特許第6494811号(P6494811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6494811温度気流計測装置、温度気流計測システム及び温度気流画像生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6494811
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】温度気流計測装置、温度気流計測システム及び温度気流画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 21/00 20060101AFI20190325BHJP
   G01K 1/02 20060101ALI20190325BHJP
   G01K 13/02 20060101ALI20190325BHJP
   G01J 5/48 20060101ALI20190325BHJP
   G01D 21/02 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   G01D21/00 K
   G01K1/02 Z
   G01K13/02
   G01J5/48 A
   G01D21/02
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-3763(P2018-3763)
(22)【出願日】2018年1月12日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅見 哲平
(72)【発明者】
【氏名】寺門 知香
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−222657(JP,A)
【文献】 実開昭58−191542(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 21/00 − 02
G01K 1/00 − 19/00
G01J 5/48
G01N 33/00
G01W 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データセンター内の温度と気流を計測する装置であって、
3次元的形状を有し、3次元的な通風が可能に形成されたボディーと、
前記ボディーに3次元的に配置して取り付けられ、温度を計測する複数の温度センサと、
前記ボディーに取り付けられ、気流を計測する気流センサと、
前記温度センサ及び気流センサが計測を行う前記データセンター内の位置のデータを取得する取得手段と、
前記ボディーの下部に取り付けられた車輪と、
前記ボディーに取り付けられ、周囲の物体の表面温度を計測する少なくとも二つのサーモカメラと、
を備え
前記少なくとも二つのサーモカメラは、互いに異なる方向にある前記物体の表面温度を計測することを特徴とする温度気流計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度気流計測装置において、
少なくとも8つの前記温度センサを備え、
少なくとも2つの高さレベルにおいて、それぞれ少なくとも4つの前記温度センサが方形をなす位置に配置されている、ことを特徴とする温度気流計測装置。
【請求項3】
請求項に記載の温度気流計測装置において、
少なくとも4つの前記サーモカメラを備え、
少なくとも2つの高さレベルにおいて、それぞれ少なくとも2つの前記サーモカメラが取り付けられ、
同じレベルにある少なくとも2つの前記サーモカメラは、互いに約180度異なる方向に向けられている、ことを特徴とする温度気流計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の温度気流計測装置において、
当該温度気流計測装置の高さは150cm以上である、ことを特徴とする温度気流計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の温度気流計測装置において、
当該温度気流計測装置は、水平方向の短辺が60cm以内である、ことを特徴とする温度気流計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の温度気流計測装置と、
前記温度気流計測装置によって計測された温度及び気流の空間分布を、前記データセンター内の形状と対応づけて表示する表示装置と、
を備えることを特徴とする温度気流計測システム。
【請求項7】
データセンターにおいて、電子機器または電子機器格納ラックが整列配置された間の通路を、少なく一つの気流センサと、3次元的に配置した複数の温度センサと、互いに異なる方向にある周囲の物体の表面温度を計測する少なくとも二つのサーモカメラとを移動させて、気流分布と温度分布を計測するステップと、
前記気流センサと前記温度センサと前記サーモカメラとが計測を行ったデータセンター内位置を取得するステップと、
得られた温度データ、気流データ、サーモカメラデータ、及び位置データに基づいて、データセンター内の温度分布及び気流分布を重畳または並置して可視化した画像を生成する画像生成ステップと、
を含むことを特徴とするデータセンター内の温度気流画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データセンター内の温度と気流の計測を行う温度気流計測装置、温度気流計測システム及び温度気流画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データセンターでは、ICT(Information Communication Technology:情報通信技術)に関する電子機器が多数設置されており、電子機器の高温化を防ぐための空調管理が行われている。データセンターの空調を管理するにあたっては、例えば、作業者がセンター内の多数の空間位置に温度センサを設置して温度を計測し、温度分布図を作成することになる。これにより温度分布状況や熱負荷状況などを把握することができる。
【0003】
下記特許文献1には、ビルの機関室などを、多数のカメラを使わずに監視するための床面走行型自動監視ロボットについて記載されている。このロボットは、台車を有しており、床面に帯状に敷設されたフェライト標識体を検出して、この標識体に沿って自走する。台車には、被監視箇所を撮像する監視カメラと、当該被監視箇所の温度分布を撮像する赤外線カメラとを備えている。撮像信号は、監視モニタ室に送信され、監視画面上では、可視画像に温度分布画像を重畳して、あるいは、並べて表示される。
【0004】
下記特許文献2には、クレーンルームの室内環境を多点計測するための自走式トラバース装置について記載されている。この装置は、遠隔操作により任意の方向に自走する走行台車状に、遠隔装置で伸縮する支柱を設置し、支柱の上端に空気の清浄度、温度、湿度等を検出するセンサをとりつけている。装置は室外から遠隔操作され、室外においてセンサの検出値を読み取ることができる。
【0005】
なお、下記特許文献3には、遠隔非接触の計測機器により得られる温度、振動、または音響の2次元分布計測データを用いて、プラントに設置されている機器の状態監視をする方法が記載されている。ここでは、得られた2次元分布計測画像を、プラント機器の空間形状モデルに位置合わせして重ね合わせ表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−277105号公報
【特許文献2】実開昭62−162626号公報
【特許文献3】特開平8−263133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
データセンターに多数の温度センサを設置して温度分布を把握する方法では、多くのセンサを用意する必要がある。また、設置作業、得られたデータの整理、分布図作成などにも多大な時間を要することになる。他方、設置するセンサの数を減らしたのでは、分布図の解像度が低下し、詳細な把握が難しくなる。また、低解像度のデータでは、データセンターの管理に責任を持つものに対して状況を説明する際に、視覚的な訴求力を欠いてしまうことになる。
【0008】
上記特許文献1のロボットは、同じ施設を常時監視するために床面に専用の標識体を設置している。しかし、データセンターにおいて高解像度のデータを必要とするのは、常時ではなく、臨時的な場合である。このため、上記特許文献1のようなロボットを導入することは困難である。
【0009】
上記特許文献2の装置は、支柱の伸縮と自走によって、クリーンルームの室内環境を把握している。クリーンルームは、一般に人の出入りに制限があり、また、室内環境の一様性が高いためこの装置を用いていると思われる。しかし、クリーンルームでは、温度環境の非一様性などが問題となることもあり密なサンプリングが必要であり、上記特許文献2の手法では効率性が低くなってしまう。
【0010】
本発明の目的は、データセンターにおける空間的な温度分布の計測について、計測点の多点化と、計測の簡易化とを両立させた新たな計測態様を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる温度気流計測装置は、データセンター内の温度と気流を計測する装置であって、3次元的形状を有し、3次元的な通風が可能に形成されたボディーと、前記ボディーに3次元的に配置して取り付けられ、温度を計測する複数の温度センサと、前記ボディーに取り付けられ、気流を計測する気流センサと、前記温度センサ及び気流センサが計測を行う前記データセンター内の位置のデータを取得する取得手段と、前記ボディーの下部に取り付けられた車輪と、前記ボディーに取り付けられ、周囲の物体の表面温度を計測する少なくとも二つのサーモカメラと、を備え、前記少なくとも二つのサーモカメラは、互いに異なる方向にある前記物体の表面温度を計測する。
【0012】
温度気流計測装置は、データセンター内の温度と気流の計測を行う。データセンターとは、ICTに関する電子機器を集約して設置し、運用する施設をいう。このような電子機器には、コンピュータ、記憶装置、通信装置の少なくとも一つが含まれる。例えば、イントラネット用あるいはインターネット用のサーバ、通信機器などを備えたイントラネットデータセンターあるいはインターネットデータセンターは、データセンターの一種である。また、高速の計算機を備え、データの演算、解析、記憶などを行う計算機センターもデータセンターの一種である。
【0013】
温度気流計測装置のボディーは、3次元的形状を有する。すなわち、直線的な1次元形状でも、平面的な2次元形状でもなく、空間の3方向に拡がった3次元的な形状となっている。また、ボディーは、3次元的な通風が可能な形状に形成されている。つまり、進行方向からの空気も、横方向からの空気も、床あるいは天井からの空気も、少なくともその一部はボディーを貫いて流れることができる。このボディーは、例えば、細長い棒状の部材を組み合わせることで形成可能であるし、孔の面積比率が高い板材を組み合わせることでも形成可能である。ただし、ボディーの一部には、孔の無い板状部材などで形成された部位があってもよい。例えば、強度の確保、装置の設置などのために、孔の無い板状部材を用いる場合も想定される。
【0014】
温度センサは、サーミスタなど、その場の空気の温度を計測するセンサである。温度センサは、直接的に、あるいは取り付け部材を介して、ボディーに取り付けられる。温度センサは、3次元的に配置される。すなわち、少なくとも4つの温度センサが配置され、そのうちの少なくとも一つは、他の3つの温度センサがつくる三角形を含んだ平面とは異なる平面に配置される。
【0015】
気流センサは、風速と風向の一方または両方を計測するセンサである。風向計または風速計などと呼ばれる場合もある。一般に気流は3次元的な動きを示すが、気流センサは、例えば特定の1方向あるいは2方向の風速を計測するセンサであってもよいし、風向のみを計測するセンサであってもよい。もちろん、3方向の風速を計測するセンサとすることも可能である。
【0016】
取得手段は、計測データが計測されたデータセンター内の位置データを取得する。位置データの取得は、装置が自動認識してもよいし、ユーザなどによって外部から入力されてもよい。位置データは、例えば、データセンターに仮想的に座標を張った場合における座標の値として表現することができる。
【0017】
車輪はボディーの下部に取り付けられ、温度気流計測装置を移動させるために用いられる。車輪は、モータ等の駆動源によって駆動されてもよい。この場合、駆動の制御を人が行うものとすることもできるし、予め指示されたルート、あるいは自ら設定したルートを、自ら駆動制御して移動する自走式装置とすることもできる。しかし、駆動源を備えず、人あるいはロボットなどの外部の力によって動かされるものであってもよい。
【0018】
本発明の一態様にかかる温度気流計測装置は、さらに、前記ボディーに取り付けられ、周囲の物体の表面温度を計測する少なくとも二つのサーモカメラを備え、前記少なくとも二つのサーモカメラは、互いに異なる方向に前記物体の表面温度を計測する。
【0019】
サーモカメラとは、赤外線を検出するカメラである。物体は一般に表面温度に応じた赤外線を放射しており、赤外線を検出することで表面温度を検出することができる。サーモカメラは、少なくとも二つ取り付けられている。そして、少なくとも二つのサーモカメラは、互いに異なる方向の物体の計測を行っている。サーモカメラによる計測は、サーバラックの吸気面などの温度把握をする上で役立つことが期待される。
【0020】
本発明の一態様にかかる温度気流計測装置は、少なくとも8つの前記温度センサを備え、少なくとも2つの高さレベルにおいて、それぞれ少なくとも4つの前記温度センサが方形をなす位置に配置されている。
【0021】
これにより、複数の高さレベルにおいて、水平的な拡がりをもって温度を把握することが可能となる。立方体あるいは直方体の頂点をなす位置に配置する場合のように、各レベルの方形の位置を揃えるようにしてもよい。また、各レベルの温度センサの配置は、進行方向に対して左右対称(進行方向を見た場合の左側と右側の配置が対象)となるようにすることも有効である。測定レベルは、3つの高さレベル、4つの高さレベル、5つの高さレベル、6つの高さレベル以上などとしてもよい。
【0022】
本発明の一態様にかかる温度気流計測装置は、少なくとも4つの前記サーモカメラを備え、少なくとも2つの高さレベルにおいて、それぞれ少なくとも2つの前記サーモカメラが取り付けられ、同じレベルにある少なくとも2つの前記サーモカメラは、互いに約180度異なる方向に向けられている。
【0023】
ここで、約180度とは、サーモカメラの撮像中心位置が水平面内で見て、150度から210度程度の角度差があることをいう。方向の違いを顕著なものとするために、角度差を160度から200度の範囲としてもよいし、さらに角度差を170度から190度の範囲としてもよい。各レベルのサーモカメラの向きを揃えることもできる。つまり、上の高さレベルのサーモカメラと下の高さレベルのサーモカメラが同じ方向を向くようにしてもよい。また、各レベルのサーモカメラを、進行方向に対して略直交する方向(進行方向に向かった場合の左右方向)に向けることもできる。このような構成により、例えば、温度気流計測装置が両側をサーバラック等に挟まれた通路を移動しながら計測を行う場合において、両側のサーバラック等の表面温度を効率的に計測することなどが可能となる。
【0024】
本発明の一態様にかかる温度気流計測装置は、当該温度気流計測装置の高さは150cm以上である。
【0025】
データセンターにおけるサーバラック等の高さは、一般的には、180cm〜220cm程度である。こうしたサーバラック等の温度環境を計測する上では、温度気流計測装置の高さを、150cm程度以上とすることが望ましい場合がある。さらにサーバラック等の高さに近づけて、例えば、180cm以上、あるいは200cm以上とすることもできる。また、250cm以下、220cm以下、あるいは200cm以下とすることもできる。他方、持ち運びの観点から、高さ方向に伸縮可能な構造を備えることも可能である。この場合には、伸ばしたときに例えば、150cm以上、180cm以上、あるいは200cm以上とすることができる。また、伸ばしたときに、例えば、250cm以下、220cm以下、あるいは200cm以下とすることもできる。
【0026】
本発明の一態様にかかる温度気流計測装置は、水平方向の短辺が60cm以内である。
【0027】
水平方向の短辺は、サーバラック等に挟まれた通路を通行する観点から、ある程度短くする必要がある。通路の幅が比較的広いデータセンターであれば、短辺を例えば80cm以内とすることも可能である。しかし、温度気流計測装置の汎用性を考えた場合には、ある程度狭い通路にも対応することが望ましい。そこで、水平方向の短辺を60cm以内に設定することが考えられる。なお、温度気流計測装置は、必ずしも長方形である必要はない。装置を内包する直方体をイメージした場合において、水平方向の短辺が60cm以内となればよい。短辺は、50cm以内、あるいは、40cm以内とすることもできる。また、短辺は、進行方向と直交する方向とすることができる。
【0028】
本発明の一態様にかかる温度気流計測システムは、温度気流計測装置と、前記温度気流計測装置によって計測された温度及び気流の空間分布を、前記データセンター内の形状と対応づけて表示する表示装置と、を備える。
【0029】
表示装置は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)を利用して、構築することができる。また、表示装置は、例えば、スマートホンやタブレット型の携帯端末装置を用いて構築することもできる。表示装置は、温度気流計測装置のボディーに取り付けられるなど、温度気流計測装置と一体化してもよいし、遠隔配置されてもよい。遠隔配置される場合には、例えば、無線あるいは有線の通信装置によってデータの送受信が行われる。
【0030】
データセンター内の形状とは、データセンターの空間に配置されたサーバラック、計算機などの外形的形状をいう。表示にあたっては、さらに、空調機器からの冷気の吹出口など、温度あるいは気流に関係した設備について重ね合わせ表示するようにしてもよい。また、表示にあたっては、例えば、設定された温度よりも高温の領域がある場合に、あるいは、設定された風速(あるいはその空間的広がりを考慮した風量でもよい)よりも小さな風速の領域がある場合に、通常の表示とは色または文字などが異なる表示を行って、警告をするようにしてもよい。
【0031】
本発明の一態様にかかる温度気流画像生成方法は、データセンターにおいて、電子機器または電子機器格納ラックが整列配置された間の通路を、少なく一つの気流センサと、3次元的に配置した複数の温度センサと、互いに異なる方向にある周囲の物体の表面温度を計測する少なくとも二つのサーモカメラとを移動させて、気流分布と温度分布を計測するステップと、前記気流センサと前記温度センサと前記サーモカメラとが計測を行ったデータセンター内位置を取得するステップと、得られた温度データ、気流データ、サーモカメラデータ、及び位置データに基づいて、データセンター内の温度分布及び気流分布を重畳または並置して可視化した画像を生成する画像生成ステップと、を含む。生成される画像は、電子的に表示されたものでも、印刷されたものでもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の温度気流計測装置の一態様によれば、データセンター内の気流の計測と、複数点の温度の計測とを、移動しながら行うことができる。このため、データセンター内の温度分布と気流の分布を簡易かつ迅速に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】サーバセンターの例を示す上面図である。
図2】サーバセンターの例を示す断面図である。
図3】本実施形態にかかる温度気流計測システム40の概略的な構成を示す斜投影図である。
図4】本実施形態にかかる温度気流計測システム40の機能的な構成を示す図である。
図5】本実施形態にかかる温度気流計測システム40による計測過程を示す図である。
図6】試験的な室内を測定した結果に基づいて、温度と気流の分布を表示した態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本実施形態は、データセンターを対象として、温度等の計測を行うものである。データセンターでは、一般的に、多数の電子機器が規則的に整列配置される。小型の電子機器は、サーバラックなどと呼ばれる電子機器格納用のラックに複数台を格納した上で、当該ラックが整列配置される。そして、これらの電子機器には、床下に通された電源ケーブルや通信ケーブルと接続されることが多い。
【0035】
こうした電子機器は、大量の電力を消費して高温化するため、データセンターには、高出力の冷房装置が設置され、電子機器に流れる空気を適当な温度に管理する空調管理が行われる。床下や天井に空調のための吹出口や吸込口を設け、室内全体の空気の流れを制御している場合もある。データセンターの広さは、床面積が50平方メートル以下のもの、50平方メートル以上のもの、100平方メートル以上のもの、1千平方メートル以上のもの、さらには1万平方メートル以上のものまで様々である。
【0036】
図1図2は、データセンターの一形態について、模式的に示した図である。図1は、データセンター10の上面図であり、図2は、データセンター10を、図1のAA面で切った断面図である。
【0037】
データセンター10は、壁12で囲まれた室内に構築されている。ここには、複数のサーバラックを並べたサーバラック群14、16、18、20が4列に並べられており、その両側には通路22a、22b、22c、22d、22eが設けられている。サーバラックのサイズは必ずしも定まったものは無いが、高さが180〜220cm程度、奥行(通路と通路に挟まれた厚み)は100cm〜120cm程度のものが多い。一つのサーバラックの幅は、例えば、60cm〜80cm程度であり、それを室内のレイアウトに応じた台数だけ並べることで、サーバラック群14、16、18、20が形成される。通路22a、22b、22c、22d、22eの幅の設定も任意性があるが、例えば、80cm〜120cm程度に設定される。各サーバラックは、複数の棚を備えており、そこにサーバが格納されている。各サーバには、電源ケーブル及び通信ケーブルが接続されている。電源ケーブル及び通信ケーブルは、図2に示した床下空間28に通されてサーバに接続されており、データセンター10の床面は、通常平坦な状態に保たれている。
【0038】
データセンター10には、複数の空調機器24、26が設置されている。この空調機器24、26は、データセンター10の室内を冷却するために使われており、原則として24時間の運転が行われている。図2には、空気の流れを矢印で示している。空調機器26では、機器内で冷却した空気を下面の吹出口26aから床下空間28に送り込む。床下空間28には、空気の流れを制御する専用の送風路が設けられている場合もあるし、特段送風路が設けられていない場合もある。送風路が設けられていない場合には、床下空間28に通されたケーブル類によって送風量が左右されることもある。床下空間28に送られた冷気は、床面に開けられた吹出口26b、26c、26dから室内に流れ込む。
【0039】
吹出口24b、26bは、サーバラック群14の図面左の通路22aに設けられているが、サーバラック群14、16の間の通路22bには、吹出口は設けられていない。そして、サーバラック群16、18の間の通路22cには吹出口24c、26cが設けられ、サーバラック群18、20の間の通路22dには吹出口が設けられておらず、サーバラック群20の図面右の通路22eには吹出口24d,26dが設けられている。
【0040】
データセンター10の室内の空気は、天井付近に設けられた吸気口26e、26fから天井裏空間30に吸い込まれる。吸気口26e、26fは、それぞれ通路22d、22bの真上に配置されている。通路22d、22eは、冷気が送り込まれない通路である。天井裏空間30の空気は、ダクト26gによって、空調機器26に還流される。
【0041】
このような空調設定により、データセンター10では、ひとつ飛ばしの通路22a、22c、22eが床下空間28から冷気の送り出される冷たい通路となり、その間の通路22b、22dが暖められた空気が天井裏空間に吸い込まれる暖かい通路となっている。
【0042】
サーバラック群14、16、18、20では、冷たい通路側の側面が吸気面となり、暖かい通路側の側面が排気面となる。特に、ファンによって内部に冷気を送りこむタイプのサーバラックでは、冷たい通路側の下方にファンが取り付けられた吸気面(この場合は側面全体というよりは、ファンが取り付けられ吸気が行われる範囲を指す)が設けられ、暖かい通路の情報に空気を排出する排気面が設けられる。例えば、サーバラック群14では、通路22a側の下部に吸気面14a、通路22b側の上部に排気面14bが設けられている。同様にして、サーバラック群16には排気面16aと吸気面16bが、サーバラック群18には吸気面18aと排気面18bが、サーバラック群20の排気面20aと吸気面20bが設けられている。
【0043】
サーバ等の電子機器を故障防止し、安定して動作させるためには、サーバラック群14、16、18、20に適当な量の冷気を送り込む必要がある。このため、データセンター10の室内の温度を詳細に把握することが求められる。具体的には、冷たい通路22a、22c、22eが設定された温度以下となっているか、十分な量(風速)の空気が想定した方向に流れているか、吸気面14a、16b、18a、20bは十分に冷たい温度に維持されているか、などの点が検証される。また、排気面14b、16a、18b、20aが高温化していないか、暖かい通路22b、22dが高温化していないか、十分な量の空気が想定した方向に流れているか、といった点も検証される。本実施の形態にかかる温度気流計測装置は、こうした温度や気流の計測を行うものである。
【0044】
図3は、本実施形態にかかる温度気流計測システム40の斜投影図である。温度気流計測システム40のボディー42は、細い棒状の部材を組み合わせたフレーム体として形成されており、図面のx方向(計測時の進行方向)、y方向(計測時の幅方向)、z方向(高さ方向)に辺が延びた直方体形状をなしている。棒状の部材としては、アルミ合金などの軽量の金属、あるいは、強度をもった樹脂などを用いることができる。ボディー42は、内部が疎の状態であり、また、外表面に板材などを張っていない。このため、ボディー42には、x方向、y方向、z方向を含む各方向から空気が流れてきても、その大部分は内部を通り抜けていく。
【0045】
ボディー42の底面には、4隅にそれぞれ小径の車輪44が取り付けられている。車輪44には、モータ等の駆動源は取り付けられておらず、ボディー42に加えられた力に追従して回転し、ボディー42をスムーズに移動させる役割を果たしている。車輪44は、前回転及び後回転が可能であり、また、外力に応じて方向を変えるため、いずれの方向への移動もできるようになっている。
【0046】
温度気流計測システム40のz方向の高さは、ボディー42の高さと、それを支持する車輪44の高さの和であり約180cmである。温度気流計測装置の高さをサーバラックの一般的な高さと同程度とした場合には、サーバラックの高さ方向の温度計測が容易化されるため、例えば、200cm程度、あるいは220cm程度にまで伸ばすようにしてもよい。また、持ち運びの容易性を考えて、高さを例えば160cm、あるいは150cm程度にまで低くするようにしてもよいし、高さ方向に伸縮可能に構成するようにしてもよい。温度気流計測システム40のx方向の長さは約80cm、y方向の長さは約40cmに設定されている。x方向の長さを長くした場合には、計測範囲が広がって計測の迅速化が図られるため、例えば、100cm程度、120cm程度、150cm程度、200cm程度まで長くするようにしてもよい。他方、x方向に長い場合いは移動に支障をきたす場合があり、例えば、60cm程度、あるいは40cm程度にまで短くしてもよい。y方向の長さは、通路の幅よりも狭くする必要がある。そこで、例えば、80cm程度以下、60cm程度以下、40程度cm以下、さらには30cm程度以下のように幅の上限を設定することが考えられる。ただし、あまり幅を狭くしたのでは、y方向の計測に拡がりを持てず、また、移動時に不安定となることから、20cm以上または30cm以上に幅の下限を設定することも考えられる。
【0047】
ボディー42には、直方体の4隅のフレームには、それぞれ4個の温度センサ46a、46b、46c、46d(これらをまとめて温度センサ46という場合がある)が取り付けられている。一番低い高さレベルの温度センサ46aは、高さ約20cmの位置に取り付けられている。そして、二番目に低い高さレベルの温度センサ46bは高さ約60cm、三番目の温度センサ46cは高さ約100cm、最も高い高さレベルの温度センサ46dは高さ約190cmに位置に取り付けられている。比較的低い位置に温度センサ46を密に設置しているのは、冷気の吹き出し状況を詳細に捉えるためであるが、等間隔に設定することも可能である。温度センサ46としては、例えば、サーミスタを用いることができる。
【0048】
ボディー42のx方向の正面上方には、x方向の風速を計測する風速計48aが取り付けられている。また、風速計48aと同じ高さにおけるy方向側の端には、y方向の風速を計測する風速計48bが取り付けられている。風速計48a、48b(これらをまとめて風速計48という場合がある)は、プロペラの回転に基づいて風速を計測している気流センサである。風速計48a,48bは、設置距離が近いため、これらの計測結果は、ほぼ同一の地点における2方向の風速を表しているとして扱うことができる。なお、風速計48として、z方向を含めた3次元的な風向風速を行うものを採用することも可能である。また、プロペラ型の風速計に代えて、超音波風速計などを用いること可能である。
【0049】
ボディー42の中央部にz方向に延びる2本のフレームには、6台のサーモカメラ50が取り付けられている。これらは、そのうち3つがy方向の正の方向に向けて取り付けられており、残る3つがy方向の負の方向に向けて取り付けられている。最も低い高さレベルのサーモカメラ50aは約35cmの高さに取り付けられ、中間の高さレベルのサーモカメラ50bは、105cmの高さに取り付けられ、最も高い高さレベルのサーモカメラ50cは175cmの高さに取り付けられている。サーモカメラ50a、50b、50cは、全体としてサーバラックの側面全てを撮影することを目指しており、高さ方向にほぼ均等に配置されている。また、サーモカメラ50a,50b,50cをボディー42の外側ではなく中央部に配置することで、サーバラックとの距離が長くなり、視界が拡がっている。サーモカメラ50は、赤外画像の撮影を行うことで、物体表面の温度を求めることができる。撮影は、静止画と動画のいずれでも行うことが可能である。
【0050】
ボディー42の進行方向前方の上部には、全天カメラ52が設けられている。全天カメラ52は、例えば、温度気流計測システム40の室内における位置の把握などに使うことができる。また、ボディー42の進行方向後方の下部には、センサ基板54が設置されている。センサ基板54は、温度センサ46、風速計48、サーモカメラ50と接続され、これらのセンサの制御等を行うための回路が搭載された基板である。センサ基板54では、例えば、温度センサ46からの電気信号を入力して温度データに変換する処理、風速計48からの電気信号を入力して風向風速データに変換する処理、サーモカメラ50の撮影データを入力して温度データに変換する処理などを行っている。ボディー42の底面付近には、バッテリ56が搭載されている。バッテリ56は、温度センサ46、風速計48、サーモカメラ50、全天カメラ52、センサ基板54、PC(パーソナルコンピュータ)60などに電力を供給する。センサ基板54、バッテリ56、PC60などは、ある程度の発熱を示すが、データセンター10における発熱量に比べて非常に小さいため、計測に与える影響は小さい。また、センサ基板54、バッテリ56、PC60などは、ボディー42を通り抜ける気流をある程度妨げることとなる。しかし、風速計48とは距離をおいて設置していることから、その測定結果への影響は小さい。
【0051】
PC60は、ボディー42の進行方向後方の中段付近に設置されている。PC60は、温度センサ46、風速計48、サーモカメラ50、全天カメラ52による計測結果をセンサ基板54から入力した上で、位置データとの関連づけ処理、温度分布や気流分布などの画像表示、問題個所の警告表示などを行う。PC60は、図3の例のようにボディー42に取り付けることも可能である。また、PC60をボディー42に取り付けずに別体として、ボディー42にはPC60に計測データの無線送信などを行う機能を付与することもできる。
【0052】
ここで、図4を参照して、温度気流計測システム40の機能構成について説明する。上で説明したように、温度気流計測システム40には、複数の温度センサ46、風速計48、複数のサーモカメラ50を備えている。これらの計測データは、PC60に入力される。
【0053】
PC60は、演算機能を備えたハードウエアの動作を、プログラムやデータなどのソフトウエアで制御することにより各種の情報処理を行うことができる。PC60には、タッチパネルやネットワークなどからの入力装置を利用して構築したユーザ入力部70、半導体メモリやハードディスクなどの記憶装置を利用して構築した記憶部80、CPUなどの演算装置を利用して構築した表示処理部100、ディスプレイなどを利用して構築した表示部110の各機能部が構築されている。
【0054】
ユーザ入力部70には、レイアウト入力部72、計測指示部74、位置データ入力部76、表示指示部78が含まれる。これらは、例えば、アプリケーションのボタンやウインドウなどとして実装される。レイアウト入力部72は、データセンター10の室内の形状やサーバラックなどの配置を示すレイアウトデータを入力するものである。ユーザである計測者は、例えば、CAD(コンピュータエイデドデザイン)ソフトウエアを利用することで、レイアウトデータを入力することができる。計測指示部74は、ユーザである計測者が温度気流計測システム40を適当な場所に移動してセットした段階で、計測ボタンなどを押すことにより、温度センサ46、風速計48、サーモカメラ50に計測を行わせるものである。温度センサ46、風速計48、サーモカメラ50に対して常時データ出力させ、計測指示部74からの指示を行ったタイミングで、適当なデータを記録するようにしてもよい。位置データ入力部76は、計測指示部74で計測指示を行った場所を入力するものである。例えば、計測指示部74から指示を行った場合に、データセンター10の室内レイアウトデータ上に、温度気流計測システム40のボディー42の中心位置と向きを指定することで、位置データを入力することができる。あるいは、全天カメラ52の情報などから自動的に位置データを取得するようにしてもよい。表示指示部78は、得られた計測データに基づいて、温度分布、気流分布などの表示の指示を行うものである。表示指示においては、表示するデータの種類、視点、表示範囲などの設定を行うことができる。
【0055】
記憶部80には、レイアウトデータ82とセンサ相対位置データ84が表示されている。レイアウトデータ82は、レイアウト入力部72から入力されたデータである。また、センサ相対位置データ84は、温度気流計測システム40における複数の温度センサ46、風速計48、複数のサーモカメラ50の相対位置を記載したデータである。センサ相対位置データ84は、例えば温度気流計測システム40の床面における中心位置を基準として、進行方向にΔx、幅方向にΔy、高さ方向に対してΔzに位置するというデータとして与えることができる。これにより、位置データ入力部76からボディー42の中心位置と向きが入力された場合に、このセンサ相対位置データ84を参照することで、全てのセンサの位置を決定することができる。
【0056】
記憶部80には、さらに、計測データ86も記憶される。計測データ86には、温度センサデータ88、風向風速データ90、サーモカメラデータ92、位置データ94が含まれる。温度センサデータ88、風向風速データ90、サーモカメラデータ92は、計測指示部74からの指示タイミングに基づいて、それぞれ、温度センサ46、風速計48、サーモカメラ50から入力される。また、位置データ入力部76からの入力に基づいて、各データを計測した時点での位置データ94が記憶される。
【0057】
表示処理部100では、表示指示部78からの指示に基づいて、計測データ86を表示するための処理を行う。表示処理部100は、一般的な画像表示ソフトウエアを利用して構築することもできる。表示処理部100には、内挿処理部102、視点処理部104、マッピング処理部106などが含まれる。内挿処理部102は、限られた計測点から得られるデータを、設定された細かな格子点に線形的にあるいは非線形的に内挿する処理を行う。視点処理部104は、表示指示部78から指示された視点などに応じて、表示範囲などの設定を行う。また、マッピング処理部106は、視点処理部104が設定した表示形態に従って、計測データを画像に落とし込む処理を行う。表示処理部100が作成した画像は、表示部110に表示される。
【0058】
続いて、図5を参照して、温度気流計測システム40の計測動作について説明する。図5は、図1に示したデータセンター10のサーバラック群16、18の間の通路22cを移動しながら計測を行っている状態を示す上面図である。
【0059】
図5では、2点鎖線で示したひとつ前の計測位置にある温度気流計測システム40aと、実線で示した現在の計測位置に移動後の温度気流計測システム40bを示している。この移動は、温度気流計測システム40を使用する計測者が、温度気流計測システム40を押して移動することにより行われる。なお、計測者が温度気流計測システム40の付近にいる場合には、計測者の存在による気流の乱れ、あるは、計測者の存在による温度の乱れが生じることになる。しかし、データセンター10では、計測者の影響を無視できる程度の大きな乱れであり、計測者の存在は問題とならない。同様にして、温度気流計測システム40のボディー42の影響、あるいはボディー42に取り付けられたセンサ基板54、バッテリ56、PC60の影響も無視することができる。
【0060】
計測者は、温度気流計測システム40aを移動させた後、PC60内のアプリケーションを操作して、ユーザ入力部70における計測指示部74から計測の指示を行う。これにより温度センサ46が出力するデータが、PC60の記憶部80に、温度センサデータ88として記憶される。ただし、温度の測定にあたっては、温度センサ46が周囲の温度に追従する時定数を勘案したタイミングで行われる。また、風速計48によって計測されたデータが、記憶部80に風向風速データ90として記憶される。さらに、サーモカメラ50で計測されたデータが、記憶部80にサーモカメラデータ92として記憶される。
【0061】
計測者は、さらに、この計測を行うタイミングで、位置データ入力部76を通じて、温度気流計測システム40aの水平面上の中心位置と方向を入力する。入力は例えば、アプリケーションに表示されたデータセンター10のレイアウト画面において、温度気流計測システム40の表示をドラッグして移動させることにより行われる。この場合、PC60では、このドラッグ位置をデータセンター10における座標に変換して、位置データ94として記憶する。
【0062】
温度センサデータ88と風向風速データ90の計測位置は、位置データ94とセンサ相対位置データ84によって求めることができる。サーモカメラデータ92については、この段階では、サーモカメラ50の撮影位置と撮影方向のみが確定する。具体的には、図5に図示したように、サーモカメラデータ92の視野La,Raが定まる。そして、レイアウトデータ82を参照して、視野La、Raとサーバラック群16,18が交差する面を求めることで、サーモカメラデータ92の撮影範囲を決定することができる。
【0063】
続いて、計測者は、温度気流計測システム40bの位置に移動させ、計測指示と位置データの入力を行う。このときの移動距離は、例えば、温度センサ46による計測位置が、前回の計測位置とは適度に離れるように選択される。また、サーモカメラ50の新たな視界Lb、Rbによって撮像されるサーバラック群16、18の範囲が、以前の撮像範囲と一部重複するように計測位置が設定される。計測者は、PC60を操作して、サーモカメラデータ92の連続性が確保できているか否かを確認することができる。
【0064】
計測者は、温度気流計測システム40をデータセンター10全体に移動させることで、データセンター10の温度と気流についてのデータを得ることができる。その計測データは、異なる時刻に得られるものであるが、一般に、データセンター10では、空調が安定しており、また空調に異常がある場合にもその状態が続くため、同時刻に一斉に計測したデータとほぼ同じ結果が得られる。
【0065】
図6は、温度気流計測システム40を用いて、テスト的に室内の温度を測定した結果を模式的に示した図である。ここでは、PC60の表示部110の画面120に、データセンターに模した室内122が表示されている。室内122の床面122aには、温度気流計測システム40の最も低い高さレベルに設置した温度センサ46が計測した温度分布が等値線で表示されている。室内122の中央付近にはサーバラック122bが配置されている。このサーバラック122bには、サーモカメラ50で計測されたサーモカメラデータ92の測定結果が重ね合わされて表示されている。さらに、室内122の一部には、風向風速データによる気流124が矢印によってベクトル表示されている。
【0066】
画面の左上には、この表示を変更するためのボタンが表示されている。具体的には、視点を変更する視点操作ボタン126、表示方法を変更する表示方法ボタン128、情報表示を行う情報表示ボタン130が表示されている。視点操作ボタン126は、表示の視点を変更するものである。例えば、室内122を表示する視点を、画面の奥側に設定することで、サーバラック122bの裏側の温度分布を表示させることが可能となる。また、表示方法ボタン128を操作することで、温度センサデータ88のみの表示、風向風速データ90のみの表示、サーモカメラデータ92のみの表示、あるいは、これらの組み合わせの表示などを選択することができる。情報表示ボタン130は、計測日時、計測場所、計測者名などの情報を表示させるためのものである。
【0067】
実際のデータセンターを温度気流計測システム40で計測した場合、温度分布表示を行うことにより、周囲に比べて高温化している箇所などを異常個所として見出すことができる。異常の例としては、冷たい通路が想定よりも高温化している状況、暖かい通路が他の暖かい通路よりも高温化している状況、サーバラックの吸気面が高温化している状況などが挙げられる。このときには、異常の原因となったサーバラックの吸気面のファン、電子機器の状態、冷気の吹出口などを確認することで、異常の原因を突き止めることができる。異常の原因や拡がりは、気流の情報を表示することにより明確なものとなる。原因が突き止められた後には、故障設備の修理、ファンの増設などの対策を検討することになる。
【0068】
以上の説明においては、図5を参照して説明した通り、温度気流計測システム40は、測定場所毎に静止して、温度センサ46をその場の温度になじませた上で計測を行うことを想定していた。この計測方法では、移動距離も適度に長い間隔とすることが計測の効率が高められた。しかし、温度センサ46が周囲の温度になじむ時間が、ある程度の距離の移動に要する時間に比べて早い場合には、その速度で移動しながら、連続的に計測を行うようにしてもよい。得られた計測データが膨大なものとなる場合には、例えば、平均操作などを行ってデータ量を減らした上で、表示処理を行うようにしてもよい。連続的に移動する場合には、計測場所の位置データも連続的に与える必要が生じるが、例えば、計測者が適当な間隔で入力した位置情報を内挿することで、その間における各時刻の位置データを与えることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 データセンター、12 壁、14、16、18、20 サーバラック群、14a、16b、18a、20b 吸気面、14b、16a、18b、20a 排気面、22a、22b、22c、22d、22e 通路、24、26 空調機器、24b、24c、24d、26a、26b、26c、26d 吹出口、26g ダクト、26e、26f 吸気口、28 床下空間、30 天井裏空間、40、40a、40b 温度気流計測システム
42 ボディー、44 車輪、46、46a、46b、46c、46d 温度センサ、48、48a、48b 風速計、50、50a、50b、50c サーモカメラ、52 全天カメラ、54 センサ基板、56 バッテリ、60 PC、70 ユーザ入力部、72 レイアウト入力部、74 計測指示部、76 位置データ入力部、78 表示指示部、80 記憶部、82 レイアウトデータ、84 センサ相対位置データ、86 計測データ、88 温度センサデータ、90 風向風速データ、92 サーモカメラデータ、94 位置データ、100 表示処理部、102 内挿処理部、104 視点処理部、106 マッピング処理部、110 表示部、120 画面、122 室内、122a 床面、122b サーバラック、124 気流、126 視点操作ボタン、128 表示方法ボタン、130 情報表示ボタン。
【要約】
【課題】データセンターにおける空間的な温度分布の計測について、計測点の多点化と、計測の簡易化とを両立させた新たな計測態様を実現する。
【解決手段】温度気流計測システム40は、データセンター内の温度と気流を計測する装置であり、3次元的形状を有し、3次元的な通風が可能に形成されたフレーム体からなるボディー42を備える。ボディー42には温度センサ46a〜46dが、3次元的に配置して取り付けられている。また、ボディー42には、気流を計測する風速計48a、48bが取り付けられている。温度センサ46a〜46d及び風速計48a,48bが計測を行うデータセンター内の位置は、PC60への入力によって与えられる。ボディー42の下部には車輪44が取り付けられている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6