(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494614
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】分離のための架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜
(51)【国際特許分類】
B01D 71/54 20060101AFI20190325BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20190325BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20190325BHJP
B01D 69/04 20060101ALI20190325BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20190325BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20190325BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20190325BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20190325BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20190325BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20190325BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20190325BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20190325BHJP
B01D 71/76 20060101ALI20190325BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20190325BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
B01D71/54
B01D71/52
B01D69/06
B01D69/04
B01D69/08
B01D69/12
B01D53/22
B01D71/42
B01D71/68
B01D71/16
B01D71/56
B01D71/64
B01D71/76
C08G18/10
C08G18/32 015
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-525009(P2016-525009)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公表番号】特表2016-536119(P2016-536119A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】US2014056714
(87)【国際公開番号】WO2015065617
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】14/066,248
(32)【優先日】2013年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チュンチーン
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ホーウィー・キュー
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0226446(US,A1)
【文献】
特開平03−077633(JP,A)
【文献】
特開昭64−034402(JP,A)
【文献】
特表2011−526828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 71/54
B01D 53/22
B01D 69/04
B01D 69/06
B01D 69/08
B01D 69/12
B01D 71/16
B01D 71/42
B01D 71/52
B01D 71/56
B01D 71/64
B01D 71/68
B01D 71/76
C08G 18/10
C08G 18/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の式(I)の繰り返し単位を有する架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーを含み、ここで、前記式(I)は:
【化1】
を含む構造によって表され、ここで、X
1、X
2、X
3、およびX
4は、それぞれ、
【化2】
およびこれらの混合から成る群より選択され;X
1、X
2、X
3、およびX
4は、互いに同一または異なっており;ここで、Yは、
【化3】
およびこれらの混合から成る群より選択され;ここで、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、それぞれ、
【化4】
およびこれらの混合から成る群より選択され;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、互いに同一または異なっており、ならびにtは0から4であり;ならびに、ここで、n、m、p、q、r、およびsは、独立して、2から500の整数である、
C3からC35炭化水素および二酸化炭素を天然ガス流から除去するための、架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜。
【請求項2】
式(I)のX
1、X
2、X
3、およびX
4が、同一であり、
【化5】
を含む化学構造を有し、ここで、式(I)のX
1、X
2、X
3、およびX
4のZ
1は:
【化6】
であり、ここで、式(I)のYは:
【化7】
である、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
ジイソシアネート末端ポリエーテルおよび4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤を溶媒に溶解して、均質な溶液を形成すること;2)次に、前記均質溶液を、30°から100℃の温度で0.5から12時間加熱して、ポリウレタン‐エーテルプレポリマー溶液を形成すること;3)多孔性膜支持体上に、前記ポリウレタン‐エーテルプレポリマー溶液の層をコーティングすること;および4)前記コーティングした膜を、30°から100℃の温度で0.5から12時間加熱して、前記多孔性膜支持体上に架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル材料を含む薄い選択性層を得ることを含む、請求項1に記載の架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜を作製する方法。
【請求項4】
前記架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜を、シート、ディスク、チューブ、または中空繊維に製造することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜を、選択性架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル薄層およびポリマー材料または無機材料を含む多孔性支持層が組み込まれた薄フィルムコンポジット膜に製造することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
C3からC35炭化水素および二酸化炭素を除去するために天然ガス流を処理するための方法であって、前記
天然ガス流を、複数の式(I)の繰り返し単位を有する架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜と接触させて、透過流および濃縮流を生成させることを含み、ここで、前記式(I)は、
【化8】
を含む構造によって表され、ここで、X
1、X
2、X
3、およびX
4は、それぞれ、
【化9】
およびこれらの混合から成る群より選択され;X
1、X
2、X
3、およびX
4は、互いに同一または異なっており;ここで、Yは、
【化10】
およびこれらの混合から成る群より選択され;ここで、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、それぞれ、
【化11】
およびこれらの混合から成る群より選択され;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、互いに同一または異なっており、ならびにtは0から4であり;ならびに、ここで、n、m、p、q、r、およびsは、独立して、2から500の整数である、方法。
【請求項7】
前記透過流が、プロパン、n‐ブタン、およびその他の重質炭化水素を含み、前記濃縮流が、メタンおよびエタンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記天然ガス流が、まず、前記架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜を通して送られ、次に、第二の膜を通して送られ、ここで、前記第二の膜は、ポリスルホン、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアミド、ポリイミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、およびポリアクリロニトリルから成る群より選択されるポリマーを含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
国内先願の優先権の主張
本出願は、2013年10月29日に出願された米国特許出願第14/066,248号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
過去30〜35年の間、ポリマー膜に基づくガス分離プロセスの最先端技術は、急速に発展してきた。膜に基づく技術は、従来の分離方法と比較して、低い設備コストおよび高いエネルギー効率の両方の利点を有する。膜ガス分離は、石油生産業者および精製業者、化学企業、ならびに工業用ガス供給業者の関心を特に集めている。天然ガスおよびバイオガスおよび石油増進回収からの二酸化炭素除去、さらにはアンモニアパージガス流における窒素、メタン、およびアルゴンからの水素除去を含むいくつかの適用が、商業的な成功を収めている。
【0003】
しかし、実際には、膜の性能は、前処理システムを用いない場合、非常に急速に劣化し得ることが示された。この膜性能喪失の主たる理由は、膜表面における重質炭化水素液体の凝縮である。凝縮は、膜生成ガスの算出された露点に基づいて、運転における充分な露点マージンを与えることによって防止することができる。天然ガス流から、水、さらにはC
6からC
35の範囲の重質炭化水素を除去し、それによってその天然ガス流の露点を低下させるために、モレキュラーシーブを用いる前処理再生可能吸着システムであるUOPのMemGuard(商標)システムが開発された。前処理システムによって重質炭化水素を選択的に除去することにより、膜の性能を大きく向上させることができる。
【0004】
このような前処理システムは、天然ガス流から重質炭化水素を効果的に除去して、天然ガスの露点を制御することができるが、コストが非常に高い。いくつかの商業的膜プロジェクトでは、フィード組成に応じて、前処理システムのコストが総コスト(前処理システムおよび膜システム)の10から40%という高さであることが示された。前処理システムコストの削減、または前処理システムの完全な除去が成されると、天然ガスアップグレードにおける膜システムのコストが大きく削減されることになる。他方、近年では、大型の海洋天然ガスアップグレードプロジェクトに、膜システムがますます適用されてきている。海洋プロジェクトの場合、占有面積が大きな制約となる。従って、占有面積を低減することは、海洋プロジェクトにおいて非常に重要である。前処理システムの占有面積も非常に大きく、膜システム全体の占有面積の10〜50%を超える。従って、前処理システムを膜システムから取り除くことは、特に、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(floating production storage and offloading vessel)(FPSO)用途などの海洋天然ガス用途において、膜システムのコストおよび占有面積を大きく低減するものである。
【0005】
調整天然ガス(conditioned natural gas)は、炭化水素処理産業において、特に、海洋プラットフォームおよび遠隔地におけるガスエンジンおよびタービンの燃料ガスとして用いられており、将来的には、浮体式液化天然ガス(FLNG)およびFPSO用途に用いられることになる。燃料ガス調整に用いられる設備の信頼性を向上させ、予定外のダウンタイムを低減するためには、単純な燃料ガス調整技術が必要とされる。重質炭化水素、ならびにCO
2、H
2S、および水蒸気などのその他の不純物を選択的に、および効率的に透過させることのできるゴム状ポリマー膜は、燃料ガスの調整を可能とするものである。
【0006】
C3+炭化水素などの凝縮性重質炭化水素蒸気を選択的に透過することができ、メタンなどの非凝縮性ガスは遮断することができるゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜はまた、天然ガス液(NGL)回収にも用いることができる。
【0007】
従来からのグレース(Grace)社製ゴム状ポリウレア/ウレタン膜(S‐Brane)が、芳香族/非芳香族分離に用いられてきた。しかし、処理能力(フラックス)は、ほとんどの芳香族分離用途にとって、充分に高いものではない。
【発明の概要】
【0008】
本発明では、新規な架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜、その膜を作製する方法、およびそのような新規な膜の使用について述べる。
本発明は、架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜、その膜を作製する方法、ならびにNGL回収、燃料ガス調整、天然ガス前処理、流動接触分解(FCC)およびその他のナフサ流からの脱硫、さらには芳香族/n‐パラフィン分離およびキシレン分離などの芳香族分離におけるそのような新規な膜システムの使用を含む。
【0009】
本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、ジイソシアネート末端ポリエーテルおよび4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤から合成される架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーを含む。4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤を本発明の架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーの合成に用いる結果として、架橋ポリマー構造が形成される。剛性架橋剤上のヒドロキシル基は、ジイソシアネート末端ポリエーテル上のイソシアネート基と反応して、ウレタン結合を形成する。
【0010】
本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、C
3からC
35炭化水素、芳香族化合物、水蒸気、二酸化炭素、および硫化水素などの凝縮性蒸気を選択的に透過し、メタンおよびエタンは遮断する。気体および液体を含む流体流を、天然ガスからの高級炭化水素の分離のために処理することができる。このような膜はまた、芳香族炭化水素流の分離のために用いることもできる。本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、凝縮性蒸気に対する高い透過度、メタンおよびエタンと比較した凝縮性蒸気に対する高い選択性、ならびに液体化学物質に対する高い耐性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、新規な架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜、その膜を作製する方法、ならびにNGL回収、燃料ガス調整、天然ガス前処理、流動接触分解(FCC)流およびその他のナフサ流からの脱硫、さらには芳香族/n‐パラフィン分離およびキシレン分離などの芳香族分離におけるそのような新規な膜システムの使用を含む。
【0012】
本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、ジイソシアネート末端ポリエーテルおよび4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤から合成される架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーを含む。4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤を本発明の架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーの合成に用いる結果として、架橋ポリマー構造が形成される。剛性架橋剤上のヒドロキシル基は、ジイソシアネート末端ポリエーテル上のイソシアネート基と反応して、ウレタン結合を形成する。
【0013】
本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、C
3からC
35炭化水素、芳香族化合物、水蒸気、二酸化炭素、および硫化水素などの凝縮性蒸気を選択的に透過し、メタンおよびエタンは遮断する。本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、凝縮性蒸気に対する高い透過度、メタンおよびエタンと比較した凝縮性蒸気に対する高い選択性、ならびに液体化学物質に対する高い耐性を有する。
【0014】
本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、複数の式(I)の繰り返し単位を有する架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーを含み、ここで、前記式(I)は:
【0016】
であり、ここで、X
1、X
2、X
3、およびX
4は、それぞれ、
【0018】
およびこれらの混合から成る群より選択され;X
1、X
2、X
3、およびX
4は、互いに同一または異なっており;ここで、Yは、
【0020】
およびこれらの混合から成る群より選択され;ここで、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、それぞれ、
【0022】
およびこれらの混合から成る群より選択され;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、互いに同一または異なっており、ならびにtは0から4であり;ここで、n、m、p、q、r、およびsは、独立して、2から500の整数である。
【0023】
好ましくは、式(I)のX
1、X
2、X
3、およびX
4は、同一であり、以下の化学構造:
【0025】
を有する。
式(I)のX
1、X
2、X
3、およびX
4のZ
1は:
【0027】
であることが好ましい。
式(I)のYは:
【0029】
であることが好ましい。
本発明の架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜は:1)ジイソシアネート末端ポリエーテルおよび4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤を溶媒に溶解して、均質な溶液を形成すること;2)この溶液を、30°から100℃の温度で0.5から12時間加熱して、ポリウレタン‐エーテルプレポリマーを形成すること;3)比較的多孔性である膜支持体(例:無機セラミック材料から作られた支持体またはポリマーから作られた支持体)上に、このポリウレタン‐エーテルプレポリマー溶液の層をコーティングすること;4)コーティングした膜を、30°から100℃の温度で0.5から12時間加熱して、膜支持体上に架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル材料を含む薄い選択性層を得ることによって作製される。場合によっては、工程4)の後に、工程3)および4)を繰り返すことによって、架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルの第二の層が追加される。
【0030】
本発明の架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーの合成に用いられるジイソシアネート末端ポリエーテルは、
【0032】
およびこれらの混合から成る群より選択され;ここで、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、それぞれ、
【0034】
およびこれらの混合から成る群より選択され;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、互いに同一または異なっており、ならびにtは0から4であり;ここで、m、p、q、r、およびsは、独立して、2から500の整数である。
【0035】
本発明の架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーの合成に用いられる4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤は、
【0037】
およびこれらの混合から成る群より選択される。
ジイソシアネート末端ポリエーテルおよび4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤を溶解するために用いられる溶媒は、主として、ジイソシアネート末端ポリエーテルおよび4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤を完全に溶解するその能力、ならびに膜形成工程での溶媒除去の容易性について選択される。溶媒選択の際のその他の考慮事項としては、低い毒性、低い腐食活性、低い環境危険性の可能性、入手し易さ、およびコストが挙げられる。本発明で用いられる代表的な溶媒としては、これらに限定されないが、N‐メチルピロリドン(NMP)、N,N‐ジメチルアセタミド(DMAC)、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、ジオキサン、1,3‐ジオキソラン、これらの混合物、およびこれらの混合物が挙げられる。当業者に公知のその他の溶媒も、用いられてよい。
【0038】
本発明の架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜は、シート、ディスク、チューブ、または中空繊維などの都合の良いいかなる形状に製造されてもよい。これらの架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜はまた、選択性架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル薄層およびポリマー材料または無機材料を含む多孔性支持層が組み込まれた薄フィルムコンポジットに製造されてもよい。
【0039】
本発明は、天然ガスアップグレードのための新規な膜システムの使用を含む。この膜システムは、C
3からC
35の炭化水素を選択的に除去して天然ガスの露点を制御するための本発明で述べる第一ステージ架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜、および天然ガスから選択的にCO
2を除去するための第二ステージ膜を含む。本発明で述べる新規な膜システムは、高コストおよび高占有面積の膜前処理システムの使用を排除するものである。本発明で述べる膜システムは、ステージ間コンプレッサーを必要としない。これは、露点が制御された天然ガスが、第一の架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜の濃縮流側(retentate side)から高圧力で排出され、第二の膜へ高圧力フィードとして直接導入されるからである。従って、この膜システムは、非膜関連前処理システムを含む現在市販されている膜システムと比較して、天然ガスアップグレードのための膜システムの占有面積およびコストを大きく低減する。酢酸セルロースおよびポリイミドなどの商業的天然ガスアップグレード用途に最も一般的に用いられる膜は、ガラス状ポリマーである。しかし、このような膜は、C
3からC
35の炭化水素に対するよりも、CH
4に対して選択的に透過性であることから、天然ガスの露点制御には用いることができない。このような市販のガラス状ポリマー膜を天然ガスアップグレードに用いる場合は、前処理システムが必要である。本発明で述べる新規な膜システムの第二ステージ膜として用いられる膜は、天然ガスアップグレードにおいて、本発明で述べる第一ステージ架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜よりも高いCO
2/CH
4選択性を有する。好ましくは、本発明で述べる新規な膜システムの第二ステージ膜のための膜材料は、50℃で6.89MPa(1000psig)フィード圧下、ならびに10%のCO
2および90%のCH
4のフィードガスの場合、10以上のCO
2/CH
4選択性を有する。本発明で述べる新規な膜システムの第二ステージ膜のための膜材料は、これらに限定されないが、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン;スルホン化ポリスルホン;Ultemなどのポリエーテルイミド;酢酸セルロースおよび三酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー;ポリアミド;MatrimidおよびP84またはP84HTなどのポリイミド;ポリアミド/イミド;ポリケトン、ポリエーテルケトン;ポリ(フェニレンオキシド)およびポリ(キシレンオキシド)などのポリ(アリーレンオキシド);ポリ(エステルアミド‐ジイソシアネート);ポリウレタン;ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アクリレート)、およびポリ(フェニレンテレフタレート)などのポリエステル(ポリアリレートを含む);ポリスルフィド;これまでに列挙したポリマーに加えて、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(ブテン‐1)、ポリ(4‐メチルペンテン‐1)、ポリビニル、例えば、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)およびポリ(プロピオン酸ビニル)などのポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール)などのポリ(ビニルアルデヒド)、ポリ(ビニルアミド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルウレタン)、ポリ(ビニルウレア)、ポリ(ビニルホスフェート)、ならびにポリ(ビニルサルフェート)を含むアルファ‐オレフィン性不飽和結合を持つモノマーからのポリマー;ポリアリル;ポリ(ベンゾベンズイミダゾール);ポリヒドラジド;ポリオキサジアゾール;ポリトリアゾール;ポリ(ベンズイミダゾール);ポリカルボジイミド;ポリホスファジンから選択されてよい。
【0040】
本発明で述べる新規な膜システムの第二ステージ膜の作製に用いられるいくつかの好ましいポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリスルホン;スルホン化ポリスルホン、Ultemなどのポリエーテルイミド;酢酸セルロースおよび三酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー;ポリアミド;P84およびポリ(3,3’,4,4’‐ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物‐ピロメリット酸二無水物‐3,3’,5,5’‐テトラメチル‐4,4’‐メチレンジアニリン)(ポリ(BTDA‐PMDA‐TMMDA))などのポリイミド;ポリアミド/イミド;ポリケトン;ポリエーテルケトン;ならびにポリアクリロニトリルが挙げられる。
【0041】
本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜はまた、天然ガスからのNGL回収に用いることもできる。本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、C
3からC
35炭化水素および芳香族化合物などの凝縮性蒸気を選択的に透過させるため、メタンおよびエタンからC3+炭化水素を分離して、NGLを回収することができる。
【0042】
本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜はまた、燃料ガスの調整にも用いることができる。調整天然ガス(conditioning natural gas)は、炭化水素処理産業において、特に海洋プラットフォームおよび遠隔地におけるガスエンジンおよびタービンの燃料ガスとして、ならびにFLNGおよびFPSO用途で用いられている。本発明で述べる架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、メタンと比較してC3+炭化水素に対する高い透過度および高い選択性を示しており、それによって燃料ガスの調整が可能となる。
【0043】
実施例
以下の実施例は、本発明の1つ以上の好ましい実施形態を説明するために提供されるものであるが、その実施形態に限定されない。以下の実施例に、本発明の範囲内に含まれる数多くの変更が行われてよい。
【0044】
実施例1
架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール膜の作製
15.0gのトルエン2,4‐ジイソシアネート末端ポリ(プロピレングリコール)を、30gの無水DMF溶媒中に撹拌しながら溶解して、均質な溶液を形成した。1.1gの3,3,3’,3’‐テトラメチル‐1,1’’‐スピロビスインダン‐5,5’,6,6’‐テトロールを、撹拌しながらこの溶液に添加した。この溶液を、60℃で1時間混合して、均質な溶液を形成した。この溶液を1時間脱気し、次に清浄なガラスプレートの表面上にキャストした。DMF溶媒を、50℃で12時間蒸発させた。得られた膜を、ガラスプレートから外し、さらに120℃で24時間真空乾燥して、架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール緻密フィルム膜を形成した。
【0045】
実施例2
架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール膜の分離性能評価
以下の表は、架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール膜の純粋ガス透過率および選択性を示す。架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール膜のCH
4、CO
2、プロパン(C
3H
8)、およびn‐ブタン(n‐C
4H
10)に対する透過率(P
A)および選択性(α
A/B)は、50℃での純粋ガス測定によって測定した。表から、架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール膜は、>200バーラー(Barrers)のCO
2透過率を有することが分かり、これは、CA、Matrimidポリイミド、およびUltemポリエーテルイミド膜などの従来のポリマー膜よりも非常に高い。C
3H
8およびn‐C
4H
10などの大分子凝縮性有機蒸気よりも、CH
4などの小分子ガスに対してより透過性である従来のポリマー膜とは異なり、表中の結果は、架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール膜が、CH
4などの小分子永久ガスよりも、C
3H
8およびn‐C
4H
10などの大分子凝縮性有機蒸気に対して非常により透過性であることを示している。従って、架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール膜は、天然ガス処理において、水およびC
3からC
35炭化水素を選択的に除去して天然ガスの露点を制御するために用いることができる。架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール膜からの高圧力濃縮流は、主として、CH
4、CO
2、ならびに微量のエタンおよびプロパン、ならびにいくつかのその他の成分を含む。
【0047】
実施例3
架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール薄フィルムコンポジット膜の作製
6.0gのトルエン2,4‐ジイソシアネート末端ポリ(プロピレングリコール)を、155gの1,3‐ジオキソラン溶媒中に撹拌しながら溶解して、均質な溶液を形成した。0.44gの3,3,3’,3’‐テトラメチル‐1,1’’‐スピロビスインダン‐5,5’,6,6’‐テトロールを、撹拌しながらこの溶液に添加した。この溶液を、60℃で1時間混合して、均質な溶液を形成した。この溶液を1時間脱気した。得られた溶液を、多孔性ポリアクリロニトリル(PAN)限外ろ過膜基材の表面上に、浸漬コーティングまたはナイフキャスト法によってコーティングした。溶媒を蒸発させて、連続フィルムを形成した。次に、このポリウレタン‐プロピレングリセロール薄フィルムコンポジット膜を、オーブン中、100℃で1時間加熱して、架橋ポリウレタン‐プロピレングリセロール/PAN薄フィルムコンポジット膜を形成した。
【0048】
具体的実施形態
以下は、具体的実施形態と関連して記載されるが、この記述が、説明することを意図するものであり、先の記述および添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことは理解される。
【0049】
第一の実施形態では、本発明は、複数の式(I)の繰り返し単位を有する架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーを含む架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜を含み、ここで、式(I)は:
【0051】
を含む構造によって表され、ここで、X
1、X
2、X
3、およびX
4は、それぞれ、
【0053】
およびこれらの混合から成る群より選択され;X
1、X
2、X
3、およびX
4は、互いに同一または異なっており;ここで、Yは、
【0055】
およびこれらの混合から成る群より選択され;ここで、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、それぞれ、
【0057】
およびこれらの混合から成る群より選択され;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、互いに同一または異なっており、ならびにtは0から4であり;ここで、n、m、p、q、r、およびsは、独立して、2から500の整数である。
【0058】
式(I)のX
1、X
2、X
3、およびX
4は、同一であってよく、
【0060】
を含む化学構造を有してよく、式(I)のX
1、X
2、X
3、およびX
4のZ
1は
【0062】
によって表されてよく、式(I)のYは
【0064】
であってよい。
第二の実施形態では、本発明は、ジイソシアネート末端ポリエーテルおよび4つ以上のヒドロキシル官能基を含む剛性架橋剤を溶媒に溶解して、均質な溶液を形成すること;2)次に、この均質溶液を、30°から100℃の温度で0.5から12時間加熱して、ポリウレタン‐エーテルプレポリマー溶液を形成すること;3)多孔性膜支持体上に、このポリウレタン‐エーテルプレポリマー溶液の層をコーティングすること;および4)コーティングした膜を、30°から100℃の温度で0.5から12時間加熱して、多孔性膜支持体上に架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル材料を含む薄い選択性層を得ることを含む、架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜を作製するプロセスを含む。このプロセスで作製される多孔性膜支持体は、無機セラミック材料またはポリマーを含んでよい。多孔性膜支持体に、架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル材料の少なくとも1つの追加層が追加されて存在してよい。架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜は、シート、ディスク、チューブ、または中空繊維などの適切な形状に製造されてよい。架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル膜はまた、選択性架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテル薄層およびポリマー材料または無機材料を含む多孔性支持層が組み込まれた薄フィルムコンポジット膜に製造されてもよい。このプロセスにおいて、架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜は、複数の式(I)の繰り返し単位を有する架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマーを含み、ここで、前記式(I)は:
【0066】
を含む構造によって表され、ここで、X
1、X
2、X
3、およびX
4は、それぞれ、
【0068】
およびこれらの混合から成る群より選択され;X
1、X
2、X
3、およびX
4は、互いに同一または異なっており;ここで、Yは、
【0070】
およびこれらの混合から成る群より選択され;ここで、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、それぞれ、
【0072】
およびこれらの混合から成る群より選択され;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、互いに同一または異なっており、ならびにtは0から4であり;ならびに、ここで、n、m、p、q、r、およびsは、独立して、2から500の整数である。
【0073】
このプロセスの実施形態では、ジイソシアネート末端ポリエーテルは、
【0075】
およびこれらの混合から成る群より選択され;ここで、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、それぞれ、
【0077】
およびこれらの混合から成る群より選択され;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、互いに同一または異なっており、ならびにtは0から4であり;ここで、m、p、q、r、およびsは、独立して、2から500の整数である。本発明のプロセスの実施形態では、剛性架橋剤は、4つ以上のヒドロキシル官能基を含み、
【0079】
およびこれらの混合から成る群より選択される。
第三の実施形態では、本発明は、流体流を複数の式(I)の繰り返し単位を有する架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜と接触させて、透過流および濃縮流を生成させることを含む、流体流を処理するためのプロセスを含み、ここで、前記式(I)は、
【0081】
を含む構造によって表され、ここで、X
1、X
2、X
3、およびX
4は、それぞれ、
【0083】
およびこれらの混合から成る群より選択され;X
1、X
2、X
3、およびX
4は、互いに同一または異なっており;ここで、Yは、
【0086】
およびこれらの混合から成る群より選択され;ここで、Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、それぞれ、
【0088】
およびこれらの混合から成る群より選択され;Z
1、Z
2、Z
3、およびZ
4は、互いに同一または異なっており、ならびにtは0から4であり;ならびに、ここで、n、m、p、q、r、およびsは、独立して、2から500の整数である。流体を処理するためのプロセスは、C
3からC
35炭化水素を天然ガスから除去するためのプロセスを含む。本発明の実施形態では、天然ガス流の露点が、指定の限度内に制御される。本発明の実施形態では、二酸化炭素が、天然ガス流から除去される。本発明の実施形態では、透過流は、プロパン、n‐ブタン、およびその他の重質炭化水素を含み、前記濃縮流は、メタンおよびエタンを含む。本発明の実施形態では、流体流は、芳香族化合物の混合物を含む。本発明の実施形態では、流体流は、まず、架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜を通して送られ、次に、第二の膜を通して送られる。第二の膜は、ポリスルホン、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアミド、ポリイミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、およびポリアクリロニトリルから成る群より選択されるポリマーを含んでよい。本発明のいくつかの実施形態では、第二の膜は、架橋ゴム状ポリウレタン‐エーテルポリマー膜よりも高いCO
2/CH
4選択性を有する。