特許第6494843号(P6494843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6494843
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】ナイフコーターの塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/04 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   B05C11/04
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-140139(P2018-140139)
(22)【出願日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年7月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 周祐
(72)【発明者】
【氏名】津曲 兼幸
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−317768(JP,A)
【文献】 特開2002−059053(JP,A)
【文献】 実開平07−021149(JP,U)
【文献】 特開平10−296156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00− 21/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行される帯状体からなる金属帯の表面に、ナイフコーターにおける貯留部に貯留された塗料を供給すると共に、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをナイフヘッドによって調整するようにしたナイフコーターの塗工装置において、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれる場合に、塗工位置にある前記のナイフコーターを貯留部に貯留された塗料が貯留部からこぼれ出さない状態にして、前記のナイフコーターにおけるナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させるにあたり、前記のナイフヘッドと対向する貯留部の面が上に位置するように、貯留部に貯留された塗料が貯留部の上面からこぼれないようにナイフコーターを回動させ、この状態で、前記のナイフコーターにおけるナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させ、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後、ナイフコーターとナイフヘッドを塗工位置に戻すことを特徴とするナイフコーターの塗工装置。
【請求項2】
走行される帯状体からなる金属帯の表面に、ナイフコーターにおける貯留部に貯留された塗料を供給すると共に、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをナイフヘッドによって調整するようにしたナイフコーターの塗工装置において、前記の走行される帯状体からなる金属帯を案内するバックアップロールを、前記の金属帯を介して前記のナイフコーターと対向する位置に設け、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをバックアップロールとナイフヘッドとによって調整するようにしたナイフコーターにおいて、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれる場合に、前記のナイフコーターにおける貯留部に貯留された塗料が貯留部からこぼれ出さない状態にして、前記のバックアップロールと一緒にナイフコーターを移動させた後、前記のナイフコーターにおけるナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させ、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後、前記のバックアップロールと一緒にナイフコーターとナイフヘッドを塗工位置に戻すことを特徴とするナイフコーターの塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行される帯状体からなる金属帯の表面に塗料をナイフコーターによって塗布させるようにした場合におけるナイフコーターの塗工装置に関するものである。特に、鋼板等を継ぎ合わせた帯状体からなる金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターによって塗料を塗布する位置に導かれた場合に、ナイフヘッドや金属帯の継ぎ目部分が傷つくのを防止するために、ナイフヘッドを金属帯の継ぎ目部分から離れるように移動させた場合にも、ナイフコーターの貯留部に貯留された塗料がナイフコーターからこぼれたりすることなく、金属帯における塗装不良部分を短くして、走行される金属帯の表面に塗料を綺麗に塗布できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、長尺状の鋼板等を継ぎ合わせた帯状体からなる金属帯を走行させ、この金属帯の表面に塗料を塗布することが行われており、このように走行される帯状体からなる金属帯の表面に塗料を塗布する塗布装置としては、一般にロールコーターが使用されている。
【0003】
ここで、ロールコーターを用いて走行される金属帯の表面に塗料を塗布する場合、通常、複数のロールを回転させて、各ロールに塗料を移動させて塗布用のロールに導き、この塗布用のロールから塗料を走行する金属帯の表面に塗布するようにしている。
【0004】
このため、ロールコーターを用いて走行する金属帯の表面に塗料を塗布する場合、複数のロールを回転させるため、設備コストやランニングコストが高くついたり、メンテナンスに要する時間が長くなったり、また金属帯の表面に塗布する塗料の量を調整するため、ロールの回転数や、ロール間のニップ圧力や、ロール間のギャップ等を適切に設定することが必要になって、これらの操作が面倒で熟練を要し、さらにロールの回転時に泡が発生して、塗料の塗布面にむらが生じたりするという問題があった。
【0005】
このため、走行する金属帯の表面に塗料を塗布するのに、前記のようなロールコーターに代えて、特許文献1に示すように、ナイフコーターを使用することも行われている。
【0006】
ここで、ナイフコーターを使用して走行する金属帯の表面に塗料を塗布する場合、ロールコーターのように複数のロールを回転させる必要がなく、設備コストやランニングコストが低減され、また金属帯の表面に塗布する塗料の量を調整する場合も、ナイフヘッドと走行する金属帯とのギャップを調整するだけで良く、操作が簡単でメンテナンス等も簡単に行え、さらにロールコーターのように、ロールの回転時に泡が発生して、金属帯における塗料の塗布面にむらが生じるのも防止できるという利点がある。
【0007】
しかし、このようなナイフコーターを使用して、長尺状の鋼板等を継ぎ合わせた金属帯の表面に塗料を塗布する場合、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれると、塗料を貯留させていたナイフコーターにおける貯留部の壁やナイフヘッドが、厚くなっている金属帯の継ぎ目部分に衝突して、金属帯の継ぎ目部分やナイフコーターにおける貯留部の壁やナイフヘッドが損傷したりするという問題が生じる。
【0008】
このため、従来においては、前記のように金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれると、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターにおける貯留部の壁やナイフヘッドに衝突しないように、ナイフコーターを金属帯から離れる方向に移動させるようにしていた。
【0009】
ここで、前記の貯留部に塗料が貯留された状態で、ナイフコーターを金属帯から離れる方向に移動させると、貯留部に貯留されていた塗料が金属帯の上や貯留部の下部にこぼれ出して、金属帯や周辺部分等が塗料で汚れるため、貯留部に貯留されている塗料を抜き出した後、ナイフコーターを金属帯から離れる方向に移動させ、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後に、ナイフコーターを元の位置に戻し、その後、前記の貯留部に塗料を再度貯留させるようにしていた。
【0010】
しかし、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれる場合に、その都度、貯留部に貯留されている塗料を抜き出した後、ナイフコーターを金属帯から離れる方向に移動させ、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後に、ナイフコーターを元の位置に戻し、前記の貯留部に塗料を再度貯留させることは非常に面倒で時間を要し、金属帯の表面に塗料を塗布する効率が非常に低下すると共に、金属帯における塗装不良部が長くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭51−97562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、走行される帯状体からなる金属帯の表面に塗料をナイフコーターによって塗布させる場合における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0013】
すなわち、本発明においては、前記のように走行される帯状体からなる金属帯の表面に塗料をナイフコーターによって塗布させるにあたり、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれた場合に、ナイフコーターにおける貯留部の壁やナイフヘッドが金属帯の継ぎ目部分に衝突するのを防止するように、ナイフコーターを金属帯から離れる方向に移動させる際に、ナイフコーターの貯留部に貯留されている塗料を抜き出したりしなくても、ナイフコーターの貯留部に貯留された塗料がナイフコーターからこぼれ出したりすることがなく、金属帯における塗装不良部分を短くして、走行される金属帯の表面に塗料を綺麗に塗布できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る第1のナイフコーターの塗工装置においては、前記のような課題を解決するため、走行される帯状体からなる金属帯の表面に、ナイフコーターにおける貯留部に貯留された塗料を供給すると共に、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをナイフヘッドによって調整するようにしたナイフコーターの塗工装置において、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれる場合に、塗工位置にある前記のナイフコーターを貯留部に貯留された塗料が貯留部からこぼれ出さない状態にして、前記のナイフコーターにおけるナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させるにあたり、前記のナイフヘッドと対向する貯留部の面が上に位置するように、貯留部に貯留された塗料が貯留部の上面からこぼれないようにナイフコーターを回動させ、この状態で、前記のナイフコーターにおけるナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させ、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後、ナイフコーターとナイフヘッドを塗工位置に戻すようにした。
【0015】
本発明における第1のナイフコーターの塗工装置のように、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれる場合に、ナイフコーターを前記の貯留部に貯留された塗料が貯留部からこぼれ出さない状態にして、前記のナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させるにあたって、前記のナイフヘッドと対向する貯留部の面が上に位置するように、貯留部に貯留された塗料が貯留部の上面からこぼれないようにナイフコーターを回動させ、この状態で、前記のナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置にナイフコーターを移動させるようにすると、貯留部に貯留されていた塗料が流れ出すのを防止するために、従来のように、貯留部に貯留されている塗料を抜き出した後、ナイフコーターを金属帯から離れる方向に移動させる必要がなくなる。また、前記のように金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後、ナイフコーターとナイフヘッドを塗工位置に戻すようにすると、従来のように、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後に、ナイフコーターを元の位置に戻し、前記の貯留部に塗料を再度貯留させる操作を行う必要もなくなる。
【0016】
また、本発明における第2のナイフコーターの塗工装置において走行される帯状体からなる金属帯の表面に、ナイフコーターにおける貯留部に貯留された塗料を供給すると共に、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをナイフヘッドによって調整するようにしたナイフコーターの塗工装置において、前記の走行される帯状体からなる金属帯を案内するバックアップロールを、前記の金属帯を介して前記のナイフコーターと対向する位置に設け、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをバックアップロールとナイフヘッドとによって調整するようにしたナイフコーターにおいて、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれる場合に、前記のナイフコーターにおける貯留部に貯留された塗料が貯留部からこぼれ出さない状態にして、前記のバックアップロールと一緒にナイフコーターを移動させた後、前記のナイフコーターにおけるナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させ、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後、前記のバックアップロールと一緒にナイフコーターとナイフヘッドを塗工位置に戻すようにした
【0017】
そして、本発明における第2のナイフコーターの塗工装置においても、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれる場合に、前記のナイフコーターにおける貯留部に貯留された塗料が貯留部からこぼれ出さない状態にして、前記のバックアップロールと一緒にナイフコーターを移動させた後、前記のナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させるようにすると、第1のナイフコーターの塗工装置と同様に、貯留部に貯留されていた塗料が流れ出すのを防止するために、従来のように、貯留部に貯留されている塗料を抜き出した後、ナイフコーターを金属帯から離れる方向に移動させる必要がなくなり、また、前記の金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後、前記のバックアップロールと一緒にナイフコーターとナイフヘッドを塗工位置に戻すようにすると、従来のように、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後に、ナイフコーターを元の位置に戻し、前記の貯留部に塗料を再度貯留させる操作を行う必要もなくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明における第1及び第2のナイフコーターの塗工装置においては、走行される帯状体からなる金属帯の表面に、ナイフコーターの貯留部に貯留された塗料を供給すると共に、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをナイフヘッドによって調整するようにしたナイフコーターにおいて、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれる場合に、前記のようにナイフコーターにおける貯留部に貯留された塗料が貯留部からこぼれ出さない状態にして、ナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させるようにしたため、貯留部に貯留されていた塗料が流れ出すのを防止するため、従来のように、貯留部に貯留されている塗料を抜き出した後、ナイフコーターを金属帯から離れる方向に移動させる必要がなく、また、前記のように金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後、ナイフコーターを塗工位置に戻すようにすると、従来のように、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後に、ナイフコーターを塗工位置に戻し、前記の貯留部に塗料を再度貯留させる操作を行う必要もなくなる。
【0019】
この結果、本発明に係る第1及び第2のナイフコーターの塗工装置においては、走行される帯状体からなる金属帯の表面にナイフコーターによって塗料を塗布させるにあたり、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置に導かれる場合に、ナイフコーターにおける貯留部の壁やナイフヘッドが金属帯の継ぎ目部分に衝突するのを防止するために、ナイフコーターを金属帯から離れる方向に移動させる際に、ナイフコーターの貯留部に貯留されている塗料を抜き出したりしなくても、ナイフコーターの貯留部に貯留された塗料がナイフコーターからこぼれ出したりすることがなく、また金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後に、ナイフコーターを塗工位置に戻し、前記の貯留部に塗料を再度貯留させる操作を行う必要もなく、金属帯における塗装不良部分を短くして、走行される金属帯の表面に塗料を綺麗に塗布できるようになる。

【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るナイフコーターの塗工装置において、ナイフコーターがバックアップロールと対向する位置において、走行される帯状体からなる金属帯の表面に貯留部に貯留された塗料を供給すると共に、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをナイフヘッドによって調整する状態を示した概略説明図である。
図2】前記の実施形態に係るナイフコーターの塗工装置において、金属帯を連続して走行させるため、金属帯相互を継ぎ合わせる一例として、金属帯相互を所定長さ重ねるようにして接合(溶接など)した状態を示した概略説明図である。
図3】前記の実施形態に係るナイフコーターの塗工装置において、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターに導かれる前に、ナイフコーターにおけるナイフヘッドを金属帯の表面から離れる位置に移動させた後、塗工位置に戻す工程を示し、(A)は金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターに導かれる前に、前記のナイフヘッドと対向する貯留部の面が上に位置するように、貯留部に貯留された塗料が貯留部の上面からこぼれないようにナイフコーターを回動させた状態を示した概略説明図、(B)は貯留部に貯留された塗料が貯留部の上面からこぼれないようにナイフコーターを回動させた状態で、前記のナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させた状態を示した概略説明図、(C)は金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターによって塗料を塗布する位置を通過した後、ナイフコーターとナイフヘッドを塗工位置に戻した状態を示した概略説明図である。
図4】前記の実施形態に係るナイフコーターの塗工装置の変更例において、ナイフコーターがバックアップロールと対向する位置において、走行される帯状体からなる金属帯の表面に貯留部に貯留された塗料を供給すると共に、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをバックアップロールとナイフヘッドとによって調整する状態を示した概略説明図である。
図5】前記の変更例に係るナイフコーターの塗工装置において、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターに導かれる前に、ナイフコーターにおけるナイフヘッドを金属帯の表面から離れる位置に移動させる状態を示し、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターに導かれる前に、前記のナイフコーターを前記の貯留部に貯留された塗料が貯留部からこぼれ出さない状態にして、前記のバックアップロールと一緒にナイフコーターを移動させ、その後、前記のナイフコーターにおけるナイフヘッドを前記の金属帯の表面から離れる位置に移動させる状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るナイフコーターの塗工装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明におけるナイフコーターの塗工装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0022】
この実施形態におけるナイフコーターの塗工装置においては、図1に示すように、帯状体からなる金属帯Tをバックアップロール10に巻き掛けるようにして走行させると共に、この金属帯Tを介して前記のバックアップロール10と対向する位置にナイフコーター20を設けている。
【0023】
そして、このナイフコーター20においては、塗料xを貯留させた貯留部21よりも金属帯Tの走行方向下流側の位置に、ナイフヘッド22をバックアップロール10の外周に沿って走行する前記の金属帯Tの表面と所定の間隔を介するようにして前記の貯留部21と一体的に設け、このナイフヘッド22の先端と金属帯Tの隙間を通して、前記の貯留部21から金属帯Tの表面に供給された塗料xを所定の厚みに塗布させながら、塗料xが塗布された金属帯Tをバックアップロール10から次の位置に走行させるようにしている。
【0024】
ここで、この実施形態においては、前記のナイフコーター20を保持させるコーター保持部材12を、前記のバックアップロール10の中心軸11から半径方向外方に延出させるようにして回動及び固定可能に設けると共に、このコーター保持部材12に、前記のナイフコーター20をバックアップロール10に対して近接・離間させるように移動させるシリンダー等の移動装置13を設けている。
【0025】
また、この実施形態における塗工装置において、前記の金属帯Tを連続して走行させ、前記のようにナイフコーター20における貯留部21から金属帯Tの表面に供給された塗料xをナイフヘッド22によって所定の厚みに塗布させて金属帯Tを連続塗工させる場合、連続走行させる金属帯Tを長くするため、図2に示すように、金属帯Tを継ぎ合わせるようにしており、この場合、金属帯T相互を継ぎ合わせた継ぎ目部分は、例えば、図中にTaで示すように金属帯T相互重ね合わせて溶接したり、カシメ(図示せず)をつけたりして継ぎ合わせるため、その厚みが大きくなる。
【0026】
そして、このように金属帯T相互が継ぎ合わされた継ぎ目部分Taが、金属帯Tの表面に塗料xを塗布させるナイフコーター20の位置に導かれると、走行される金属帯Tとの間隔が狭くなった金属帯Tに近接する貯留部21の壁の端部21aや、金属帯Tの表面に供給された塗料xを所定の厚みに塗布させるナイフヘッド22の部分に、厚みが大きくなった金属帯Tの継ぎ目部分Taが当たって、ナイフコーター20や金属帯Tに損傷が生じるようになる。
【0027】
このため、この実施形態における塗工装置において、前記のように金属帯T相互の継ぎ目部分Taがナイフコーター20の位置に導かれる前に、走行される金属帯Tにおける前記の継ぎ目部分Taを継ぎ目検知装置(図示せず)によって検知し、このように金属帯Tにおける継ぎ目部分Taが通過する前に、図3(A)に示すように、バックアップロール10の中心軸11から半径方向外方に延出するように設けた前記のコーター保持部材12を下方に向けて回動させ、これに伴って、前記のナイフコーター20における貯留部21に貯留された塗料xが貯留部21からこぼれ出さないように、塗料xの上面を前記の貯留部21に収容された状態で前記のナイフヘッド22と対向させるようにする。
【0028】
また、前記の貯留部21には背板21bが設けられているため、コーター保持部材12が下方に向けて回動して傾いても、塗料xは貯留部21からこぼれ出さないようになっている。
【0029】
そして、このように前記のように貯留部21に貯留された塗料xが貯留部21からこぼれ出さないようにした状態で、図3(B)に示すように、前記の移動装置13によりナイフコーター20をバックアップロール10から離れる方向に移動させて、ナイフコーター20における貯留部21の壁やナイフヘッド22を前記の金属帯Tの厚みが厚くなった継ぎ目部分Taと接触しない位置に離れるように移動させ、この状態で、金属帯Tの継ぎ目部分Taがナイフコーター20の部分を通過するようにして、金属帯Tを走行させる。
【0030】
ここで、前記のように移動装置13によりナイフコーター20をバックアップロール10から離れる方向に移動させた場合においても、前記のようにナイフコーター20における貯留部21に貯留された塗料xが、前記の背板21bによって貯留部21からこぼれ出さない状態になっているため、貯留部21に貯留された塗料xが、ナイフコーター20から流出するということがなく、従来のように、ナイフコーター20の貯留部21に貯留されている塗料xを抜き出したりしなくても、ナイフコーター20の貯留部21に貯留された塗料xがナイフコーター20からこぼれ出したりすることがない。
【0031】
また、前記の金属帯Tの継ぎ目部分Taがナイフコーター20の位置を通過した後は、図3(C)に示すように、前記のようにバックアップロール10から離れる方向に移動された前記のナイフコーター20を、前記の移動装置13により貯留部21の壁やナイフヘッド22を継ぎ目部分Taが通過した後の金属帯Tに近づける方向に移動させて塗工位置に戻した後、下方に向けて回動された状態にある前記のコーター保持部材12を上方に向けて回動させて戻し、ナイフコーター20を塗工位置に戻した状態にする。
【0032】
なお、ここでいう塗工位置とは、ナイフコーター20とナイフヘッド22によって金属帯Tの表面に塗料xを塗布できる位置であればよく、金属帯Tの継ぎ目部分Taが通過する前に対し、通過した後で、ナイフコーター20が回動した位置や、ナイフヘッド22が移動した位置が異なっていてもよい。具体的には継ぎ目部分Taの前後の金属帯Tが同じ条件(板厚や塗布厚等が同じ)であれば、同じ位置に戻せば良いが、条件が異なれば、継ぎ目部分Taの後の金属帯Tの条件に合わせて、継ぎ目部分Taが通過した後のナイフヘッド22の移動位置を変更させるようにする。
【0033】
そして、前記のように走行する金属帯Tの表面にナイフコーター20における前記の貯留部21から塗料xを供給し、このように供給された塗料xを、前記のようにナイフヘッド22によって走行する金属帯Tの表面に所定の厚みに塗布させて、金属帯Tに塗料xを連続塗工させるようにする。
【0034】
また、前記のように金属帯T相互の継ぎ目部分Taがナイフコーター20の位置に導かれることが検知されると、前記のような操作を行い、塗布を中断し、継ぎ目部分Taを回避した後、走行される帯状体からなる金属帯Tの表面にナイフコーター20によって塗料xを再び連続して塗布させるようにする。
【0035】
このようにすると、金属帯T相互の継ぎ目部分Taがナイフコーター20の位置に導かれる場合に、ナイフコーター20における貯留部21の壁やナイフヘッド22が金属帯Tの継ぎ目部分Taに衝突するのを適切に防止することができると共に、ナイフコーター20を金属帯Tから離れる方向に移動させる際に、従来のように、ナイフコーター20の貯留部21に貯留されている塗料xを抜き出したり、金属帯Tの継ぎ目部分Taがナイフコーター20の部分を通過した後、貯留部21に塗料xを再度貯留させたりするという作業を行わなくても、ナイフコーター20の貯留部21に貯留されている塗料xがナイフコーター20からこぼれ出したりすることがなく、走行される金属帯Tにおける塗装不良部分を短くして、金属帯Tの表面に綺麗に塗料xを塗布できるようになる。
【0036】
ここで、前記の実施形態においては、前記のようにバックアップロール10の中心軸11から半径方向外方に延出するように設けたコーター保持部材12を上下方向に回動できるようにすると共に、このコーター保持部材12に、前記のナイフコーター20をバックアップロール10に対して近接・離間させるように移動させる移動装置13を設け、金属帯T相互が継ぎ合わされた継ぎ目部分Taが、金属帯Tの表面に塗料xを塗布させるナイフコーター20の位置に導かれる場合に、前記のコーター保持部材12を下方に回動させて、ナイフコーター20における貯留部21に貯留された塗料xが貯留部21からこぼれ出さないようにし、前記の移動装置13によりナイフヘッド22をバックアップロール10の外周に沿って走行される金属帯Tから離間させるようにしたが、金属帯T相互が継ぎ合わされた継ぎ目部分Taが、金属帯Tの表面に塗料xを塗布させるナイフコーター20の部分に導かれる場合に、ナイフコーター20における貯留部21に貯留された塗料xが貯留部21からこぼれ出さないようにして、ナイフヘッド22をバックアップロール10の外周に沿って走行される金属帯Tから離間させる方法は、特に前記のような方法に限定されない。
【0037】
例えば、図4及び図5に示す変更例の塗工装置のように構成することもできる。
【0038】
ここで、図4及び図5に示す変更例の塗工装置においては、走行される金属帯Tを第1搬送ロール31からバックアップロール10に導き、このようにバックアップロール10に導かれた金属帯Tの表面に、前記の実施形態の場合と同様にして、ナイフコーター20によって塗料xを所定の厚みに塗布させるようにし、このように塗料xが塗布された金属帯Tをバックアップロール10から第2搬送ロール32に走行させて、金属帯Tの表面に塗料xを連続して塗工させるようにしている。
【0039】
また、この変更例の塗工装置においては、前記のナイフコーター20を保持させる前記の実施形態におけるコーター保持部材12を、バックアップロール10の中心軸11から半径方向外方に延出させるようにして固定して設けると共に、このコーター保持部材12に、前記のナイフコーター20をバックアップロール10に対して近接・離間させるように移動させるシリンダー等の移動装置13を設けている。
【0040】
そして、この変更例の塗工装置においては、図4及び図5に示すように、前記のバックアップロール10を、回動支点Oを中心にして上下方向に回動及び固定可能に設け、走行される金属帯Tを第1搬送ロール31からバックアップロール10に導いて、ナイフコーター20によりこの金属帯Tの表面に塗料xを所定の厚みに塗布させる場合には、前記のバックアップロール10を、回動支点Oを中心にして上方に回動させた状態で固定させ、前記のようにナイフコーター20における貯留部21から走行される金属帯Tの表面に塗料xを供給し、このように供給された塗料xをナイフヘッド22によって所定の厚みに塗布させて金属帯Tを連続塗工させるようにしている。
【0041】
ここで、この変更例における塗工装置において、前記の実施形態に示す場合と同様に、前記の金属帯T相互が継ぎ合わされた継ぎ目部分Taが、金属帯Tの表面に塗料xを塗布させるナイフコーター20の部分に導かれると、走行される金属帯Tとの間隔が狭くなった金属帯Tに近接する貯留部21の端部や、金属帯Tの表面に供給された塗料xを所定の厚みに塗布させるナイフヘッド22の部分に、厚みが大きくなった金属帯Tの継ぎ目部分Taが当たり、ナイフコーター20や金属帯Tに損傷が生じるようになる。
【0042】
このため、この変更例における塗工装置においては、前記のように金属帯T相互の継ぎ目部分Taがナイフコーター20の位置に導かれる前に、走行される金属帯Tにおける前記の継ぎ目部分Taを継ぎ目検知装置(図示せず)によって検知し、このように金属帯Tにおける継ぎ目部分Taが検知された場合には、図5に示すように、前記のバックアップロール10を、前記の回動支点Oを中心にして下方に回動させ、これに伴ってバックアップロール10の中心軸11から半径方向外方に延出された前記のコーター保持部材12を下方に向けて回動させて固定させ、前記のナイフコーター20における貯留部21に貯留された塗料xが貯留部21からこぼれ出さないように、前記の実施形態と同様に、塗料xの上面を前記の貯留部21に収容された状態で前記のナイフヘッド22と対向させるようにする。
【0043】
そして、このように貯留部21に貯留された塗料xが貯留部21からこぼれ出さないようにした状態で、前記の移動装置13によりナイフコーター20をバックアップロール10から離れる方向に移動させて、ナイフコーター20における貯留部21の壁やナイフヘッド22を前記の金属帯Tの厚みが厚くなった継ぎ目部分Taと接触しない位置に離れるように移動させ、この状態で、金属帯Tの継ぎ目部分Taがナイフコーター20の部分を通過するようにして、金属帯Tを走行させる。なお、このように移動装置13によりナイフコーター20をバックアップロール10から離れる方向に移動させた場合においても、前記のようにナイフコーター20における貯留部21に貯留された塗料xが貯留部21からこぼれ出さない状態になっているため、前記の実施形態の場合と同様に、貯留部21に貯留された塗料xが、ナイフコーター20から流出するということがない。
【0044】
また、前記のように金属帯Tの継ぎ目部分Taがナイフコーター20の位置を通過した後は、前記のようにバックアップロール10から離れる方向に移動された前記のナイフコーター20を、前記の移動装置13によって貯留部21の壁やナイフヘッド22を継ぎ目部分Taが通過した後の金属帯Tに近づける位置に移動させて塗工位置に戻した後、回動支点Oを中心にして下方に回動された状態にある前記のバックアップロール10及びバックアップロール10の中心軸11から半径方向外方に延出された前記のコーター保持部材12を、回動支点Oを中心にして上方に向けて回動させて固定させ、前記のナイフコーター20を元の位置に戻した状態にする。
【0045】
そして、前記のように走行する金属帯Tの表面にナイフコーター20における前記の貯留部21から塗料xを供給し、このように供給された塗料xを、前記のようにナイフヘッド22によって走行する金属帯Tの表面に所定の厚みに塗布させて、金属帯Tに塗料xを連続塗工させるようにする。
【0046】
また、前記のように金属帯T相互の継ぎ目部分Taがナイフコーター20の位置に導かれることが検知されると、前記のような操作を行い、塗布を中断し、継ぎ目部分Taを回避した後、走行される帯状体からなる金属帯Tの表面にナイフコーター20によって塗料xを再び連続して塗布させるようにする。
【0047】
このようにすると、この変更例の塗工装置においても、前記の実施形態の塗工装置と同様に、金属帯T相互の継ぎ目部分Taがナイフコーター20の位置に導かれる場合に、ナイフコーター20における貯留部21の壁やナイフヘッド22が金属帯Tの継ぎ目部分Taに衝突するのを適切に防止することができると共に、ナイフコーター20を金属帯Tから離れる方向に移動させる際に、従来のように、ナイフコーター20の貯留部21に貯留されている塗料xを抜き出したり、金属帯Tの継ぎ目部分Taがナイフコーター20の部分を通過した後、貯留部21に塗料xを再度貯留させたりするという作業を行わなくても、ナイフコーター20の貯留部21に貯留されている塗料xがナイフコーター20からこぼれ出したりすることがなく、走行される金属帯Tにおける塗装不良部分を短くして、金属帯Tの表面に綺麗に塗料xを塗布できるようになる。
【符号の説明】
【0048】
10 :バックアップロール
11 :中心軸
12 :コーター保持部材
13 :移動装置
20 :ナイフコーター
21 :貯留部
21a:端部(壁)
21b:背板
22 :ナイフヘッド
31 :第1搬送ロール
32 :第2搬送ロール
O :回動支点
T :金属帯
Ta :継ぎ目部分
x :塗料
【要約】
【課題】 走行される金属帯の表面に塗料をナイフコーターによって連続して塗布するにあたり、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターに衝突するのを防止し、ナイフコーターの貯留部に貯留された塗料がこぼれ出すのを抑制すると共に、金属帯における塗装不良部分を短くして綺麗な塗工が行えるようにする。
【解決手段】 走行される金属帯Tの表面に、ナイフコーター20における貯留部21に貯留された塗料xを供給し、金属帯の表面に供給された塗料の厚みをナイフヘッド22によって調整するにあたり、金属帯の継ぎ目部分Taがナイフコーターの位置に導かれる場合に、塗工位置にあるナイフコーターを貯留部に貯留された塗料が貯留部からこぼれ出ないようにして、前記のナイフヘッドを金属帯の表面から離れる位置に移動させ、金属帯の継ぎ目部分がナイフコーターの位置を通過した後、ナイフコーターとナイフヘッドを塗工位置に戻すようにした。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5