特許第6494583号(P6494583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494583
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】トルクヒンジ
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/10 20060101AFI20190325BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   F16C11/10 A
   F16C11/04 F
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-207440(P2016-207440)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-71553(P2018-71553A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】幡野 裕一
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−65355(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0042970(US,A1)
【文献】 米国特許第5542505(US,A)
【文献】 特表2000−501149(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0071735(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/10
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴を有する拘束部材と、
前記拘束部材の前記穴に通される軸と、
相対回転する前記軸に摩擦によるトルクを発生させるように前記軸に締まり嵌め状態で係合し、前記拘束部材の前記穴に嵌められる摩擦部材と、
前記摩擦部材と前記拘束部材との間に介在し、前記拘束部材に前記摩擦部材を回転不可能に固定するための固定用軸と、を備え
前記摩擦部材は、前記軸が貫通する軸開口部を画定する囲み部と、前記囲み部に一体に形成される楔状の回り止め部と、を有し、
前記固定用軸が前記楔状の回り止め部を前記拘束部材の前記穴の内面に押し付けるトルクヒンジ。
【請求項2】
穴を有する拘束部材と、
前記拘束部材の前記穴に通される軸と、
相対回転する前記軸に摩擦によるトルクを発生させるように前記軸に締まり嵌め状態で係合し、前記拘束部材の前記穴に嵌められる摩擦部材と、
前記摩擦部材と前記拘束部材との間に介在し、前記拘束部材に前記摩擦部材を回転不可能に固定するための固定用軸と、を備え
前記拘束部材の前記穴の内面は、互いに対して傾斜する一対の傾斜内面を有し、
前記固定用軸が前記摩擦部材を前記拘束部材の前記一対の傾斜内面に押し付けるトルクヒンジ。
【請求項3】
前記拘束部材の前記穴の内面は、互いに対して傾斜する一対の傾斜内面を有し、
前記固定用軸が前記楔状の回り止め部を前記拘束部材の前記一対の傾斜内面に押し付け、
前記固定用軸が前記拘束部材の前記一対の傾斜内面に繋がる底面と前記摩擦部材の前記回り止め部との間に配置されることを特徴とする請求項に記載のトルクヒンジ。
【請求項4】
前記摩擦部材は、打抜き加工された摩擦プレートであり、
2枚以上の前記摩擦プレートが積層され、
軸方向視において、仮想中心線に関して左右対称の前記摩擦プレートには、前記固定用軸に係合する切欠きが前記摩擦プレートの前記仮想中心線からずれた位置に形成されることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のトルクヒンジ。
【請求項5】
拘束部材の穴に摩擦部材を嵌める工程と、
前記拘束部材に前記摩擦部材を回転不可能に固定するために前記摩擦部材と前記拘束部材との間に固定用軸を挿入する工程と、
相対回転する軸に摩擦によるトルクを発生させるように前記摩擦部材に締まり嵌め状態で前記軸を通す工程と、を備え
前記摩擦部材は、前記軸が貫通する軸開口部を画定する囲み部と、前記囲み部に一体に形成される楔状の回り止め部と、を有し、
前記固定用軸が前記楔状の回り止め部を前記拘束部材の前記穴の内面に押し付けるトルクヒンジの製造方法。
【請求項6】
拘束部材の穴に摩擦部材を嵌める工程と、
前記拘束部材に前記摩擦部材を回転不可能に固定するために前記摩擦部材と前記拘束部材との間に固定用軸を挿入する工程と、
相対回転する軸に摩擦によるトルクを発生させるように前記摩擦部材に締まり嵌め状態で前記軸を通す工程と、を備え
前記拘束部材の前記穴の内面は、互いに対して傾斜する一対の傾斜内面を有し、
前記固定用軸が前記摩擦部材を前記拘束部材の前記一対の傾斜内面に押し付けるトルクヒンジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拘束部材に対して相対的に回転する軸に摩擦によるトルクを発生させるトルクヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクヒンジは、固定体に対して可動体を任意の開き角度に保持し、及び/又は可動体が開き若しくは閉じるときの衝撃を緩和するのに用いられる。例えば、トルクヒンジは、ノート型パソコン等の電子機器において、コンピュータ本体(固定体)に対してディスプレイ(可動体)を任意の開き角度に保持するのに用いられる。電子機器の他にも、家具若しくは自動車の扉若しくは蓋を開閉式にしたり、テーブル若しくはカウンターを折り畳み式にするのに用いられる。
【0003】
トルクヒンジとして、特許文献1には、穴を有する拘束部材と、拘束部材の穴に通される軸と、軸に締まり嵌め状態で係合し、拘束部材の穴に回転不可能に固定される摩擦部材と、を備えるものが開示されている。
【0004】
特許文献1のトルクヒンジにおいて、拘束部材が固定体に連結され、軸が可動体に連結される。可動体が回転すると、可動体と一緒に軸が回転する。このとき、摩擦部材の回転が拘束部材によって制限されるので、軸が摩擦部材に対して回転する。軸には摩擦部材が締まり嵌め状態で係合するので、相対回転する軸に摩擦によるトルクが発生する。このため、可動体を任意の開き角度に保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−501149号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のトルクヒンジにあっては、拘束部材に摩擦部材を固定するために、拘束部材の穴に摩擦部材を圧入している。このため、トルクヒンジの組立てに手間がかかるという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、組立てが容易なトルクヒンジ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、穴を有する拘束部材と、前記拘束部材の前記穴に通される軸と、相対回転する前記軸に摩擦によるトルクを発生させるように前記軸に締まり嵌め状態で係合し、前記拘束部材の前記穴に嵌められる摩擦部材と、前記摩擦部材と前記拘束部材との間に介在し、前記拘束部材に前記摩擦部材を回転不可能に固定するための固定用軸と、を備え、前記摩擦部材は、前記軸が貫通する軸開口部を画定する囲み部と、前記囲み部に一体に形成される楔状の回り止め部と、を有し、前記固定用軸が前記楔状の回り止め部を前記拘束部材の前記穴の内面に押し付けるトルクヒンジである。
本発明の他の態様は、穴を有する拘束部材と、前記拘束部材の前記穴に通される軸と、相対回転する前記軸に摩擦によるトルクを発生させるように前記軸に締まり嵌め状態で係合し、前記拘束部材の前記穴に嵌められる摩擦部材と、前記摩擦部材と前記拘束部材との間に介在し、前記拘束部材に前記摩擦部材を回転不可能に固定するための固定用軸と、を備え、前記拘束部材の前記穴の内面は、互いに対して傾斜する一対の傾斜内面を有し、前記固定用軸が前記摩擦部材を前記拘束部材の前記一対の傾斜内面に押し付けるトルクヒンジである。
【0009】
本発明の他の態様は、拘束部材の穴に摩擦部材を嵌める工程と、前記拘束部材に前記摩擦部材を回転不可能に固定するために前記摩擦部材と前記拘束部材との間に固定用軸を挿入する工程と、相対回転する軸に摩擦によるトルクを発生させるように前記摩擦部材に締まり嵌め状態で前記軸を通す工程と、を備え、前記摩擦部材は、前記軸が貫通する軸開口部を画定する囲み部と、前記囲み部に一体に形成される楔状の回り止め部と、を有し、前記固定用軸が前記楔状の回り止め部を前記拘束部材の前記穴の内面に押し付けるトルクヒンジの製造方法である。
本発明のさらに他の態様は、拘束部材の穴に摩擦部材を嵌める工程と、前記拘束部材に前記摩擦部材を回転不可能に固定するために前記摩擦部材と前記拘束部材との間に固定用軸を挿入する工程と、相対回転する軸に摩擦によるトルクを発生させるように前記摩擦部材に締まり嵌め状態で前記軸を通す工程と、を備え、前記拘束部材の前記穴の内面は、互いに対して傾斜する一対の傾斜内面を有し、前記固定用軸が前記摩擦部材を前記拘束部材の前記一対の傾斜内面に押し付けるトルクヒンジの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、拘束部材の穴に隙間のある状態で摩擦部材を嵌めることができるので、拘束部材の穴に摩擦部材を挿入するのが容易である。拘束部材と摩擦部材との間に固定用軸を介在させるので、拘束部材に摩擦部材を回転不可能に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態のトルクヒンジの外観斜視図である。
図2】本実施形態のトルクヒンジの動作図である(図2(a)は閉じ位置を示し、図2(b)は閉じ位置から開き方向に90度回転したときの位置を示し、図2(c)は開き位置を示し、図2(d)は開き位置から閉じ方向に90度回転したときの位置を示す)。
図3】本実施形態のトルクヒンジの分解斜視図である。
図4】本実施形態のトルクヒンジの垂直断面図である。
図5】中間体の穴に嵌められた第1摩擦プレートを示す詳細図である(図5(a)はピンの挿入前を示し、図5(b)はピン挿入後を示す)。
図6】本実施形態のトルクヒンジを跳ね上げ式カウンターに適用した例を示す図である(図6(a)が跳ね上げ式カウンターの閉じ位置を示し、図6(b)が跳ね上げ式カウンターの開き位置を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のトルクヒンジを詳細に説明する。ただし、本発明のトルクヒンジは、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0013】
図1は、本発明のトルクヒンジを2軸ヒンジに適用した実施形態を示す。本実施形態のトルクヒンジは、第1本体1と、拘束部材としての中間体3と、第2本体2と、を備える。中間体3は、第1本体1に第1軸4(図3参照)の回りを回転可能に連結される。第2本体2は、中間体3に第2軸5(図3参照)の回りを回転可能に連結される。第1軸4と第2軸5とは平行である。第1本体1は、可動体に取り付けられる。第2本体2は、固定体に取り付けられる。
【0014】
図2は、可動体を開くときと閉じるときのトルクヒンジの動作図を示す。摩擦により第1軸4に発生するトルクは、摩擦により第2軸5に発生するトルクよりも小さく設定される。このため、図2(a)に示す閉じ位置にある可動体を開くとき(言い換えれば第1本体1を時計方向に回転させるとき)、図2(b)に示すように、最初に第1本体1が中間体3に対して90度回転し、その後、図2(c)に示すように、中間体3が第2本体2に対して90度回転する。図2(c)に示す可動体の開き位置では、第1本体1のストッパ11と第2本体2のストッパ11とが当接する。
【0015】
一方、図2(c)に示す開き位置にある可動体を閉じるとき(言い換えれば第1本体1を反時計方向に回転させるとき)、図2(d)に示すように、最初に第1本体1が中間体3に対して90度回転し、その後、図2(a)に示すように、中間体3が第2本体2に対して90度回転する。図2(a)に示す可動体の閉じ位置では、第1本体1及び第2本体2が中間体3に当接する。
【0016】
図3は、トルクヒンジの分解斜視図を示す。符号1は第1本体、2は第2本体、3は中間体、4は第1軸、5は第2軸、6は積層された第1摩擦プレート、7は積層された第2摩擦プレートである。なお、以下の説明において、説明の便宜上、閉じ位置にあるトルクヒンジを垂直面に配置し、垂直面に直交する方向から見たときの方向、すなわち図2の上下、左右、前後を用いてトルクヒンジの構成を説明する。もちろん、トルクヒンジの配置は、このような配置に限られるものではない。
【0017】
第1本体1は、2分割された一対の第1分割体1a,1bから構成される。第1分割体1a,1bは、全体が略直方体状に形成されると共に、その角に中間体3との干渉を避けるための切欠き12が形成される。第1分割体1a,1bには、可動体に取り付けるためのねじ等の締結部材が通される穴13が形成される。切欠き12は、互いに直角な第1底面12aと第2底面12bとを備える。第1分割体1a,1bは、中間体3に対して略90度の範囲で回転可能である。第1分割体1a,1bの前面には、突起状のストッパ11が形成される。
【0018】
第1軸4の軸方向の両端部は、第1分割体1a,1bに回転不可能に支持される。第1軸4の軸方向の両端部には、例えばローレット加工により回り止め部21,22が形成される。回り止め部21,22は、第1軸4の外周面に形成された、軸方向に延びる多数の凸条及び/又は溝条から構成される。第1軸4の他端部には、回り止め部22としてローレット加工部22aに加えて平坦部22bも形成される。
【0019】
第1分割体1aには、第1軸4の一端部が挿入される穴14aが形成される。穴14aには、第1軸4の一端部に形状を合わせた回り止め部が形成される。第1分割体1bには、第1軸4の他端部が挿入される穴14bが形成される。穴14bには、第1軸4の他端部に形状を合わせた回り止め部が形成される。第1軸4の両端部の回り止め部21,22を第1分割体1a,1bに挿入することで、第1軸4が第1本体1に対して時計方向にも反時計方向にも回転不可能になる。
【0020】
第2本体2も、2分割された一対の第2分割体2a,2bから構成される。第2分割体2aは第1分割体1aと同一形状であり、第2分割体2bは第1分割体1bと同一形状である。第2分割体2a,2bの各部に第1分割体1a,1bと同一の符号を附し、詳しい説明を省略する。
【0021】
第2軸5も第1軸4と同一形状である。第2軸5の各部に第1軸4と同一の符号を附し、詳しい説明を省略する。
【0022】
拘束部材としての中間体3は、全体が横長直方体形状に形成されると共に、上下端が丸みを帯びた形状に形成される。中間体3には、第1軸4が貫通し、摩擦部材としての第1摩擦プレート6が収容される穴31が形成される。また、中間体3には、第2軸5が貫通し、摩擦部材としての第2摩擦プレート7が収容される穴32が形成される。中間体3の軸方向の両端面には、凹陥部3aが形成される。この凹陥部3aには、穴31,32を塞ぐ蓋37が嵌められる。図4の断面図に示すように、穴31及び蓋37によって第1収容部S1が区画される。穴32及び蓋37によって第2収容部S2が区画される。
【0023】
図3に示すように、蓋37は、金属部分35と、樹脂部分36と、を備える。金属部分35及び樹脂部分36は、中間体3の端面の凹陥部3aに形状を合わせた縦長板状に形成される。金属部分35及び樹脂部分36には、第1軸4及び第2軸5が貫通する穴が形成される。
【0024】
図3に示すように、穴31には、2枚以上の第1摩擦プレート6が回転不可能に収容される。第1摩擦プレート6は、第1軸4の軸方向に積層される。相対回転する第1軸4には、第1摩擦プレート6の積層枚数に比例したトルクが発生する。穴32には、2枚以上の第2摩擦プレート7が回転不可能に収容される。第2摩擦プレート7は、第2軸5の軸方向に積層される。相対回転する第2軸5には、第2摩擦プレート7の積層枚数に比例したトルクが発生する。
【0025】
図5は、中間体3の穴31に収容された第1摩擦プレート6を示す。図5(a)は固定用軸としてのピン41の挿入前を示し、図5(b)はピン41の挿入後を示す。第1摩擦プレート6は、第1軸4が貫通する軸開口部42を画定する囲み部43と、囲み部43に一体に形成される楔状の回り止め部44と、を有する。第1摩擦プレート6は、薄板の打ち抜き加工により製造される。
【0026】
囲み部43は、リング状である。囲み部43の内径は、第1軸4の外径よりも小さい。囲み部43は、締まり嵌め状態で第1軸4に係合する。囲み部43の内面には、周方向に複数の切欠き48が形成される。なお、囲み部43にスリットを形成する(言い換えれば囲み部43を一対の円弧状のアームから構成したり、囲み部43をフック状に形成したりする)ことも可能である。
【0027】
回り止め部44は、楔状である。回り止め部44には、囲み部43から離れるにしたがって除々に回り止め部44の横幅が広くなるように、一対の傾斜外面44a,44bが形成される。傾斜外面44a,44bのなす角度はαである(図5b参照)。傾斜外面44a,44bには、底面44cが繋がる。底面44cには、軸方向視における第1摩擦プレート6の仮想中心線C1から左方向にずれた位置に切欠き44dが形成される。第1摩擦プレート6は、切欠き44dを除いて、仮想中心線C1に関して左右対称である。
【0028】
打ち抜き加工により第1摩擦プレート6を製造すると、第1摩擦プレート6の中央部が凸状に膨らむ。仮想中心線C1からずれた位置に切欠き44dを形成することで、凸の向きを揃えて第1摩擦プレート6を積層することが容易になる。
【0029】
図5(a)に示すように、穴31は、円筒部51と、円筒部51に連続する断面台形の四角柱部52と、を有する。円筒部51の内面は、囲み部43の外径よりも半径の大きな円筒状である。円筒部51の内面と囲み部43の外面との間には隙間g1が開く。
【0030】
四角柱部52は、互いに対して傾斜する一対の傾斜内面52a,52bを有する。四角柱部52の内面は、回り止め部44よりも大きな台形断面を持つ四角柱状である。四角柱部52の内面と回り止め部44の外面との間には隙間g2が開く。傾斜内面52a,52bのなす角度αは、傾斜外面44a,44bのなす角度に等しい(図5b参照)。傾斜内面52a,52bには、底面52cが繋がる。底面52cには、穴31の仮想中心線C1から左方向にずれた位置に切欠き52dが形成される。穴31は、切欠き52dを除いて、仮想中心線C1に関して左右対称である。
【0031】
図5(a)に示すように、第1摩擦プレート6は、穴31に隙間g1,g2のある状態で嵌められる。第1摩擦プレート6を穴31に嵌めた後、ピン41を切欠き44d,52dの間に挿入する。これにより、図5(b)に示すように、回り止め部44の傾斜外面44a,44bが穴31の傾斜内面52a,52bに押し付けられ、第1摩擦プレート6が中間体3の穴31の内面に回転不可能に固定される。
【0032】
ここで、第1摩擦プレート6の回り止め部44が楔状であり、第1摩擦プレート6がピン41、傾斜内面52a,52bの3か所で中間体3に支持されるので、第1摩擦プレート6を安定して一定の位置に保持することができる。第1摩擦プレート6には、第1軸4が支持されている。このため、第1軸4も安定して一定の位置に保持することができる。
【0033】
第2摩擦プレート7の形状は、第1摩擦プレート6と同一である。穴32の形状も、穴31の形状と同一である。第2摩擦プレート7も、第1摩擦プレート6と同様にピン41によって穴32の内面に固定される。
【0034】
図3に示すように、第1摩擦プレート6及び第2摩擦プレート7を中間体3に固定した後、穴31及び穴32を蓋37で塞ぐ。その後、第1摩擦プレート6及び蓋37に第1軸4を貫通させ、第2摩擦プレート7及び蓋37に第2軸5を貫通させる。その後、第1軸4の両端部に2分割された第1分割体1a,1bを取り付け、第2軸5の両端部に2分割された第2分割体2a,2bを取り付ける。
【0035】
図6は、本実施形態のトルクヒンジを跳ね上げ式カウンターに適用した例を示す。図6(a)は跳ね上げ式カウンターの閉じ位置(折り畳み位置)を示し、図6(b)は跳ね上げ式カウンターの開き位置(平坦位置)を示す。図6(a)に示すように、第1本体1は、跳ね上げ式カウンターCの小口面に取り付けられる。第2本体2は、カウンター本体Bの小口面に取り付けられる。
【0036】
跳ね上げ式カウンターCを開くときにも閉じるときにも、第1軸4及び第2軸5に摩擦によるトルクが発生するので、跳ね上げ式カウンターCを任意の開き角度に保持したり、及び/又は跳ね上げ式カウンターCが開き若しくは閉じるときの衝撃を緩和したりできる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に変更できる。
【0038】
上記実施形態では、本発明のトルクヒンジを2軸ヒンジに適用した例を説明したが、本発明のトルクヒンジは1軸ヒンジにも適用することができる。この場合、第2摩擦プレート、第2本体が不要になる。第1本体が可動体に連結され、中間体が固定体に連結される。
【0039】
上記実施形態では、中間体の各穴に2枚以上の摩擦プレートを収容しているが、1枚の摩擦プレートを収容することも可能である。また、2枚以上の摩擦プレートを一体にした1つの摩擦部材を収容することも可能である。
【0040】
本発明のトルクヒンジは、家具、自動車等の乗物、ノート型パソコン等の電子機器、半導体製造装置若しくは医療器械等の機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
3…中間体(拘束部材)
4…第1軸(軸)
5…第2軸(軸)
6…第1摩擦プレート(摩擦部材)
7…第2摩擦プレート(摩擦部材)
31…中間体の穴(拘束部材の穴)
32…中間体の穴(拘束部材の穴)
41…ピン(固定用軸)
42…軸開口部
43…囲み部
44…楔状の回り止め部
44a…回り止め部の傾斜外面
44b…回り止め部の傾斜外面
52a…中間体の穴の傾斜内面
52b…中間体の穴の傾斜内面
52c…中間体の穴の底面
C1…軸方向視における摩擦プレートの仮想中心線
g1…隙間
g2…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6