【文献】
西村寿彦、土田克実、石井望、伊藤精彦,「コプレーナ導波路給電による準光学アンテナ・ミキサ」,電子情報通信学会論文誌(B−II),1997年12月25日,Vol.J80-B-II, No.12,pp.1076-1083
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたような従来の電界強度分布測定装置では、位相を測定するためのリファレンス信号として、VNAの出力をアンテナに供給し、VNAで受信した信号と送信信号を比較して位相差情報を抽出していた。よって、アンテナを取り外すことができない系ではリファレンス信号を取り出すことができないため、この手法を使用できないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、送信装置に一体化されたアンテナから送信された無線信号に対して、リファレンス受信機により受信した信号と測定用受信機により受信した信号を比較することにより位相差情報を求め、測定用受信機で受信した振幅情報と組み合わせることにより近傍界測定を行い、遠方界の電界強度分布を算出することができる電界強度分布測定装置及び電界強度分布測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明
に係る電界強度分布測定装置は、送信装置に一体化された複数のアンテナ素子を含むアンテナから送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界での電界強度分布を算出する電界強度分布測定装置であって、所定の走査範囲に含まれる複数の走査点において、前記無線信号を測定信号として受信する測定用アンテナと、前記走査範囲外に配置され、前記無線信号を参照信号として受信する参照用アンテナと、前記測定用アンテナにより受信された測定信号を周波数変換する測定用周波数変換手段と、前記測定用周波数変換手段により周波数変換された測定信号をデジタイズして測定用デジタル信号を生成する測定用A/D変換部と、前記参照用アンテナにより受信された参照信号を周波数変換する参照用周波数変換手段と、前記参照用周波数変換手段により周波数変換された参照信号をデジタイズして参照用デジタル信号を生成する参照用A/D変換部と、各前記走査点について、前記測定用デジタル信号の位相と、前記参照用デジタル信号の位相との位相差を算出するともに、前記測定用デジタル信号の振幅を算出する位相差・振幅算出部と、前記位相差・振幅算出部により算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する遠方界電界強度分布算出部と、を有する構成である。
【0008】
この構成により、送信装置に一体化されたアンテナから送信された無線信号に対して近傍界測定を行い、遠方界の電界強度分布を算出することができる。
【0009】
また、本発明
に係る電界強度分布測定装置は、前記測定用周波数変換手段と前記参照用周波数変換手段との間で周波数同期を取る周波数同期手段と、前記測定用デジタル信号と前記参照用デジタル信号の前記位相差・振幅算出部へのデータ取り込みの開始のタイミングを同期する位相差・振幅算出処理タイミング同期手段と、前記測定用A/D変換部及び前記参照用A/D変換部のサンプリングクロックを同期するA/D変換クロック同期手段と、を更に有する構成であってもよい。
【0010】
また、本発明
に係る電界強度分布測定装置においては、前記測定用周波数変換手段は、前記測定用アンテナのコネクタに直接接続される測定用ダウンコンバータを含み、かつ、前記参照用周波数変換手段は、前記参照用アンテナのコネクタに直接接続される参照用ダウンコンバータを含む構成である。
【0011】
ミリ波など高周波での測定時には、アンテナを走査させることによりアンテナと受信部間の同軸ケーブルの曲げ半径が変動したり、ねじれが発生したりする。これにより、同軸ケーブル内を伝送される無線信号の位相が変動し、測定結果に影響を与えることとなる。これに対して、測定用アンテナ及び参照用アンテナで受信された無線信号の周波数を早い段階で低下させることにより、測定系での位相の変化を抑制することができる。
【0012】
また、本発明
に係る電界強度分布測定装置は、前記測定用アンテナにより受信された測定信号のスペクトラムを解析するスペクトラム解析部を更に備える構成である。
【0013】
この構成により、1台の送信装置に対して、電界強度分布の測定と、無線信号の品質を評価するための測定とを行いたい場合に、測定のたびに被測定アンテナと測定システムのつなぎ替えを行う必要を無くすことができる。よって、電界強度分布の測定と、周波数、占有帯域幅、隣接チャネル漏洩電力、スプリアス放射等の無線信号の品質を評価するための測定とを、1台の送信装置に対して順次実行することができる。
【0014】
また、本発明
に係る電界強度分布測定装置は、前記無線信号として無変調波信号を使用する。この場合には、位相差・振幅算出部において相互相関関数を利用するなど、処理量を抑えた位相差の検出も可能である。
【0015】
また、本発明
に係る電界強度分布測定装置においては、前記無線信号がOFDM信号であってもよい。この場合、広帯域変調信号を取り扱う送信系の測定において、単一周波数ではなく通信の帯域内の電界強度分布を把握する必要があるため、走査範囲内において複数の周波数ポイントで電界強度を測定する必要がある。このとき、OFDM信号を無線信号として利用し、測定信号受信部と参照信号受信部それぞれの受信信号をA/D変換した結果をFFT演算することにより、サブキャリアごとの振幅・位相差情報を抽出することができる。ここで、振幅情報としては測定信号受信部の情報が、位相差情報としては測定信号の位相情報と参照信号の位相情報との差分が抽出される。これにより、複数回の走査と送信信号の入れ替えを省いて帯域内電界強度分布を測定することができ、測定時間短縮が可能である。
【0016】
また、本発明
に係る電界強度分布測定方法は、上記のいずれかの電界強度分布測定装置を用いる電界強度分布測定方法であって、前記測定用周波数変換手段と前記参照用周波数変換手段との間で周波数同期を取るとともに、前記測定用A/D変換部及び前記参照用A/D変換部のサンプリングクロックを同期する同期ステップと、所定の走査範囲に含まれる複数の走査点において、前記無線信号を測定信号として前記測定用アンテナにより受信するとともに、前記無線信号を参照信号として前記参照用アンテナにより受信する信号受信ステップと、前記信号受信ステップで受信された測定信号を前記測定用周波数変換手段により周波数変換するとともに、前記信号受信ステップで受信された参照信号を前記参照用周波数変換手段により周波数変換する周波数変換ステップと、前記周波数変換ステップで周波数変換された測定信号及び参照信号を、前記測定用A/D変換部及び前記参照用A/D変換部により同時にデジタイズして測定用デジタル信号及び参照用デジタル信号を生成するA/D変換ステップと、各前記走査点について、前記測定用デジタル信号の位相と、前記参照用デジタル信号の位相との位相差を算出するともに、前記測定用デジタル信号の振幅を算出する位相差・振幅算出ステップと、前記位相差・振幅算出ステップで算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する遠方界電界強度分布算出ステップと、を含む構成である。
【0017】
この構成により、送信装置に一体化されたアンテナから送信された無線信号に対して近傍界測定を行い、遠方界の電界強度分布を算出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、送信装置に一体化されたアンテナから送信された無線信号に対して近傍界測定を行い、遠方界の電界強度分布を算出することができる電界強度分布測定装置及び電界強度分布測定方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電界強度分布測定装置及び電界強度分布測定方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る電界強度分布測定装置1は、送信装置100に一体化された複数のアンテナ素子T1〜TNを含むアンテナ110から送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界での電界強度分布を算出するものである。
【0022】
アンテナ110は、例えばMassive−MIMOアンテナを含むアレーアンテナなどである。電界強度分布測定装置1による電界強度分布の測定時に送信装置100のアンテナ110から送信させる無線信号としては、無変調波信号やマルチキャリア信号(例えばOFDM信号)などを用いることができる。
【0023】
電界強度分布測定装置1は、測定用アンテナ11、参照用アンテナ12、移動装置13、測定用受信機としての測定信号受信部14、リファレンス受信機としての参照信号受信部15、位相差・振幅算出部16、遠方界電界強度分布算出部17、表示部18、操作部19、及び制御部20を主に備える。
【0024】
測定用アンテナ11及び参照用アンテナ12は、送信装置100の複数のアンテナ素子T1〜TNを含むアンテナ110から放射された電波を近傍界において受信するアンテナである。測定用アンテナ11は、所定の走査範囲に含まれる複数の走査点において、送信装置100のアンテナ110から送信される無線信号を測定信号として受信するようになっている。また、参照用アンテナ12は、測定用アンテナ11の走査範囲外に配置され、送信装置100のアンテナ110から送信される無線信号を参照信号として受信するようになっている。
【0025】
参照用アンテナ12の位置が測定用アンテナ11に近接すると、送信装置100のアンテナ110だけではなく測定用アンテナ11からの多重反射の影響も含まれてしまう。また、参照用アンテナ12を測定用アンテナ11から遠い位置に配置すると、送信装置100のアンテナ110の信号を検出できなくなるため、参照用アンテナ12を適度な位置に設置することが必要である。
【0026】
移動装置13は、測定用アンテナ11を複数の走査点を含む所定の走査範囲で移動させるものである。
【0027】
測定信号受信部14は、測定用周波数変換手段としてのダウンコンバータ21a、測定用A/D変換部としてのA/D変換部23a、及び位相差・振幅算出処理タイミング同期手段としてのスイッチ22aを含む。ダウンコンバータ21aは、測定用アンテナ11により受信された測定信号を周波数変換するようになっている。
【0028】
A/D変換部23aは、ダウンコンバータ21aにより周波数変換された測定信号をデジタイズするようになっている。具体的には、A/D変換部23aは、周波数変換後の測定信号を所定のサンプリングクロックでサンプリングして、時系列のデジタルデータとしての測定用デジタル信号を生成する。スイッチ22aは、後述する同期用信号源24bから出力される同期信号に従って、測定用デジタル信号の位相差・振幅算出部16での位相差・振幅算出開始のタイミングを決定する。例えば、同期用信号源24bからのゲート信号にて位相差・振幅算出部16の取り込みが制御される。
【0029】
参照信号受信部15は、参照用周波数変換手段としてのダウンコンバータ21b、参照用A/D変換部としてのA/D変換部23b、及び位相差・振幅算出処理タイミング同期手段としてのスイッチ22bを含む。ダウンコンバータ21bは、参照用アンテナ12により受信された参照信号を周波数変換するようになっている。
【0030】
A/D変換部23bは、ダウンコンバータ21bにより周波数変換された参照信号をデジタイズするようになっている。具体的には、A/D変換部23bは、周波数変換後の参照信号を所定のサンプリングクロックでサンプリングして、時系列のデジタルデータとしての参照用デジタル信号を生成する。スイッチ22bは、後述する同期用信号源24bから出力される同期信号に従って、参照用デジタル信号の位相差・振幅算出部16での位相差・振幅算出開始のタイミングを決定する。例えば、同期用信号源24bからのゲート信号にて位相差・振幅算出部16の取り込みが制御される。
【0031】
なお、測定用アンテナ11は、自身のコネクタ41aに同軸ケーブルなどのケーブル40aが接続されることよりダウンコンバータ21aに接続される。同様に、参照用アンテナ12は、自身のコネクタ41bに同軸ケーブルなどのケーブル40bが接続されることによりダウンコンバータ21bに接続される。
【0032】
位相差・振幅算出部16は、測定用アンテナ11の走査範囲内の各走査点について、測定用デジタル信号の位相と参照用デジタル信号の位相を高速フーリエ変換(FFT)等の手法を用いて算出する処理を行うようになっている。さらに、位相差・振幅算出部16は、測定用デジタル信号の振幅を算出する処理を行うようになっている。
【0033】
例えば、送信装置100のアンテナ110から送信された無線信号が無変調波である場合は、位相差・振幅算出部16において相互相関関数を利用するなど処理量を抑えた位相差の検出も可能である。また、送信装置100のアンテナ110から送信された無線信号がOFDM信号である場合には、サブキャリアごとに位相差と振幅が算出されることになる。OFDM等の広帯域信号を用いることにより、広帯域の電界強度信号を一度に測定することができ、高速化に寄与することができる。
【0034】
さらに、位相差・振幅算出部16は、算出した位相差、振幅の情報(以下、「位相差情報」、「振幅情報」ともいう)を遠方界電界強度分布算出部17に出力するようになっている。なお、各走査点における位相差情報は、走査範囲内の特定の走査点での位相差を基準(位相ゼロ)とした値に変換されたものであってもよい。
【0035】
遠方界電界強度分布算出部17は、後述する走査制御部30から出力された測定用アンテナ11の位置情報と、位相差・振幅算出部16により算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出するようになっている。ここでは、公知の近傍界/遠方界変換法の数値計算を行うことにより遠方界の電界強度分布を推定して、送信装置100のアンテナ110の指向性を求めることができる。
【0036】
表示部18は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、制御部20からの制御信号に応じて各種表示内容を表示するようになっている。この表示内容には、被測定アンテナであるアンテナ110の近傍界における電界強度分布の測定結果や、遠方界における電界強度分布の算出結果などが含まれる。さらに、表示部18は、測定条件などを設定するためのソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象を表示するものであってもよい。
【0037】
操作部19は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、キーボード、タッチパネル、又はマウスのような入力デバイスを含んで構成される。あるいは前述のように、操作部19は、ボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象が表示部18に表示される構成であってもよい。
【0038】
さらに、電界強度分布測定装置1は、測定信号受信部14と参照信号受信部15との間で同期を取るための構成として、ローカル信号源24aと、同期用信号源24bと、クロック信号源24cと、リファレンス信号源25とを備える。
【0039】
周波数同期手段としてのローカル信号源24aは、ダウンコンバータ21a,21b間で周波数同期を取るための同期信号をダウンコンバータ21a,21bに出力するようになっている。これにより、ダウンコンバータ21a,21bの周波数変換量が同一となる。
【0040】
仮に
図2に示すように、位相差・振幅算出部16により測定用デジタル信号と参照用デジタル信号が時間差Δtを持って取り込まれた場合、演算結果に大きな誤差が含まれることとなってしまう。このような事態を避けるために、位相差・振幅算出処理タイミング同期手段としての同期用信号源24bは、位相差・振幅算出部16による位相差及び振幅の算出処理の開始及び終了のタイミングを同期するための同期信号をスイッチ22a,22bに出力するようになっている。具体的には、位相差及び振幅の算出処理の開始時には、同期用信号源24bは、スイッチ22a,22bを同時にオンにする同期の取れたゲート信号を出力する。これにより、測定用デジタル信号と参照用デジタル信号の位相差・振幅算出部16へのデータ取り込みの開始のタイミングが同期される。
【0041】
A/D変換クロック同期手段としてのクロック信号源24cは、A/D変換部23a及びA/D変換部23bのサンプリングクロックを同期するための同期信号をA/D変換部23a,23bに出力するようになっている。
【0042】
このようにして、測定用デジタル信号と参照用デジタル信号がA/D変換部23a,23bによるサンプリングクロックの同期が取れたものとなり、かつ位相差・振幅算出部16での演算開始と終了のタイミング同期が取れる。このようにして、測定用プローブとしての測定用アンテナ11が存在する走査点(測定点)における位相差(又は位相差の相対値)を高精度に算出することができ、この位相差及び振幅を用いて遠方界での電界強度分布を得ることができる。
【0043】
リファレンス信号源25は、ローカル信号源24aと、同期用信号源24bと、クロック信号源24cとの間で同期を取るためのリファレンス信号をローカル信号源24a、同期用信号源24b、及びクロック信号源24cに出力するようになっている。
【0044】
制御部20は、例えばCPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータで構成され、電界強度分布測定装置1を構成する上記各部の動作を制御する。また、制御部20は同期用信号源24bを備えている。さらに、制御部20は、所定のプログラムを実行することにより、位相差・振幅算出部16、遠方界電界強度分布算出部17、及び走査制御部30をソフトウェア的に構成するようになっている。
【0045】
走査制御部30は、移動装置13を動作させることで測定用アンテナ11の位置を制御するとともに、測定用アンテナ11が存在する走査点の位置を示す位置情報を遠方界電界強度分布算出部17に送出するようになっている。
【0046】
以下、本実施形態の電界強度分布測定装置1を用いる電界強度分布測定方法について、
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0047】
まず、ローカル信号源24aとクロック信号源24cからの同期信号により、2つのダウンコンバータ21a,21b間の周波数同期と、2つのA/D変換部23a,23b間のクロック同期が取られる(同期ステップS1)。
【0048】
次に、送信装置100が無線信号を送出する(ステップS2)。次に、走査制御部30は、移動装置13によって測定用アンテナ11を走査範囲内の走査点に移動させる(ステップS3)。
【0049】
次に、送信装置100から出力される無線信号を、測定用アンテナ11が測定信号として受信し、同時に参照用アンテナ12が参照信号として受信する(信号受信ステップS4)。
【0050】
次に、ダウンコンバータ21aは、ステップS4で受信された測定信号を周波数変換し、ダウンコンバータ21bは、ステップS4で受信された参照信号を周波数変換する(周波数変換ステップS5)。
【0051】
次に、2つのA/D変換部23a,23bは、ステップS5で周波数変換された測定信号及び参照信号を同時にデジタイズして測定用デジタル信号及び参照用デジタル信号を生成する(A/D変換ステップS6)。
【0052】
次に、位相差・振幅算出部16は、スイッチ22a,22bが同時にオンになったときにステップS6でデジタイズされた測定信号(測定用デジタル信号)の位相と、ステップS6でデジタイズされた参照信号(参照用デジタル信号)の位相との位相差、及び、測定用デジタル信号の振幅の算出を開始する(位相差・振幅算出ステップS7)。
【0053】
次に、制御部20は、走査範囲内の全ての走査点に対して、位置情報、位相差情報、及び振幅情報が得られたか否かを判断する(ステップS8)。否定判断の場合にはステップS3に戻る。肯定判断の場合にはステップS9に進む。
【0054】
次に、遠方界電界強度分布算出部17は、全ての走査点に関する、位置情報、位相差情報、及び振幅情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する(遠方界電界強度分布算出ステップS9)。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る電界強度分布測定装置1は、送信装置100に一体化されたアンテナ110から送信された無線信号に対して近傍界測定を行い、遠方界の電界強度分布を算出することができる。
【0056】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る電界強度分布測定装置2について図面を参照しながら説明する。第1の実施形態に係る電界強度分布測定装置1の構成と同一の構成については、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0057】
第1の実施形態に係る電界強度分布測定装置1においては、測定用アンテナ11及び参照用アンテナ12がそれぞれケーブル40a,40bを介してダウンコンバータ21a,21bに接続されていた。しかしながら、測定用アンテナ11の走査時にケーブル40aが撓んだり向きが変わったりすると、ミリ波帯などの高周波信号である測定信号はケーブル40aを伝送される間にその位相が変化してしまう場合がある。
【0058】
そこで、本実施形態では、測定信号受信部14及び参照信号受信部15からそれぞれダウンコンバータを分離し、測定用アンテナ11及び参照用アンテナ12をそれぞれダウンコンバータに直結させ、測定信号がケーブルを伝送される前に測定信号及び参照信号の周波数を低下させる構成とした。
【0059】
つまり、
図4に示すように、測定用アンテナ11のコネクタ41aには、ケーブルを介さずに、測定用周波数変換手段としての測定用ダウンコンバータ42が直接接続される。同様に、参照用アンテナ12のコネクタ41bには、ケーブルを介さずに、参照用周波数変換手段としての参照用ダウンコンバータ43が直接接続される。
【0060】
測定用ダウンコンバータ42は、ケーブル44aによって後段の測定信号受信部45に接続される。同様に、参照用ダウンコンバータ43は、ケーブル44bによって後段の参照信号受信部46に接続される。
【0061】
ローカル信号源24aは、測定用ダウンコンバータ42と参照用ダウンコンバータ43との間で周波数同期を取るための同期信号を、測定用ダウンコンバータ42及び参照用ダウンコンバータ43に出力するようになっている。
【0062】
測定用ダウンコンバータ42は、移動装置13によって測定用アンテナ11と共に走査範囲内で移動される。同様に、参照用ダウンコンバータ43は、移動装置13によって参照用アンテナ12と共に走査範囲内で移動される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る電界強度分布測定装置2は、測定用アンテナ11及び参照用アンテナ12をそれぞれ測定用ダウンコンバータ42及び参照用ダウンコンバータ43に直結させることにより、後段のA/D変換部23a,23bに無線信号がケーブル44a,44bで伝送される際の位相の変化を抑制することができる。
【0064】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態に係る電界強度分布測定装置3について図面を参照しながら説明する。第1又は第2の実施形態に係る電界強度分布測定装置1,2の構成と同一の構成については、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0065】
図5に示すように、電界強度分布測定装置3は、測定用アンテナ11により受信された測定信号のスペクトラムを解析するスペクトラムアナライザとして機能するスペクトラム解析部50を更に備える。
【0066】
スペクトラム解析部50は、ダウンコンバータ51と、周波数変換部52と、A/D変換部53と、掃引制御部54と、解析処理部55と、を備える。
【0067】
測定用アンテナ11により受信された測定信号は、測定信号受信部14のダウンコンバータ21aの前で分岐して、ダウンコンバータ21aと、スペクトラム解析部50のダウンコンバータ51とに入力されるようになっている。
【0068】
ダウンコンバータ51は、ローカル信号源24aからの出力信号と測定信号とを混合(乗算)することによりダウンコンバートされた測定信号を周波数変換部52に出力する。なお、ローカル信号源24aは、スペクトラム解析部50内に設置されていてもよい。
【0069】
周波数変換部52は、例えば、局部発振器とミキサとバンドパスフィルタとを含み、掃引制御部54によって局部発振器の発振周波数が周波数掃引される構成となっている。周波数変換部52に入力された測定信号は、中間周波数信号に変換されて周波数変換部52から出力される。これにより、測定信号に対して、任意の測定周波数範囲で掃引測定することが可能となる。
【0070】
A/D変換部53は、周波数変換部52から出力された中間周波数信号を、所定のクロックでサンプリングして時系列のデジタルデータに変換するようになっている。
【0071】
解析処理部55は、A/D変換部53から出力された時系列のデジタルデータを測定周波数に対応付けて各種解析を行うようになっている。例えば、解析処理部55は、周波数、占有帯域幅、隣接チャネル漏洩電力、スプリアス放射等の解析処理を行う。
【0072】
図5に示した電界強度分布測定装置3においては、例えば、スペクトラム解析部50の中に設置されているローカル信号源24aを数GHzのローカル信号源とし、このローカル信号源24aをダウンコンバータ21a,21b(あるいは、測定用ダウンコンバータ42と参照用ダウンコンバータ43)にも共用することができる。このように構成された
図5の電界強度分布測定装置3は、測定用アンテナ11により受信された測定信号の周波数が比較的低い周波数(例えば3GHz程度)である場合に好適である。
【0073】
図6は、電界強度分布測定装置3の他の構成例を示している。
図6に示すように、測定信号受信部14のダウンコンバータ21aによりダウンコンバートされた測定信号は、測定信号受信部14のA/D変換部23aの前で分岐して、A/D変換部23aと、スペクトラム解析部50のダウンコンバータ51とに入力されるようになっている。スペクトラム解析部50のダウンコンバータ51は、測定信号受信部14のダウンコンバータ21aで周波数変換された測定信号を更にダウンコンバートする。スペクトラム解析部50のダウンコンバータ51はローカル信号源24a'と接続されている。
【0074】
図6に示した電界強度分布測定装置3においては、例えば、ダウンコンバータ21a(あるいは、測定用ダウンコンバータ42)に接続されたローカル信号源24aを数10GHzのローカル信号源とし、スペクトラム解析部50のダウンコンバータ51のローカル信号源24a'を数GHzのローカル信号源とすることができる。この構成により、本来スペクトラム解析部に設ける高周波用のダウンコンバータをスペクトラム解析部50内に設置する必要がなくなり、ダウンコンバータ21a(あるいは、測定用ダウンコンバータ42)を高周波用のダウンコンバータとして測定信号受信部14とスペクトラム解析部50とで共用できる。このように構成された
図6の電界強度分布測定装置3は、測定用アンテナ11により受信された測定信号の周波数が比較的高い周波数(例えば60GHz程度)である場合に好適である。
【0075】
図7は、電界強度分布測定装置3の更に他の構成例を示している。
図7に示すように、測定信号受信部14のA/D変換部23aによりデジタイズされた測定信号は、スペクトラム解析部50の解析処理部55に直接入力されるようになっている。
【0076】
図7に示した電界強度分布測定装置3は、送信装置100側で周波数を区切って無線信号を発生させている場合に適用可能な構成である。この構成では、スペクトラム解析部50内では解析処理部55による演算処理のみを行えばよく、ダウンコンバータ21a(あるいは、測定用ダウンコンバータ42)及びA/D変換部23aを共用できる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る電界強度分布測定装置3は、別途スペクトラムアナライザを用意することなく、電界強度分布の測定と、周波数、占有帯域幅、隣接チャネル漏洩電力、スプリアス放射等の無線信号の品質を評価するための測定とを、1台の送信装置に対して順次実行することができる。