特許第6494597号(P6494597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494597
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】静電誘導型発電器
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   H02N1/00
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-510171(P2016-510171)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2015055844
(87)【国際公開番号】WO2015146483
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-63824(P2014-63824)
(32)【優先日】2014年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】和泉 輝
(72)【発明者】
【氏名】伊原 隆史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−188046(JP,A)
【文献】 特開2009−148124(JP,A)
【文献】 特開平09−120632(JP,A)
【文献】 特開平04−340118(JP,A)
【文献】 特開2013−059149(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/086830(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付基準面を有するハウジングと、
第1対向面を有し且つ前記ハウジングに固定された第1基板と、
第2対向面を有し且つ第1基板に対して相対移動可能に配向に配置された第2基板と、
帯電膜と、
前記帯電膜と対向して配置された対向電極と、
前記帯電膜及び前記対向電極間で発生した電力を出力する出力部と、を有し、
前記帯電膜及び前記対向電極のいずれか一方を前記第1対向面に配置し、他方を前記第2対向面に配置し、
前記第1基板の前記第1対向面を前記取付基準面に固定し
前記第2基板に軸を設けて、前記軸を前記ハウジングに設けた上部軸受部と下部軸受部で、回転自在に軸支し、
前記上部軸受部と下部軸受部のいずれか一方又は両方が、前記軸の軸方向位置を調整する第1ネジを有し、
前記第1ネジには、前記第1ネジの弛みを防止し前記軸及び前記第1ネジの軸方向位置を固定する第2ネジが設けられている
ことを特徴とする基板配置構造。
【請求項2】
前記ハウジングが、前記上部軸受部と下部軸受部のいずれか一方の軸受部へ、前記軸を付勢する付勢機構を有することを特徴とする請求項に記載の基板配置構造。
【請求項3】
前記付勢機構が、バネ又は磁石を用いたことを特徴とする請求項に記載の基板配置構造。
【請求項4】
前記一方の軸受部が、前記第1ネジを有することを特徴とする請求項又はに記載の基板配置構造。
【請求項5】
前記第2基板の前記軸は、重量バランスの偏りを有する回転錘が直接設置されているか、又は、回転錘の回転が歯車列を介して前記軸に回転伝動されるように構成されていることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の基板配置構造。
【請求項6】
重量バランスの偏りを有する回転錘の正逆両方向の回転、又は、正逆回転の一方回転のみが、前記第2基板に常に一方向に回転伝動されることを特徴とする請求項に記載の基板配置構造。
【請求項7】
前記第1基板の第1対向面とは反対側に、少なくとも整流回路を含む電子回路が配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の基板配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電誘導を利用した発電装置、発電器、携帯型電気機器、携帯型時計等に関する。本発明の発電器のエネルギー源としては、人体の運動、機械等の振動、その他環境に広く存在する運動エネルギーを利用することができる。
【背景技術】
【0002】
エレクトレット材料による静電誘導を利用した実用的発電装置が、特許文献1〜3に開示されている。静電誘導とは、帯電した物体を導体に接近させると、帯電した物体とは逆の極性の電荷が引き寄せられる現象のことである。静電誘導現象を利用した発電装置とは、「電荷を保持する膜」(以下、帯電膜(electrically charged film)という)と「対向電極」を配置した構造において、この現象を利用して、両者を相対移動させて誘導された電荷を取り出す発電のことである。
【0003】
エレクトレット材料による場合を例にとると、エレクトレットは、誘電体に電荷を打ち込んだものであり、半永久的に静電場を発生させるものである。このエレクトレットによる発電では、図1にみられるように、エレクトレット(electret)3により形成される静電場によって対向電極(electrode)2に誘導電荷が生じ、エレクトレットと対向電極の重なりの面積を変化(振動等)させれば、外部電気回路200において交流電流を発生させることができる。このエレクトレットによる発電は、構造が比較的簡単で、電磁誘導によるものより、低周波領域において高い出力が得られ有利であって、近年いわゆる「環境発電(Energy Harvesting)」として注目されている。
【0004】
特許文献1には、水平振動型のエレクトレット素子により、人体の動きによる低周波振動を、外部エネルギーとして利用した携帯用の振動発電器が開示されている。特許文献2には、機械式自動巻き腕時計に用いられるような回転錘(rotor)の回転を、歯車機構を介して増速伝動させて、エレクトレット膜と電極の相対的な回転を行う静電誘導を利用した発電装置が開示されている。また、特許文献3には、エレクトレット膜と電極の往復周期回動を行う静電誘導を利用した発電装置において、回動体を、弾性体を介して支持して回動体を共振させた発電装置が開示されている。特許文献3の従来技術は、弾性体で共振させて回動振幅を大きくさせ、発電効率を向上させるものである。しかしながら、これらの従来技術では、いずれもエレクトレット膜と電極間ギャップを正確に制御して発電効率を上げようとする技術思想は何ら示されていない。
【0005】
また、特許文献4には、クロックの機械体において、テン真(balance staff)あるいは脱進車(escape wheel)の軸などの回転軸における軸受部のネジ部のバックラッシュを除去するために、バネ座金(spring washer)を挿入したものが開示されている。しかしながら、従来の機械式時計では、そもそも回転軸の軸方向の位置決めを、正確にする必要性がないばかりでなく、エレクトレット膜と電極間ギャップを正確に制御して発電効率を上げようとする技術思想は何ら示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−138514号公報
【特許文献2】特開2011−72070号公報
【特許文献3】特開2013−59149号公報
【特許文献4】実願昭50−102254号(実開昭52‐016346号公報)のマイクロフィルム
【特許文献5】特表2005−529574号公報
【発明の概要】
【0007】
図2は、帯電膜−対向電極間ギャップgと発電量との関係を示したグラフである。図3及び次の式は、帯電膜−対向電極間ギャップgと発電量Pとの関係を示した負荷調整電力方程式を示す。
Pは次の式から算出することができる。
【数1】
【0008】
図2において、上記式のジャスティン・ボーランド(Justin Boland)らの研究(特許文献5参照)に記載された負荷調整電力方程式(load-matched power equation)に基づいて、帯電膜−対向電極間ギャップg(基板間ギャップg)に対する発電量が示されている。図2のグラフからわかるようにエレクトレット膜と発電電極の距離gは、帯電膜−対向電極間ギャップgが100μ以下になればなる程、発電量に大きく寄与してくる。
【0009】
特許文献2にみられるような従来技術では、従来は発電器を構成するベースとなる板の上に基板を配置して、この基板の上にエレクトレット膜が形成されている。そして、このエレクトレット膜に対向して、回転板の下面に対向電極が配置されているとともに、回転板の軸は、軸受により上下の支持がされた構成となっている。このような従来技術の場合、エレクトレット膜と発電電極の距離gは、3つの部品(基板、軸、軸受)の下記の加工精度によって大きく変動する。
(1)基板の厚み
(2)軸のガタツキ(バックラッシュ又は遊びのこと)
(3)軸受けの位置精度、寸法精度
(4)軸の寸法精度
【0010】
特許文献2にみられるような従来技術では、発電器を構成するベースとなる板の上に、基板の下面が載置され、基板の上面のエレクトレット膜と、回転板の下面に形成された対向電極との間に、間隙が形成されている。このため、上述の加工精度による部品公差分のバラツキ(ガタツキ)が、どうしても、エレクトレット膜−対向電極間の隙間距離にバラツキを発生させてしまう。回転板による発電では、軸に発生するガタツキは、回転円板の姿勢に大きく影響して、エレクトレット膜と電極間距離を大きく変化させてしまう。一方、図2にみられるように、距離gがゼロに近づけば近づくほど大きな発電量が得られるエレクトレット発電では、このような部品公差分のバラツキが、即、発電量の大きなバラツキとなってしまう。量産をベースとした際には、ある程度の部品バラツキを持たせておく必要があるため、安定した発電量を得るためにはネックとなっている部分であった。
【0011】
このような問題を対処するには、部品加工時に非常に高い精度で作り上げる必要があるが、それらの部品を製作するためには部品の歩留まりの点、コストの点で問題があった。
また、ベースとなる板の上に基板の下面が載置され、基板の上面のエレクトレット膜が形成されている従来技術では、基板自体の厚み公差の効き量が、非常に大きくなるので、エレクトレット膜と電極同士を近づけるためには、基板の厚み公差が小さいもので製作する必要があって、ガラスエポキシ基板より、MEMS基板のような寸法精度の高い高価な基板を使用せざるを得なかった。
【0012】
基板配置構造は、ハウジングと、前記ハウジングに固定された第1基板と、前記第1基板に対して相対移動可能に平行に配置された第2基板と、帯電膜と、対向電極と、前記帯電膜及び対抗電極間で発生した電力を出力する出力部と、を有し、前記帯電膜と前記対向電極のいずれか一方を、第1基板の第1対向面に設置し、他方を前記第1対向面に対向する第2基板の第2対向面に設置し、前記第1基板の前記第1対向面側を、ハウジングに設けられた取付基準面に固定したことを特徴とする。
【0013】
上記の基板配置構造は、構成部品の加工精度がばらついてもエレクトレット膜と対向電極の距離のバラツキを低減させ、エレクトレット膜などを用いた静電容量型発電機の発電能力のバラツキを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】静電誘導現象を利用した発電の原理を説明する説明図である。
図2】帯電膜−対向電極間ギャップgと発電量との関係を示したグラフである。
図3】帯電膜−対向電極間ギャップgと発電量との関係を示した負荷調整電力方程式を示すための説明図である。
図4】本発明の第1実施形態を示す模式的断面図である。
図5】本発明の第1実施形態の回転軸に回転錘を有する場合の帯電膜−対向電極の構成を示す斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態の対向電極2と帯電膜3のパターンを示す図である。
図7】本発明の第1実施形態を示す詳細断面図である。
図8】本発明の第1実施形態の下部軸受部を下方から見た斜視図である。
図9図8のA−A線断面図である。
図10】渦巻きばね部の平面図である。
図11】本発明の第2実施形態を示す模式的断面図である。
図12】本発明の第2実施形態の調整機構を示す部分断面図である。
図13】本発明の第2実施形態の調整機構を下方から見た斜視図である。
図14図13の調整機構を示す部分断面図である。
図15】本発明の第3実施形態を示す模式的断面図である。
図16】本発明の第3実施形態の調整機構を示す断面図である。
図17】本発明の第4実施形態を示す模式的断面図である。
図18】本発明の第4実施形態を示す断面図である。
図19】本発明の第5実施形態を示す模式的断面図である。
図20】本発明の第6実施形態を示す模式的断面図である。
図21】本発明の第8実施形態を示す模式的断面図とB−B線に関する断面図である。
図22】本発明の第9実施形態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態を示す模式的断面図である。図5は、本実施形態の回転軸に回転錘を有する場合の帯電膜−対向電極の構成を示す斜視図である。図6は、本実施形態の第1対向電極2と第1帯電膜3のパターンを示す図である。
【0017】
本実施形態は腕時計や携帯用電子電気機器などに主に適用できるが、これに限定されるものではない。ハウジングは、腕時計の場合によくつかわれる呼称、すなわち、地板(main plate)33、下部・上部受け(bridge or plate)34、35で説明するが、ハウジングは、必ずしも腕時計に限定されるものではなく、携帯用電子電気機器などを含む一般的なハウジングを含むものである。下部・上部受け34、35には、下部・上部軸受部50、60が、嵌め合い、螺子止めなどで組み込まれている。図4に示す地板では、簡略上円筒形に形成されているが、これに限定されずに特許文献2のハウジングのように様々なパーツを組み込む支持台をここでは地板としている。
【0018】
図4を参照すると、地板33の内周側には、第1基板1をボルト36などで固定するために設けられた取付部37が、設けられている。本実施形態では、第1基板1の対向電極2が設置された第1対向面41と面接触する取付基準面Sが、取付部37の下面に形成されている。この取付基準面Sは位置決め設定の基準として機能する。この点については後で詳説する。取付部37は内周全体に環状に設置されていても良く、また内周所定位置に、数か所突起状に設置されていても良い。上下は、図4の図面上での上下を指す。本実施形態では、第1基板1の上面が第1対向面41であり、対向電極2が設けられている。第2基板4は軸8に固定されており、軸8の上下にはホゾ(tenon)8’(図7参照)が設置されていて、上下のホゾ8’、8’は上部軸受部60と下部軸受部50で、回転自在に軸支されている。第2基板4の下面が第2対向面42であって、帯電膜3が設置されている。第2基板4は、軸8を中心に回転するように、後述の回転駆動手段で回転駆動される。
【0019】
上記説明においては、対向電極2を第1基板1に設置し、帯電膜3を回転する第2基板4の第2対向面42に配置した場合で説明したが、これに限定されるものではない。帯電膜と対向電極を、逆にしてそれぞれ基板に取り付けて、帯電膜3を第1基板1の第1対向面41に設置し、対向電極2を第2基板4の第2対向面42に配置しても良い。
【0020】
本発明で帯電膜として用いられるエレクトレット材料には、帯電しやすい材料を用い、例えばマイナスに帯電する材料としてはシリコン酸化物(SiO)や、フッ素樹脂材料などを用いる。具体的には一例としてマイナスに帯電する材料として旭硝子製のフッ素樹脂材料であるCYTOP(登録商標、perfluorinated polymer)などがある。
【0021】
さらに、その他にもエレクトレット材料としては、高分子材料としてポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルデンジフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などがあり、無機材料としては前述したシリコン酸化物(SiO)やシリコン窒化物(SiN)なども使用することができる。その他、周知の帯電膜を使用することができる。
【0022】
帯電膜3(エレクトレット膜)の内面には、負電荷が保持されているので、対向電極2には、静電誘導により正電荷が引き寄せられる。第1基板1に設けられた対向電極2、第2基板4に設けられた帯電膜3は、図6に示すようなパターンであって、中心に関して等しい角度の放射部2’、3’が等間隔で形成されている。帯電膜3は、個別の放射部3’からなるパターンに形成されていて、導電部材の軸8に電気接点を介して接続されて出力されている(各放射部3’毎に軸8に接続するか、各放射部3’を連結配線後軸8に接続するようにしても良い)。第2基板4が金属の場合には各放射部3’はそれぞれ基板を通じて軸8と直接接続される。一方、対向電極2も、外周側の電極部から出力が取り出される。両出力端子は、整流回路20に接続している。軸8からの電流の取り出し方については、ブラシ電極や軸受部の導電体構成部を利用して回転しながら電気的接続を行えばよい。また、ヘアスプリングで共振させる特許文献3(段落0038等の渦巻きばね参照)の場合には、導電部材でできた軸8から、導電体のヘアスプリング(軸8と地板間に固定)を経て電気的接続を行うことが可能である。
【0023】
回転駆動手段によって、軸8に固定された第2基板4が回転すると、エレクトレット膜3と対向電極2間との重なり面積が増減し、対向電極2に引き寄せられる正電荷が増減して、エレクトレット膜と対向電極間に交流電流を発生させる。対向電極2と帯電膜3間の電流を、出力部として、整流回路20を通し直流変換して、外部に取り出し発電させるものである。
【0024】
整流回路20は、ブリッジ式であり、4個のダイオードを備え、入力側には、対向電極2と帯電膜3が接続されている。出力側には平滑回路を介して外部出力に接続されている。本実施形態における帯電膜3および対向電極2は放射状にパターニングされていたが、第1、第2基板4に対して相対回動したときに、重なり面積が増減するのであれば、他の形状にパターニングされていても良い。
【0025】
その他のパターンの一例として、図6の下部に示すパターンとは異なり第1基板1上の対向電極2の放射部2’が、それぞれ独立させ、とびとびに接続配線した放射部2’(2端子)をそれぞれ整流回路20の入力側に接続させてもよい(特開2013−135544号公報を引用補充する。同公報の図9、10の実施例参照、この場合には、静止する第1基板1上の対向電極2のみから電流を取り出せばよいので、回転する第2基板4の電気的接続が不要になって便利である。)。
【0026】
本実施形態では、エレクトレット発電においては、発電電圧は高いが発電電流が少ないため、整流回路20までの距離が長いと基板などに発生する寄生容量(stray capacitance)によって発電効率が減衰してしまう。このため、少なくとも発電に関係する電子回路80を発電電極の第1基板1に設けることが望ましい。しかしながら、発電基板面、すなわち、第1対向面に電子回路80を設けると、基板の径方向が大きくなってしまう。このため、基板に対して対向電極2が設けられていない裏面40に電子回路80(少なくとも整流回路を含む)を設置することによって、スペースの有効化を図り、径方向の増大を抑えることができる。裏面40にこの電子回路80を設置しても良い点については、以下の実施形態においても同様である。ここで、電子回路80には、ダイオードブリッジ、コンデンサ、ICなどが含まれるが、少なくともダイオードブリッジ回路は含まれていると良い。最低限ダイオードブリッジ回路だけでも配置することができれば、発電部と整流回路の距離を短くできるため、発電時のロスを減らすことができて、発電効率もアップする。
【0027】
次に、第1基板1の対向電極2が設置された第1対向面41と、面接触する取付基準面Sについて述べる。
【0028】
従来技術のように、下部ハウジング34に第1基板1を載置して、第1基板1の上面の第1対向面41に設けた対向電極2と、第2基板4の第2対向面42の帯電膜3との間で発電する場合、帯電膜3や対向電極2自体の厚さはせいぜい数ミクロン程度なので、第1基板自体の厚み公差の効き量が、非常に大きくなってしまっていた。安価なガラスエポキシ基板を使用すると、ガラスエポキシ基板は100μ程度のバラツキ(厚み公差)が発生してしまう。このバラツキは、帯電膜−対向電極間ギャップgを100μ以下に制御する場合には、即、発電量の大きなバラツキとなってしまうので、製品として安定した発電量を得るためには大きなネックとなっている部分であった。
【0029】
本実施形態では、地板33の取付部37の下面(取付基準面S)に、第1基板1の対向電極2が設置された第1対向面41を取り付けることによって、基板自体の厚み公差の影響を排除したものである。対向電極2や帯電膜3自体のコーティング膜の厚さはせいぜい数ミクロン程度なので、取付基準面S(即ち第1対向面41)と、第2基板4の第2対向面42が、帯電膜−対向電極間ギャップgを示すことになる。この取付基準面Sは、位置決め設定の基準として機能する。第1基板1を、地板33の取付部37の下面に突き当てた部分を第1基板1の基準面としているため、基板上に設けられた対向電極2は基板の厚さが変化しても常に基準面Sに位置することができ、基板の厚みバラツキのギャップgへの影響を排除できる。したがって、図2にみられるように、距離gがゼロに近づけば近づくほど大きな発電量が得られるエレクトレット発電で、基板自体の厚み公差の影響を完全に排除することができるので、帯電膜−対向電極間ギャップgを100μ以下に制御することが十分可能となる。
【0030】
図7は、本発明の第1実施形態を示す詳細断面図である。なお、図7において、回転錘10などのその他の部品は省略されている。図8は、本発明の第1実施形態の下部軸受部を下方から見た斜視図である。図9は、図8のA−A線断面図である。図10は、渦巻きばね部の平面図である。
【0031】
本実施形態において、第2基板4が、上部軸受部60と下部軸受部50で、回転自在に軸支されている点について、以下に説明する。上部軸受部60と下部軸受部50は、耐震機構を構成する。上下とも同一の部材で構成されているので、下部軸受部50について述べる。以下の説明では、機械時計に使用される「パラショック(parashock)」として公知の耐震装置(shock protection systems)に基づき説明するが、軸受部はこれに限定されるものではなく、その他の周知の耐震装置を利用しても良い。
【0032】
図8に示す下部軸受部50は、外側の枠体55に、受石座56を収納している。受石座56は、2つの両側についたバネ片53で、枠体内部に凹部57から挿入されて支持されている。図9に示すように、枠体55の内部底面には、図10に示す平板状の渦巻きばね54の外周側が、受石座56底面(ここは図9の図面上で上方側の面)で挟むようにして保持されている。図10に示すように、渦巻きばね54には穴石52が内周部に一体化して連結している。軸8のホゾ8’の端面は、受石座56内部に嵌めこまれた受石(jewel)51で軸支されている。この状況は、図9の断面図に詳細が示されている。下部軸受部50、上部軸受部60は、それぞれ下部受け34、上部受け35に嵌め合いなどで、軸8のガタツキがないように固定されている。
【0033】
耐震装置としての下部軸受においては、軸8の半径方向の衝撃荷重は、渦巻きばね54及び枠体55の内径部55’で受け、軸方向はバネ片53で受けるようにして機能する。穴石52、受石51はルビーで作られていることが多いが、いずれも耐摩耗性金属材料であっても良い。回転する第2基板4に軸方向の力がかかる場合には、第2基板4を、その力を受ける側の軸受部(例えば下部軸受部50)の軸方向に精度よく位置決めすると、既に取付基準面Sにより第1対向面41の位置が正確に設定されているので、帯電膜−対向電極間ギャップgを精度良く設定することができる。通常、帯電膜−対向電極間にはクーロン力(引き合う)が働くので、下部軸受けの位置決めは精度よく行うと良い。
【0034】
次に、本実施形態の回転駆動について説明する。図4にみられるように、本実施形態では、軸8には、重量バランスの偏りを有する回転錘10が直接設置されている。歩行等の人体の運動によって、回転錘10が駆動される。なお、軸8に直接回転錘10を取り付ける代わりに、第2基板4に錘を取り付けて、第2基板4自体を回転錘10とすることも可能である。
【0035】
第2基板4の軸8の回転駆動は、上記軸8に固定された回転錘の回転のみならず、機械式腕時計においてこれまで公知の自動巻きの回転駆動技術を転用することが可能である。たとえば、特許文献2のように、軸8とは別に軸支された回転錘の回転を、歯車機構を介して増速伝動させて軸8に伝動して、エレクトレット膜と電極の相対的な回転行うこともできる。軸8とは別に軸支(この軸を以下ローター軸という)された回転錘の正逆両方向の回転を、常に一方向の回転に変換するようにすれば、発電効率を一層高めることができる。
【0036】
このような変換クラッチ機構は、ツゥーウェイクラッチ機構として自動巻き腕時計の公知技術として、よく知られているので、これらの公知技術などを適用することが可能である。また、ロータ軸の回転や揺動の正逆一方向のみをワンウェイクラッチで軸8に伝動しても良い。例えば、切換歯車、2個の歯車、リンクやカムと連結機構などで正逆両方向の回転、又は、正逆回転の一方回転のみが第2基板4に常に一方向に回転伝動させると良い。第2基板4の軸8の回転が逆回転する時の運動エネルギーの無駄がなくなり、発電効率を高めることができる。その他、特許文献3にみられるような、共振現象を軸8の回転振動に利用して、振幅を増加させて発電効率を上げることも可能である。以上の第1実施形態の回転駆動については、以下に述べる第2〜6実施形態においても同様のことが言える。
【0037】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態を示す模式的断面図である。図12は、本発明の第2実施形態の調整機構を示す部分断面図である。図13は、本発明の第2実施形態の調整機構を下方から見た斜視図である。図14は、図13の調整機構を示す部分断面図である。
【0038】
上記第1実施形態においては、図7に示すように、下部軸受部50、上部軸受部60は、それぞれ下部受け34、上部受け35に嵌め合いなどで固定されていた。軸8のホゾ8’の先端とそれぞれの軸受部50、60とにガタツキが発生した場合に、図11に模式的に示すように(以下の実施形態においては、回転錘10を図示省略)、調整機構(受けネジ64など)によって軸受けの一方を調整できることにすることによって、軸8のガタツキを少なくするようにした実施形態である。なお、受けネジ64と締め付けネジ65の具体的構成は、後述の図16の上部軸受部60に示されており、詳しくは後述する。
【0039】
これにより、第1基板1の厚みバラツキの影響を受けにくいばかりでなく、調整機構によって軸受けの一方を調整できるので、従来よりも帯電膜−対向電極間ギャップgを精度良く設定することができる。さらに、軸8のガタツキを少なくできるので、軸8の姿勢の変化の影響を受けず、安定した発電量を得ることが可能である。上部受け35に嵌め込まれた支持板63に対して、受けネジ64が軸方向に調整可能にねじ込まれている。そして、受けネジ64は衝撃、振動などによって緩んだりしないように、締め付けネジ65によって受けネジ64の弛み止め(ダブルナット)を施すことが望ましいが、締め付けネジ65は無しであっても実施は可能である。その他の軸受部以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0040】
調整機構によって軸受けの一方を調整可能とする場合、上述のダブルナット以外にも軸8のガタツキを防止する手段は色々存在する。図12に示すように、図7に示す下部軸受部50、上部軸受部60のいずれか一方のパラショックにおいて、受石座56内部に挿入された受石51は、受けネジ64’によって、軸8のガタツキを調整するようにしても良い。受けネジ64’の外周は雄ネジが切られており、受石座56内部には雌ネジが切られている。受けネジ64’をねじ込んで、軸8のガタツキを調整する。下部軸受部50、上部軸受部60の枠体55は、それぞれ下部受け34、上部受け35に嵌め合いなどで固定されている。図12の例では、調整機構として下部軸受部50のみに受けネジ64’を設けた実施形態であるが、これを上部軸受部60のみに設けても良い。これにより、軸8のガタツキを少なくし、姿勢の変化に影響を受けず安定した発電量を得ることが可能となる。なお、後述するように、第3実施形態では、下部軸受部50、上部軸受部60の両方に上述の受けネジ64’を設けることも可能である。
【0041】
ネジを使った調整機構には、図13、14に示すものも含まれる。この場合は、下部軸受部50、上部軸受部60のいずれか一方のパラショックにおいて、受石座56が、内周側に雌ネジが切られている外側受石座72と、外周側に雄ネジが切られている内側受石座71から構成されている。内側受石座71内部は、図7に示すように、下部軸受部50、上部軸受部60と同じ構造になっている。すわわち、枠体55の内部底面には、図14に示す渦巻きばね54の外周側が、外側受石座72下面で挟むようにして保持されている。渦巻きばね54には穴石52が内周部に一体化して連結している。軸8のホゾ8’の端面は、内側受石座71内部に嵌めこまれた受石51で軸支されている。内側受石座71の外周側の雄ネジは、外側受石座72内周の雌ネジに、軸8の軸方向に微小位置調整可能に、ねじ込まれている。
【0042】
内側受石座71の鍔部71’には、本実施形態では12角形に形成されている。図13にみられるように、止めネジ73を鍔部71’の1辺に係合させて、内側受石座71の回り止めを施している。これにより、内側受石座71は衝撃、振動などによって緩んだりして、せっかく軸8にガタツキがないように調整した状態が変化しないようにしている。なお、下部軸受部50、上部軸受部60の枠体55は、それぞれ下部受け34、上部受け35に嵌め合いなどで固定されている。その他の軸受部以外の構成は、第1実施形態と同じである。これにより、軸8のガタツキを少なくし、姿勢の変化に影響を受けず安定した発電量を得ることが可能となる。
【0043】
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態を示す模式的断面図である。図16は、本発明の第3実施形態の調整機構を示す断面図である。
【0044】
図15に模式的に示すように、調整機構(受けネジ64など)によって下部軸受部50、上部軸受部60の両方を調整することができるようにした実施形態である。これにより、軸8のガタツキを少なくするとともに、上下に調整機構を設けることによって、静止している第1基板1に対して、回転する第2基板4の軸方向位置を変化させることができる。本実施形態は、帯電膜−対向電極間ギャップgを、正確な所定位置に確実にあわせることができるものである。本実施形態では、当初設計した帯電膜−対向電極間ギャップgを、上下に調整機構を設けたので、実際に組み立てられた発電器で実現することができるので、最大の発電力を得ることができる。
【0045】
下部軸受部50、上部軸受部60の調整機構は、第2実施形態で述べた各調整機構をすべて使用することができる。下部軸受部50、上部軸受部60の調整機構は、上下とも同じ機構でもよく、また異なっていても良い。図16を参照して、第3実施形態の一例を説明する。本実施形態は、下部軸受部50、上部軸受部60とも、ネジを使った調整機構であり、弛み止めにダブルナットを用いたものである。まず、下部軸受部50から説明する。
【0046】
この場合では、下部軸受部50のパラショックにおいて、枠体55の外周には、小径ネジ部74と大径ネジ部75が形成されている。小径ネジ部74は、下部受け34に設けられた雌ネジ部にねじ込まれており、所定の帯電膜−対向電極間ギャップgになるように、小径ネジ部74のねじ込み位置を設定する。調整終了後、ダブルナットとしての上ナット57(図16上では下のナット)を下部受け34に接触するまでネジ止めして、弛み止めを行う。受石座56とその内部の構造は、図7に示す下部軸受部50のパラショックと同じである。
【0047】
一方、上部軸受部60の調整機構は、図16に示すように、枠体55の上部に上部枠体76が一体で連結しており、上部枠体76の外周が、上部受け35に嵌め合いで固定されている。支持板63は、上部枠体76の内周に嵌め合いで挿入されており、受けネジ64が軸方向に調整可能にねじ込まれている。受けネジ64の下部端面は、受石と同じ機能を果たしている。枠体55の内部には、図8と同様に受石座56を収納しており、受石51はなくて、受けネジ64の下部端面に相当すること以外は、先に説明したパラショックの構造と同じである。
【0048】
図16の第3実施形態の一例では、第1基板1や第2基板4の構成、回転駆動の構成は、図16では一部省略しているが、第1実施形態と同じである。本実施形態では、第2基板4の軸8に、ヘアスプリング78(ヘアスプリング78の一端は軸8にヒゲ玉78’(hairspring collet)で固定、他端はハウジングに固定)が設けられており、特許文献3の従来技術の構成をもっている。皿ばね77で第2基板4が軸8に固定されている。
【0049】
第3実施形態では、第1、第2実施形態の効果に加えて、上下に調整機構を設けることによって、静止している第1基板1に対して、回転する第2基板4の軸方向位置を変化させて、帯電膜−対向電極間ギャップgを、正確な所定位置に確実にあわせることができる。
【0050】
(第4実施形態)
図17は、本発明の第4実施形態を示す模式的断面図である。図18は、本発明の第4実施形態を示す断面図である。
【0051】
図17に模式的に示すように、第1実施形態において、下部軸受部50を下部受け34に嵌め合いなどで固定するとともに、第1実施形態の上部軸受部60の代わりに、板バネ68で軸8のホゾ8’の先端を押圧するようにした軸受部で、軸8の上部を軸支した実施形態である。板バネ68によって軸受けの一方を一定の負荷で押さえつけることによって、軸8のカタツキをなくすことができる。これにより、軸8の軸方向の位置決め調整が簡単になり、かつ、帯電膜−対向電極間ギャップgを、下部軸受部50の位置設定に基づき、所定位置にあわせることができるものである。一般的な耐震装置は、強い衝撃を想定しており、通常の使用下では耐震装置は撓まない状態で使用するのが慣用である(耐震装置を撓ませて使用した場合にはばね力(バネ定数)が強すぎて軸8の回転への負荷がかかりすぎてしまう)。パラショックで例示すれば、バネ片53は、撓ませて使用するものではない。本実施形態の板ばね68は、無負荷状態から変位した状態、すなわち、撓んだ状態で軸8のホゾ端面に接触し、帯電膜−対向電極間ギャップgを詰めるべく使用されるものである。板ばね68のばね力(バネ定数)は、弱く軸8への回転への負荷がかからない大きさに適宜調整されており、耐震装置のばねとは、通常使用時の撓みの状態において異なるものである。なお、ここでは板ばね68を使用したが、板ばねに限定されるものではない。
【0052】
本実施形態の詳細は、図18に示されている。下部軸受部50は、第1実施形態で説明した通りである。上部軸受部60は、枠体55内部底面に渦巻きばね54の外周側が、押え座80下面で挟むようにして保持されている。渦巻きばね54には穴石52が内周部に一体化して連結している。軸8のホゾ8’の上部端面は、板バネ68によって軸受けの一方を一定の負荷で押さえつけている。板ばね68はネジ69で上部受35に固定されている。その他、第1基板1や第2基板4の構成、回転駆動の構成は、第1実施形態と同じである。第2基板4は、カナ(pinion)83に噛合う歯車(図示せず)によって回転伝動される。
【0053】
(第5実施形態)
図19は、本発明の第5実施形態を示す模式的断面図である。
【0054】
図19に模式的に示すように、第4実施形態において、下部軸受部50を、調整機構(受けネジ64など)によって軸受けの位置を調整できるようにしたものである。この調整機構としては、第2実施形態のネジを使った調整機構は全て適用することができる。第1実施形態で述べた効果に加えて、第2基板4の位置決めも比較的容易にして、簡潔かつ正確に調整することができる。これにより、軸8のガタツキを少なくし、姿勢の変化に影響を受けず、さらに、安定した発電量を得ることが可能となる。
【0055】
(第6実施形態)
図20は、本発明の第6実施形態を示す模式的断面図である。
【0056】
図20に模式的に示すように、第1実施形態において、軸8をJIS−SK材(炭素工具鋼材、ISO−C70〜120U)などの磁性体にして、さらに、下部軸受部50の下側に、フェライトやネオジウム磁石82を設置した実施形態である。軸8の磁性体や磁石82は適宜周知の材料を採用すればよい。このように磁石82を付加することによって、磁性体である軸8を下部軸受部に押し当てることができるので、軸8のガタツキを抑制して、第1実施形態で述べた効果に加えて、第2基板4の位置を安定化させるので、安定した発電量を得ることが可能となる。
【0057】
(第7実施形態)
第7実施形態は、第2基板4を並進運動(translational motion)させた実施形態である。第1実施形態の図4と同様に、地板33の内周側には、第1基板1をボルト36などで固定するために設けられた取付部37が、設けられている。第1基板1の対向電極2が設置された第1対向面41と面接触する取付基準面Sが、取付部37の下面に形成されている。この取付基準面Sは位置決め設定の基準として機能する。第1基板1の上面が第1対向面41であり、対向電極2が設けられている。第2基板4はスライダクランク機構などでハウジングに対して並進運動するように構成されている。これにより、第1実施形態と同様に、基板自体の厚み公差の影響を完全に排除することができるので、帯電膜−対向電極間ギャップgを100μ以下に制御することが十分可能となる。帯電膜、対向電極の各基板への設置はこれと逆であっても良い。
【0058】
以上の第2〜6実施形態においては、第1実施形態の第1基板1の第1対向面側を、ハウジングに設けられた取付基準面Sに固定したものとして、説明したが、必ずしもこの限定は有していなくても、第2〜6実施形態は実施可能である。すなわち、ハウジングと、ハウジングに固定された第1基板1と、第1基板1に対して相対移動可能に平行に配置された第2基板4と、帯電膜3と、対向電極2と、帯電膜及び対抗電極間で発生した電力を出力する出力部とを有し、帯電膜3と対向電極2のいずれか一方を、第1基板1の第1対向面41に設置し、他方を第1対向面41に対向する第2基板4の第2対向面42に設置し、第2基板4に軸8を設けて、軸8をハウジングに設けた上部軸受部60と下部軸受部50で、回転自在に軸支した基板配置構造(これを構成Aという)において、上部軸受部60と下部軸受部50のいずれか一方又は両方が、軸8の軸方向位置を調整する調整機構を有することを特徴とする基板配置構造であっても良い。あるいは、構成Aにおいて、上部軸受部60と下部軸受部50のいずれか一方の軸受部へ、軸8を付勢する付勢機構(バネや磁石)を有することを特徴とする基板配置構造であっても良い。これにより、第2〜6実施形態で述べたことと同様な調整機構の効果が得られる。
【0059】
(第8実施形態)
図21は、本発明の第8実施形態を示す模式的断面図であり、図面左下には、位置調整ネジ86と押えボルト85の螺合状態を示す、B−B線に関する断面図が示されている。
【0060】
第8実施形態は、図19の第5実施形態の下部軸受部50の調整機構(受けネジ64)の代わりに、下部受け134自体を、軸8の軸方向に位置調整可能にしたものである。
ハウジングは、本実施形態では、地板33、下部・上部受け134、35で構成されている。このうち、下部受け134は、第1ハウジング部分に相当し、地板33、上部受け35は、第2ハウジング部分に相当する。図21の地板33は、少なくとも1箇所以上の支柱に置き換えることも可能である。この場合、好ましくは、支柱は2箇所以上あった方が、回転する第2基板4(回転部材)の回転軸が安定し、帯電膜3と対向電極2との間のギャップ設定を安定して行うことができる。このギャップ設定のためには、下部受け134の適宜箇所に窓部(透視穴、透明材)を設けて、視認することができるようにしても良い。
【0061】
第1基板1の上面が第1対向面41であり、対向電極2が設けられている。帯電膜3が回転する第2基板4の第2対向面42に配置されている。他の実施形態と同様に、帯電膜と対向電極を、逆にしてそれぞれ基板に取り付けても良い。図19の第5実施形態と同様に、地板33の取付部37の下面(取付基準面S)に、第1基板1の対向電極2が設置された第1対向面41を取り付けるので、基板自体の厚み公差の影響は排除される。
上部受け35において、上部軸受部60の代わりに、板バネ68が軸8のホゾ8’の先端を押圧するようにした軸受部で、軸8の上部を軸支する。したがって、軸8は、下部受け134の下部軸受部50に向かって、常に押圧されているので、軸方向における帯電膜3と対向電極2との間の遊びがなくなっている。
【0062】
本実施形態における、帯電膜3と対向電極2との間のギャップ調整を行う位置調整部について説明する。
地板33に螺合した位置調整ネジ86と、位置調整ネジ86の内部に設けられたネジ穴に螺合する押えボルト85は、位置調整部を構成する。位置調整ネジ86が螺合する地板33のネジ穴の底には、バネ87が挿入されている。バネ87は、位置調整ネジ86の端部を押圧し、位置調整ネジ86のバックラッシュを除去する。下部受け134の外周端は、その外周側に設けられた複数個の穴89に、押えボルト85を通して、位置調整ネジ86に対して固定される。位置調整ネジ86と押えボルト85は相互に逆方向のネジ山(逆ネジ)であっても順方向のネジ山であっての良いが、逆ネジの方が押えボルト85の締め付け時に位置調整ネジ86が微動しにくいので好ましい。
【0063】
帯電膜3と対向電極2との間のギャップ調整を行う場合には、まず、ドライバー工具を溝88に差し込んで地板33に位置調整ネジ86をねじ込む。帯電膜3と対向電極2との間のギャップ、すなわち、回転する第2基板4の軸方向位置が適切になるように、位置調整ネジ86のねじ込み位置を調整し設定する。設定後に、押えボルト85を位置調整ネジ86のネジ穴にねじ込み、両者で下部受け134の外周端を挟み込んで固定する。
【0064】
このように、本実施形態においても、第1実施形態で述べた効果に加えて、第2基板4の位置決めも比較的容易にして、簡潔かつ正確に調整することができる。これにより、軸8のガタツキを少なくし、姿勢の変化に影響を受けず、さらに、安定した発電量を得ることが可能となる。
【0065】
(第9実施形態)
図22は、本発明の第9実施形態を示す模式的断面図である。図面左下のB−B線に関する断面図は第8実施形態と同じである。
【0066】
第9実施形態は、これまで述べた第8実施形態において、取付基準面Sが取付部37の上面に設定された場合の実施形態である。第1基板1の下面が第1対向面41であり、対向電極2が設けられている。一方、帯電膜3は、回転する第2基板4の上面の第2対向面42に配置されている。第8実施形態においては、下部受け134を図面上で上方に持ち上げると、帯電膜3と対向電極2との間のギャップが拡がる方向であってが、第9実施形態では、この逆であり、帯電膜3と対向電極2との間のギャップが狭まる方向となる。その他の構成、効果は第8実施形態と同じである。なお、第9実施形態と同様に、第1〜6実施形態においても、取付基準面Sを取付部37の上面に設定する構成を、適用することができる。この場合、第9実施形態と同様に、第1基板1の下面を第1対向面41とし、回転する第2基板4の上面を第2対向面42として配置すればよい。
【0067】
本発明において、相対移動として、並進運動、回転運動、往復並進振動、回転振動などが含まれる。ここでいう振動とは、規則的な振動のみならず、環境に広く存在するエネルギー源から電力を取り出す場合の不規則的な振動を含むものとして定義される。また、回転運動とは、一方向回転のみならず、回転振動、揺動運動を含めて使用される。
【0068】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的構成はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 第1基板
2 対向電極
3 帯電膜
4 第2基板
8 軸
41 第1対向面
42 第2対向面
S 取付基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22