特許第6494618号(P6494618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハーの特許一覧

特許6494618不燃性で、吸音性で、断熱性のジオポリマー発泡部材用のジオポリマー発泡調製物
<>
  • 特許6494618-不燃性で、吸音性で、断熱性のジオポリマー発泡部材用のジオポリマー発泡調製物 図000009
  • 特許6494618-不燃性で、吸音性で、断熱性のジオポリマー発泡部材用のジオポリマー発泡調製物 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494618
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】不燃性で、吸音性で、断熱性のジオポリマー発泡部材用のジオポリマー発泡調製物
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/10 20060101AFI20190325BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 24/42 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 28/26 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20190325BHJP
   C04B 38/08 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C04B38/10 B
   C04B18/14 A
   C04B18/14 Z
   C04B14/10 A
   C04B18/08 Z
   C04B16/06 A
   C04B24/12 A
   C04B14/04 A
   C04B22/06 Z
   C04B24/26 E
   C04B24/42 A
   C04B28/26
   C04B24/02
   C04B38/08 B
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-527468(P2016-527468)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公表番号】特表2016-534965(P2016-534965A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】EP2014072027
(87)【国際公開番号】WO2015062860
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年10月13日
(31)【優先権主張番号】13190998.8
(32)【優先日】2013年10月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】サルナス トゥルツィンスカス
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン メニヒ
(72)【発明者】
【氏名】マキシム プルキン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴア ヘアト
(72)【発明者】
【氏名】シェンジョン ジョウ
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/148843(WO,A2)
【文献】 特表2011−506250(JP,A)
【文献】 特開2011−219281(JP,A)
【文献】 特開2000−007465(JP,A)
【文献】 特表2003−517084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 38/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉スラグと、更にマイクロシリカ及び/又はメタカオリンを含む、少なくとも1種の無機結合材;
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ性活性剤;
なくとも1種の界面活性剤であるアルキルポリグルコシド
気相並びに

を含む、ジオポリマー発泡調製物。
【請求項2】
前記アルカリ性活性剤は、式MOHのアルカリ金属水酸化物及び式m SiO2・n M2Oのアルカリ金属ケイ酸塩から選択され、前記式中、Mは、アルカリ金属であり、m:nのモル比は、≦4.0であることを特徴とする、請求項に記載の調製物。
【請求項3】
前記アルカリ性活性剤は、アルカリ金属水酸化物とアルカリ金属ケイ酸塩との混合物を含むことを特徴とする、請求項に記載の調製物。
【請求項4】
前記調製物は、
高炉スラグ3〜60質量%
マイクロシリカ及び/又はメタカオリン3〜70質量%
フライアッシュ0〜50質量%、
アルカリ性活性剤(固形分として計算)1〜55質量%、
水(全体量)10〜60質量%、
並びに界面活性剤及び気相を含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の調製物。
【請求項5】
アルキルポリグルコシドは、式H−(C6105m−O−R1を示し、前記式中、(C6105)は、グルコース単位を表し、かつR1は、C8〜C12−アルキル基を表し、m=1〜5であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の調製物。
【請求項6】
前記気相は、空気、窒素、希ガス、炭化水素並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の調製物。
【請求項7】
前記調製物は、20〜90体積%が気相からなることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の調製物。
【請求項8】
前記調製物は、水10〜60質量%を含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の調製物。
【請求項9】
前記調製物は、更に、セメントを最大20質量%含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の調製物。
【請求項10】
前記調製物は、更に、気泡を安定化するため、収縮を抑制するため、柔軟化するため、疎水化するため、分散するための少なくとも1種の添加剤、繊維及び充填剤並びにこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の調製物。
【請求項11】
前記気泡を安定化するための添加剤は、熱分解ケイ酸、タンパク質、レオロジー改質剤、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の調製物。
【請求項12】
前記収縮を抑制するための添加剤は、アミン、アルカノールアミン、ベタイン(類)、グリコール、ポリオール、アルミノケイ酸塩中空球、ガラス中空球、発泡ガラス及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の調製物。
【請求項13】
前記柔軟化するための添加剤は、再分散可能なポリマー粉末、ポリイソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー、エポキシ樹脂、エポキシ化合物及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の調製物。
【請求項14】
前記疎水化するための添加剤は、トリグリセリド、パラフィン、ポリシロキサン、ヒドロゲンシラン、アルコキシシラン、ナトリウムメチルシリコナート、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の調製物。
【請求項15】
前記分散するための添加剤は、櫛形ポリマーから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の調製物。
【請求項16】
前記繊維は、鉱物繊維、ガラス繊維、炭素繊維、変性された有機繊維、セルロース繊維、リグノセルロース繊維、金属繊維及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の調製物。
【請求項17】
前記充填剤は、石英砂、炭酸カルシウム、岩石粉、顔、金属塩及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の調製物。
【請求項18】
全ての構成成分が一つの成分として一緒に存在するか、又は固体構成成分は第1の固体成分中に準備されかつ水は第2の液体成分中に準備されることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の調製物。
【請求項19】
発泡を、空気の機械的導入によって実施することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の調製物の製造方法。
【請求項20】
前記発泡を、ステータ−ロータ法によって、振動法によって又は機械的攪拌によって実施することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
不燃性で、吸音性で、断熱性のジオポリマー発泡部材を製造するための、請求項1から18までのいずれか1項に記載のジオポリマー発泡調製物の使用。
【請求項22】
請求項1から18までのいずれか1項に記載のジオポリマー発泡調製物を含む、不燃性で、吸音性で、断熱性のジオポリマー発泡部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー発泡調製物、ジオポリマー発泡調製物の製造方法、不燃性で、吸音性で、断熱性のジオポリマー発泡部材を製造するためのその調製物の使用、並びに上述のジオポリマー発泡部材自体に関する。
【0002】
室内の音響学的環境は、建築学的条件に著しく依存する。この場合、室内の音響学的印象を決定する数値は、程度に差はあるが対応する室内設計に著しく影響される。単なる騒音の低減の他に、室内の音響学的特性をその定められた目的に適用することが、室内音響学の本質的な目標である。外界に対して、室内の音場は拡散的である、というのもこの音場は直接の音波と反射した音波とから生じるためである。音場の調整は音響出力の相応する低減により行うことができる。この場合、適切な吸収現象及び反射現象を可能にする工業的吸音材を使用する。
【0003】
基本的に、工業的吸収材は、その作動様式に依存して2つのグループ、つまり共鳴器及び多孔質吸収材に分けることができる。共鳴器の作用様式は、全く一般的に、特徴的な吸音極大を有する音場質量系である。このような吸音材の例は、プレート型共鳴器、ヘルムホルツ型共鳴器、又は穴あき型吸収材である。
【0004】
それに対して、多孔質吸収材での音響エネルギーの吸収は、第一に、孔壁での摩擦により行われ、この孔壁で音響エネルギーは熱エネルギーに変換される。このために、十分な多孔率を示す連続気泡型の構造が必要である。散逸により最初に生じる吸音に基づいて、多孔質吸音材は、共鳴器と比較して明らかに異なる吸音スペクトルを有する。この場合、周波数に依存する吸音率は、理想的な場合に、連続的に周波数が高まると共にS字型に上昇し、漸近的に最大値に近づく。多孔質吸収材は、様々に構築することができる。この場合、材料バリエーションは極めて多様である。
【0005】
発泡製品は、一般に二相系であり、ここでは一方の相は気相であり、他方の相は固相又は液相である。この場合、気相は微細な気泡からなり、この気泡は固体又は液体の気泡壁により区切られている。この気泡壁は、相互に結節点を介して結合し、この場合に、骨格を形成する。
【0006】
吸音性の特性を示す発泡体は、少なくとも連続気泡型である。ここで、区分壁の間の薄い壁が少なくとも部分的に破壊され、この気泡は相互に結合されている。それにより、この材料は多孔質吸収材として機能する。連続気泡型の発泡体中の気泡壁の材料特性は、極めて多様である。この発泡体は金属から無機材料を経て有機ポリマーまで達し、この有機ポリマーは工業的使用において今日では遙かに大きな割合を占め、かつ一般に発泡材といわれる。有機ポリマー発泡体は、その硬度に依存して、軟質発泡体と硬質発泡体に分けられる。この場合、気泡形成は、たいていは化学反応によってその場で生じる噴射ガスによるか、又は有機マトリックス中に溶解していてかつ低温で沸騰するか又は分解して気体生成物になる化合物によって行われる。その他に、発泡体は、気体の機械的混入により、相分離下の溶液中での重合により、又は硬化後に溶出される充填剤の使用によって製造することもできる。
【0007】
連続気泡型PUR発泡体は、文献中にたびたび記載されている。この発泡体は、通常ではイソシアナート含有化合物とポリオールとから製造される。発泡体形成のために、通常では、低い沸点によって物理的に作用する噴射ガスが使用される。物理的に作用する噴射ガスと、発泡時のイソシアナート基と水との化学反応によって生じる二酸化炭素との適切な噴射ガスの組み合わせもよく知られている。水とイソシアナートとの反応の場合に、ポリオールとの反応とは反対に二酸化炭素の他に、気泡壁を形成するために寄与する尿素基が生じる。別の選択肢は、メラミン発泡体である。
【0008】
有機ポリマー発泡体の決定的な欠点は、その可燃性であり、若しくは他の表現では、限定的な温度安定性にある。「難燃性」に分類される有機ポリマー発泡体でさえも、燃焼時に有毒ガスを放出しかつ滴ることがある。その他に、この有機ポリマー発泡体は、その製造及び材料組成に応じて、内部空間に有害な臭気、例えばホルムアルデヒドを放出することがある。従って、不燃性の無機発泡体の需要が生じる。
【0009】
DE 102004006563 A1には、次の工程:
a) 少なくとも1種の無機の石材形成する反応成分と、この少なくとも1種の無機の石材形成する反応成分の硬化反応をアルカリ性領域で引き起こす少なくとも1種の水含有硬化剤と、少なくとも1種の発泡剤、少なくとも1種の有機ケイ素化合物及び少なくとも1種の界面活性剤とを混合する工程、並びに
b) この混合物を少なくとも部分的に硬化させる工程
を有する無機有機ハイブリッド発泡体の製造方法が記載されている。ただし、ここでは純粋に無機発泡体は形成されない。
【0010】
DE 4301749 A1には、多孔質材料からなる少なくとも1種の吸音性成形体を備えた、内燃機関からの排気ガスを通すためのマフラーが記載されている。より簡単な製造でできる限り有効な遮音を達成するために、この材料はジオポリマーを基礎として形成されることが提案されている。ただし、ここでは、ジオポリマーの材料組成は詳細に説明されていない。
【0011】
WO 2011/106815 A1は、水ガラスと、少なくとも1種のケイ酸アルミニウムと、少なくとも1種の水酸化物と、並びに、SiO2及びAl23を含む群からなる少なくとも1種の酸化物系成分とを含むか又はこれらからなる防火発泡鉱物を製造するための調製物において、この水ガラスを10質量部〜50質量部の範囲から選択される割合で含み、このケイ酸アルミニウムを、Al23割合が8質量部〜55質量部であるような割合で含み、この水酸化物を、OH割合が0.5質量部〜4質量部であるような割合で含み、かつ酸化物系成分を5質量部〜55質量部の割合で含むことを特徴とする調製物、並びに発泡鉱物、及び発泡鉱物の製造方法を記載している。
【0012】
ここでは、ケイ酸アルミニウムとして、好ましくはアルカリ性に活性化可能なケイ酸アルミニウム、特に火山性ケイ酸アルミニウム、好ましくは玄武岩、ピッチストーン、黒曜石、フォノライト、及び/又はメタカオリンが提案され;酸化物系成分として、好ましくはSiO2又はAl23が提案されている。確かに、WO 2011/106815 A1には実施例の記載はないが、この成分によって硬化したジオポリマー発泡調製物の不十分な初期強度及び最終強度を達成できるだけであることが見出された。従って、十分な初期強度及び最終強度を有する不燃性の無機発泡体の需要が生じる。
【0013】
本発明の基礎となる課題は、つまり、冒頭に述べた先行技術の欠点を少なくとも部分的に克服することにある。特に、不燃性無機発泡体を提供することが好ましい。この発泡体は、多孔質吸音材として使用可能であるのが好ましい。その他に、この発泡体は、実際の取り扱いを保証するために、十分な初期強度及び最終強度を示すことが好ましい。
【0014】
この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。従属請求項は、好ましい実施態様に関する。
【0015】
課せられた課題設定が完全に解決されたことは別として、本発明によるジオポリマー発泡調製物は、簡単にかつ低コストで製造可能であり、かつ硬化した形で良好な断熱特性を示すという利点を有する。
【0016】
本発明の第1の主題は、潜在水硬性結合材、ポゾラン系結合材、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機結合材;アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ性活性剤;アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤;気相並びに水を含むジオポリマー発泡調製物に関する。
【0017】
本発明の目的のために、「ジオポリマー発泡調製物」は、この調製物によって、ジポリマー発泡体の準備のために必要な全ての成分、つまり無機結合材、アルカリ性活性剤、界面活性剤、水及び気相が存在することを意味するべきである。これらの成分は、プレミックスされているが、いわゆる「キットオブパーツ(Kit of Parts)」として互いに個別に存在していてもよい。後に詳しく説明されているように、水及びアルカリ性活性剤を他の成分とは分けて扱うか、又はアルカリ性活性剤を乾燥した形で他の成分と一緒に存在させることができるので、更に水を添加して発泡させる必要があるだけである。もちろん、ジオポリマー発泡調製物は、既に発泡した形で存在していてもよい。
【0018】
「気相」とは、本発明の場合に、粉末成分中に存在するガスであってもよい。しかしながらこのガス量はしばしば十分でない。従って、これは、適切な形で準備されたガス、例えば、ガスボンベ、圧縮ガス、圧縮空気などの形であってもよい。アルカリ性の水性媒体中での反応によって、例えばMg、Al、Znのような金属から遊離される水素ガス、アルカリ中でH22又はペルオキシドから生じる酸素ガス、不安定な窒素含有化合物から生じる窒素ガス、又は(場合により可溶性又は反応性の)中空球の形のガスでさえ、本発明の目的のために気相の概念に当てはまる。従って、「気相」の概念は、「気相を含む又は放出する成分」と同義であると解釈することができる。ジオポリマー発泡調製物が既に発泡した形で存在する場合、気相はもちろん上述で説明したように、発泡マトリックス中に気泡が存在することを意味する。従って、硬化した「ジオポリマー発泡部材」の場合に気泡により空になった領域は、空孔ともいわれる。
【0019】
「含む」の概念は、本発明の意味範囲で、「からなる」のより狭い概念を内包するが、その狭い概念の中にとどまらない。更に、具体的な場合に、本発明による調製物の、挙げられた及び挙げられていない成分の全てのパーセンテージの合計は、それぞれ100%であるべきである。
【0020】
水性アルカリ性媒体中で硬化するAl23との関連で、SiO2を基礎とする反応性の非水溶性化合物を基礎とする無機結合材系は一般に公知である。このような結合材系は、特に「ジオポリマー」といわれ、例えばUS 4,349,386、WO 85/03699及びUS 4,472,199に記載されている。反応性酸化物又は酸化物混合物として、ここでは、特にマイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、活性粘土、ポゾラン又はこれらの混合物を使用することができる。結合材を活性化するためのアルカリ性媒体は、通常では、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルミン酸塩及び/又はアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液、例えば可溶性の水ガラスからなる。ポルトランドセメントと比べて、ジオポリマーは低コストであり、より耐久性でありかつ、有利なCO2排出結果を示す。「発泡体」の概念について、明細書の導入部を参照する。
【0021】
純粋なジオポリマーは、上述の酸化物の使用により一般に低いカルシウム含有率を示す。本出願人のUS 8,460,459 B2には、12〜25質量%のCaOを含みかつ化学的に耐久性の建築化学製品の製造を可能にする無機結合材系が記載されている。(ただし、そこには、ジオポリマー発泡調製物又はジオポリマー発泡部材に関する示唆は存在しないか又は導き出されない)。
【0022】
本発明の意味範囲で、「潜在水硬性結合材」とは、好ましくは、(CaO+MgO):SiO2のモル比が0.8〜2.5、特に好ましくは1.0〜2.0にある結合材であると解釈される。一般に、上述の潜在水硬性結合材は、工業スラグ及び合成スラグ、特に高炉スラグ、電熱リンスラグ、製鋼スラグ、及びこれらの混合物、並びに非晶質ケイ酸、好ましくは沈降ケイ酸、熱分解ケイ酸及びマイクロシリカ、ガラス粉、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、好ましくは褐炭フライアッシュ及び火山灰、天然ポゾラン、例えば凝灰岩、火山土及び火山灰、天然ゼオライト及び合成ゼオライト、並びにこれらの混合物からなる「ポゾラン系結合材」から選択することができる。
【0023】
このスラグは、工業スラグ、つまり工業プロセスからの廃棄生成物でも、合成により調整されたスラグでもあることができる。後者のスラグが好ましい、というのも工業スラグは、常に同じ量及び品質で供給できないためである。
【0024】
高炉スラグ(「blast furnace slag」、BFS)は、高炉プロセスの廃棄生成物である。高炉水砕スラグ(「granulated blast furnace slag」、GBFS)は、顆粒化された高炉スラグであり、高炉スラグ微粉末(「ground granulated blast furnace slag」、GGBFS)は微粉化された高炉水砕スラグである。この高炉スラグ微粉末は、その由来及び処理形式に応じてその粉砕微粉度及び粒度分布が変化し、ここでこの粉砕微粉度は、反応性に影響を及ぼす。この粉砕微粉度についての特性値として、いわゆるブレーン値を参照し、このブレーン値は典型的に200〜1000、好ましくは300〜500m2kg-1のオーダーにある。粉砕がより微細になると、反応性もより高くなる。
【0025】
本発明の意味範囲で、「高炉スラグ」には、挙げられた全ての処理段階、粉砕段階及び品質段階(つまり、BFS、GBFS及びGGBFS)が含まれるべきである。高炉スラグは、一般にCaO 30〜45質量%、MgO約4〜17質量%、SiO2約30〜45質量%及びAl23約5〜15質量%を有し、典型的にはCaO約40質量%、MgO約10質量%、SiO2約35質量%及びAl23約12質量%を有する。
【0026】
電熱リンスラグは、電熱式のリン製造の廃棄生成物である。この電熱リンスラグは、高炉スラグよりも反応性が低く、かつCaO約45〜50質量%、MgO約0.5〜3質量%、SiO2約38〜43質量%、Al23約2〜5質量%及びFe23約0.2〜3質量%並びにフッ化物及びリン酸塩を含む。製鋼スラグ(「steel slag」)は、著しく変化する組成を有する、多様な製鋼法の廃棄生成物である。
【0027】
非晶質ケイ酸は、好ましくはX線非晶質のケイ酸、つまり粉末回折法で結晶化度を示さないケイ酸である。本発明による非晶質ケイ酸は、好ましくは、SiO2を少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%含む。沈降ケイ酸は、大規模工業的に、水ガラスから沈降法によって得られる。沈降ケイ酸は、製造方法に応じて、シリカゲルともいわれる。
【0028】
熱分解ケイ酸は、酸水素炎中でのクロロシラン、例えば四塩化ケイ素の反応によって生じる。熱分解ケイ酸は、5〜50nmの粒径及び50〜600m2-1の比表面積の非晶質SiO2粉末である。
【0029】
マイクロシリカは、特にシリコン製造又はフェロシリコン製造の副生成物であり、同様に大部分が非晶質SiO2粉末から生じる。この粒子は、0.1μmのオーダーの直径を示す。この比表面積は、15〜30m2-1のオーダーである。
【0030】
それに対して、市販の石英砂は結晶質であり、比較的大きな粒子及び比較的小さな比表面積を示す。この石英砂は、本発明の場合、不活性な充填物として利用される。
【0031】
フライアッシュは、特に発電所で炭の燃焼の際に生じる。クラスCのフライアッシュ(褐炭フライアッシュ)は、WO 08/012438によると、CaOを約10質量%含み、クラスFのフライアッシュ(石炭フライアッシュ)はCaOを8質量%未満、好ましくは4質量%未満、典型的に約2質量%含む。
【0032】
メタカオリンは、カオリンの脱水の際に生じる。カオリンは100〜200℃で物理的に結合した水を放出し、500〜800℃で、格子構造の崩壊下及びメタカオリンの形成下に脱ヒドロキシルを引き起こす(Al2Si27)。従って、純粋なメタカオリンは、SiO2約54質量%及びAl23約46%を含む。
【0033】
アルミノケイ酸塩は、本発明の範囲内で、水性アルカリ性媒体中で硬化する、Al23との関連でSiO2を基礎とする上述の反応性化合物であると解釈される。この場合、ケイ素とアルミニウムとは、もちろん無条件に酸化物の形で存在するものではなく、例えばこれには、Al2Si27の場合が当てはまる。しかしながら、アルミノケイ酸塩の定量的化学分析の意味範囲で、ケイ素の割合及びアルミニウムの割合は酸化物の形で(つまり「SiO2」及び「Al23」として)表すことが通常である。
【0034】
適切なジオポリマー原料の概要は、例えばCaijun Shi, Pavel V. Krivenko, Deila Roy著, Alkali-Activated Cements and Concretes, Taylor & Francis, London & New York, 2006, S. 6-63に見られる。
【0035】
しかしながら、本発明によるジオポリマー発泡調製物のために特に適しているのは、高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ及びこれらの混合物からなる群から選択される無機結合材である。メタカオリンは、特に良好な発泡結果を生じさせ、ここでは、同じ体積を達成するまで、高炉水砕スラグ及びマイクロシリカを含む調製物の場合よりも短時間を必要とすることにより、加工性、塗布性及び発泡プロセスを容易にするが、高炉スラグは、特にマイクロシリカと組み合わせた場合に、得られるジオポリマー発泡部材の高い早期強度及び最終強度の利点がある。
【0036】
従って、本発明による調製物の好ましい実施態様は、無機結合材がメタカオリンを含むことに基づく。本発明による調製物の他の好ましい実施態様は、無機結合材が高炉スラグを含むことに基づく。
【0037】
本発明による調製物の特に好ましい実施態様は、無機結合材が、高炉スラグと、更にマイクロシリカ及び/又はメタカオリンを含むことに基づく。換言すると、潜在水硬性結合材は、高炉スラグ(全ての多様な処理段階、粉砕段階及び品質段階のもの)であり、ポゾラン系結合材はマイクロシリカ、メタカオリン及びそれらの混合物から選択される。無機結合材が、高炉スラグと、付加的にマイクロシリカ及び/又はメタカオリンからなるのが更に特に好ましい。
【0038】
好ましくは、アルカリ性活性剤が使用され、このアルカリ性活性剤は、式MOHのアルカリ金属水酸化物、及び式m SiO2・n M2Oのアルカリ金属ケイ酸塩(ここで、Mはアルカリ金属であり、好ましくはLi、Na、K及びこれらの混合物であり、m:nのモル比は、≦0.4、好ましくは≦3.0、更に好ましくは≦2.0、特に≦1.70、特に好ましくは≦1.20である)から選択さる。
【0039】
アルカリ金属ケイ酸塩は、好ましくは水ガラス、特に好ましくは水性水ガラス、殊にナトリウム水ガラス又はカリウム水ガラスである。しかしながら、リチウム水ガラス又はアンモニウム水ガラス、並びに記載された水ガラスの混合物を使用することもできる。
【0040】
上述のm:nの比率(「係数」ともいう)を好ましくは越えることは望ましくない、そうでないとこれらの成分の完全な反応が期待できないためである。例えば約0.2のような極めて低い係数を適用することもできる。比較的高い係数を有する水ガラスは、使用の前に適切な水性アルカリ金属水酸化物によって本発明による範囲の係数に調節するのが好ましい。
【0041】
カリウム水ガラスは、著しく吸湿性であるために、好ましい係数範囲で主に水溶液として市販されていて、ナトリウム水ガラスは、好ましい係数範囲で固体としても市販されている。水ガラス水溶液の固形分は、一般に20質量%〜60質量%、好ましくは30質量%〜50質量%である。
【0042】
水ガラスは、工業的に、石英砂を相応するアルカリ金属炭酸塩共に溶融することにより製造することができる。しかしながら、この水ガラスは、反応性ケイ酸を相応する水性アルカリ金属水酸化物と混合することにより容易に得ることもできる。従って、本発明の場合には、アルカリ金属ケイ酸塩の少なくとも一部が、反応性ケイ酸と相応するアルカリ金属水酸化物との混合物に置き換えられていてもよい。
【0043】
この理由から、本発明の好ましい実施態様は、アルカリ性活性剤が、アルカリ金属水酸化物とアルカリ金属ケイ酸塩との混合物を含むことにある。
【0044】
本発明の場合に、アルカリ性活性剤は、本発明によるジオポリマー発泡調製物を基準として、好ましくは1〜55質量%の量で、特に20〜50質量%の量で含まれ、この場合、ここでは固形分を意味する。
【0045】
冒頭に述べた界面活性剤は、本発明によるジオポリマー発泡調製物の必須の成分である。界面活性剤と水とが同時に存在する場合にだけ、このジオポリマー発泡調製物中で気相が小気泡の形で安定化することができ、これは、硬化したジオポリマー発泡体中で又は更に後記するジオポリマー発泡部材中で、好ましい連続気泡型の細孔構造の要因である。
【0046】
高アルカリ性の、しばしば水ガラス及び原則として潜在水硬性結合材及びポゾラン系結合材を含むジオポリマー発泡調製物中では、全ての界面活性剤が同様に良好に作用する訳ではない。非イオン性界面活性剤、好ましくは、アルキルポリグルコシドは、気相、ひいては発泡体を安定化するために最も適していることが見出された。
【0047】
アルキルポリグルコシドは、一般に、式H−(C6105m−O−R1を示し、ここで、(C6105)は、グルコース単位を表し、R1は、C6〜C22−アルキル基、好ましくはC8〜C16−アルキル基、特にC8〜C12−アルキル基を表し、m=1〜5である。
【0048】
界面活性剤の一部、好ましくは30質量%未満は、けん化したガムロジン及びトールロジンに置き換えられていてもよい。例えば、この場合、BASF SE社のVinapor(登録商標)MTZ/K50を使用でき、これは、気孔形成材として通常使用される粉末状の、噴霧乾燥された変性及びけん化したガムロジン及びトールロジンである。
【0049】
本発明によるジオポリマー発泡調製物を基準とした界面活性剤の割合は、好ましくは0.1〜2.5質量%、特に0.5〜1.5質量%であることができる。
【0050】
上述の気相は、好ましくは、空気、窒素、希ガス、炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選択される。この気相は、化学的プロセス(例えばH22、ペルオキシド又は窒素含有化合物の分解)によって、例えば下記に説明されるように機械的発泡によって調製物中に導入することができる。
【0051】
本発明の好ましい実施態様は、気相が、ジオポリマー発泡調製物の20〜90体積%、特に50〜80体積%であることを表す。
【0052】
本発明の調製物は、更に、好ましくは水を10〜60質量%、好ましくは25〜50質量%含むことを特徴とする。
【0053】
他の表現では、水対結合材の質量比(w/b値)は、0.11〜1.5、特に0.33〜1.0であり、ここで、アルカリ性活性剤の固形分は結合材とみなし、アルカリ性活性剤の水含分は水と見なさなければならない。
【0054】
全体として、本発明によるジオポリマー発泡調製物は、
高炉スラグ3〜60質量%、好ましくは5〜50質量%、
マイクロシリカ及び/又はメタカオリン3〜70質量%、好ましくは5〜50質量%、
フライアッシュ0〜50質量%、
アルカリ性活性剤(固形分として計算)1〜55質量%、
水(全体量)10〜60質量%、
並びに界面活性剤、気相及び場合により他の添加剤を含むことができる。
【0055】
「全体量」の表現は、アルカリ性活性剤が同様に水を含むことができるという事実を考慮している。しかしながら、この水は、水10〜60質量%に含まれる。
【0056】
好ましくは、本発明によるジオポリマー発泡調製物は、
無機結合材20〜75質量%、
アルカリ性活性剤(固形分として計算)3〜50質量%、
水(全体量)10〜50質量%、
並びに界面活性剤、気相及び場合により他の添加剤を含むことができる。
【0057】
特に好ましい実施態様の場合に、本発明によるジオポリマー発泡調製物は、
無機結合材20〜50質量%、
アルカリ性活性剤(固形分として計算)5〜25質量%、
水(全体量)10〜40質量%、
並びに界面活性剤、気相及び場合により他の添加剤を含むことができる。
【0058】
本発明によるジオポリマー発泡調製物中で、ケイ素原子対アルミニウム原子の比率は、10:1〜1:1であるのが好ましく、ここで、6:1〜1.5:1、特に1.8:1〜2.2:1並びに4.7:1〜5.3:1の比率が好ましい。
【0059】
本発明によるジオポリマー発泡調製物の固化挙動又は硬化時間は、セメントの添加により好ましい影響を及ぼすことができる。ここでは、特にポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント並びにこれらの混合物が適している。ここでは、アルミン酸カルシウムセメントが特に好ましい。複合材料セメントも使用可能である。
【0060】
ポルトランドセメントは、CaO+MgO約70質量%、SiO2約20質量%及びAl23+Fe23約10質量%を含有する。アルミン酸カルシウムセメントは、CaO約20〜40質量%、SiO2約5質量%まで、Al23約40〜80質量%及びFe23約20質量%までを含有する。これらのセメントは、先行技術において周知である(DIN EN 197を参照)。
【0061】
好ましくは、ジオポリマー発泡調製物中のセメントの割合は、少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも2質量%、特に少なくとも3質量%である。この結合時間は、更にCa(OH)2の添加によって制御することができる。Ca(OH)2の割合は、本発明によるジオポリマー発泡調製物を基準として、1〜15質量%、特に3〜10質量%であることができる。最大で、本発明による調製物中のセメント割合は、高くても20質量%、好ましくは高くても10質量%、殊に高くても5質量%であるのが好ましい。冒頭に述べたように、本発明による調製物の挙げられた又は挙げられていない成分の全てのパーセンテージの合計は、それぞれ100%でなければならない。
【0062】
本発明によるジオポリマー発泡調製物中で、一連の他の添加剤が存在してもよい。この調製物は、付加的に、気泡を安定化するため、収縮を抑制するため、柔軟化のため、疎水化、及び分散のための少なくとも1種の添加剤、繊維及び充填剤、並びにこれらの混合物を含むことができる。
【0063】
気泡を安定化するために、熱分解ケイ酸、タンパク質、レオロジー改質剤、例えばデンプン(特にキサンタンゴム、ジウタンゴム)、化工デンプン、スルホ基及び/又は四級化アンモニウム基を有するポリ(メタ)アクリラート及びポリ(メタ)アクリルアミド、並びにこれらの混合物からなる群からの添加剤を使用することができる。
【0064】
スルホ基及び/又は四級化アンモニウム基を有するポリ(メタ)アクリラート及びポリ(メタ)アクリルアミドは、例えば本出願人の特許明細書WO 2008/151878 A1、WO 2007/017286 A1、WO 2005/090424 A1及びWO 02/10229 A1に記載されている。この種の(コ)ポリマーは、超吸収性ポリマー(SAP)又は塩安定性の超吸収性ポリマー(「salt insensitive superabsorbing polymers」、SISA)ともいわれる。ここでは、一般に、レオロジー改質剤、増粘剤又は保水剤である。ここで観察されたジオポリマー発泡調製物中の高いアルカリ度及びそれと関連する高い塩負荷の理由から、ここではSISAは、増粘剤として特に良好に適している。
【0065】
意外にも、この発泡体の加工性は、超吸収体の添加によって改善できることが見出された。塩安定性の超吸収性ポリマーの添加により、剛性を明らかに増大することができ、かつケイ酸塩発泡体の液化挙動を抑制することができる。
【0066】
収縮を抑制するために、アミン、ラクタム、アルカノールアミン、ベタイン(類)、グリコール、ポリオール、アルミノケイ酸塩中空球、ガラス中空球、発泡ガラス並びにこれらの混合物からなる群からの添加剤を使用することができる。アルミノケイ酸塩中空球は、この関連で、収縮を抑制するための添加剤とも、ポゾラン系結合材とも見なすことができる。最大100μmの粒子サイズを有するアルミノケイ酸塩中空球が好ましい。好ましくは、本発明によるジオポリマー発泡調製物中のマイクロ中空球の割合は、最大で30質量%である。
【0067】
柔軟化のためには、再分散性ポリマー粉末、ポリイソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー、エポキシ樹脂、エポキシ化合物、(塗膜形成性)アクリラート分散体、並びにこれらの混合物からなる群からの添加剤を使用することができる。
【0068】
好ましい実施態様の場合に、本発明によるジオポリマー発泡調製物は、エポキシ樹脂を含む。それにより、機械特性を、特に硬化した発泡体の亀裂形成、曲げ強さ及び手触りに関して改善することができる。本発明により硬化したジオポリマー発泡体は、特に、不燃性でありかつ更にいくつかの他の発泡体、例えばメラミン樹脂発泡体と比較してホルムアルデヒドを遊離しえないという主要な利点を有する。このジオポリマー発泡調製物中のエポキシ樹脂の割合は、特に0.5〜10質量%であることができる。硬化した発泡体の要求された不燃性に関して、1〜5質量%の割合が特に好ましいことが判明した。
【0069】
他の好ましい実施態様の場合に、本発明によるジオポリマー発泡調製物は、水に乳化可能なエポキシ化合物及び/又は少なくとも1種の自己乳化性エポキシ樹脂エマルションを含む。既に記載された利点に加えて、このエポキシ樹脂は、硬化するジオポリマー発泡体に、早期機械安定性を付与するので、得られたジオポリマー発泡体は、早期に型から取り出すことができる。更に、この硬化は、エポキシド添加の場合に既に+5℃で行うことができる。このエポキシ化合物は、樹脂及び硬化剤又は樹脂、硬化剤及び反応性希釈剤の組み合わせを含むことができる。
【0070】
エポキシドは、好ましくはビスフェノールA/F混合物であり、硬化剤は、好ましくはポリアミノ付加物である。反応性希釈剤として、好ましくはアルコキシル化された脂肪族アルコールのポリグリシドエーテルを使用する。
【0071】
他の好ましい実施態様の場合に、エポキシ樹脂は、反応性希釈剤と、60:40〜40:60の質量部の比率で混合され、更に、好ましくはこの混合物に140〜160質量部の硬化剤を添加する。エポキシ樹脂は、特に自己分散性のエポキシ樹脂エマルションを使用することができ、このエマルションは好ましくは0.9:1〜1.1:1の化学量論比でポリアミノアミド付加物と共に使用される。市場で入手可能な自己分散性エポキシ樹脂エマルションとして、例えば、Waterpoxy(登録商標)1422、Waterpoxy(登録商標)1439、Waterpoxy(登録商標)1466及び硬化剤Waterpoxy(登録商標)751、Waterpoxy(登録商標)760、Waterpoxy(登録商標)801が挙げられる。Waterpoxy(登録商標)1422とWaterpoxy(登録商標)760との混合物の使用が好ましい。前記エポキシドエマルションは、BASF SEの製品である。
【0072】
疎水化のために、トリグリセリド、パラフィン、ポリシロキサン、ヒドロゲンシラン、アルコキシシラン、ナトリウムメチルシリコナート、並びのこれらの混合物からなる群からなる添加剤を使用することができる。ポリシロキサンは、一般に、シリコーン油の形で使用される。好ましくは、300〜1000mPa・sの粘度を示すシリコーン油を使用することができる。市場で入手可能な適切な製品は、例えば、Wacker Chemie AG社のシリコーン油AK 500である。
【0073】
分散のために、ナフタレンスルホナート、リグニンスルホナート、櫛形ポリマー、例えばポリカルボキシラートエーテル、櫛状のポリ芳香族エーテル、櫛状のカチオン性コポリマー及びこれらの混合物からなる群からなる添加剤を使用することができる。この種の分散剤は、先行技術において周知である。ケイ酸塩含有のジオポリマー系の液化のために特に良好に適している櫛状のポリ芳香族エーテルは、例えば本出願人のWO 2013/152963 A1に記載されている。高アルカリ性ジオポリマー系の液化のために特に良好に適している櫛状のカチオン性コポリマーは、本出願人の優先権の基礎となる特許出願の2013年9月27日出願のEP 13186438に記載されている。
【0074】
冒頭に述べた繊維は、鉱物繊維(例えばバサルト繊維)、ガラス繊維、炭素繊維、場合により変性された有機繊維(PE、PP、PVA、PAN、ポリエステル、ポリアミド等)、セルロース繊維、リグノセルロース繊維、金属繊維(例えば鉄、鋼など)、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。これらの繊維は、好ましくは3質量%までの割合で存在することができる。これにより、硬化した発泡体の機械的安定性を改善することができる。これらの繊維は、好ましくは最大120mm、特に最大6mmの長さを示す。
【0075】
冒頭に述べた充填剤は、石英砂又は石英粉、炭酸カルシウム、岩石粉、天然及び合成の黒鉛、軽量充填剤(例えばバーミキュライト、パーライト、ケイソウ土、雲母、タルク、酸化マグネシウム、発泡ガラス、発泡砂)、顔料(例えば二酸化チタン)、重量充填剤(例えば硫酸バリウム)、金属塩(例えば亜鉛塩、カルシウム塩、等)及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。この場合、特に1mmまでの粒度が適している。好ましくは、発泡ガラスが使用される。特に好ましくは、発泡ガラスは、50〜300μmの平均粒径を示す。しかしながら、遅延剤、促進剤、錯生成剤等がジオポリマー発泡調製物中に含まれていてもよい。
【0076】
本発明によるジオポリマー発泡調製物中に、全ての構成要素が1つの成分として一緒に存在するか又は固体の構成要素を第1の固体成分中に、及び水を第2の液体成分中に準備することができる(及びこれらの適用の直前に初めて相互に混合しかつ発泡させることができる)。二成分の実施態様は市場で入手可能であるが、一成分の実施態様は、特に、現場製造型のジオポリマー発泡部材を製造するために適している。
【0077】
硬化しかつ約5質量%の残留水含有率に乾燥したジオポリマー発泡体は、好ましくは120〜400kg/m3、特に好ましくは240〜350kg/m3、殊に最大300kg/m3の密度(つまり「乾燥見掛け密度」)を示す。好ましい実施態様の場合に、連続気泡型の構造が存在する。この構造は、接着接合、だぼ接合、釘接合及び/又はネジ接合のために最も適しているが、本発明によるジオポリマー発泡調製物として、流延、吹付、及び/又はローラーにより塗布し、引き続き硬化及び乾燥させることもできる。
【0078】
本発明の他の主題は、ガス、特に空気の機械的導入により調製物を発泡させることを特徴とする本発明によるジオポリマー発泡調製物の製造方法に関する。音響作用にとって特に好ましくは、この発泡体は50〜80体積パーセントの空気含有率を示すのが好ましい。これは、ステータ−ロータ法によるか、振動法によるか又は機械的攪拌により実施することができる。
【0079】
特別な実施態様の場合に、本発明によるジオポリマー発泡調製物の成分を相互に混合し、ここで、例えば市販の建築現場用ミキサーを使用することができる。この場合、好ましくは1000〜1200g/リットルの密度を示す懸濁物が形成される。この懸濁物を、引き続き、ステータ−ロータ原理により構成された混合ヘッド中で、空気により発泡することができる。この場合、適切な機器は、例えばHeitec Auerbach GmbH社のMuegromix+及びSicomixのモデルである。振動法のために特に適した装置は、beta Mischtechnik GmbH社の「beta Schaummischer」の商品名で販売されている。
【0080】
100〜800g/リットル、特に150〜600g/リットルの発泡体の湿潤見掛け密度が好ましい。本発明による方法は、更に、ジオポリマー発泡体が好ましくは20〜30℃の温度で、かつ少なくとも65%の相対空気湿度で乾燥することを予定している。型枠の取り外しは、24〜48時間後に行うことができる(エポキシド添加の場合には既に12時間後)。
【0081】
本発明の他の主題は、不燃性で、吸音性で、断熱性のジオポリマー発泡部材を製造するための、本発明によるジオポリマー発泡調製物の使用である。
【0082】
特に、本発明の他の主題は、本発明によるジオポリマー発泡調製物を含む、不燃性で、吸音性で断熱性のジオポリマー発泡部材にある。
【0083】
この本発明によるジオポリマー発泡部材は、好ましくは、厚さ2cm〜20cm、好ましくは4cm〜8cm及び辺の長さ20〜150cm、好ましくは約60cmの板状の形で存在する。
【0084】
本発明によるジオポリマー発泡部材の利点として、その好ましい燃焼挙動が挙げられる。有機添加剤を使用する場合であっても、特にエポキシ樹脂が存在する場合であっても、極めて良好な結果が達成された。これは燃焼時に煙又は滴る材料が生じない(DIN EN ISO 11925−2)。本発明によるジオポリマー発泡体は、この場合、特にDIN 13501−1によるA2又はA1の燃焼挙動を示す。
【0085】
本発明によるジオポリマー発泡部材(実施例3により、270kg/m3の乾燥見掛け密度及び40mmの厚さで、クントの管中で垂直の音波入射)の吸音率の推移が、図1に示されている。この測定は、IBP-Institut der Fraunhofer-Gesellschaftにより、DIN EN ISO 354 (2003)又はDIN EN ISO 1 1654 (1997)により実施した。吸音については、240〜350kg/m3の乾燥見掛け密度が特に適している。
【0086】
本発明によるジオポリマー発泡部材の圧縮強さは、23〜25℃で及び65%の相対湿度で、硬化7日後で(型枠を外すまで試験体はシートで覆われている)、組成に応じて、0.1〜1.4MPaであり、ここで、冒頭に課せられた課題に応じてもちろんより高い値が好ましい。
【0087】
本発明によるジオポリマー発泡部材の断熱値は、40〜80mW/(m・K)の範囲内にある。
【0088】
更に、本発明による板状のジオポリマー発泡部材は上張りを有していてもよいが、この場合、この上張りによりこの部材の吸音特性は本質的に悪化されないことが留意される。この場合、音波透過性の連続気泡型構造を示す羊毛不織布、ペイント及び繊維が適している。ガラス繊維補強不織布が特に良好に適している。殊に、繊維は、着色パターン又は印刷パターンを有することができる。
【0089】
本発明を、次の限定のない実施例及び添付の図面によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】ジオポリマー発泡部材の吸音率の推移を示す。
図2】硬化した試料の細孔構造を示す。
【0091】
実施例
実施例1:メタカオリンとフライアッシュとからのジオポリマー発泡体の製造
表1に記載された成分:
【表1】
を、界面活性剤を除きハンドミキサーで混合した。1000〜1200g/lの密度を示す懸濁物が生じた。最後に、界面活性剤を添加し、更に30秒間混合した。この懸濁物を、ホースを介して、液体及び低粘度ペーストを連続的に発泡するための、ステータ−ロータ原理によって運転される全自動発泡装置(Heitec Auerbach GmbH社のMuegromix+タイプ)中へ圧送した。このプロセスパラメータは次のようであった:混合ヘッド回転数300rpm、システム空気圧約2bar、材料処理量120リットル/時間。生じた発泡体は、375g/リットルの密度を示し、かつ55体積パーセントの空気含有率を示した。ここで、空気含有率は、DIN EN 1015−6に準拠して、未発泡の懸濁物と比べた体積変化によって決定した。次の特性が得られた:
乾燥見掛け密度:274kg/m3
14日後の早期強度:0.12〜0.24MPa
28日以降の最終密度:1.2MPa
熱伝導率:46〜48mW/mK
【0092】
実施例2:高炉スラグ、マイクロシリカ及びメタカオリンからのジオポリマー発泡体の製造
実施例1を、表2に記載された成分で繰り返した。
【表2】
【0093】
次の特性が得られた:
乾燥見掛け密度:261kg/m3
7日後の早期強度:1.2MPa
28日以降の最終密度:3.3MPa
熱伝導率:50mW/mK
【0094】
実施例1と実施例2との比較は、ほとんど同じ熱伝導率で、高炉スラグ、マイクロシリカ及びメタカオリンからなる配合により、明らかに高い早期強度及び最終強度を達成できることを示す。
【0095】
実施例3:メタカオリンとフライアッシュとからのジオポリマー発泡体の製造
実施例1を、表3に記載された成分で繰り返した。
【表3】
【0096】
次の特性が得られた:
乾燥粗製密度:270kg/m3
28日以降の最終密度:1.4MPa
熱伝導性:47〜48mW/mK
実施例3により製造された厚さ40mmのジオポリマー発泡部材の、クントの管中での垂直の音波入射の際の吸音率の推移は、図1に示されている。
【0097】
実施例4:超吸収性ポリマーの影響
実施例1を、表4に記載された成分で繰り返した。
【表4】
*) AMPS(登録商標)-Na 28モル%とアクリルアミド72モル%とからなるアニオン性コポリマー(WO 2008/151878 A1の「コポリマー1」)
この配合を、表5に記載されたように変更して繰り返した。それぞれ900mlの気泡容量にまで発泡させた。スランプ測定は、DIN EN 1015-3に準拠して決定した。
【表5】
【0098】
この例は、ジオポリマー発泡体の流動挙動は超吸収体によって安定化することができたことを示す。超吸収体の濃度が増加すると共に、混合物はより剛性になる。この流動挙動の最初の変化は、適用の直後に現れた。反応時間が長くなると共に、スランプ挙動の差異がより明らかになる、というのも、超吸収体なしの混合物の場合には液化作用が生じるためである。3分後では、超吸収体の濃度に依存して、対照混合物と比べて7.0mm又は13.4mm少ないスランプが測定することができた。
【0099】
実施例5:保水剤の影響
実施例4を、表6に記載された成分で繰り返した。
【表6】
【0100】
保水剤又はレオロジー改質剤(Starvis(登録商標)308 F、高分子量AMPS(登録商標)-Na/アクリルアミドコポリマー、BASF Construction Solutions GmbH社)の添加により、液化作用に対抗しかつ垂直方向の表面の発泡体の流動を抑制するために、加工時間及び乾燥時間の間に無機発泡体中で遊離した水を結合するのが好ましい。このため、一連の配量を実施した(質量%で記載)。スランプ及び試験体の細孔構造を用いて、添加剤の影響を評価する。スランプをDIN EN 1015-3に準拠して決定した。この結果は、表7中に示されている。硬化した試料の細孔構造は、図2(a〜f)に示されている。
【表7】
【0101】
この例は、ジオポリマー発泡体の流動挙動が、保水剤Starvis(登録商標)308 Fによって安定化できたことを示す。0.05%〜0.20%の添加が最良に作用した。より高い濃度は、再びに不利に作用した。保水剤の添加は、全体で試験した範囲内では、細孔構造に不利な影響を及ぼさなかった(図2参照)。別の調査は、最終強度にも不利な影響を及ぼさなかったことを示した。
【0102】
実施例6:大工業的発泡
a) 振動による発泡:
振動による発泡のために、beta Mischtechnik GmbH社(Essen)の装置を使用した。この発泡プロセスを、円形の横断面を有しかつ相互に結合されている円柱状に形成された室からなる混合ヘッド中で実施した。各室は2つの交換可能な混合エレメントを有し、この混合エレメントは、好ましくは適合する多孔板を備えていた。この混合ヘッドユニットは、7.2リットルの容積を有し、かつ1つ以上のポンプに出発材料若しくは添加物のそれぞれのスラリー及び圧縮空気を供給し、50〜70Hzの振動周波数で運転した。この方法及び装置は、EP 1716915 B1に詳細に記載されている。この装置を用いて、1100〜1700g/lの密度を示すスラリーを100〜500g/lの見掛け密度を示す発泡体に発泡させることができた。この処理量は約150l/hであった。
【0103】
b) ロータ/ステータ−発泡:
発泡を、ロータ/ステータ装置を用いて実施した。Heitec-Auerbach GmbH & Co. KG社(Ellefeld)のSicomix又はMuegromix+のタイプのミキサーが適していることが判明した。このミキサーの主要エレメントは、ロータ/ステータ原理による運転される低剪断(Low Shear)混合ヘッドであった。混合ヘッドの回転数は、50〜300rpmであった。このスラリーの密度は、1100〜1700g/lであり、発泡体の見掛け密度は100〜500g/lであった。この処理量は、約120l/hであった。
【0104】
高アルカリ性領域で多くの添加剤は十分には安定でなかったため、これらを本来の発泡の後に初めて添加した。これは、第2のポンプ並びに振動による発泡又はロータ/ステータ発泡の排出導管中のスタティックミキサを介して行った。
図1
図2