖領域及び/または重鎖領域を有する。これらの誘導体抗体は、本明細書において記載される抗体と対照して実質的に同じである標的抗原への結合特異性及び/または親和性を有してもよい。好ましくは、誘導体抗体のK及び/またはkoff値は、本明細書において記載される抗体の10倍以内(高いかまたは低いのいずれか)、5倍以内(高いかまたは低いのいずれか)、3倍以内(高いかまたは低いのいずれか)、または2倍以内(高いかまたは低いのいずれか)である。これらの誘導体抗体は、完全ヒト抗体またはヒト化抗体またはキメラ抗体であってもよい。当業者に認識される方法に従って誘導体抗体を作製してもよい。
【0069】
抗原またはリガンドの具体例としては、レニン;成長ホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン);成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポ蛋白;アルファ−1−アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体ホルモン;グルカゴン;凝固因子(例えば、因子vmc、因子IX、組織因子及びフォンウィルブラン因子);抗凝固因子(例えば、タンパク質C);心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲン活性化因子(例えば、ウロキナーゼ、ヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子);ボンベシン;トロンビン;造血性増殖因子;腫瘍壊死因子−アルファ及び−ベータ;エンケファリナーゼ;RANTES(すなわち、発現及び分泌した活性化制御通常T細胞);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質−1−アルファ;血清アルブミン(ヒト血清アルブミン);ミュラー管阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;微生物タンパク質(ベータ−ラクタマーゼ);DNA分解酵素;IgE;細胞毒性T−リンパ球関連抗原(例えば、CTLA−4);インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子;タンパク質AまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子(例えば、骨由来神経栄養因子、ニューロトロフィン−3、−4、−5または−6)、神経増殖因子(例えば、NGF−β);血小板由来増殖因子;繊維芽細胞増殖因子(例えば、aFGF及びbFGF);繊維芽細胞増殖因子受容体2;上皮増殖因子;トランスフォーミング増殖因子(例えば、TGF−アルファ、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4及びTGF−β5);インスリン様増殖因子−I及び−II;des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I);インスリン様増殖因子結合タンパク質;メラノトランスフェリン;EpCAM;GD3;FLT3;PSMA;PSCA;MUC1;MUC16;STEAP;CEA;TENB2;EphA受容体;EphB受容体;葉酸受容体;FOLR1;メソテリン;cripto;アルファベータ;インテグリン;VEGF;VEGFR;EGFR;トランスフェリン受容体;IRTA1;IRTA2;IRTA3;IRTA4;IRTA5;CDタンパク質(例えば、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD14、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD26、CD28、CD30、CD33、CD36、CD37、CD38、CD40、CD44、CD52、CD55、CD56、CD59、CD70、CD79、CD80、CD81、CD103、CD105、CD134、CD137、CD138及びCD152);1個以上の腫瘍関連抗原または細胞表面受容体(米国特許公開第20080171040号または同第20080305044号を参照のこと、参照によりその全体が取り込まれる);エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質;インターフェロン(例えば、インターフェロン−アルファ、−ベータ及び−ガンマ);コロニー刺激因子(例えば、M−CSF、GM−CSF及びG−CSF);インターロイキン(例えば、IL−1〜IL−10);スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原(例えば、例えば、HIVエンベロープの一部);輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;制御タンパク質;インテグリン(例えば、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4及びVCAM);腫瘍関連抗原(例えば、HER2、HER3及びHER4受容体);エンドグリン;c−Met;c−kit;1GF1R;PSGR;NGEP;PSMA;PSCA;TMEFF2;LGR5;B7H4;ならびに上で列挙した任意のポリペプチドの断片が挙げられる。
【0070】
例えば、骨髄系細胞に結合するリガンド/増殖因子のGM−CSFを、急性骨髄性白血病の患部細胞への細胞結合剤として使用することができる。移植片拒絶の予防、移植片対宿主疾患の治療及び予防、ならびに急性T細胞白血病の治療に、活性化T細胞に結合するIL−2を使用することができる。メラノーマに向けられた抗体が使用出来る様に、、メラニン細胞に結合するMSHをメラノーマの治療に使用することができる。葉酸を使用して、卵巣及び他の腫瘍で発現した葉酸受容体を標的とすることができる。上皮増殖因子を使用して、肺ならびに頭部及び頸部等の扁平上皮癌を標的とすることができる。成長ホルモン抑制ホルモンを使用して、神経芽細胞腫及び他の腫瘍型を標的とすることができる。エストロゲン(またはエストロゲン類似体)を使用して、乳癌を標的とすることができる。アンドロゲン(またはアンドロゲン類似体)を使用して、精巣を標的とすることができる。
【0071】
本明細書において使用する場合、「塩」という用語は、本発明の化合物の有機塩または無機塩を指す。好ましくは、塩は薬学的に許容できる塩である。薬学的に許容できる塩ではない他の塩も本発明に含まれる。塩には、塩基性基を含む本発明の化合物を無機酸または有機酸(カルボン酸等)と反応させることにより得られる塩、及び酸性基を含む本発明の化合物を無機塩基または有機塩基(アミン等)と反応させることにより得られる塩が含まれる。例示的な塩には、すぐ下で記載する薬学的に許容できる塩が含まれる。
【0072】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容できる塩」という用語は、薬学的に許容できる本発明の化合物の有機塩または無機塩を指す。例示的な塩には、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p‐トルエンスルホン酸塩、パモ酸(すなわち、1,1’‐メチレン‐ビス‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ナフトエ酸))塩、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、ならびにアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。薬学的に許容できる塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオン等の他の分子の含有を伴ってもよい。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機部または無機部であってもよい。さらに、薬学的に許容できる塩は、構造中に、1より大きい荷電原子を有してもよい。多荷電原子が薬学的に許容できる塩の一部である例では、複数の対イオンを有することができる。故に、薬学的に許容できる塩は、1個以上の荷電原子及び/または1個以上の対イオンを有することができる。
【0073】
本発明の化合物が1個以上の塩基性部を含有する場合、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸及びリン酸等の無機酸、または酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸もしくはガラクツロン酸等のピラノシジル酸(pyranosidyl acid)、クエン酸もしくは酒石酸等のアルファヒドロキシ酸、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸等のアミノ酸、安息香酸もしくはケイ皮酸等の芳香属酸、もしくは、p‐トルエンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸等のスルホン酸等の有機酸を用いた遊離塩基の処理等の、当技術分野で入手可能な、好適な任意の方法によって所望の塩(例えば、薬学的に許容できる塩)を調製してもよい。
【0074】
本発明の化合物が1個以上の酸性部を含有する場合、例えばアルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物等の無機塩基、またはアミン(第一級、第二級もしくは第三級)等の有機塩基を用いた遊離酸の処理等の、好適な任意の方法によって所望の塩(例えば、薬学的に許容できる塩)を調製してもよい。好適な塩の実例としては、グリシン及びアルギニン等のアミノ酸、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミン、ならびにピペリジン、モルホリン及びピペラジン等の環状アミンから誘導される有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムから誘導される無機塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
「異常細胞増殖」及び「増殖性障害」という用語は、本出願において互換に使用する。本明細書において使用する場合、他に指定されない限り、「異常細胞増殖」は、正常な制御機構に非依存的である細胞増殖(例えば、接触阻害の損失)を指す。これには例えば、(1)変異したチロシンキナーゼの発現または受容体チロシンキナーゼの過剰発現により増殖する腫瘍細胞(腫瘍);(2)異常なチロシンキナーゼ活性化が生じる他の増殖性疾患の良性細胞及び悪性細胞;(3)受容体チロシンキナーゼによって増殖する任意の腫瘍;(4)異常なセリン/スレオニンキナーゼ活性化によって増殖する任意の腫瘍;ならびに(5)異常なセリン/スレオニンキナーゼ活性化が生じる他の増殖性疾患の良性細胞及び悪性細胞の異常増殖が含まれる。
【0076】
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的には未制御細胞増殖により特徴づけられる哺乳動物における生理的状態を指すかまたは説明する。「腫瘍」は1個以上のがん性細胞及び/または良性細胞または前がん性細胞を含む。がんの例としては、癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病またはリンパ系腫瘍が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのがんのより詳細な例としては、皮膚癌(例えば、メラノーマ)、メルケル細胞癌、扁平上皮癌(例えば、上皮性扁平上皮癌)、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)(例えば、胃腸癌)、膵癌、子宮頚癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)癌または腎臓(renal)癌、前立腺癌、精巣癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)、肛門癌、陰茎癌、急性白血病、頭部及び頸部癌、脳癌(例えば、神経膠芽腫及び神経芽細胞腫)、リンパ器官癌及び白血病を含む造血器腫瘍(急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性単球性白血病(AMOL)、有毛細胞白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T−PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、成人T細胞白血病)、リンパ腫(小リンパ球性リンパ腫(SLL)、ホジキンリンパ腫(結節硬化型、混合細胞型、リンパ球豊富型、リンパ球減少型またはリンパ球非減少型及び結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫)、非ホジキンリンパ腫(全亜型)、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞性前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(ワルデンシュトレームマクログロブリン血症等)、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞腫瘍(形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、単クローン性免疫グロブリン沈着疾患、重鎖病)、結節外周辺帯B細胞リンパ腫(MALTリンパ腫)、結節周辺帯B細胞リンパ腫(NMZL)、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、攻撃性NK細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、結節外NK/T細胞リンパ腫(鼻型)、腸疾患型T細胞リンパ腫、脾臓T細胞リンパ腫、芽細胞性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫/セザリー症候群、原発性皮膚CD30−陽性T細胞リンパ球増殖性疾患、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫(不特定)、未分化大細胞リンパ腫)、多発性骨髄腫(形質細胞性骨髄腫またはカーレル病)が挙げられる。
【0077】
「治療薬」という用語は、抗体、ペプチド、タンパク質、酵素等の生物学的薬剤または化学療法薬の両方を包含する。
【0078】
「化学療法薬」という用語は、がんの治療において有用な化学化合物である。化学療法薬の例としては、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スーテント(SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、PTK787/ZK222584(Novartis)、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標)、Sanofi)、5−FU(5‐フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファーニブ(SCH66336)、ソラフェニブ(BAY43−9006、Bayer Labs)及びゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、AG1571(SU5271;Sugen)、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミド(cyclosphosphamide)等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa)等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(アドゼレシン、カルゼレシン及びビセレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体KW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノボエンビキン、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチン等のニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリチアマイシン、特にカリチアマイシンガンマ11及びカリチアマイシンオメガ11(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.(1994)33:183−186))等の抗生物質;ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネート等のビホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6‐ジアゾ‐5‐オキソ‐L‐ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ‐ドキソルビシン、シアノモルホリノ‐ドキソルビシン、2‐ピロリノ‐ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシンC等のミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5‐フルオロウラシル(5−FU)等の代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体;フルダラビン、6‐メルカプトプリン、チアムニプリン(thiamniprine)、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6‐アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎;葉酸等の葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エフロルニチン;エリプチニウム酢酸塩;エポシロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;マイタンシン及びアンサマイトシン等のマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2‐エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSK(登録商標)ポリサッカライド複合体(JHS Natural Products、オレゴン州ユージーン);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’‐2’’‐トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特に、T−2毒素、ベラクリンA(verracurin A)、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシンン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル;Bristol−Myers Squibb Oncology、ニュージャージー州プリンストン)、ABRAXANE(登録商標)(Cremophorを含まない)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partnersイリノイ州シャンバーグ)及びTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル;Rhone−Poulenc Rorer、フランス国アントニー);クロラムブシル;GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6‐チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金誘導体;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容できる塩、酸及び誘導体が挙げられる。
【0079】
(i)例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4‐ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミフェン)を含む、抗エストロゲン剤及び選択的エストロゲン受容体調節物質(SERMs)等の、作用して腫瘍でのホルモン作用を制御または阻害する抗ホルモン剤;(ii)例えば4(5)‐イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)等の、副腎においてエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害薬;(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン等の抗アンドロゲン薬、ならびにトロキシピド(1,3‐ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤;(v)リピドキナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えばPKC−アルファ、Ralf及びH−Ras等の、異常細胞増殖に関連する情報伝達経路において遺伝子発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド;(vii)VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤等のリボザイム;(viii)遺伝子治療ワクチン(例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)及びVAXID(登録商標))等のワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)等のトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;(ix)ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)等の抗血管新生薬;ならびに(x)上記のいずれかの薬学的に許容できる塩、酸及び誘導体も「化学療法薬」の規定に含まれる。他の抗血管新生薬にはMMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ2)阻害剤、MMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)阻害剤、COX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤及びVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤が含まれる。本発明の化合物/組成物と組み合わせて使用することができる、このような有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤の例は、WO96/33172、WO96/27583、EP818442、EP1004578、WO98/07697、WO98/03516、WO98/34918、WO98/34915、WO98/33768、WO98/30566、EP606,046、EP931,788、WO90/05719、WO99/52910、WO99/52889、WO99/29667、WO99/07675、EP945864、米国特許第5,863,949号、同第5,861,510号及びEP780,386において記載されており、これらはその全体が参照により本明細書に取り込まれる。VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤の例としては、4‐(4‐ブロモ‐2‐フルオロアニリノ)‐6‐メトキシ‐7‐(1‐メチルピペリジン‐4‐イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474;WO01/32651内の実施例2)、4‐(4‐フルオロ‐2‐メチルインドール‐5‐イルオキシ)‐6‐メトキシ‐7‐(3‐ピロリジン‐1‐イルプロポキシ)‐キナゾリン(AZD2171;WO00/47212内の実施例240)、バタラニブ(PTK787;WO98/35985)及びSU11248(スニチニブ;WO01/60814)、ならびにPCT公開第WO97/22596、WO97/30035、WO97/32856及びWO98/13354において開示されている化合物等の化合物が挙げられる。
【0080】
本発明の化合物と組み合わせて使用することができる化学療法薬の他の例としては、Yaguchiら(2006)J.Nat.Cancer Inst.98(8):545−556;米国特許第7,173,029号;米国特許第7,037,915号;米国特許第6,608,056号;米国特許第6,608,053号;米国特許第6,838,457号;米国特許第6,770,641号;米国特許第6,653,320号;米国特許第6,403,588号;WO2006/046031;WO2006/046035;WO2006/046040;WO2007/042806;WO2007/042810;WO2004/017950;US2004/092561;WO2004/007491;WO2004/006916;WO2003/037886;US2003/149074;WO2003/035618;WO2003/034997;US2003/158212;EP1417976;US2004/053946;JP2001247477;JP08175990;JP08176070;米国特許第6,703,414号;及びWO97/15658において報告されているもの等の、PI3K(ホスホイノシチド−3キナーゼ)の阻害剤が挙げられ、これらの全てはその全体が参照により本明細書に取り込まれる。このようなPI3K阻害剤の具体例としては、SF−1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3K阻害剤、Novartis)、XL−147(PI3K阻害剤、Exelixis,Inc.)が挙げられる。
【0081】
化学療法薬には、本明細書において参照する商品名の薬物の任意のジェネリック医薬品もしくはバイオ後続品も含まれてよく、または改良した製剤、改良した輸送手段(徐放、生物付着性コーティング、標的輸送等)及び改良した投与形態を含む化学療法薬の改良物も含まれてよい。
【0082】
「ウイルス感染症」という用語は、疾患を引き起こすウイルスによる宿主生物体組織の浸潤を指す。ウイルス感染症の例としては、CMV感染症、HIV感染症及びAIDSが挙げられる。
【0083】
「寄生体感染症」という用語は、疾患を引き起こす寄生物による宿主生物体組織の浸潤を指す。寄生体感染症の例としては、ジアルジア症、アメーバ症及び住血吸虫症が挙げられる。
【0084】
「薬学的に許容できる」という句は、物質または組成物が、製剤を含む他の成分及び/またはそれらを用いて治療する哺乳動物と、化学的及び/または毒物学的に適合性である必要があることを示す。
【0085】
「治療有効量」という用語は、被験体において所望の生物学的応答を誘発する活性化合物または複合体の量を意味する。このような応答には、治療する疾患もしくは障害の症候の軽減、その疾患もしくは障害の症候再発の予防、阻害もしくは遅延、治療しない場合と比較して被験体の長寿命の増加、またはその疾患もしくは障害の症候進行の予防、阻害もしくは遅延が含まれる。有効量の決定は、特に本明細書において提供される詳細な開示を考慮に入れて、十分当業者の能力範囲内である。化合物Iの毒性及び治療有効性を、細胞培養物及び実験動物中で、標準的な薬学的方法により決定することができる。被験体に投与する、本発明の化合物もしくは複合体または他の医薬品の有効量は、多発性骨髄腫のステージ、カテゴリー及び状態、ならびに一般的な健康状態、年齢、性別、体重及び薬物耐性等の被験体の特徴に依存するであろう。投与する本発明の化合物もしくは複合体または他の医薬品の有効量は、投与経路及び投与形態にも依存するであろう。投与量及び投与間隔を個々に調節して、所望の治療有効性を維持するのに十分な活性化合物の血漿中濃度を提供することができる。

細胞結合剤−薬物部複合体
【0086】
本発明は、第1実施形態において記載のとおり式(I)により表される複合体、第2実施形態において記載にとおり式(III)により表されるその代替実施形態、及びそれらの代替実施形態を提供する。さらに、この複合体節においては、14個の複合体の具体的実施形態を以下にさらに記載する。
【0087】
第1の具体的実施形態においては、複合体は以下の式によって表されるかまたはその薬学的に許容できる塩である。
【化17】
式中、R及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり、ならびにnは0〜10の整数である。この第1の具体的実施形態においては、残りの変数は、第1実施形態またはその各代替実施形態において規定されるとおりである。好ましくは、細胞結合剤がは、本発明の細胞毒性化合物との複合化に使用される遊離チオール基(‐SH)を有する修飾リジンを含まない。あるいは、式(IA)の細胞結合剤(CBA)は、ミニボディ、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ナノボディ、プロボディ、ドメインボディ、ユニボディ、二重特異性抗体(bispecific antibody)、アンキリン反復タンパク質(例えば、DARPin)、センチリンまたはAvibodyである。
【0088】
第2の具体的実施形態においては、上記の式(IA)において、R及びRはそれぞれメチルであり、nは2であり、残りの変数は、第1実施形態またはその各代替実施形態において規定されるとおりである。
【0089】
第3の具体的実施形態においては、式(I)または(IA)において、DMは、以下の式:
【化18】
により表される薬物部であり、残りの変数は、第1実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第1もしくは第2の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0090】
第4の具体的実施形態においては、式(III’)または(III)において、複合体は以下の式によって表されるかまたはその薬学的に許容できる塩である。
【化19】
式中、R及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり、nは0〜10の整数であり、ならびに残りの変数は第2実施形態もしくはその各代替実施形態において規定されるとおりである。好ましくは、R及びRは両方ともにメチルであり;ならびにnは2である。
【0091】
第5の具体的実施形態においては、式(III’)、(III)、(IIIA’)または(IIIA)において、Qは、i)H;ii)‐SOH、‐Z’‐SOH、‐OPO、‐Z’‐OPO、‐PO、‐Z’‐PO、‐COH、‐Z’‐COH、‐NR1112もしくは‐Z’‐NR1112、もしくはそれらの薬学的に許容できる塩;またはiii)‐N141516もしくは‐Z’‐N141516であり;Z’は任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンであり;R14〜R16は、それぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり;ならびにXは薬学的に許容できる陰イオンである。この第5の具体的実施形態においては、残りの変数は、第2実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0092】
第6の具体的実施形態においては、上の直前の段落において記載される変数Z’はアルキレンであり、残りの変数は、第2実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4もしくは第5の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0093】
第7の具体的実施形態においては、式(III’)、(III)、(IIIA’)または(IIIA)において、JCB’は、
【化20-1】
【化20-2】
である。この第7の具体的実施形態においては、残りの変数は、第2実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4、第5もしくは第6の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0094】
第8の具体的実施形態においては、式(III’)、(III)、(IIIA’)または(IIIA)において、JCB’は、
【化21】
であり、残りの変数は、第2実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4、第5もしくは第6の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0095】
第9の具体的実施形態においては、式(III’)、(III)、(IIIA’)または(IIIA)において、Zは‐C(=O)‐NR‐または‐NR‐C(=O)‐であり、残りの変数は、第2実施形態もしくはその各代替実施形態、または第4、第5、第6、第7もしくは第8の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0096】
第10の具体的実施形態においては、式(III’)、(III)、(IIIA’)または(IIIA)において、R、R、R及びRはそれぞれHであり;Z’は任意に置換されたアルキレン(好ましくは、非置換アルキレン)であり;RはHであり;残りの変数は、第2実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4、第5、第7、第8もしくは第9の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0097】
第11の具体的実施形態においては、式(III’)、(III)、(IIIA’)または(IIIA)において、Qは、Hまたは‐SOHもしくはその薬学的に許容できる塩であり;残りの変数は、第2実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4、第5、第6、第7、第8、第9もしくは第10の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0098】
第12の具体的実施形態においては、式(III’)、(III)、(IIIA’)または(IIIA)において、DMは、上記の式(IIA)により表され;残りの変数は、第2実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10もしくは第11の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0099】
第13の具体的実施形態においては、式(III’)、(III)、(IIIA’)または(IIIA)において、R10、R11、R12及びR13は全てHであり;qは0、または1〜5の整数であり;rは1〜5の整数であり;残りの変数は、第2実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11もしくは第12の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0100】
第14の具体的実施形態においては、式(III)または(IIIA)において、複合体は以下の式のいずれか1つにより表されるか、またはその薬学的に許容できる塩である。
【化22】
式中、CBAは、上記の第1実施形態において規定されるとおりであり、ならびにDMは、上記の式(II)または(IIA)により表される薬物部である。好ましくは、式(IIID)のpは、1〜24または2〜8の整数である。より好ましくは、pは2、4、8、16または24である。
【0101】
式(I)、(IA)、(III’)、(III)、(IIIA’)、(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)または(IIID)において、wは好ましくは1〜10、1〜6、あるいは1〜4の整数であり、残りの変数は、第1もしくは第2実施形態、もしくは、第1もしくは第2実施形態の代替の上記の各実施形態、または上記の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13もしくは第14の具体的実施形態において規定されるとおりである。

細胞毒性化合物
【0102】
本発明は、上記の第3実施形態及びその代替実施形態において記載されるとおり、式(IV’)または(IV)により表される細胞毒性化合物も提供する。さらに、この細胞毒性化合物節においては、11個の細胞毒性化合物の具体的実施形態を以下にさらに記載する。
【0103】
第1の具体的実施形態においては、式(IV)において、細胞毒性化合物は以下の式により表されるか、またはその塩(例えば、薬学的に許容できる塩)である。
【化23】
式中、R及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり、nは0〜10の整数であり、ならびに残りの変数は第3実施形態もしくはその各代替実施形態において規定されるとおりである。好ましくは、R及びRは両方ともにメチルであり;ならびにnは2である。
【0104】
第2の具体的実施形態においては、式(IV’)、(IV)、(IVA’)または(IVA)において、Qは、i)H;ii)‐SOH、‐Z’‐SOH、‐OPO、‐Z’‐OPO、‐PO、‐Z’‐PO、‐COH、‐Z’‐COH、‐NR1112もしくは‐Z’‐NR1112、もしくはそれらの塩(例えば、薬学的に許容できる塩);またはiii)‐N141516もしくは‐Z’‐N141516であり;Z’は任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンであり;R14〜R16は、それぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり;ならびにXは陰イオン(例えば、薬学的に許容できる陰イオン)である。この第2の具体的実施形態においては、残りの変数は、第3実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0105】
第3の具体的実施形態においては、上の直前の段落において記載される変数Z’はアルキレンであり、残りの変数は、第3実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1もしくは第2の具体的実施形態において規定されるとおりである
【0106】
第4の具体的実施形態においては、式(IV’)、(IV)、(IVA’)または(IVA)において、JCBは、マレイミド(

【化24】
)、X’‐CR‐C(=O)‐、X’‐CR‐C(=O)‐NR‐、R‐C(=O)‐、R‐C(=O)‐フェニレン‐、NH‐NR‐、NH‐NR‐フェニレン‐、NH‐O‐、‐N3、‐C≡CH、
【化25】
である。この第4の具体的実施形態においては、残りの変数は、第3実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2もしくは第3の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0107】
第5の具体的実施形態においては、式(IV’)、(IV)、(IVA’)または(IVA)において、JCBはマレイミド(
【化26】
)であり、残りの変数は、第3実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2もしくは第3の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0108】
第6の具体的実施形態においては、式(IV’)、(IV)、(IVA’)または(IVA)において、Zは‐C(=O)‐NR‐または‐NR‐C(=O)‐であり、残りの変数は、第3実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2、第3、第4もしくは第5の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0109】
第7の具体的実施形態においては、式(IV’)、(IV)、(IVA’)または(IVA)において、R、R、R及びRはそれぞれHであり;Z’は任意に置換されたアルキレン(好ましくは、非置換アルキレン)であり;RはHであり;残りの変数は、第3実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2、第4、第5もしくは第6の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0110】
第8の具体的実施形態においては、式(IV’)、(IV)、(IVA’)または(IVA)において、Qは、Hまたは‐SOHもしくはその塩(例えば、薬学的に許容できる塩)であり;残りの変数は、第3実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2、第4、第5、第6もしくは第7の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0111】
第9の具体的実施形態においては、式(IV’)、(IV)、(IVA’)または(IVA)において、DMは、式(IIA)により表され;残りの変数は、第3実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2、第4、第5、第6、第7もしくは第8の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0112】
第10の具体的実施形態においては、式(IV’)、(IV)、(IVA’)または(IVA)において、R10、R11、R12及びR13は全てHであり;qは0、または1〜5の整数であり;rは1〜5の整数であり;残りの変数は、第3実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4、第5、第6、第7、第8もしくは第9の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0113】
第11の具体的実施形態においては、式(IV)または(IVA)において、細胞毒性化合物は以下の式のいずれか1つにより表されるか、またはその塩(例えば、薬学的に許容できる塩)である。
【化27-1】
【化27-2】
式中、DMは、上記の式(II)または(IIA)により表される薬物部である。好ましくは、式(IVD)のpは、1〜24または2〜8の整数である。より好ましくは、pは2、4、8、16または24である。

リンカー化合物
【0114】
本発明は、上記の第4実施形態及びその代替実施形態において記載されるとおり、式(V)により表されるリンカー化合物をさらに提供する。さらに、このリンカー化合物節においては、11個のリンカー化合物の具体的実施形態を以下にさらに記載する。
【0115】
第1の具体的実施形態においては、式(V’)または(V)において、Jは‐SHまたは‐SSRであり、残りの変数は、第4実施形態またはその各代替実施形態において規定されるとおりである。
【0116】
第2の具体的実施形態においては、式(V’)または(V)において、Qは、i)H;ii)‐SOH、‐Z’‐SOH、‐OPO、‐Z’‐OPO、‐PO、‐Z’‐PO、‐COH、‐Z’‐COH、‐NR1112もしくは‐Z’‐NR1112、もしくはそれらの塩(例えば、薬学的に許容できる塩);またはiii)‐N141516もしくは‐Z’‐N141516であり;Z’は任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンであり;R14〜R16は、それぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり;ならびにXは陰イオン(例えば、薬学的に許容できる陰イオン)である。この第2の具体的実施形態においては、残りの変数は、第4実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0117】
第3の具体的実施形態においては、上の直前の段落において記載される変数Z’はアルキレンであり、残りの変数は、第4実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1もしくは第2の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0118】
第4の具体的実施形態においては、式(V’)または(V)において、JCBは、マレイミド(
【化28】
)、X’‐CR‐C(=O)‐、X’‐CR‐C(=O)‐NR‐、R‐C(=O)‐、R‐C(=O)‐フェニレン‐、NH‐NR‐、NH‐NR‐フェニレン‐、NH‐O‐、‐N3、‐C≡CH、
【化29】
である。この第4の具体的実施形態においては、残りの変数は、第4実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2もしくは第3の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0119】
第5の具体的実施形態においては、式(V’)または(V)において、JCBはマレイミド(
【化30】
)であり、残りの変数は、第4実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2もしくは第3の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0120】
第6の具体的実施形態においては、式(V’)または(V)において、Zは‐C(=O)‐NR‐または‐NR‐C(=O)‐であり、残りの変数は、第4実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2、第3、第4もしくは第5の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0121】
第7の具体的実施形態においては、式(V’)または(V)において、R、R、R及びRはそれぞれHであり;Z’は任意に置換されたアルキレン(好ましくは、非置換アルキレン)であり;RはHであり;残りの変数は、第4実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2、第4、第5もしくは第6の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0122】
第8の具体的実施形態においては、式(V’)または(V)において、Qは、Hまたは‐SOHもしくはその塩(例えば、薬学的に許容できる塩)であり;残りの変数は、第4実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1、第2、第4、第5、第6もしくは第7の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0123】
第9の具体的実施形態においては、式(V’)または(V)において、R10、R11、R12及びR13は全てHであり;qは0、または1〜5の整数であり;rは1〜5の整数であり;残りの変数は、第4実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4、第5、第6、第7もしくは第8の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0124】
第10の具体的実施形態においては、式(V)において、リンカー化合物は以下の式のいずれか1つにより表されるか、またはその塩(例えば、薬学的に許容できる塩)である。
【化31】
式中、Jは‐SSRまたは‐SC(=O)Rであり;あるいは、Jは‐SSRである。好ましくは、Jは‐SSPy(Pyはピリジル)である。
【0125】
第11の具体的実施形態においては、本発明は以下の式により表される化合物を提供する。
【化32】
式中、Xは‐COOHまたは反応性エステルである。式(VIIIA)または(VIIIB)の化合物を使用して、本発明のリンカー化合物または細胞毒性化合物を、例えば以下に示すとおり調製することができる。
【化33】
好ましくは、Xは‐COOHまたはN‐ヒドロキシスクシンイミドエステル(
【化34】
)である。

修飾細胞結合剤
【0126】
本発明は、上記の第5実施形態及びその代替実施形態において記載されるとおり、式(VI)または(VI’)により表される修飾細胞結合剤をさらに提供する。さらに、このリンカー化合物節においては、10個のリンカー化合物の具体的実施形態を以下にさらに記載する。
【0127】
第1の具体的実施形態においては、式(VI’)または(VI)において、Jは‐SHまたは‐SSRであり、残りの変数は、第5実施形態またはその各代替実施形態において規定されるとおりである。好ましくは、Jは‐SSPyであり、Pyはピリジルである。
【0128】
第2の具体的実施形態においては、式(VI’)または(VI)において、Qは、i)H;ii)‐SOH、‐Z’‐SOH、‐OPO、‐Z’‐OPO、‐PO、‐Z’‐PO、‐COH、‐Z’‐COH、‐NR1112もしくは‐Z’‐NR1112、もしくはそれらの塩(例えば、薬学的に許容できる塩);またはiii)‐N141516もしくは‐Z’‐N141516であり;Z’は任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンであり;R14〜R16は、それぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり;ならびにXは陰イオン(例えば、薬学的に許容できる陰イオン)である。この第2の具体的実施形態においては、残りの変数は、第5実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0129】
第3の具体的実施形態においては、上の直前の段落において記載される変数Z’はアルキレンであり、残りの変数は、第5実施形態もしくはその各代替実施形態、またはその第1もしくは第2の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0130】
第4の具体的実施形態においては、式(VI’)または(VI)において、JCB’は、
【化35-1】
【化35-2】
である。この第4の具体的実施形態においては、残りの変数は、第5実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第1、第2もしくは第3の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0131】
第5の具体的実施形態においては、式(VI’)または(VI)において、JCB’は、
【化36】
であり、残りの変数は、第5実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第1、第2もしくは第3の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0132】
第6の具体的実施形態においては、式(VI’)または(VI)において、Zは‐C(=O)‐NR‐または‐NR‐C(=O)‐であり、残りの変数は、第5実施形態もしくはその各代替実施形態、または第1、第2、第3、第4もしくは第5の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0133】
第7の具体的実施形態においては、式(VI’)または(VI)において、R、R、R及びRはそれぞれHであり;Z’は任意に置換されたアルキレン(好ましくは、非置換アルキレン)であり;RはHであり;残りの変数は、第5実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第1、第2、第3、第4、第5もしくは第6の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0134】
第8の具体的実施形態においては、式(VI’)または(VI)において、Qは、Hまたは‐SOHもしくはその薬学的に許容できる塩であり;残りの変数は、第5実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第1、第2、第3、第4、第5、第6もしくは第7の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0135】
第9の具体的実施形態においては、式(VI’)または(VI)において、R10、R11、R12及びR13は全てHであり;qは0、または1〜5の整数であり;rは1〜5の整数であり;残りの変数は、第5実施形態もしくはその各代替実施形態、または上記の第4、第5、第6、第7もしくは第8の具体的実施形態において規定されるとおりである。
【0136】
第10の具体的実施形態においては、式(VI’)または(VI)において、修飾細胞結合剤は以下の式のいずれか1つにより表されるか、またはその薬学的に許容できる塩である。
【化37】
式中、CBAは上記の第1実施形態において規定されるとおりであり、Jは‐SH、‐SSRまたは‐SC(=O)Rであり;あるいは、Jは‐SHまたは‐SSRである。好ましくは、Jは‐SHまたは‐SSPy(Pyはピリジル)である。
【0137】
式(VI’)、(VI)、(VIA)または(VIB)において、wは好ましくは1〜10、1〜6、あるいは1〜4の整数であり、残りの変数は、第5実施形態、もしくは第5実施形態の代替の上記の各実施形態、または上記の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9もしくは第10の具体的実施形態において規定されるとおりである。

細胞結合剤−薬物複合体の作製
【0138】
当業者に公知の方法に従って、本発明の複合体を調製することができる。例えば、WO2009/134977、米国特許第7,811,572号、同第6,441,163号、同第7,368,565号、同第8,163,888号、米国特許公開第2006/0182750号、同第2011/0003969号、同第2012/0253021及びWiddison,W.C.ら、“Semisynthetic maytansine analogues for the targeted treatment of cancer,” J.Med.Chem.(2006)49(14):4392−4408を参照のこと。一実施形態においては、細胞結合剤−細胞毒性剤複合体を形成するために、細胞結合剤と共有結合を形成することが可能な反応性部を有する薬物−リンカー化合物(例えば、式(IV’)または(IV)の化合物)と細胞結合剤を反応させることにより、本発明の複合体を調製することができる。次にこの複合体を精製することができる。その場(in situ)で薬物−リンカー化合物を生成させ、精製なしで使用して抗体と反応させることができる。あるいは、細胞結合剤と複合化させる前に薬物−リンカー化合物を生成させ、精製することができる。他の実施形態においては、a)リンカー化合物(例えば、式(V’)または(V)の化合物)と細胞結合剤を反応させて、細胞結合剤に共有結合したリンカーを有する修飾細胞結合剤(例えば、式(VI’)または(VI))を形成すること;b)任意にこの修飾細胞結合剤を精製すること;c)この修飾細胞結合剤に細胞毒性剤(例えば、式(VII)、(VIIA)、(VIIB)または(VIIC))を複合化させて、本発明の細胞結合剤−細胞毒性化合物複合体を形成させること;及びd)この細胞結合剤−細胞毒性化合物複合体を精製することにより、本発明の複合体を調製することができる。一実施形態においては、細胞毒性剤は以下の式により表されるか、またはその塩である。
【化38】
式(VII)において、Y及びDMは第1実施形態において規定されるとおりであり;Jは第4実施形態において規定されるとおりである。好ましくは、式(VII)の細胞毒性剤は以下の式により表されるか、その塩である。
【化39】
より好ましくは、細胞毒性剤は以下の式により表されるか、その塩である。
【化40】
好ましくは、式(VII)、(VIIA)、(VIIB)または(VIIC)において、Jは‐SHまたは‐SSRである。さらにより好ましくは、Jは‐SHまたは‐SSPyである。
【0139】
他の実施形態においては、細胞結合剤、細胞毒性剤及びリンカー化合物を一緒に混合することにより、本発明の複合体を調製することができる。好ましくは、まず始めに細胞結合剤を細胞毒性剤と接触させて、細胞結合剤及び細胞毒性剤を含む混合物を形成させ、その後、この混合物をリンカー化合物(例えば式(V’)または(V)の化合物)と接触させて、細胞結合剤−細胞毒性化合物複合体を形成させる。次に、この複合体を精製することができる。一実施形態においては、細胞毒性剤は式(VII)、(VIIA)、(VIIB)または(VIIC)により表され、変数の規定及び変数の好ましい値は上記のとおりである。
【0140】
当業者に公知の任意の生成方法を使用して、本発明の複合体を精製することができる(例えば、Greg T.Hermanson著のBioconjugate Techniques、第2版、Academic Press,Inc.より出版、2008年を参照のこと)。一実施形態においては、接線流濾過(TFF)、非吸着クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、吸着濾過、選択的沈殿析出、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、透析法または他の任意の好適な精製方法、及びそれらの組合せを使用して、本発明の複合体を精製することができる。
【0141】
Pellicon型システム(Millipore、マサチューセッツ州ビレリカ)、Sartocon Cassetteシステム(Sartorius AG、ニューヨーク州エッジウッド)及びCentrasette型システム(Pall Corp.、ニューヨーク州イースト・ヒルズ)を含む、任意の好適なTFFシステムを精製用に使用してもよい。
【0142】
任意の好適な吸着クロマトグラフィー樹脂を精製用に使用してもよい。好ましい吸着クロマトグラフィー樹脂には、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、イオン交換クロマトグラフィー、ミックスモードイオン交換クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、色素リガンドクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー及びそれらの組合せが含まれる。好適なヒドロキシアパタイト樹脂の例としては、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT I型及びII型、Bio−Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)、HA Ultrogelヒドロキシアパタイト(Pall Corp.、ニューヨーク州イースト・ヒルズ)ならびにセラミックフルオロアパタイト(CFT I型及びII型、Bio−Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)が挙げられる。好適なHCIC樹脂の例としては、MEP Hypercel樹脂(Pall Corp.、ニューヨーク州イースト・ヒルズ)が挙げられる。好適なHIC樹脂の例としては、ブチル‐Sepharose、ヘキシル‐Sepharose、フェニル‐Sepharose及びオクチルSepharose樹脂(全てGE Healthcare製、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、ならびにMacro−prepメチル樹脂及びMacro−prep t‐ブチル樹脂(Biorad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)が挙げられる。好適なイオン交換樹脂の例としては、SP−Sepharose、CM−Sepharose及びQ−Sepharose樹脂(全てGE Healthcare製、ニュージャージー州ピスカタウェイ)ならびにUnosphere S樹脂(Bio−Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)が挙げられる。好適なミックスモードイオン交換体の例としては、Bakerbond ABx樹脂(JT Baker、ニュージャージー州フィリップスバーグ)が挙げられる。好適なIMAC樹脂の例としては、キレートSepharose樹脂(GE Healthcare製、ニュージャージー州ピスカタウェイ)及びProfinity IMAC樹脂(Bio−Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)が挙げられる。好適な色素リガンド樹脂の例としては、Blue Sepharose樹脂(GE Healthcare製、ニュージャージー州ピスカタウェイ)及びAffi−gel Blue樹脂(Bio−Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)が挙げられる。好適なアフィニティー樹脂の例としては、タンパク質A Sepharose樹脂(例えば、MabSelect、GE Healthcare製、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、ヒスチジン標識金属アフィニティー樹脂、抗FLAGアフィニティー樹脂、及び抗体が適切なレクチン結合部位を有するレクチンアフィニティー樹脂(例えばレンチルレクチンSepharose樹脂(GE Healthcare製、ニュージャージー州ピスカタウェイ))が挙げられる。好適な逆相樹脂の例としては、C4、C8及びC18樹脂(Grace Vydac、カリフォルニア州ヘスペリア)が挙げられる。
【0143】
任意の好適な非吸着クロマトグラフィー樹脂を精製用に使用してもよい。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを本発明の複合体の精製用に使用することができる。好適な非吸着クロマトグラフィー樹脂の例としては、SEPHADEX(商標)G−10、G−25、G−50、G−100、SEPHACRYL(商標)樹脂(例えば、S−200及びS−300)、SUPERDEX(商標)樹脂(例えば、SUPERDEX(商標)75及びSUPERDEX(商標)200)、BIO−GEL(登録商標)樹脂(例えば、P−6、P−10、P−30、P−60及びP−100)、ならびに当業者に公知の他の非吸着クロマトグラフィー樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0144】
一実施形態においては、細胞結合剤がエピトープ−タグAvibodyである場合、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、接線流濾過、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーを使用して、好ましくはアフィニティークロマトグラフィーを使用して、より好ましくはヒスチジン標識金属アフィニティークロマトグラフィー及び抗FLAG M2アフィニティークロマトグラフィーを使用して、複合体を精製することができる(例えば、US2008/0152586及びUS2012/0171115を参照のこと)。
【0145】
他の実施形態においては、細胞結合剤がセンチリンである場合、タンパク質A 精製、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿析出、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、接線流濾過、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを使用して、複合体を精製することができる。あるいは、HPLCを使用して複合体を精製することができる。好ましくはアフィニティークロマトグラフィーを使用して、より好ましくはヒスチジン標識金属アフィニティークロマトグラフィーを使用して、複合体を精製することができる。例えば、米国特許公開番号US2010/0255056、US2010/0216708及びUS2011/0274623を参照のこと。
【0146】
他の実施形態においては、細胞結合剤がDARPinである場合、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、接線流濾過を使用して、好ましくはアフィニティークロマトグラフィーを使用して、より好ましくはヒスチジン標識アフィニティークロマトグラフィーを使用して、複合体を精製することができる。例えば、米国特許公開第20040132028号、同第2009/0082274号、同第2011/0118146号及び同第2011/0224100号、WO02/20565ならびにWO06/083275を参照のこと。
【0147】
細胞結合剤(例えば、抗体)分子1個あたりに結合した細胞毒性化合物の数は、280nm及び252nmにおける吸光度の比を測定することにより、分光学的に決定することができる。平均約0.5〜約20の細胞毒性化合物/抗体分子(複数可)が、本明細書において記載される方法により結合され得る。一実施形態においては、複合体において細胞結合剤1分子あたりに結合した細胞毒性化合物の平均数(すなわち、平均w値)は、約0.5〜約10、約0.5〜2(例えば、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0もしくは2.1)、約2〜約8(例えば、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0もしくは8.1)、約2.5〜約7、約3〜約5、約2.5〜約5.0(例えば、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0)、約2.5〜約4.0、約3.0〜約4.0、約3.2〜約4.2、または約4.5〜5.5(例えば、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4もしくは約5.5)である。

細胞毒性の試験管内評価
様々ながん細胞株の増殖を抑制する能力について、本発明の細胞毒性化合物及び細胞結合剤−薬物複合体を試験管内で評価することができる。当業者に公知の方法を使用して、試験管内細胞毒性分析を実施することができる(例えば、Widdison,W.C.ら、“Semisynthetic maytansine analogues for the targeted treatment of cancer,” J.Med.Chem.(2006)49(14):4392−408)。例えば、評価する細胞を化合物または複合体に1〜5日間曝露し、公知方法による直接分析において、細胞の生存割合を測定することができる。次にIC50値を分析結果から計算することができる。

組成物及び使用方法
【0148】
本発明には、本明細書において記載される複合体(例えば、式(I)、もしくは式(III’)もしくは(III)の複合体)または細胞毒性化合物(例えば、式(IV’)もしくは(IV)の化合物)、及び担体(例えば、薬学的に許容できる担体)を含む組成物(例えば、医薬組成物)が含まれる。本発明には、式(I)、(III’)もしくは(III)の複合体、または式(IV’)もしくは(IV)の細胞毒性化合物、及び担体(例えば、薬学的に許容できる担体)を含み、第2治療薬(例えば、化学療法薬)をさらに含む組成物(例えば、医薬組成物)も含まれる。本発明の組成物は、異常細胞増殖の阻害または哺乳動物(例えば、ヒト)における増殖性障害の治療に対し有用である。本発明の組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)における自己免疫性障害、破壊性骨障害、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、免疫不全、炎症性疾患、感染症、ウイルス性疾患、線維性疾患、神経変性障害、膵炎または腎疾患の治療にも有用である。
【0149】
本発明には、異常細胞増殖の阻害方法または哺乳動物(例えば、ヒト)における増殖性障害の治療方法が含まれ、この方法は、上記の哺乳動物に、本明細書において記載される複合体(例えば、式(I)、(III’)もしくは(III)の複合体)もしくは細胞毒性化合物(例えば、式(IV’)もしくは(IV)の化合物)、またはそれらの組成物の治療有効量を、単独でまたは第2治療薬(例えば、化学療法薬)と組み合わせて投与することを含む。一実施形態においては、増殖性障害は一般的にがんであり;あるいは、増殖性障害は、乳癌、結腸癌、脳癌、前立腺癌、腎臓癌、膵癌、卵巣癌、頭部及び頸部癌、メラノーマ、結腸直腸癌、胃癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、精巣癌、メルケル細胞癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、リンパ器官癌、ならびに造血器腫瘍から成る群より選択されるがんである。
【0150】
同様に、本発明は、標的細胞または標的細胞を含有する組織を、有効量の本発明の複合体と接触させることを含む、選択した細胞集団において細胞死を誘発する方法を提供する。標的細胞は、複合体の細胞結合剤が結合することのできる細胞である。
【0151】
所望であれば、他の抗腫瘍剤等の、他の活性剤を上記の複合体と共に投与してもよい。
【0152】
がん治療薬ならびにその投与量、投与経路及び推奨用法は当業者に公知であり、医師用添付文書集(PDR)等の文献において記載されている。PDRは、様々ながんの治療において使用されている薬剤の投与量を開示している。治療上有効であるこれら前述の化学療法薬の投与計画及び投与量は、治療する特定のがん、疾患の程度、及び当技術分野の医師に知られる他の因子に依存し、医師によって決定され得る。PDRの内容は、参照によりその全体が本明細書に明白に取り込まれる。以下のパラメータを1個以上使用して当業者がPDRを調べ、本発明の教示に従って使用することができる化学療法薬及び複合体の投与計画及び投与量を決定することができる。これらのパラメータには、総合索引;製造業者;製品(企業名または商標薬物名);分類索引;ジェネリック/化学索引(非商標一般薬物名);薬剤の色画像;FDA標識と一致した製品情報;化学情報;機能/作用;指示及び禁忌;治験、副作用、注意事項が含まれる。
【0153】
本発明は、上記の任意の複合体の有効量を、治療を必要とする被験体に投与することを含む、がんではない状態の治療方法も提供する。この状態の例としては、自己免疫性障害(例えば、全身性狼瘡、関節リウマチ及び多発性硬化症)、移植片対宿主疾患、移植片拒絶(例えば、腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植、心臓移植拒絶及び骨髄移植拒絶)、免疫不全、炎症性疾患(例えば、筋炎及び膵炎)、破壊性骨障害、感染症(例えば、ウイルス感染症及び寄生体感染症)、ウイルス性疾患、線維性疾患、神経変性障害、または腎疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、上記の状態は、がん、関節リウマチ、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、狼瘡、筋炎、感染症及び免疫不全から成る群より選択される。
【0154】
試験管内使用の例としては、患部細胞または悪性細胞を死滅させるための、同一患者への移植前の自己骨髄の処理;形質転換受容性T細胞を死滅させ、移植片対宿主疾患(GVHD)を予防するための、移植前の骨髄の処理;標的抗原を発現しない所望の変異体を除く全ての細胞を死滅させるための、細胞培養物の処理;または、望まない抗原を発現する変異体を死滅させることが含まれる。
【0155】
非臨床試験管内使用の条件は、当業者により容易に決定される。
【0156】
臨床生体外使用の例は、がん治療もしくは自己免疫性疾患の治療において、自己移植前に骨髄から腫瘍細胞もしくはリンパ球系細胞を取り除くこと、またはGVHDを防ぐため、移植前に自己もしくは同種間の骨髄もしくは組織からT細胞及び他のリンパ球系細胞を取り除くことである。処理は、以下のとおり実施することができる。患者または他の個体から骨髄を回収し、次に本発明の細胞毒性剤を約10μM〜1pMの濃度範囲で加えた血清を含有する培地中で、約37℃で約30分間〜約48時間インキュベートする。インキュベーション濃度及びインキュベーション時間の正確な条件は、すなわち投与量は、当業者によって容易に決定される。インキュベーション後、血清を含有する培地で骨髄を洗浄し、公知方法に従って静脈内で患者に戻す。患者が、骨髄の回収と処理細胞の再注入の間に、一定期間の除去化学療法または全身照射等の他の治療を受けているような状況においては、標準的な医学装置を使用して、液体窒素中で冷凍して処理骨髄細胞を保管する。
【0157】
臨床生体内使用では、本発明の細胞毒性化合物または複合体は、無菌性または内毒素濃度について試験した溶液または凍結乾燥粉末として供給されるであろう。好適な複合体投与プロトコルの例は、以下のとおりである。各週に急速静注として、毎週1回で4週間、複合体を与える。5〜10mlのヒト血清アルブミンを添加することができる50〜1000mlの通常生理食塩水中で、急速投与量を与える。投与量は、静脈内で、1投与あたり10μg〜2000mgであろう(1日あたり100ng〜20mg/kgの範囲)。4週間の治療後、患者は継続して週に1度治療を受けることができる。投与経路、賦形剤、希釈剤、投与量、時間等に関する特定の臨床プロトコルを、臨床的状況が許す場合、当業者が決定することができる。
【0158】
好適な薬学的に許容できる担体、希釈剤及び賦形剤は周知であり、臨床的状況が許す場合、当業者によって決定され得る。好適な担体、希釈剤及び/または賦形剤には、(1)約1mg/ml〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有するかまたは含有しないダルベッコリン酸緩衝食塩水、pH約7.4、(2)0.9%食塩水(0.9% w/v NaCl)、及び(3)5%(w/v)ブドウ糖が含まれる。トリプタミン等の抗酸化剤、及びTween20等の安定化剤も含有してよい。
【0159】
選択した細胞集団における細胞死を誘発する方法は、実験管内(in vitro)、生体内(in vivo)または生体外(ex vivo)で実施することができる。

類似体及び誘導体
【0160】
本明細書において記載される各細胞毒性剤は、結果として得られる化合物が出発化合物の特異性及び/または活性を変わらず保持するような方法で改変され得ることを、細胞毒性剤の分野の当業者は容易に理解するであろう。これらの化合物の多くは、本明細書において記載される細胞毒性剤の代わりに使用され得ることも当業者は理解するであろう。したがって、本発明の細胞毒性剤には、本明細書において記載される化合物の類似体及び誘導体が含まれる。
【実施例】
【0161】
本明細書及びこれに続く実施例において引用する全参考文献は、その全体が参照により明白に取り込まれる。
[実施例]
実施例1
【化41】
【0162】
DM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドと2,2’‐ジチオピリジンを反応させることにより、反応性ジスルフィドを含有するマイタンシノイドを調製することができる。例えば米国特許第7,301,019号及び同第7,598,375号において記載される手順に従って、DM1及びDM4を調製することができる。2,2’‐ジチオピリジンとDM1の反応はPys−DM1を生じ、2,2’‐ジチオピリジンとDM4の反応はPys−DM4を生じるであろう。

Pys−DM1の合成
【化42】
【0163】
DM1(100mg、0.14mmol)をジメトキシエタン(4mL)に溶解し、酢酸(0.4mL)を含有するジメトキシエタン(4mL)溶液に磁気撹拌された2,2’‐ジチオジピリジン(100mg、0.45mmol)をに加えた。2時間後、20gカートリッジでのシリカクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン及び3%〜8%メタノールの線形勾配を用いて25分にわたり溶出させて反応物を精製した。所望の生成物を回収し、減圧下で溶媒を蒸発させて、104mg(収率87)の所望の生成物を得た。MS(M+H)実測値847.6;計算値847.3。

Pys−DM4の合成
【化43】
【0164】
DM4(94mg、0.12mmol)をジメトキシエタン(4mL)に溶解し、酢酸(0.4mL)を含有するジメトキシエタン(4mL)溶液に磁気撹拌された2,2’‐ジチオジピリジン(100mg、0.45mmol)を加えた。2時間後、20gカートリッジでのシリカクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン及び3%〜8%メタノールの線形勾配を用いて25分にわたり溶出させて反応物を精製した。所望の生成物を回収し、減圧下で溶媒を蒸発させて、90mg(収率84%)の所望の生成物を得た。MS(M+H)実測値889.7;計算値889.3。

実施例2
【化44】
DM4−スルホ−SPDB−Malの合成
【0165】
14.6mMのDM4のDMA(2mL、29.2mmol)溶液を、アルゴン下、室温においてHPLC/MSでモニターしながら、飽和炭酸水素ナトリウムと水の1:1溶液(5%、219μl)で処理し、その後スルホ−SPDB(29.7mg、0.073mmol)で処理した。1時間後、DM4が消費されてDM4−スルホ−SPDB−DM4が生じた。低解像度MS計算値(M−1)=1073.2;実測値(M−1)=1073.2。
【0166】
反応物をアルゴン下、1‐(2‐アミノエチル)‐マレイミド・HCl(12.90mg、0.073mmol)で処理した。3時間後、所望の生成物が形成した。この物質を、0.2%ギ酸を有する水、ならびに0.1%TEA及びアセトニトリルを使用して、セミ分取HPLC C8カラムで精製した。低解像度MS、計算値(M−1)=1098.34;実測値(M−1)=1098.2。

実施例3
【化45】
【0167】
DM4−SPDB−Malは、実施例2においてDM4−スルホ−SPDB−Malについて記載した手順と同様の手順に従って調製されるであろう。

実施例4
【化46】
【0168】
10mLの丸底フラスコにDM4(52.5mg、0.067mmol)及びメタノール(1.5mL)を入れ、無色透明溶液を得た。次にpH7.5 100mM KP、2mM EDTA緩衝液(1.5mL)中の2‐(ピリジン‐2‐イルジスルファニル)エタンアミン(既定の手順を使用して社内で調製、13.79mg、0.074mmol)の溶液を加えた。反応物を室温で1時間撹拌し、その後、減圧下で濃縮して粗製油状物質を得た。セミ分取RP−HPLCにより所望の生成物を98.7%の純度で単離し、32.8mg(収率56.2%)のDM4‐S(CH‐NHをギ酸塩として得た。MS:m/z 実測値:877.1(M+Na)、計算値:877.3;実測値:890.9(M+Cl)、計算値:889.3。

実施例5
【化47】
【0169】
上に示すとおり、DM4−SPDB−ヒドラジド及びDM4−スルホ−SPDB−ヒドラジドは、DM4−SPDBまたはDM4−スルホ−SPDBをヒドラジンと反応させることにより調製されるであろう。

実施例6
【化48】
【0170】
以前に記載されたスルホ−SPDB(米国特許第8,236,319号)をヒドラジンと反応させて、スルホ−SPDB−ヒドラジンリンカーを得ることができる。
【0171】
1‐((2,5‐ジオキソピロリジン‐1‐イル)オキシ)‐1‐オキソ‐4‐(ピリジン‐2‐イルジスルファニル)ブタン‐2‐スルホン酸(25.9mg、0.0635mmol)の0.06M DMA溶液を、室温において高速で撹拌子ながら、ヒドラジン(0.015ml、0.242mmol)の0.24M DMA溶液に滴下して加えた。アルゴン下、50℃で40分間撹拌後、逆相HPLC(C18、21.2×250mm)により、0.1% ギ酸を含有する脱イオン水を用い、30分にわたり5〜25%のアセトニトリル勾配を使用して溶出させて、粗製の反応混合物を精製した。所望の生成物を含有する分画を合わせ、冷凍し、凍結乾燥して3.1mg(収率15%)の所望の生成物を白色固体として得た。MS(M+1)実測値:324.05、計算値:324.01。H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ2.13−2.26(m、2H)、2.82−2.91(m、2H)、3.52(t、J=7.8、6.1Hz、1H)、7.24(t、J=7.3、4.7Hz、1H)、7.76(d、J=8.0Hz、1H)、7.83(t、1H)、8.45(d、J=3.5、2.0Hz、1H)。
【0172】
得られる化合物を、アルデヒドまたはケトンを有する細胞結合剤と反応させることができ、その後ヒドラジド結合を任意に還元することができる。得られるリンカーをアルデヒドまたはケトンを有する細胞結合剤と反応させ、その後DM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドと反応させて複合体を得ることができる。
【0173】
あるいは、リンカーを細胞結合剤と反応させた後、ジチオスレイトールまたはTCEP等の試薬を使用して、生成する分子の反応性ジスルフィドを還元してチオールを得ることができる。このチオールを、PyS−DM1またはPyS−DM4等の反応性ジスルフィドを有するマイタンシノイドと反応させることができる。

実施例7
【化49】
【0174】
Boc‐ヒドロキシルアミンは1,3‐ジブロモプロパンと反応し、次にチオ酢酸と反応するであろう。NaOHで処理し、その後HClで処理することによりチオール及びアミンが脱保護され、次にチオール部は2,2’‐ジピリジルジスルフィドと反応してW1を生じるであろう。DM4はW1と反応してW2を生じるであろう。1,3‐ジブロモプロパンを他の対称性ジブロミドと置き換えて、DMとジスルフィド部の間のスペーサーを他の長さにすることができる。
【0175】
リンカーW1を使用して、ケトンまたはアルデヒドを有する細胞結合剤を誘導体化し、反応性ジスルフィドを導入することもできる。オキシムを任意に還元することもできる。いずれかの方法により、DM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドが付加して、複合を完了することができるであろう。

実施例8
【化50】
【0176】
アジ化ナトリウムを1,3‐ジブロモプロパンと反応させ、次にチオ酢酸と反応させることができる。NaOHで処理し、その後HClで処理することによりチオールを脱保護することができ、次にチオール部を2,2’‐ジピリジルジスルフィドと反応させてTP1を得ることができる。DM4をTP1と反応させてTP2を得ることができる。1,3‐ジブロモプロパンを他の対称性ジブロミドと置き換えて、DMとジスルフィド部の間のスペーサーを他の長さにすることができる。
【0177】
リンカーTP1を使用して、アルキンを有する細胞結合剤を誘導体化し、反応性ジスルフィドを導入することもできる。DM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドが付加することにより、複合が完了するであろう。
【0178】
あるいは、リンカーTP1で修飾した細胞結合剤の反応性ジスルフィドを、DTTまたはTCEP等の試薬を用いて還元することができ、その後、得られるチオールを、PyS−DM1またはPyS−DM4等の反応性ジスルフィドを有するマイタンシノイドと反応させることができる。

実施例9
【化51】
【0179】
2‐メルカプト‐1‐エチルアミンを2,2’‐ジチオピリジンと反応させ、次にKJG等のシクロオクチンを有するカルボン酸と反応させて、リンカーKJ1を得ることができる。次に、DM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドとリンカーを反応させて、アジドを有する細胞結合剤と複合することができる化合物を得ることができる。
【0180】
反応性ジスルフィド及びシクロオクチンを有するリンカーを、アジドを有する細胞結合剤と代替的に反応させ、次にDM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドと反応させることができる。
【0181】
反応性ジスルフィド及びシクロオクチンを有するリンカーKJ1を、アジドを有する細胞結合剤と代替的に反応させ、次にジチオスレイトールまたはTCEP等の試薬を使用して反応性ジスルフィドを還元し、1個以上の新しく形成したチオール基を有する細胞結合剤を得ることができる。その後、生成する分子を、PyS−DM1またはPyS−DM4等の反応性ジスルフィドを有するマイタンシノイドと反応させることができる。

実施例10
【化52】
【0182】
UQ1を1,2,4,5‐テトラジン‐3‐酢酸等のカルボン酸を有するテトラゼンと反応させて、リンカーJK1等のリンカーを得ることができる。次にDM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドとリンカーを反応させて、JK2等の化合物を得ることができ、この化合物は、ノルボルネンまたはトランス‐シクロオクテン等のひずんだアルケンを有する細胞結合剤に複合化することができる。
【0183】
反応性ジスルフィド及びテトラジンを有するリンカーJK1を、ノルボルネンまたはトランス‐シクロオクテン等のひずんだアルケンを有する細胞結合剤と代替的に反応させ、次にDM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドと反応させて、JK2等の複合体を得ることができる。
【0184】
反応性ジスルフィドで修飾した細胞結合剤を代替的に還元し、反応性ジスルフィドを開裂させてチオールを得ることができる。このチオールは、次にDM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドと反応して、JK2等の複合体を生成することができる。

実施例11
【化53】
【0185】
(1S,2S,4S)‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐5‐エン‐2‐イル酢酸等のカルボン酸を有するノルボルネンまたは他のひずんだアルケンとUQ1を反応させて、リンカーHG1等のリンカーを得ることができる。次にDM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドとリンカーを反応させて、HG2等の化合物を得ることができ、この化合物は、テトラジンを有する細胞結合剤に複合化することができる。
【0186】
反応性ジスルフィド及びひずんだアルケンを有するリンカーを、テトラジンを有する細胞結合剤と代替的に反応させ、次にDM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドと反応させて、HG2等の複合体を得ることができる。
【0187】
反応性ジスルフィドで修飾した細胞結合剤を代替的に還元し、反応性ジスルフィドを開裂させてチオールを得ることができる。このチオールは、次にDM1またはDM4等のチオールを有するマイタンシノイドと反応して、HG2等の複合体を生成することができる。

実施例12
【化54】
【0188】
アルコキシアミノアセチル‐Cys(S‐2‐NO2‐フェニル)‐OH(1mg、2.88μmol、Org.Biomol.Biochem.2006,4,1313−1419に以前に記載されたとおりに調製)及びDM4(6mg、7.7μmol)を、DMF(250μL)及び脱イオン水(25μL)に溶解し、1時間磁気撹拌した。21×150mm C18カラムを使用して、0.1%ギ酸を含有する95%脱イオン水及び30分にわたり5%〜95%のアセトニトリル勾配を用いて、20mL/分で溶出させて、反応混合物をHPLC精製した。所望の生成物を回収し、冷凍し、凍結乾燥して、約0.25mg(収率9%)の所望の生成物を白色固体として得た。MS(M+H)実測値972.5;計算値972.3;MS(M−1)実測値970.4;計算値970.3。H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ0.78(s、3H)、1.08(s、3H)、1.12(s、5H)、1.16(d、J=6.7Hz、3H)、1.25(d、J=14.6Hz、2H)、1.44(d、J=12.4Hz、3H)、1.58(s、3H)、1.60−1.71(m、2H)、1.80(d、J=2.4Hz、3H)、1.89(d、J=2.0Hz、3H)、2.00−2.06(m、1H)、2.20(d、J=11.9Hz、2H)、2.67(dt、J=4.0、1.9Hz、1H)、2.71(s、3H)、2.80(d、J=9.6Hz、1H)、3.10(s、3H)、3.43−3.51(m、2H)、3.79(s、1H)、3.94(s、3H)、4.06(t、J=11.2Hz、1H)、4.29(d、J=3.2Hz、2H)、4.53(dd、J=12.0、2.9Hz、1H)、5.32(q、J=6.9Hz、1H)、5.60(dd、J=14.5、9.2Hz、1H)、5.93(s、1H)、6.48−6.56(m、2H)、6.59(t、J=10.6Hz、1H)、6.85(s、1H)、7.19(d、J=1.8Hz、1H)、7.51(d、J=5.8Hz、1H)、8.33(s、1H)。

実施例13
【化55】
【0189】
スルホ−SPDB−ヒドラジン(1mg、3.1μmol)及びDM4(4mg、5.1μmol)を、DMF(300μL)及び1/4倍の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100μL)に溶解し、1時間磁気撹拌した。21×150mm C18カラムを使用して、0.1%ギ酸を含有する95%脱イオン水及び30分にわたり5%〜95%のアセトニトリル勾配を用いて、20mL/分で溶出させて、反応混合物をHPLC精製した。所望の生成物を回収し、冷凍し、凍結乾燥して、約1mg(収率19%)の所望の生成物を白色固体として得た。MS(M+H)実測値992.6、計算値992.3;MS(M−1)実測値990.5、計算値990.3。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]
以下の式:
【化1a】
により表される複合体またはその薬学的に許容できる塩であって、
式中、
CBAは細胞結合剤であり;
DMは以下の式:
【化2a】
により表される薬物部であり;
R、R’及びR’’はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
Yは‐(CRCR‐であり;
〜Rはそれぞれ独立してH、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリールまたは任意に置換されたヘテロアリールであり;
nは0〜15の整数であり;ならびに
wは1〜20の整数であり、
上記はCBAは、遊離チオール(‐SH)基を有する修飾リジン残基を含まない場合の
複合体またはその薬学的に許容できる塩。
[態様2]
以下の式:
【化3a】
により表される態様1記載の複合体またはその薬学的に許容できる塩であって、
式中、
及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;ならびに
nは0〜10の整数である
前記複合体またはその薬学的に許容できる塩。
[態様3]
及びRがそれぞれメチルであり、ならびにnが2である態様2記載の複合体。
[態様4]
DMが以下の式:
【化4a】
により表される薬物部である態様1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
[態様5]
以下の式:
【化5a】
により表される複合体、またはその薬学的に許容できる塩であって、
式中、
CBAは細胞結合剤であり;
DMは以下の式:
【化6a】
により表される薬物部であり;
R、R’及びR’’はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
Yは‐(CRCR‐であり;
〜Rはそれぞれ独立してH、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリールまたは任意に置換されたヘテロアリールであり;
nは0〜15の整数であり;
CB’は、
【化7-1a】
【化7-2a】
であり、s1は前記CBAに共有結合する部位であり、s2は(CR1011基に共有結合する部位であり、Arは任意に置換されたアリーレンまたは任意に置換されたヘテロアリーレンであり、Cyは任意に置換されたシクロアルキンまたは任意に置換されたヘテロシクロアルキンの非アルキン残基であり、R201、R202及びR203はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;Zはピリジルまたは
【化8a】
であり、R204及びR205はそれぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり、R301はHまたは任意に置換されたアルキルであり;ならびに、Cy’は任意に置換されたひずんだシクロアルケンまたは任意に置換されたひずんだヘテロシクロアルケンの非アルケン残基であり;
、R、R及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
Zは存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR‐(CHCHO)‐、‐NR‐C(=O)‐(CHCHO)‐、‐(OCHCH‐C(=O)NR‐もしくは‐(OCHCH‐NR‐C(=O)‐であり;
pは1〜1000の整数であり;
は存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐(CHCHp’NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR(CHCHp’、‐(CHCHp’‐C(=O)NR‐、‐NRC(=O)(CHCHp’‐、‐C(=O)‐O‐もしくは‐O‐C(=O)‐であり;
p’は1〜10の整数であり;
QはH、電荷をもつ置換基、またはイオン化できる基であり;
、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
q及びrはそれぞれ独立して0〜10の整数であり;ならびに
wは1〜20の整数である
複合体、またはその薬学的に許容できる塩。
[態様6]
以下の式:
【化9a】
により表される態様5記載の複合体、またはその薬学的に許容できる塩であって、
式中、
及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;ならびに
nは0〜10の整数である
前記複合体、またはその薬学的に許容できる塩。
[態様7]
Qが、i)H;ii)‐SOH、‐Z’‐SOH、‐OPO、‐Z’‐OPO、‐PO、‐Z’‐PO、‐COH、‐Z’‐COH、‐NR1112もしくは‐Z’‐NR1112、もしくはそれらの薬学的に許容できる塩;またはiii)‐N141516もしくは‐Z’‐N141516であり;Z’は任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンであり;R14〜R16は、それぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり;ならびにXは薬学的に許容できる陰イオンである態様5または6に記載の複合体。
[態様8]
CB’が、
【化10-1a】
【化10-2a】
である態様5〜7のいずれか1項に記載の複合体。
[態様9]
CB’が、
【化11a】
である態様8記載の複合体。
[態様10]
Zが‐C(=O)‐NR‐または‐NR‐C(=O)‐である態様5〜9のいずれか1項に記載の複合体。
[態様11]
、R、R及びRがそれぞれHであり;Z’が任意に置換されたアルキレンであり;ならびにRがHである態様5〜10のいずれか1項に記載の複合体。
[態様12]
Qが、Hまたは‐SOHもしくはその薬学的に許容できる塩である態様5〜11のいずれか1項に記載の複合体。
[態様13]
以下の式:
【化12a】
のいずれか1つにより表される態様5記載の複合体、またはその薬学的に許容できる塩であって、DMが以下の式:
【化13a】
により表される薬物部である前記複合体、またはその薬学的に許容できる塩。
[態様14]
前記細胞結合剤が抗体、単鎖抗体、標的細胞に特異的に結合する抗体断片、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体、標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片、キメラ抗体、標的細胞に特異的に結合するキメラ抗体断片、ドメイン抗体、標的細胞に特異的に結合するドメイン抗体断片、リンホカイン、ホルモン、ビタミン、増殖因子、コロニー刺激因子または栄養輸送分子である態様1〜13のいずれか1項に記載の複合体。
[態様15]
前記細胞結合剤がモノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体または標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片である態様14記載の複合体。
[態様16]
前記抗体が表面再形成抗体、表面再形成単鎖抗体または表面再形成抗体断片である態様14または15に記載の複合体。
[態様17]
前記抗体がヒト化抗体、ヒト化単鎖抗体またはヒト化抗体断片である態様14〜16のいずれか1項に記載の複合体。
[態様18]
前記細胞結合剤がミニボディ、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ナノボディ、プロボディ、ドメインボディ、ユニボディ、二重特異性抗体(bispecific antibody)、アンキリン反復タンパク質(例えば、DARPin)、センチリンまたはAvibodyである態様1〜13のいずれか1項に記載の複合体。
[態様19]
以下の式:
【化14a】
により表される細胞毒性化合物またはその塩であって、
式中、
DMは以下の式:
【化15a】
により表される薬物部であり;
R、R’及びR’’はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
Yは‐(CRCR‐であり;
〜Rはそれぞれ独立してH、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリールまたは任意に置換されたヘテロアリールであり;
nは0〜15の整数であり;
CBは、マレイミド、X’‐CR‐C(=O)‐、X’‐CR‐C(=O)‐NR‐、R‐C(=O)‐、R‐C(=O)‐Ar‐、NH‐NR‐、NH‐NR‐C(=O)‐、NH‐NR‐Ar‐、NH‐O‐、
【化16a】
‐C≡CH、
【化17a】
‐N3、
【化18a】
であり、Arは任意に置換されたアリーレンまたは任意に置換されたヘテロアリーレンであり、
【化19a】
は任意に置換されたシクロアルキンまたは任意に置換されたヘテロシクロアルキンであり、R201、R202及びR203はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;Zはピリジルまたは
【化20a】
であり、R204及びR205はそれぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり、R301はHまたは任意に置換されたアルキルであり;ならびに
【化21a】
は任意に置換されたひずんだシクロアルケンまたは任意に置換されたひずんだヘテロシクロアルケンであり;
X’はハロゲンであり;
、R、R及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
Zは存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR‐(CHCHO)‐、‐NR‐C(=O)‐(CHCHO)‐、‐(OCHCH‐C(=O)NR‐もしくは‐(OCHCH‐NR‐C(=O)‐であり;
pは1〜1000の整数であり;
は存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐(CHCHp’NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR(CHCHp’、‐(CHCHp’‐C(=O)NR‐、‐NRC(=O)(CHCHp’‐、‐C(=O)‐O‐もしくは‐O‐C(=O)‐であり;
p’は1〜10の整数であり;
QはH、電荷をもつ置換基、またはイオン化できる基であり;
、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;ならびに
q及びrはそれぞれ独立して0〜10の整数である
細胞毒性化合物またはその塩。
[態様20]
以下の式:
【化22a】
により表される態様19記載の細胞毒性化合物またはその塩であって、
式中、
及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり、ならびに
nは0〜10の整数である
前記細胞毒性化合物またはその塩。
[態様21]
Qが、i)H;ii)‐SOH、‐Z’‐SOH、‐OPO、‐Z’‐OPO、‐PO、‐Z’‐PO、‐COH、‐Z’‐COH、‐NR1112もしくは‐Z’‐NR1112、もしくはそれらの薬学的に許容できる塩;またはiii)‐N141516もしくは‐Z’‐N141516であり;Z’は任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンであり;R14〜R16は、それぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり;ならびにXは陰イオンである態様19または20に記載の細胞毒性化合物。
[態様22]
CBが、マレイミド、X’‐CR‐C(=O)‐、X’‐CR‐C(=O)‐NR‐、R‐C(=O)‐、R‐C(=O)‐フェニレン‐、NH‐NR‐、NH‐NR‐フェニレン‐、NH‐O‐、‐N3、‐C≡CH、
【化23a】
である態様19〜21のいずれか1項に記載の細胞毒性化合物。
[態様23]
CBがマレイミドである態様22に記載の細胞毒性化合物。
[態様24]
Zが‐C(=O)‐NR‐または‐NR‐C(=O)‐である態様19〜23のいずれか1項に記載の細胞毒性化合物。
[態様25]
、R、R及びRがそれぞれHであり;Z’が任意に置換されたアルキレンであり;ならびにRがHである態様19〜24のいずれか1項に記載の細胞毒性化合物。
[態様26]
Qが、Hまたは‐SOHもしくはその塩である態様19〜25のいずれか1項に記載の細胞毒性化合物。
[態様27]
以下の式:
【化24a】
のいずれか1つにより表される態様19記載の細胞毒性化合物、またはその塩であって、DMが以下の式:
【化25a】
により表される薬物部である前記細胞毒性化合物、またはその塩。
[態様28]
以下の式:
【化26a】
により表されるリンカー化合物またはその塩であって、
式中、
CBは、マレイミド、X’‐CR‐C(=O)‐、X’‐CR‐C(=O)‐NR‐、R‐C(=O)‐、R‐C(=O)‐Ar‐、NH‐NR‐、NH‐NR‐C(=O)‐、NH‐NR‐Ar‐、NH‐O‐、
【化27a】
‐C≡CH、
【化28a】
‐N3、
【化29a】
であり、Arは任意に置換されたアリーレンまたは任意に置換されたヘテロアリーレンであり、
【化30a】
は任意に置換されたシクロアルキンまたは任意に置換されたヘテロシクロアルキンであり、R201、R202及びR203はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;Zはピリジルまたは
【化31a】
であり、R204及びR205はそれぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり、ならびに
【化32a】
は任意に置換されたひずんだシクロアルケンまたは任意に置換されたひずんだヘテロシクロアルケンであり;
X’はハロゲンであり;
、R、R及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
Zは存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR‐(CHCHO)‐、‐NR‐C(=O)‐(CHCHO)‐、‐(OCHCH‐C(=O)NR‐もしくは‐(OCHCH‐NR‐C(=O)‐であり;
pは1〜1000の整数であり;
は存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐(CHCHp’NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR(CHCHp’、‐(CHCHp’‐C(=O)NR‐、‐NRC(=O)(CHCHp’‐、‐C(=O)‐O‐もしくは‐O‐C(=O)‐であり;QはH、電荷をもつ置換基、またはイオン化できる基であり;
p’は1〜10の整数であり;
、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
q及びrはそれぞれ独立して0〜10の整数であり;ならびに
は‐SH、‐SSRまたは‐SC(=O)Rであり、Rはフェニル、ニトロフェニル、ジニトロフェニル、カルボキシニトロフェニル、ピリジルまたはニトロピリジルであり;及び、Rはアルキルである
リンカー化合物またはその塩。
[態様29]
‐SHまたは‐SSRである態様28記載のリンカー化合物。
[態様30]
Qが、i)H;ii)‐SOH、‐Z’‐SOH、‐OPO、‐Z’‐OPO、‐PO、‐Z’‐PO、‐COH、‐Z’‐COH、‐NR1112もしくは‐Z’‐NR1112、もしくはそれらの薬学的に許容できる塩;またはiii)‐N141516もしくは‐Z’‐N141516であり;Z’は任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンであり;R14〜R16は、それぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり;ならびにXは陰イオンである態様28または29に記載のリンカー化合物。
[態様31]
CBが、マレイミド、X’‐CR‐C(=O)‐、X’‐CR‐C(=O)‐NR‐、R‐C(=O)‐、R‐C(=O)‐フェニレン‐、NH‐NR‐、NH‐NR‐フェニレン‐、NH‐O‐、‐N3、‐C≡CH、
【化33a】
である態様28または30に記載のリンカー化合物。
[態様32]
CBがマレイミドである態様31記載のリンカー化合物。
[態様33]
Zが‐C(=O)‐NR‐または‐NR‐C(=O)‐である態様28〜32のいずれか1項に記載のリンカー化合物。
[態様34]
、R、R及びRがそれぞれHであり;Z’が任意に置換されたアルキレンであり;ならびにRがHである態様28〜33のいずれか1項に記載のリンカー化合物。
[態様35]
Qが、Hまたは‐SOHもしくはその塩である態様28〜34のいずれか1項に記載のリンカー化合物。
[態様36]
以下の式:
【化34a】
のいずれか1つにより表される態様28記載のリンカー化合物、またはその塩であって、Jが‐SSRである前記リンカー化合物、またはその塩。
[態様37]
態様1〜18のいずれか1項に記載の複合体または態様19〜27のいずれか1項に記載の化合物;及び薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
[態様38]
異常細胞増殖の阻害方法または哺乳動物における増殖性障害、自己免疫性障害、破壊性骨障害、感染症、ウイルス性疾患、線維性疾患、神経変性障害、膵炎もしくは腎疾患の治療方法であって、該方法が、態様1〜18のいずれか1項に記載の複合体、態様19〜27のいずれか1項に記載の化合物、または態様37記載の組成物;及び任意に第2治療薬の治療有効量を、前記哺乳動物に投与することを含む方法。
[態様39]
前記第2治療薬を前記哺乳動物に、順次にまたは連続して投与する態様38記載の方法。
[態様40]
前記方法が、がん、関節リウマチ、多発性硬化症、移植片対宿主疾患、移植片拒絶、狼瘡、筋炎、感染症及び免疫不全から成る群より選択される状態の治療方法である態様38または39記載の方法。
[態様41]
前記状態ががんである態様40記載の方法。
[態様42]
前記がんが乳癌、結腸癌、脳癌、前立腺癌、腎臓癌、膵癌、卵巣癌、頭部及び頸部癌、メラノーマ、結腸直腸癌、胃癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、精巣癌、メルケル細胞癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、リンパ器官癌、ならびに造血器腫瘍から成る群より選択される態様41記載の方法。
[態様43]
以下の式:
【化35a】
により表される修飾細胞結合剤またはその塩であって、
式中、
CBAは細胞結合剤であり;
CB’は、
【化36-1a】
【化36-2a】
であり、s1は前記CBAに共有結合する部位であり、s2は(CR1011基に共有結合する部位であり、Arは任意に置換されたアリーレンまたは任意に置換されたヘテロアリーレンであり、Cyは任意に置換されたシクロアルキンまたは任意に置換されたヘテロシクロアルキンの非アルキン残基であり、R201、R202及びR203はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;Zはピリジルまたは
【化37a】
であり、R204及びR205はそれぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり、R301はHまたは任意に置換されたアルキルであり、ならびに、Cy’は任意に置換されたひずんだシクロアルケンまたは任意に置換されたひずんだヘテロシクロアルケンの非アルケン残基であり;
、R、R及びRはそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
Zは存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐O‐、‐O‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR‐(CHCHO)‐、‐NR‐C(=O)‐(CHCHO)‐、‐(OCHCH‐C(=O)NR‐もしくは‐(OCHCH‐NR‐C(=O)‐であり;
pは1〜1000の整数であり;
は存在しないか、または‐SONR‐、‐NRSO‐、‐C(=O)‐NR‐、‐NR‐C(=O)‐、‐(CHCHp’NR‐C(=O)‐、‐C(=O)‐NR(CHCHp’、‐(CHCHp’‐C(=O)NR‐、‐NRC(=O)(CHCHp’‐、‐C(=O)‐O‐もしくは‐O‐C(=O)‐であり;
p’は1〜10の整数であり;
QはH、電荷をもつ置換基、またはイオン化できる基であり;
、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立してHまたは任意に置換されたアルキルであり;
q及びrはそれぞれ独立して0〜10の整数であり;
は‐SH、‐SSRまたは‐SC(=O)Rであり、Rはフェニル、ニトロフェニル、ジニトロフェニル、カルボキシニトロフェニル、ピリジルまたはニトロピリジルであり;及び、Rはアルキルであり;ならびに
wは1〜20の整数である
修飾細胞結合剤またはその塩。
[態様44]
が‐SHまたは‐SSRである態様43記載の修飾細胞結合剤。
[態様45]
Qが、i)H;ii)‐SOH、‐Z’‐SOH、‐OPO、‐Z’‐OPO、‐PO、‐Z’‐PO、‐COH、‐Z’‐COH、‐NR1112もしくは‐Z’‐NR1112、もしくはそれらの薬学的に許容できる塩;またはiii)‐N141516もしくは‐Z’‐N141516であり;Z’は任意に置換されたアルキレン、任意に置換されたシクロアルキレンまたは任意に置換されたフェニレンであり;R14〜R16は、それぞれ独立して任意に置換されたアルキルであり;ならびにXは薬学的に許容できる陰イオンである態様43または44に記載の修飾細胞結合剤。
[態様46]
CB’が、
【化38-1a】
【化38-2a】
である態様43〜45のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。
[態様47]
CB’が、
【化39a】
である態様46記載の修飾細胞結合剤。
[態様48]
Zが‐C(=O)‐NR‐または‐NR‐C(=O)‐である態様43〜47のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。
[態様49]
、R、R及びRがそれぞれHであり;Z’が任意に置換されたアルキレンであり;ならびにRがHである態様43〜48のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。
[態様50]
Qが、Hまたは‐SOHもしくはその薬学的に許容できる塩である態様43〜49のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。
[態様51]
以下の式:
【化40a】
のいずれか1つにより表される態様43または44に記載の修飾細胞結合剤、またはその薬学的に許容できる塩。
[態様52]
前記細胞結合剤が抗体、単鎖抗体、標的細胞に特異的に結合する抗体断片、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体、標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片、キメラ抗体、標的細胞に特異的に結合するキメラ抗体断片、ドメイン抗体、標的細胞に特異的に結合するドメイン抗体断片、リンホカイン、ホルモン、ビタミン、増殖因子、コロニー刺激因子または栄養輸送分子である態様43〜51のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。
[態様53]
前記細胞結合剤がモノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体または標的細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体断片である態様52記載の修飾細胞結合剤。
[態様54]
前記抗体が表面再形成抗体、表面再形成単鎖抗体または表面再形成抗体断片である態様52または53に記載の修飾細胞結合剤。
[態様55]
前記抗体がヒト化抗体、ヒト化単鎖抗体またはヒト化抗体断片である態様52〜54のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。
[態様56]
前記細胞結合剤がミニボディ、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ナノボディ、プロボディ、ドメインボディ、ユニボディ、二重特異性抗体(bispecific antibody)、アンキリン反復タンパク質(例えば、DARPin)、センチリンまたはAvibodyである態様43〜51のいずれか1項に記載の修飾細胞結合剤。