(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、容器内のガスに特定の波長のレーザー光を照射し、特定のエネルギー準位間の光学遷移を誘起することで光反応を引き起こす技術が広く用いられている。例えば、同位体の分離や、ガス中の微量成分の分析などで行われている。
この技術においては、レーザー光が光反応にどれだけ用いられたかを示す「光利用率」を高めることにより、投入エネルギーに対する成果を示す「エネルギー収率」が向上する。
「光利用率」を高める代表的な方法として、レーザー光と反応対象ガスが接する経路の長光路化が挙げられる。
そして、長光路化の方法としては、単純に反応が行われる容器の長さをレーザー光の照射方向に沿って直線上に延長することが挙げられるが、この場合、容器の大きさや、設置スペース等の観点から限度がある。
そのため、複数枚の凹面ミラーを向い合せに設置し、当該凹面ミラー間にレーザー光を複数回反射させて長光路化を達成する方法が一般的に用いられている。このように凹面ミラーを配置してレーザー光を複数回反射させる構造は、一般に、多重反射セルと呼ばれる。
【0003】
通常、凹面ミラー表面では入射したレーザー光の一部が拡散するため、凹面ミラー表面におけるレーザー光の反射点が光点となってカメラ等で観察することができる。そのため、多重反射セルにおいては凹面ミラー表面に複数の光点が観察され、これらの光点群をスポットパターンと呼ぶ。
図5に、スポットパターンの一例を示す。
そして、例えば多重反射セルによりガス中の微量成分を分析する場合においては、ガス中に照射されたレーザー光の光反応後における出射光強度を検出することによりガス濃度を測定するため、凹面ミラー表面においては常に設計通りのスポットパターンを維持し、安定した出射光強度を得ることが求められる。
そのためには、向い合せに設置した凹面ミラーの位置(ミラー間距離)や向き(あおり方向及び首振り方向)、レーザー光の入射角度を厳密に調整することが必要となる。しかしながら、多重反射セルを所定温度に加熱又は冷却して光反応又は分光分析するような場合においては、容器等の温度変化によりミラー間距離や凹面ミラーの向きが一定に維持されず、又、凹面ミラーへのレーザー光の入射角がずれて容器内壁にレーザー光が当たって乱反射してしまうこと等により、設計通りのスポットパターンが得られない。
したがって、多重反射セルにおいては、向い合せに配置した凹面ミラーのミラー間距離を一定に保つ技術と、凹面ミラーの向きを一定に維持する技術が肝要である。
【0004】
特許文献1には、内部に一対のミラーが設置された容器の熱寸法変化を吸収するジャバラと、ミラー間距離を一定に維持するインバーロッドを用いた多重反射セルが開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示された多重反射セルには、レーザー光の照射時にミラーの向きを調整する機構がなく、ミラーの向きを調整することができないという課題があった。さらに、ミラー間の距離が延長されるにつれ、多重反射セル自体の重量をインバーロッドで支えきれず、鉛直方向にズレや傾きが生じて精密な光路の調整が困難となる課題があった。
【0005】
上記の課題に対して、特許文献2には、複数の凹面鏡を配置した外筒容器の一部に伸縮自在なベローズを設けて前記外筒容器を架台と可動ステージにより支持し、該可動ステージにより前記外筒容器が長手方向に移動可能とすることにより、凹面鏡間の距離を厳密に調整する多重反射セルが開示されている。さらに、当該多重反射セルの凹面鏡にはあおりを調整する調整ネジを設けることにより、レーザー光の照射中でも、凹面鏡の向きを微調整することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ガス中のさらなる微量成分の分析や光反応による同位体分離の収率向上のため、多重反射セルにおいてはより一層の長光路化が求められている。具体的には、ミラー間距離を延長し、かつミラー間におけるレーザー光の往復回数を増やすことが求められている。しかし、レーザー光の入射角度のズレによる光路末端での変位量は光路長に比例して大きくなることから、ミラー間距離や向き等の変位の許容差に対して厳格性が必要である。
【0008】
さらに、レーザー光を長光路化することによって、容器内の密度差によるレーザー光の揺らぎの影響を大きく受けるようになる。したがって、多重反射セル全体の温度均一性や容器内のガス濃度についてもより厳密性が求められる。
しかしながら、特許文献2に開示された技術においては、所定温度に加熱又は冷却した際に架台と可動ステージとの鉛直方向における伸縮の差によるズレや傾きが長光路化に大きな問題であることに加え、凹面鏡のあおりを調整する調整ネジによる容器内への熱の侵入や気密性が大きな問題であった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、所定温度に加熱又は冷却して光反応若しくは分光分析に用いる多重反射セルにおいて、加熱又は冷却時及びその後においても対向して配置された凹面ミラーの位置と向きを一定に保つことができる、レーザー光照射時に凹面ミラーの調整を必要としない多重反射セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る多重反射セルは、レーザー光を複数回反射するために対向して設けられた複数の凹面ミラーを有し、所定温度に加熱又は冷却して光反応若しくは分光分析に用いるものであって、一方に底部を有し他方に開口部を有するとともに、該開口部が対向した状態で配置された一対の有底筒状容器と、該各有底筒状容器内に前記凹面ミラーを固定するミラー固定部材と、前記一対の有底筒状容器の開口部同士を気密に連結し、前記凹面ミラーの光軸方向に伸縮可能な伸縮連結部材と、設置面に固定され、前記各有底筒状容器の外周面を支持固定する固定架台と、前記設置面に配置され、前記各有底筒状容器が前記凹面ミラーの光軸方向に伸縮可能に外周面を支持する可動架台とを備え、前記固定架台及び前記可動架台は、熱膨張が等しいことを特徴とするものである。
【0011】
(2)上記(1)に記載のものにおいて、前記固定架台及び前記可動架台を形成する部材は、同じ材質であることを特徴とするものである。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記固定架台及び前記可動架台は、前記筒状容器の外周面の周方向に半周以上接触して支持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る多重反射セルにおいては、レーザー光を複数回反射するために対向して設けられた複数の凹面ミラーを有し、所定温度に加熱又は冷却して光反応若しくは分光分析に用いるものであって、一方に底部を有し他方に開口部を有するとともに、該開口部が対向した状態で配置された一対の有底筒状容器と、該各有底筒状容器内に前記凹面ミラーを固定するミラー固定部材と、前記一対の有底筒状容器の開口部同士を気密に連結し、前記凹面ミラーの光軸方向に伸縮可能な伸縮連結部材と、設置面に固定され、前記各有底筒状容器の外周面を支持固定する固定架台と、前記設置面に配置され、前記各有底筒状容器が前記凹面ミラーの光軸方向に伸縮可能に外周面を支持する可動架台とを備え、前記固定架台及び前記可動架台は、熱膨張を等しくすることにより、前記有底筒状容器、固定架台及び可動架台の温度変化による伸縮によらず前記凹面ミラーの位置及び向きが一定に維持されるので、レーザー光照射時に前記凹面ミラーの位置及び向きの調整をなくすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る多重反射セル100は、
図1及び
図2に示すように、レーザー光を複数回反射させるために対向して設けられた一対の凹面ミラー11及び21を有し、所定温度に加熱又は冷却して光反応若しくは分光分析に用いるものであって、有底筒状容器13及び23と、ミラー固定部材15及び25と、ベローズ31と、固定架台17及び27と、可動架台19及び29を備え、固定架台17及び27と可動架台19及び29は全て熱膨張が等しいものである。
さらに、有底筒状容器13及び23とベローズ31の外周面にはコイル管51が設けられている。
【0016】
以下、多重反射セル100の各構成を詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0017】
<凹面ミラー>
凹面ミラー11及び21は、凹状反射面を有し、入射したレーザー光を該凹状反射面において複数回反射させるため、凹面ミラー11と凹面ミラー21が向かい合わせに対向して設けられている。
【0018】
以下の説明において、凹面ミラー11及び21それぞれの凹状反射面の光軸に沿った方向(光軸方向)を、ミラー間方向と記す場合がある。
【0019】
本実施の形態において、凹面ミラー11及び21は、直径200mm、厚さ23mmの合成石英製であり、ミラー間距離は5000mmである。しかしながら、これに限定されるものではなく、任意の形状(直径、厚さ等)と距離を選択することができる。
【0020】
<有底筒状容器>
有底筒状容器13及び23は、一方に底部を有し他方に開口部を有すると共に、有底筒状容器13及び23の開口部同士が対向した状態で配置されたものであり、
図2においては、筒状部材13a及び23aの一端側に底蓋部材13b及び23bがフランジにより着脱可能に取り付けられた構造である。
【0021】
有底筒状容器13には、レーザー光源61から出射したレーザー光が透過するレーザー透過窓63と、レーザー透過窓63を通して照射されたレーザー光を凹面ミラー21方向に反射させるガイドミラー65が設けられている。
一方、有底筒状容器23には観察窓67が設置され、凹面ミラー21におけるレーザー光のスポットパターンを観察し、カメラ69により撮影することができる。
【0022】
さらに、有底筒状容器13及び23の底部にはガス導入管41及びガス導出管43がそれぞれ接続し、光反応又は分光分析に供される試料ガスが多重反射セル100に導入及び導出される。
【0023】
本実施の形態において、有底筒状容器13及び23には、外径267mm、厚さ4mm、長さ2500mmのSUS304製の鋼管を用いているが、これに限定されることではなく、任意のサイズと材質を選択することができる。
【0024】
さらに、レーザー透過窓63には直径34mm、厚さ2mmのコバール製を、ガイドミラー65には直径5mm、45度の合成石英製を、観察窓67には直径137mm、厚さ8mmのコバール製を用いているが、これらに限定されるものではなく、任意のサイズと材質を選択することができる。
【0025】
<ミラー固定部材>
ミラー固定部材15及び25は、凹面ミラー11及び21の背面側を保持し、有底筒状容器13及び23に凹面ミラー11及び21をそれぞれ固定するものであり、
図2において、ミラー固定部材15及び25は筒状部材13a及び23aの底蓋部材13b及び23b側の端部に固定されている。
【0026】
これにより、凹面ミラー11及び21は、ミラーの位置(ミラー間距離)及び向き(あおり方向、首振り方向)が固定された状態で有底筒状容器13及び23に設置されるが、ミラー固定部材15及び25は、凹面ミラー11及び21の位置及び向きを厳密に調整するミラー調整機構を有するものであることがより好ましい。
【0027】
この場合、凹面ミラー11及び21の位置及び向きの調整は、常温常圧時に、底蓋部材13b及び23bを筒状部材13a及び23aから取り外した状態で凹面ミラー11及び21の位置(ミラー間方向、鉛直方向)及び向き(あおり方向及び首振り方向)をミラー調節機構により調整される。
【0028】
<ベローズ>
ベローズ31は、有底筒状容器13の開口部と有底筒状容器23の開口部とを気密に連結し、凹面ミラー11及び13のミラー間方向に伸縮可能な伸縮連結部材からなるものであり、
図2において、ベローズ31は筒状部材13a及び23aの開口部に設けられたフランジにより接続されている。
【0029】
ベローズ31は、多重反射セル100を所定の温度に加熱又は冷却した際に、有底筒状容器13及び23の熱膨張又は熱収縮によるミラー間方向の伸縮を吸収する働きを有する。
【0030】
本実施の形態において、ベローズ31には、外径230mm、厚さ0.3mm、長さ150mmのSUS304製のものを用いたが、これに限定されるものではなく、任意のサイズと材質を選択することができる。
【0031】
<固定架台>
固定架台17及び27は、設置面1に固定され、有底筒状容器13及び23の底部(
図2における底蓋部材13b及び23b)側の外周面をそれぞれ支持固定するものである。
固定架台17及び27により有底筒状容器13及び23が設置面1に対して固定されることにより、加熱又は冷却された有底筒状容器13及び23がミラー間方向に熱膨張又は熱収縮しても、凹面ミラー11及び21の設置面1に対する位置が固定され、ミラー間距離は一定に保たれる。よって、固定架台17及び27それぞれの真上に凹面ミラー11及び21の各反射面が位置するように配置されることが望ましい。
【0032】
さらに、例えば、多重反射セル100の周囲環境温度が変化して有底筒状容器13の外周面の周方向に温度差が生じ、周方向に伸縮の差が生じた場合において、固定架台17が棒状部材であると、有底筒状容器13の周方向(=ミラー間方向の軸周り)に微小な回転や変形が生じることがある。そして、この微小な回転や変形によって凹面ミラー11の向きにも影響が生じる。
【0033】
そのため、固定架台17及び27は、
図3に示すように、有底筒状容器13及び23の外周面の周方向に下半周を接触させて支持することにより、有底筒状容器13及び23が、多重反射セル100の周囲環境温度変化によりミラー間方向の軸周りに回転したり変形することを防止することができる。
【0034】
本実施の形態において、固定架台17及び27には、幅40mm、長さ300mm、有底筒状容器13及び23と設置面1との高さが200mmの板状であって、材質としてSUS304製の部材を用いた。さらに、固定架台17及び27には、有底筒状容器13及び23の外周面の周方向に下半周が接触する形状のものを用いた。
【0035】
ただし、固定架台17及び27はこれに限定されるものではなく、任意のサイズと材質を選択することができ、又は、有底筒状容器13及び23の外周面の周方向に全周が接触するものであっても良い。
なお、固定架台17及び27が固定される設置面1は、床面等であっても良い。
【0036】
<可動架台>
可動架台19及び29は、設置面1に配置され、有底筒状容器13及び23が凹面ミラー11及び21のミラー間方向に伸縮可能となるように、有底筒状容器13及び23の開口部の外周面を支持するものである。
【0037】
可動架台19及び29は、上面を有底筒状容器13及び23の外周面にそれぞれ固定し、底面には低摩擦材を塗布若しくは低摩擦材シート等を設置することにより、有底筒状容器13及び23は設置面1上を小さい抵抗でスライドすることができる。
【0038】
可動架台19及び29は、底面に車輪やベアリング等を設けたものであっても良く、若しくは、可動架台19及び29の底面を設置面1に固定し、上面において有底筒状容器13及び23の外周面がスライドする態様であっても良い。
【0039】
可動架台19及び29は、固定架台17及び27と熱膨張が等しいものであり、固定架台17及び27と可動架台19及び29を形成する部材は、同じ材質であることがより好ましい。
また、可動架台19及び29は、固定架台17及び27と設置面1からの高さが同じ形状で、有底筒状容器13及び23の外周面の周方向に下半周を接触させて支持することが好ましい。
なお、温度が1℃上昇(低下)したときの部材の長さ変化量を熱膨張(熱収縮)という。
【0040】
<コイル管>
コイル管51は、有底筒状容器13及び23とベローズ31の外周面に当接するように設けられたものであり、コイル管51の内部に冷媒や温水等を流すことにより有底筒状容器13及び23とベローズ31の内部を加熱又は冷却し、所定の温度に保つものである。
【0041】
本実施の形態において、コイル管51は、外径19mm、厚さ1mm、長さ25mのC1220製を用いたが、これに限定されるものではなく、任意のサイズと材質を選択することができる。
さらに、冷媒として混合フロンガスをコイル管51の内部に流し、多重反射セル100の内部の温度を-30℃に保つものとしたが、コイル管51に流す流体の種類と温度は任意に選択することができる。
【0042】
本実施の形態に係る多重反射セル100は、常温常圧時に、凹面ミラー11及び21の位置及び向きを決定した後、コイル管51に冷媒又は温水等を流して所定の温度に加熱又は冷却した際に、多重反射セル100の内部に温度や圧力変化が生じても、凹面ミラー11及び21の位置及び向きが一定に保たれることで、凹面ミラー11及び21の向きを調整する必要がなくなる。
【0043】
具体的には、凹面ミラー11及び21が有底筒状容器13及び23に固定され、有底筒状容器13及び23が、凹面ミラー11及び21の反射面に近い位置(理想的には真下)において、固定架台17及び27により設置面1に固定されることにより、凹面ミラー11及び21の設置面1に対する位置が固定され(
図4参照)、ミラー間距離は一定に保たれる。
【0044】
また、固定架台17及び27並びに可動架台19及び29の全ての熱膨張を等しくすることにより、多重反射セル100の温度変化や多重反射セル100の周囲環境温度変化による凹面ミラー11及び21の鉛直方向のズレや傾きを防ぐことができる。
【0045】
さらに、固定架台17及び27並びに可動架台19及び29が有底筒状容器13及び23の外周面の周方向にそれぞれ半周以上接触させることにより、多重反射セル100の周囲環境温度変化による凹面ミラー11及び21の光軸周りの回転を防ぐことができる。
【0046】
図2に示す多重反射セル100において、ミラー固定部材15及び25はミラー調節機構を有し、底蓋部材13b及び23bが当該ミラー調整機構を覆うように筒状部材13a及び23aの一端側にそれぞれ着脱可能に取り付けられていることにより、多重反射セル100内への熱の侵入や気密性の低下が生じるものではない。
【0047】
なお、上記の説明は、一つのベローズ31により有底筒状容器13及び23を気密に保って連結するものであったが、ミラー間距離をより延長する場合においては、複数の連結伸縮部材を介して接続しても良く、この場合においては連結伸縮部材同士の間に配管と該配管がミラー間方向に移動可能となるように支持する可動架台を設置しても良い。
【0048】
次に、多重反射セル100を用いたガスのレーザー光反応方法を以下に説明する。
まず、多重反射セル100の外部に、レーザー光源61とカメラ69を設置する。本実施の形態では、レーザー光源61にはHe-Neレーザーを用いた。
【0049】
次に、ミラー調節機構を有するミラー固定部材15及び25により凹面ミラー11及び21を有底筒状容器13及び23に固定し、有底筒状容器13の開口部と有底筒状容器23の開口部向けて開口部が対向するように有底筒状容器13及び23を設置面1に設置する。
【0050】
そして、底蓋部材13b及び23bを筒状部材13a及び23aから取り外した状態で、凹面ミラー11及び21の位置及び向きをミラー固定部材15及び25のミラー調節機構により厳密に調節する。本実施の形態では、ミラー間距離を5000mmに設定し、この時のミラー間におけるレーザー光の回数は約90回である。
【0051】
凹面ミラー11及び21の位置及び向きを調整した後に、底蓋部材13b及び23bを筒状部材13a及び23aに取り付ける。
そして、レーザー光源61から出射したレーザー光をレーザー透過窓63と通して多重反射セル100の内部に導入する。
【0052】
多重反射セル100の内部に導入されたレーザー光は、ガイドミラー65により凹面ミラー21側に反射される。そして、凹面ミラー11及び21の間を約90回往復したレーザー光は、再びガイドミラー65で反射され、レーザー透過窓63を通って外部に出射する。
【0053】
凹面ミラー11及び21の間におけるレーザー光の反射回数は、凹面ミラー21の表面に照射されたレーザー光のスポットパターンをカメラ69で撮影することにより計測することができる。
【0054】
凹面ミラー11及び21の位置及び向きが調整されていることを確認した後、レーザー光を停止する。そして、図示しない真空ポンプにより、ガス導出管43を経て有底筒状容器13及び23並びにベローズ31内を真空引きした後、有底筒状容器13及び23、ベローズ31内にガス導入管41から光反応の試料ガスを供給する。
【0055】
さらに、コイル管51内に冷媒を流して、有底筒状容器13及び23とベローズ31内を-30℃に冷却する。
最後に、レーザー光源61からレーザー光を出射し、レーザー透過窓63を通してレーザー光を有底筒状容器13に導入することで光反応を行うことができる。
【0056】
以上より、本発明に係る多重反射セル100は冷却又は加熱した際においても凹面ミラー11及び13の位置及び向きが一定に維持されるため、本発明に係る多重反射セル100を用いたガスのレーザー光反応方法は、凹面ミラー11及び21において所定回数反射することによって長光路化したレーザー光により、光反応を効率良く行うことができる。
【0057】
なお、上記の説明は、コイル管51に冷媒を流して所定の温度に冷却するものであったが、例えば、コイル管51に温水を流して所定の温度に加熱する場合においても、凹面ミラー11及び21の位置及び向きは一定に維持され、凹面ミラー11及び21の向きを調整する必要がない。
【0058】
また、固定架台17及び27並びに可動架台19及び29は、全て同じ材質の部材で作成されたものであっても良いが、異なる材質の部材を組み合わせた固定架台17及び27並びに可動架台19及び29全ての熱膨張が等しければ問題ない。