特許第6494700号(P6494700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許64947001−アリール−5−アルキルピラゾール化合物の改良された調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494700
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】1−アリール−5−アルキルピラゾール化合物の改良された調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 231/18 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   C07D231/18
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2017-144256(P2017-144256)
(22)【出願日】2017年7月26日
(62)【分割の表示】特願2015-507247(P2015-507247)の分割
【原出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-203034(P2017-203034A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2017年8月25日
(31)【優先権主張番号】61/635,969
(32)【優先日】2012年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515136856
【氏名又は名称】メリアル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】メン チャールズ キュー
(72)【発明者】
【氏名】ル イル ド ファロワ ロイック パトリック
(72)【発明者】
【氏名】リー ヒョウン イク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シンシー
(72)【発明者】
【氏名】ラブロス ジャン−ロベール
(72)【発明者】
【氏名】ミュルハウザー ミシェル
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−542686(JP,A)
【文献】 特表2001−507002(JP,A)
【文献】 Barry, W. J. et al.,Journal of the Chemical Society,1956年,p.4974-4978
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式 (I):
【化1】
(I)
(式中、
R1は-C(O)OR8 又は-C(O)NR9R10あり
R2はアルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり、
R3はアルキルであり、
R4、R5、R7及びR12 は夫々独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノ又はニトロであり、
R6はハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、-C(O)R11、-S(O)mR11 又はSF5 であり、
Zは窒素又はC-R12 であり、
R8はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり、
R9及びR10 は独立に水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ又はアルコキシであり、
R11 はアルキル又はハロアルキルであり、
nは0、1又は2であり、かつ
mは0、1又は2である)
の1-アリール-5-アルキルピラゾール化合物の調製方法であって、
その方法が
(II)のジスルフィド化合物を式 (III)のアリールヒドラジンと反応させて、
【化2】
(式中、R1R3、R4、R5、R6、R7及びZは式 (I)の化合物について定義されたとおりである)
式(IV)のピラゾールジスルフィドを生成し、
【化3】
(IV)
(式中、R1、R3、R4、R5、R6、R7及びZは式 (I)の化合物について定義されたとおりである)
(IV)の化合物を式 (V)
R2-LG (V)
(式中、R2は式 (I)の化合物について先に定義されたとおりであり、かつLGは脱離基である)の化合物と反応させて式(VI)の化合物を生成し、
【化4】
(VI)
要により-SR2 基を酸化して式 (I)の化合物を生成することを含む、
記調製方法。
【請求項2】
式(II)のジスルフィドを式 (VII)
【化5】
(VII)
のジケトンとジスルフィドジハライド試薬の反応により生成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(IV)の化合物と式 (V)の化合物の反応を還元剤の存在下で行なう、請求項1記載の方法。
【請求項4】
還元剤がテトラキス(ジメチルアミノ)エチレン、ホウ水素化ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ナトリウムヒドロキシメタンスルフィネート、亜鉛ヒドロキシメタンスルフィネート、ギ酸又はギ酸ナトリウムである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
式(VI)の化合物中の-C(O)OR8基又は-C(O)NR9R10 基をシアノに変換することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
離基LGがヨージドである、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2012年4月20日に出願された米国仮特許出願第61/635,969号(参照によりその全体が本明細書に含まれる)の優先権の利益を主張する。
本発明は一般式 (I)及び(IB)の1-アリールピラゾール化合物の調製方法に関する。
【化1】
【0002】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、Z、R1B 、R2B 、R3B 、R4B 、R5B 、R6B 、R7B 及びW並びにnは以下に定義されるとおりである。式 (I)及び(IB)の化合物は動物を外部寄生虫に対し治療し、保護するのに有益である。
【背景技術】
【0003】
哺乳類及び鳥類の如き動物は寄生虫外寄生をしばしば受け易い。これらの寄生虫は外部寄生虫、例えば、ノミ(ネコノミ、ノミ種等)、マダニ(コイタマダニ種、マダニ種、カクマダニ種、キララマダニ種等を含む)、ダニ(ニキビダニ種、ヒゼンダニ種、ミミヒゼンダニ種等)、シラミ(ハジラミ種、ツメダニ種、ケモノホソジラミ種等)、及びハエ(ノサシバエ種、イエバエ種、サシバエ種、ヒフバエ種、コクリオミイヤ種を含む)、蚊(蚊科)等であり得る。動物はまたフィラリア及びぜん虫の如き内部寄生虫による感染を受け易いかもしれない。
広範囲の外部寄生虫(節足動物及び昆虫を含む)に対し高度の活性を示す化合物が当業界で知られている。一つのこのようなクラスの化合物は、例えば、米国特許第5,122,530 号; 同第5,246,255 号; 同第5,576,429 号; 同第5,885,607 号; 同第6,010,710 号; 同第6,083,519 号; 同第6,096,329 号; 同第6,685,954 号; EP 0 234 119及びEP 0 295 117 (米国特許第5,232,940 号; 同第5,547,974 号; 同第5,608,077 号; 同第5,714,191 号; 同第5,916,618 号及び同第6,372,774 号); EP 0 352 944 (米国特許第4,963,575 号); EP 0 780 378 (米国特許第5,817,688 号; 同第5,922,885 号; 同第5,994,386 号; 同第6,124,339 号; 同第6,180,798 号及び同第6,395,906 号); EP 0 846 686 (米国特許第6,069,157号); 及びWO 98/28278(全てが本明細書に参考として含まれる)に言及されているアリールピラゾールである。
アリールピラゾールはノミ及びマダニの如き外部寄生虫に対し優れた活性を有することが知られている。化合物のこのファミリーの中で、フィプロニル、5-アミノ-3-シアノ-l-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロ-メチルフェニル)-4-トリフルオロメチルスルフィニルピラゾールが昆虫及びダニに対し格別に効能があることがわかった。フィプロニルはネコ及びイヌでノミ、マダニ及び噛みシラミの治療及び防除のための製品の公知のフロントライン(登録商標)ファミリー中の活性成分である。フィプロニルは無脊椎動物ニューロンの細胞膜中のガンマアミノ酪酸(GABA)受容体に結合し、死をもたらすチャンネルの密閉形態を機能的に安定化する。フィプロニルは下記の化学構造を有する。
【0004】
【化2】
【0005】
フィプロニルは農業セクター及び外部寄生虫に対する動物の保護のための両方における使用でもって数年にわたって商業化されていた。それ故、フィプロニルを大規模で調製するのに有効な方法が知られている。
最近、外部寄生虫(ノミ及びマダニを含む)に対する格別の活性を示す1-アリール-5-アルキルピラゾールが、Lee らのWO 2008/005489及び米国特許出願第2008/0031902号 (現在の米国特許第7,759,381 B2号) (参考として本明細書に含まれる)に報告されていた。その1-アリール-5-アルキルピラゾール化合物は、とりわけ、それらがアミノ基ではなくアルキル基又はハロアルキル基でピラゾール環の5位で置換されていることでフィプロニルとは異なる。加えて、刊行物に記載された或る1-アリール-5-アルキルピラゾール化合物はフェニル環及び4-スルフィニル基に混合ハロゲン置換を含む。フィプロニルの既知の調製方法は新規1-アリール-5-アルキルピラゾール化合物の合成に不適である。
WO 02/058690及び米国特許出願第2004/0087627 号は1,3-ジケトンと1-ヒドロキシ-1-(トリフルオロメチル)エチル置換基を有するフェニルヒドラジンの反応による(2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-(トリフルオロメチル))エチル置換基を有するピラゾールの合成に関する(スキーム4, 11頁, 米国特許出願第US 2004/0087627号)。この方法による特別な化合物、5-メチル-1-[(1-ヒドロキシ-1-(トリフルオロメチル)エチル)フェニル]-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチルエステルの合成が記載されている (米国特許出願第2004/0087627 号, 23-24 頁, 実施例8 )。しかしながら、5-アミノ基の存在下を除いて、又は全ての三つの置換基が同じ(メチル)である場合を除いて、3,4,5-二置換ピラゾールが調製される実施例がないことが明らかであった。
3-エステル-4-未置換ピラゾールの合成がまた米国特許出願2005/0020564 号(10頁, スキーム3)に言及されている。
WO 2008/005489及び米国特許出願第2008/0031902 A1号は2-チオ-1,3-ジケトン誘導体がスルフェニルハライド試薬を1,3-ジケトン化合物と反応させることによりつくられ、これらが更に適当に置換されたアリールヒドラジン化合物と反応させられて1-アリール-5-アルキルピラゾール化合物(これは更に仕上げられて所望のピラゾール化合物を生成してもよい)を生成する方法による1-アリール-5-アルキルピラゾール化合物の合成を記載している。しかしながら、記載された方法はハロアルキルスルフェニルハライド試薬 (例えば、トリフルオロメチルスルフェニルクロリド及びジクロロフルオロメチルスルフェニルクロリド) を利用し、これらは特に危険であり、供給先を見つけ難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、コスト有効であり、かつスケールアップに適合し得るピラゾール環の5位に炭素結合基を含む1-アリールピラゾール化合物(1-アリール-5-アルキルピラゾール化合物を含む)の改良された調製方法についての要望がある。
本明細書に引用又は参照されたありとあらゆる書類(“本明細書の引用書類”)、及び本明細書の引用書類に引用又は参照された全ての書類は、本明細書又は本明細書に参考として含まれるあらゆる書類に記載されたあらゆる製品についてのあらゆる製造業者の指示、記載、製品仕様、及び製品シートと一緒に、本明細書に参考として含まれ、本発明の実施に使用されてもよい。この出願におけるあらゆる書類の引用又は同定はこのような書類が本発明の先行技術として利用し得るという許可ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される式 (I)及び(IB)(式中、変数R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、Z、R1B 、R2B 、R3B 、R4B 、R5B 、R6B 、R7B 及びW並びにnは本明細書に定義されるとおりである)の1-アリールピラゾール化合物の改良された調製方法を提供する。
【化3】
【0008】
本発明の第一局面において、
(i) 式(II)のジスルフィド化合物を式 (III)のアリールヒドラジンと反応させて、
【化4】
【0009】
(式中、R1及びR3は夫々独立に水素、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、ホルミル、アリール、複素環、ヘテロアリール、-C(O)R8、-C(O)OR8、-C(O)NR9R10 又は-C(S)NH2 であり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基又はヘテロアリール基は必要により1個以上のハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキル又はハロアルキルチオ; アルキル又はハロアルキルスルフィニル; アルキル又はハロアルキルスルホニル; ニトロ、シアノ及び-C(S)NH2により置換されていてもよく、かつR4、R5、R6、R7及びZは以下に式 (I)の化合物について定義されるとおりである)
式(IV)のピラゾールジスルフィドを生成し、
【0010】
【化5】
(IV)
【0011】
(式中、R1、R3、R4、R5、R6、R7及びZは式 (I)の化合物について定義されたとおりである)
(ii)式(IV)の化合物を式 (V)
R2-LG (V)
(式中、R2は式 (I)の化合物について先に定義されたとおりであり、かつLGは脱離基である)の化合物と反応させて式(VI)の化合物を生成し、
【化6】
(VI)
【0012】
(iii) 式(VI)の化合物中で、R1又はR3が-C(O)OR8 又は-C(O)NR9R10である場合には、必要によりその-C(O)OR8基又は-C(O)NR9R10 基をシアノ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ホルミル、-C(O)R8 又は-C(S)NH2に変換してもよく、そして
(iv)必要により-SR2 基を酸化して式 (I)の化合物を生成することを含み、
工程iii) 及びiv)の順序が変えられてもよいことを特徴とする式 (I)の化合物の調製方法が提供される。
その方法の一実施態様において、式(II)のジスルフィドが式 (VII)のβ-ジケトンとジスルフィドジハライド試薬の反応により生成される。
【0013】
【化7】
(VII)
【0014】
別の実施態様において、工程 ii)で、式(IV)の化合物と式 (V)の化合物の反応が還元剤の存在下で行なわれる。一実施態様において、還元剤がテトラキス (ジメチルアミノ) エチレン、ホウ水素化ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ナトリウムヒドロキシメタンスルフィネート、亜鉛ヒドロキシメタンスルフィネート、ギ酸又はギ酸ナトリウムである。
その方法の別の実施態様において、R2がアルキル又はハロアルキルであり、R1が-C(O)OR8又は-C(O)NR9R10 であり、かつR3がアルキルである、式 (I)の化合物が調製される。
その方法の更に別の実施態様において、工程 ii)で、式 (V)の化合物の脱離基LGがヨージドである。
本発明の第二局面において、
(i)式 (IIB):
【化8】
(IIB)
【0015】
(式中、R1b 、R2b 、R4b 、R5b 、R6b 、R7b 及びWは以下に式(IB)の化合物について定義されるとおりであり、かつQはヨード、ブロモ、クロロ又はハロアルキルスルホネート基である)
の化合物を式 (IIc)又は (IId):
【化9】
【0016】
(式中、R、R1d 、R2d 及びR3d は独立にアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール又は複素環であり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基又は複素環基が必要により1個以上のハロゲン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基及び-C(S)NH2 基で置換されていてもよく、MはMgX 、ZnX 、RZn、BY2 、BF3 又はSnR’3であり、Xはヨード、ブロモ又はクロロであり、YはOH又はアルコキシであり、又は夫々のYはアルコキシ基(これはグリコール誘導体Y-(CR’’R’’’)a-Y(式中、R’’ 及びR’’’ は独立に水素及びC1-C3アルキルであり、かつaは2、3又は4である)の一部である)であってもよく、かつR’はアルキル又はハロアルキルである)
の化合物と反応させ、又は
式 (IIB)の化合物を遷移金属触媒の存在下でR8bNH2、(R8b)2NH、R8bOH 、R8bSH 又はエノレート陰イオンR8bC(O)CH2- (式中、R8b は式(IB)の化合物について以下に定義されるとおりである)と反応させて式(IB)の化合物を生成し、
【0017】
(ii) 式(IB)の化合物中のR1b が-C(O)OR8b又は-C(O)NR9bR10b である場合に、必要により-C(O)OR8b基又は-C(O)NR9bR10b 基を官能基変換によりシアノ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ホルミル、-C(O)R8b 又は-C(S)NH2(式中、R8b 、R9b 及びR10b は式(IB)の化合物について以下に定義されるとおりである)に変換してもよく、そして
(iii) R2b が-S(O)mR11bである場合には、必要により基-S(O)mR11b(式中、R11bは式(IB)の化合物について以下に定義されるとおりであり、かつmは0又は1である)を酸化して式(IB)の化合物を生成することを含み、
工程 ii)及びiii)の順序が変えられてもよいことを特徴とする、式(IB)の化合物の調製方法が提供される。
一実施態様において、QがI、Br又はClである式 (IIB)の化合物が式 (IIIB):
【化10】
(IIIB)
【0018】
(式中、R1b 、R2b 、R4b 、R5b 、R6b 、R7b 及びWは式(IB)の化合物について以下に定義されるとおりである)
の化合物を亜硝酸化合物T-ONO (式中、Tは水素又はアルキルである)、又はその塩の存在下でBr、Cl又はIの源と反応させることにより調製される。
別の実施態様において、工程 (i)の遷移金属触媒がパラジウム触媒である。
その方法の別の実施態様において、式 T-ONOの化合物が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸イソペンチル、又は亜硝酸tert-ブチルである。
更に別の実施態様において、式 (IIB)の化合物中の変数Qがブロモである。
その方法の工程 (i)の別の実施態様において、式 (IIc)の化合物中のMがZnX 又はRZn である。別の実施態様において、MがBY2 である。更に別の実施態様において、BがBY2 (式中、Yはヒドロキシである)である。
その方法の別の実施態様において、工程 (i)で、式 (IIB)の化合物が式 (IId)の化合物と反応させられる。更に別の実施態様において、式 (IIB)の化合物がトリメチルボロキシンと反応させられる。
その方法の別の実施態様において、工程 (i)で、(IIB) の化合物が(IIc) (式中、MがBY2 である)の化合物又は式 (IId)の化合物と反応させられ、塩基がその反応混合物に更に添加される。一実施態様において、塩基がアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩である。
【0019】
その方法の一実施態様において、工程 (i)におけるパラジウム触媒が(Ph3P)4Pd 、(Ph3P)2PdCl2、(CH3CN)2PdCl2 、Pd2(dba)3 又は(dppf)PdCl2 から選ばれる。
別の実施態様において、工程 (i)で、式(IIIB)の化合物がPd2(dba)3 及び炭酸カリウムの存在下で式 (IId)の化合物と反応させられる。
その方法の更に別の実施態様において、式 (IIB)の化合物がフィプロニルであり、かつ式 (IId)の化合物がトリメチルボロキシンである。
その方法の更に別の実施態様において、式(IIIB)の化合物からの式 (IIB)の化合物の生成において、T-ONO が亜硝酸ナトリウムであり、かつBrの源がHBr である。
その改良された方法は、とりわけ、ハロアルキルスルフェニルクロリド試薬(これらは特に危険であることが知られており、供給先を非常に見つけ難い)を使用しないで1-アリール-5-アルキル-4-ハロアルキルスルフィニル又は1-アリール-5-ハロアルキル-4-ハロアルキルスルフィニルピラゾール化合物の入手を与える。加えて、その改良された方法はスケールアップに適合性であり、所望の1-アリールピラゾール化合物の最適の収率及び品質を与える。
この開示及び特許請求の範囲において、“含む”、“含まれる”、“含むこと”等の如き用語は米国特許法においてそれに特有の意味を有することができ、例えば、それらは“含む”、“含まれる”、“含むこと”等を意味することができること、及び“実質的にからなること”及び“実質的にからなる”の如き用語は米国特許法においてそれらに特有の意味を有することができ、例えば、それらは明らかに列挙されていない要素を許すが、先行技術に見られる要素又は本発明の基本的もしくは新規な特徴に影響する要素を排除することが注目される。
本発明は既に開示された化合物、生成物、生成物の製造方法又は生成物の使用方法を本発明の範囲内に含むことを意図していないことが更に注目され、これは米国の特許及びトレードマーク庁(35 U.S.C.112, 第一パラグラフ) 又は欧州特許庁 (EPC の83条)の記述された説明及び可能要件を満たし、その結果、本件出願人はその権利を保有し、既に記載された生成物、その生成物の製造方法又はその生成物の使用方法の放棄を開示する。それ故、本発明の意図は先行技術に明らかに開示されている化合物、生成物、生成物もしくは化合物の製造方法、又は生成物もしくは化合物の使用方法を明らかにカバーしないことであり、又はその新規性は米国特許第5,122,530 号、同第5,246,255 号、同第5,576,429 号、同第5,885,607 号、同第6,010,710 号、同第6,083,519 号、同第6,096,329 号、同第6,685,954 号、EP 0 234 119及びEP 0 295 117 (米国特許第5,232,940 号、同第5,547,974 号、同第5,608,077 号、同第5,714,191 号、同第5,916,618 号及び同第6,372,774 号に相当する); EP 0 352 944(米国特許第4,963,575 号に相当する); EP 0 780 378(米国特許第5,817,688 号、同第5,922,885 号、同第5,994,386 号、同第6,124,339 号、同第6,180,798 号及び同第6,395,906 号に相当する); EP 0 846 686(米国特許第6,069,157 号に相当する);並びにWO 98/28278(これらの全てが参考として本明細書に含まれる) を含む(これらに限定されない)本明細書に挙げられた先行技術を含む(これらに限定されない)、先行技術により損なわれず、また本件出願人はあらゆる既に開示された化合物、生成物、生成物の製造方法又は生成物の使用方法についての放棄を特許請求の範囲に導入する権利を明らかに保有する。
これらの実施態様及びその他の実施態様が、以下の詳細な記載により開示され、又はそれから明らかであり、それにより含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
この出願の目的のために、明細書に特にことわらない限り、下記の用語は以下に挙げられる用語法を有する。
(1) アルキルは炭素直鎖、炭素分枝鎖及び環式炭化水素基の両方を表す。アルキルの一実施態様において、炭素原子の数が1-20であり、アルキルの別の実施態様において、炭素原子の数が1-12、1-10又は1-8 個の炭素原子である。アルキルの更に別の実施態様において、炭素原子の数が1-6 又は1-4 個の炭素原子である。炭素数のその他の範囲がまた分子のアルキル部分の位置に応じて意図されている。
C1-C10アルキルの例として、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル及びデシル並びにそれらの異性体が挙げられるが、これらに限定されない。C1-C4-アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル又は1,1-ジメチルエチルを意味する。
【0021】
環式アルキル基(これらは“アルキル”という用語により含まれる)は、“シクロアルキル”と称されてもよく、単一環又は多融合環を有する3〜10個の炭素原子を有するものを含む。シクロアルキル基の非限定例として、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
本明細書に記載されるアルキル基及びシクロアルキル基は未置換であってもよく、又はアルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、カルボキシル、アシル、アシルオキシ、アミノ、アルキル- 又はジアルキルアミノ、アミド、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、アジド、チオール、イミノ、スルホン酸、スルフェート、スルホニル、スルファニル、スルフィニル、スルファモニル、エステル、ホスホニル、ホスフィニル、ホスホリル、ホスフィン、チオエステル、チオエーテル、酸ハライド、酸無水物、オキシム、ヒドラジン、カルバメート、ホスホン酸、ホスフェート、ホスホネート、又は当業者に知られており、例えば、Greene ら著“有機合成における保護基” John Wiley and Sons, 第4編, 2007(参考として本明細書に含まれる)に教示されているような、本発明の化合物の生物学的活性を抑制しないあらゆるその他の実行可能な官能基(保護されておらず、又は必要により保護されてもよい)からなる群から選ばれた1個以上の部分で置換されていてもよい。
【0022】
(2) アルケニルは少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する炭素直鎖及び炭素分枝鎖の両方を表す。アルケニルの一実施態様において、二重結合の数が1-3 であり、アルケニルの別の実施態様において、二重結合の数が1である。アルケニルの一実施態様において、炭素原子の数が2-20であり、アルケニルのその他の実施態様において、炭素原子の数が2-12、2-10、2-8 又は2-6 である。アルケニルの更に別の実施態様において、炭素原子の数が2-4 である。炭素−炭素二重結合及び炭素数のその他の範囲がまた分子のアルケニル部分の位置に応じてまた意図されている。
“C2-C10-アルケニル”基はその鎖中に一つより多い二重結合を含んでいてもよい。例として、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチル-エテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル及び1-エチル-2-メチル-2-プロペニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
(3) アルキニルは少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する炭素直鎖及び炭素分枝鎖の両方を表す。アルキニルの一実施態様において、三重結合の数が1-3 であり、アルキニルの別の実施態様において、三重結合の数が1である。アルキニルの一実施態様において、炭素原子の数が2-20であり、アルキニルのその他の実施態様において、炭素原子の数が2-12、2-10、2-8 又は2-6 である。アルキニルの更に別の実施態様において、炭素原子の数が2-4 である。炭素−炭素二重結合及び炭素数のその他の範囲がまた分子のアルケニル部分の位置に応じてまた意図されている。
例えば、本明細書に使用される”C2-C10-アルキニル”という用語は2〜10個の炭素原子を有し、かつ少なくとも一つの三重結合を含む直鎖又は分枝不飽和炭化水素基、例えば、エチニル、プロプ(prop)-1-イン-1-イル、プロプ-2-イン-1-イル、n-ブト(but)-1-イン-1-イル、n-ブト-1-イン-3-イル、n-ブト-1-イン-4-イル、n-ブト-2-イン-1-イル、n-ペント(pent)-1-イン-1-イル、n-ペント-1-イン-3-イル、n-ペント-1-イン-4-イル、n-ペント-1-イン-5-イル、n-ペント-2-イン-1-イル、n-ペント-2-イン-4-イル、n-ペント-2-イン-5-イル、3-メチルブト-1-イン-3-イル、3-メチルブト-1-イン-4-イル、n-ヘキサ(hex)-1-イン-1-イル、n-ヘキサ-1-イン-3-イル、n-ヘキサ-1-イン-4-イル、n-ヘキサ-1-イン-5-イル、n-ヘキサ-1-イン-6-イル、n-ヘキサ-2-イン-1-イル、n-ヘキサ-2-イン-4-イル、n-ヘキサ-2-イン-5-イル、n-ヘキサ-2-イン-6-イル、n-ヘキサ-3-イン-1-イル、n-ヘキサ-3-イン-2-イル、3-メチルペント-1-イン-1-イル、3-メチルペント-1-イン-3-イル、3-メチルペント-1-イン-4-イル、3-メチルペント-1-イン-5-イル、4-メチルペント-1-イン-1-イル、4-メチルペント-2-イン-4-イル又は4-メチルペント-2-イン-5-イル等を表す。
【0024】
(4) アリールは単環又は多融合環を有するC6-C14芳香族炭素環構造を表す。或る実施態様において、コアー構造への結合の位置が芳香族環による限り、アリール環が非芳香族環に融合されてもよい。アリール基として、フェニル、ビフェニル、及びナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。或る実施態様において、アリールとして、テトラヒドロナフチル及びインダニルが挙げられる。アリール基は未置換であってもよく、又はハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロシクロアルキル、ハロシクロアルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、ハロシクロアルコキシ、ハロシクロアルケニルオキシ、アルキルチオ、ハロアルキルチオ、アリールチオ、シクロアルキルチオ、ハロシクロアルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルケニルスルフィニル、アルキニル-スルフィニル、ハロアルキルスルフィニル、ハロアルケニルスルフィニル、ハロアルキニルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルケニルスルホニル、アルキニルスルホニル、ハロアルキル-スルホニル、ハロアルケニルスルホニル、ハロアルキニルスルホニル、アルキルカルボニル、ハロアルキルカルボニル、アルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ジ (アルキル)アミノ、ジ (アルケニル)-アミノ、ジ (アルキニル)アミノ、又はSF5 から選ばれた1個以上の部分により置換されていてもよい。アリールの一実施態様において、その部分がフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フェニルシクロプロピル及びインダニルであり、アリールの別の実施態様において、その部分がフェニルである。
【0025】
(5) アルコキシは-O-アルキルを表し、アルキルは(1) に定義されたとおりである。
(6) アルコキシカルボニルは-C(=O)-O-アルキルを表し、アルコキシは(5) に定義されたとおりである。
(7) 接頭辞としてのシクロ (例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル) は環(その範囲は上記アリールの定義とは別であり、異なることが意図されている)中に3個から8個までの炭素原子を有する飽和又は不飽和環式環構造を表す。シクロの一実施態様において、環サイズの範囲が4-7 個の炭素原子であり、シクロの別の実施態様において、環サイズの範囲が3-4 である。炭素数のその他の範囲がまた分子のシクロ部分の位置に応じて意図されている。
(8) ハロゲンは原子フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。“ハロ” (例えば、ハロアルキルという用語で示されるような) の表示は単一置換からペルハロ置換までの置換の全ての程度を表す (例えば、クロロメチル (-CH2Cl) 、ジクロロメチル (-CHCl2) 、トリクロロメチル (-CCl3)としてのメチルで示されるような) 。
(9) 複素環又はヘテロシクロは完全飽和又は不飽和環式基、例えば、4〜7員単環式、7〜11員二環式、又は10〜15員三環式の環系を表し、これらは環中に少なくとも一つのヘテロ原子を有する。ヘテロ原子を含む複素環基の夫々の環は窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子から選ばれた1個、2個、3個又は4個のヘテロ原子を有してもよく、この場合、その窒素ヘテロ原子及び硫黄ヘテロ原子は必要により酸化されていてもよく、また窒素ヘテロ原子は必要により四級化されていてもよい。複素環基は環又は環系のあらゆるヘテロ原子又は炭素原子の位置で結合されてもよい。
【0026】
(10)ヘテロアリールは環内に1個以上の酸素、窒素、及び硫黄ヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子、又は1〜3個のヘテロ原子を有する、5個から15個までの原子、好ましくは5個から10個までの原子の1価の芳香族環を表す。窒素及び硫黄ヘテロ原子は必要により酸化されていてもよい。このようなヘテロアリール基は単環 (例えば、ピリジル又はフリル) 又は多融合環を有することができ、但し、その結合の位置がヘテロアリール環原子によることを条件とする。好ましいヘテロアリールとして、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フラニル、チエニル、フリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ベンゾフラニル、及びベンゾチエニルが挙げられる。ヘテロアリール環は未置換であってもよく、又は上記アリールについて記載された1個以上の部分により置換されていてもよい。
例示の単環式複素環基又はヘテロアリール基として、ピロリジニル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、4-ピペリドニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン及びテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニル、トリアゾリル等がまた挙げられるが、これらに限定されない。
例示の二環式複素環基として、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾチエニル、キヌクリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフリル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジニル (例えば、フロ [2,3-c]ピリジニル、フロ [3,2-b]ピリジニル) 又はフロ [2,3-b]ピリジニル) 、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキナゾリニル (例えば、3,4-ジヒドロ-4-オキソ-キナゾリニル) 、テトラヒドロキノリニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
例示の三環式複素環基として、カルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の第一局面において、式 (I)の1-アリールピラゾール化合物の調製方法(これは危険なスルフェニルハライド試薬の使用を回避する)が提供され、
【0027】
【化11】
(I)
【0028】
式中、
R1及びR3は夫々独立に水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、シアノ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルケニル、アルキニル、ホルミル、アリール、ヘテロアリール、複素環、-CO2H 、-C(O)R8 、-C(O)OR8、-C(O)NR9R10 又は-C(S)NH2であり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基又はヘテロアリール基は必要により1個以上のハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキル又はハロアルキルチオ、アルキル又はハロアルキルスルフィニル、アルキル又はハロアルキルスルホニル、ニトロ、シアノ或いは-C(S)NH2により置換されていてもよく、
R2はアルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり、
R4、R5、R7及びR12 は夫々独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノ又はニトロであり、
R6はハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、-C(O)R11、-S(O)mR11 又はSF5 であり、
Zは窒素又はC-R12 であり、
R8はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり、
R9及びR10 は独立に水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ又はアルコキシであり、
R11 はアルキル又はハロアルキルであり、かつ
m及びnは独立に0、1又は2であり、
その方法は
i) 式(II)のジスルフィド化合物を式 (III)のアリールヒドラジンと反応させ、
【0029】
【化12】
【0030】
(式中、R1及びR3は夫々独立に水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルケニル、アルキニル、ホルミル、アリール、ヘテロアリール、複素環、-C(O)R8 、-C(O)OR8、-C(O)NR9R10 又は-C(S)NH2であり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基又はヘテロアリール基は必要により1個以上のハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキル又はハロアルキルチオ、アルキル又はハロアルキルスルフィニル、アルキル又はハロアルキルスルホニル、ニトロ、シアノ或いは-C(S)NH2により置換されていてもよく、かつR4、R5、R6、R7及びZは式 (I)の化合物について定義されたとおりである)
式(IV)のピラゾールジスルフィドを生成し、
【0031】
【化13】
(IV)
【0032】
(式中、R1及びR3は上記式(II)について定義されたとおりであり、かつR4、R5、R6、R7及びZは式 (I)の化合物について定義されたとおりである)
ii) 式(IV)の化合物を式 (V)
R2-LG (V)
(式中、R2 は式 (I)の化合物について先に定義されたとおりであり、かつLGは脱離基である)
の化合物と反応させて式(VI)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びZは式 (I)の化合物について先に定義されたとおりである)の化合物を生成し、
【0033】
【化14】
(VI)
【0034】
iii) 式(VI)の化合物中のR1又はR3が-C(O)OR8 又は-C(O)NR9R10である場合には、必要によりその-C(O)OR8基又は-C(O)NR9R10 基を官能基変換によりシアノ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ホルミル、-C(O)R8 又は-C(S)NH2に変換してもよく、そして
iv) 必要により-SR2 基を酸化して式 (I)の化合物を生成することを含み、
工程iii) 及びiv)の順序が変えられてもよいことを特徴とする。
本明細書に記載された方法の合成工程の順序は変えられてもよく、とりわけ、特別な基質中に存在するその他の官能基の性質、主要な中間体の入手可能性、及び採用される保護基戦略(存在する場合)(例えば、“有機合成における保護基 (第3編)”, Greene及びWuts編集, Wiley-Interscience, (1999) を参照のこと) の如き因子に依存することが当業者により認められるであろう。明らかに、このような因子はまた合成工程における使用のための試薬の選択に影響するであろう。
更に、式 (I)の或る好ましい化合物は式 (VII)の化合物中の基R1及びR3並びに式 (III)中の基R4、R5、R6、R7及びZを適当に選ぶことにより調製し得ることが認められるであろう。加えて、式 (I)の或る化合物は化合物中に存在する官能基を更に仕上げることにより、例えば、公知の官能基変換を使用してピラゾール環の3位又は5位のエステル -C(O)OR8 をカルボン酸、ヒドロキシメチル基、アミド等に変換することにより調製し得ることが当業者に明らかであろう。更に、米国特許第7,759,381 号(参考として本明細書に含まれる)に記載されたように、エステル基又はアミド基がシアノ基に変換されてもよい。例えば、エステル基が加水分解にかけられてカルボン酸に変換され、続いてアミドの生成及びSOCl2 の如き脱水剤によるアミドの処理が行なわれてシアノ基を生成してもよい。基-C(S)NH2は相当するシアノ基から米国特許第6,265,430 号及び同第6,518,296 号(両方とも参考として本明細書にそのまま含まれる)に記載されたような硫化水素による処理により生成されてもよい。
【0035】
一実施態様において、本発明の方法はR1がシアノ、-C(O)OR8 、-C(O)NR9R10 又は-C(S)NH2である式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
別の実施態様において、本発明の方法はR3がC1-C6 アルキル(必要により1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい)である式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
更に別の実施態様において、本発明の方法はR3がメチル又はエチル(必要により1〜5個のハロゲン原子により置換されていてもよい)である式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
別の実施態様において、本発明の方法はR3がメチル、-CH2F 、-CHF2 、CF3 、エチル、-CHFCH3 、-CF2CH3 、-CF2CF3 、又は-CHFCF3である式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
別の実施態様において、本発明の方法はR2がC1-C3 アルキル又はC1-C3 ハロアルキルである式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
別の実施態様において、本発明の方法はR2がメチル、エチル、-CF3、-CCl2F又は-CF2Clである式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
【0036】
別の実施態様において、本発明の方法はR1がシアノ、-C(O)OR8 、-C(O)NR9R10 又は-C(S)NH2 であり、R3がC1-C6 アルキル(必要により1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい)であり、かつR5及びR7が夫々水素である式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
別の実施態様において、本発明の方法はR1がシアノ、-C(O)OR8 又は-C(O)NR9R10であり、R3がメチル又はエチル(必要により1〜5個のハロゲン原子により置換されていてもよい)であり、R5及びR7が夫々水素であり、かつR4がハロゲンである式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
別の実施態様において、本発明の方法はR1がシアノ、-C(O)OR8又は-C(O)NR9R10 であり、R3がメチル又はエチル(必要により1〜5個のハロゲン原子により置換されていてもよい)であり、R2がC1-C3 アルキル又はC1-C3 ハロアルキルであり、R5及びR7が夫々水素であり、ZがC-R12 であり、かつR4及びR12 がクロロ又はフルオロである式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
更に別の実施態様において、本発明の方法はR1がシアノ、-C(O)OR8、-C(O)NR9R10 又は-C(S)NH2であり、R3がメチル、-CH2F 、-CHF2 、CF3 、エチル、-CHFCH3 、-CF2CH3 、-CF2CF3 、又は-CHFCF3 であり、かつR2がメチル、エチル、-CF3、-CCl2F又は-CF2Clである式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
好ましい実施態様において、本発明の方法はR1がシアノ、-C(O)OR8又は-C(O)NR9R10 であり、R3がメチルであり、かつR2がCF3 、-CCl2F又は-CF2Clであり、R5及びR7が夫々水素であり、ZがC- R12であり、かつR4及びR12 がクロロ又はフルオロである式 (I)の化合物を調製するのに使用し得る。
式(II)のジスルフィド化合物は式 (VII):
【化15】
(VII)
【0037】
(式中、R1及びR3は式(II)の化合物について定義されたとおりである)
の1,3-ジカルボニル化合物と、式 LG-S-S-LG(式中、LGは脱離基である)中のように、夫々の硫黄原子の位置に脱離基を有するジスルフィド試薬の反応により調製し得る。一実施態様において、ジスルフィド試薬がジスルフィドジハライド試薬である。好ましい実施態様において、ジスルフィドジハライド試薬がジスルフィドジクロリド (Cl-S-S-Cl)又はジスルフィドジブロミド (Br-S-S-Br)である。
式 (VII)の1,3-ジカルボニル化合物は種々の異なるR1基及びR3基について当業界で公知であり、R1及び/又はR3がアルキル、ハロアルキル、-C(O)OR8、-C(O)NR9R10 、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環及びヘテロアリールである化合物を含む。更に、2位で置換された1,3-ジカルボニル化合物がまた当業界で知られており、例えば、Chem.Ber.1973, 106, 1418-14-22; J.Org.Chem., 1973, 38, 2809-2813; J.Org.Chem.1981, 46, 153-157; J.Org.Chem.1984, 49, 3494-3498; 及び米国特許第3,742,046 号(これが参考として本明細書に含まれる)に記載されていた。下記の表1は当業界で知られている多数の式 (VII)の1,3-ジケトン化合物のうちの非常に限られた概説(それらのCAS 登録番号により参照される)を提示する。
表1:式 (VII)の非限定化合物
【0038】
【表1】
【0039】
更に、式 (VII)の化合物は化学文献に記載された既知の方法の適用又は適合により調製し得る。式 (VII)の化合物の調製方法は当業界で公知であり、異なる置換パターンを有する多数の化合物が得られる (例えば、Levine, R.ら著, JACS, 1945, 67, 1510-1512 頁及びFargeas, V. ら著, Tetrahedron, 2004, 60, 10359-10364を参照のこと) 。
或る実施態様において、式 (VII)の1,3-ジカルボニル化合物とジスルフィド試薬 LG-S-S-LG(ジスルフィドジハライド試薬を含む)の反応は、塩基の存在下で行なわれてもよい。その他の実施態様において、式 (VII)の1,3-ジカルボニル化合物とジスルフィド試薬 LG-S-S-LG の反応はルイス酸の存在下で行なわれてもよい。好適な塩基として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物及びアルコキシド;並びに有機アミン塩基(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-3-エン(DBN); 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO); 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン (DBU)等を含むが、これらに限定されない);並びにアルカリ金属アミド塩基(リチウムジイソプロピルアミド (LDA)、ナトリウム又はリチウムヘキサメチルジシラザン等を含むが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0040】
式 (VII)の化合物と基LG-S-S-LG (ジスルフィドジハライド試薬を含む)の反応に使用し得るルイス酸として、銅塩(Cu(OAc)2を含むが、これに限定されない)、TiCl4 、BF3-エーテラート、スカンジウムIII トリフレート、ZnCl2 、ランタンIII トリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。特に好ましいルイス酸はCu(OAc)2である。その他の好適なルイス酸がまたその反応を行なうのに使用し得る。
その反応は好適な反応変換が過剰の副生物生成なしに得られるあらゆる温度範囲で行ない得る。反応温度として、約-78 ℃〜使用される溶媒の沸点(約-78 ℃〜約110 ℃; 約-78 ℃〜約80℃; 約-78 ℃〜約50℃; 約-78 ℃〜約30℃; 約-78 ℃〜約20℃; 又は約-78 ℃〜約0℃を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。その他の実施態様において、その反応が約0℃〜約50℃、約0℃〜約30℃、又は約0℃〜約20℃で行なわれる。
【0041】
塩基が使用される場合の或る好ましい実施態様において、その反応は一層低い温度で開始され、次いで温められて完全な反応を確実にする。その他の実施態様において、その反応温度は好適な変換が得られるまでの時間の期間にわたって一定に保たれてもよい。当業者は純度及び反応の転化率を監視することにより不純物生成を最小に保ちつつ好適な反応速度に達するために最適反応温度を決めることができるであろう。
反応は式 (VII)の化合物又はジスルフィド試薬と干渉又は反応しない溶媒、例えば、非反応性有機溶媒の存在下で行なわれてもよい。非反応性有機溶媒として、芳香族溶媒、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール等; 塩素化溶媒、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルム; エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、メチル tert-ブチルエーテル等; アルキルエステル、例えば、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等を含むエステル溶媒を含む非プロトン性有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。或る実施態様において、反応が溶媒なしに、又は溶媒及び塩基の両方としての塩基を使用して行なわれてもよい。
式 (VII)の化合物とジスルフィド試薬 LG-S-S-LGの反応から得られた式(II)の化合物は単離され、既知の方法により精製されてもよく、又は単離及び/又は精製しないで直接使用されてもよい。一実施態様において、式(II)の化合物がすり砕きもしくは好適な溶媒からの結晶化又はクロマトグラフィーにより精製される。
【0042】
同様に、式 (III)の化合物は当業界で既に記載されていた。例えば、式 (III)のアリールヒドラジン化合物の調製が、中でも、米国特許第4,909,832 号、同第4,810,720 号、同第4,127,575 号、同第3,609,158 号、同第5,256,364 号、英国特許出願公開第GB1469610 号及び同第GB2136427 号、並びにJ.Chem.Soc.C, 1971, 167-174 (全て参考として本明細書に含まれる)に記載されていた。式 (III)のアリールヒドラジン化合物はまた既知の方法(例えば、Advanced Organic Chemistry, 第3編, Jerry March 編集, Wiley-Interscience, New Yorkに記載されているような)の適合により調製されてもよい。
式(IV)の化合物を生じるための式 (III)の化合物、又はその塩と式(II)の反応は有機溶媒中で約-20 ℃〜約100 ℃の温度で行なわれてもよい。典型的には、その反応が約0℃〜約70℃、約0℃〜約50℃、約0℃〜約30℃、又は約0℃〜約20℃の温度で行なわれてもよい。更に典型的には、反応が約-5℃〜約5℃、約-5℃〜約10℃、又は0℃〜約10℃の温度で行なわれてもよい。その他の実施態様において、反応が約15℃〜約25℃、又は約20℃〜約30℃の温度で行なわれる。
反応がC1-C4 アルコール溶媒、例えば、エタノール、メタノール又はイソプロパノール; ハロゲン化溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等; 芳香族溶媒、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等、エーテル溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等; アミド溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド (DMF)、ジメチルアセトアミド (DMA)等を含むが、これらに限定されない種々の有機溶媒中で行なわれてもよい。
或る実施態様において、反応が酸触媒又はルイス酸触媒の存在下で行なわれることが好ましい。好適な酸として、カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、安息香酸、フマル酸等; 塩酸、硫酸及びリン酸を含む鉱酸; メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等を含むスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。好適なルイス酸触媒として、TiCl4 、BF3-エーテラート、Cu(OAc)2、スカンジウムIII トリフレート、ZnCl2 、ランタンIII トリフルオロメタンスルホネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
式(IV)の化合物は単離され、当業界で知られている通常の技術、例えば、好適な溶媒からの結晶化又はクロマトグラフィーにより精製されてもよい。或る実施態様において、式(II)の化合物の置換パターンに応じて、反応が位置異性体化合物(例えば、R1 ≠ R3の場合)を生じ得る。これらの状況下で、更なる反応を行なう前に生成物を精製することが典型的には有益であろう。しかしながら、望ましくない異性体の量が許される或るその他の実施態様において、式(IV)の化合物を更に次の工程に直接進めてコストのかかる単離工程及び/又は精製工程を回避することが好ましいかもしれない。更に、式(IV)の化合物の一種の位置異性体を主生成物として与える或る置換パターン及び条件が見つけられるかもしれない。
【0043】
ピラゾールジスルフィド化合物は、例えば、Alabaster ら著, Journal of the Chemical Society, 1965, 4974-4978頁; Journal of the Chemical Society -C, 1970, 78-81 頁; 及びJournal of the Chemical Society, Perkin Trans.1, 1976, 428-433頁に記載されていた。R3が-NH2である式(IV)の化合物は当業界で、例えば、米国特許第4,810,720 号; 同第4,804,675 号; 同第5,283,337 号; 同第5,232,940 号; 同第6,881,848 号(全て参考として本明細書に含まれる)、並びにClavelら著, J.Chem.Soc.Perkin Trans.1, 1992, 3371-3375頁に記載されていた。これらの刊行物に記載されたように、R3がNH2 である式(IV) の化合物はエタノールの如き溶媒中の塩酸水溶液との反応により相当する4-チオシアネート-5-アミノピラゾール化合物から調製し得る。その4-チオシアネート-5-アミノピラゾール化合物は知られており (例えば、Farmaco Ed.Sci.1983, 38, 274-282) 、又は4-未置換-5-アミノピラゾール化合物を-20 ℃〜20℃の温度で臭素及び酢酸の存在下でチオシアン酸アンモニウムと反応させることにより得られる。
しかしながら、本件出願人はピラゾール環の5位のR3が炭素結合基(例えば、基R3が炭素原子によりピラゾールに結合されている場合)である式(IV)のジスルフィド化合物は、特に3位がカルボニル又はシアノ置換基を含む場合に、既知の方法により直ぐに得られないことがわかった。更に、5位に炭素結合基で置換されている4-チオシアネートピラゾール化合物、特に3位にカルボニル基又はシアノ基を有するもの(それから相当するピラゾールジスルフィド化合物が調製される)がまた当業界で報告された反応条件により直ぐに調製されない。こうして、本発明の式(IV)の化合物の調製はまっすぐ進むのではなく、既知の方法によるこれらの化合物の入手に問題がある。
【0044】
R3がNH2 である式(IV)の化合物はその化合物を還元剤の存在下でペルフルオロアルキルハライドと反応させることによりR3がNH2 であり、R2がペルフルオロアルキルであり、かつnが0である式 (I)の化合物に変換し得る。この方法は、例えば、米国特許第4,810,720 号; 同第4,804,675 号; 同第5,283,337 号; 同第5,232,940 号; 同第6,881,848 号(全て参考として本明細書に含まれる)、及びClavelら著, J.Chem.Soc.Perkin Trans.1, 1992, 3371-3375頁に記載されている。しかしながら、本件出願人はR3がアミノ基ではない式(IV)の化合物、特にR1がカルボニル基又はシアノである化合物の反応が式 (I)の化合物を生成するために先行技術に記載された反応条件を使用して進行しないことがわかった。こうして、式(IV)のジスルフィド化合物の中間体はR3 がアミノ基ではない場合に式 (I)の化合物の容易な入手を与えない。それ故、本発明の局面1はR3が炭素結合官能基である式 (I)の化合物の改良された合成方法を提供する。これらの化合物はフェニルピラゾール化合物について当業界で知られている合成方法を使用して容易に入手し得ない。
しかしながら、本件出願人はその反応が還元剤としてのテトラキス(ジメチルアミノ)エチレン (TDAE) の存在下で、好ましくはLGがハロゲン原子である式 (V) R2-LGの化合物を使用して行なわれる場合に、R3が炭素原子によりピラゾール環に結合された官能基である式(IV)のジスルフィド化合物が式 (I)の化合物を与えることを驚くことに見い出した。
本発明の第二局面は危険なスルフェニルハライド試薬の使用を回避する式(IB)の化合物の調製方法を提供し、
【0045】
【化16】
(IB)
【0046】
式中、
R1b は水素、シアノ、ハロゲン、R8b 、ホルミル、-CO2H 、-C(O)R8b、-C(O)OR8b 、-C(O)NR9bR10b 又は-C(S)NH2であり、
R2b はR8b 又は-S(O)mR11bであり、
R3b はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環、ヘテロアリール、R8bNH 、(R8b)2N 、R8bO、R8bS又はR8bC(O)CH2- であり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基又はヘテロアリール基は必要により1個以上のハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、シアノ又は-C(S)NH2により置換されていてもよく、
R4b 、R5b 、R7b 及びR13bは夫々独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノ又はニトロであり、
R6b はハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、-C(O)R12b 、-S(O)nR12b又はSF5 であり、
Wは窒素又はC-R13bであり、
R8b はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、アリール、複素環又はヘテロアリールであり、
R9b 及びR10bは独立に水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ又はアルコキシであり、
R11bはアルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり、
R12bはアルキル又はハロアルキルであり、
mは0、1又は2であり、かつ
nは0、1又は2であり、
その方法は
(i) 式 (IIB):
【化17】
(IIB)
【0047】
(式中、R1b 、R2b 、R4b 、R5b 、R6b 、R7b 及びWは式(IB)の化合物について先に定義されたとおりであり、かつQはヨード、ブロモ、クロロ又はハロアルキルスルホネート基(-OS(O)2ハロアルキル)(トリフレート (トリフルオロメタンスルホネート)を含むが、これらに限定されない)である)
の化合物を式 (IIc)又は (IId):
【化18】
【0048】
(式中、R、R1d 、R2d 及びR3d は独立にアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環又はヘテロアリールであり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環又はヘテロアリール基は必要により1個以上のハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、シアノ又は-C(S)NH2により置換されていてもよく、MはMgX 、ZnX 、RZn 、BY2 、BF3 又はSnR’3 であり、Xはヨード、ブロモ又はクロロであり、YはOH又はアルコキシであり、又はYはアルコキシ基(これはグリコール誘導体Y-(CR’’R’’’)a-Y(式中、R’’及びR’’’は独立に水素又はC1-C3 アルキルであり、かつaは2、3又は4である)の一部である)であってもよく、かつR’はアルキル又はハロアルキルである)
の化合物と反応させ、又は
式 (IIB)の化合物を遷移金属触媒の存在下でR8bNH2、(R8b)2NH、R8bOH 、R8bSH 又はエノラート陰イオンR8bC(O)CH2- (式中、R8b は式 (IB)の化合物について定義されたとおりである)と反応させて式(IB)の化合物を生成し、
(ii)式(IB)の化合物中のR1b が-C(O)OR8b 又は-C(O)NR9bR10bである場合には、必要によりその-C(O)OR8b 基又は-C(O)NR9bR10b 基を官能基変換によりシアノ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ホルミル、-C(O)R8b又は-C(S)NH2(式中、R8b 、R9b 及びR10bは式(IB)について先に定義されたとおりである)に変換してもよく、そして
(iii) R2b が-S(O)mR11bである場合には、必要によりその基-S(O)mR11b(式中、R11bは式(IB)の化合物について先に定義されたとおりであり、かつmは0又は1である)を酸化して式(IB)の化合物を生成することを含み、
工程ii) 及びiii)の順序が変えられてもよい。
QがBr、Cl又はIである式 (IIB)の化合物は当業界で知られており、例えば、EP 0 295 117及び米国特許第5,232,940 号(両方とも参考として本明細書に含まれる)で知られている。加えて、これらの化合物は以下に示される式 (IIIB)の5-アミノ-置換アリールピラゾール化合物から調製されてもよい。
その方法の一実施態様において、QがI、Br又はClである式 (IIB)の化合物が式 (IIIB):
【化19】
(IIIB)
【0049】
(式中、R1b 、R2b 、R4b 、R5b 、R6b 、R7b 及びWは式(IB)の化合物について先に定義されたとおりである)
の化合物を亜硝酸化合物T-ONO (式中、Tは水素又はアルキルである)、又はその塩の存在下でBr、Cl又はIの源と反応させることにより調製される。亜硝酸化合物T-ONO の例として、亜硝酸塩、例えば、NaNO2 及び亜硝酸アルキル、例えば、亜硝酸イソペンチル、亜硝酸tert-ブチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
種々の5-アミノピラゾール化合物が当業界で知られており、これらの化合物の合成が広く報告されていた。例えば、式 (IIIB) の化合物は既知の方法(即ち、化学文献に先に使用又は記載された方法):一般にピラゾール環生成、続いて必要により置換基の交換;又は米国特許第5,232,940 号; 同第5,618,945 号; 同第5,306,694 号; 同第4,772,312 号; 同第4,804,675 号; 同第4,614,533 号; 同第3,402,308 号; 同第6,620,943 号; EP 0 295 117及びWO 2009/077853(全て参考として本明細書にそのまま含まれる)の一つ以上に記載された方法の適用又は適合により調製されてもよい。
中間体ジアゾニウム塩を経由してのハロゲン置換アリール化合物へのアミノ置換アリール化合物の変換は当業界で公知である。この変換のための一つの公知の方法がサンドマイヤー反応(例えば、Advanced Organic Chemistry, 第3編, Jerry March 著, Wiley-Interscience, New Yorkを参照のこと; アミンのジアゾ化につき、Butler, R.N.著, Chemical Reviews, 1975, 75(2) 巻, 241-257 を参照のこと)と称される。サンドマイヤー反応は相当するアリールクロリドを得るために塩化第一銅によるアリールジアゾニウム塩の処理を伴なう。ハライドへのジアゾニウム基の変換はまたHBr 又はHCl を使用して銅なしで行なうことができ、ガッターマン反応と称される。アリールブロミド及びアリールクロリドはまた相当するアミンから亜硝酸塩試薬及びCuCl2 又はCuBr2 によるアミンの処理を含む種々の方法により一工程で調製し得る。これはアミンからのジアゾニウム生成続いて所望のアリールハライドへのその中間体塩の変換に相当する。アリールヨージドはまた相当するアリールジアゾニウム塩からKI、NaI 、LiI 等を含むが、これらに限定されない好適なヨージド源との反応により調製し得る。
【0050】
ピラゾール化合物との或る反応がまた文献に記載されていた。例えば、Colomer らが5-アミノ-1H-ピラゾール-4-カルボニトリルのジアゾ化によるピラゾロ[3,4-d][1,2,3] トリアジン-4-オンの合成を記載している (Colomer 及びMoyano著, Tett.Lett., 2011, 52(14), 1561-1565)。Yamamotoらが相当する5-アミノピラゾール化合物からの5-クロロピラゾール化合物の合成を記載している (J.Heterocyclic Chemistry, 1991, 28(6), 1545-1547) 。Gorja らが相当する5-アミノピラゾール化合物からの5-ヨード-ピラゾール-4-カルボン酸化合物の調製続いてパラジウム触媒アルキニル化を記載している (Gorjaら著, Beilstein Journal of Organic Chemistry, 2009, 5(64)) 。しかしながら、これらの刊行物に記載されたピラゾール化合物は式 (IIIB) のフェニルピラゾール化合物とは異なる置換パターンを有する。
その方法に使用される亜硝酸化合物 T-ONOの量は式 (IIB)の化合物への式 (IIIB) の化合物の最良の変換を達成するために変化し得る。一実施態様において、式 (IIIB)の化合物1モル当り約0.8 当量〜約5当量の亜硝酸化合物が使用し得る。別の実施態様において、約1.0 当量〜約4当量が使用し得る。更にその他の実施態様において、約1.0 当量〜約3.0 当量の亜硝酸化合物が使用し得る。更に別の実施態様において、約2.0 当量の亜硝酸化合物が使用し得る。
【0051】
一実施態様において、Br、Cl又はIの源はHBr 、HCl 又はHIであろう。ハロゲン化水素酸がハライド源として使用される場合、その酸の量が式 (IIB)の化合物への式 (IIIB) の化合物の最良の変換を得るように調節されてもよい。一実施態様において、使用されるハロゲン化水素酸がその酸の水溶液であろう。別の実施態様において、使用される酸の量が式 (IIIB) の化合物1モル当り約1当量から約20当量までであろう。別の実施態様において、その酸の約1当量〜約10当量が使用されるであろう。更にその他の実施態様において、その酸の約2当量〜約8当量が使用されるであろう。更に別の実施態様において、その酸の約3当量〜約7当量が使用されるであろう。本発明の特別な実施態様において、その酸の約5当量が使用されるであろう。
別の実施態様において、Br、Cl又はIの源が臭素、塩素又はヨウ素であろう。
別の実施態様において、Br、Cl又はIの源がその酸のアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、リチウム塩、セシウム塩又はカリウム塩であろう。一実施態様において、臭化ナトリウム、臭化リチウム、臭化カリウム又は臭化セシウムが使用されてもよい。別の実施態様において、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム又は塩化セシウムが使用されてもよい。更に別の実施態様において、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム又はヨウ化セシウムが使用されてもよい。使用されるアルカリ金属塩の量は変えられてもよい。一実施態様において、式 (IIIB) の化合物1モル当り約0.5 当量〜約10当量の塩が使用されてもよい。別の実施態様において、約0.5 当量〜約5当量の塩が使用されてもよい。更に別の実施態様において、約1.0 当量〜約3当量のアルカリ金属塩が使用されてもよい。例えば、本発明の一実施態様において、3当量のNaNO2 と5当量のHBr との式 (IIIB) の化合物(1当量) の反応への臭化物源としての1.2 当量のKBr の添加が0℃で30分そして50℃で5時間後に86.5% の生成物生成をもたらすことがわかった。
【0052】
更に別の実施態様において、Br、Cl又はIの源が銅 (I)又は銅(II)の塩化物、臭化物又はヨウ化物であろう。ハロゲン化銅 (I)又は(II)が触媒量又は式 (IIIB) の化合物1モル当り化学量論量で使用されてもよい。一実施態様において、約0.2 当量〜約2当量のハロゲン化銅が使用されてもよい。別の実施態様において、約0.3 当量〜約2当量又は約0.3 当量〜約1.5 当量の銅 (I) 又は銅(II)のハロゲン化物がその方法で使用されてもよい。例えば、0.3 当量のCuBrが2当量のNaNO2 及び5当量のHBr とともに所望の生成物を有効に与えることがわかった。同様に、1当量のCuBrが所望の生成物を与えることがわかった。その他の実施態様において、0.5 当量のCuBr又はCuBr2 の使用が所望の生成物への有効な変換を与えることがわかった。
更に別の実施態様において、Br、Cl又はIの源がブロモホルム、クロロホルム又はヨードホルムであろう。
別の実施態様において、その反応がBr、Cl又はIの異なる源の組み合わせを用いて行なわれる。例えば、その反応がハロゲン化銅 (I)又はハロゲン化銅(II)及びアルカリ金属ハロゲン化物塩を用いて行なわれてもよい。一実施態様において、式 (IIB)の化合物を得るための式 (IIIB)の化合物の反応がCuBr2 及び/又はCuBr及びKBr を用いて行なわれる。別の実施態様において、その反応がCuBr2 及び/又はCuBr及びNaBrを用いて行なわれる。更に別の実施態様において、その反応がCuBr2 及び/又はCuBr及びLiBrを用いて行なわれる。別の実施態様において、その反応がCuBr2 及び/又はCuBr及びCsBrを用いて行なわれる。
【0053】
一実施態様において、式 (IIB)の化合物を得るための式 (IIIB)の化合物の反応がCuCl2及び/又はCuCl及びKCl を用いて行なわれる。別の実施態様において、その反応がCuCl2 及び/又はCuCl及びNaClを用いて行なわれる。更に別の実施態様において、その反応がCuCl2 及び/又はCuCl及びLiClを用いて行なわれる。別の実施態様において、その反応がCuCl2 及び/又はCuCl及びCsClを用いて行なわれる。更に一つの実施態様において、式 (IIB)の化合物を得るための式 (IIIB)の化合物の反応がCuI2及び/又はCuI 及びKIを用いて行なわれる。別の実施態様において、その反応がCuI2及び/又はCuI 及びNaI を用いて行なわれる。更に別の実施態様において、その反応がCuI2及び/又はCuI 及びLiI を用いて行なわれる。別の実施態様において、その反応がCuI2及び/又はCuI 及びCsI を用いて行なわれる。
本発明の一実施態様において、式 (IIB)の化合物への式 (IIIB)の化合物の変換が式 (IIIB) の化合物1モル当り約2当量〜約5当量のT-ONO と一緒に約3当量〜約8当量のハロゲン化水素酸HX (式中、XはBr、Cl又はIである) の組み合わせを使用するであろう。別の実施態様において、その方法が約3当量〜約5当量のT-ONO 及び約3当量〜約6当量のHXを使用するであろう。更に別の実施態様において、その方法が約3当量のT-ONO 及び約3当量のHXを使用するであろう。別の実施態様において、その方法が約3当量のT-ONO 及び約5当量のHXを使用するであろう。
【0054】
ジアゾニウム塩生成−ハロゲン化反応は好適な反応変換が過剰の副生物を生成しないで得られるあらゆる温度範囲で行なわれてもよい。反応温度として、-78 ℃〜使用される溶媒の沸点(約-78 ℃〜80℃、約-20 ℃〜約80℃、約-10 ℃〜約60℃又は約0℃〜約50℃を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。その他の実施態様において、その反応が約0℃〜約20℃、約0℃〜約30℃、又は約0℃〜約40℃で行なわれる。更にその他の実施態様において、その反応が約20℃〜約80℃、約30℃〜約60℃又は約40℃〜約60℃で行なわれてもよい。一実施態様において、その反応が約50℃で行なわれる。
或る実施態様において、反応を低温で開始し、次いでその混合物を温めて妥当な転化率を得ることが好ましいかもしれないことが理解されるであろう。例えば、試薬をほぼ周囲温度未満の如き低温(約0℃を含む)で添加し、次いでその反応混合物を好適な温度範囲(例えば、上記温度範囲の一つ(約50℃を含む))に温めて転化率を改善し、好適な反応転化率を得ることが所望されるかもしれない。
当業者は反応が進行するにつれてその反応混合物の組成及びその反応の転化率を監視することにより不純物生成を最小に保ちつつ好適な反応速度を得るために最適の反応温度を決めることができるであろう。これは通常のクロマトグラフィー技術、例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)等を使用して行なわれてもよい。
或る実施態様において、これらの反応は反応に干渉せず、又は出発物質、生成物もしくは試薬と反応しない溶媒の存在下で行なわれてもよい。有益な溶媒として、当業界で知られている非反応性かつ/又は非求核性の有機溶媒が挙げられる。非求核性溶媒として、炭化水素溶媒、芳香族溶媒、エーテル、ハロゲン化溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒等が挙げられるが、これらに限定されない。炭化水素溶媒として、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタン等が挙げられる。芳香族溶媒として、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール等が挙げられるが、これらに限定されない。エーテルとして、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチルエーテル、メチル tert-ブチルエーテル、ブチルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。エステル溶媒として、アルキルエステル、例えば、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。ニトリル溶媒として、アセトニトリル等が挙げられる。ケトン溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。アミド溶媒として、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
別の実施態様において、Qがハロアルキルスルホネートである式 (IIB)の化合物は5位にヒドロキシル基を有する以下に示される式 (IVB)の化合物(式中、変数R1b 、R2b 、R4b 、R5b 、R6b 、R7b 及びWは式(IB)の化合物について先に定義されたとおりである)と、式 RTS(O)2-Lの化合物(式中、RTはハロアルキル基であり、かつLは脱離基である)の反応により生成されてもよい。
【0055】
【化20】
(IVB)
【0056】
ピラゾール環に5-ヒドロキシ基を有するフェニルピラゾール化合物は当業界で知られており、例えば、WO 01/40195 、米国特許第6,569,886 号、EP 0 385 809及び米国特許第5,047,550 号(全て参考として本明細書に含まれる)で知られている。更に、ピラゾール環の5位に5-ヒドロキシル基を有するフェニルピラゾール化合物は中間体ジアゾニウム塩を酸性媒体中で水で処理することにより調製し得る (Advanced Organic Chemistry, 第3編, Jerry March 著, Wiley-Interscience, New York, 601 頁を参照のこと)。勿論、5-ヒドロキシル置換化合物のその他の調製方法が使用されてもよい。
或る実施態様において、Lはトリフレート基-OS(O)2CF3であってもよい。好適な試薬として、トリフルオロメタン無水スルホン酸、N-フェニル-ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、N-(5-クロロ-2-ピリジル)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、2-クロロピリジウムトリフレート(樹脂支持体を含む)及びN-(4-tert-ブチルフェニル)ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
式 (IVB)の化合物とRTS(O)2-L の反応は先に提示された好適な非反応性溶媒(非反応性炭化水素溶媒、芳香族溶媒、エーテル、ハロゲン化溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒等を含む)中で行なわれてもよい。
その反応は生成物への所望の変換を得るのに適した温度(-78 ℃〜溶媒の沸点が挙げられるが、これに限定されない)で行なわれてもよい。好適な温度範囲として、約-78 ℃〜100 ℃、約-78 ℃〜約80℃、約-78 ℃〜約50℃、約-78 ℃〜約30℃、約-78 ℃〜約20℃、約-78 ℃〜0℃、約-78 ℃〜約-20 ℃が挙げられるが、これらに限定されない。その他の実施態様において、その反応が約-20 ℃〜約20℃、約-20 ℃〜約10℃又は約-20 ℃〜約0℃で行なわれる。先に説明されたように、或る実施態様において、その反応を低温で開始し、次いでその混合物を温めて妥当な転化率を得ることが好ましいかもしれないことが理解されるであろう。
式 (IIIB) の化合物が式 (IIB)の化合物を生成するための反応が完結した後、その反応混合物が試薬を反応停止し、所望の生成物をその反応混合物から精製するために処理されてもよい。当業界で知られているあらゆる好適な処理操作が過剰の試薬を除去し、反応停止し、除去し、生成物を単離するのに使用されてもよい。相当するハライドを生成するためのアリール又はヘテロアリールアミンの反応に適した処理操作が当業界で知られており、当業者は好適な操作を決めることができるであろう。
【0057】
一実施態様において、その反応混合物が濃縮されて過剰の反応溶媒を除去し、かつ/又はその反応溶媒を生成物の精製及び単離のための別の溶媒と交換する。例えば、水と混和性である溶媒を非混和性溶媒と交換することが望ましいかもしれず、その結果、その混合物が水で抽出されて水溶性成分を除去し得る。こうして、一実施態様において、その反応混合物が蒸留されて反応溶媒の一部を除去し、第二の非水混和性溶媒が添加される。非水混和性溶媒は当業界で公知であり、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、芳香族溶媒、塩素化溶媒等が挙げられる。一実施態様において、反応溶媒が蒸留により除去され、エーテル溶媒、例えば、メチル tert-ブチルエーテルと交換される。
次いで得られる混合物が水性洗浄液で洗浄されてその混合物から酸化性成分及び酸性成分を反応停止し、除去してもよい。一実施態様において、その混合物がチオ硫酸ナトリウム (Na2S2O3)水溶液で洗浄されて臭素の如き酸化性副生物を除去してもよい。別の実施態様において、その混合物が希薄な塩基性水溶液で洗浄されて酸性成分を除去してもよい。好適な塩基として、アルカリ金属の炭酸塩及び重炭酸塩、水酸化物等が挙げられる。更に別の実施態様において、その混合物が更に水及び食塩水で洗浄されてもよい。
別の実施態様において、その反応混合物がその混合物を好適なフィルターにより濾過して固体物質を除去することにより処理されてもよく、生成物が当業界で知られている技術により精製されてもよい。
【0058】
スケールに応じて、得られる有機溶液が濃縮されて固体を得てもよく、これが更にクロマトグラフィーもしくは再結晶により精製されてもよく、又はその混合物が処理されて固体を溶液から直接に結晶化してもよい。
別の実施態様において、その反応混合物が冷却され、次いでその反応溶媒の一部を蒸留して除くことにより濃縮される。その溶媒は生成物が冷却後に結晶化する別の溶媒により交換されてもよい。溶媒が一旦切り換えられると、その混合物が加熱されて固体の全てを溶解してもよく、次いで冷却されて生成物を結晶化してもよい。一実施態様において、その反応溶媒が除去され、イソプロパノールと交換される。一実施態様において、その混合物が周囲温度以下に冷却される場合に、所望の生成物が好適な濃度でイソプロパノールから結晶化する。置換アリール化合物又はヘテロアリール化合物を生成するためのハロ置換アリール化合物又はヘテロアリール化合物と種々の求核試薬との遷移金属触媒カップリング反応がまた当業界で公知である (例えば、“金属触媒クロスカップリング反応”, Wiley-VCH publishers, 1998, F.Diedrich及びP.J.Stang, 4章 T.N.Mitchell著;“有機合成における著名な反応の戦略的適用”, L.Kurti, B.Czako編集, Elsevier Academic Press, 2005; Suzuki ら著, Tetrahedron Letters 20 (36): 3437-3440; Corriu, R.J.P.及びMasse, J.P. 著, Journal of the Chemical Society, Chemical Communications 1972, (3): 144a; Suzuki, A.ら著Chem.Rev., 1995, 95, 2457; Kumada, Makotoら著, J.Am.Chem.Soc.94 (12): 4374-4376; Stille, J.K. ら著, J.Am.Chem.Soc.1978, 100, 3636; E-I.Negishiら著, Journal of the Chemical Society Chemical Communications 1977, (19): 683; Heck, R.F. ら著, J.Org.Chem., 1972, 37 (14): 2320-2322; Heck, R.F.著, Acc.Chem.Res.1979, 12, 146; Heck, R.F. 著Chem.Rev.2000, 100, 3009; Sonogashira, K. 著, J.Organomet.Chem., 2002, 653: 46-49; Hartwig, J.F. 著, Pure Appl.Chem 1999, 71 (8): 1416-1423; Muci, A.R.; Buchwald, S.L. 著Topics in Curr.Chem.2002, 219: 131-209; Buchwald ら著, Acc.Chem.Res., 1998, 31, 805-818; Hartwig 著, Acc.Chem.Res., 1998, 31, 852-860を参照のこと) 。WO 2008/005489 及びUS 2008/0031902 は5-ビニル置換化合物(これは続いて還元されて5-エチル置換化合物を生成する)を生成するためのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの存在下の5-ブロモ置換ピラゾール化合物とトリブチルビニルスタナンの反応を記載している。それにもかかわらず、この金属触媒反応はピラゾール環の5位にアルキル置換基を一工程で直接に導入するのに適用されていなかった。
【0059】
一実施態様において、その方法の工程 (i)における遷移金属触媒がパラジウム触媒である。別の実施態様において、その金属触媒が銅触媒である。更に別の実施態様において、その金属触媒がニッケル又はロジウム触媒である。更に別の実施態様において、その触媒がMnCl2 を含むが、これに限定されないマンガン触媒である。
パラジウム触媒は当業界で公知であり、Pd(0) 源及びP(II) 源を含む。一実施態様において、パラジウム/カーボンが触媒として使用されてもよい。別の実施態様において、パラジウム触媒種が使用されてもよく、これらは典型的にはパラジウム金属に結合された一つ以上のリガンドを含むであろう。
多種のリガンドが当業界で知られており、ホスフィンリガンドを含み、これらが典型的には好ましい (例えば、C.Amatore 及びA.Jutand著, Coord.Chem.Rev.1998, 178-180及び511-528 を参照のこと) 。その方法に有益なホスフィンリガンドとして、トリフェニルホスフィン、トリ (o-トリル)ホスフィン (CAS # 6163-58-2) 、トリ (2-フリル)ホスフィン (CAS # 5518-52-5)、1,2-ビス (ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe, CAS # 1663-45-2)、1,4-ビス (ジフェニルホスフィノ)ブタン (dppb)、2,3-ビス (ジフェニルホスフィノ)ブタン(キラフォス) 、4,5-ビス (ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン (キサントフォス), 1,2-ビス (2,5-ジメチルホスホラノ)ベンゼン (Me-DuPhos)、ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン (ジョシフォス) 、ビス (ジフェニルホスフィノ)メタン (dppm, CAS # 2071-20-7) 、1,4-ビス (ジフェニルホスフィノ)ブタン(CAS # 7688-25-7)、1,3-ビス (ジフェニルホスフィノ)プロパン (dppp, CAS # 6737-42-4) 、1,2-ビス (ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン (dcpe, CAS # 23743-26-2)、トリシクロヘキシルホスフィン (CAS # 2622-14-2) 、トリブチルホスフィン (CAS # 998-40-3)、トリ-tertブチルホスフィン (CAS # 13716-12-6) 、トリス (ペンタフルオロフェニルホスフィン) (CAS # 1259-35-4) 、トリス (2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン (CAS # 23897-15-6)、2,2'-ビス (ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル (binap) 、(2-ビフェニル)ジ-tert-ブチルホスフィン (CAS # 224311-51-7) 、(2-ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン (CAS # 247940-06-3) 、2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル (“tert-ブチル XPhos”, CAS # 564483-19-8)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル (“Sphos”, CAS # 657408-07-6)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル (“DavePhos”, CAS # 213697-53-1) 、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル (“Xphos”, CAS # 564483-18-7) 等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
加えて、そのパラジウムカップリング反応はN-複素環カルベンリガンド (例えば、Hillier, A.C. ら著, J.Organomet.Chem.2002, 69-82を参照のこと) を用いて行なわれてもよく、これらとして、1,3-ビス (2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾリウムクロリド (CAS # 141556-45-8) 、1,3-ビス (2,6-ジイソプロピルフェニル) イミダゾリウムクロリド (CAS # 250285-32-6)、1,3-ビス (2,6-ジイソプロピルフェニル) イミダゾリジニウムテトラフルオロボレート (CAS # 282109-83-5)、1,3-ビス (2,4,6-トリメチルフェニル) イミダゾリジニウムテトラフルオロボレート (CAS # 141556-45-8)等が挙げられるが、これらに限定されない。
触媒は予備生成された錯体、例えば、 (Ph3P)4Pd、(Ph3P)2PdCl2、(CH3CN)2PdCl2 、Pd2(dba)3 、(dppf)PdCl2 、([1,1'-ビス (ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II) ジクロリド) 等から誘導されてもよく、又は触媒はPdCl2、Pd(OAc)2 、Pd(dba)2 、等を含むが、これらに限定されないパラジウム源、及び好適なリガンドの組み合わせからその場で生成されてもよい。一実施態様において、触媒がPd2(dba)3 である。別の実施態様において、アミン塩基、例えば、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン等が反応混合物に添加されて触媒を安定化する。
【0061】
別の実施態様において、パラジウム触媒がパラジウム/木炭であってもよい。種々の型のパラジウム/木炭触媒がJohnson-Matthey 及びその他の供給先から市販されている。
別の実施態様において、触媒が担持されたパラジウム触媒であろう。これらの触媒は金属結合部分を含むポリマー支持体で担持された、金属、例えば、パラジウムを含む。一実施態様において、担持ポリマーはポリオレフィンベース繊維、例えば、Johnson-Matthey からのSmopex(登録商標)ポリオレフィンベース繊維を含むが、これらに限定されないポリマーベース繊維上のパラジウムである。
別の実施態様において、担持された触媒がポリマー定着均一触媒であり、この場合、パラジウム金属が不活性ポリオレフィン繊維(これは普通の有機溶媒に不溶性である)に更に結合し得るポリマー鎖に共有結合されている。好適な担持された触媒として、Johnson-Matthey からの商品名ファイバーキャット(登録商標)により販売されるもの、特にJohnson-Matthey により販売されるファイバーキャット(登録商標)担持ポリマーの1000シリーズが挙げられる。勿論、ポリマー支持体で担持されたパラジウム触媒のその他の型(ポリスチレンをベースとする担持された触媒等が挙げられるが、これらに限定されない)が使用されてもよい。
或る実施態様において、酸素を溶媒及び/又は溶液(その中に、触媒が存在する)から除去してリガンドの酸化及び触媒の脱安定化を回避することが望ましい。これは当業界で知られているあらゆる様式、例えば、真空を混合物に交互に適用することによる混合物の脱気、続いて窒素又は別の好適な不活性ガスの導入で行なわれてもよい。また、窒素又は別の不活性ガスが触媒を含む溶媒又は溶液に吹き込まれてもよい。
【0062】
工程 (i)の反応が式 (IIc)(式中、MがBY2 である)の化合物又は式 (IId)の化合物を用いて行なわれる方法の或る実施態様において、触媒に加えて好適な塩基をその反応混合物に添加することが必要であるかもしれない。好適な塩基として、アルカリ金属の水酸化物又はアルコキシド、例えば、NaOH、LiOH及びKOH;アルカリ土類金属の水酸化物又はアルコキシド、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸セシウムを含む)、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のリン酸塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ土類金属酢酸塩、並びにアミン塩基、例えば、トリアルキルアミン(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンを含むが、これらに限定されない)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0] ウンデカ-7-エン (DBU); 1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-3-エン (DBN); 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2] オクタン (DABCO)等が挙げられるが、これらに限定されない。
一実施態様において、その方法の工程 (i)が式 (IIB)(式中、Qがブロモ又はヨードである)の化合物の反応を含む。別の実施態様において、その方法の工程 (i)が式 (IIB)(式中、Qがトリフレートである)の化合物の反応を含む。
別の実施態様において、その方法の工程 (i)が式 (IIB)(式中、Qがブロモ、ヨード又はトリフレートである)の化合物と、式 (IIc)(式中、MがZnX 、RZn 又はBY2 であり、Xがブロモ又はクロロであり、Rがメチル又はエチル(必要により1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい)であり、かつYがOH又はアルコキシである)の化合物の反応を含む。
別の実施態様において、その方法の工程 (i)が式 (IIB(式中、Qがブロモ、ヨード又はトリフレートである)の化合物と、式 (IId)(式中、R1d 、R2d 及びR3d が独立にC1-C3 アルキル又はC1-C3ハロアルキルである)の化合物の反応を含む。
本発明の方法は式 (IIB)、(IIIB)又は(IVB)の化合物中の変数R1b 、R2b 、R4b 、R5b 、R6b 、R7b 及びWにつき適当な基を選ぶことにより或る好ましい置換パターンを有する式(IB)の或るアリールピラゾール化合物を調製するのに適合し得ることが当業者に明らかであろう。
また、本明細書に記載された方法の範囲内で、使用される合成工程の順序が変えられてもよく、とりわけ、特別な基質中に存在するその他の官能基の性質、主要な中間体の入手可能性、及び採用される保護基戦略(存在する場合)(例えば、“有機合成における保護基 (第3編)”, Greene 及びWuts編集, Wiley-Interscience, (1999)を参照のこと)の如き因子に依存することが当業者により理解されるであろう。明らかに、このような因子はまた前記合成工程における使用のための試薬の選択に影響するであろう。
【0063】
工程 (i)におけるパラジウムカップリング反応はその反応に干渉しない溶媒中で典型的に行なわれる。有益な溶媒として、炭化水素溶媒、芳香族溶媒、エーテル、ハロゲン化溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒等が挙げられるが、これらに限定されない。炭化水素溶媒として、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタン等が挙げられる。芳香族溶媒として、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール等が挙げられるが、これらに限定されない。エーテルとして、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチルエーテル、メチル tert-ブチルエーテル、ブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。エステル溶媒として、アルキルエステル、例えば、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。ニトリル溶媒として、アセトニトリル等が挙げられる。ケトン溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。アミド溶媒として、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
或る実施態様において、その方法の工程 (i)では、式 (IIc)の化合物が式 (IIB)の量を基準として約 0.8モル当量〜約5モル当量で存在するであろう。或る実施態様において、その方法の工程 (i)で使用される式 (IIc)の化合物の量が式 (IIB)の化合物と較べてモル過剰であり、その結果、最良の反応転化率及び収率が得られるかもしれない。或る実施態様において、式 (IIc)の化合物が約1.0 モル当量〜約5モル当量、約1.0 モル当量〜約3モル当量、約1.0 モル当量〜約2当量又は約1.0 モル当量〜約1.5 モル当量の量で存在するであろう。更に別の実施態様において、式 (IIc)の化合物の量が約1.0 モル当量〜約1.3 モル当量であろう。
【0064】
その他の実施態様において、その方法の工程 (i)では、式 (IId)の化合物が式 (IIB)の化合物の量を基準として約0.3 モル当量〜約5モル当量で存在するであろう。別の実施態様において、式 (IId)の化合物が約0.3 当量〜約2当量で存在するであろう。或る実施態様において、その方法の工程 (i)で使用される式 (IId)の化合物の量が式 (IIB)の化合物と較べてわずかにモル過剰であり、その結果、最良の反応転化率及び収率が得られるかもしれない。或る実施態様において、式 (IId)の化合物が約1.0 モル当量〜約2モル当量、約1.0 モル当量〜約1.5 モル当量、約1.0 モル当量〜約1.3 モル当量又は約1.0 モル当量〜約1.2 モル当量の量で存在するであろう。
更に別の実施態様において、工程 (i)における式 (IId)の化合物の量が式 (IIB)の化合物を基準として1モル当量未満で存在するであろう。何とならば、式 (IId)の化合物がその反応におそらく関与し得る三つのメチル基を含むからである。一実施態様において、式 (IId)の化合物が式 (IIB)の化合物の約0.3 モル当量〜約1.0 モル当量で存在するであろう。別の実施態様において、式 (IId)の化合物が式 (IIB)の化合物の0.3 当量〜0.9 当量、約0.5 当量〜約0.9 当量又は約0.7 モル当量〜約0.9 モル当量で存在するであろう。
或る実施態様において、その方法の工程 (i)に使用される触媒の量が式 (IIB)のピラゾール化合物の約0.001 モル当量〜約0.5 モル当量、約0.01〜約0.5 当量、約0.01当量〜約0.25当量、約0.01当量〜約0.15当量又は約0.01当量〜約0.1 当量である。その他の実施態様において、使用される触媒の量が約0.01当量〜約0.05当量、約0.01当量〜約0.025 当量又は約0.025 当量〜約0.075 当量である。一実施態様において、約0.05モル当量のパラジウム触媒が使用される。
塩基がその反応混合物中に使用される或る実施態様において、過剰の塩基を使用することが所望されるかもしれない。或る実施態様において、使用される塩基の量が式 (IIB)のピラゾール化合物の約0.5 モル当量〜約20モル当量である。その他の実施態様において、塩基の量が約1当量〜約10当量、約1当量〜約8当量又は約1当量〜約5当量である。その他の実施態様において、使用される塩基の量が約2当量〜約8当量、約3当量〜約7当量又は約3当量〜約5当量である。
【0065】
本発明の別の実施態様において、式 (IB)の化合物が中間体を単離又は精製しないで一工程で式(IIIB)の5-アミノ化合物から調製し得る。一実施態様において、式(IIIB)の化合物がパラジウム触媒の存在下で式 (IIc)又は (IId)の化合物とのカップリング反応に関与し得るジアゾニウム塩に変換し得る。別の実施態様において、式 (IIB)の化合物が式(IIIB)の化合物から生成されてもよく、単離しないで式 (IIc)又は (IId)の化合物と直接反応させられてもよい。
式(IB)の化合物を生成するための反応が完結された後に、その反応混合物が処理されて過剰の試薬を除去し、所望の生成物をその反応混合物から精製し得る。当業界で知られているあらゆる好適な処理操作が反応停止し、過剰の試薬を除去し、生成物を精製し、単離するのに使用されてもよい。
一実施態様において、その混合物が水又は水溶液に添加され、混合されて望ましくない成分を水層に抽出し得る。層が分離され、水層が有機溶媒で逆抽出し得る。合わせた有機層が更に食塩水で洗浄されてもよい。
規模に応じて、得られる有機溶液が濃縮されて固体を得てもよく、これが更にクロマトグラフィー又は再結晶により精製し得る。別の実施態様において、処理混合物が更に処理されて固体をその溶液から直接結晶化してもよい。
一実施態様において、その反応混合物が活性炭で処理されて不純物及びパラジウム触媒を除去してもよい。時間の好適な期間後に、混合物が濾過されて活性炭及び不純物を除去してもよい。或る実施態様において、濾過が好適な濾過媒体、例えば、ケイソウ土 (Celite(登録商標)) のケーキにより行なわれて活性炭及び不純物の除去を助けてもよい。
別の実施態様において、濾液が溶媒の一部を蒸留して除くことにより濃縮される。その混合物が加熱されて固体を溶解してもよく、次いで徐々に冷却されて生成物を溶液から結晶化してもよい。別の実施態様において、溶媒は生成物が冷却後に結晶化する別の溶媒により交換されてもよい。生成物が好適な濃度で適当な溶媒と一旦混合されると、その混合物が加熱されて固体の全てを溶解してもよく、次いで徐々に冷却されて生成物を結晶化してもよい。一実施態様において、その混合物が周囲温度以下に冷却される時に所望の生成物が好適な濃度でイソプロパノールから結晶化する。
【0066】
一実施態様において、本発明の方法は
R1b が水素、シアノ、ハロゲン、R8b 、ホルミル、-CO2H 、-C(O)R8b、-C(O)OR8b 、-C(O)NR9bR10b 又は-C(S)NH2であり、
R2b がR8b 又は-S(O)mR11bであり、
R3b がC1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C6ヒドロキシアルキル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ハロシクロアルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C6-C14アリール、C5-C14ヘテロアリール、C5-C14複素環、R8bNH 、(R8b)2N、R8bO、R8bS又はR8bC(O)CH2-であり、夫々のC1-C6アルキル基、C3-C8シクロアルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C6-C14アリール基、C5-C14複素環基又はC5-C14ヘテロアリール基が必要により1個以上のハロゲン、ヒドロキシ、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシ C1-C6アルコキシ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、C1-C6ジアルキルアミノ、ニトロ、シアノ又は-C(S)NH2により置換されていてもよく、
R4b 、R5b 、R7b 及びR13bが夫々独立に水素、ハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、シアノ又はニトロであり、
R6b がハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、-C(O)R12b 、-S(O)nR12b又はSF5 であり、
Wが窒素又はC-R13bであり、
R8b がC1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C6ヒドロキシアルキル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ハロシクロアルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6ハロアルケニル、C2-C6アルキニル、C2-C6ハロアルキニル、C6-C14アリール、C5-C14複素環又はC5-C14ヘテロアリールであり、
R9b 及びR10bが独立に水素、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、ヒドロキシ又はC1-C6アルコキシであり、
R11bがC1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6ハロアルケニル、C2-C6アルキニル、C2-C6ハロアルキニル、C3-C8シクロアルキル又はC3-C8ハロシクロアルキルであり、
R12bがC1-C6アルキル又はC1-C6ハロアルキルであり、
mが0、1又は2であり、かつ
nが0、1又は2である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
【0067】
別の実施態様において、その方法は
R1b がシアノ、-C(O)OR8b 、-C(O)NR9bR10b 又は-C(S)NH2であり、
R2b が-S(O)mR11bであり、
R3b がC1-C3アルキル又はC1-C3ハロアルキルであり、
R4b 、R5b 、R7b 及びR13bが夫々独立に水素又はハロゲンであり、
R6bがC1-C6ハロアルキル、C1-C6ハロアルコキシ又はSF5 であり、
WがC-R13bであり、
R8b がC1-C6アルキル又はC1-C6ハロアルキルであり、
R9b 及びR10bが独立に水素、C1-C6アルキル又はC1-C6ハロアルキルであり、
R11bがC1-C3ハロアルキルであり、
R12bがC1-C6アルキル又はC1-C6ハロアルキルであり、
mが0、1又は2であり、かつ
nが0、1又は2である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の更に別の実施態様において、その方法は
R1b がシアノ又は-C(S)NH2であり、
R2b が-S(O)mR11bであり、
R3b がメチル又はエチル(必要により1〜5個のハロゲン原子で置換されていてもよい)であり、
R4b 、R5b 、R7b 及びR13bが夫々独立に水素又はハロゲンであり、
R6b がC1-C6ハロアルキルであり、
WがC-R13b であり、
R11bがCF3 、CClF2 又はCCl2F であり、
mが0、1又は2であり、かつ
nが0、1又は2である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
【0068】
本発明の第二の局面の一実施態様において、本発明の方法はR1b がシアノ、-C(O)R8b、-C(O)OR8b 、-C(O)NR9bR10b 又は-C(S)NH2である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の第二の局面の別の実施態様において、本発明の方法はR3b がC1-C6 アルキル(必要により1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい)である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の第二の局面の更に別の実施態様において、本発明の方法はR3b がメチル又はエチル(必要により1〜5個のハロゲン原子で置換されていてもよい)である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の第二の局面の一実施態様において、本発明の方法はR2b が-S(O)mR11b (式中、R11bがC1-C3 アルキル又はC1-C3 ハロアルキルである)である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の第二の局面の一実施態様において、本発明の方法はR3b がメチル、-CH2F 、-CHF2 、CF3 、エチル、-CHFCH3 、-CF2CH3 、-CF2CF3 、又は-CHFCF3であり、WがCR13b であり、R4b 及びR13bがハロゲンであり、R5b 及びR7b が水素であり、かつR6b がCF3 である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
【0069】
本発明の第二の局面の一実施態様において、本発明の方法はR2b が-S(O)mR11b (式中、R11bがメチル、エチル、-CF3 、-CCl2F 又は-CF2Clである)である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の第二の局面の一実施態様において、本発明の方法はR1b がシアノ、-C(O)R8b 、-C(O)OR8b 、-C(O)NR9R10 又は-C(S)NH2であり、かつR3b がC1-C6 アルキル(必要により1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよい)である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の第二の局面の一実施態様において、本発明の方法はR1b がシアノ、-C(O)OR8 又は-C(O)NR9R10 であり、かつR3がメチル又はエチル(必要により1〜5個のハロゲン原子により置換されていてもよい)である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の第二の局面の別の実施態様において、本発明の方法はR1b がシアノであり、R3がメチル又はエチル(必要により1〜5個のハロゲン原子により置換されていてもよい)であり、かつR2b が-S(O)mR11b(式中、R11bがC1-C3 アルキル又はC1-C3 ハロアルキルである)である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の第二の局面の一実施態様において、本発明の方法はR1b がシアノであり、R3b がメチル、-CH2F 、-CHF2 、CF3 、エチル、-CHFCH3 、-CF2CH3 、-CF2CF3 、又は-CHFCF3 であり、かつR2b が-S(O)mR11b(式中、R11bがメチル、エチル、-CF3、-CCl2F又は-CF2Clである)である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
本発明の第二の局面の一つの好ましい実施態様において、本発明の方法はR1b がシアノであり、R3b がメチル又はエチルであり、かつR2b が-S(O)mR11b(式中、R11bがCF3 、-CCl2F又は-CF2Clである)である、式(IB)の化合物を調製するのに使用し得る。
【0070】
式 (I)及び(IB)の化合物は公知の官能基変換を使用して、例えば、ピラゾール環の3位又は5位のエステル -C(O)OR8bをカルボン酸、ヒドロキシメチル基、アミド等に変換することにより、これらの化合物中に存在する官能基を更に仕上げることにより調製し得ることが当業者に明らかであろう。更に、米国特許第7,759,381 号に記載されたように、エステル基がカルボン酸への加水分解、アミドの生成及びSOCl2 の如き脱水剤によるアミドの処理によりシアノ基に変換し得る。基-C(S)NH2は米国特許第6,265,430 号及び同第6,518,296 号(両方とも参考として本明細書にそのまま含まれる)に記載されたように、相当するシアノ基から硫化水素による処理により生成し得る。
本発明の別の実施態様において、式 (I)及び(IB)(式中、R3及びR3b がハロメチルである)の化合物が式 (I)及び(IB)(式中、R3及びR3b が、夫々、ヒドロキシメチルである)の相当する化合物とハロゲン化試薬(臭素化試薬、例えば、臭素又はN-ブロモスクシンイミドとトリフェニルホスフィンの混合物、臭化水素酸; 或いはフッ素化試薬、例えば、三フッ化ジメチルアミノ硫黄、三フッ化ジエチルアミノ硫黄 (DASTTM)又は三フッ化ビス (2-メトキシエチル)アミノ硫黄 (DeoxofluorTM) を含む)の反応により生成される。その反応は塩化メチレン、クロロホルムの如き溶媒中で一般に-100 ℃〜40℃の温度で通常行なわれる。このような方法の要約がComprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, 1989, R.C.Larock, 353-360頁に見られる。
式 (I)及び(IB)の化合物中の官能基を変性するための官能基変性工程として、
(a) カルボン酸-CO2H へのエステル又はアミドの加水分解;
(b) 脱カルボキシル化工程;
(c) アミドを生成するためのカルボン酸とアミンのカップリング;
(d) アシルハライドへのカルボン酸の変換;
(e)(i) -CH2OH への-CO2H 部分の還元;
(ii) -CHOを生成するための酸化工程;
(iii) ホルミル基、エステル基又はアミド基とアルキル又はアリール金属求核試薬、例えば、グリニヤール試薬 (例えば、R8-Mg-ハロゲン又はR8b-Mg-ハロゲン)又は有機リチウム試薬 (例えば、R8-Li 又はR8b-Mg-ハロゲン(式中、R8及びR8b は式 (I)又は(IB)について先に定義されたとおりである))の反応;
(iv)付加的な酸化工程; 又は
(ia) -CO2H部分を相当するN-メトキシ-N-メチル アミド (Weinreb アミド) を生成するための薬剤と反応させること; 及び
(iia) アルキル又はアリール金属求核試薬、例えば、グリニヤール試薬 (例えば、R8-Mg-ハロゲン又はR8b-Mg-ハロゲン(式中、R8及びR8b は式 (I)又は(IB)について先に定義されたとおりである))又は有機リチウム試薬 (例えば、R8-Li 又はR8b-Li(式中、R8及びR8b は式 (I)又は(IB)について先に定義されたとおりである))との反応
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
Weinreb アミドからの一般のケトン生成がMarch’s Advanced Organic Chemistry - 反応、メカニズム及び構造 (第6編), Michael B.Smith及びJerry March編集, Wiley Interscience (John Wiley & Sons, Inc.), 1448 頁, (2007)に記載されている。
一実施態様において、ピラゾール環の3位及び/又は5位にカルボキシル基-CO2H を有する式 (I)又は(IB)の化合物の脱カルボキシル化は相当する位置が水素である化合物を与える。
本発明の別の実施態様において、脱カルボキシル化工程続いてハロゲン化工程はピラゾール環の相当する位置がハロゲン原子である式 (I)又は(IB)の化合物を与える。脱カルボキシル化続いてハロゲン化のための一般方法の例はMorimotoら著, “ピラゾール-4-カルボキシレートの3位及び/又は5位の選択的塩素化によるハロスルフロン-メチルの合成”, J.Het.Chem., 34: 537-540 (1997) である。
本発明の別の実施態様において、カルボン酸置換基を有する式 (I)又は(IB)の化合物がカップリング剤、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の存在下でアミン HNR9R10又はHNR9bR10b(式中、R9、R10 、R9b 及びR10b は式 (I)及び(IB)について先に定義されたとおりである)と反応させられて式 (I)の化合物(式中、R1及び/又はR3がCONR9R10である);又は式(IB)の化合物(式中、R1b 及び/又はR3b がCONR9bR10bである)を生成する。この変換の一般の説明がMarch’s Advanced Organic Chemistry - 反応、メカニズム及び構造 (第6編), Michael B.Smith及びJerry March 編集, Wiley Interscience (John Wiley & Sons, Inc.), 1430-1434頁 (16-74 - カルボン酸によるアミンのアシル化- アミノ-脱ヒドロキシル化), (2007)に記載されている。
【0072】
本発明の別の実施態様において、官能基変性が式 (I)の化合物(式中、R1及び/又はR3がC(O)NH2 である)又は式(IB)の化合物(式中、R1b がC(O)NH2 である)を脱水剤、例えば、塩化チオニル、塩化オキサリル等と反応させて、式 (I)の化合物(式中、R1及び/又はR3がシアノである)又は式(IB)の化合物(式中、R1b がシアノである)を生成することを含む。この変換の一般の説明がMarch’s Advanced Organic Chemistry -反応、メカニズム及び構造 (第6編), Michael B.Smith及びJerry March 編集, Wiley Interscience (John Wiley & Sons, Inc.), 1549-1550 頁(17-30 - 未置換アミドの脱水 - N,N-ジヒドロ-C-オキソ-二重脱離), (2007) に記載されている。
本発明の別の実施態様において、その方法が更に式 (I)の化合物(式中、R1及び/又はR3がアミド -C(O)NH2 である)又は式(IB)の化合物(式中、R1b が-C(O)NH2である)を2,4-ビス (4-メトキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジスルフィド (ロウエッセン試薬として知られている) 及び関連試薬と反応させて式 (I)のチオアミド(式中、R1及び/又はR3がC(S)NH2 である)又は式(IB)の化合物(式中、R1b がC(S)NH2 である)を生成することを含む。この変換の一般の説明がMarch’s Advanced Organic Chemistry -反応、メカニズム及び構造 (第6編), Michael B.Smith 及びJerry March 編集, Wiley Interscience (John Wiley & Sons, Inc.), 1277-1278頁 (16-11 - カルボニル化合物へのH2S 及びチオールの付加- O-ヒドロ -C-メルカプト -付加), (2007)に記載されている。
【0073】
本発明の別の実施態様において、その方法が(i) -CH2OH へのピラゾール環の-CO2H部分の還元、(ii)-CHO部分を生成するためのその-CH2OH部分の酸化、(iii) その-CHO部分とグリニヤール試薬 (例えば、R8-Mg-ハロゲン又はR8b-Mg-ハロゲン) 又は有機リチウム試薬 (R8-Li又はR8b-Li) の反応、及び(iv)付加的な酸化工程を含む。
本発明の別の実施態様において、その方法が(i) -CH2OHへのピラゾール環の-CO2H 部分の還元、(ii) 式 (IIa) の化合物中の-CHOを生成するための-CHO部分の酸化、(iii) グリニヤール試薬 (例えば、R8-Mg-ハロゲン又はR8b-Mg-ハロゲン ) 又は有機リチウム 試薬 (例えば、R8-Li 又はR8b-Li) との反応、及び(iv) 式 (I)の化合物(式中、R1 及び/又はR3がR8である)又は式(IB)の化合物(式中、R1b がR8b である)を得るための得られるヒドロキシル部分の付加的な還元工程を更に含む。
本発明の一つの好ましい実施態様において、式 (I)の化合物中のR1が-C(O)R8 であり、又は式(IB)中の化合物中のR1b が-C(O)OR8である場合、その化合物が更に4工程方法(工程1がそのエステル基を加水分解してカルボン酸を生成することを含み、工程2がカルボン酸をハロゲン化剤と反応させてアシルハライドを生成することを含み、工程3がそのアシルハライドをアンモニアと反応させて未置換アミド基-C(O)NH2を生成することを含み、かつ工程4がその未置換アミド基を有する化合物を脱水剤、例えば、SOCl2 と反応させてピラゾール環の3位でシアノ基で置換された式 (I)又は(IB)の化合物を生成することを含む)により誘導体化してそのエステル基をCN基に変換する。この方法がLee らの米国特許第7,759,381 B2号(本明細書に参考として含まれる)に記載されており、下記のスキーム中に式 (I)の化合物について示される。
【0074】
【化21】
【0075】
本発明において使用される酸、塩基及び溶媒並びに個々のプロセス工程、例えば、アルキル化、グリニヤール反応/試薬、ハロゲン化及び酸化は当業者に明らかであろう(例えば、実用的有機化学のVogel の書籍 (第5編), Furniss ら著, Longman Scientific & Technical (1989); 有機合成における保護基 (第3編), Greene & Wuts, Wiley Interscience (1999); March’s Advanced Organic Chemistry: 反応、メカニズム、及び構造 (第6編), March & Smith, Wiley, (2007); Advanced Organic Chemistry (パートA - 構造及びメカニズム- 第4編), Carey & Sundberg, Springer Science (2000); Advanced Organic Chemistry (パートB - 反応及び合成- 第4編), Carey & Sundberg, Springer Science (2001); 有機合成における著名な反応の戦略的適用, Kurti 及びCzako, Academic Press (2005))。
本発明は本発明を更に説明する下記の非限定実施例により更に記載され、それらは本発明の範囲を限定することを意図しておらず、またそう解されるべきではない。
【実施例】
【0076】
全ての温度が摂氏温度で示され、室温は20〜25℃を意味する。試薬を商業上の供給先から購入し、又は下記の文献操作に従って調製した。
特にことわらない限り、カラムクロマトグラフィーによる精製を、粗残渣を小容積の適当な溶媒、好ましくは精製に使用される溶媒に溶解し、その混合物をシリカゲルで詰められたカラムにより溶離することにより行なった。或る場合には、化合物を50mmのバリアン・ダイナマックスHPLC 21.4 mmミクロソーブ・ガード-8 C8 カラムを使用するクロメレオンTMソフトウェアにより管理されるHPLC精製システムにより精製した。得られる画分を分析し、適当に合わせ、次いで蒸発させて精製物質を得た。
プロトン及びフッ素磁気共鳴 (夫々1H NMR及び19F NMR)スペクトルをバリアンINOVA NMR スペクトロメーター[400 MHz (1H) 及び377 MHz (19F)]で記録した。全てのスペクトルを示された溶媒中で測定した。化学シフトを1H NMRについての夫々の溶媒ピークの残留プロトンピークの基準とされる、テトラメチルシラン (TMS)の下方磁場のppm で報告する。プロトン間カップリング定数をヘルツ(Hz)で報告する。LC-MS スペクトルをフェノメネクス・アクア5ミクロンC18 125A 50 x 4.60 mm カラム及び3分間にわたって55% MeOH: H2O 中1% CH3CN から100% MeOHまでの線形勾配を使用する、サーモフィニガンAQA MS ESI装置を使用して得た。100% MeOH を2分間にわたって維持した。融点をトーマス・ホーバーキャピラリー融点装置を使用して測定し、修正しない。
実施例 1: 1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物1)の調製
スキーム1に示され、以下に記載される本発明の第一局面による方法を使用して化合物1を調製した。
スキーム1
【0077】
【化22】
【0078】
3-(1-エトキシオキサリル-2-オキソ-プロピルジスルファニル)-2,4-ジオキソ-ペンタン酸エチルエステル (1-1)
トルエン (300 mL)中のエチルジオキソバレレート (20 g, 126 ミリモル) の良く撹拌した溶液に、酢酸銅(II) (27.5 g, 151 ミリモル)を7℃で添加し、得られる混合物を7℃で1.5 時間撹拌し、次いで0℃に冷却した。一塩化硫黄 (9.4 g, 70 ミリモル) を0℃でその混合物に徐々に添加し、その反応混合物を0℃で更に2.5 時間撹拌した。塩酸水溶液 (1 N, 350 mL)をその反応混合物に添加し、得られる混合物を室温で16時間撹拌した。その反応混合物を濾過し、濾液の層を分離し、水層をトルエンで抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮した。残渣をエタノール (110 mL) で希釈した。得られる沈澱を吸引濾過により集め、エタノールで洗浄して3-(1-エトキシオキサリル-2-オキソ-プロピルジスルファニル)-2,4-ジオキソ-ペンタン酸エチルエステルを緑色の固体 (13.5 g, 36 ミリモル, 56%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δppm 1.37 (t, J=7.1 Hz, 6H), 2.46 (s, 6H), 3.74 (m, 2H), 4.33 (q, J=7.1 Hz, 4H).
【0079】
フェニルピラゾールジスルフィド (1-2)
ジクロロメタン (50 mL) 中の2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル) フェニルヒドラジン (7.3 g, 42 ミリモル) の溶液にトリフルオロ酢酸 (18.6 g, 160 ミリモル) を0℃で添加した。その反応混合物を0℃で1時間撹拌し、3-(1-エトキシオキサリル-2-オキソ-プロピルジスルファニル)-2,4-ジオキソ-ペンタン酸エチルエステル (7.2 g, 19 ミリモル) を添加した。その反応混合物を0℃で1時間撹拌し、その後にそれを室温に徐々に温めた。揮発物を減圧下で蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘプタン/EtOAcで溶離して、所望の生成物 (2)を淡黄色の固体(7.5 g, 11 ミリモル, 62%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.39 -1.43 (m, 6H), 2.06 (s, 3H), 2.08 (s, 3H), 4.37 - 4.50 (m, 4H), 7.47 (dd, J=8.2, 1.4 Hz, 2H), 7.67 (s, 2H).19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -113.8 (d, J=7.9 Hz, 1F), -113.5 (d, J=8.6 Hz, 1F), -63.7 (s, 3F), -63.7 (s, 3F).
1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメチルスルファニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチルエステル (1-3)
DMF (20 mL) 中のジスルフィド 2 (3.9 g, 5.9 ミリモル) の良く撹拌した溶液にテトラジメチルアミノエチレン (2.1 g, 10.5 ミリモル) を-60 ℃で添加し、続いてヨードトリフルオロメタン (5.0 g, 25.5 ミリモル) を添加した。その反応混合物を-5℃に徐々に温めた。その反応フラスコを氷浴に移し、0℃で更に1時間撹拌した。その反応をエーテル及び水で停止した。その反応混合物をエーテルで希釈し、層を分離した。有機層を乾燥させ (MgSO4)、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘプタン/EtOAcで溶離して、1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメチルスルファニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチルエステルをオフホワイトの固体 (3.6 g, 8.0 ミリモル, 77%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.43 (t, J=7.1 Hz, 3H), 2.31 (s, 3H), 4.47 (q, J=7.1 Hz, 2H), 7.52 (dd, J=8.3, 1.5 Hz, 1H), 7.69 (s, 1H).19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -113.3 (d, J=7.9 Hz, 1F), -63.8 (s, 3F), -44.4 (s, 3F)
【0080】
1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチルエステル (1-4)
ジクロロメタン (6 mL) 中の1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメチルスルファニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチルエステル (1.2 g, 2.7 ミリモル) の溶液にトリフルオロ酢酸 (2.4 mL)を0℃で添加した。その反応混合物に過酸化水素の水溶液 (30質量%, 0.9 g, 8.3 ミリモル) を0℃で添加した。その反応混合物を0℃で6時間撹拌した。その反応を水 (12 mL) 中の重亜硫酸ナトリウム (0.8 g)の溶液の添加により停止した。得られる混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層を乾燥させ (Na2SO4) 、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘプタン/EtOAcで溶離して、1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチルエステルを白色の固体 (1.2 g, 2.6 ミリモル, 99%) として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.42 (t, J=7.1 Hz, 3H), 2.51 (s, 3H), 4.36 - 4.55 (m, 2H), 7.54 (dd, J=8.3, 1.6 Hz, 1H), 7.72 (s, 1H).19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -113.2 (d, J=7.9 Hz, 0.5F), -112.8 (d, J=9.2 Hz, 0.5F), -74.0 (s, 1.5F), -73.8 (s, 1.5F), -63.8 (s, 3F).
【0081】
1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸アミド (1-5)
a. 1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸
イソプロパノール (10 mL)及び水 (2.5 mL)中の1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸エチルエステル (1.2 g, 2.6 ミリモル) の溶液に水酸化リチウム (0.2 g, 8.4 ミリモル) を0℃で添加した。その反応混合物を0℃で2時間撹拌した。その反応混合物に塩酸水溶液 (37質量%, 0.9 mL) 及び水 (7 mL) を添加した。得られる混合物をEtOAc で抽出した。有機層を水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4) 、減圧下で濃縮して1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸をオフホワイトの固体 (1.1 g)として得た。この物質を精製しないで次の工程に使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 2.52 (s, 3H), 7.56 (dd, J=8.3, 1.5 Hz, 1H), 7.73 (s, 1H).19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -113.4 (d, J=8.6 Hz, 0.5F), -112.9 (d, J=7.9 Hz, 0.5F), -73.9 (s, 1.5F), -73.7 (s, 1.5F), -63.8 (s, 3F).
b. 1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸アミド (1-5)
トルエン (5.4 mL) 中の1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸 ( 1.07 g)の溶液にDMF (0.03 mL)次いで塩化チオニル (0.49 g, 4.1 ミリモル) を室温で添加した。その反応混合物を60℃で2時間加熱した。その反応混合物を室温に冷却した後、それを0℃で水酸化アンモニウム水溶液 (20%, 3.5 mL)に滴下して添加した。それを水で希釈した後、得られる混合物をEtOAc で抽出した。有機層を乾燥させ (MgSO4)、減圧下で濃縮して1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸アミドをオフホワイトの固体 (1.17 g)として得た。この物質を精製しないで次の工程に使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 2.49 (s, 3H), 5.89 (br.s., 1H), 6.72 (br.s., 1H), 7.57 (dd, J=8.3, 1.4 Hz, 1H), 7.74 (s, 1H).19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -113.4 (d, J=7.9 Hz, 0.5F), -113.1 (d, J=8.6 Hz, 0.5F), -74.0 (s, 1.5F), -73.8 (s, 1.5F), -63.8 (d, J=1.3 Hz, 3F)
【0082】
1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 1)
ジクロロメタン (5 mL) 中の1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸アミド (0.98 g) の溶液にトリエチルアミン (0.63 g, 6.2 ミリモル) 続いて無水トリフルオロ酢酸 (0.89 g, 4.2 ミリモル) を0℃で添加した。その反応混合物を0℃で3時間撹拌し、0℃で水 (2.0 mL)の添加により反応停止した。それを室温に温めた後、得られる混合物を ジクロロメタンで抽出した。有機層を乾燥させ (Na2SO4)、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘプタン/EtOAc で溶離して、1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリルを白色の固体 (0.85 g, 2.0 ミリモル, 3工程で99%) として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 2.45 (s, 3H), 7.55 - 7.63 (m, 1H), 7.76 (s, 1H).19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -113.3 (d, J=7.9 Hz, 0.5F), -113.0 (d, J=7.9 Hz, 0.5F), -73.9 (s, 1.5F), -73.8 (s, 1.5F), -63.9 (s, 3F).
【0083】
実施例 2: 本発明の第二局面による1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメタンスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 1) の調製
スキーム2に示され、以下に記載される本発明の第二局面による方法を使用して化合物1を調製した。スキーム2に示されるように、化合物1(これはフェニル環に混合クロロ−フルオロ置換を有する)をカルボン酸2-1 から出発して6工程で合成した。しかしながら、その方法が直ぐに入手し得る式 (IIIB) の5-アミノフェニルピラゾール化合物、例えば、フィプロニル、式 (IIB)の5-ハロ-1-アリールピラゾールもしくは5-ハロアルキルスルホネート化合物又はその他の好適なフェニルピラゾール化合物で始めてもよいことが当業者により認められるであろう。
カルボン酸2-1 をクルチウス転位によりアニリン 2-2に変換した。次いで2-2 をNCS で塩素化してアニリン 2-3を得た。アニリン 2-3をエチル2,3-ジシアノプロパノエートで環縮合し、次いで脱カルボキシル化してピラゾール 2-4を得た。ピラゾール 2-4をCF3SOCl でスルフィニル化して2-5 を得た。2-5 のアミノ基を臭素に変換して2-6 を得た。2-6 をMe2Zn でパラジウム触媒クロスカップリングして所望のメチル化生成物化合物1を得た。
スキーム 2
【0084】
【化23】
【0085】
工程 1 2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)アニリンの合成
【化24】
【0086】
t-BuOH (11.7 L) 中の2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸 (1 kg, 4.805 モル, 1.00 当量“eq.”) 及びCuCl (14.26 g, 0.144モル, 0.03 eq.)の溶液にトリエチルアミン (TEA, 533.8 g, 5.286 モル, 1.10 eq.) を室温(rt)で滴下して添加した。次いでその溶液を50℃に加熱し、ジフェニルホスホリルアジド (DPPA, 1393 g, 5.045 モル, 1.05 eq.) をその溶液に50-60 ℃で滴下して添加した。80〜85℃で一夜加熱した後、その溶液を真空で濃縮した。残渣をH2O に溶解し、濾過した。濾液を酢酸エチルで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残渣をtert-ブチルメチルエーテル (TBME)に溶解し、HCl(ガス) を2時間にわたって吹き込んだ。濾液を集め、水に溶解し、2 M NaOHで塩基性にした。その溶液をTBMEで抽出した。有機層を乾燥させ、真空で濃縮して2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル) アニリン (498 g, 58%) を赤色の油として得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.27 (m, 2H), 6.82 (m, 1H), 4.05 (bs, 2H)
MS: m/z = 180 [M+H]+
工程 2 2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)アニリンの合成
【0087】
【化25】
【0088】
アセトニトリル (5 L) 中の2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)アニリン (498 g, 2.783 ミリモル, 1.00 eq.) の溶液にN-クロロスクシンイミド (NCS, 408 g, 3.06 ミリモル, 1.1 eq.) を添加した。次いでその溶液を3時間にわたって還流下で加熱し、次いで真空で濃縮し、石油エーテル (PE 1 L)で希釈し、濾過した。濾液を真空で濃縮して赤色の油を得た。油状生成物を真空蒸留により精製して2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)アニリンを黄色の液体 (420 g, 71%) として得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.37 (s, 1H), 7.20 (dd, J = 10.5 Hz, J = 1.5 Hz, 1H), 4.43 (bs, 2H)
19F NMR (282 MHz, CDCl3): -63.24 (s, 3F), -111.04 (s, 1F)
MS: m/z = 214 [M+H]+
工程 3 5-アミノ-1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリルの合成
【0089】
【化26】
【0090】
撹拌濃H2SO4 (473 mL) にNaNO2 (81.63 g, 1.18 モル, 1.20 eq.) を0〜5℃で数回に分けて添加した。次いでその混合物を45〜50℃に加熱し、この温度で1時間撹拌した。この酸混合物を0℃に冷却し、次の工程における使用のために保存した。
酢酸 (1.05 L) 中の2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチルアニリン (210 g, 985.9 ミリモル) の溶液に濃H2SO4 (44.45 mL) を室温で添加した。次いでその溶液を先のH2SO4-NaNO2 混合物に0℃で滴下して添加した。次いでその混合物を50℃に加熱した。1時間撹拌した後、この反応混合物をH2O (1.05 L)中の1,2-ジシアノ-3-ヒドロキシプロプ -2-エン (224 g, 1.48 モル, 1.5 eq.) 及び無水酢酸ナトリウム (1.68 kg, 20.4 モル, 13.78 eq.)の懸濁液に5〜10℃で添加した。1時間撹拌した後、この反応混合物を水で希釈し、ジクロロメタン (DCM)で抽出した。有機層を30% 水酸化アンモニウム溶液とともに一夜にわたって激しく撹拌した。有機相を分離し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して黄色の固体を得た。その固体を酢酸エチル(EA)から再結晶して5-アミノ-1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)- フェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリルを黄色の固体 (220 g, 73%) として得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.72 (s, 1H), 7.53 (dd, J = 1.5 Hz, J = 7.2 Hz, 1H), 6.08 (s, 1H), 3.83 (s, 2H)
MS: m/z = 305 [M+H]+
工程 4 5-アミノ-1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(トリフルオロメチルスルフィニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリルの合成
【0091】
【化27】
【0092】
トルエン (840 mL) 中の5-アミノ-1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル) -1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (140 g, 459.6 ミリモル, 1.00 eq.)及びジメチルアミントシレート (151.8 g, 698.6 ミリモル, 1.52 eq.)の溶液にCF3SOCl (89.7 g, 588.3 ミリモル, 1.28 eq.) を添加した。その混合物を40℃で16時間撹拌した後、窒素をその溶液に吹き込み、その溶液を室温に冷却した。次いでその混合物を2 L の氷/水に注ぎ、0℃で1時間撹拌した。沈澱した固体を濾過により単離し、真空で乾燥させた。固体をトルエンで再結晶して5-アミノ-1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(トリフルオロメチルスルフィニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (125 g, 64%)を黄色の固体として得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.77 (s, 1H), 7.61 (m, 1H), 5.26 (s, 2H)
19F NMR (282 MHz, CDCl3) δ - 63.40 (s, 3F), -74.71 (d, J = 42.86 Hz, 3F), -110.96 (s, 1F)
MS: m/z = 421 [M+H]+
工程 5 5-ブロモ-1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(トリフルオロメチルスルフィニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリルの合成
【0093】
【化28】
【0094】
CHBr3 (520 mL) 中の5-アミノ-1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(トリフルオロメチルスルフィニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (130 g, 310.3 ミリモル, 1.00 eq.)の溶液に亜硝酸イソアミル (109 g, 930.8 ミリモル, 3.00 eq.) を55〜60℃で滴下して添加した。全ての亜硝酸イソアミルを添加した後、その溶液を60℃で30分間撹拌した。次いでその混合物を真空で濃縮して赤色の固体を得た。その固体をイソプロピルアルコールで再結晶して5-ブロモ-1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(トリフルオロメチルスルフィニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (110 g, 73% )を黄色の固体として得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.78 (s, 1H), 7.61 (m, 1H).
MS: m/z = 484 [M+H]+
工程 6: 1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-5-メチル-4-(トリフルオロメチルスルフィニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 1)
【0095】
【化29】
【0096】
脱気したTHF (600 mL) 中の5-ブロモ-1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-(トリフルオロメチルスルフィニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (210 g, 432モル, 1.00 eq.) の溶液に窒素雰囲気下でPd(PPh3)2Cl2 (15.18 g, 21.63 ミリモル, 0.05 eq.) を添加した。その反応混合物を窒素でフラッシした。次いでMe2Zn (トルエン中1.2 M) (300 mL, 360 ミリモル, 0.83 eq.) をその溶液に室温で添加した。得られた混合物を5時間にわたって40〜45℃に加熱した。次いでその溶液を室温に冷却し、氷/H2Oに注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を乾燥させ、真空で濃縮し、シリカゲル (PE: EA =20:1〜10:1) により精製して黄色の固体115 g を得た。この固体をEtOHで再結晶して1-(2-クロロ-6-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-5-メチル-4-(トリフルオロメチルスルフィニル)-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (99 g, 54%)を白色の固体として得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 2.45 (s, 3 H), 7.59 (d, J=8.2 Hz, 1 H)及び7.76 (s, 1 H).19F NMR (282 MHz, CDCl3) δ - 63.40 (d, J = 29.61 Hz, 3F), -73.47 (dd, J = 6.77 Hz, J = 27.64 Hz, 3F), -112.60 (d, J = 79.8 Hz, 1F)
MS: m/z = 420 [M+H]+.
【0097】
実施例 3: 本発明の第二局面による1-(2,6-ジクロロ -4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメチルスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 2) の調製
スキーム3に示され、以下に記載される本発明の第二局面による方法を使用して化合物2を調製した。スキーム3に示される方法の出発物質は公知であり、かつ市販の5-アミノピラゾール化合物 (例えば、EP 0 295 117 を参照のこと)であるフィプロニルである。化合物2をほんの2工程でフィプロニルから65%の全収率で調製した。
スキーム 3
【0098】
【化30】
【0099】
工程 1: 5-ブロモ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルスルフィニル-3-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 3-1)
ブロモホルム1160グラム (20 eq.)を窒素雰囲気下で反応容器に仕込み、続いてフィプロニル100 グラム(1 eq.)を仕込んだ。次いでその混合物を50-60 ℃に加熱し、亜硝酸tert-ブチル1344グラム (2.0 eq.)を添加した。その混合物を3時間にわたって55-60 ℃で熟成し、その時点で1%未満の出発物質があった。この時間後に、その反応混合物を真空で70-80 ℃で1倍容に濃縮した。その濃縮された混合物を5倍容のイソプロピルアルコールで希釈し、次いで10℃/10分の速度で加熱、還流し、30分間熟成した。次いでその混合物を10℃/10分の速度で約0℃±5℃に冷却し、この温度で30分間熟成し、その後に固体を濾過した。その固体をイソプロピルアルコールで洗浄し、約40℃±5℃で真空で乾燥させて所望の生成物92 gを黄色の固体 (収率80% , 純度98%)を得た。
工程 2: 1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメチルスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 2)
テトラヒドロフラン600 ミリリットル (3.0倍容) を窒素雰囲気下で反応容器に仕込み、続いて化合物 3-1 200 g (1.0 eq.)を仕込んだ。その混合物をその溶液への窒素の導入により30分間脱気した。次いで、Pd(Ph3P)2Cl2 43 グラム(0.018 eq.) をその容器に添加し、その混合物を25-30 ℃に温めた。この後、トルエン中のジメチル亜鉛の1M溶液320 mlを25-35 ℃で滴下して添加した。得られる混合物を35-45 ℃に加熱し、16時間熟成し、その時点で1% 未満の出発物質が存在した。その反応が完結したことを確かめた後、それを20-25℃に冷却し、次いで水 (1.5 L) に徐々に添加した。その混合物を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機層を食塩水で2回洗浄した。次いで有機層を活性炭とともに20-25 ℃で30分間撹拌し、濾過した。濾液を40-45 ℃で真空で1倍容に濃縮し、7倍容のイソプロピルアルコールを添加した。希釈された混合物を1時間にわたって加熱、還流し、次いで10-15 ℃に冷却し、5時間熟成し、濾過した。固体をイソプロピルアルコールで洗浄し、35℃で真空で乾燥させて黄色の固体105 グラム (純度98%,収率60%)を生成した。
【0100】
実施例 4: 5-ブロモ-1-(2,6-ジクロロ -4-トリフルオロメチル-フェニル)-4-トリフルオロメチルスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 3-1) の調製
以下に記載される本発明の第二局面の別の実施態様を使用して化合物 3-1を調製した。
フィプロニル60グラム (137 ミリモルes, 1.0 eq.)を20℃で反応容器中でアセトニトリル60mlに撹拌しながら溶解した。これに続いて水中のHBr の48%の溶液78ml(686 ミリモル, 5 eq.)を30分間にわたって添加した。得られる混合物を0℃に冷却し、水180 ml中のNaNO2 28グラム(412 ミリモル, 3.0 eq.) を添加した。0℃で30分後に、その反応混合物を50分間にわたって50℃に加熱し、50℃で更に1時間熟成し、その時点でフィプロニルの量が1%未満であった。その混合物を濃縮してアセトニトリルを50℃で除去し、その間に生成物が結晶化し始めた。次いでその混合物を20℃に冷却した。イソプロピルアルコール (10 ml, 0.2倍容) を添加し、その混合物を20℃で30分間撹拌した。得られる混合物を20℃で濾過し、固体を水 (3 x 50 ml)で洗浄した。その固体を50℃で真空で乾燥させて所望の生成物72.2グラムを得た。その混合物を加熱、還流し、続いて20℃に冷却し、生成物を濾過し、その固体をイソプロピルアルコール (2 x 0.5 倍容) で洗浄することによりその粗生成物をイソプロピルアルコール (2.0 倍容) からの再結晶により精製した。単離した固体を50℃で真空で乾燥させて生成物37.66 グラムを61.0 %の収率 (純度97.4%)で得た。
【0101】
実施例 5: 5-ブロモ-1-(2,6-ジクロロ -4-トリフルオロメチル-フェニル)-4-トリフルオロメチルスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 3-1) の調製
以下に記載される本発明の第二局面の別の実施態様を使用して化合物 3-1を調製した。
窒素雰囲気下で、CuBr2 102.2 グラム (2.5 eq.)をアセトニトリル200 ml (2.5 倍容) に添加した。これに続いて亜硝酸tert-ブチル 28.31 g (1.5 eq.) 及び追加のアセトニトリル40 ml (0.5倍容) を添加した。得られる混合物を60℃に加熱し、400 ml (5 倍容) 中のフィプロニル (80 g, 1 eq.)を30分間にわたって撹拌しながら添加した。次いでその反応混合物を蒸留によるアセトニトリル(5倍容) の除去により3倍容に濃縮し、次いでその混合物を25℃に冷却した。メチル tert-ブチルエーテル (400 ml, 5 倍容) 、水 (80 ml,2 倍容) 及び1 N HCl (140 ml, 3倍容) を添加し、その混合物を撹拌した。相を沈降させ、酸性水層を除去した。次いで有機層を20% 水酸化アンモニウム (400 ml, 5 倍容) 及び食塩水 (400 ml, 5 倍容) で連続して洗浄した。得られる有機層を蒸留により2倍容に濃縮した。その溶媒の蒸留を5倍容 (400 ml) のイソプロピルアルコールの同時添加により続けてアセトニトリルを交換した。その混合物を80℃に加熱し、次いで20℃に徐々に冷却して生成物を結晶化した。得られる混合物を濾過し、ケーキを0.5 倍容のイソプロパノールで2回洗浄した。生成物を45℃で真空で乾燥させて所望の生成物72.15 g ( 収率78.7%,純度83%)を得た。その粗生成物を2倍容のイソプロパノールから80℃に加熱し、次いで20℃に冷却することによる再結晶により精製した。単離した固体を45℃で真空で乾燥させて63.06 g ( 収率68.8%,純度89.3%)を得た。
【0102】
実施例 6: 1-(2,6-ジクロロ -4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメチルスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 2)
以下に記載される本発明の第二局面の別の実施態様を使用して化合物2を化合物 3-1から調製した。
化合物 3-1 37グラム(0.07 モル, 1.0 eq.), 、炭酸カリウム40.82 グラム (0.30 モル, 4 eq.) 、Pd2(dba)3 3.38 グラム (0.05 eq.)及びトリメチルボロキシン 7.42 g (0.06モル, 0.8 eq.) を、酢酸n-ブチル370 ml (10倍容) を含む反応容器に添加した。次いでその混合物を1時間40分にわたって120 ℃に加熱し、更に2.5 時間にわたって熟成し、その時点で1%未満の出発物質が存在した。次いでその反応混合物を20℃に冷却した。冷却した反応混合物を別の容器に添加し、続いて酢酸n-ブチル50 ml (1.35 倍容) ですすぎ、20℃で活性炭1.85グラムとともに30分間撹拌した。次いで得られる混合物をケイソウ土 (セライト(登録商標)545)により濾過し、ケーキを酢酸n-ブチル 50 mlで洗浄した。水 (150 ml, 4 倍容) をその濾液に添加し、その混合物を20℃で5分間撹拌した。層を分離し、水層を除去した。得られる有機層を真空で濃縮して生成物31.2グラム (収率97.0%,純度76.6%)を得た。その粗生成物をイソプロピルアルコールからの結晶化により精製して所望の生成物を収率77.2% で94.8% の純度で得た。
【0103】
実施例 7: 1-(2,6-ジクロロ -4-トリフルオロメチル-フェニル)-5-メチル-4-トリフルオロメチルスルフィニル-1H-ピラゾール-3-カルボニトリル (化合物 2).
以下に記載される本発明の第二局面の別の実施態様を使用して化合物2を化合物 3-1から調製した。
種々のポリマー担持触媒を使用して化合物 3-1と0.8 当量のトリメチルボロキシンの反応を調べた。試験した触媒はJohnson-Matthey により商品名ファイバーキャット(登録商標)により販売される。その活性パラジウム金属はポリマー鎖に共有結合され、その活性ポリマーが反応溶媒に不溶性である不活性ポリオレフィン繊維に更に結合される。こうして、化合物 3-1を酢酸n-ブチル中で0.8 当量のトリメチルボロキシン、4当量のK2CO3 及び0.2 当量の適当な均一ポリマー担持パラジウム触媒と混合し、100 ℃に加熱した。
下記の表は3種の異なるファイバーキャット(登録商標)触媒を使用する反応の結果を示す。その反応混合物を単に濾過し、更に濾液を処理して溶媒を除去し、又は生成物を溶液から結晶化することにより生成物を単離してもよい。
【0104】
【表2】
【0105】
Nd = 検出されず
その実施例は本発明の第二局面がポリマー担持パラジウム触媒を使用して行ない得ることを実証する。
【0106】
こうして本発明の種々の実施態様を詳しく記載したので、上記の各段落により特定される本発明が先の記載に示された特別な詳細に限定されるべきではないことが理解されるべきである。何とならば、その多くの明らかな変化が本発明の精神又は範囲から逸脱しないで可能であるからである。
次に、本発明の態様を示す。
1. 式 (IB):
(IB)
(式中、
R1b は水素、シアノ、ハロゲン、R8b 、ホルミル、-CO2H 、-C(O)R8b、-C(O)OR8b 、-C(O)NR9bR10b 又は-C(S)NH2であり、
R2b はR8b 又は-S(O)mR11bであり、
R3b はアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環、ヘテロアリール、R8bNH 、(R8b)2N 、R8bO、R8bS又はR8bC(O)CH2- であり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基又はヘテロアリール基は1個以上のハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、シアノ又は-C(S)NH2により置換されていてもよく、
R4b 、R5b 、R7b 及びR13bは夫々独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノ又はニトロであり、
R6b はハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、-C(O)R12b 、-S(O)nR12b又はSF5 であり、
Wは窒素又はC-R13bであり、
R8b はアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、アリール、複素環又はヘテロアリールであり、
R9b 及びR10bは独立に水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ又はアルコキシであり、
R11bはアルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり、
R12bはアルキル又はハロアルキルであり、
mは0、1又は2であり、かつ
nは0、1又は2である)
の1-アリール-5-アルキルピラゾール化合物の調製方法であって、
その方法が
(i) 式 (IIB):
(IIB)
(式中、R1b 、R2b 、R4b 、R5b 、R6b 、R7b 及びWは式(IB)の化合物について先に定義されたとおりであり、かつQはヨード、ブロモ、クロロ又はハロアルキルスルホネート基である)
の化合物を式 (IIc)又は (IId):
(式中、R、R1d 、R2d 及びR3d は独立にアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール又は複素環であり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基又は複素環基は1個以上のハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基又は-C(S)NH2基により置換されていてもよく、MはMgX 、ZnX 、RZn 、BY2 、BF3 又はSnR’3 であり、Xはヨード、ブロモ又はクロロであり、YはOH又はアルコキシであり、又はYはアルコキシ基(これはグリコール誘導体Y-(CR’’R’’’)a-Y(式中、R’’及びR’’’は独立に水素又はC1-C3 アルキルであり、かつaは2、3又は4である)の一部である)であってもよく、かつR’はアルキル又はハロアルキルである)
の化合物と反応させ、又は
式 (IIB)の化合物を遷移金属触媒の存在下でR8bNH2、(R8b)2NH、R8bOH 、R8bSH 又はエノラート陰イオンR8bC(O)CH2- (式中、R8b は式 (IB)の化合物について先に定義されたとおりである)と反応させて式(IB)の化合物を生成し、
(ii)式(IB)の化合物中のR1b が-C(O)OR8b 又は-C(O)NR9bR10bである場合には、その-C(O)OR8b 基又は-C(O)NR9bR10b 基を官能基変性によりシアノ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ホルミル、-C(O)R8b又は-C(S)NH2(式中、R8b 、R9b 及びR10bは式(IB)について先に定義されたとおりである)に変換してもよく、そして
(iii) R2b が-S(O)mR11bである場合には、必要によりその基-S(O)mR11b(式中、mは0又は1である)を酸化して式(IB)の化合物を生成することを含み、
工程ii) 及びiii)の順序が変えられてもよいことを特徴とする前記調製方法。
2. QがI、Br又はClである式 (IIB)の化合物を式 (IIIB):
(IIIB)
(式中、R1b 、R2b 、R4b 、R5b 、R6b 、R7b 及びWは式(IB)の化合物について定義されたとおりである)
の化合物をBr、Cl又はIの源及び亜硝酸化合物T-ONO (式中、Tは水素又はアルキルである)、又はその塩と反応させることにより調製する、上記1記載の方法。
3. 遷移金属触媒がパラジウム触媒である、上記1記載の方法。
4. T-ONO が亜硝酸ナトリウム、亜硝酸イソペンチル、又は亜硝酸tert-ブチルである、上記2記載の方法。
5. Qがブロモである、上記1記載の方法。
6. MがZnX 又はRZn である、上記1記載の方法。
7. MがBY2 である、上記1記載の方法。
8. Yがヒドロキシである、上記7記載の方法。
9. 式 (IIB)の化合物を式 (IId)の化合物と反応させる、上記1記載の方法。
10. 式 (IId)の化合物がトリメチルボロキシンである、上記9記載の方法。
11. 工程 (i)で、(IIB) の化合物を(IIc) の化合物(式中、MがBY2 である)又は式 (IId)の化合物と反応させ、かつその方法が更に反応混合物への塩基の添加を含む、上記1記載の方法。
12. 塩基がアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩である、上記11記載の方法。
13. パラジウム触媒が(Ph3P)4Pd 、(Ph3P)2PdCl2、(CH3CN)2PdCl2 、Pd2(dba)3 又は(dppf)PdCl2 である、上記3記載の方法。
14. 工程 (i)で、式 (IIB)の化合物をPd2(dba)3 及び炭酸カリウムの存在下で式 (IId)の化合物と反応させる、上記1記載の方法。
15. 式 (IIIB)の化合物がフィプロニルである、上記2記載の方法。
16. T-ONO が亜硝酸ナトリウムであり、かつBrの源がHBr である、上記4記載の方法。
17. 式 (I):
(I)
(式中、
R1及びR3は夫々独立に水素、シアノ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、ホルミル、アリール、複素環、ヘテロアリール、-C(O)R8、-C(O)OR8、-C(O)NR9R10 又は-C(S)NH2 であり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基又はヘテロアリール基は1個以上のハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキル又はハロアルキルチオ; アルキル又はハロアルキルスルフィニル; アルキル又はハロアルキルスルホニル; ニトロ、シアノ及び-C(S)NH2により置換されていてもよく、
R2はアルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、アルキニル、ハロアルキニル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり、
R4、R5、R7及びR12 は夫々独立に水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シアノ又はニトロであり、
R6はハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、-C(O)R11、-S(O)mR11 又はSF5 であり、
Zは窒素又はC-R12 であり、
R8はアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり、
R9及びR10 は独立に水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ又はアルコキシであり、
R11 はアルキル又はハロアルキルであり、
nは0、1又は2であり、かつ
mは0、1又は2である)
の1-アリール-5-アルキルピラゾール化合物の調製方法であって、
その方法が
(i) 式(II)のジスルフィド化合物を式 (III)のアリールヒドラジンと反応させて、
(式中、R1及びR3は夫々独立に水素、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ハロシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、ホルミル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)R8、-C(O)OR8、-C(O)NR9R10 又は-C(S)NH2 であり、夫々のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基は1個以上のハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキル又はハロアルキルチオ; アルキル又はハロアルキルスルフィニル; アルキル又はハロアルキルスルホニル; ニトロ、シアノ及び-C(S)NH2により置換されていてもよく、かつR4、R5、R6、R7及びZは式 (I)の化合物について定義されたとおりである)
式(IV)のピラゾールジスルフィドを生成し、
(IV)
(式中、R1、R3、R4、R5、R6、R7及びZは式 (I)の化合物について定義されたとおりである)
(ii)式(IV)の化合物を式 (V)
R2-LG (V)
(式中、R2は式 (I)の化合物について先に定義されたとおりであり、かつLGは脱離基である)の化合物と反応させて式(VI)の化合物を生成し、
(VI)
(iii) 式(VI)の化合物中で、R1又はR3が-C(O)OR8 又は-C(O)NR9R10である場合には、必要により式(VI)の化合物中のその-C(O)OR8基又は-C(O)NR9R10 基をシアノ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ホルミル、-C(O)R8 又は-C(S)NH2に変換し、そして
(iv) 必要により-SR2 基を酸化して式 (I)の化合物を生成することを含み、
工程iii) 及びiv)の順序が変えられてもよいことを特徴とする前記調製方法。
18. 式(II)のジスルフィドを式 (VII)
(VII)
のジケトンとジスルフィドジハライド試薬の反応により生成する、上記17記載の方法。
19. 工程 ii)で、式(IV)の化合物と式 (V)の化合物の反応を還元剤の存在下で行なう、上記17記載の方法。
20. 還元剤がテトラキス(ジメチルアミノ)エチレン、ホウ水素化ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ナトリウムヒドロキシメタンスルフィネート、亜鉛ヒドロキシメタンスルフィネート、ギ酸又はギ酸ナトリウムである、上記19記載の方法。
21. R2がアルキル又はハロアルキルであり、
R1が-C(O)OR8又は-C(O)NR9R10 であり、かつ
R3がアルキルである、上記17記載の方法。
22. 工程 ii)で、脱離基LGがヨージドである、上記17記載の方法。