特許第6494616号(P6494616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494616
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】バイオフィルムの予防及び分散
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20190325BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 31/429 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20190325BHJP
   C07K 7/04 20060101ALN20190325BHJP
【FI】
   A61K38/12
   A61P31/04
   A61K31/429
   A61K31/496
   A61K31/407
   A61K31/4196
   A61K31/165
   A61K31/7036
   !C07K7/04ZNA
【請求項の数】18
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-526353(P2016-526353)
(86)(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公表番号】特表2016-536310(P2016-536310A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】IB2014002989
(87)【国際公開番号】WO2015063608
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年10月12日
(31)【優先権主張番号】61/898,183
(32)【優先日】2013年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/905,440
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513301920
【氏名又は名称】ハチソン バイオフィルム メディカル ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】ズロトキン,アミル
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/164380(WO,A1)
【文献】 特表2012−513979(JP,A)
【文献】 特表2012−503597(JP,A)
【文献】 特表2002−544759(JP,A)
【文献】 Peptides, 2013 Aug, Vol.49, p.53-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/12
A61K 31/165
A61K 31/407
A61K 31/4196
A61K 31/429
A61K 31/496
A61K 31/7036
A61P 31/00
C07K 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗生物質と環化ペプチドを抗生物質耐性種である細菌に接触させることを含み、前記抗生物質耐性種の前記細菌によって生じた細菌感染症に対する抗生物質の有効性を増大させる方法に使用される組成物であって、
前記環化ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記抗生物質耐性種の前記細菌に、再度、前記抗生物質に対する感受性を持たせることを特徴とする、抗生物質及び環化ペプチドを含む組成物
【請求項2】
前記環化ペプチドは配列SVHSFDYDWYNV含み、前記細菌に対する前記抗生物質の最小殺菌濃度を少なくとも10%低下させる、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記環化ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記環化ペプチドが最大50個のアミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物
【請求項4】
前記環化ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記抗生物質が細胞外皮の抗生物質、核酸阻害剤、及びタンパク質合成阻害剤からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物
【請求項5】
前記環化ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記抗生物質がペニシリン類、セファロスポリン類、グリコペプチド類、及びカルバペネム類からなる群から選択される細胞外皮の抗生物質である、請求項4に記載の組成物
【請求項6】
前記環化ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、
前記抗生物質がオキサシリン、メチシリン、アモキシシリン、アンピシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、カルベニシリン、チカルシリン、及びピペラシリンからなる群から選択されるペニシリンであるか、又は、
前記抗生物質がセファセトリル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セファトリジン、セファザフル、セファゼドン、セファゾリン、セフラジン、セフロキサジン、セフテゾール、セファクロル、セフォニシド、セフプロジル、セフロキシム、セフゾナム、セフメタゾール、セフォテタン、カルバセフェム類:ロラカルベフ、セフブペラゾン、セフメタゾール、セフミノックス、セフォテタン、セホキシチン、セフォチアム、セフクリジン、セフェピム、セフルプレナム、セフォセリス、セフォゾプラン、セフピロム、セフキノム、フロモキセフ、セフトビプロール、及びセフタロリンからなる群から選択されるセファロスポリンであるか、又は、
前記抗生物質がバンコマイシン及びテイコプラニンからなる群から選択されるグリコペプチドであるか、又は、
前記抗生物質がイミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム、及びビアペネムからなる群から選択されるカルバペネムである、請求項に記載の組成物
【請求項7】
前記環化ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、 前記抗生物質がフルオロキノロン類からなる群から選択される核酸阻害剤である、請求項に記載の組成物
【請求項8】
前記環化ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記フルオロキノロンがシプロフロキサシンである、請求項に記載の組成物
【請求項9】
前記環化ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記抗生物質がクロラムフェニコール及びアミカシンからなる群から選択されるタンパク質合成阻害剤である、請求項に記載の組成物
【請求項10】
前記ペプチドが配列CSVHSFDYDWYNVCを有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物
【請求項11】
前記ペプチドがFDYDWYを含み、C末端及びN末端でシステインで修飾されており、且つ、前記C末端及び前記N末端はS−S架橋されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物
【請求項12】
前記ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含んでいる、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記細菌はグラム陽性菌又はグラム陰性菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記グラム陽性菌は、アクチノミセス属の一種、バシラス・アントラシス(Bacillus anthracis:炭疽菌)、ビフィドバクテリウム属の一種、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum:ボツリヌス菌)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens:ウェルシュ菌)、クロストリジウム属の一種、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani:破傷風菌)、コリネバクテリウム・ジフテリアエ(Corynebacterium diphtheriae:ジフテリア菌)、コリネバクテリウム・ジャイカム(Corynebacterium jeikeium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis:大便連鎖球菌)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エリシペロトリックス・ルシオパチエ(Erysipelothrix rhusiopathiae:ブタ丹毒菌)、ユーバクテリウム属の一種、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis:ガードネレラ菌)、ゲメラ・モルビロルム(Gemella morbillorum)、ロイコノストック属の一種、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)、複合マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium complex)、マイコバクテリウム・ケロネー(Mycobacterium chelonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)、マイコバクテリウム・ヘモフィルム(Mycobacterium haemophilium)、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae:らい菌)、マイコバクテリウム・マリナム(Mycobacterium marinum)、マイコバクテリウム・スクロフラセウム(Mycobacterium scrofulaceum)、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis:スメグマ菌)、マイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis:結核菌)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、ノカルディア属の一種、ペプトコッカス・ニガー(Peptococcus niger)、ペプトストレプトコッカス属の一種、プロプリオニバクテリウム属の一種、サルシナ・ルテア(Sarcina lutea)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・エピデルミヂス(Staphylococcus epidermidis:表皮ブドウ球菌)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・ルグダネンシス(Staphylococcus lugdanensis)、スタフィロコッカス・サッカロリチクス(Staphylococcus saccharolyticus)、スタフィロコッカス・サプロフィチクス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・シュライフェリ(Staphylococcus schleiferi)、スタフィロコッカス・シミランス(Staphylococcus similans)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis:ウシ連鎖球菌)、ストレプトコッカス・カニス(Streptococcus canis)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi:腺疫菌)、ストレプトコッカス・ミレリ(Streptococcus milleri)、ストレプトコッカス・ミチオール(Streptococcus mitior)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans:ミュータンス菌)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae:肺炎連鎖球菌)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes:化膿レンサ球菌)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、又は、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis:サンギス菌)である請求項13に記載の組成物
【請求項15】
前記ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記グラム陰性菌は、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、エロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アルカリジェネス・キシロソキシダンス(Alcaligenes xylosoxidans)、バクテロイデス属の一種、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、バルトネラ・バシリホルミス(Bartonella bacilliformis)、ボルデテラ属の一種、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ブランハメラ・カタラリス(Branhamella catarrhalis:カタル球菌)、ブルセラ属の一種、カンピロバクター属の一種、カルミヂア・ニューモニエ(Chalmydia pneumoniae)、クラミジア・シッタシ(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)、シトロバクター属の一種、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、大腸菌、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)、フソバクテリウム属の一種、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィリス属の一種、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:ピロリ菌)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ属の一種、レジオネラ属の一種、レプトスピラ属の一種、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis:カタル球菌)、モルガネラ・モルガニイ(Morganella morganii)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis:髄膜炎菌)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プレボテラ属の一種、プロテウス属の一種、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa:緑膿菌)、シュードモナス属の一種、リケッチア・プロワゼキイ(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、ロシャメリア属の一種、サルモネラ属の一種、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi:チフス菌)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、シゲラ属の一種、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei:ソンネ菌)、トレポネーマ・カラテウム(Treponema carateum)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、トレポネーマ・パリダム亜種エンデミカム(Treponema pallidum endemicum)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、ベイヨネラ属の一種、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae:コレラ菌)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、又はエルシニア・ペスチス(Yersinia pestis:ペスト菌)である請求項13に記載の組成物
【請求項16】
前記ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、前記細菌は、スタフィロコッカス・アウレウス、エンテロコッカス・フェシウム、又はクレブシエラ・ニューモニエである請求項1に記載の組成物
【請求項17】
前記ペプチドは配列SVHSFDYDWYNVを含み、
前記スタフィロコッカス・アウレウスはメチシリン耐性種(MRSA)、前記エンテロコッカス・フェシウムはバンコマイシン耐性種であるか、前記エンテロコッカス・フェシウムはテイコプラニン耐性種であるか、前記エンテロコッカス・フェシウムはバンコマイシン及びテイコプラニン耐性種であるか、前記エンテロコッカス・フェシウムはテトラサイクリン群の抗生物質に対して耐性型であるか、又は
前記クレブシエラ・ニューモニエはペニシリン群の抗生物質に対して耐性型であるか、セファロスポリン群の抗生物質に対して耐性型であるか、カルバペネム群の抗生物質に対して耐性型であるか、フルオロキノロン群の抗生物質に対して耐性型であるか、タンパク質阻害剤の抗生物質に対して耐性型であるか、アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、及びテトラサイクリンに対して耐性型であるか
前記クレブシエラ・ニューモニエはカルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシンに対して耐性型である請求項16に記載の組成物
【請求項18】
請求項1〜17の何れか一項に記載の組成物は表面を処理するために使用される方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、全体を引用することにより本明細書の一部をなす、2013年10月31日出願の米国仮特許出願第61/898183号の優先権を主張する。本出願は、全体を引用することにより本明細書の一部をなす、2013年11月18日出願の米国仮特許出願第61/905440号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、細菌、特に抗生物質耐性菌に対する抗生物質の効果を増大させる組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗生物質の使用は広範囲にわたり、重篤な生命の危険のあるものから頻繁に起こる日常的な非細菌性疾病に及ぶ感染の治療に使用される医療処置の基礎となっている。この繰り返される抗生物質による選択圧と、他の菌株及び密接に関連する種のDNAを組み込む細菌の能力とが組み合わされることで、耐性の特質の進化及び獲得につながっている。多重抗生物質耐性(Multiple-antibiotic-resistant)株は今では多種に広がり、細菌は各抗生物質のクラス毎に耐性の少なくとも1つの(及び多くの場合、更に多くの)機構を発達させてきている。例えば、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus:黄色ブドウ球菌)(MRSA)は重篤な市中感染及び院内感染、例えば、皮膚及び軟組織の感染、骨、関節、及びインプラントの感染、人工呼吸器関連肺炎、並びに敗血症を引き起こす主要な多剤耐性菌病原体の1つである。多剤耐性のスタフィロコッカス・アウレウスによる感染により、米国では年間19000人が死亡し、関連する年間の医療費が更に30億〜40億米国ドルにのぼると推定される。この高い死亡率にも関わらず、製薬パイプラインでの新たな抗菌剤は相対的に多くない。代わりに、過去10年間に開発された抗生物質のほとんどが、基礎となる耐性機構が既に存在する既存の抗生物質のクラスから再操作された分子である。それゆえ、引き起こされた感染、特に多剤耐性菌により引き起こされた感染の治療のための新しく効果的な治療選択肢が緊急に求められている。
【0004】
これまで、動物界全体の多様な生物に存在するペプチドが、微生物を表面から脱離させ、かつ微生物同士を脱離させることから、バイオフィルムの形成を防ぐことができることがわかっていた。これらのタンパク質及びペプチドは殺菌性のものではなく、細菌の成長に影響を及ぼすことはなかった。
【0005】
本発明者らは、同じペプチドでも抗生物質と組み合わせて使用すると、細菌、特に抗生物質耐性種に対する抗生物質の効力を増大させることができることを発見した。
【発明の概要】
【0006】
本発明は概ね、細菌と、抗生物質及び配列FDYDWYを含むペプチドとを接触させることを含む、細菌に対する抗生物質の有効性を増大させる分野に関する。本発明はまた、抗生物質耐性菌と配列FDYDWYを含むペプチドとを接触させることを含む、抗生物質耐性菌に対する抗生物質の有効性を増大させることに関する。
【0007】
本明細書において使用される場合、「含む("comprising" and "including")」という用語又はその文法的変化形は、決まった特徴、整数値、工程又は構成要素を明記するものとされるが、1つ又は複数の更なる特徴、整数値、工程、構成要素又はそれらの群の付加を排除するものではない。この用語は、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる」という用語を包含する。
【0008】
本明細書において使用される場合、「から本質的になる」という語句又はその文法的変化形は、決まった特徴、整数値、工程又は構成要素を明記するものとされるが、1つ又は複数の更なる特徴、整数値、工程、構成要素又はそれらの群が、特許請求される組成物、デバイス又は方法の基礎となる新規の特性を大きく変えない場合に限れば、この更なる特徴、整数値、工程、構成要素又はそれらの群の付加を排除するものではない。
【0009】
「方法」という用語は、与えられた仕事を達成するための様式、手段、技法及び手法を指し、化学分野、生物学分野及び生物物理学分野の実践者(practitioners)にとって既知の、又は化学分野、生物学分野及び生物物理学分野の実践者によって知られる様式、手段、技法及び手法から容易に開発される様式、手段、技法及び手法を含むが、これらに限定されない。
【0010】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は±10%を指す。
【0011】
本明細書において使用される場合、抗生物質の「細菌死滅濃度」という用語は、適切な培養培地及びインキュベーションの条件下において培養することができる、治療対象の細菌の培養にて任意の細菌コロニーが生成されない抗生物質の最小濃度である。本明細書において使用される場合、抗生物質の「最小殺菌濃度」(MBC)という用語は、特定の細菌の殺菌に必要な抗生物質の最小又は最低濃度である。
【0012】
本明細書において使用される場合、「接触させる」という用語は、本発明のペプチド及び抗生物質が細菌と直接又は間接的に接触するように本発明のペプチド及び抗生物質を位置付けることを指す。従って、本発明は、本発明の組成物の、所望の表面へ及び/又は直接細菌細胞への両方の適用を検討する。本組成物と表面との接触は、噴霧、拡散、湿潤、浸潤、浸漬、塗工、超音波溶接、溶接、接合、又は接着を含む、当該技術分野において既知の方法のいずれかを使用して行うことができる。ペプチド及び抗生物質と細菌との接触はまた、ペプチド及び抗生物質を必要とする対象にペプチド及び抗生物質を投与することを含むことができる。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1a】S.アウレウス(S. aureus) ATCC 43300(MRSA)(5×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のオキサシリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むオキサシリンの試験の結果を示す図である。
図1b】S.アウレウス ATCC 25923(MSSA)(5×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のオキサシリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むオキサシリンの試験の結果を示す図である。
図2】7×10CFU/mLの細菌濃度の、S.アウレウス ATCC 43300(MRSA)及びS.アウレウス ATCC 25923(MSSA)に対する、種々の濃度のオキサシリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むオキサシリンの試験の結果を示す図である。
図3】1×10CFU/mLの細菌濃度の、S.アウレウス ATCC 33591(MRSA株)(5×10CFU/mL)及びS.アウレウス ATCC 25923(MSSA)に対する、種々の濃度のオキサシリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むオキサシリンの試験の結果を示す図である。
図4a】S.アウレウス ATCC 33591(MRSA株)(5×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のオキサシリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むオキサシリンの試験及び1×10CFU/mLの細菌濃度のS.アウレウス ATCC 25923(MSSA)に対するオキサシリン単独の活性の試験の結果を示す図である。
図4b】S.アウレウス ATCC 25923(1×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のオキサシリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むオキサシリンの試験の結果を示す図である。
図5】エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium) ATCC 700221(バンコマイシン、テイコプラニン、及びテトラサイクリン耐性株)(4×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のバンコマイシン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むバンコマイシンの試験の結果を示す図である。
図6】エンテロコッカス・フェシウム ATCC 700221(バンコマイシン、テイコプラニン、及びテトラサイクリン耐性株)(2×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のテイコプラニン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むテイコプラニンの試験の結果を示す図である。
図7】クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae:肺炎桿菌) ATCC 700603(MDR耐性株:アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、テトラサイクリンに耐性)(3×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のアンピシリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むアンピシリンの試験の結果を示す図である。
図8】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC 700603(MDR耐性株:アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、テトラサイクリンに耐性)(2×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のアンピシリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むアンピシリンの試験の結果を示す図である。
図9】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC 700603(MDR耐性株:アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、テトラサイクリンに耐性)(2×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のセホキシチン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むセホキシチンの試験の結果を示す図である。
図10】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)(3×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のイミペネム単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むイミペネムの試験の結果を示す図である。
図11】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)(1×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のイミペネム単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むイミペネムの試験の結果を示す図である。
図12】S.アウレウス ATCC BAA(商標)1708(MRSA−mupA陽性株)(1×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のムピロシン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むムピロシンの試験の結果を示す図である。
図13a】エンテロコッカス・フェシウム ATCC 700221(バンコマイシン、テイコプラニン、及びテトラサイクリン耐性株)(1×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のテトラサイクリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むテトラサイクリンの試験の結果を示す図である。
図13b】エンテロコッカス・フェシウム ATCC 700221(バンコマイシン、テイコプラニン、及びテトラサイクリン耐性株)(2×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のテトラサイクリン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むテトラサイクリンの試験の結果を示す図である。
図14】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)(1×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のシプロフロキサシン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むシプロフロキサシンの試験の結果を示す図である。
図15】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC 700603(MDR耐性株:アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、テトラサイクリンに耐性)(4×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のクロラムフェニコール単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むクロラムフェニコールの試験の結果を示す図である。
図16】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC 700603(MDR耐性株:アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、テトラサイクリンに耐性)(1×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のクロラムフェニコール単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むクロラムフェニコールの試験の結果を示す図である。
図17】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)(1×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のアミカシン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むアミカシンの試験の結果を示す図である。
図18】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)(2×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のレボフロキサシン単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むレボフロキサシンの試験の結果を示す図である。
図19a】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)(1×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のアズトレオナム単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むアズトレオナムの試験の結果を示す図である。
図19b】クレブシエラ・ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(1×10CFU/mL)に対する、種々の濃度のアズトレオナム単独又は10nMのgrZ14s−nvCycを含むアズトレオナムの試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載の方法は、細菌と、抗生物質及び配列FDYDWYを含むペプチドとを接触させることを含む、細菌に対する抗生物質の有効性を増大させることに関する。
【0016】
幾つかの実施形態において、本方法は細菌と、抗生物質及び配列FDYDWYを含むペプチドとを接触させることを含む、細菌に対する抗生物質の効力を増大させる方法である。
【0017】
幾つかの実施形態において、抗生物質の効力の増大又は有効性の増大を、細菌に対する抗生物質の最小殺菌濃度を分析することにより測定する。従って、幾つかの実施形態において、本発明は、細菌に対する抗生物質の有効性を増大させる方法であり、この場合、細菌に対する抗生物質の最小殺菌濃度は、少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約90%低下する。最小殺菌濃度(MBC)の低下の割合を、本発明のペプチドを含むMBCと含まないMBCとの差を本発明のペプチドを含まないMBCで除算し、それに100を乗算することにより測定する。
【0018】
幾つかの実施形態において、細菌に対する抗生物質の最小殺菌濃度は、約5%〜25%、約10%〜30%、約20%〜60%、約20%〜40%、約20%〜50%、約40%〜90%、約5%〜90%、約10%〜80%、20%〜70%、約30%〜60%、又は約30%〜50%低下する。
【0019】
幾つかの実施形態において、抗生物質の効力の増大又は有効性の増大を、細菌に対する抗生物質の細菌死滅濃度を分析することにより測定する。
【0020】
幾つかの実施形態において、抗生物質の効力の増大又は有効性の増大を、抗生物質の細菌死滅濃度を測定することにより測定する。従って、幾つかの実施形態において、本発明は、細菌に対する抗生物質の有効性を増大させる方法であり、この場合、細菌に対する抗生物質の細菌死滅濃度は、少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、又は約90%低下する。細菌死滅濃度の低下の割合を、本発明のペプチドを含む細菌死滅濃度と含まない細菌死滅濃度との差を本発明のペプチドを含まない細菌死滅濃度で除算し、それに100を乗算することにより測定する。
【0021】
幾つかの実施形態において、細菌に対する抗生物質の細菌死滅濃度は、約5%〜25%、約10%〜30%、約20%〜60%、約20%〜40%、約20%〜50%、約40%〜90%、約5%〜90%、約10%〜80%、20%〜70%、約30%〜60%、又は約30%〜50%低下する。
【0022】
ペプチド
本明細書に記載の方法は、細菌と、抗生物質及び配列FDYDWYを含むペプチドとを接触させることを含む。例えば、ペプチドは、FDYDWY、SFDYDWY、SFDYDWYN、HSFDYDWYN、VHSFDYDWYN、SVHSFDYDWYN、SVHSFDYDWYNV、SVHSFDYDWYNVS、KSVHSFDYDWYNVS、KSVHSFDYDWYNVSD、NKSVHSFDYDWYNVSD、NKSVHSFDYDWYNVSDQ、QNKSVHSFDYDWYNVSDQ、QNKSVHSFDYDWYNVSDQA、SQNKSVHSFDYDWYNVSDQ、SQNKSVHSFDYDWYNVSDQA、FSQNKSVHSFDYDWYNVSDQA、FSQNKSVHSFDYDWYNVSDQAD、SFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQAD、SFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQADL、SFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQADLK、SFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQADLKN、若しくはCSFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQADLKNCのうちの少なくとも1つ、又はそれらの組合せを含み得る。
【0023】
幾つかの実施形態によれば、ペプチドは、最大約20個、最大約25個、最大約30個、最大約40個、又は最大約50個のアミノ酸を含む配列の一部を含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、本発明のペプチドは、配列内に2つのシステインを有する。幾つかの実施形態において、システインはC末端及びN末端に存在する。
【0025】
幾つかの実施形態において、本発明のペプチドは環化(すなわち、環状形態)されていてもよく、それ自体は本出願において「cyc」という用語により示される。1つの実施形態において、各ペプチドは、C末端のシステイン及びN末端のシステインによって修飾されており、C末端及びN末端がS−S架橋されている。特定の実施形態において、1つ又は複数のペプチドがC末端のシステイン及びN末端のシステインによって修飾されており、C末端及びN末端がS−S架橋されている。他の実施形態において、例えば、ペプチドのN末端又はC末端に存在しない1つ又は複数のアミノ酸が互いに結合すると、ペプチドは内部環化される。このような結合は、2つのシステイン間のS−S架橋を介したものであってよく、又は化学合成された共有結合、例えば、エステル基又はアミド基であってよい。
【0026】
幾つかの実施形態において、本発明のペプチドは、任意に、第1のペプチド配列のN末端がリンカーのC末端に連結され、第2のペプチド配列のC末端がリンカーのN末端に連結されるように、或る種のリンカーによって連結された少なくとも2つの配列を含んでもよい。
【0027】
幾つかの実施形態において、ペプチドは配列CSVHSFDYDWYNVCを有する。幾つかの実施形態において、ペプチドCSVHSFDYDWYNVCは、C末端及びN末端の2つのシステインを介して環化される。
【0028】
幾つかの実施形態において、ペプチドは環化されない。
【0029】
幾つかの実施形態において、ペプチドは可溶性である。他の実施形態において、ペプチドはリンカー付着型である。幾つかの実施形態において、リンカーはポリエチレングリコール又はパルミチン酸である。幾つかの実施形態において、ペプチドは合成される。
【0030】
細菌種
本発明の方法の幾つかの実施形態において、細菌はグラム陽性種である。幾つかの実施形態において、細菌はグラム陰性種である。
【0031】
本明細書において使用される場合、「グラム陽性菌」という用語は、それらの細胞壁構造の一部としてペプチドグリカンと、多糖及び/又はテイコ酸とを有することを特徴とし、かつグラム染色法におけるそれらの青紫色の反応物を特徴とする細菌を表す。代表的なグラム陽性菌としては、アクチノミセス属の一種、バシラス・アントラシス(Bacillus anthracis:炭疽菌)、ビフィドバクテリウム属の一種、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum:ボツリヌス菌)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens:ウェルシュ菌)、クロストリジウム属の一種、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani:破傷風菌)、コリネバクテリウム・ジフテリアエ(Corynebacterium diphtheriae:ジフテリア菌)、コリネバクテリウム・ジャイカム(Corynebacterium jeikeium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis:大便連鎖球菌)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エリシペロトリックス・ルシオパチエ(Erysipelothrix rhusiopathiae:ブタ丹毒菌)、ユーバクテリウム属の一種、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis:ガードネレラ菌)、ゲメラ・モルビロルム(Gemella morbillorum)、ロイコノストック属の一種、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)、複合マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium complex)、マイコバクテリウム・ケロネー(Mycobacterium chelonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)、マイコバクテリウム・ヘモフィルム(Mycobacterium haemophilium)、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae:らい菌)、マイコバクテリウム・マリナム(Mycobacterium marinum)、マイコバクテリウム・スクロフラセウム(Mycobacterium scrofulaceum)、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis:スメグマ菌)、マイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis:結核菌)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、ノカルディア属の一種、ペプトコッカス・ニガー(Peptococcus niger)、ペプトストレプトコッカス属の一種、プロプリオニバクテリウム属の一種、サルシナ・ルテア(Sarcina lutea)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・エピデルミヂス(Staphylococcus epidermidis:表皮ブドウ球菌)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・ルグダネンシス(Staphylococcus lugdanensis)、スタフィロコッカス・サッカロリチクス(Staphylococcus saccharolyticus)、スタフィロコッカス・サプロフィチクス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカス・シュライフェリ(Staphylococcus schleiferi)、スタフィロコッカス・シミランス(Staphylococcus similans)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis:ウシ連鎖球菌)、ストレプトコッカス・カニス(Streptococcus canis)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi:腺疫菌)、ストレプトコッカス・ミレリ(Streptococcus milleri)、ストレプトコッカス・ミチオール(Streptococcus mitior)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans:ミュータンス菌)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae:肺炎連鎖球菌)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes:化膿レンサ球菌)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis:サンギス菌)が挙げられる。
【0032】
本明細書において使用される場合、「グラム陰性菌」という用語は、それぞれの細菌細胞を囲む二重膜の存在を特徴とする細菌を表す。代表的なグラム陰性菌としては、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、エロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アルカリジェネス・キシロソキシダンス(Alcaligenes xylosoxidans)、バクテロイデス属の一種、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、バルトネラ・バシリホルミス(Bartonella bacilliformis)、ボルデテラ属の一種、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ブランハメラ・カタラリス(Branhamella catarrhalis:カタル球菌)、ブルセラ属の一種、カンピロバクター属の一種、カルミヂア・ニューモニエ(Chalmydia pneumoniae)、クラミジア・シッタシ(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)、シトロバクター属の一種、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、大腸菌、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)、フソバクテリウム属の一種、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィリス属の一種、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:ピロリ菌)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ属の一種、レジオネラ属の一種、レプトスピラ属の一種、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis:カタル球菌)、モルガネラ・モルガニイ(Morganella morganii)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis:髄膜炎菌)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プレボテラ属の一種、プロテウス属の一種、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa:緑膿菌)、シュードモナス属の一種、リケッチア・プロワゼキイ(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、ロシャメリア属の一種、サルモネラ属の一種、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi:チフス菌)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、シゲラ属の一種、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei:ソンネ菌)、トレポネーマ・カラテウム(Treponema carateum)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、トレポネーマ・パリダム亜種エンデミカム(Treponema pallidum endemicum)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、ベイヨネラ属の一種、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae:コレラ菌)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis:ペスト菌)が挙げられる。
【0033】
幾つかの実施形態において、細菌は、例えば、バイオフィルムを形成することにより抗生物質に対して非特異的な耐性を示す。幾つかの実施形態において、細菌は、特定の抗生物質に対して特異的な耐性を示す。細菌における特異的な耐性は自然耐性又は獲得耐性のいずれかであってよい。幾つかの実施形態において、細菌は抗生物質に対して特異的及び非特異的な耐性の両方を示す。幾つかの実施形態において、細菌は非常に低濃度にて存在するため、バイオフィルムを形成しない。本発明を限定するものではないが、バイオフィルムに存在しない細菌は、抗生物質に対して特異的な耐性機構を示すと仮定される。本発明を限定するものではないが、本発明のペプチドは、上記の特異的な非バイオフィルム関連耐性機構に対抗して作用するとも仮定される。
【0034】
幾つかの実施形態において、細菌はスタフィロコッカス・アウレウスである。特定の実施形態において、S.アウレウスはメチシリン耐性種(MRSA)である。
【0035】
幾つかの実施形態において、細菌はエンテロコッカス・フェシウムである。幾つかの実施形態において、E.フェシウムはバンコマイシン耐性種である。他の実施形態において、E.フェシウムはテイコプラニン耐性種である。幾つかの実施形態において、E.フェシウムはバンコマイシン耐性種であり、テイコプラニン耐性種である。幾つかの実施形態において、E.フェシウムはテトラサイクリン群の抗生物質に対して耐性型である。
【0036】
幾つかの実施形態において、細菌はクレブシエラ・ニューモニエである。幾つかの実施形態において、K.ニューモニエ(K. pneumonia)は抗生物質耐性種である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはペニシリン群の抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはセファロスポリン群の抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはカルバペネム群の抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはフルオロキノロン群の抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはタンパク質阻害剤の抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはアンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、及びテトラサイクリンに対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはカルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシンに対して耐性型である。
【0037】
抗生物質
幾つかの実施形態において、本発明は、細菌と、抗生物質及び配列FDYDWYを含むペプチドとを接触させることを含む、細菌に対する抗生物質の効力を増大させる方法である。
【0038】
幾つかの実施形態において、前記抗生物質が細胞外皮の抗生物質、核酸阻害剤、及びタンパク質合成阻害剤である。
【0039】
幾つかの実施形態において、前記抗生物質がペニシリン類、セファロスポリン類、グリコペプチド類、及びカルバペネム類からなる群から選択される細胞外皮の抗生物質である。幾つかの実施形態において、前記抗生物質がオキサシリン、メチシリン、アモキシシリン、アンピシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、カルベニシリン、チカルシリン、及びピペラシリンからなる群から選択されるペニシリンである。幾つかの実施形態において、前記抗生物質がセファセトリル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セファトリジン、セファザフル、セファゼドン、セファゾリン、セフラジン、セフロキサジン、セフテゾール、セファクロル、セフォニシド、セフプロジル、セフロキシム、セフゾナム、セフメタゾール、セフォテタン、ロラカルベフ、セフブペラゾン、セフメタゾール、セフミノックス、セフォテタン、セホキシチン、セフォチアム、セフクリジン、セフェピム、セフルプレナム、セフォセリス、セフォゾプラン、セフピロム、セフキノム、フロモキセフ、セフトビプロール、及びセフタロリンからなる群から選択されるセファロスポリンである。幾つかの実施形態において、前記抗生物質がバンコマイシン及びテイコプラニンからなる群から選択されるグリコペプチドである。幾つかの実施形態において、前記抗生物質がイミペネム、メロペネム(meropenem)、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム、及びビアペネムからなる群から選択されるカルバペネムである。特定の実施形態において、抗生物質はアズトレオナムである。
【0040】
幾つかの実施形態において、抗生物質はフルオロキノロン類からなる群から選択される核酸阻害剤である。幾つかの実施形態において、フルオロキノロンは、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ペフロキサシン、ルフロキサシン、バロフロキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、モキシフロキサシン、シタフロキサシン、トロバフロキサシン、プルリフロキサシン(prulifloxacin)、デラフロキサシン、ダノフロキサシン、ジフロキサシン、エンロフロキサシン、イバフロキサシン、マルボフロキサシン、オルビフロキサシン、又はサラフロキサシンである。特定の実施形態において、フルオロキノロンはシプロフロキサシン又はレボフロキサシンである。
【0041】
幾つかの実施形態において、抗生物質はクロラムフェニコール及びアミカシンからなる群から選択されるタンパク質合成阻害剤である。他の実施形態において、抗生物質はマクロライドクラスの抗生物質から選択されるタンパク質合成阻害剤である。マクロライド抗生物質には、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、ソリスロマイシン、スピラマイシン、トロレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、セスロマイシン、ソリスロマイシン、スピラマイシン、又はアンサマイシンがある。幾つかの実施形態において、タンパク質合成阻害剤の抗生物質はムピロシンである。
【0042】
幾つかの実施形態において、抗生物質は、未知の作用機構を有するものである。
【0043】
特定の実施形態において、抗生物質は、細菌による該抗生物質に対する特異的又は非特異的耐性に起因する特定の細菌種に対する活性の減少を示す。
【0044】
投与
幾つかの実施形態において、本発明は、細菌と、抗生物質及び配列FDYDWYを含むペプチドとを接触させることを含む、細菌に対する抗生物質の効力を増大させる方法である。
【0045】
幾つかの実施形態において、細菌を抗生物質及びペプチドと同時に、すなわち、同じ時間に接触させる。抗生物質及びペプチドのこのような同時の接触を、例えば、抗生物質及びペプチドの両方を含有する単一の組成物を使用することにより行うことができる。他の実施形態において、抗生物質及びペプチドの同時の接触を、細菌と、2つの個別の組成物に含まれる抗生物質及びペプチドとを接触させることにより行うことができる。
【0046】
幾つかの実施形態において、細菌を抗生物質及びペプチドと異なる時間にて接触させる。特定の実施形態において、抗生物質及びペプチドを、細菌と約15分間隔、約30分間隔、約45分間隔、約1時間間隔、約1.5時間間隔、又は約2時間間隔にて接触させる。幾つかの実施形態において、細菌を抗生物質及びペプチドと異なる時間にて接触させる場合、細菌と抗生物質とを接触させる前又は後に、細菌とペプチドとを接触させることができる。
【0047】
幾つかの実施形態において、本発明は、抗生物質及び配列FDYDWYを含むペプチドを、抗生物質及びペプチドを必要とする対象に投与することを含む、細菌に対する抗生物質の効力を増大させる方法である。幾つかの実施形態において、対象は非ヒト哺乳類動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシである。他の実施形態において、哺乳類動物はヒトである。
【0048】
幾つかの実施形態において、対象に投与するペプチドは、FDYDWY、SFDYDWY、SFDYDWYN、HSFDYDWYN、VHSFDYDWYN、SVHSFDYDWYN、SVHSFDYDWYNV、SVHSFDYDWYNVS、KSVHSFDYDWYNVS、KSVHSFDYDWYNVSD、NKSVHSFDYDWYNVSD、NKSVHSFDYDWYNVSDQ、QNKSVHSFDYDWYNVSDQ、QNKSVHSFDYDWYNVSDQA、SQNKSVHSFDYDWYNVSDQ、SQNKSVHSFDYDWYNVSDQA、FSQNKSVHSFDYDWYNVSDQA、FSQNKSVHSFDYDWYNVSDQAD、SFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQAD、SFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQADL、SFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQADLK、SFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQADLKN、若しくはCSFSQNKSVHSFDYDWYNVSDQADLKNCのうちの少なくとも1つ、又はそれらの組合せを含み得る。特定の実施形態において、ペプチドは配列CSVHSFDYDWYNVCを有する。
【0049】
幾つかの実施形態によれば、ペプチドは、最大約20個、最大約25個、最大約30個、最大約40個、又は最大約50個のアミノ酸を含む配列の一部を含む。
【0050】
幾つかの実施形態において、本発明のペプチドは、配列内に2つのシステインを有する。幾つかの実施形態において、システインはC末端及びN末端に存在する。
【0051】
幾つかの実施形態において、本発明のペプチドは環化(すなわち、環状形態)されていてもよく、それ自体は本出願において「cyc」という用語により示される。1つの実施形態において、各ペプチドは、C末端のシステイン及びN末端のシステインによって修飾されており、C末端及びN末端がS−S架橋されている。特定の実施形態において、1つ又は複数のペプチドがC末端のシステイン及びN末端のシステインによって修飾されており、C末端及びN末端がS−S架橋されている。他の実施形態において、例えば、ペプチドのN末端又はC末端に存在しない1つ又は複数のアミノ酸が互いに結合すると、ペプチドは内部環化される。このような結合は、2つのシステイン間のS−S架橋を介したものであってよく、又は化学合成された共有結合、例えば、エステル基又はアミド基であってよい。
【0052】
幾つかの実施形態において、本発明のペプチドは任意に、第1のペプチド配列のN末端がリンカーのC末端に連結し、第2のペプチド配列のC末端がリンカーのN末端に連結するように、幾つかの種類のリンカーによって連結された、少なくとも2つの配列を含むことができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、ペプチドは配列CSVHSFDYDWYNVCを有する。幾つかの実施形態において、ペプチドCSVHSFDYDWYNVCは、C末端及びN末端の2つのシステインを介して環化される。
【0054】
幾つかの実施形態において、ペプチドは環化されない。
【0055】
幾つかの実施形態において、ペプチドは可溶性である。他の実施形態において、ペプチドをリンカーに付着させる。幾つかの実施形態において、リンカーはポリエチレングリコール又はパルミチン酸である。幾つかの実施形態において、ペプチドは合成される。
【0056】
幾つかの実施形態において、抗生物質は、細胞外皮の抗生物質、核酸阻害剤、又はタンパク質合成阻害剤である。幾つかの実施形態において、抗生物質は上記の抗生物質の1つである。特定の実施形態において、抗生物質はアンピシリン、オキサシリン、セホキシチン、バンコマイシン、テイコプラニン、イミペネム、エルタペネム(ertapenem)、ムピロシン、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、クロラムフェニコール、アミカシン、又はアズトレオナムである。
【0057】
特定の実施形態において、抗生物質は、細菌による抗生物質に対する特異的又は非特異的耐性に起因する特定の細菌種に対する活性の減少を示す。
【0058】
幾つかの実施形態において、哺乳類動物は治療を必要とする細菌感染を有する。特定の実施形態において、細菌感染は抗生物質耐性菌によって生じる。幾つかの実施形態において、細菌は、例えば、バイオフィルムの形成により抗生物質に対して非特異的な耐性を示す。幾つかの実施形態において、細菌は特定の抗生物質に対して特異的な耐性を示す。細菌の特異的な耐性は、自然のもの又は獲得されたもののいずれかであってよい。幾つかの実施形態において、細菌は抗生物質に対して特異的及び非特異的な耐性の両方を示す。
【0059】
幾つかの実施形態において、細菌はグラム陽性種である。幾つかの実施形態において、細菌はグラム陰性種である。グラム陽性種及びグラム陰性種の例は上記に定義される通りである。
【0060】
幾つかの実施形態において、細菌はスタフィロコッカス・アウレウスである。特定の実施形態において、S.アウレウスはメチシリン耐性種(MRSA)である。
【0061】
幾つかの実施形態において、細菌はエンテロコッカス・フェシウムである。幾つかの実施形態において、E.フェシウムはバンコマイシン耐性種である。他の実施形態において、E.フェシウムはテイコプラニン耐性種である。幾つかの実施形態において、E.フェシウムはバンコマイシン耐性種であり、テイコプラニン耐性種である。幾つかの実施形態において、E.フェシウムはテトラサイクリン群の抗生物質に対して耐性型である。
【0062】
幾つかの実施形態において、細菌はクレブシエラ・ニューモニエである。幾つかの実施形態において、K.ニューモニエは抗生物質耐性種である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはペニシリン群の抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはセファロスポリン群の抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはカルバペネム群の抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはフルオロキノロン群の抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはタンパク質合成阻害剤である抗生物質に対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはアンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、及びテトラサイクリンに対して耐性型である。特定の実施形態において、K.ニューモニエはカルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシンに対して耐性型である。
【0063】
幾つかの実施形態において、抗生物質及びペプチドを同時に、すなわち、同じ時間に対象に投与する。抗生物質及びペプチドのこのような同時投与を、例えば、抗生物質及びペプチドの両方を含有する単一の組成物を使用することにより行うことができる。他の実施形態において、抗生物質及びペプチドの同時投与は、2つの個別の組成物に含まれる抗生物質及びペプチドを投与することにより行うことができる。
【0064】
幾つかの実施形態において、抗生物質及びペプチドを異なる時間にて対象に投与する。特定の実施形態において、抗生物質及びペプチドを約15分間隔、約30分間隔、約45分間隔、約1時間間隔、約1.5時間間隔、又は約2時間間隔にて投与する。抗生物質及びペプチドを異なる時間にて投与する幾つかの実施形態において、ペプチドを抗生物質の前又は後に投与することができる。
【0065】
組成物
幾つかの実施形態において、本発明は、抗生物質と配列FDYDWYを含むペプチドとを含む組成物である。
【0066】
幾つかの実施形態において、配列FDYDWYを含むペプチドは、上記の配列のいずれかを有し得る。特定の実施形態において、ペプチドは配列CSVHSFDYDWYNVCを有する。幾つかの実施形態において、ペプチドCSVHSFDYDWYNVCはC末端及びN末端の2つのシステインを介して環化される。
【0067】
幾つかの実施形態において、ペプチドは環化されない。
【0068】
幾つかの実施形態において、抗生物質は細胞外皮の抗生物質、核酸阻害剤、又はタンパク質合成阻害剤である。幾つかの実施形態において、抗生物質は上記の抗生物質の1つである。特定の実施形態において、抗生物質はアンピシリン、オキサシリン、セホキシチン、バンコマイシン、テイコプラニン、イミペネム、エルタペネム(正:ertapenem)、ムピロシン、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、クロラムフェニコール、アミカシン、又はアズトレオナムである。
【0069】
幾つかの実施形態において、ペプチド及び抗生物質と細菌とを単一の組成物内において接触させる。幾つかの実施形態において、ペプチド及び抗生物質が細菌と接触させるか、2つの個別の組成物内で接触させる。
【0070】
本発明の組成物は上記のペプチド及び抗生物質がコーティングされたデバイスを含む。本発明で意図されているデバイスの例としては、船体、自動車表面、飛行機表面、膜、フィルター及び工業設備が挙げられるが、これらに限定されない。また表面は、医療デバイス、医療機器及びインプラントにも含まれ得る。
【0071】
かかる医療デバイス、医療機器及びインプラントの例としては、ヒト等の哺乳類生物に一時的に又は永久的に埋め込むことができる任意の物体が挙げられる。本発明に従って使用され得る、代表的な医療デバイス、医療機器及びインプラントとしては例えば、中心静脈カテーテル、導尿カテーテル、気管内チューブ、機械心臓弁、ペースメーカー、血管グラフト、ステント及び人工関節が挙げられる。
【0072】
本発明の教示に従ってコーティングすることができる医療デバイスとしては、人工血管、カテーテル及び流体の除去又は患者への流体の送達のための他のデバイス、人工心臓、人工腎臓、整形外科用のピン、人工関節、プレート及びインプラント;カテーテル及び他のチューブ(泌尿器チューブ及び胆管チューブ、気管内チューブ、末梢部に挿入可能な中心静脈カテーテル、透析カテーテル、長期間トンネル型(tunneled)中心静脈カテーテル、末梢静脈内カテーテル、短期間中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、肺動脈カテーテル、スワン−ガンツカテーテル、導尿カテーテル、腹膜カテーテルを含む)、尿道デバイス(長期間尿道デバイス、組織結合尿道デバイス、人工尿道括約筋、尿道拡張器を含む)、シャント(心室シャント又は動静脈シャントを含む);プロテーゼ(胸部インプラント、陰茎プロテーゼ、血管移植プロテーゼ、動脈瘤修復デバイス、機械心臓弁、人工関節、人工喉頭、耳鼻科インプラントを含む)、吻合デバイス、血管カテーテルポート、血管ステント、クランプ、塞栓デバイス、創傷ドレインチューブ、接眼レンズ、歯科インプラント、水頭症シャント、ペースメーカー及び埋め込み型除細動器、無針コネクタ、声帯(voice)プロテーゼ等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の別の可能性のある用途は、医学的及び歯科的環境で見られる表面のコーティングである。かかる表面には、使い捨てか、又は反復使用目的であるかにかかわらず、様々な機器及びデバイスの内面及び外面が含まれる。かかる表面は、医学的使用に適合した物品の全範囲を含み、この物品としては外科用メス、針、ハサミ、及び侵襲性の外科的、治療的又は診断的処置に使用される他のデバイス;血液フィルターが挙げられるが、これらに限定されない。他の例がこれらの技術分野における実践者には容易に明らかである。
【0073】
医学的環境に見られる表面には、医療の場で職員が着用する又は職員によって運ばれる医療ギアである医療設備の部品の内面及び外面も含まれる。かかる表面には、医療の場において感染性生物に対する生物学的障壁として意図される表面、例えばグローブ、エプロン及びマスクが含まれ得る。生物学的障壁に一般的に使用される材料は、ポリエチレン、ダクロン、ナイロン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ラテックス、シリコーン及びビニル等の熱可塑性材料又は高分子材料である。他の表面には、医療的処置、又は呼吸器治療(酸素、ネブライザにおける可溶化薬剤及び麻酔薬の投与を含む)に使用される医療機器、医療チューブ及び医療キャニスタを準備するのに使用される領域におけるカウンタトップ及び固定具が含まれ得る。他のかかる表面には、無菌であることを意図しない医療設備又は歯科用設備用のハンドル及びケーブルが含まれ得る。更にかかる表面には、血液又は体液又は他の有害な生体材料が共通して接する(encountered)領域で見出されるチューブ及び他の機器の非無菌の外面が含まれ得る。本発明の組成物は、単細胞生物の定着に対する長期間保護を与えるのに、及びデバイス関連の感染の発生率を低減するのに、これらの医療デバイスの表面上又はこれらの医療デバイス内で使用することができる。
【0074】
本発明の組成物を、ポリマー合成段階又はデバイス製造段階で、医療デバイスのポリマーマトリクスに直接組み込むことができる。組成物を医療デバイスポリマーに共有結合させることもできる。医療デバイスをコーティングするこれらの及び多くの他の方法は当業者には明らかである。
【0075】
本発明の教示に従って処理することができる更なる表面には、水精製、水貯蔵及び水送達に関与する物品、並びに食品加工に関与する物品の内面及び外面が含まれる。このため本発明は、その内容物の保存期間を延長するために、食品容器又は飲料容器の固体表面をコーティングすることを想定している。
【0076】
また健康に関連する表面には、栄養摂取、公衆衛生又は疾患予防の提供に関与する家庭用品の内面及び外面が含まれ得る。このため、本発明の組成物は、外面からの疾患を引き起こす微生物の除去に使用することができる。これらとして例えば、家庭用食品加工設備、育児用材料、タンポン、石鹸、洗剤、健康製品及びスキンケア製品、家庭用クリーナー並びに便器が挙げられる。
【0077】
表面は、研究用品であってもよく、顕微鏡スライドガラス、培養フード、ペトリ皿、又は当該技術分野で既知の任意の他の好適な種類の組織培養器若しくは容器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
水中の表面は任意の浸水表面を含み、これには船/ボートの船体(すなわち船又はボートのボディ又はフレーム)、潜水艇、航行援助施設(navigational aids)、スクリーン、網、構造物(constructions)、浮遊する又は据え付けられた海上プラットフォーム(例えばドック)、ブイ、信号設備、及び海水又は塩水に接する物品が含まれる。他の水中の表面は海水に曝された構造体(structures)を含み、これには杭、海洋マーカー、ケーブル及びパイプのような海中伝導装置(conveyances)、漁網、バルクヘッド、冷却塔並びに水中で動作する任意のデバイス又は構造体が含まれる。
【0079】
本発明の組成物を、不要な海洋生物汚損を制限するのに海洋コーティング剤に組み込むことができる。このため、本発明の生物汚損防止剤を、毒性材料(例えば重金属)を含有せず、かつそれらの有効性を保持するように配合することができる。本発明の生物汚損防止塗料は更に、結合剤(複数の場合もある)、顔料(複数の場合もある)、溶媒(複数の場合もある)及び添加剤(複数の場合もある)を含有していてもよい。
【0080】
使用することができる溶媒の例としては、キシレン及びトルエン等の芳香族炭化水素;ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル;N−メチルピロリドン及びN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;イソプロピルアルコール及びブチルアルコール等のアルコール;ジオキサン、THF及びジエチルエーテル等のエーテル;並びにメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びメチルイソアミルケトン等のケトンが挙げられる。溶媒を単独又はそれらを組み合わせて使用してもよい。
【0081】
使用することができる結合剤の例としては、アルキド樹脂、アクリル又はビニルエマルション、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル樹脂、無機ケイ酸系樹脂、ビニル樹脂、特に塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー及びロジンが挙げられる。使用することができる顔料の例としては、二酸化チタン、酸化第一銅、酸化鉄、タルク、アルミニウムフレーク、マイカフレーク、酸化第二鉄、チオシアン酸第一銅、酸化亜鉛、酢酸メタヒ酸第二銅、クロム酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛及びジエチルジチオカルバミン酸亜鉛が挙げられる。
【0082】
コーティング組成物に組み込むことができる添加剤の例としては、除湿剤、湿潤/分散剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、乾燥/硬化剤、損傷防止剤(anti-marring agents)、並びに安定剤及び消泡剤としてコーティング組成物に通常用いられる添加剤が挙げられる。
【0083】
生物汚損防止海洋塗料を調製する方法は、米国特許第4,678,512号、米国特許第4,286,988号、米国特許第4,675,051号、米国特許第4,865,909号、及び米国特許第5,143,545号で詳細に説明される。
【0084】
本発明の組成物は、化粧品に抗菌特性を与え、製品が傷むのを防ぐのに使用することもできる。
【0085】
組成物は更に、例えば歯磨き粉、口内洗浄液又はチューイングガムに組み込むことにより抗菌効果を口、歯及び歯肉に与えるのに使用することができる。
【0086】
本発明の医薬組成物は、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸、又は腸管外(parenteral:非経口)送達(筋肉内、皮下及び髄内注射、並びに髄腔内、直接脳腔内、静脈内、腹腔内、鼻内又は眼内注射を含む)を含む任意の好適な経路によって投与することができる。
【0087】
代替的に、例えば患者の組織域への組成物の直接注射によって全身ではなく局所的に本発明の組成物を投与してもよい。
【0088】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で既知のプロセス、例えば従来の混合、溶解、粒状化、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル封入、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造され得る。このため、本発明に従って使用される医薬組成物を、賦形剤及び助剤を含む、1つ又は複数の生理学的に許容可能な担体を使用して従来どおり配合してもよく、これにより有効成分を薬学的に使用することができる製剤に加工するのが容易になる。適切な配合物は、選ばれる投与経路によって変わる。
【0089】
注射のために、医薬組成物の有効成分を、水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液又は生理食塩緩衝液等の生理学的に相溶性の緩衝液中で配合してもよい。経粘膜投与のために、浸透しようとする障壁に適した浸透剤を配合物に使用する。かかる浸透剤は当該技術分野で一般的に知られている。
【0090】
局所投与のために、本発明の組成物を、ゲル、クリーム、洗浄液、リンス又は噴霧剤として配合してもよい。
【0091】
経口投与のために、活性化合物を当該技術分野で既知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることによって、医薬組成物を容易に配合することができる。かかる担体は、患者による経口摂取のために、医薬組成物を、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として配合することを可能にする。固形賦形剤を使用して、任意で得られる混合物を粉砕し、所望に応じて好適な助剤を添加した後、顆粒混合物を処理して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることで、経口使用のための医薬製剤を作製することができる。好適な賦形剤は、特にラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖等の充填剤;例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース及びカルボメチルセルロースナトリウム等のセルロース製剤;及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)等の生理学的に許容可能なポリマーである。所望に応じて、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩を添加してもよい。
【0092】
糖衣錠コアに好適なコーティングを与える。この目的のために、任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液及び好適な有機溶媒、又は溶媒混合物を含有し得る濃縮糖溶液を使用してもよい。染料又は顔料を、識別するため又は異なる組合せの活性のある化合物の用量を特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してもよい。経口で使用することができる医薬組成物としては、ゼラチンでできている押し込み型カプセル、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールでできている軟封入カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、及び任意で安定剤と混合して、有効成分を含有し得る。軟カプセルでは、有効成分が好適な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁し得る。更に、安定剤を添加してもよい。経口投与のための配合物は全て、選ばれる投与経路に適した投与量である必要がある。
【0093】
口腔投与のため、組成物は、従来どおり配合された錠剤又はロゼンジの形態をとってもよい。
【0094】
鼻吸入による投与のため、本発明に使用される有効成分は、好適な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン(trichlorofluoromethane)、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素の使用によって加圧パック又はネブライザからエアロゾル噴霧放出(presentation)形態で都合よく送達される。加圧エアロゾルの場合、一定量を送達するために弁を設けることによって投与量を決定することができる。例えばディスペンサに使用されるゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物の混合粉末及び好適な粉末基剤、例えばラクトース又はデンプンを含有して配合し得る。
【0095】
本明細書中に記載の医薬組成物は、例えばボーラス注射又は持続注入による腸管外投与用に配合してもよい。注射用配合物は、単位剤形、例えば任意で保存料を添加したアンプル又は複用量の容器内に与えられ得る。組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションであってもよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤等の処方剤(formulatory agents)を含有してもよい。
【0096】
腸管外投与用の医薬組成物は、水溶性形態での有効製剤の水溶液を含む。更に、有効成分の懸濁液は、適切な油性又は水性の注射懸濁液として調製され得る。
【0097】
好適な脂溶性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド若しくはリポソーム等の合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストラン等の懸濁液の粘度を増大させる物質を含有し得る。
【0098】
また任意で、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするのに好適な安定剤又は有効成分の可溶性を増大させる作用因子を含有し得る。代替的に、有効成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば滅菌性の発熱物質無含有の水溶液との構成のために粉末形態であり得る。
【0099】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物を、即時放出形態において送達することができる。他の実施形態において、本発明の組成物を、制御放出系又は持続放出系において送達することができる。制御又は持続放出医薬組成物は非制御又は非持続放出対応物によって得られた結果に対する薬剤療法の改善という共通の目標を有し得る。制御又は持続放出組成物の利点として、抗生物質及びペプチドの活性を持続させ、投与の頻度を減少させ、コンプライアンスを増大させることがある。更に、制御又は持続放出組成物は作用の開始時間又は他の特徴、例えば、抗生物質及びペプチドの血中濃度に有利に影響を与えることができるため、有害な副作用の発生を減少させることができる。
【0100】
制御又は持続放出組成物は、即時放出部分と長期放出部分とを含むことができる。即時放出部分は初めに、迅速に所望の治療効果又は予防効果が得られる或る一定量のペプチド及び/又は抗生物質を即時に放出し、一方、長期放出部分は治療効果又は予防効果のレベルを長時間にわたり維持するよう或る一定量のペプチド及び/又は抗生物質部分を徐々に及び継続して放出する。有効成分の制御又は持続放出を、pHの変化、温度の変化、酵素の濃度若しくは利用可能性、水の濃度若しくは利用可能性、又は他の生理学的状態若しくは化合物を含むがそれらに限定されない種々の条件により刺激することができる。
【0101】
制御放出剤形及び持続放出剤形を使用し、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透圧系、多層被覆、微粒子、多粒子、リポソーム、ミクロスフェア、又はそれらの組み合わせを使用して1つ又は複数の有効成分を制御又は持続放出を行い、種々の割合の所望の放出プロファイルが得ることができる。本明細書に記載のものを含む当該技術分野で既知の好適な制御又は持続放出配合物を、本開示を考慮の上、本発明の有効成分とともに使用するために容易に選択することができる。また、Goodson, "Dental Applications" (pp. 115-138) in Medical Applications of Controlled Release, Vol. 2, Applications and Evaluation, R. S. Langer and D. L. Wise編、CRC Press (1984)を参照されたい。Langer, Science 249:1527-1533 (1990)がレビューに記載している他の制御又は持続放出系を本発明において使用するため選択することができる。一実施形態において、ポンプを使用することができる(Langer, Science 249:1527-1533 (1990)、Sefton, CRC Crit. Ref Biomed. Eng. 14:201 (1987)、Buchwald他、Surgery 88:507 (1980)、及びSaudek他、N. Engl. J. Med 321:574 (1989))。別の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release (Langer and Wise編、1974)、Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance (Smolen and Ball編、1984)、Ranger and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983)、Levy他、Science 228:190 (1985)、During他、Ann. Neurol. 25:351 (1989)、及びHoward他、J. Neurosurg. 71:105 (1989)を参照のこと)。更に別の実施形態において、制御又は持続放出系を感染の標的、例えば、皮膚、肺、脊柱、脳、又は胃腸管に近接して配置することができるため、全身用量のごく一部を必要とするに過ぎない。
【0102】
錠剤又はピル形態の場合、本発明の医薬組成物をコーティングし、胃腸管における分解及び吸収を遅らせることができ、それにより、長時間にわたり持続作用がもたらされる。浸透圧により活発に活性する化合物を覆う選択的透過性膜も経口投与の組成物に好適である。これらの透過性膜のプラットフォームにおいて、カプセルを覆う周囲の液体が、活性する化合物によって吸収され、このカプセルが膨張し、開口部を通って物質又は物質の組成物が移動する。これらの送達プラットフォームは、即時放出配合物のピークを有するプロファイルに対して本質的にゼロ次送達プロファイルとなり得る。時間を遅らせる材料、例えば、グリセロールモノステアレート又はグリセロールステアレートも使用することができる。経口組成物は、標準的な賦形剤、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、及び炭酸マグネシウムを含むことができる。一実施形態において、賦形剤は医薬グレードのものである。
【0103】
本発明の医薬組成物も、例えば、ココアバター又は他のグリセリド等の従来の座薬の基剤を使用して、座薬又は停留浣腸等の直腸組成物に配合することができる。
【0104】
本発明における使用に好適な医薬組成物には、本来の目的を達成するために有効な量の有効成分を含有している組成物がある。より詳細には、「治療有効量」は、病原性感染の症状(例えば、熱)の予防、緩和、改善、又は治療対象者の生存率を延長させるために有効な有効成分(例えば、ペプチド及び抗生物質)の或る一定量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書において提供される詳細な開示の点から見ると、十分に当業者の能力の範囲内のものである。
【0105】
本発明の方法に使用される任意の調製に対して、投薬量又は治療有効量を初めにin vitro及び細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、動物モデルにおいて用量を配合し、所望の濃度又は力価を得ることができる。このような情報を使用し、ヒトにおける有用な用量を更に正確に決定することができる。
【0106】
本明細書に記載の有効成分の毒性及び治療効果を、細胞培養物又は実験動物において、in vitroの標準的な薬学的手法により決定することができる。これらのin vitro及び細胞培養アッセイ並びに動物試験から得られたデータを、ヒト使用のための投薬量の範囲の定式化に使用することができる。投薬量は、使用する剤形及び利用する投与経路に応じて変化し得る。正確な配合、投与経路、及び投薬量を、患者の状態を考慮した上で医師個人が選択することができる(例えば、Fingl, E.他(1975), "The Pharmacological Basis of Therapeutics," Ch. 1, p.l.を参照のこと)。投薬量及び投与間隔を、生物学的効果(すなわち、最小有効濃度、MEC又は最小殺菌濃度、MBC)を誘発又は抑制するのに十分な有効成分の血漿濃度又は脳内濃度が得られるように個別に調節することができる。MECは、各調製において変化するが、in vitroのデータから推定することができる。MECを得るために必要な投薬量は、個体の特徴及び投与経路に左右される。検出アッセイを使用し、血漿濃度を決定することができる。
【0107】
好適に有効な投薬量は、1日当たり患者の体重の約0.01mg/kg〜体重の約3000mg/kgの範囲であってよいが、典型的には、1日当たり患者の体重の約0.01mg/kg〜体重の約2500mg/kg又は1日当たり患者の体重の約0.01mg/kg〜体重の約1000mg/kgである。一実施形態において、効果的な投薬量は、1日当たり患者の体重の約100mg/kg以下である。別の実施形態において、効果的な投薬量は、1日当たり患者の体重の約0.01mg/kg〜体重の約100mg/kg、別の実施形態において、1日当たり患者の体重の約0.02mg/kg〜体重の約50mg/kg、及び別の実施形態において、1日当たり患者の体重の約0.025mg/kg〜体重の約20mg/kgの抗生物質又はペプチドの範囲である。
【0108】
投与は単回用量として、又は分割用量として行うことができる。一実施形態において、有効な投薬量を病態が減弱するまで約24時間毎に投与又は細菌と接触させる。別の実施形態において、有効な投薬量を病態が減弱するまで約12時間毎に投与又は細菌と接触させる。別の実施形態において、有効な投薬量を病態が減弱するまで約8時間毎に投与又は細菌と接触させる。別の実施形態において、有効な投薬量を病態が減弱するまで約6時間毎に投与又は細菌と接触させる。別の実施形態において、有効な投薬量を病態が減弱するまで約4時間毎に投与又は細菌と接触させる。本明細書に記載の有効な投薬量は、投与される抗生物質又はペプチドのそれぞれの量を指す。
【0109】
治療する病態の重症度及び応答性に応じて、投与は単回投与又は複数回の投与であってよく、治療期間は数日から数週間、又は治癒が生じ、又は疾患状態の縮小が得られるまで継続される。
【0110】
投与される組成物の量は、当然ながら、治療する対象、苦痛の重症度、投与形式、処方する医師の判断等に左右される。
【0111】
所望の場合、本発明の組成物を、有効成分を含有する1つ又は複数の単位剤形を含有することができるパック又は分注デバイス、例えば、FDA承認キットにおいて提供することができる。パックは、例えば、金属箔又はプラスチック箔、例えば、ブリスターパックを含むことができる。パック又は分注デバイスは、投与の説明書を添付することができる。パック又は分注デバイスはまた、医薬品の製造、使用、又は販売を統制する政府機関が規定した形態の通知書を添付することができ、この通知書はヒト又は獣医用に投与するのに機関が承認した組成物の形態を反映している。例えば、このような通知書には、米国食品医薬品局が承認した、処方薬又は承認製品の添付文書のラベルを含むことができる。薬学的に許容可能な担体に配合された本発明の調製物を含む組成物も、上で詳述したように、調製し、適切な容器に入れ、適応病態の治療のためのラベル付けを行うことができる。
【0112】
本発明の医薬組成物は、例えば、制御又は持続放出に適応した錠剤、カプセル、ゲルキャップ、及びカプレットに限定されない経口投与に好適な単回単位剤形を含む。
【0113】
以下の実施例を例示するが、本発明の組成物及び方法を限定するものではない。細菌感染の治療において通常直面し、かつ本開示を考慮した上で当業者に明らかな種々の条件及びパラメータの好適な変更及び適用は本発明の趣旨及び範囲内のものである。
【実施例】
【0114】
実施例1−メチシリン耐性及びメチシリン感受性S.アウレウスに対する、オキサシリン及びFDYDWYを含むペプチドの活性
スタフィロコッカス・アウレウス ATCC 43300(5×10CFU/mL)(MRSA株)を、オキサシリン単独又はgrZ14s−nvCycペプチド(10nM)(環化CSVHSFDYDWYNVC)を含むオキサシリンのいずれかの入った1.5mLのエッペンドルフチューブにおいて、撹拌(250rpm)しながら37℃にて24時間インキュベーションを行った。チューブの溶液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて10倍に連続希釈した。次いで、希釈した溶液を血液寒天プレートに播種し、37℃にて24時間インキュベーションを行った。結果は血液寒天プレートのコロニー形成単位(CFU)のカウント数を示す。
【0115】
結果を図1aに示す。図1aは、オキサシリンの細菌死滅濃度がオキサシリン単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低いことを示し、それによりgrZ14s−nvCycが抗生物質の活性を増強させることが示された。
【0116】
比較として、メチシリン感受性S.アウレウス ATCC 25923(5×10CFU/mL)の菌株をオキサシリン単独又はgrZ14s−nvCyc(10nM)を含むオキサシリンを用いて処理した。結果を図1bに示す。図1bは、grZ14s−nvCycを含むオキサシリン又はgrZ14s−nvCycを含まないオキサシリンの活性との間に有意な差がなかったことを示す。これは、本発明のペプチドの活性が、抗生物質耐性種に対する抗生物質の活性を増強させることを示している。
【0117】
同様のアッセイを7×10CFU/mLの濃度のS.アウレウス ATCC 43300を用いて行った。このアッセイの細菌濃度は高値を示す(約7×10CFU/mL)。結果を図2に示す。図2は、S.アウレウス ATCC 43300 MRSA株に対するオキサシリンの細菌死滅濃度がオキサシリン単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低いことを示す。grZ14s−nvCycを含む、細菌死滅に必要なオキサシリン濃度(6.25μg/mL)は、同じ細菌濃度(約7×10CFU/mL)のメチシリン感受性S.アウレウス ATCC 25923を死滅させるのに必要なオキサシリン濃度(12.5μg/mL)に比べ、更に低値である。この結果は、本発明のペプチドがMRSA株ATCC 43300の耐性を低下させ、感受性S.アウレウス ATCC 25923株よりもオキサシリンに対する感受性を更に増大させることを示している。
【0118】
実施例2−メチシリン耐性及びメチシリン感受性S.アウレウスに対する、オキサシリン及びFDYDWYを含むペプチドの活性
S.アウレウス ATCC 33591(MRSA株)(5×10CFU/mL)及びS.アウレウス ATCC 25923(1×10CFU/mL)のメチシリン感受性株(MSSA)を、オキサシリン単独又はgrZ14s−nvCyc(10nM)を含むオキサシリンのいずれかの入った1.5mLのエッペンドルフチューブにおいて、撹拌(250rpm)しながら、37℃にて24時間インキュベーションを行った。チューブの溶液を、PBSを用いて10倍に連続希釈した。次いで、希釈した溶液を血液寒天プレート(blood agar plate)に播種し、37℃にて24時間インキュベーションを行った。
【0119】
結果を図3に示す。図3に示されるように、MRSA及びMSSAに対するオキサシリンの細菌死滅濃度は、本発明のペプチドの存在下において約半分に減少した。従って、図3は、本発明のペプチドの活性が、抗生物質特異的及び非特異的耐性機構を低下させることにより抗生物質耐性種及び抗生物質感受性種に対する抗生物質の活性を増強させることを示している。
【0120】
S.アウレウス ATCC 33591(5×10CFU/mL)(MRSA株)を、オキサシリン単独又はgrZ14s−nvCycペプチド(10nM)を含むオキサシリンの入った1.5mLのエッペンドルフチューブにおいて、撹拌(250rpm)しながら、37℃にて24時間インキュベーションを行った。培養中の細菌が低濃度であることから、細菌が浮遊状態のまま残存し、特異的な耐性機構のみを示す。チューブの溶液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて10倍に連続希釈した。次いで、希釈した溶液を血液寒天プレートに播種し、37℃にて24時間インキュベーションを行った。
【0121】
結果を図4aに示す。図4aは、オキサシリンの細菌死滅濃度がオキサシリン単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低いことを示し、それにより、grZ14s−nvCycが抗生物質の活性を増強させることが示される。この活性により、本発明のペプチドが特異的な耐性機構を示す細菌に対して活性であることを示される。
【0122】
比較として、図4aのS.アウレウス ATCC 33591の濃度(MRSA株(5×10CFU/mL))と同様の細菌濃度のメチシリン感受性S.アウレウス ATCC 25923(1×10CFU/mL)の菌株を、オキサシリン単独又はgrZ14s−nvCyc(10nM)ペプチドを含むオキサシリンのいずれかを用いて処理した。結果を図4bに示す。図4bは、grZ14s−nvCycを含むオキサシリン又はgrZ14s−nvCycを含まないオキサシリンの活性との間に有意な差はないことを示している。これは、本発明のペプチドの活性が特異的な抗生物質耐性を低下させることにより抗生物質耐性種に対する抗生物質の活性を増強させることを示している。
【0123】
実施例3−エンテロコッカス・フェシウムの耐性種に対する、FDYDWYを含むペプチドを組み合わせたバンコマイシンの活性
エンテロコッカス・フェシウム ATCC 700221(4×10CFU/mL)(バンコマイシン、テイコプラニン及びテトラサイクリン耐性株)をバンコマイシン単独又はgrZ14s−nvCycペプチド(10nM)を含むバンコマイシンのいずれかの入った1.5mLのエッペンドルフチューブにおいて、撹拌(250rpm)しながら、37℃にて24時間インキュベーションを行った。チューブの溶液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて10倍に連続希釈した。次いで、希釈した溶液を血液寒天プレートに播種し、37℃にて24時間インキュベーションを行った。
【0124】
結果を図5に示す。図5は、バンコマイシンの細菌死滅濃度がバンコマイシン単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低い(約50%)ことを示し、それによりgrZ14s−nvCycがバンコマイシン耐性株に対する抗生物質の活性を増強することが示される。
【0125】
実施例4−エンテロコッカス・フェシウムの耐性種に対するFDYDWYを含むペプチドを組み合わせたテイコプラニンの活性
E・フェシウム ATCC 700221(2×10CFU/mL)(バンコマイシン、テイコプラニン及びテトラサイクリン耐性株)をテイコプラニン単独又はgrZ14s−nvCycペプチド(10nM)を含むテイコプラニンのいずれかとともに、撹拌(250rpm)しながら、37℃にて24時間インキュベーションした。溶液を、上に記載のように処理した。
【0126】
結果を図6に示す。図6は、テイコプラニンの細菌死滅濃度がテイコプラニン単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低い(約60%)ことを示し、それによりgrZ14s−nvCycがテイコプラニン耐性株に対する抗生物質の活性を増強することが示される。
【0127】
実施例5−クレブシエラ・ニューモニエの耐性種に対するFDYDWYを含むペプチドを組み合わせたアンピシリンの活性
クレブシエラ・ニューモニエ ATCC 700603(MDR耐性株:アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、テトラサイクリンに耐性)(3×10CFU/mL)を、アンピシリン単独又はgrZ14s−nvCycペプチド(10nM)を含むアンピシリンのいずれかとともに、撹拌(250rpm)しながら、37℃にて24時間インキュベーションした。チューブの溶液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて10倍に連続希釈した。次いで、希釈した溶液を血液寒天プレートに播種し、37℃にて24時間インキュベーションを行った。
【0128】
結果を図7に示す。図7は、非常に高濃度のアンピシリン単独であっても(3×10CFU/mL)の細菌濃度の細菌を死滅させることができなかったことを示している。しかし、アンピシリンとgrZ14s−nvCycとの組み合わせは、有意に低い濃度(約100%低い)にて細菌死滅活性を得た。この実験により、grZ14s−nvCycはアンピシリン耐性株に対する抗生物質の活性を増強させることが示される。
【0129】
同様のアッセイを2×10CFU/mLの細菌濃度が低いK.ニューモニエを用いて行った。結果を図8に示す。図8に示されるように、細菌濃度が低い場合、抗生物質のアンピシリンは、抗生物質単独を用いて細菌を死滅させている。更に、図8はまた、アンピシリンの細菌死滅濃度がアンピシリン単独に比べ、grZ14s−nvCycを含むもので100μg/mL低いことを示し、それによりgrZ14s−nvCycが特異的な耐性を示す抗生物質耐性種に対する抗生物質の活性を増強させることが示される。
【0130】
実施例6−クレブシエラ・ニューモニエの耐性種に対するFDYDWYを含むペプチドを組み合わせたセホキシチンの活性
K.ニューモニエ ATCC 700603(MDR耐性株:アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、テトラサイクリンに耐性)(2×10CFU/mL)を、セホキシチン単独又はgrZ14s−nvCycペプチド(10nM)を含むセホキシチンのいずれかとともに、撹拌(250rpm)しながら、37℃にて24時間インキュベーションした。次いで、溶液を上記の実施例に記載のように処理した。
【0131】
結果を図9に示す。図9は、セホキシチンの細菌死滅濃度がセホキシチン単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低い(80%を超えて低い)ことを示し、それによりgrZ14s−nvCycが抗生物質耐性種に対する抗生物質の活性を増強させることが示される。
【0132】
実施例7−K.ニューモニエの耐性種(低及び高濃度の細菌)に対するFDYDWYを含むペプチドを組み合わせたカルバペネムの活性
K.ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(3×10CFU/mL)(カルバペネマーゼ陽性株)(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)を、イミペネム単独又はgrZ14s−nvCycペプチド(10nM)を含むイミペネムとともに撹拌(250rpm)しながら、37℃にて24時間インキュベーションした。次いで、溶液を上記の実施例に記載のように処理した。
【0133】
結果を図10に示す。図10はイミペネムの細菌死滅濃度がイミペネム単独に比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低い(75%を超えて低い)ことを示し、それにより、grZ14s−nvCycが抗生物質耐性種に対する抗生物質の活性を増強させることが示される。細菌が低濃度であることから、細菌が浮遊状態において存在したことが示される。従って、本発明のペプチドが細菌の特異的な耐性機構に対して活性であると仮定される。
【0134】
同様に、K.ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(1×10CFU/mL)を、イミペネム単独又はgrZ14s−nvCycを含むイミペネムとともにインキュベーションした。結果を図11に示す。図11は、イミペネムの細菌死滅濃度がイミペネム単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低い(75%を超えて低い)ことを示し、それにより、grZ14s−nvCycが抗生物質耐性種に対する抗生物質の活性を増強させることが示される。アッセイの細菌が高濃度であることから、細菌は浮遊状態又はバイオフィルム状態であり得ることが示される。結果は、本発明のペプチドが高い細菌負荷時であっても抗生物質耐性種に対して活性であることを示す。
【0135】
実施例8−MRSAに対するFDYDWYを含むペプチドを組み合わせたムピロシンの活性
S.アウレウス ATCC BAA(商標)1708(MRSA株、mupA陽性)(1×10CFU/mL)を、上記の実施例に記載のようにムピロシン単独又はgrZ14s−nvCycを含むムピロシンとともにインキュベーションを行った。結果を図12に示す。図12は、細菌負荷が、ムピロシンとgrZ14s−nvCycとの組み合わせの存在下において少なくとも1桁減少することを示している。
【0136】
実施例9−FDYDWYを含むペプチドを組み合わせたタンパク質合成阻害剤の活性
E.フェシウム ATCC 700221(1×10CFU/mL)(バンコマイシン、テイコプラニン、及びテトラサイクリン耐性株)を、上記の実施例に記載のように、テトラサイクリン単独又はgrZ14s−nvCyc(10mN)を含むテトラサイクリンとともにインキュベーションした。結果を図13aに示す。図13aは、テトラサイクリンの細菌死滅濃度が抗生物質耐性種に対してテトラサイクリン単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低い(60%低い)ことを示している。同様に、E.フェシウム ATCC 700221(2×10CFU/mL)(バンコマイシン、テイコプラニン、及びテトラサイクリン耐性株)を、上記の実施例に記載のように、テトラサイクリン単独又はgrZ14s−nvCyc(10mN)を含むテトラサイクリンとともにインキュベーションした。結果を図13bに示す。図13bは、テトラサイクリンの細菌死滅濃度が抗生物質耐性種に対してテトラサイクリン単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低い(約70%低い)ことを示している。
【0137】
同様に、K.ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(1×10CFU/mL)を、上記の実施例に記載のように、シプロフロキサシン単独又はgrZ14s−nvCycを含むシプロフロキサシンとともにインキュベーションした。結果を図14に示す。図14は、シプロフロキサシンの細菌死滅濃度が抗生物質耐性種に対してシプロフロキサシン単独のものに比べ、grZ14s−nvCycを含むものでかなり低い(80%低い)ことを示している。
【0138】
同様に、K.ニューモニエ ATCC 700603(MDR耐性株:アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、テトラサイクリンに耐性)(4×10CFU/mL)を、上記の実施例に記載のように、クロラムフェニコール単独又はgrZ14s−nvCycを含むクロラムフェニコールとともにインキュベーションした。結果を図15に示す。図15は、grZ14s−nvCycを含むクロラムフェニコールがクロラムフェニコール単独では細菌を死滅させることのない濃度にて細菌を死滅させることを示している。
【0139】
同様に、K.ニューモニエ ATCC 700603(MDR耐性株:アンピシリン、アズトレオナム、セホキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、クロラムフェニコール、ピペラシリン、テトラサイクリンに耐性)(1×10CFU/mL)を、上記の実施例に記載のように、クロラムフェニコール単独又はgrZ14s−nvCycを含むクロラムフェニコールとともにインキュベーションした。結果を図16に示す。この実施例では、細菌濃度が低いことから、抗生物質単独にて細菌死滅活性を得ることができる。図16は、grZ14s−nvCycを含むクロラムフェニコールの細菌死滅濃度が抗生物質耐性種に対してクロラムフェニコール単独のものに比べ、かなり低い(20%)ことを示している。
【0140】
同様に、K.ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(1×10CFU/mL)(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)を、上記の実施例に記載のように、アミカシン単独又はgrZ14s−nvCycを含むアミカシンとともにインキュベーションした。結果を図17に示す。図17は、grZ14s−nvCycを含むクロラムフェニコールの細菌死滅濃度が抗生物質耐性種に対してクロラムフェニコール単独のものに比べ、かなり低い(75%)ことを示している。
【0141】
実施例10−FDYDWYを含むペプチドを組み合わせたレボフロキサシンの活性
K.ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(2×10CFU/mL)(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)を、上記の実施例に記載のように、レボフロキサシン単独又はgrZ14s−nvCycを含むレボフロキサシンとともにインキュベーションした。結果を図18に示す。図18は、grZ14s−nvCycを含むレボフロキサシンの細菌死滅濃度が抗生物質耐性種に対してレボフロキサシン単独のものに比べ、かなり低い(30%)ことを示している。
【0142】
実施例11−FDYDWYを含むペプチドを組み合わせたアズトレオナムの活性
K.ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(1×10CFU/mL)(カルバペネム−イミペネム及びエルタペネム、アミカシン、アズトレオナム、レボフロキサシン、及びシプロフロキサシン耐性株)を、上記の実施例に記載のように、アズトレオナム単独又はgrZ14s−nvCycを含むアズトレオナムとともにインキュベーションした。結果を図19に示す。図19は、grZ14s−nvCycを含むアズトレオナムが、アズトレオナム単独では細菌を死滅させることのない濃度(1000μg/ml)にて細菌を死滅させることを示している。
【0143】
同様に、K.ニューモニエ ATCC BAA(商標)1705(1×10CFU/mL)を、上記の実施例に記載のように、アズトレオナム単独又はgrZ14s−nvCycを含むアズトレオナムとともにインキュベーションした。この実施例では、細菌濃度が低いことから、抗生物質単独にて細菌死滅活性を得ることができる。結果を図19bに示す。図19bは、grZ14s−nvCycを含むアズトレオナムの細菌死滅濃度が抗生物質耐性菌種に対してクロラムフェニコール単独のものに比べ、かなり低い(80%)ことを示している。
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
図15
図16
図17
図18
図19a
図19b