(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494776
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】線間距離計算方法、線間距離計算装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20190325BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20190325BHJP
【FI】
G06T7/60 180B
G06T7/00 660Z
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-542060(P2017-542060)
(86)(22)【出願日】2016年1月5日
(65)【公表番号】特表2018-508891(P2018-508891A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】CN2016070192
(87)【国際公開番号】WO2016127735
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年10月2日
(31)【優先権主張番号】201510080690.0
(32)【優先日】2015年2月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、リー
(72)【発明者】
【氏名】シュ、クンピン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ユン
【審査官】
川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−145447(JP,A)
【文献】
特開平08−007097(JP,A)
【文献】
特開2003−337949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/60
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋の線間距離計算方法であって、
原画像を得て、グレースケール処理を実行して、グレースケール画像を生成するステップと、
前記グレースケール画像に基づいて、法線方向画像と接線方向画像を生成するステップと、
前記接線方向画像に基づいて、前記グレースケール画像にフィルタリングを実行して平滑化画像を生成し、当該平滑化画像を2値画像へ変換するステップと、
前記2値画像を複数のブロックに分割し、前記法線方向画像に基づいて、各ブロックの中心点の法線方向を決定するステップと、
各ブロックの前記中心点の前記法線方向に画素をトラバーサルして、前記各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数を計算し、変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値を計算するステップと、
前記各ブロック内の2つの隣接画素の前記画素値が前記第1の画素値と前記第2の画素値間で変化する前記回数、及び前記変化点に対応する前記境界点の前記座標と前記サブ画素値に基づいて、前記指紋の線間距離を生成するステップと、
を含み、
前記第1の画素値は、隆線の画素の画素値であり、前記第2の画素値は、谷線の画素の画素値である
ことを特徴とする線間距離計算方法。
【請求項2】
前記各ブロック内の2つの隣接画素の前記画素値が前記第1の画素値と前記第2の画素値間で変化する前記回数に基づいて、前記各ブロックの前記境界点の総数を得るステップと、
前記ブロックの前記境界点の前記総数が、予め設定された数よりも少ない場合、前記ブロック内の前記中心点の前記法線方向と反対方向にある画素をトラバーサルするステップと、
を更に含む請求項1に記載の線間距離計算方法。
【請求項3】
前記変化点に対応する前記境界点の前記サブ画素値は、
予め設定された方向に沿って、前記境界点に隣接する2つの画素の前記画素値を得るステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値と、前記境界点の前記画素値とに基づいて、前記境界点の前記サブ画素値を生成するステップと、
によって計算されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の線間距離計算方法。
【請求項4】
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値と、前記境界点の前記画素値とに基づいて、前記境界点の前記サブ画素値を生成する前記ステップは、
前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に対応する法線角度が0°の場合、前記予め設定された方向を垂直方向に決定するステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記境界点の前記サブ画素値として0を生成するステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値の1つのみが、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記境界点の前記サブ画素値として0.5を生成するステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と異なる場合、前記境界点の前記サブ画素値として1を生成するステップと、
を更に含む請求項3に記載の線間距離計算方法。
【請求項5】
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値と、前記境界点の前記画素値とに基づいて、前記境界点の前記サブ画素値を生成する前記ステップは、
前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に対応する法線角度が90°の場合、前記予め設定された方向を水平方向に決定するステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記境界点の前記サブ画素値として0を生成するステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値の1つのみが、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記境界点の前記サブ画素値として0.5を生成するステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と異なる場合、前記境界点の前記サブ画素値として1を生成するステップと、
を更に含む請求項3に記載の線間距離計算方法。
【請求項6】
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値と、前記境界点の前記画素値とに基づいて、前記境界点の前記サブ画素値を生成する前記ステップは、
前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に対応する法線角度が0°又は90°と等しくない場合、前記予め設定された方向を垂直方向及び水平方向以外の方向に決定するステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記境界点の前記サブ画素値として0を生成するステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値の1つのみが、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記境界点の前記サブ画素値として0.25を生成するステップと、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と異なる場合、前記境界点の前記サブ画素値として0.5を生成するステップと、
を更に含む請求項3に記載の線間距離計算方法。
【請求項7】
1つのブロックの前記中心点
の線間距離は、
【数1】
【数2】
【数3】
を用いて生成され、
num1は、前記ブロック内の2つの隣接画素の前記画素値が前記第2の画素値から前記第1の画素値へ変化する回数であり、num2は、前記ブロック内の2つの隣接画素の前記画素値が前記第1の画素値から前記第2の画素値へ変化する回数であり、X
1及びX
num1は、それぞれ、2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第2の画素値から前記第1の画素値へ、1回目に変化する点に対応する前記境界点の水平座標、及び2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第2の画素値から前記第1の画素値へ、num1回目に変化する点に対応する前記境界点の水平座標であり、Y
1及びY
num2は、それぞれ、2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第1の画素値から前記第2の画素値へ、1回目に変化する点に対応する前記境界点の水平座標、及び2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第1の画素値から前記第2の画素値へ、num2回目に変化する点に対応する前記境界点の水平座標であり、θは、前記ブロックの前記中心点
の法線角度であり、θは、0からπの範囲内であり、δ
Xiは、2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第2の画素値から前記第1の画素値へ、i回目に変化する点に対応する前記境界点の前記サブ画素値であり、δ
Yiは、2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第1の画素値から前記第2の画素値へ、i回目に変化する点に対応する前記境界点の前記サブ画素値であり、D1(i, j)及びD2(i, j)は、それぞれ、前記第2の画素値から前記第1の画素値へ変化する2つの隣接画素の前記画素値に基づいて計算される距離、及び前記第1の画素値から前記第2の画素値へ変化する2つの隣接画素の前記画素値に基づいて計算される距離であり、D(i, j)は、前記ブロックの前記中心点
の線間距離である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の線間距離計算方法。
【請求項8】
前記各ブロック内の2つの隣接画素の前記画素値が前記第1の画素値と前記第2の画素値間で変化する前記回数、及び前記変化点に対応する前記境界点の前記座標と前記サブ画素値に基づいて、前記指紋の線間距離を生成する前記ステップの後に、
線間距離に5*5の局所平均値フィルタリングを実行するステップを更に含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の線間距離計算方法。
【請求項9】
指紋の線間距離計算装置であって、
原画像を得て、グレースケール処理を実行して、グレースケール画像を生成するように構成されるグレースケール処理モジュールと、
前記グレースケール画像に基づいて、法線方向画像と接線方向画像を生成するように構成される生成モジュールと、
前記接線方向画像に基づいて、前記グレースケール画像にフィルタリングを実行して平滑化画像を生成し、当該平滑化画像を2値画像へ変換するように構成される平滑化モジュールと、
前記2値画像を複数のブロックに分割し、前記法線方向画像に基づいて、各ブロックの中心点の法線方向を決定するように構成されるブロック処理モジュールと、
各ブロックの前記中心点の前記法線方向に画素をトラバーサルして、前記各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数を計算し、変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値を計算するように構成されるサブ画素計算モジュールと、
前記各ブロック内の2つの隣接画素の前記画素値が前記第1の画素値と前記第2の画素値間で変化する前記回数、及び前記変化点に対応する前記境界点の前記座標と前記サブ画素値に基づいて、前記指紋の線間距離を生成するように構成される線間距離生成モジュールと、
を含み、
前記第1の画素値は、隆線の画素の画素値であり、前記第2の画素値は、谷線の画素の画素値である
ことを特徴とする線間距離計算装置。
【請求項10】
前記サブ画素計算モジュールは、
前記各ブロック内の2つの隣接画素の前記画素値が前記第1の画素値と前記第2の画素値間で変化する前記回数に基づいて、前記各ブロックの前記境界点の総数を得るように、
及び前記ブロックの前記境界点の前記総数が、予め決定された数よりも少ない場合、前記ブロック内の前記中心点の前記法線方向と反対方向にある画素をトラバーサルするように、
更に構成されることを特徴とする請求項9に記載の線間距離計算装置。
【請求項11】
前記サブ画素計算モジュールは、
予め設定された方向に沿って、前記境界点に隣接する2つの画素の前記画素値を得るように、
及び前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値と、前記境界点の前記画素値とに基づいて、前記境界点の前記サブ画素値を生成するように、
更に構成されることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の線間距離計算装置。
【請求項12】
前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に対応する法線角度が0°の場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記予め設定された方向を垂直方向に決定するように構成され、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記境界点の前記サブ画素値として0を生成し、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値の1つのみが、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記境界点の前記サブ画素値として0.5を生成し、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と異なる場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記境界点の前記サブ画素値として1を生成する
ことを特徴とする請求項11に記載の線間距離計算装置。
【請求項13】
前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に対応する法線角度が90°の場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記予め設定された方向を水平方向に決定するように構成され、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記境界点の前記サブ画素値として0を生成し、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値の1つのみが、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記境界点の前記サブ画素値として0.5を生成し、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と異なる場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記境界点の前記サブ画素値として1を生成する
ことを特徴とする請求項11に記載の線間距離計算装置。
【請求項14】
前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に対応する法線角度が0°又は90°と等しくない場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記予め設定された方向を垂直方向及び水平方向以外の方向に決定するように構成され、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記境界点の前記サブ画素値として0を生成し、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値の1つのみが、前記境界点の前記画素値と等しい場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記境界点の前記サブ画素値として0.25を生成し、
前記境界点に隣接する前記2つの画素の前記画素値が両方とも、前記境界点の前記画素値と異なる場合、前記サブ画素計算モジュールは、前記境界点の前記サブ画素値として0.5を生成する
ことを特徴とする請求項11に記載の線間距離計算装置。
【請求項15】
前記線間距離生成モジュールは、
【数1】
【数2】
【数3】
を用いて1つのブロックの前記中心点
の線間距離を生成するように、更に構成され、
num1は、前記ブロック内の2つの隣接画素の前記画素値が前記第2の画素値から前記第1の画素値へ変化する回数であり、num2は、前記ブロック内の2つの隣接画素の前記画素値が前記第1の画素値から前記第2の画素値へ変化する回数であり、X
1及びX
num1は、それぞれ、2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第2の画素値から前記第1の画素値へ、1回目に変化する点に対応する前記境界点の水平座標、及び2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第2の画素値から前記第1の画素値へ、num1回目に変化する点に対応する前記境界点の水平座標であり、Y
1及びY
num2は、それぞれ、2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第1の画素値から前記第2の画素値へ、1回目に変化する点に対応する前記境界点の水平座標、及び2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第1の画素値から前記第2の画素値へ、num2回目に変化する点に対応する前記境界点の水平座標であり、θは、前記ブロックの前記中心点
の法線角度であり、θは、0からπの範囲内であり、δ
Xiは、2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第2の画素値から前記第1の画素値へ、i回目に変化する点に対応する前記境界点の前記サブ画素値であり、δ
Yiは、2つの隣接画素の前記画素値が、前記ブロックの前記中心点の前記法線方向に沿って、前記第1の画素値から前記第2の画素値へ、i回目に変化する点に対応する前記境界点の前記サブ画素値であり、D1(i, j)及びD2(i, j)は、それぞれ、前記第2の画素値から前記第1の画素値へ変化する2つの隣接画素の前記画素値に基づいて計算される距離、及び前記第1の画素値から前記第2の画素値へ変化する2つの隣接画素の前記画素値に基づいて計算される距離であり、D(i, j)は、前記ブロックの前記中心点
の線間距離である
ことを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の線間距離計算装置。
【請求項16】
前記線間生成モジュールは、線間距離に5*5の局所平均値フィルタリングを実行するように構成される
ことを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載の線間距離計算装置。
【請求項17】
コンピュータ上で動作する請求項1〜8のいずれか1項に記載の線間距離計算方法を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のコンピュータプログラムが記憶されるように構成されるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2015年2月13日に中華人民共和国の国家知的所有権局(SIPO)に提出された中国特許出願第201510080690.0号の優先権および利益を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、画像処理技術の分野に関し、特に、線間距離計算方法、及び線間距離計算装置に関する。
【背景技術】
【0003】
社会の発展に伴い、本人認証の精度、セキュリティ、及び実用性への需要が、より高まっている。パスワード、キー、本人カード等のような従来の本人認証は、忘れやすい、漏洩しやすい、紛失しやすい、偽造しやすい等のような問題があり、日常生活向けには不便さやセキュリティ問題を生じる。識別に基づく生体認証技術は、従来の本人認証の多くの欠点を克服することができ、現在のセキュリティ技術研究において高い関心を集めている。生物学的特徴に基づく様々な本人認証方法の中で、指紋認識は、最も早くから最も広く使用される方法である。その高い安定性、唯一性、収集の容易性、高いセキュリティ性のため、指紋は、本人認証に用いることのできる理想的な生物学的特徴であり、指紋認識の市場シェアは、年々増加している。指紋画像は個人のプライバシーに属するため、指紋認識システムは、一般的に指紋画像を直接保存せず、アルゴリズムを用いて、指紋画像から指紋の特色情報を抽出し、それから、本人認証を完了するために、指紋マッチングと認識を実行する。従って、高い信頼性を有する指紋認識アルゴリズムが、正しい指紋識別を保証するために重要である。
【0004】
さらにまた、線間距離が、与えられた隆線と隣接する谷線の間の距離として決定される。一般的に、隆線の中心と谷線の中心の間の距離が、線間距離として計算される。線間距離が大きいほど、隆線は疎であり、線間距離が小さいほど、隆線は密である。線間距離の値は、指紋自体の構造と画像取得時の解像度に依存する。
【0005】
線間距離計算についての先行技術は、2つの分野に分けられる。第1の分野は、全体画像に基づいて、指紋の線間距離を概算するものである。理想的には、指紋画像の線間距離は、正規分布していると考えられる。しかしながら、実際の指紋データベースでは、同じ指紋画像の線間距離が2倍の差を有することもあるため、線間距離を全体画像に基づいて計算することは不可能である。第2の分野は、画像の領域に基づいて局所的な線間距離を概算するものであり、範囲内のピーク点を高精度に見つける必要がある。これは、アルゴリズムで達成するのは困難かもしれず、得られる線間距離は低精度であろう。
【0006】
例えば、先行技術の第2の分野のアルゴリズムでは、指紋画像の線に直交する方向において、画素のグレースケール値は、離散正弦波形の特徴を示す。
図1に示されるように、2本の隆線間の距離は、正弦波形の2つの隣接するピーク間の距離として表される。センサによって実際に収集された指紋画像は、ノイズを包含し、そのノイズ情報は、センサ自体と実際の条件(指が水気や油分、又は削れた皮膚を有している等)に主に起因するため、正弦波形のピークの状態はより複雑になる。例えば、正弦波形は単一のピークを有するとは限らず、事実、ピーク点を高精度に見つけることは不可能である。同じ力の強さで押された同じ指で収集された指紋画像について、指の同じ位置でこの方法を用いて得られる線間距離は、全く異なる。指紋のグレースケール画像自体についても、線に直交する方向に沿った隆線と谷線の分布は、理想的な正弦波ではなく、明確なピーク値を持たない。そのために、グレースケールに基づく線間距離計算方法は、くっきりとしたムラのない指紋画像にのみ適用可能である。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、従来技術に既存する少なくとも1つの問題をある程度解決しようとする。本開示の第1の観点は、線間距離計算方法を提供することであり、その計算方法は、指紋の隆線と谷線の境界点を探し、境界点の座標及びサブ画素値により、線間距離を計算する。高精度で、抗ノイズ性が強く、指紋の全体的な疎密の特徴が、より精度高く反映され、適用の範囲はより広い。
【0008】
本開示の第2の観点は、線間距離計算装置を提供することである。
【0009】
上記の観点を達成するために、本開示の第1の観点の幾つかの実施形態に係る線間計算方法は、原画像を得て、グレースケール処理を実行して、グレースケール画像を生成するステップと、グレースケール画像に基づいて、法線方向画像と接線方向画像を生成するステップと、接線方向画像に基づいて、グレースケール画像にフィルタリングを実行して平滑化画像を生成し、平滑化画像を2値画像へ変換するステップと、2値画像を複数のブロックに分割し、法線方向画像に基づいて、各ブロックの中心点の法線方向を決定するステップと、各ブロックの中心点の法線方向に画素をトラバーサルして、各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数を計算し、変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値を計算するステップと、各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数、及び変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値に基づいて、指紋の線間距離を生成するステップと、を含み、第1の画素値は、隆線の画素の画素値であり、第2の画素値は、谷線の画素の画素値であることを特徴とする。
【0010】
本開示の実施形態に係る線間距離計算方法は、指紋の隆線と谷線の境界点を探し、境界点の座標及びサブ画素値により、線間距離を計算する。線間距離の精度は、高められるであろうし、指紋の真の像がより身近に得られ、指紋の全体的な疎密の特徴が、より精度高く反映される。更に、本方法の抗ノイズ性は強く、適用の範囲はより広い。
【0011】
上記の観点を達成するために、本開示の第2の観点の幾つかの実施形態に係る線間計算装置は、原画像を得て、グレースケール処理を実行して、グレースケール画像を生成するように構成されるグレースケール処理モジュールと、グレースケール画像に基づいて、法線方向画像と接線方向画像を生成するように構成される生成モジュールと、接線方向画像に基づいて、グレースケール画像にフィルタリングを実行して平滑化画像を生成し、平滑化画像を2値画像へ変換するように構成される平滑化モジュールと、2値画像を複数のブロックに分割し、法線方向画像に基づいて、各ブロックの中心点の法線方向を決定するように構成されるブロック処理モジュールと、各ブロックの中心点の法線方向に画素をトラバーサルして、各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数を計算し、変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値を計算するように構成されるサブ画素計算モジュールと、各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数、及び変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値に基づいて、指紋の線間距離を生成するように構成される線間距離生成モジュールと、を含み、第1の画素値は、隆線の画素の画素値であり、第2の画素値は、谷線の画素の画素値であることを特徴とする。
【0012】
本開示の実施形態に係る線間距離計算装置は、指紋の隆線と谷線の境界点を探し、境界点の座標及びサブ画素値により、線間距離を計算する。線間距離の精度は、高められるであろうし、指紋の真の像がより身近に得られ、指紋の全体的な疎密の特徴が、より精度高く反映される。更に、本方法の抗ノイズ性は強く、適用の範囲はより広い。
また、本開示の第3の観点によれば、コンピュータ上で動作する請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子機器制御方法を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムが提供される。本開示の実施形態の第4の観点によれば、請求項17に記載のコンピュータプログラムが記憶されるように構成されるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】先行技術における一部の領域の隆線の正弦分布特徴の概略図である。
【0014】
【
図2】本開示の実施形態に係る線間距離計算方法のフローチャート図である。
【0015】
【
図3】本開示の実施形態に係る画素値が0から1へ変化する境界点と変化回数の概略図である。
【0016】
【
図4】本開示の実施形態に係る境界点のサブ画素値計算のフローチャート図である。
【0017】
【
図5A】本開示の実施形態に係る水平方向に沿ったサブ画素値計算の概略図である。
【
図5B】本開示の実施形態に係る水平方向に沿ったサブ画素値計算の概略図である。
【
図5C】本開示の実施形態に係る水平方向に沿ったサブ画素値計算の概略図である。
【0018】
【
図6A】本開示の実施形態に係る非垂直又は非水平方向に沿ったサブ画素値計算の概略図である。
【
図6B】本開示の実施形態に係る非垂直又は非水平方向に沿ったサブ画素値計算の概略図である。
【
図6C】本開示の実施形態に係る非垂直又は非水平方向に沿ったサブ画素値計算の概略図である。
【0019】
【
図7A】本開示の実施形態に係るグレースケール画像の概略図である。
【0020】
【
図7B】本開示の実施形態に係る接線方向画像の概略図である。
【0021】
【
図7C】本開示の実施形態に係る平滑化画像の概略図である。
【0022】
【
図7D】本開示の実施形態に係る2値画像の概略図である。
【0023】
【
図7E】本開示の実施形態に係る各点の最終的な線間距離のデータに、Gaborフィルタリングを行った後の結果の概略図である。
【0024】
【
図8】本開示の実施形態に係る線間距離計算装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
典型的な実施形態がこれより詳述され、その実施例が添付の図面において図示される。同じ又は類似の要素、及び同じ又は類似の機能を持つ要素は、類似した符号数字で表される。ここで図面を参照して述べられる実施形態は、説明的、例示的なものであり、本開示を一般的に理解するために使用される。これらの実施形態は、本開示を制限するものと解釈されるべきではない。
【0026】
計算された線間距離が低精度である、アルゴリズムの適用範囲が狭い、等のような既存の線間距離アルゴリズムの問題を解決するため、本開示は、改善された線間距離計算方法、及び線間距離計算装置を提供する。以下では、本開示に係る線間距離計算方法、及び線間距離計算装置が、図面を参照して詳細に説明される。
【0027】
図2は、本開示の実施形態に係る線間距離計算方法のフローチャートである。
図2に示されるように、本開示の実施形態に係る線間距離計算方法は、以下のステップを含む。
【0028】
ステップS1は、原画像を得て、グレースケール処理を実行して、グレースケール画像を生成するステップを含む。
【0029】
特に、グレースケール処理は、原画像に実行されて、グレースケール画像A(i,j)を生成する。
【0030】
ステップS2は、グレースケール画像に基づいて、法線方向画像と接線方向画像を生成するステップを含む。
【0031】
特に、グレースケール画像A(i,j)について、法線方向画像01(i,j)と接線方向画像02(i,j)が、勾配法を用いて得られる。
【0032】
ステップS3は、接線方向画像に基づいて、グレースケール画像にフィルタリングを実行して平滑化画像を生成し、平滑化画像を2値画像へ変換するステップを含む。
【0033】
本開示の1つの実施形態では、接線方向画像に基づいて、グレースケール画像にフィルタリングを実行して平滑化画像を生成するステップは、接線方向画像に基づいて、グレースケール画像に1*7の平均値又は平均化フィルタリングを実行して平滑化画像を生成するステップを含む。
【0034】
特に、1*7の平均値フィルタリングが、画像のギザつきを除去するために、接線方向画像02(i,j)を使用して、グレースケール画像A(i,j)に実行されて、平滑化画像B(i,j)が得られ、それから、平滑化画像B(i,j)は、微分2値化処理を使用して、2値画像D(i,j)に変換される。
【0035】
ステップS4は、2値画像を複数のブロックに分割し、法線方向画像に基づいて、各ブロックの中心点の法線方向を決定するステップを含む。
【0036】
特に、2値画像D(i,j)は、N*Nの大きさの複数のブロックに分割され(例えば、Nは33である)、ブロックは逐一ずらすように動かされる。従って、ブロック間には重複部分がある。
【0037】
更に、各ブロックの中心点の法線方向が、法線方向画像01(i,j)から読み取られる。
【0038】
ステップS5は、各ブロックの中心点の法線方向に画素をトラバーサルして、各ブロックで、各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する総回数を計算し、その変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値を計算するステップを含む。第1の画素値は、隆線の画素の画素値であり、第2の画素値は、谷線の画素の画素値である。つまり、第1の画素値を有する画素は、隆線の画素であり、第2の画素値を有する画素は、谷線の画素である。
【0039】
本開示の1つの実施形態では、第1の画素値は0であり、第2の画素値は1である。これらの画素値は、以下の説明で一例として使用される。
【0040】
特に、2値画像D(i,j)の各ブロックについて、各ブロック内で、各ブロックの中心点の法線方向にある画素がトラバーサルされ、各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が0から1へ、及び1から0へ変化する総回数が計算され、そして、その変化点の画素の座標も、境界点の座標として計算される。
図3に示されるように、縞状の領域は、隆線を表し、画素値は0であり、白い領域は、谷線であり、画素値は1である。矢印によって示される位置は、0が1へ変化する位置であり、即ち、境界点の位置である。
図3に示されるように、0が1へ変化する総回数は3である。2つの隣接画素の画素値が0から1へ変化する場合、境界点の座標は、2つの隣接画素のうち、画素値が0となっている画素の座標として記録され、また、2つの隣接画素のうち、画素値が1となっている画素の座標としても記録される。
【0041】
本開示の1つの実施形態では、
図4に示されるように、その変化点に対応する境界点のサブ画素値が、以下のステップを用いて生成される。
【0042】
ステップS51は、予め設定された方向に沿って、境界点に隣接する2つの画素の画素値を得るステップを含む。
【0043】
ステップS52は、境界点に隣接する2つの画素の画素値と、境界点の画素値とに基づいて、境界点のサブ画素値を生成するステップを含む。
【0044】
特に、トラバーサル中に、境界点のサブ画素値が、同時に計算され、その計算は2つの場合に分けられる。1つは、傾いた方向に沿って、境界点のサブ画素値を計算する場合と、もう一つは、垂直又は水平方向に沿って、計算する場合である。上記の2つの場合について、それぞれ以下の説明で詳述される。
【0045】
本開示の1つの実施形態では、ブロックの中心点の法線方向に対応する法線角度が0°の場合、予め設定された方向は、垂直方向であり、ブロックの中心点の法線方向に対応する法線角度が90°の場合、予め設定された方向は、水平方向である。ブロックの中心点の法線方向に対応する法線角度が0°又は90°の場合、境界点に隣接する2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と等しいならば、境界点のサブ画素値は、0であり、境界点に隣接する2つの画素の画素値の1つのみが、境界点の画素値と等しいならば、境界点のサブ画素値は、0.5であり、境界点に隣接する2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と異なるならば、境界点のサブ画素値は、1である。
【0046】
特に、
図5A〜
図5Cは、水平方向(例えば、
図5Aに示されるY軸方向)に沿ってサブ画素値を計算する際の概略図である。本開示では、指紋画像(例えば、
図7Aに示されるグレースケール画像)の左上端が、原点として使用され、指紋画像の垂直及び水平方向の境界が、座標系を定めるために、それぞれx軸及びy軸として使用される。ブロックの中心点の法線方向に対応する法線角度は、ブロックの中心点の法線方向とx軸間の角度であり、図では、垂直方向の縞模様のブロックは、境界点を表し、白色のブロックは、谷線上の点を表し、黒色のブロックは、隆線上の点を表す。変化点に対応する境界点のサブ画素値を計算する時は、境界点の両側の2つの画素の画素値が、決定のために使用される。境界点の両側の2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と等しいならば、境界点のサブ画素値δは、0となる。境界点の両側の2つの画素の画素値の1つが、境界点の画素値と等しいならば、δは、1/2となる。境界点の両側の2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と異なるならば、δは、1となる。例えば、境界点に隣接する2つの画素は、
図5Aでは、両方とも白色のブロックであり、
図5Bでは、それぞれ黒色と白色のブロックであり、
図5Cでは、両方とも黒色のブロックである。
【0047】
本開示のもう一つの実施形態では、ブロックの中心点の法線方向に対応する法線角度が0°又は90°と等しくない場合、予め設定された方向は、垂直方向及び水平方向以外の方向であり、即ち、傾いた方向である。境界点に隣接する2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と等しいならば、境界点のサブ画素値は、0であり、境界点に隣接する2つの画素の画素値の1つのみが、境界点の画素値と等しいならば、境界点のサブ画素値は、0.25であり、境界点に隣接する2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と異なるならば、境界点のサブ画素値は、0.5である。
【0048】
特に、
図6A〜
図6Cは、非垂直方向又は非水平方向(即ち、
図6Aに示されるような、斜め又は傾いた方向)に沿ってサブ画素値を計算する際の概略図である。図に示されるように、垂直方向の縞模様のブロックは、境界点を表し、白色のブロックは、谷線上の点を表し、黒色のブロックは、隆線上の点を表す。境界点のサブ画素値を計算する場合は、境界点の両側の2つの画素の画素値が、決定のために使用される。境界点の両側の2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と等しいならば、δは、0となる。境界点の両側の2つの画素の画素値の1つが、境界点の画素値と等しいならば、δは、1/4となる。境界点の両側の2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と異なるならば、δは、1/2となる。例えば、境界点に隣接する2つの画素は、
図6Aでは、両方とも白色のブロックであり、
図6Bでは、それぞれ黒色と白色のブロックであり、
図6Cでは、両方とも垂直方向の縞模様のブロックである。
【0049】
ステップS6は、ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する総回数、及び変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値に基づいて、線間距離を生成するステップを含み、その線間距離は、各ブロックの中心点の線間距離であることを特徴とする。
【0050】
本開示の1つの実施形態では、ブロックの中心点の線間距離は、以下の式を用いて生成される。
【数1】
【数2】
【数3】
【0051】
num1及びnum2は、画素値が、第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数であり、num1は、ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第2の画素値から第1の画素値へ変化する回数であり、num2は、ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値から第2の画素値へ変化する回数である。X
1及びX
num1は、それぞれ、2つの隣接画素の画素値が、ブロックの中心点の法線方向に沿って、第2の画素値から第1の画素値へ、1回目に変化する点に対応する境界点の水平座標、及び2つの隣接画素の画素値が、ブロックの中心点の法線方向に沿って、第2の画素値から第1の画素値へ、num1回目に変化する点に対応する境界点の水平座標である。Y
1及びY
num2は、それぞれ、2つの隣接画素の画素値が、ブロックの中心点の法線方向に沿って、第1の画素値から第2の画素値へ、1回目に変化する点に対応する境界点の水平座標、及び2つの隣接画素の画素値が、ブロックの中心点の法線方向に沿って、第1の画素値から第2の画素値へ、num2回目に変化する点に対応する境界点の水平座標である。θは、ブロックの中心点の法線角度であり、θは、0からπの範囲内である。δ
Xiは、2つの隣接画素の画素値が、ブロックの中心点の法線方向に沿って、第2の画素値から第1の画素値へ、i回目に変化する点に対応する境界点のサブ画素値であり、δ
Yiは、2つの隣接画素の画素値が、ブロックの中心点の法線方向に沿って、第1の画素値から第2の画素値へ、i回目に変化する点に対応する境界点のサブ画素値である。D1(i, j)及びD2(i, j)は、それぞれ、第2の画素値から第1の画素値へ変化する2つの隣接画素の画素値に基づいて計算された距離、及び第1の画素値から第2の画素値へ変化する2つの隣接画素の画素値に基づいて計算された距離であり、D(i, j)は、ブロックの中心点の線間距離である。
【0052】
このようにして、各ブロックの中心点の線間距離が計算される。
【0053】
本開示の1つの実施形態では、線間計算方法は、各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数に基づいて、各ブロックの境界点の数を得るステップも含み、境界点が予め決定された数よりも少ない全てのブロックについて、ブロックの中心点の法線方向と反対方向にある画素が、ブロック内で更にトラバーサルされる。
【0054】
特に、D1(i, j)及びD2(i, j)が満たす必要がある条件は、以下である。(1)各ブロックのD1、D2は、画素値が0から1へ又は1から0へ変化する、値が変化する境界点を2つ以上有する。換言すれば、線間距離の計算を完了するために、2本の隆線と1本の谷線、又は2本の谷線と1本の隆線が必要である。隆線と谷線の数が十分でないならば、D1及びD2は存在しない。(2)D1及びD2のいずれか1つが存在しない場合は、D1及びD2のもう一方は、法線方向と反対方向で、少なくとも2つの変化点を探す必要がある。
【0055】
本開示の実施形態に係る線間計算方法は、指紋の隆線と谷線の境界点を探し、境界点の座標及びサブ画素値に基づいて、線間距離を計算する。線間距離の精度は、高められるであろうし、指紋の真の像がより身近に得られ、指紋の全体的な疎密の特徴が、より精度高く反映される。更に、本方法の抗ノイズ性は強く、適用の範囲はより広い。
【0056】
本開示の1つの実施形態では、ステップS6の後に、線間距離計算方法は、線間距離に5*5の局所平均値フィルタリングを実行するステップも含む。
【0057】
特に、5*5の局所平均値フィルタリングは、計算された線間距離に実行されて、計算された線間距離を平滑化し、各点の最終的な線間距離を得る。
【0058】
加えて、本開示の実施形態の線間計算方法の各ステップの計算結果をより直観的に分かりやすくするため、本方法の各ステップの効果を表す図を付与する。
図7Aは、グレースケール画像の概略図であり、
図7Bは、接線方向画像の概略図であり、
図7Cは、平滑化画像の概略図であり、
図7Dは、2値画像の概略図であり、
図7Eは、各点の最終的な線間距離のデータにGaborフィルタリングを行った後の結果の概略図である。
【0059】
本開示の実施形態に係る線間距離計算方法は、指紋の正弦波のカーブではっきりした値を得られない等の比較的複雑な問題は生じない。例えば、理論上1つの最大点を有する箇所が、2つ以上のはっきりしない値を有すると、指紋の線間距離は、高精度に計算できない等の問題は生じない。本開示の実施形態に係る開示された線間距離計算方法によれば、指紋の隆線と谷線の境界点が決定され、その唯一の1点があるのが明確で、境界点の不明な数値はない。従って、ノイズを有する画像に対して高い耐性があり、画像への要求が厳しくなく、適用の範囲が広げられる。本方法は、高い工学的応用価値を持ち、その後に行われる画像フィルタリング、セグメンテーション、リッジトラッキング、及びマッチングのための信頼性の高いパラメータを提供できる。
【0060】
上記の実施形態によって提供される線間距離計算方法に従い、本開示の実施形態は、線間距離計算装置も提供する。本開示の実施形態によって提供される線間距離計算装置は、上記の実施形態によって提供された線間距離計算方法に対応するため、前述の線間距離計算方法は、本実施形態で提供される線間距離計算装置にも適用される。よって、本実施形態では、計算方法について詳述しない。
図8は、本開示の1つの実施形態に係る線間距離計算装置の概略図である。
図8に示されるように、本開示の1つの実施形態に係る計算装置は、グレースケール処理モジュール100と、生成モジュール200と、平滑化モジュール300と、ブロック処理モジュール400と、サブ画素計算モジュール500と、及び線間距離生成モジュール600と、を含む。
【0061】
グレースケール処理モジュール100は、原画像を得て、グレースケール処理を実行して、グレースケール画像を生成するように構成される。
【0062】
生成モジュール200は、グレースケール画像に基づいて、法線方向画像と接線方向画像を生成するように構成される。
【0063】
平滑化モジュール300は、接線方向画像に基づいて、グレースケール画像にフィルタリングを実行して平滑化画像を生成し、平滑化画像を2値画像へ変換するように構成される。
【0064】
本開示の1つの実施形態では、平滑化モジュール300は、特に、接線方向画像に基づいて、グレースケール画像に1*7の平均値フィルタリングを実行して平滑化画像を生成し、それから、平滑化画像を2値画像へ変換するように構成される。
【0065】
ブロック処理モジュール400は、2値画像を複数のブロックに分割し、法線方向画像に基づいて、各ブロックの中心点の法線方向を決定するように構成される。
【0066】
サブ画素計算モジュール500は、各ブロック内で、各ブロックの中心点の法線方向に画素をトラバーサルして、各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する総回数を計算し、その変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値を計算するように構成される。第1の画素値は、隆線が位置する画素の画素値であり、第2の画素値は、谷線が位置する画素の画素値である。
【0067】
本開示の1つの実施形態では、第1の画素値は0であり、第2の画素値は1である。
【0068】
本開示の1つの実施形態では、サブ画素計算モジュール500は、各ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数に基づいて、各ブロックの境界点の数を得るように構成され、境界点が予め設定された数よりも少ないブロックについて、ブロックの中心点の法線方向と反対方向にある画素をブロック内でさらにトラバーサルするように構成される。
【0069】
本開示の1つの実施形態では、サブ画素計算モジュール500は、境界点のサブ画素値を生成する。特に、予め設定された方向に沿って、境界点に隣接する2つの画素の画素値が得られ、境界点に隣接する2つの画素の画素値と、境界点の画素値とに基づいて、境界点のサブ画素値が計算される。
【0070】
本開示の1つの実施形態では、ブロックの中心点の法線方向に対応する法線角度が0°の場合、サブ画素計算モジュール500は、予め設定された方向を、垂直方向に決定し、ブロックの中心点の法線方向に対応する法線角度が90°の場合、サブ画素計算モジュール500は、予め設定された方向を、水平方向に決定する。更に、境界点に隣接する2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と等しい場合、サブ画素計算モジュール500は、境界点のサブ画素値として0を生成するように構成され、境界点に隣接する2つの画素の画素値の1つのみが、境界点の画素値と等しい場合、サブ画素計算モジュール500は、境界点のサブ画素値として0.5を生成するように構成され、境界点に隣接する2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と異なる場合、サブ画素計算モジュール500は、境界点のサブ画素値として1を生成するように構成される。
【0071】
本開示のもう一つの実施形態では、ブロックの中心点の法線方向に対応する法線角度が0°又は90°と等しくない場合、サブ画素計算モジュール500は、予め設定された方向を、垂直方向及び水平方向以外の方向に決定する。境界点に隣接する2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と等しい場合、サブ画素計算モジュール500は、境界点のサブ画素値として、0を生成するように更に構成され、境界点に隣接する2つの画素の画素値の1つのみが、境界点の画素値と等しい場合、サブ画素計算モジュール500は、境界点のサブ画素値として、0.25を生成するように構成され、境界点に隣接する2つの画素の画素値が両方とも、境界点の画素値と異なるならば、サブ画素計算モジュール500は、境界点のサブ画素値として、0.5を生成するように構成される。
【0072】
線間距離生成モジュール600は、ブロック内の2つの隣接画素の画素値が第1の画素値と第2の画素値間で変化する回数、及び変化点に対応する境界点の座標とサブ画素値に基づいて、線間距離を生成するように構成される。
【0073】
本開示のもう1つの実施形態では、線間距離生成モジュール600は、式(1)、式(2)、式(3)を用いて、線間距離を生成する。
【0074】
本開示の1つの実施形態では、線間距離生成モジュール600は、線間距離に5*5の局所平均値フィルタリングを実行するように構成される。
【0075】
本開示の実施形態に係る線間計算装置は、指紋の隆線と谷線の境界点を探し、境界点の座標及びサブ画素値に基づいて、線間距離を計算する。線間距離の精度は、高められるであろうし、指紋の真の像がより身近に得られ、指紋の全体的な疎密の特徴が、より精度高く反映される。更に、本方法の抗ノイズ性は強く、適用の範囲はより広い。
【0076】
この開示における、「1つの実施形態」、「幾つかの実施形態」、「ある実施形態」、「もう一つの実施形態」、「1つの例」、「特定の例」、「幾つかの例」への言及は、その実施形態又は実施例で説明される特定の姿、構成、材質、特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれる事を意味する。よって、この開示において、様々な箇所に「幾つかの実施形態で」、「1つの実施形態で」、「ある実施形態で」、「もう1つの実施例で」、「ある実施例で」、「特定の実施例で」、「幾つかの実施例で」の様な語句がある場合、本開示の同じ実施形態又は実施例について言及する必要はない。さらに、その特定の姿、構成、材質、特徴は、1つ以上の実施形態又は実施例に適切に適用される。
【0077】
本開示の各部は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、又はそれらの組み合わせによって実現されても良いと解釈されるべきである。上記の実施形態では、複数のステップ又は方法が、メモリに記録されたソフトウエア又はファームウエアによって実現され、適切な命令実行システムによって実行されても良い。ハードウエアによって実現される場合は、もう一つの実施形態と同様に、ステップ又は方法は、データ信号の論理関数を実現するための論理ゲート回路を有するディスクリート論理回路、適切な組み合わせ論理ゲート回路を有する特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等で知られる技術の1つ又は組み合わせによって実現されても良い。
【0078】
当業者は、本開示の上記の例示的な方法の全て又は一部のステップは、プログラムで関連するハードウエアに命令することによって達成されてもよいと理解すべきである。プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録されても良く、プログラムは、コンピュータ上で動作する時、本開示の実施形態の方法のステップの1つ又は組み合わせを含んでも良い。
【0079】
加えて、本開示の実施形態の各機能セルは、処理モジュールに統合されても良い。又はこれらのセルは、物理的に分離しても良く、2つ又はそれ以上のセルが、1つの処理モジュールに統合されても良い。統合モジュールは、ハードウエアの形で、又はソフトウエア機能モジュールの形で実現されても良い。統合モジュールが、ソフトウエア機能モジュールの形で実現され、スタンドアロン製品として販売又は使用される時、統合モジュールは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録されても良い。
【0080】
上記の記憶媒体は、読み取り専用メモリ、磁気ディスク、CD等であっても良い。本開示は実施形態を参照して説明されたが、本開示が、当業者が本開示を実行する際に想到しうる他の実施例を含むことは、当業者に了解されるであろう。従って、本開示は、実施形態に限られない。