特許第6494628号(P6494628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6494628-CVT伝動機構 図000002
  • 特許6494628-CVT伝動機構 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494628
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】CVT伝動機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 37/02 20060101AFI20190325BHJP
   F16H 3/083 20060101ALI20190325BHJP
   F16H 61/04 20060101ALI20190325BHJP
   F16H 61/662 20060101ALI20190325BHJP
   F16H 61/688 20060101ALI20190325BHJP
   F16H 9/12 20060101ALN20190325BHJP
【FI】
   F16H37/02 Q
   F16H37/02 P
   F16H3/083
   F16H61/04
   F16H61/662
   F16H61/688
   !F16H9/12 B
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-537978(P2016-537978)
(86)(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公表番号】特表2016-540943(P2016-540943A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】DE2014200661
(87)【国際公開番号】WO2015086015
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年11月24日
(31)【優先権主張番号】102013225264.1
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ヴァルター
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−022839(JP,A)
【文献】 特開2000−320630(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/175568(WO,A1)
【文献】 特開2009−127843(JP,A)
【文献】 特開2002−340177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/02
F16H 3/083
F16H 61/04
F16H 61/662
F16H 61/688
F16H 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進要素(5)と、バリエータ(10)と、第1の運転領域(ロー)と第2の運転領域(ハイ)とを切り換える直接接続段(30)と、を備えるCVT伝動機構であって、
前記第2の運転領域(ハイ)の最大の伝動機構変速比は、前記第1の運転領域(ロー)の最小の伝動機構変速比に合致しており、
バリエータ流体システムに閉鎖弁装置が配設されており、前記直接接続段が前記バリエータ(10)の連結解除時に駆動のために使用されるときに、前記バリエータ流体システムが前記閉鎖弁装置によって流体に対して密に閉鎖されるようになっていることを特徴とするCVT伝動機構。
【請求項2】
記第2の運転領域(ハイ)の最小のバリエータ変速比は、前記第1の運転領域(ロー)の最小のバリエータ変速比よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のCVT伝動機構。
【請求項3】
記直接接続段(30)のクラッチが、常開型のクラッチとして構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のCVT伝動機構。
【請求項4】
前記バリエータ(10)をバイパスする前記直接接続段(30)は、駆動部に直接接続されている、請求項1からまでのいずれか1項に記載のCVT伝動機構。
【請求項5】
前記バリエータ(10)とディファレンシャル(16)との間に副伝動機構(20)が配置されている、請求項1からまでのいずれか1項に記載のCVT伝動機構。
【請求項6】
求項1からまでのいずれか1項に記載のCVT伝動機構を運転する方法であって、前記運転領域(ロー及びハイ)のバリエータ縁部領域を使用しないことを特徴とする、CVT伝動機構を運転する方法。
【請求項7】
動機構変速比の急速ダウン調節時、前記直接接続段(30)を使用せずに、かつ完全に無段階にダウン調節せずに、ダイレクトに一方の運転領域から他方の運転領域へと飛ばすことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
記発進要素(5)を、前記直接接続段(30)の切り換え時のパワートレーン負荷に対する制御要素として使用することを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
記直接接続段(30)が連結解除され、パワーフローが再び前記バリエータ(10)に導かれる前に、止まっている前記バリエータ(10)を加速するために、前記発進要素(5)をスリップ運転で使用することを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進要素と、バリエータと、第1の運転領域(ロー)と第2の運転領域(ハイ)とを切り換える直接接続段(Direktschaltstufe)と、を備えるCVT伝動機構に関する。さらに本発明は、このようなCVT伝動機構を運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CVTとは、無段変速する伝動機構を指しており、CVTというアルファベットは、「Continuously Variable Transmission」の略である。無段変速する伝動機構の変速比領域、つまりそのレンジを高めるために、例えば欧州特許出願公開第2275709号明細書において、無段変速する伝動機構の下流に、切り換え可能なプラネタリ伝動機構を配置することが知られている。切り換え可能なプラネタリ伝動機構は、二領域切り換えと後進切り換えとを可能にする。さらに、独国特許出願公開第10261900号明細書において、例えば発進用又は高速用の切り換えが可能な固定のギヤ段を備える多領域CVTを設けることが知られているが、この固定の変速比の運転中、バリエータは連結解除されている。したがって、1つの無段階の領域しか存在せず、すべての走行領域が無段階に運転され得るわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、発進要素と、バリエータと、第1の運転領域(ロー)と第2の運転領域(ハイ)とを切り換える直接接続段と、を備えるCVT伝動機構の運転を簡単にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、発進要素と、バリエータと、第1の運転領域(ロー)と第2の運転領域(ハイ)とを切り換える直接接続段と、を備えるCVT伝動機構において、第2の運転領域(ハイ)の最大の伝動機構変速比を、第1の運転領域(ロー)の最小の伝動機構変速比に合致させることによって解決される。従来の二領域CVT伝動機構の場合は、快適な領域切り換えを実現できるように、両変速比領域の比較的大きなオーバラップが必要である。しかし、このような大きな領域オーバラップは、バリエータ運転中の、効率最適化されたバリエータレンジの負担となってしまう。本発明により、第2の運転領域の最大の伝動機構変速比と第1の運転領域の最小の伝動機構変速比との一致を図ることで、直接接続段を備える本発明に係るCVT伝動機構の効率を改善することができる。
【0005】
上記課題は、発進要素と、バリエータと、第1の運転領域(ロー)と第2の運転領域(ハイ)とを切り換える直接接続段と、を備えるCVT伝動機構において、代替的に又は付加的に、第2の運転領域(ハイ)の最小のバリエータ変速比が、第1の運転領域(ロー)の最小のバリエータ変速比よりも大きいことによって解決される。本発明の一態様では、変速比領域は、効率の悪い領域であるバリエータ縁部領域が使用されないように設定される。本発明の別の態様では、第2の運転領域(ハイ)のバリエータ縁部領域は、第1の運転領域(ロー)のバリエータ縁部領域よりも強く減じられる。このとき、第2の運転領域(ハイ)が通常は第1の運転領域(ロー)より明らかに大きな割合の作動時間を有している点が考慮される。
【0006】
上記課題は、発進要素と、バリエータと、第1の運転領域(ロー)と第2の運転領域(ハイ)とを切り換える直接接続段と、を備えるCVT伝動機構において、代替的に又は付加的に、バリエータ流体システムに閉鎖弁装置が配設されており、直接接続段がバリエータの連結解除時に駆動のために使用されるときに、バリエータ流体システムが閉鎖弁装置によって流体に対して密に閉鎖されることによって解決される。これにより、バリエータ、特にバリエータ流体システムは、空にならないように簡単に保護される。本発明は、場合によっては、このような閉鎖弁装置を有するバリエータ流体システムにも関する。閉鎖弁装置は、好ましくは、漏れのない又は略漏れのない弁、例えば座弁を有している。
【0007】
上記課題は、発進要素と、バリエータと、第1の運転領域(ロー)と第2の運転領域(ハイ)とを切り換える直接接続段と、を備えるCVT伝動機構において、代替的に又は付加的に、直接接続段のクラッチ、特につめクラッチが、常開型のクラッチとして構成されていることによって解決される。これにより、システムエラー時のパワートレーン負荷に対する安全機能を簡単に実現することができる。安全機能をなすために、例えば直接接続段のつめクラッチは、常開型のクラッチとして構成することができる。代替的に又は付加的に、直接接続段の切り換え時に、特にバリエータと直接接続段とが同時にパワーフロー内にある時間中に、発進クラッチを、パワートレーン負荷に対する制御要素として使用することができる。
【0008】
CVT伝動機構の別の好ましい一実施形態は、バリエータをバイパスする直接接続段が、駆動部に直結されていることを特徴とする。直接接続段を駆動部に直結することで、直接接続段を、好ましくは発進要素とは無関係に使用可能である。直接接続段は、例えば、従来慣用のCVTパワートレーンにおいて液圧ポンプを駆動するために使用される歯車に接続されてもよい。それゆえ、このような歯車は、ポンプ歯車ともいう。駆動部が内燃機関又はエンジンを有している場合、バリエータをバイパスする直接接続段は、内燃機関又はエンジンによって直接駆動されている。駆動部への直接接続段の直結に基づいて、直接接続段は、本発明の範囲内で、好ましくは、CVTパワートレーンを装備している自動車の走行運転にのみ使用される。
【0009】
CVT伝動機構の別の好ましい一実施形態は、バリエータをバイパスする直接接続段が、トーショナルバイブレーションダンパの介在下でクランク軸に接続されていることを特徴とする。クランク軸を介して駆動部、特に内燃機関又はエンジンのトルクが放出される。トーショナルバイブレーションダンパは、好ましくは、駆動部、特に内燃機関又はエンジンの運転中に発生する望ましくないねじり振動をCVTパワートレーンから分離するために用いられる。これにより、回転ムラによって引き起こされるCVTパワートレーンの望ましくない損傷が防止される。
【0010】
CVT伝動機構の別の好ましい一実施形態は、バリエータとディファレンシャルとの間に副伝動機構が配置されていることを特徴とする。副伝動機構は、例えば減速伝動機構である。副伝動機構は、好ましくは、バリエータ出力部とディファレンシャルとの間に配置される。これに対して、直接接続段は、好ましくは、発進要素とバリエータ入力部との間に配置される。
【0011】
CVT伝動機構の別の好ましい一実施形態は、副伝動機構が、二領域の伝動機構(Zweibereichsgetriebe)、特にプラネタリ伝動機構として構成されていることを特徴とする。二領域の伝動機構は、例えば、ロー領域ともいう第1の領域での走行運転と、ハイ領域ともいう第2の領域での走行運転とを可能にする。第1の領域では、例えば第2の領域における変速比よりも大きな変速比で走行可能である。さらに、プラネタリ伝動機構として構成される二領域の伝動機構は、好ましくは、後進ギヤ段を実現することを可能にする。
【0012】
発進要素と、バリエータと、第1の運転領域(ロー)と第2の運転領域(ハイ)とを切り換える直接接続段と、を有するCVT伝動機構、特に上記CVT伝動機構を運転する方法において、上記課題は、代替的に又は付加的に、運転領域(ロー及びハイ)のバリエータ縁部領域を使用しないことによって解決される。CVT伝動機構は、バリエータ縁部領域において比較的悪い効率を有している。バリエータ縁部領域を使用しないことで、CVT伝動機構の効率を簡単に改善することができる。本発明に係る方法において使用されないバリエータ縁部領域は、好ましくは、変速比特性マップにおいて両運転領域ロー及びハイを示すために用いられる変速比特性線の下端領域である。このような変速比特性マップには、x軸に、例えばバリエータ変速比が示されている。そして変速比特性マップのy軸には、好ましくは伝動機構変速比が示されている。
【0013】
上記課題は、発進要素と、バリエータと、第1の運転領域(ロー)と第2の運転領域(ハイ)とを切り換える直接接続段と、を有するCVT伝動機構、特に上記CVT伝動機構を運転する方法、特に上記方法において、代替的に又は付加的に、伝動機構変速比の急速ダウン調節時、直接接続段を使用せずに、かつ完全に無段階にダウン調節せずに、ダイレクトに一方の運転領域から他方の運転領域へと飛ばすことによって解決される。これにより、CVT伝動機構の運転中の走行快適性を改善することができる。
【0014】
上記課題は、上記方法において、代替的に又は付加的に、発進要素、特に発進クラッチを、直接接続段の切り換え時のパワートレーン負荷に対する制御要素として使用することによって解決される。この場合、発進要素、特に発進クラッチは、特に、バリエータと直接接続段とが同時にパワーフロー内にあるときに使用される。
【0015】
上記課題は、上記方法において、代替的に又は付加的に、直接接続段が連結解除され、パワーフローが再びバリエータに導かれる前に、止まっているバリエータを加速するために、発進要素、特に発進クラッチをスリップ運転で使用することによって解決される。これにより、CVT伝動機構の運転中の走行快適性をさらに改善することができる。
【0016】
本発明の別の利点、特徴及び詳細は、図面を参照しながら様々な実施の形態について詳細に説明する以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るCVTパワートレーンの概略縦断面図である。
図2図1に示したCVTパワートレーンの横断面図である。
図3】本発明に係る方法の第1の実施の形態に則した、図1及び2に示すCVTパワートレーンの変速比特性マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2に、本発明に係るCVT伝動機構を備える本発明に係るCVTパワートレーン1を、それぞれ異なる見方で簡略化して示してある。CVTパワートレーン1は、駆動部3を有している。駆動部は、例えば内燃機関(Brennkraftmaschine)である。内燃機関は、自動車で使用される場合、エンジン(Verbrennungsmotor)ともいう。CVTパワートレーン1は、自動車で使用される。
【0019】
自動車の発進は、発進要素5によって可能となる。発進要素5を介して、駆動部3のトルクは、発進出力部分6に伝達される。発進出力部分6は、歯車8及び歯車9を有する歯車段を介してバリエータ10のバリエータ入力部に接続されている。
【0020】
バリエータ10は、駆動側の円錐円盤セット11及び被動側の円錐円盤セット12(プーリ)を有している。両円錐円盤セット11,12は、略示したに過ぎない巻き掛け手段13によって互いに連結されている。巻き掛け手段13は、例えば特殊チェーンである。
【0021】
両円錐円盤セット11及び12を介して、駆動部3と被動部15との間の変速比が無段階に調節可能である。被動部15は、少なくとも1つの駆動輪(図示せず)を有している。
【0022】
通常、被動部15は、少なくとも2つの駆動輪を有している。提供されたトルクを両駆動輪に分配するために、ディファレンシャル16ともいう差動伝動機構が用いられる。ディファレンシャル16は、円筒歯車18を有している。
【0023】
ディファレンシャル16の円筒歯車18は、副伝動機構20の副伝動機構出力歯車19と係合している。副伝動機構20は、被動側の円錐円盤セット12のバリエータ出力部に配設されている。
【0024】
CVTパワートレーン1の駆動部3には、トーショナルバイブレーションダンパ22が配設されている。トーショナルバイブレーションダンパ22は、駆動部3と発進要素5との間に配置されている。発進要素5は、発進クラッチ24として構成されている。発進クラッチ24は、湿式の多板クラッチである。
【0025】
トーショナルバイブレーションダンパ22の入力部分25は、相対回動不能に駆動部3のクランク軸に結合されている。トーショナルバイブレーションダンパ22の出力部分26は、一方では、発進クラッチ24の入力部をなしている。他方では、トーショナルバイブレーションダンパ22の出力部分26は、相対回動不能に歯車28に結合されている。歯車28は、例えば(図示しない)ポンプを駆動するために用いられる。それゆえ歯車28は、ポンプ歯車ともいう。しかし、歯車28は、他の又はさらに別の車両構成要素を駆動するために用いられてもよい。
【0026】
本発明の一態様によれば、歯車28には、切り換え装置29によって切り換え可能な直接接続段30が配設されている。矢印31は、直接接続段30がバリエータ10をバイパスするために用いられることを略示している。矢印31によって略示するように、直接接続段30は、切り換え装置29によって歯車28をディファレンシャル16の円筒歯車18に直結可能である。直接接続段30により、駆動部3は、トーショナルバイブレーションダンパ22を介して、発進要素5とは無関係にバリエータ10を迂回して、ディファレンシャル16を介して被動部15に駆動接続可能である。
【0027】
図2で見て、クランク軸33の回転軸線は、図平面に対して垂直に延びている。円34は、相対回動不能にクランク軸33に結合されるスタータリングギヤを略示している。半径方向内側の円は、図1に示した歯車8を示している。別の円は、ポンプ歯車ともいう歯車28を示している。歯車8は、バリエータ入力部をなす歯車9と噛み合う。歯車9は、同様に図2に円として示す駆動側の円錐円盤セット11に配設されている。円12は、被動側の円錐円盤セットを略示している。副伝動機構出力歯車19は、同様に円により略示する円筒歯車18と噛み合う。
【0028】
図2に示した円は、フロント‐横型の構造形式(Front‐Quer‐Bauweise)を明らかにしている。直接接続段30は、クランク軸中心点33よりも下、及びディファレンシャル16の円筒歯車18寄りに配置されている。フロント‐横型の構造形式は、駆動部3、特にエンジンと、伝動機構、ここではバリエータ10及び副伝動機構20とが、車両横方向に相並んで配置、例えば前車軸より前又は上に配置されていることを意味している。
【0029】
図1及び2において、副伝動機構20は、2つのプラネタリセットと2つのディスクセットとを有するプラネタリ伝動機構として構成されている。プラネタリ伝動機構として構成される副伝動機構20は、第1の領域ロー(Low)と第2の領域ハイ(High)との間での切り換えを可能にする。さらに、副伝動機構20は、後進ギヤ段Rをなすために用いられる。
【0030】
図3は、図1及び2に示したCVTパワートレーン1に関する変速比特性マップを示している。変速比特性マップは、x軸51及びy軸52を有するデカルト座標系のグラフとして構成されている。x軸51には、バリエータ変速比を示してある。y軸52には、伝動機構変速比を示してある。
【0031】
上側の特性線53は、ロー領域ともいう第1の運転領域を示すために用いられる。下側の特性線54は、ハイ領域ともいう第2の運転領域を示すために用いられる。ロー領域53は、バリエータ変速比が約0.65、伝動機構変速比が約4.7のところで開始する。ハイ領域は、バリエータ変速比が約0.57、伝動機構変速比が約2.1のところで開始する。
【0032】
x軸51に対して平行に延びる線55により、一定段(Konstantstufe)ともいう直接接続段が、常に同じ伝動機構変速比で領域53と領域54との間での切り換えのために使用されることを略示してある。この場合、図2において、特性線53の下端及び特性線54の上端にある約4.6の伝動機構変速比が使用される。つまり、線55は、特性線54の上端と特性線53の下端とを結んでいる。これにより、提供されているバリエータレンジを最適に利用することができる。
【0033】
特性線53及び54の始端又は下端の破線により、本発明の一態様では、特性線53及び54の下端のバリエータ縁部領域が使用されないように変速比領域が設定されることを略示してある。別の一態様では、変速比領域は、ハイ領域ともいう第2の運転領域又は変速比領域において、特性線54の下端の縁部領域が、特性線53の下端の縁部領域より強く減じられるように設定される。
【0034】
本発明の別の一態様では、直接接続段30での、バリエータ10が連結解除され回転していない走行時に、バリエータ10又はバリエータ流体システムが空にならないように保護するために、弁回路が使用される。弁回路は、好ましくは、漏れのない又は略漏れのない弁を有している。
【0035】
本発明の別の一態様では、CVTパワートレーンを装備している自動車の運転者により所望される伝動機構変速比の急速ダウン調節に際し、直接接続段を使用せずに、かつ完全に無段階にダウン調節せずに、ダイレクトに一方の領域から他方の領域へと飛ばされる。
【0036】
本発明の別の一態様では、直接接続段30の切り換え装置29は、つめクラッチとして構成されている。このつめクラッチは、システムエラー時のパワートレーン負荷に対する安全機能をなすために常開機能を有している。常開とは、つめクラッチが通常は開放されており、能動的に押し付けられるか又は閉鎖されることを意味している。
【0037】
本発明の別の一態様では、発進要素5、特に発進クラッチ24は、直接接続段30の切り換え時に、具体的には、特にバリエータ10と直接接続段30とが同時にパワーフロー内にある時間中に、パワートレーン負荷に対する制御要素として使用される。
【0038】
本発明の別の一態様では、発進要素5、特に発進クラッチ24は、直接接続段30が連結解除され、パワーフローが再びバリエータ10に導かれる前に、止まっているバリエータ10を加速するために、スリップ運転で使用される。
【符号の説明】
【0039】
1 CVTパワートレーン
3 駆動部
5 発進要素
6 発進出力部分
8 歯車
9 歯車
10 バリエータ
11 駆動側の円錐円盤セット
12 被動側の円錐円盤セット
13 巻き掛け手段
15 被動部
16 ディファレンシャル
18 円筒歯車
19 副伝動機構出力歯車
20 副伝動機構
22 トーショナルバイブレーションダンパ
24 発進クラッチ
25 入力部分
26 出力部分
28 歯車
29 切り換え装置
30 直接接続段
31 矢印
33 クランク軸
34 スタータリングギヤ
51 x軸
52 y軸
53 特性線 ロー
54 特性線 ハイ
55 線
図1
図2
図3