特許第6494554号(P6494554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6494554焼鈍分離剤用酸化マグネシウム及び方向性電磁鋼板
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  • 特許6494554-焼鈍分離剤用酸化マグネシウム及び方向性電磁鋼板 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494554
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】焼鈍分離剤用酸化マグネシウム及び方向性電磁鋼板
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/46 20060101AFI20190325BHJP
   C01F 5/08 20060101ALI20190325BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20190325BHJP
   C23C 22/00 20060101ALI20190325BHJP
   H01F 1/18 20060101ALI20190325BHJP
   C22C 38/06 20060101ALN20190325BHJP
   H01F 1/147 20060101ALN20190325BHJP
【FI】
   C21D9/46 501B
   C01F5/08
   C22C38/00 303U
   C23C22/00 A
   H01F1/18
   !C22C38/06
   !H01F1/147 175
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-67691(P2016-67691)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-179460(P2017-179460A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年10月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108764
【氏名又は名称】タテホ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】右田 翼
(72)【発明者】
【氏名】平津 豊
(72)【発明者】
【氏名】亀井 忠輔
【審査官】 鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−260668(JP,A)
【文献】 特開2004−052084(JP,A)
【文献】 特開2014−156620(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047999(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 8/12, 9/46
C23C 22/00−22/86
C01F 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着水分と水和水分との関係を示すグラフにおいて、付着水分及び水和水分が、下記a〜d点を頂点とする四角形の範囲内にある焼鈍分離剤用酸化マグネシウム。
a:付着水分:0.25質量%、水和水分0.1質量%
b:付着水分:0.60質量%、水和水分0.1質量%
c:付着水分:0.40質量%、水和水分6.0質量%
d:付着水分:0.20質量%、水和水分6.0質量%
【請求項2】
ホウ素を0.04〜0.15質量%含有し、塩素含有量が0.05質量%以下である請求項1に記載の焼鈍分離剤用酸化マグネシウム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含む焼鈍分離剤。
【請求項4】
鋼板表面に二酸化ケイ素被膜を形成する工程と、
請求項3に記載の焼鈍分離剤を二酸化ケイ素被膜の表面に塗布し、焼鈍することにより、鋼板表面にフォルステライト被膜を形成する工程と
を含む、方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼鈍分離剤用の酸化マグネシウム及び方向性電磁鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器や発電機に使用される方向性電磁鋼板は、一般に、ケイ素(Si)を約3%含有するケイ素鋼を、熱間圧延し、次いで最終板厚に冷間圧延し、次いで脱炭焼鈍、仕上焼鈍して、製造される。脱炭焼鈍(一次再結晶焼鈍)では、鋼板表面に二酸化ケイ素被膜を形成し、その表面に焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含むスラリーを塗布して乾燥させ、コイル状に巻取った後、仕上焼鈍することにより、二酸化ケイ素(SiO)と酸化マグネシウム(MgO)が反応してフォルステライト(MgSiO)被膜が鋼板表面に形成される。このフォルステライト被膜は、鋼板表面に張力を付加し、鉄損を低減して磁気特性を向上させ、また鋼板に絶縁性を付与する役割を果たす。
【0003】
方向性電磁鋼板の特性を向上するために、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに含有される微量成分についての研究が行われている。焼鈍分離剤用酸化マグネシウム中の含有量の制御が検討されている微量成分は、酸化カルシウム(CaO)、ホウ素(B)、亜硫酸(SO)、フッ素(F)、及び塩素(Cl)等である。更に、微量成分の含有量だけでなく、焼鈍分離剤用酸化マグネシウム中の、微量成分元素を含む化合物の構造を検討する試みが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、CaOとBの含有量を特定した焼鈍分離剤用酸化マグネシウムが開示されている。また、特許文献2では、Mg、及びCa等の塩化物の含有量とそれらに対するB比率を特定した焼鈍分離剤用酸化マグネシウムが開示されている。また、特許文献3及び特許文献4では、焼鈍分離剤用酸化マグネシウム中のCaO、SO、ハロゲン、及びBの含有量を特定した焼鈍分離剤用酸化マグネシウムが開示されている。更に、その他の諸物性を特定した焼鈍分離剤用酸化マグネシウムが研究されており、例えば特許文献5では、CaO、CO、SO、K、Na、及びB等を含めた多くの物性値を制御した焼鈍分離剤用酸化マグネシウムが開示されている。
【0005】
また、特許文献6では、Cl含有量とSO含有量を特定した酸化マグネシウムを用いる方向性電磁鋼板の製造方法が開示されている。また、特許文献7では、F及びClの含有量及び諸物性を特定した方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤が開示されている。
【0006】
更に、微量成分以外には酸化マグネシウム粒子と酸との反応速度による活性度、すなわちクエン酸活性度(CAA:Citric Acid Activity)に着目した発明について研究がなされている。CAAは、所定温度(例えば303K)の0.4規定のクエン酸水溶液中に、指示薬フェノールフタレインを混合し、最終反応当量の酸化マグネシウムを投入して攪拌し、クエン酸水溶液が中性になるまでの時間で表わされる。CAAは、方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤として使用される酸化マグネシウムの評価指標になり得ることが経験的に知られている。
【0007】
酸化マグネシウムの反応当量におけるCAAの分布に関する発明として、特許文献8には、最終反応率20%、40%、60%及び70%の各々の場合において、CAAを狭い範囲に制御するように活性度を調整した焼鈍分離剤用の酸化マグネシウムの発明が開示されている。また、特許文献9及び特許文献10には、CAA40%及びCAA80%の活性度、粒子径又は比表面積などをそれぞれ所定値に限定した焼鈍分離剤用酸化マグネシウムの発明が開示されている。また、更に、特許文献11には、CAA70%、CAA70%とCAA40%との比、粒子径、比表面積などを、それぞれ所定値に限定した方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の発明が開示されている。これらの発明では、いずれも、酸化マグネシウム粒子の水和性と反応性の制御を行っている。
【0008】
また特許文献12には、持込水分を所定の規定値に限定した方向性電磁鋼板用焼鈍分離剤の発明が開示されている。この発明では酸化マグネシウムをスラリー化した際の持ち込まれる水分を制御して被膜の安定性を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平04−025349号公報
【特許文献2】特許第2690841号公報
【特許文献3】特公昭54−014566号公報
【特許文献4】特許第3043975号公報
【特許文献5】特開平10−88244号公報
【特許文献6】特許第3021241号公報
【特許文献7】特許第3091096号公報
【特許文献8】特公昭57−045472号公報
【特許文献9】特許第2650817号公報
【特許文献10】特許第4192282号公報
【特許文献11】特許第3650525号公報
【特許文献12】特開平10−088241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
方向性電磁鋼板の磁気特性及び絶縁特性、並びに市場価値は、フォルステライト被膜の性能、具体的には、(A)フォルステライト被膜の生成しやすさ(フォルステライト被膜生成率)、(B)被膜の外観、(C)被膜の密着性、及び(D)未反応酸化マグネシウムの酸除去性の4点に左右される。いいかえると、方向性電磁鋼板の特性及び価値は、フォルステライト被膜を形成するための焼鈍分離剤用酸化マグネシウムの性能に依存している。
【0011】

しかしながら、従来の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムでは、方向性電磁鋼板の被膜不良の発生を完全には防止できておらず、また一定の効果が得られないため信頼性を欠いていた。したがって、充分な性能を有する焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは未だ見出されていない。
【0012】
上述のように、特許文献1〜5には、焼鈍分離剤用酸化マグネシウム中に微量成分元素を含む化合物の構造を検討する試みが記載されている。しかし、これらの文献に記載の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを用いた場合には、いずれも得られるフォルステライト被膜の密着性又は未反応酸化マグネシウムの酸除去性が悪い。
【0013】
特許文献6及び7に記載の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは、ハロゲン、特にFのフォルステライト被膜の形成促進効果に着目して得られたものである。これらの文献に記載の酸化マグネシウムは、一定したフォルステライト被膜の形成には効果があるものの、効果は未だ充分とはいえない。
【0014】
このように、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムの複数の物性値を制御し、フォルステライト被膜の形成促進効果を一定化させ、かつフォルステライト被膜の品質を改善する試みが多くなされている。しかしながら、焼鈍分離剤用酸化マグネシウムに課せられた要求(上記の(A)〜(D))を充分に満足するために、さらなる品質の向上が求められている。
【0015】
CAAを指標とした酸化マグネシウムの活性度は、酸化マグネシウムとクエン酸との固相−液相反応の反応性を評価するものである。この固相−液相反応では、固相の反応サイトが増加するほど、すなわち酸化マグネシウムの粒子径が小さいほど、またその比表面積が大きいほど、表面自由エネルギーも大きくなり、活性度が高まる。しかしながら、酸化マグネシウムをはじめとする粉体粒子は、製造方法によっては、粉体粒子が単位粒子として存在する場合のみならず、いくつかの粉体粒子が凝集結合した粒子集合体の形態で存在することも多い。このように凝集・集合した粒子集合体の場合には、CAAの測定値は、粒子集合体としての構造を反映した数値とはならない。したがって、CAAのみによって焼鈍分離剤の反応性を正しく表わすことはできない。
【0016】
更に、CAAは、酸化マグネシウムとクエン酸との固相−液相反応により、実際の電磁鋼板の表面で起こる二酸化ケイ素と酸化マグネシウムとの固相−固相反応の反応性を、経験的にシミュレートしているにすぎない。固相−固相反応であるフォルステライト生成反応では、固相−液相反応と異なり、例えば二酸化ケイ素被膜と酸化マグネシウム粒子との接点の数に代表されるような、酸化マグネシウム粒子の凝集構造が大きく影響することが考えられる。すなわち、酸化マグネシウム粒子が活性な表面を持っていても、粒子凝集構造に影響される接点の数が少なければ反応が不充分になる。一方、不活性な表面を持つ酸化マグネシウム粒子であっても、接点の数を多くすれば十分な反応を行うことができる。
【0017】
以上述べたように、これまで電磁鋼板用焼鈍分離剤の特性を表わす指標として用いられてきたCAAは、ある一定の条件下でのみ酸化マグネシウムの反応性を評価することができる指標であり、実際に電磁鋼板の表面上で起こる固相−固相反応を必ずしも評価しているとはいえない。したがって、粉体粒子の凝集構造を考慮した固相−固相反応の制御方法を用いれば、これまでCAAを用いた指標では活性度が好ましくないとされてきた酸化マグネシウムにおいても、焼鈍分離剤に好適な粒子凝集構造を有する酸化マグネシウムが見出される可能性がある。また、粉体粒子の凝集構造を考慮した固相−固相反応の制御方法を用いれば、CAAを用いた指標では活性度が好ましいとされていた酸化マグネシウムにおいて、より磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を得ることのできる酸化マグネシウムを選択することができる可能性がある。
【0018】
そこで本発明は、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を得るための焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを提供することを目的とする。具体的には、鋼板の表面に、フォルステライト被膜生成率、被膜の外観、被膜の密着性、及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性に優れたフォルステライト被膜を形成することができる焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、酸化マグネシウムの付着水分と水和水分を制御することにより、反応時における酸化マグネシウム中の持込水分を厳密に制御することができることを見出した。更に本発明者らは、反応時における酸化マグネシウム中の持込水分を厳密に制御することにより、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を得ることができることを見出し、本発明に至った。
【0020】
本発明は、付着水分と水和水分との関係を示すグラフにおいて、付着水分及び水和水分が、下記a〜d点を頂点とする四角形の範囲内にある焼鈍分離剤用酸化マグネシウムである。
a:付着水分:0.25質量%、水和水分0.1質量%
b:付着水分:0.60質量%、水和水分0.1質量%
c:付着水分:0.40質量%、水和水分6.0質量%
d:付着水分:0.20質量%、水和水分6.0質量%。
【0021】
酸化マグネシウムの付着水分と水和水分を所定の範囲とすることにより、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を得るための焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを得ることができる。具体的には、本発明によれば、鋼板の表面に、フォルステライト被膜生成率、被膜の外観、被膜の密着性、及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性に優れたフォルステライト被膜を形成することができる焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを得ることができる。
【0022】
本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは、ホウ素を0.04〜0.15質量%含有し、塩素含有量が0.05質量%以下であることが好ましい。ホウ素及び塩素の含有量が所定の範囲であることにより、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を得るための焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを、より確実に得ることができる。
【0023】
本発明は、上述の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含む焼鈍分離剤である。本発明の焼鈍分離剤を用いることにより、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することができる。
【0024】
本発明は、鋼板表面に二酸化ケイ素被膜を形成する工程と、上述の焼鈍分離剤を二酸化ケイ素被膜の表面に塗布し、焼鈍することにより、鋼板表面にフォルステライト被膜を形成する工程とを含む、方向性電磁鋼板の製造方法である。本発明の製造方法により、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を得るための焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを提供することができる。具体的には、本発明によれば、鋼板の表面に、フォルステライト被膜生成率、被膜の外観、被膜の密着性、及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性に優れたフォルステライト被膜を形成することができる焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムの、付着水分と、水和水分との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは、付着水分(質量%)と、水和水分(質量%)が、付着水分と水和水分との関係を示すグラフ(図1参照)において、下記a〜d点を頂点とする四角形の範囲内(図1の「好適範囲」として示される四角形の内側)にあることを特徴とする。
a:付着水分:0.25質量%、水和水分0.1質量%
b:付着水分:0.60質量%、水和水分0.1質量%
c:付着水分:0.40質量%、水和水分6.0質量%
d:付着水分:0.20質量%、水和水分6.0質量%
【0028】
本発明によれば、磁気特性及び絶縁特性に優れた方向性電磁鋼板を得るための焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを得ることができる。なお、本明細書の「質量%」は、「重量%」と同じ意味である。
【0029】
なお、より確実に得るため所定の効果を奏する焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを得るために、上記の好適範囲は、下記の範囲であることが好ましい。
e:付着水分:0.29質量%、水和水分0.1質量%
f:付着水分:0.58質量%、水和水分0.1質量%
g:付着水分:0.38質量%、水和水分5.7質量%
h:付着水分:0.29質量%、水和水分5.7質量%
【0030】
本発明において付着水分とは、酸化マグネシウム粒子に物理的に付着している水分のことであり、付着水分を含む酸化マグネシウム粒子の質量に対する付着水分の割合である。付着水分は、JIS−K0068:2001「化学製品の水分測定方法」の「7 乾燥減量法」に基づき測定することができる。
【0031】
本発明において水和水分とは、酸化マグネシウムの表面の一部が水和反応を起こし水酸化マグネシウムとなるのに使用された水分であり、水和水分を含む酸化マグネシウム粒子の質量に対する水和水分の質量の割合である。水和水分は、強熱減量から付着水分を減じることにより算出することができる。強熱減量の測定は、JIS−K8432:2006「酸化マグネシウム(試薬)」の「7.5 強熱減量(800℃)」に基づき、JIS−K0067:1992「化学製品の減量及び残分試験方法」の「4.2 強熱減量試験」に基づき測定することができる。
【0032】
酸化マグネシウムの付着水分が、0.2質量%未満の場合は、(A)フォルステライト被膜生成率が低下する。またフォルステライト被膜の劣化が起こりやすくなる。更に、(B)被膜の外観が悪くなり、(D)未反応酸化マグネシウムの酸除去性も悪くなる。
【0033】
酸化マグネシウムの付着水分が、0.6質量%より大きい場合は、(A)フォルステライト被膜生成率が低下する。また被膜劣化が起こりやすくなる。更に(B)被膜の外観が悪くなり、(D)未反応酸化マグネシウムの酸除去性も悪くなる。
【0034】
酸化マグネシウムの水和水分が、0.1質量%未満の場合は、(A)フォルステライト被膜生成率が低下する。また被膜劣化が起こりやすくなる。更に(B)被膜の外観が悪なくり、(C)被膜の密着性が悪くなる。
【0035】
酸化マグネシウムの水和水分が、6.0質量%をこえると、(A)フォルステライト被膜生成率が低下する。また被膜劣化が起こりやすくなり、(B)被膜の外観が悪い。また(C)被膜の密着性が悪くなる。
【0036】
上記のように、本発明の酸化マグネシウムでは、酸化マグネシウム粒子の付着水分及び水和水分を制御することにより、従来の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムでは得られなかった高いフォルステライト被膜形成能を、高い信頼性で達成することができる。ここで、高いフォルステライト被膜形成能は、方向性電磁鋼板の製造における(A)フォルステライト被膜生成率の高さ、(B)被膜の外観の良好さ、(C)被膜の密着性の高さ及び(D)未反応酸化マグネシウムの酸除去性の良好さにより示される。
【0037】
本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを用いるならば、優れた絶縁特性と磁気特性を有する方向性電磁鋼板を製造することができる。
【0038】
優れた絶縁特性と磁気特性を有する方向性電磁鋼板をより確実に得るために、本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは、BET比表面積が12.0×10〜25.0×10・kg−1であることが好ましく、12.0×10〜23.0×10・kg−1であることがより好ましく、14.0〜20.0×10・kg−1であることが更に好ましい。BET比表面積とは、窒素ガス吸着法(BET法)により測定される比表面積であり、BET法によるBET比表面積の測定では、凝集粒子中の微細な細孔まで測定できるため、凝集粒子を構成する一次粒子の表面積を含んだ比表面積(BET比表面積)を測定することできる。
【0039】
優れた絶縁特性と磁気特性を有する方向性電磁鋼板をより確実に得るために、本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムは、ブレーン比表面積が2.0×10〜7.0×10・kg−1であることが好ましく、2.5×10〜6.0×10・kg−1であることがより好ましく、3.0×10〜5.0×10・kg−1であることが更に好ましい。ブレーン比表面積とは、JIS R5201:2015の「8.1比表面積試験」に記載されているブレーン法により測定される比表面積である。ブレーン法では、粉体充填層内に空気を透過させることにより比表面積の測定を行うため、空気の流れによって内部の空気が置き換わらない微細な細孔部の表面積を測定することができない。このため、ブレーン法によれば、凝集粒子を構成する一次粒子の表面積を除外した凝集粒子のみの比表面積(ブレーン比表面積)を測定することができる。
【0040】
本発明において、酸化マグネシウムの製造方法は公知の方法を用いることができる。例えば、原料として塩化マグネシウムを用い、この水溶液に水酸化カルシウムをスラリーの状態で添加し反応させ、水酸化マグネシウムを形成する。次いで、この水酸化マグネシウムを、ろ過、水洗、乾燥させた後、加熱炉で焼成し、酸化マグネシウムを形成し、これを所望の粒径まで粉砕して、製造することができる。
【0041】
また、水酸化カルシウムの代わりに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸基を有するアルカリ性化合物を用いることもできる。また、海水、潅水、苦汁等のような塩化マグネシウム含有水溶液を反応器に導入し、1773〜2273Kで直接酸化マグネシウムと塩酸を生成させるアマン法(Aman process)により酸化マグネシウムを生成させ、これを所望の粒径まで粉砕して、酸化マグネシウムを製造することができる。
【0042】
更に、鉱物マグネサイトを焼成して得た酸化マグネシウムを、水和させ、得られた水酸化マグネシウムを焼成し、これを所望の粒径まで粉砕して、酸化マグネシウムを製造することもできる。
【0043】
本発明において、本発明の酸化マグネシウムの付着水分及び水和水分の調整は、次のように行うことができる。すなわち、最終的に得られた酸化マグネシウムを高温高湿機に一定時間保管することにより、酸化マグネシウムの付着水分及び水和水分を調整することができる。また、酸化マグネシウムの焼成時又は焼成後、酸化マグネシウム粒子が高温の状態の間に水を噴霧したり、湿度を調整した空気を循環させることによっても調整することができる。
【0044】
また、上記の方法によって得られた酸化マグネシウムの付着水分及び水和水分を分析し、付着水分及び水和水分が過剰なものには、それが不足するものを組み合わせて、混合することによっても調整することができる。
【0045】
本発明において、微量含有物量を、粗生成物の製造工程で制御する場合、湿式で微量成分を添加して、例えば、原料として予め微量含有物の量を分析した塩化マグネシウムの水溶液を用い、この水溶液に、水酸基を有するアルカリ性水溶液又はスラリーを添加し反応させ、水酸化マグネシウムを形成する工程で、微量含有物が所定量となるように調整添加することができる。例えば、カルシウム(Ca)を添加する場合、カルシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩及びリン酸塩系が使用できる。リン(P)を添加する場合、リン酸、メタリン酸、ホスホン酸及び亜リン酸、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、並びにアンモニウム塩系を使用できる。ホウ素(B)を添加する場合、ホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アンモニウム塩及びメタホウ酸アルカリ金属塩系、二酸化ホウ素等が使用できる。硫黄(S)を添加する場合、硫酸及び亜硫酸、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、並びにアンモニウム塩系を使用できる。フッ素(F)を添加する場合、フッ化マグネシウム等を使用できる。塩素(Cl)を添加する場合、塩化マグネシウム等を使用できる。ケイ素(Si)を添加する場合、ケイ酸アルカリ金属塩、ケイ酸アルカリ土類金属塩及びコロイダルシリカ系を使用できる。
【0046】
本発明の酸化マグネシウムは、例えば、カルシウム(Ca)、リン(P)、ホウ素(B)、硫黄(S)、フッ素(F)、及び塩素(Cl)等の微量含有物を含むことができる。
本発明の酸化マグネシウムがカルシウム(Ca)を含む場合、カルシウムの含有量は、CaO換算で0.2〜2.0質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムがリン(P)を含む場合、リンの含有量は、P換算で0.03〜0.15質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムがホウ素(B)を含む場合、ホウ素の含有量は、0.04〜0.15質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムが硫黄(S)を含む場合、硫黄の含有量は、SO換算で0.01〜1.5質量%であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムがフッ素(F)を含む場合、フッ素の含有量は、0.05質量%以下であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムが塩素(Cl)を含む場合、塩素の含有量は、0.05質量%以下であることが好ましい。本発明の酸化マグネシウムがケイ素(Si)を含む場合、ケイ素の含有量は、0.05〜0.5質量%であることが好ましい。
【0047】
また、本発明における微量含有物量を、粗生成物の製造工程中に除去して制御するには、上記の水酸化マグネシウム形成工程で、酸を添加して除去するか、上記の水酸化マグネシウム形成工程の後、ろ過し、水洗を繰り返すことにより除去することができる。
【0048】
水洗する場合は、水酸化マグネシウムを水洗して微量含有物量を除去することができ、例えば塩素(Cl)を除去することができる。また、塩化マグネシウム含有水溶液と水酸基を有するアルカリ性水溶液の反応を行う場合には、水酸化マグネシウムの一部を事前に反応析出させ、析出粒子に微量含有物である例えばホウ素(B)を吸着させ除去することができる。
【0049】
更に、得られた水酸化マグネシウム等を、最終焼成前に微量含有物量を制御することができる。これは、得られた水酸化マグネシウムの微量含有元素の量を分析し、微量成分を添加したり、微量含有元素が過剰なものには、それが不足するものを組み合わせて、混合し、焼成することにより制御することができる。
【0050】
本発明の酸化マグネシウムは、クエン酸活性度(Citric Acid Activity、CAA)が50〜170秒であることが好ましく、60〜90秒であることがより好ましい。ここでクエン酸活性度(CAA)とは、温度:303K、0.4Nのクエン酸水溶液中に40%の最終反応当量の酸化マグネシウムを投与して攪拌したときの、最終反応までの時間、つまりクエン酸が消費され溶液が中性となるまでの時間を意味する。
【0051】
CAAでは、固相−液相反応により、実際の電磁鋼板の表面で起こる二酸化ケイ素と酸化マグネシウムとの固相−固相反応の反応性を、経験的にシミュレートしており、一次粒子を含む酸化マグネシウム粒子の反応性を測定することできる。
【0052】
酸化マグネシウムのCAAが170秒より大きければ、酸化マグネシウムの一次粒子径が粗大になり、酸化マグネシウム粒子の反応性が悪くなるため、(a)フォルステライト被膜生成率が低下する。また粒子が粗大なため酸で除去した際残留物が残り、(d)酸除去性も悪い。
【0053】
酸化マグネシウムのCAAが50秒未満であれば、酸化マグネシウムの一次粒子径が小さくなり、酸化マグネシウム粒子の反応性が速くなりすぎる。そのため、均一なフォルステライト被膜ができなくなり、フォルステライト被膜の(b)被膜外観及び/又は(c)密着性が悪くなる。
【0054】
本発明の方向性電磁鋼板は、下記のような方法で製造することができる。方向性電磁鋼板用の鋼板は、ケイ素(Si)を2.5〜4.5%を含有するケイ素鋼スラブを熱間圧延し、酸洗後、強冷間圧延を行うか、中間焼鈍をはさむ2回冷間圧延を行って、所定の板厚に調整することによって製造することができる。次に、この鋼板を冷間圧延したコイルに対して、923〜1173Kの湿潤水素雰囲気中で、脱炭を兼ねた再結晶焼鈍を行う。このとき鋼板表面に二酸化ケイ素を主成分とする酸化被膜を形成させる。次に、本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムを含む焼鈍分離剤を水に均一に分散させ、水スラリーを得る。この水スラリーを、表面に酸化被膜を形成した鋼板上に、ロールコーティング又はスプレーを用いて連続的に塗布し、約573Kで乾燥させる。こうして処理された鋼板を、例えば、1473Kで20時間の最終仕上焼鈍を行って、鋼板表面にフォルステライト被膜(MgSiO被膜)を形成する。フォルステライト被膜は絶縁被膜であるとともに、鋼板表面に張力を付与して、方向性電磁鋼板の鉄損値を向上させることができる。
【実施例】
【0055】
下記の実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
【0056】
<試験方法>
(1)付着水分の測定方法
付着水分の測定は、JIS−K0068:2001「化学製品の水分測定方法」に記載の「7 乾燥減量法」に準じて行った。乾燥減量法での乾燥は、378Kで2.0時間行い、その後、水分測定を行った。
【0057】
(2)水和水分の測定方法
水和水分は、強熱減量から付着水分を減じて算出した。強熱減量の測定は、JIS−K8432:2006「酸化マグネシウム(試薬)」の「7.5 強熱減量(800℃)」に基づき、JIS−K0067:1992「化学製品の減量及び残分試験方法」の「4.2 強熱減量試験」に準じて行った。強熱減量試験の強熱は、1073Kで2.0時間行い、その後、強熱減量の測定を行った。
【0058】
(3)ホウ素(B)の含有量の測定方法
測定試料を、12Nの塩酸(試薬特級)に加え加熱して完全に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(SP3520 VDD、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、ホウ素(B)の含有量を測定した。
【0059】
(4)塩素(Cl)の含有量の測定方法
塩素(Cl)の含有量については、試料を酸に溶解した後、分光光度計(UV−2550、島津製作所製)を用いて質量を測定することで、試料中の濃度を算出した。
【0060】
(5)CAAの測定方法
0.4Nのクエン酸溶液1×10-4と、指示薬として適量(2×10-6)の1%フェノールフタレイン液とを、2×10-4のビーカーに入れ、液温を303Kに調整し、マグネットスターラーを使用して700rpmで攪拌しながら、クエン酸溶液中に40%の最終反応当量の酸化マグネシウムを投入して、最終反応までの時間、つまりクエン酸が消費され溶液が中性となるまでの時間を測定した。
【0061】
(6)フォルステライト被膜生成率
フォルステライトの形成機構は反応式:2MgO+SiO→MgSiOで示される。そのため、酸化マグネシウム粉末と非晶質の二酸化ケイ素のモル比を、2:1になるように調合した混合物を作成し、この混合物0.8×10−3kgを圧力50MPaで成形し、直径15×10−3m、高さ約3×10−3mの成形体を得た。次に、この成形体を窒素雰囲気中で、1473Kで4.0時間焼成し、得られた焼結体中のフォルステライト生成量を、X線回折により定量分析した。生成率が90%以上の場合、充分な反応性を有し、良好なフォルステライト被膜が形成されると考えられる。
【0062】
(7)フォルステライト被膜の外観
フォルステライト被膜の外観、フォルステライト被膜の密着性及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性の試験試料供試鋼として、方向性電磁鋼板用のケイ素鋼スラブを、公知の方法で熱間圧延、冷間圧延を行って、最終板厚0.28×10−3mとし、更に、窒素25%+水素75%の湿潤雰囲気中で脱炭焼鈍した鋼板を用いた。脱炭焼鈍前の鋼板の組成は、質量%で、C:0.01%、Si:3.29%、Mn:0.09%、Al:0.03%、S:0.07%、N:0.0053%、残部は不可避的な不純物とFeである。この電磁鋼板上に酸化マグネシウムを塗布して、フォルステライト被膜の被膜特性を調査した。具体的には、本発明の酸化マグネシウム又は比較例の酸化マグネシウムをスラリー状にして、乾燥後の質量で14.0×10−3kg・m−2になるように鋼板に塗布し、乾燥後、1473Kで20.0時間の最終仕上焼鈍を行った。最終仕上焼鈍が終了したのち冷却し、鋼板を水洗し、塩酸水溶液で酸洗浄した後、再度水洗して、乾燥させた。被膜の外観は、洗浄後の被膜の外観から判断した。すなわち、灰色のフォルステライト被膜が、均一に厚く形成されている場合を◎、被膜が均一であるがやや薄く形成されている場合を○、被膜が不均一で薄いが、下地の鋼板が露出している部分がない場合を△、被膜が不均一で非常に薄く、下地の鋼板が明らかに露出した部分がある場合を×とした。
【0063】
(8)フォルステライト被膜の密着性
フォルステライト被膜の密着性は、洗浄前の被膜状態から判断した。すなわち、被膜が均一に形成され、剥離部位が存在しない場合を◎、被膜が僅かに不均一であるが、剥離部分が存在しない場合を○、被膜が不均一で、ピンホール状の剥離部位が存在する場合を△、被膜が不均一で、明確な剥離部位が存在する場合を×とした。
【0064】
(9)未反応酸化マグネシウムの酸除去性
未反応酸化マグネシウムの酸除去性(単に、「酸除去性」ともいう。)は、洗浄後の被膜状態から判断した。すなわち、未反応の酸化マグネシウムが完全に除去されている場合を◎、明確な未反応酸化マグネシウムの残存は認められないものの、被膜に濃淡があり僅かに未反応酸化マグネシウムが残存すると判断した場合を○、点状に未反応酸化マグネシウムの残存が明確に観察される場合を△、明らかに未反応酸化マグネシウムが残存している場合を×とした。
【0065】
<実施例1>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量(B)が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10mol・m−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が2.0×10mol・m−3になるように添加し、600rpmで撹拌しながら、353Kで6.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1123K、3.0時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.36質量%、水和水分が5.49質量%であった。
【0066】
<実施例2>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10mol・m−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が2.0×10mol・m−3になるように添加し、600rpmで撹拌しながら、343Kで3.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1173K、1.0時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.44質量%、水和水分が3.44質量%であった。
【0067】
<実施例3>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10mol・m−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が2.0×10mol・m−3になるように添加し、600rpmで撹拌しながら、353Kで3.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1323K、1.0時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.56質量%、水和水分が0.41質量%であった。
【0068】
<実施例4>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10mol・m−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が2.0×10mol・m−3になるように添加し、600rpmで撹拌しながら、353Kで6.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1273K、1.0時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.42質量%、水和水分が0.7質量%であった。
【0069】
<実施例5>
海水に水酸化カルシウムを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.05×10mol・m−3となるように加え、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入し、323Kで20.0時間、反応させて、水酸化マグネシウムを得た。なお、この反応終了5.0時間前に、高分子凝集剤を0.02質量%加えた。得られた水酸化マグネシウムを、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥した。次に、ロータリーキルンにより、1273K、1.0時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られたマグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.39質量%、水和水分が0.72質量%であった。
【0070】
<実施例6>
海水に水酸化カルシウムを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.05×10mol・m−3となるように加え、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入し、323Kで20.0時間、反応させて水酸化マグネシウムを得た。なお、この反応終了5.0時間前に、高分子凝集剤を0.02質量%加えた。得られた水酸化マグネシウムを、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥した。次に、ロータリーキルンにより、1373K、1.5時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.31質量%、水和水分が0.23質量%であった。
【0071】
<実施例7>
海水に水酸化カルシウムを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.05×10mol・m−3となるように加え、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3調整したホウ酸水溶液を投入し、323Kで25.0時間、反応させて水酸化マグネシウムを得た。なお、この反応終了5.0時間前に、高分子凝集剤を0.02質量%加えた。得られた水酸化マグネシウムを、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥した。次に、ロータリーキルンにより、1173K、1.0時間焼成後で焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.30質量%、水和水分が5.09質量%であった。
【0072】
<比較例1>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10mol・m−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が2.0×10mol・m−3になるように添加し、600rpmで撹拌しながら、353Kで6.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1173K、2.0時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.14質量%、水和水分が1.46質量%であった。
【0073】
<比較例2>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10mol・m−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が2.0×10mol・m−3になるように添加し、600rpmで撹拌しながら、343Kで6.0時間反応時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1323K、1.5時間焼成後、ジェットミルで粉砕し酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、純水を噴霧し、酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.20質量%、水和水分が0.48質量%であった。
【0074】
<比較例3>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10mol・m−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が2.0×10mol・m−3になるように添加し、600rpmで撹拌しながら、353Kで6.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1373K、1.0時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.66質量%、水和水分が0.34質量%であった。
【0075】
<比較例4>
海水に水酸化カルシウムを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.05×10mol・m−3となるように加え、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入し、323Kで20.0時間、反応させて、水酸化マグネシウムを得た。なお、この反応終了5.0時間前に、高分子凝集剤を0.02質量%加えた。得られた水酸化マグネシウムを、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥した。次に、ロータリーキルンにより、1173K、1.0時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.18質量%、水和水分が4.88質量%であった。
【0076】
<比較例5>
海水に水酸化カルシウムを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.05×10mol・m−3となるように加え、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%なるように、純水で0.3×10mol・m−3に調整したホウ酸水溶液を投入し、323Kで20.0時間、反応させて水酸化マグネシウムを得た。なお、この反応終了5.0時間前に、高分子凝集剤を0.02質量%加えた。得られた水酸化マグネシウムを、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥した。次に、ロータリーキルンにより、1173K、0.5時間焼成後、純水を噴霧し、ジェットミルで粉砕し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウム粉末の付着水分及び水和水分を測定した結果、最終的に得られる酸化マグネシウムの付着水分が0.25質量%、水和水分が6.51質量%であった。
【0077】
上述のようにして得られた実施例1〜7及び比較例1〜5の酸化マグネシウムを、脱炭焼鈍を終えた鋼板に塗布し、仕上焼鈍し、鋼板表面にフォルステライト被膜を形成した。このようにして得られた鋼板の、フォルステライト被膜生成率、被膜の外観、被膜の密着性、及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性について、評価した。表1に、それらの結果を示す。なお、実施例1〜7及び比較例1〜5の酸化マグネシウムのCAAを測定したところ、すべて60〜90秒の範囲だった。
【0078】
【表1】
【0079】
表1から明らかなように、付着水分及び水和水分が所定の範囲である実施例1〜7の酸化マグネシウムを用いて形成したフォルステライト被膜は、(A)フォルステライト被膜生成率が90%以上と優れていることが明らかとなった。更に、実施例1〜7の酸化マグネシウムを用いて形成したフォルステライト被膜は、(B)被膜の外観、(C)被膜の密着性、及び(D)未反応酸化マグネシウムの酸除去性についてもすべて優れていることが明らかとなった。
【0080】
これに対し、付着水分及び水和水分を調整せず、付着水分及び水和水分が所定の範囲ではない比較例1〜5の酸化マグネシウムを用いて形成したフォルステライト被膜は、(A)フォルステライト被膜生成率、(B)被膜の外観、(C)被膜の密着性、及び(D)未反応酸化マグネシウムの酸除去性という特性のうち、少なくとも1つを満たしてはいないため、所望の鋼板が得られないことが明らかとなった
【0081】
以上のことから、本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムによれば、優れた絶縁特性と磁気特性を有する方向性電磁鋼板を製造することができることが明らかとなった。
図1