特許第6494907号(P6494907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テールズの特許一覧 ▶ サントル・ナショナル・デテュッド・スパティアレの特許一覧

特許6494907柔軟構造を展開および再格納する装置、並びにそのような装置を共に備えた柔軟且つ展開可能な構造および衛星
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494907
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】柔軟構造を展開および再格納する装置、並びにそのような装置を共に備えた柔軟且つ展開可能な構造および衛星
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/22 20060101AFI20190325BHJP
   B64G 1/44 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B64G1/22
   B64G1/44 B
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-252158(P2013-252158)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-114011(P2014-114011A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年12月1日
(31)【優先権主張番号】1203300
(32)【優先日】2012年12月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505157485
【氏名又は名称】テールズ
(73)【特許権者】
【識別番号】509120447
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・デテュッド・スパティアレ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL D’ETUDES SPATIALES
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ボーダス、ヤニク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェザン、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ブーランジェ、ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ギノー、フランソワ
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭46−002375(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02868094(FR,A1)
【文献】 特開2004−136759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/22
B64G 1/44
B64G 1/66
B64G 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸Xに平行な展開/再格納軸を有する少なくとも1個のテープばね(10)、および前記軸Xに垂直な軸Yの回りに回転可能な回転子(15、33)を含む柔軟構造を展開および再格納する装置であって、前記テープばね(10)が、前記回転子(15、33)の回りに巻かれた状態から解かれた状態に自律的に移行可能であり、前記テープばね(10)が、2個の分岐(11、12)を有するU字形に二つ折りに載置されていて、第1係止点(5、36)に固定された第1分岐(11)の第1終端(16)および前記回転子の回りに巻かれた第2分岐(12)の第2終端(17)を含み、前記テープばね(10)は、前記第1分岐(11)の前記第1終端(16)で、前記第1係止点(5、36)の2個の補完的要素(18、19)の間に前記テープばね(10)が挟持されるように、載置されている装置。
【請求項2】
前記第2分岐(12)の前記第2終端(17)が、前記回転子(15、33)に固定された第2係止点(6、37)に固定されていて、前記第2係止点(6、37)が、互いに対向して載置された2個の補完的な形状の顎部(18、19)からなり、前記テープばね(10)の前記第2分岐(12)の前記第2終端(17)が、前記第2係止点(6、37)の前記2個の顎部の間に載置されていることを特徴とする、請求項1に記載の展開/再格納装置。
【請求項3】
前記回転子(15、33)の回転軸を支持する固定取付具(13)に互いに対向して載置された少なくとも2個のローラー(21、22)を更に含み、前記回転子(15、33)に固定された前記テープばねの前記第2分岐(12)が前記2個のローラー(21、22)の間に設置されていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の展開/再格納装置。
【請求項4】
前記回転子(15、33)に結合された展開速度調整装置(45)を更に含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の展開/再格納装置。
【請求項5】
少なくとも1個の2次元のXY柔軟膜(30)を更に含み、前記テープばね(10)が、前記テープばね(10)の前記展開/再格納軸Xに平行に前記柔軟膜(30)に固定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の展開/再格納装置。
【請求項6】
少なくとも1個の2次元のXY柔軟膜(30)を更に含み、前記テープばね(10)が、前記テープばね(10)の前記展開/再格納軸Xに平行に前記柔軟膜(30)に固定されており、
互いに平行且つ前記軸Xに平行に前記柔軟膜(30)に固定された少なくとも2個のテープばねを含み、各テープばね(31a、31b、31c)が二つ折りに載置されていて、各テープばねの前記第1終端(16)が前記第1係止点(5、36)に固定され、各テープばねの前記第2終端(17)が前記回転子(15、33)に固定された前記第2係止点(6、37)に堅牢に固定されていることを特徴とする、請求項に記載の展開/再格納装置。
【請求項7】
前記柔軟膜が、前記軸Xに垂直な横方向補強材(80、84、85)を含み、前記横方向補強材が各テープばね(31a、31b、31c)に各々固定されていることを特徴とする、請求項6に記載の展開/再格納装置。
【請求項8】
少なくとも1個の固定された固定子(14、32)を更に含み、前記第1係止点(5、36)が前記固定子(14、32)に固定されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の展開/再格納装置。
【請求項9】
前記第1係止点(5、36)が前記回転子(15、33)に固定されていて、前記展開/再格納装置が、前記回転子(15、33)の前記回転軸を支持する固定取付具(13)に互いに対向して載置された2個の第1ローラー(21、22)および前記取付具(13)に互いに対向して載置された第2ローラー(23、24)を含み、前記テープばね(10、31a、31b、31c)の前記第2分岐(12)が、前記2個の第1ローラー(21、22)の間に設置され、前記テープばね(10、31a、31b、31c)の前記第1分岐(11)が前記2個の第2ローラー(23、24)の間に設置されていることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の展開/再格納装置。
【請求項10】
前記第2分岐(12)の前記第2終端(17)が、前記回転子(15、33)に固定された第2係止点(6、37)に固定されていて、
同一の前記回転子(15、33)に反対向きに載置された少なくとも2個のテープばね(10a、10b)を含み、各前記テープばね(10a、10b)が、二つ折りに載置され、前記第1係止点(5、36)により同一の前記固定子(14、32)に、および前記第2係止点(6、37)により同一の前記回転子(15、33)に各々固定された2個の終端(16a、17a)、(16b、17b)を含むことを特徴とする、請求項8に記載の展開/再格納装置。
【請求項11】
前記第2分岐(12)の前記第2終端(17)が、前記回転子(15、33)に固定された第2係止点(6、37)に固定されていて、
同一の前記回転子(15、33)に星形に載置された少なくとも3個のテープばね(10c、10d、10f)を含み、各前記テープばね(10c、10d、10f)が、二つ折りに載置され、前記第1係止点(5、36)により同一の固定子(14、32)に、および前記第2係止点(6、37)により同一の回転子(15、33)に各々固定された2個の終端を含むことを特徴とする、請求項8に記載の展開/再格納装置。
【請求項12】
前記軸Yに平行な少なくとも2個の固定子(43、44)を含み、前記2個の固定子が前記回転子(33)の両側に1個ずつ載置され、2個の柔軟構造(41、42)が同一の回転子(33)に反対向きに載置されていて、各々の前記柔軟構造(41、42)が、2次元のXY柔軟膜(30)および前記柔軟膜(30)に二つ折りに固定された少なくとも1個のテープばね(10、31a、31b、31c)を含み、前記テープばね(10、31a、31b、31c)が、前記2個の固定子(43、44)一方に固定された第1終端および前記回転子(33)に固定された第2終端を含むことを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の展開/再格納装置。
【請求項13】
前記テープばね(10、31a、31b、31c)が波形シートであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の展開/再格納装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1個の展開/再格納装置を含む柔軟な展開可能構造。
【請求項15】
展開可能な連結マスト(53)を更に含むことを特徴とする、請求項14に記載の柔軟な展開可能構造。
【請求項16】
前記連結マスト(53)が、回転駆動モーター(58)を介して衛星(1)のプラットフォームに固定可能であることを特徴とする、請求項15に記載の柔軟な展開可能構造。
【請求項17】
前記展開可能構造の中央平面(60)の両側に背中合わせに載置された2個の太陽電池パネル片翼(2a、2b)を含み、前記中央平面(60)が前記2個の片翼(2a、2b)の展開/再格納軸Xに垂直で、2個の独立した展開/再格納装置が各々前記2個の片翼専用であって、前記2個の展開/再格納装置が2個の各回転子(62a、62b)を含み、前記2個の回転子(62a、62b)が互いに平行な各回転軸(63a、63b)を有していることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の柔軟な展開可能構造。
【請求項18】
前記二つ折りにされたテープばね(10、31a、31b、31c)の前記第1分岐(11)に固定された第1柔軟膜、および同一の前記テープばね(10、31a、31b、31c)の前記第2分岐(12)に固定された第2柔軟膜を含み、前記第1柔軟膜が第1物体(70)を支持し、前記第2柔軟膜が前記第1物体(70)とは異なる第2物体(73)を支持していることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の柔軟な展開可能構造。
【請求項19】
前記第1物体(70)が太陽電池であり、前記第2物体(73)が集光レンズであって、前記第2柔軟膜が光線を透過させることを特徴とする、請求項18に記載の柔軟な展開可能構造。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の柔軟構造を展開および再格納する少なくとも1個の装置を含むことを特徴とする衛星。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟構造を展開および再格納する装置、および共にそのような装置を備えた柔軟な且つ展開可能構造および衛星に関する。本発明は特に、軌道上で展開する必要がある宇宙用機材の分野、より具体的には、アンテナ、太陽電池パネル、遮熱スクリーン、バッフルまたは望遠鏡等の衛星用の宇宙用機材に適用できる。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間において展開可能な、例えば太陽電池パネルタイプの構造は一般に、互いに連結された剛性パネルからなり、これらのパネルは収納位置で互いに積み重ねられている。これらの構造は、良好に制御された動力学的利点を有しているが、比質量が高く、且つ慣性が高いという短所がある。更に、収納位置にあるとき、剛性構造は発射装置のフェアリングの下で相当の空間量を占有する。展開可能構造に割り当てられる発射装置のフェアリングの下の空間が制約されるため、展開時にそれらが占有する面積を最適化するにはこれらの展開可能構造が収納位置にあるときに必要な空間量を減らすことが重要である。
【0003】
柔軟なシーティング材、および当該シーティング材の同一平面に固定されたテープばねを含む展開可能な柔軟平面構造がある。収納位置において、シーティング材およびテープばねは心棒の回りに巻かれる。柔軟平面構造は、心棒が回転自在にされたときに、テープばねの自発的な解きにより自律的に展開される。
【0004】
実際、図1a、1b、1cに示すように、テープばねは、曲率半径が第1面が凸面で第2面が凹面である円弧状の断面を有する柔軟なテープとして宇宙空間分野で知られており、当該テープは、本質的に自身の蓄積された弾性エネルギーの結果として巻かれた状態から解かれた状態に移行可能である。テープばねは従って、解かれた状態に戻るために自然に展開する傾向がある。テープばねを強制的に格納しようとした場合、自身の横方向曲率半径Rにほぼ等しい半径でそうなる傾向がある。従って、これらを当該形状に巻かれた状態に保つために弱い外力しか必要としない。しかし、この力が突然消失した場合、展開は激烈且つ制御不能になって、テープばね全体がその全長にわたり同時に解ける傾向があり、これはテープばねが固定された柔軟なシーティング材または周辺要素を損傷させるリスクを示している。従来のテープばねには従って、展開を制御する観点から問題が生じる恐れがある。更に、テープばねは、凸および凹面101、102の両方で同じ剛性を有しておらず、凸面101は柔軟であるのに対し凹面102は剛体である。この結果、解かれた状態で、テープばねの凸面101に加えられた図1aの矢印で示す僅かな力はテープばねを撓ませる傾向があるのに対し、凹面102に加えられた力は一切影響せず、これにより柔軟構造が展開状態では不安定であるという問題が生じる。展開状態における安定性のこの問題に対処するには従って、追加的な保持装置を用いてシーティング材を展開位置に保つか、または軌道周回力の下で安定に保たれていることを保証するためにテープばねに過剰な加工を施す必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、既存装置の短所が除外され、且つ僅かな空間しか占有しない利点を有し、製造が簡単で、発射装置のフェアリング下への格納時に展開可能構造の体積を最適化でき、展開を制御可能にし、再格納機能を有し、追加的な保持装置を用いる必要無しに展開時の構造に剛性および安定性をもたらす、展開可能構造を展開および再格納する装置を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記を実現するために、本発明は、軸Xに平行な展開/再格納軸を有する少なくとも1個のテープばね、および軸Xに垂直な軸Yの回りに回転可能な回転子を含む柔軟構造を展開および再格納する装置に関し、テープばねは、回転子の回りに巻かれた状態から解かれた状態に自律的に移行可能である。テープばねは、2個の分岐を有するU字形に二つ折りに載置されていて、第1係止点に堅牢に固定された第1分岐の第1終端および回転子の回りに巻かれた第2分岐の第2終端を含み、テープばねの第1分岐の第1終端が第1係止点の2個の顎部の間に載置されている。
【0007】
有利な点として、第2分岐の第2終端は、回転子に固定された第2係止点に堅牢に固定されていて、第2係止点は、互いに対向して載置された2個の補完的な形状の顎部からなり、テープばねの第2分岐の第2終端は、第2係止点の2個の顎部の間に載置されている。
【0008】
有利な点として、展開/再格納装置は更に、回転子の回転軸を支持する固定取付具に互いに対向して載置された少なくとも2個のローラー含んでいてよく、回転子に固定されたテープばねの第2分岐は2個のローラーの間に設置されている。
【0009】
有利な点として、展開/再格納装置は更に、回転子に結合された展開速度調整装置を含んでいてよい。
【0010】
有利な点として、展開/再格納装置は更に、少なくとも1個の2次元のXY柔軟膜を含んでいてよく、テープばねは、当該テープばねの展開/再格納軸Xに平行に柔軟膜に固定されている。
【0011】
有利な点として、展開/再格納装置は、互いに平行且つ軸Xに平行に柔軟膜に固定された少なくとも2個のテープばねを含んでいてよく、各テープばねは二つ折りに載置されていて、各テープばねの第1終端は第1係止点に堅牢に固定され、各テープばねの第2終端は回転子に固定された第2係止点に堅牢に固定されている。
【0012】
有利な点として、柔軟膜は、軸Xに垂直な横方向補強材を含んでいてよく、横方向補強材は各テープばねに各々固定されている。
【0013】
本発明の第1実施形態によれば、展開/再格納装置は更に少なくとも1個の固定された固定子を含み、第1係止点は当該固定子に固定されている。
【0014】
本発明の第2実施形態によれば、第1係止点は回転子に固定されていて、展開/再格納装置は、互いに対向して取付具に載置された2個の第1ローラーおよび互いに対向して取付具に載置された2個の第2ローラーを含み、テープばねの第2分岐は2個の第1ローラーの間に設置され、テープばねの第1分岐は2個の第2ローラーの間に設置されている。
【0015】
有利な点として、展開/再格納装置は、同一の回転子に反対向きに載置された少なくとも2個のテープばねを含んでいてよく、各テープばねは、二つ折りに載置され、第1係止点により同一の固定子に、および第2係止点により同一の回転子に各々固定された2個の終端を含んでいる。
【0016】
代替的に、展開/再格納装置は、同一の回転子に星形に載置された少なくとも3個のテープばねを含んでいてよく、各テープばねは、二つ折りに載置され、第1係止点により同一の固定子に、および第2係止点により同一の回転子に各々固定された2個の終端を含んでいる。
【0017】
特定の一実施形態によれば、展開/再格納装置は、軸Yに平行な少なくとも2個の固定子を含んでいてよく、当該2個の固定子が回転子の両側に1個ずつ載置され、2個の柔軟構造が同一の回転子に反対向きに載置されていて、各々の柔軟構造は、2次元のXY柔軟膜および当該柔軟膜に二つ折りに固定された少なくとも1個のテープばねを含み、当該テープばねは、2個の固定子の一方に堅牢に固定された第1終端および回転子に固定された第2終端を含んでいる。
【0018】
有利な点として、テープばねは波形シートであってよい。
【0019】
本発明はまた、少なくとも1個に展開/再格納装置を含む柔軟な展開可能構造にも関している。
【0020】
有利な点として、柔軟な展開可能構造は、展開可能な連結マストを更に含んでいてよい。
【0021】
有利な点として、連結マストは、回転駆動モーターを介して衛星のプラットフォームに固定されていてよい。
【0022】
有利な点として、柔軟な展開可能構造は、展開可能構造の中央平面の両側に背中合わせに載置された2個の太陽電池パネル片翼を含んでいてよく、中央平面は2個の片翼の展開/再格納の軸Xに垂直で、2個の独立した展開/再格納装置が各々2個の片翼専用であって、2個の展開/再格納装置は2個の各回転子を含み、2個の回転子は互いに平行な各回転軸を有している。
【0023】
有利な点として、柔軟な展開可能構造は、二つ折りにされたテープばねの第1分岐に固定された第1柔軟膜、および同一のテープばねの第2分岐に固定された第2柔軟膜を含んでいてよく、第1柔軟膜は第1物体を支持し、第2柔軟膜は第1物体とは異なる第2物体を支持している。
【0024】
特定の一実施形態によれば、第1物体は太陽電池であり、第2物体は集光レンズであってよく、第2柔軟膜は光線を透過させる。
【0025】
本発明はまた、柔軟構造を展開および再格納する少なくとも1個の装置を含む人工衛星にも関する。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、添付の模式的図面を参照しながら、純粋に説明目的であって非限定的な例として与える以下の説明を精査することにより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1a-1b】1個の曲率半径を有するテープばねの第1例の、各々折り曲げ途中、および静止状態を示す2個の透視図である。
図1c】テープばねの第1例の断面図である。
図1d】複数の曲率半径を有するテープばねの第2例の透視図である。
図2a-2c】本発明の第1実施形態による展開/再格納装置の一例を、各々展開中、収納位置、および展開位置にある状態で示す3個の透視図である。
図3a-3d】本発明による、4個の異なる展開状態に対応する展開/再格納装置の第1例を各々示す4個の長手方向断面図である。
図3e-3f】本発明による、テープばね係止具の2個の異なる例を示す2個の断面図である。
図4a-4c】本発明による、ローラーガイド手段を含む展開/再格納装置の一例を示す3個の長手方向断面図である。
図4d-4f】本発明による、ローラーガイド手段の3個の例を示す3個の断面図である。
図5a-5c】本発明による、2個のローラーガイド手段を含む展開/再格納装置の一例を示す3個の長手方向断面図である。
図6a-6b】本発明の第2実施形態による、展開構成において対向して載置された2個のテープばねを含む展開/再格納装置の一例を示す2個の長手方向断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態による、展開構成において星形に載置された3個のテープばねを含む展開/再格納装置の一例を示す長手方向断面図である。
図8a】本発明による、展開構成において柔軟なシーティング材に固定された3個の基本のテープばねを含む展開可能構造を展開および再格納する装置の透視図である。
図8b-8d】本発明による、テープばねに固定された横方向補強材を含む柔軟膜の3個の例を示す断面である。
図9a-9b】本発明による、各展開可能構造が展開構成において柔軟なシーティング材に固定された3個の基本のテープばねを含み、且つ対向して載置された2個の展開可能構造を展開および再格納する装置の一例を示す2個の透視図である。
図10a-10e】本発明による、図8aの展開可能構造の展開動作の一例を示す。
図11a-11g】本発明による、図9aの2個の展開可能構造の展開動作の一例を示す。
図12a-12c】本発明による、衛星のプラットフォーム載置された太陽電池パネル翼等の柔軟な展開可能構造の各種構成の例を示す。
図13a-13d】本発明による、衛星のプラットフォームに反対向きに載置された2個の太陽電池パネル片翼の2対を含む柔軟な展開可能構造の構成の例を示す。
図14a-14c】本発明による、太陽電池パネル翼の収納位置、部分的展開位置、および完全展開位置を各々示す3個の長手方向断面図である。
図15a-15b】本発明による、衛星に反対向きに載置された太陽電池パネル翼および2個の太陽電池パネル翼を各々完全展開位置で示す2個の透視図である。
図16】本発明による、翼の2個の外面で異なる物体を支持する2枚の柔軟膜を含む集中型太陽電池パネル翼を展開構成で示す長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1実施形態によれば、図2a〜2cに示し、且つ図3a〜3dに断面図で模式的に示す展開/再格納装置は、軸Xおよび回転子15に平行な展開/再格納軸を有する少なくとも1個のテープばね10を含んでいる。図1a、1b、1cに示すように、テープばね10は、凸面の第1面101、凹面の第2面102、および横方向曲率半径Rを有する円弧状の断面を含む柔軟ブレードであってよい。当該テープばねはまた、複数の横方向曲率半径を含む波形柔軟ブレードまたは波形柔軟シートであってよく、ブレードまたシートの波形は凹面ゾーン104により分離された複数の凸面ゾーン103を形成することができる。図1dに、凹面中間ゾーンにより分離された2個の凸面ゾーンを有する面を含む波形柔軟ブレードの一例の透視図を示すが、凸面ゾーンの個数は2より大きくてもよい。テープばねは、基本的に自身の蓄積された弾性エネルギーを用いて、巻かれた状態から解かれた状態に自律的に移行可能である。本発明によれば、テープばねは、二つ折りに載置され、各々第1係止点5および第2係止点6に堅牢に固定された2個の終端16、17を含み、第2係止点6は回転子15に固定されている。第1係止点は、固定子14または回転子15に固定されていてよい。テープはねは従って、展開動作中および展開位置において、半径がテープばねの曲率半径にほぼ一致する円弧状の底部9により接続された2個の分岐11、12を含む柔軟なU字形構造を形成する。テープばね10の第1分岐11の終端に配置された終端16は、例えば図3a〜3dに示すように、固定子14に直接固定されていても、または固定取付具13を介して固定されていてもよいが、これは必須ではない。代替的に、本発明の別の実施形態において、図5a〜5cに示すように、テープばね10の第1分岐11の終端に配置された終端16は回転子15に固定されていてもよい。固定子14に固定された取付具13が回転子15の回転軸Yを支持し、軸Yは軸Xに垂直である。第1係止点5が図3aに示す収納位置で固定子14に固定されている場合、テープばね10は、第2分岐12の終端17から第1分岐11の終端16まで回転子15の回りに巻かれる。収納位置において、第1分岐11は従って第2分岐12の最上部に巻かれる。図3bに示す展開動作中に、テープばね10は、回転子15の回転動作下で軸Xに平行な方向に、第1分岐11の終端16から第2分岐12の終端17まで漸進的に解かれて展開し、第1分岐11の終端16は固定されたまま、第2分岐12で第1終端17は回転子に固定されたままである。展開位置において、テープばね10の2個の分岐11、12は、図3dに示すように間隔が空けられている。U字形の底部9において、テープばね10の2個の分岐11、12の間隔は、テープばね10の曲率直径Dにほぼ一致する。テープばね10の2個の分岐11、12は、図3a、3b、3dに示すように互いに平行であってよいが、これは必須ではない。
【0029】
テープばねが二つ折りに載置されているため、展開位置において、展開/格納軸Xに平行な長手方向中央軸20の両側に延在する連続的な柔軟構造を有し、同一の、テープばねの凹面102または凸面101または波形面が常にU字形の外側に面している。展開された柔軟構造の2個の分岐11、12は従って、展開されているため完全に安定した柔軟構造の平面に垂直な同一方向Zの2つの相反する向きに剛性が同一である前方および後方の外面を有している。好適には、テープばねが、各々凸面および凹面である2個の面を含む柔軟ブレードである例において、テープばねは、自身の凹面102側で二つ折りにされることにより凸面101がU字形の外側に面している。しかし、テープばねはまた、自身の凸面101上側で二つ折りに曲げられることにより凹面102がU字形の外側に面していてもよい。
【0030】
収納位置において、テープばね10は、自身の回りに巻かれた状態に保たれている。テープばねの展開は、テープばねの蓄積された弾性エネルギーを用いて自律的に生じる。展開フェーズの間におけるテープばねの展開が漸進的、整合的且つ均一であるために、展開/再格納装置は更に、例えば図9bに示すように、回転子15に結合された調整装置45を含んでいてよい。調整装置45により、テープばねを収納位置において巻かれた状態に保ち、展開中のテープばね10の展開速度を制御することができる。調整装置は例えば、減速歯車に関連付けられた電気モーターを含み、更にテープばねを収納位置に固定する停止装置を含んでいてよい。好適には、調整装置45は非通電時に逆方法に回転できないため、収納位置においてテープばねを巻かれた状態に保つことが可能になる。調整装置45への通電により、テープばねを解放することができ、当該ばねは次いで自律的に展開し、その展開速度は調整装置45により制御される。
【0031】
各種の係止具を回転子15および固定子14に形成することができる。図3e、3fに示す係止点は、互いに対向して配置された補完的形状を有する2個の内面を有する、顎部18、19と称する2個の補完的要素を含み、2個の顎部18、19の2個の補完的内面がテープばね10を係止面を構成している。テープばね10は従って、U字形の第1分岐11の終端16、およびU字形の第2分岐の終端17で2個の顎部の間に挟持されている。図3eにおいて、2個のテープばねの係止面は平面形状であるため、テープばね10の巻きおよび解きが容易になるが、テープばねは展開位置での設置が余り良好でない。図3fにおいて、2個のテープばね係止面が各々凹および凸面であるためテープばねを展開位置で確実に設置することができるが、係止面が平坦な場合に比べてテープばね10を巻く解く際により大きい半径を必要とする。係止具の種類の選択は、望まれるテープばねの剛性および駆動トルク性能に依存する。
【0032】
第1顎部19は、例えば凸面であって、当該顎部が第1係止点5の領域にあるとき固定子14に固定されているか、第2係止点6の領域に位置あるとき回転子15に固定されている。第2顎部18は例えば凹面であって、クランプ4により第1顎部19に固定されている。当該クランプは第2顎部18の外面に固定されていて、当該外面は図3e、3fに示すように平坦であるか、またはローラー21が凹外面を有する図4dに示すように他の何らかの形状、例えば凹面であってよい。
【0033】
固定子15に固定された第1分岐11の終端16は一般に、図3fに示す係止点のように、2個の補完的な、すなわち各々凹および凸面の顎部18、19を含む第1係止点5を備えているが、これは当該終端16でなるべく堅牢な係止点を有することが必要であり、且つ当該終端16での巻きに対する制約がないためである。
【0034】
有利な点として、展開/再格納装置は、展開または再格納動作の間、テープばね10の向きを誘導すべくテープばね10のガイド手段を含んでいてよい。図4a〜4cにおいて、テープばねの第2分岐12のガイド手段は取付具13に固定されている。図4a〜4dに示すように、ガイド手段は例えば2個のローラー21、22を含んでいて、2個のローラー21、22は、互いに対向して配置された各々凹および凸面の2個の補完的な表面を有している。ローラーとテープばねの間の摩擦を減らすために、各ローラー21、22は図4dに示すように一体構造であっても、または図4fに示すように同一の軸回りの回転対称性を示すいくつかの異なる部品21a、21b、21c、22a、22b、22cを含んでいてよく、これらは例えば円筒形または凸面または凹面である。テープばねは次いで、U字形の第2分岐12で2個のローラー21、22の間に挟持されている。2個のローラーはまた、展開可能構造が衛星に載置された場合、再格納フェーズの間にテープばね10が回転子15に正確に巻かれ、飛行中にテープばねが再格納できるようにする。図4a〜4cに示すようにテープばね10がローラー系により誘導される特別な場合において、図3e、3fに示すように回転子15において平坦な係止点を有していてよい。
【0035】
展開および再格納フェーズにおけるローラーとテープばねの間の摩擦を減らすために、凸面ローラー22および凹面ローラー21を、円弧をなすことにより各々が互いに補完的な凸型および凹型をなす互いに反対向きに配置された2組の複数ローラー25、26で代替することが可能であり、当該2組のローラーは同数のローラー、例えば図4eに示すように3個のローラー、または異なる数のローラーを含んでいてよい。第1組のローラー群25は、放射状に間隔を空けて第1円弧として配置された複数のローラーを含み、第2組のローラー群26は、放射状に間隔を空けて第2円弧として配置された複数のローラーを含んでいて、第1および第2円弧は同心であり、第2組のローラー群26のローラーは、各々第1組のローラー群25のローラーに対向して配置されている。テープばね10は次いで、第1および第2組のローラー群25、26の間に把持されている。
【0036】
図5a〜5cに示す本発明の代替形式において、テープばね10の第1分岐11の終端16および第2分岐12の終端17は、回転子15に固定された係止点6に固定されていて、ガイド手段は、取付具13に載置された2個の第1ローラー21、22および2個の第2ローラー23、24を含んでいる。2個の第1ローラー21、22および2個の第2ローラー23、24は、U字形の中央軸20に関して取付具13に対称に配置されていて、各々凹および凸面の2個の補完的表面を含み、互いに対向して載置されている。テープばね10は次いで、U字形の第2分岐12で2個の第1ローラー21、22の間、およびU字形の第1分岐11で2個の第2ローラー23、24の間に把持されている。この場合、収納位置において、テープばね10の2個の分岐11、12は共に回転子15の回りに巻かれ、展開動作中、テープばね10の2個の分岐11、12は同時に展開される。テープばねの2個の分岐は、2個の第1ローラー21、22および2個の第2ローラー23、24により各々誘導されて同時に回転子15の回りに巻かれたり解かれたりするため、U字形の底部およびU字形の底部とU字形の中央軸との交差箇所Pはテープばね10に沿って常に同じ位置に留まっている。
【0037】
展開/再格納装置は、二つ折りされた単一のテープばねを有していても、または各テープばねが二つ折りされていて第2終端が同一の回転子15に固定され、第1終端が同一の固定子または同一の回転子のいずれかに固定された複数のテープばねを有していてもよい。本発明の第2実施形態において、例えば図6a、6bに示すように、展開/再格納装置は、例えば軸Xに平行であるかまたは軸Xに対して角度Aをなす反対向きの展開軸/再格納軸を有する2個のテープばね10a、10bを含んでいる。2個のテープばね10a、10bは、固定子14および同一の回転子15に固定された同一の取付具13に固定されていてよく、各テープばねは、展開動作中、および展開位置においてU字形構造を形成すべく二つ折りに載置されている。従って、第1テープばね10aは、第1の固定された係止点5aにより取付具13を介して固定子14に固定された第1終端16a、および第2係止点6aにより回転子15に固定された第2終端17aを含んでいる。第2テープばね10bは、固定された第1係止点5bにより固定子に固定された第1終端16b、および回転子15に固定された第2係止点6bにより回転子15に固定された第2終端17bを含んでいる。収納位置において、2個のテープばね10a、10bは共に回転子15の回りに巻かれ、展開動作中、2個のテープばね10a、10bは回転子15の両側で互いに反対向きに、例えば図6aに示すように軸Xに平行であって互いに180°の角度をなす2方向、または図6bに示すように互いの間で180°未満の角度Aをなす2方向に同時に展開される。
【0038】
本発明の第3実施形態において、展開/再格納装置は、星形に配置された展開/再格納軸を有する複数のテープばねを含んでいる。例えば、図7において、3個のテープばね10c、10d、10fは星形に配置されていて、それらの間が120°のオーダーの角度をなす。3個のテープばね10c、10d、10fは、例えば同一の固定子14または代替的に同一の回転子15に固定された第1終端16、および同一の回転子15に堅牢に固定された第2終端17を有し、各テープばねは二つ折りに載置されているため展開動作中、および展開位置においてU字形を形成する。この場合、固定子14は例えば3分岐の星形をなして当該3分岐に3個のテープばねの第1両終端16が各々固定されていてよく、回転子15は例えば3個のテープばねの第2終端17が各々固定された少なくとも3個の面を含む多角形をなしていてよい。星形に配置された3個よりも多いテープばねを含む展開/再格納装置を製造することも可能である。
【0039】
例えば電子回路、電磁素子、アンテナまたは小さい平坦面のように展開したい物体のサイズが小さい場合、テープばね10を用いて展開したい物体を支持することができ、物体は直接テープばねに固定されている。テープばねの展開により、当該ばねに固定された物体を展開する。例えば太陽電池等の素子を備えたより大きいサイズの平坦面を展開する必要がある場合、展開したい要素を支持するための柔軟膜30を、展開時に柔軟構造の全体的な剛性を増すために少なくとも2個のテープばねに固定することも必要になろう。
【0040】
柔軟膜に固定された3個の基本テープばねを含む柔軟な展開可能構造41を展開および再格納する装置の一例を図8aに示す。展開/再格納装置は、軸XおよびYに各々平行な2次元の柔軟膜または柔軟シーティング材30、3個のテープばね31a、31b、31c、固定子32、回転子33、および2個の取付具34、35を含んでいる。柔軟膜30は、太陽電池、電波を反射する金属化されたセル、または例えば遮熱スクリーンを製造するための絶縁要素、その他任意の素子等、展開したい要素を支持することを意図されている。各テープばね31a、31b、31cは二つ折りに載置され、3個のテープばねは互いに平行で且つ長手方向の展開/再格納軸Xに平行な柔軟膜30に固定されている。例えば、2個のテープばねが柔軟膜の外側縁に載置され、第3のテープばねが柔軟膜の中央平面に沿って載置されていてよい。柔軟膜30は、軸Xに垂直な横方向補強材80、84、85で補強されていて、各テープばね31a、31b、31cに各々固定されていてよい。図8b、8cに、複数の横方向曲率半径を含むテープばねに固定された横方向補強材の2個の例を断面図で示す。横方向補強材80、84、85は、例えばテープばねの波形部103、104の頂上に配置された固定点81、82、83で固定されていてよい。テープばねが複数の波形を有する場合、固定点81、82、83は、図8bに示すように中間波形部104の頂上に、または図8cに示すように横方向波形部103の頂上に位置していてよい。図8cの場合、テープばねの2個の横方向波形部103には2個の可能な固定位置82、83があり、且つ同一のテープばねに2個の異なる横方向補強材84、85を取り付ける可能性がある。複数の横方向曲率半径を含むテープばねは、横方向補強材の固定に関する限り有利であるが、例えば図8dに示すように単一の横方向曲率半径を有して互いに平行に配置された2個のテープばねの凸面101の頂上に横方向補強材が固定された状態で横方向補強材を単一の横方向曲率半径を有するテープばねに固定することも無論同様に可能である。展開位置において、各テープばねがU字形に曲げられているため、所望の用途に応じて、U字形の各々の分岐がテープばねを折り曲げる前に柔軟膜に固定されている状態で、テープばねの全長にわたりテープばねを同一の柔軟膜に固定することは可能であり、あるいはU字形の2個の分岐を2個の異なる柔軟膜に固定することも、あるいは例えば太陽電池パネルへの適用の場合、テープばねの一方の分岐だけを柔軟膜に固定することも可能である。
【0041】
好適には、各テープばねが複数の波形を有する場合、各テープばねは自身の凸面を介して柔軟膜にまたは波形の頂上に固定されている。テープばねは、例えば接着、縫合、リベット留めまたはステープル留め等、任意の固定手段を用いて柔軟膜に固定されていてよい。回転子33は、軸Xに垂直な回転軸Yを有し、各々が2個の取付具34、35に載置された2個の両終端を含んでいる。図8aの実施形態に示すように、回転子33および固定子32は例えば円筒形であってよく、固定子32は回転子33の長手軸Yに平行な長手軸を有し、各々が固定された係止点を介して2個の取付具34、35に固定された2個の両終端を有していてよい。各テープばねは、各々が係止点36、37を介して固定子32および回転子33に堅牢に固定された2個の終端16、17を有している。図8aの例において、回転子33と固定子32は、展開および再格納動作の間、テープばねが回転子33の回りに巻かれたり解かれたりできるように、展開軸Xに平行な方向において、各テープばねの曲率直径より僅かに大きい距離だけ互いにずれている。
【0042】
図8aを参照しながら説明しているように、展開/再格納装置は単一の展開可能構造41を含んでいてよいが、2個の展開可能構造を同一の回転子に反対向きに載置して当該2個の構造を同時に展開または再格納することも同様に可能である。図9a、9bにおいて、展開/再格納装置は、各々が図8aを参照しながら説明しているように柔軟膜に固定された3個の基本のテープばねを含む2個の展開可能構造41および42、2個の展開可能構造に共通な単一の回転子33、および回転子33の各々の側に載置された2個の同一の固定子43、44を含んでいる。図9bに示す展開可能構造にはまた、回転子33の一方の終端に載置された展開速度調整装置45も見られる。収納位置において、2個の展開可能構造は共に回転子33の回りに巻かれて調整装置45が非通電にされることにより、2個の展開可能構造を回転子33の回りに巻かれた状態に保つことができる。図9a、9bにおいて、2個の展開可能構造の展開軸は互いに180°未満の角度をなすが、図6bを参照しながら説明しているように、2個の展開可能構造の展開軸を180°の角度Aをなす2方向に配置することも無論可能である。
【0043】
図10a〜10eに、図3a〜3dおよび8aの実施形態による柔軟構造、例えば太陽電池パネル等の展開動作の一例を示す。本例において、柔軟構造は、軸X、Yに平行な2次元の膜または柔軟シーティング材30、および柔軟膜30に固定された3個のテープばね31a、31b、31cを含んでいる。本実施形態に示すように、但し必須ではないが、柔軟構造を支持部50、例えば衛星のプラットフォーム等から離れた位置に保つために、柔軟構造は第1関節54を介してマスト53の終端に載置され、マストの基部は第2関節55を介して支持部に載置されていてよい。マストの長さを増すために、マストは端から端まで載置されていて中間関節56により互いに連結された複数のアーム57で構成されていてよい。柔軟構造の向きを調整すべく、柔軟構造の展開軸X回りのマストの回転を駆動するモーター58が第2関節55の下側のマスト53の足元に配置されていてよい。図10aに示す収納位置において、マスト53は支持部50の上へ折り畳まれ、柔軟構造は回転子の回りに巻かれ、2個の取付具34、35が取付具51、52により支持部50に固定されている。図10b、10cに示すように、取付具51、52を解放することにより、マストは収納位置から自律的に展開される。図10d、10eに示すように、マストの展開時に、調整装置45への通電により回転子33に巻かれた柔軟膜を展開することができ、これは自律的に生起し、膜が軸Yの回りで解かれる速度は回転子に固定された調整装置45により制御される。
【0044】
また、当該マストが取付具51、52により依然として支持部50に固定されている間に、マスト53を展開する前に柔軟構造を展開することもまた考えられる。
【0045】
図11a〜11gに、例えば図6、9a、9bの実施形態による2個の太陽電池パネル等、同一回転子33に反対向きに載置された2個の展開可能構造41、42の展開動作の一例を示す。本例において、各々の展開可能構造は、軸X、Yに平行な2次元の柔軟膜30、および当該柔軟膜に固定された3個のテープばね31a、31b、31cを含んでいる。本実施形態に示すように、但し必須ではないが、2個の柔軟構造を支持部50、例えば人工衛星のボディ等から離れた位置に保つために、2個の柔軟構造は第1関節54を介してマスト53の終端に載置され、マストの基部は第2関節55を介して支持部に載置されていてよい。図11aに示す収納位置において、マストは支持部50の上へ折り畳まれ、2個の柔軟構造は共に回転子33の回りに巻かれ、2個の取付具34、35が取付具51、52により支持部50に固定されている。図11b、11cに示すように、取付具51、52を解放することにより、マストは収納位置から自律的に展開される。図11d〜11gに示すように、マストが展開される場合、2個の柔軟構造は回転子33の各々の側で同時且つ自律的に展開される。調整装置45への通電により、回転子33に巻かれた柔軟膜を展開することができ、膜が軸Yの回りで解ける速度は回転子に固定された調整装置45により制御される。
【0046】
図12a〜12cに、衛星1のプラットフォームに載置された太陽電池パネル翼等、本発明による柔軟な展開可能構造の各種構成の例を示す。図12aにおいて、衛星1および太陽電池パネル翼2からなるアセンブリが発射装置のフェアリング3に載置されていて、太陽電池パネル翼2は収納位置にある。図12bに、太陽電池パネルの2個の翼2が、マスト53により衛星1の両側に対称的に展開され、太陽電池パネル翼の展開軸Xがマストに平行である構成を示す。図12cに、同一の回転子33に反対向きに載置された2個の展開可能構造に固定された2個の太陽電池パネル翼2の対を示し、2対が各々のマスト53、53’を介して衛星1の両側に対称的に展開される。
【0047】
図13a、13bに、各々のマスト53、53’を介して衛星1の両側に載置された2個の太陽電池パネル片翼の2対2a、2bおよび2c、2dを含み、太陽電池パネル片翼の展開軸Xがマストに垂直である柔軟な展開可能構造の構成例を示す。片翼の各対2a、2bおよび2c、2dは、2個の異なる各々の回転子33a、33b、33c、33dに背中合わせに載置されている。各々の片翼は従って、図3a〜3d、4a〜4f、5a〜5cまたは図8aの各々に示す自身の専用展開/再格納装置を有する独立且つ柔軟な展開可能構造である。図13aにおいて、衛星1および2個の太陽電池パネル片翼2a、2bおよび2c、2dからなるアセンブリは、発射装置のフェアリング3に載置されていて、2個の片翼は収納位置にある。図13bにおいて、2個の太陽電池パネル片翼2a、2bおよび2c、2dの対は展開位置にある。同一対の2個の片翼は、軸Xに平行に、但し当該一方向の2つの相反する向きに展開する。
【0048】
図13c、13dに、展開可能構造の中央平面60の両側に背中合わせに載置された2個の太陽電池パネル片翼2a、2bを含む展開可能構造の展開および再格納動作の一例の展開軸Xに沿った長手方向における2個の断面図を示し、中央平面60は展開/再格納軸Xに垂直である。図13cに、収納位置にある2個の片翼2a、2bを示す。図13dにおいて、2個の片翼の一方2bが展開途中であり、他方の片翼2aは収納位置に残っている。2個の片翼2a、2bは図6を参照しながら説明したように各々二つ折りに載置された少なくとも1個のテープばねを含んでいるが、2個の片翼の2個の各テープばね61a、61bは各々中央平面60の両側に対称的に配置された2個の異なる回転子62a、62bの回りに巻かれている。2個の回転子62a、62bは、互いに平行であって固定された固定子65に接続された同一の取付具64により支持された各々の回転軸63a、63bを有している。各々の片翼が自身の専用回転子に載置されているため、各々の片翼は自身の専用展開/再格納装置を有している。同一対の各片翼の展開は、各回転子に関連付けられた2個の異なる調整装置により制御可能であり、各片翼の展開は従って他の片翼の展開とは独立しているため、太陽風により衛星を誘導することができる。
【0049】
展開可能構造は、完全にまたは部分的に展開することができる。柔軟な展開可能構造が、衛星1の両側に載置された2個の太陽電池パネル片翼の2対2a、2bおよび2c、2dを含む図13a〜13dの実施形態の場合、片翼の展開は他方の片翼の展開とは独立に制御可能であり、飛行中に1個以上の片翼を部分的にまたは完全に再格納することにより、太陽電池パネル翼の形状を修正することが可能である。これにより、修正された形状にかかる太陽風の力を利用して衛星を誘導したり軌道のずれを補償することが可能になる。
【0050】
太陽電池パネル翼の場合、展開位置では太陽電池は全て翼の同一の片面に配置されているのに対し、例えば図14bに示すように、展開動作中は太陽電池が翼の両面に配置されるようにできる。図14aにおいて、太陽電池パネル翼は収納位置にある。図14bにおいて、太陽電池パネル翼は部分的展開位置にあり、太陽電池70は太陽電池パネル翼の各々前方および後方2個の外面71、72に分散されている。この構成において、太陽電池パネル翼の2個の外面71、72は稼働している。太陽電池パネル翼の部分的な展開は、衛星が発射装置のフェアリングから地球を回る最終軌道に放出される宇宙の領域から衛星を移動させるフェーズ中に特に有利であるが、これは当該移動フェーズ中に太陽電池パネル翼の太陽に対する向きが最適化されずに変動し得るためである。更に、展開可能構造の部分的な展開は、マストは展開される前に実行することができるため、マストの展開時よりも巨大な機械類の積載を衛星が受容することができる。
【0051】
図14c、15aにおいて、太陽電池パネル翼は完全に展開されていて、太陽電池70は全て太陽電池パネルの前方外面72にある。図15bにおいて、2個の太陽電池パネル翼を含む展開可能構造が衛星1に載置されている。2個の太陽電池パネル翼は完全に展開されていて、太陽電池70は全て太陽電池パネルの各翼の前方外面72にある。
【0052】
別の種類の応用において、例えば図16に示すように、異なる物体を同一の翼の2個の後方外面71および前方外面72に固定することも同様に可能である。そのような例において、第1物体を備えた第1柔軟膜が、U字形に曲げられたテープばねの第1分岐に固定され、第1物体とは異なる第2物体を備えた第2柔軟膜がテープばねの第2分岐に固定されている。例えば、集中型太陽電池パネルの場合、第1柔軟膜が太陽電池70を備え、第2柔軟膜が透明であって例えば集光レンズ等の集光可能な光学素子73を備えていて、集光可能な光学素子は太陽電池に向けて配置されていてよい。太陽に向けた翼の面に配置された集光レンズ73は従って、太陽光線74を太陽電池70に集光させることができる。
【0053】
本発明について、いくつかの特定の実施形態と合わせて記述してきたが、本発明がこれらの実施形態には一切限定されず、本発明の範囲に含まれる記述した手段およびそれらの組合せのあらゆる技術的等価物を含むことは明らかである。
【符号の説明】
【0054】
1 衛星
2 太陽電池パネル翼
2a,2b,2c,2d 太陽電池パネル片翼
3 フェアリング
4 クランプ
5,5a,5b,36 第1係止点
6,6a,6b,37 第2係止点
9 底部
10,10a,10b,10c,10d,10f,31a,31b,31c,61a,61b テープばね
11 第1分岐
12 第2分岐
13,34,35,51,52,64 取付具
14,32,43,44,65 固定子
15,33,33a,33b,33c,33d,62a,62b 回転子
16、17 終端
16a,16b 第1終端
17a,17b 第2終端
18 第2顎部
19 第1顎部
20 中央軸
21、22 第1ローラー
23,24 第2ローラー
25 第1組のローラー群
26 第2組のローラー群
21a,21b,21c,22a,22b,22c 部品
30 柔軟膜
41,42 展開可能構造
50 支持部
53 マスト
54 第1関節
55 第2関節
56 中間関節
57 アーム
58 モーター
60 中央平面
63a,63b 回転軸
70 太陽電池
71 後方外面
72 前方外面
73 集光レンズ
74 太陽光線
80,84,85 横方向補強材
81,82,83 固定点
101 凸面
102 凹面
103,104 波形部
A 角度
D 曲率直径
P 交差箇所
R 横方向曲率半径
X 展開/格納軸
Y 回転軸
Z 同一方向
図1a-1d】
図2a-2c】
図3a-3f】
図4a-4c】
図4d-4f】
図5a-5c】
図6a-6b】
図7
図8a
図8b-8d】
図9a
図9b
図10a-10e】
図11a-11g】
図12a-12c】
図13a-13d】
図14a-14c】
図15a-15b】
図16