特許第6494916号(P6494916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6494916
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】熱交換器およびそれを用いた空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F25B 5/02 20060101AFI20190325BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20190325BHJP
   F25B 41/00 20060101ALI20190325BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20190325BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20190325BHJP
   F24F 1/0068 20190101ALI20190325BHJP
【FI】
   F25B5/02 B
   F25B1/00 396Z
   F25B41/00 C
   F28F1/32 W
   F25B39/00 E
   F24F1/00 391C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-45131(P2014-45131)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-169387(P2015-169387A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】神原 裕志
(72)【発明者】
【氏名】中西 道明
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−237543(JP,A)
【文献】 特開2013−036707(JP,A)
【文献】 特開2013−064524(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/022806(WO,A1)
【文献】 特開2011−247482(JP,A)
【文献】 特開2008−121950(JP,A)
【文献】 特開2006−097953(JP,A)
【文献】 特開平06−281293(JP,A)
【文献】 実開平05−032971(JP,U)
【文献】 特開2005−127529(JP,A)
【文献】 特開2002−205535(JP,A)
【文献】 特開2012−245849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 5/02
F25B 39/00
F25B 41/00
F28F 1/32
F24F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFO冷媒が用いられ、多数の冷媒チューブに対して冷媒が多サーキットに分岐、集合されて流通されるフィンチューブ型の熱交換器において、
前記多数の冷媒チューブの分岐サーキット数が最大6サーキットとされ、
前記熱交換器における熱交換部に配置される前記多数の冷媒チューブの総本数のうち、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合が、空気調和機の定格運転時における、前記熱交換器の能力に応じて7ないし30%の範囲に設定されており、
前記多数の冷媒チューブの総本数のうち、前記1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合が、
前記能力が2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器で、15ないし30%
前記能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器で、7ないし15%
に設定されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記多数の冷媒チューブの総本数のうち、前記1サーキットの占める割合が、
前記能力が2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器で、5ないし15%
前記能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器で、3ないし10%
に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
冷凍サイクル中にHFO冷媒が充填され、その冷凍サイクルを構成している室内熱交換器が、請求項1又は請求項2に記載の熱交換器とされていることを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒として、地球温暖化係数(GWP)が小さいR1234yf冷媒(ハイドロオロオレフィン;以下、単にHFO冷媒とも云う。)を使用した場合に好適な熱交換器およびそれを用いた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
R1234yf冷媒(HFO冷媒)は、従来から広く採用されているR410A冷媒やR134a冷媒等のHFC冷媒に比べ、地球温暖化係数(GWP)が小さい低GWP冷媒であることが知られている。しかし、このHFO冷媒は、冷媒の物性上からR410A冷媒等に比べ、冷媒温度が全体的に10〜20degほど低下するため、放熱量が減少して暖房性能が低下することが懸念される。
【0003】
そこで、HFO冷媒を用いた場合でも、R410A冷媒を用いたものと同等の能力が得られる構成とした発明が特許文献1により提供されている。これは、暖房時にガス冷媒が通過する室外熱交換器を構成する冷媒配管や、外熱交換器の出口から圧縮機の吸入口までの接続配管内での冷媒流速が所定値以下となる通過面積とし、あるいは室外熱交換器を構成する冷媒配管の内径をDmm、パス数をPとしたとき、(3.1415×D×P)/4≧169.3mmの条件を満たすようにし、暖房時、ガス冷媒通過部位での圧力損失がR410Aと同等の適切な圧力損失となるようにしたものである。
【0004】
また、冷媒を熱交換器の複数の伝熱チューブに分配する分流器と、その分流器を備えた冷凍装置に関し、特に運転条件に応じて冷媒パス数を切換えるようにした分流器構造に関する発明が特許文献2に開示されている。また、特許文献3には、2組のチューブに分割されたN個のチューブを含む少なくとも2つのパスを有する熱交換器にあって、1組のチューブが一対のコレクタ間にあるN1個のチューブを含み、2組のチューブが一対のコレクタ間にあるN2個のチューブを含むとき、比N1/Nを15%ないし50%とし、熱交換量を最適化したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−2217号公報
【特許文献2】特開2010−261683号公報
【特許文献3】特表2013−501909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1−3に示されたものは、多数の冷媒チューブに対して冷媒を多サーキットに分岐、集合して流通する構成とした室内熱交換器(フィンチューブ型熱交換器)において、HFO冷媒を用いた場合の暖房性能の低下をカバーするため、多サーキット化する際の分岐、集合を適正に設定することにより、冷媒の熱伝達率および圧力損失を調整し、熱交換性能、ひいては暖房性能を確保しようとするものではない。
【0007】
つまり、放熱量の減少を抑制して暖房性能を確保するには、冷媒流速を上げ、熱伝達率を向上させることが有効であるが、冷媒流速を上げると、圧力損失を招くため、熱交換器内での冷媒流路を適切に設定することが重要となる一方、空気調和機の室内ユニットを小型化するという設計的見地からすると、分岐サーキット数を徒に増やすことは室内熱交換器が大型化することから得策ではない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、分岐サーキットの設定を適正化することによって冷媒の熱伝達率および圧力損失を最適化し、熱交換性能を確保することができる熱交換器およびそれを用いた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の熱交換器およびそれを用いた空気調和機は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる熱交換器は、HFO冷媒が用いられ、多数の冷媒チューブに対して冷媒が多サーキットに分岐、集合されて流通されるフィンチューブ型の熱交換器において、前記多数の冷媒チューブの分岐サーキット数が最大6サーキットとされ、前記熱交換器における熱交換部に配置される前記多数の冷媒チューブの総本数のうち、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合が、空気調和機の定格運転時における、前記熱交換器の能力に応じて7ないし30%の範囲に設定されており、前記多数の冷媒チューブの総本数のうち、前記1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合が、前記能力が2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器で、15ないし30%、前記能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器で、7ないし15%に設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、多サーキット化されたフィンチューブ型熱交換器にあって、多数の冷媒チューブの分岐サーキット数が最大6サーキットとされ、その多数の冷媒チューブの総本数のうち、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合が、能力に応じて7ないし30%の範囲に設定されているため、冷媒チューブの分岐サーキット数を最大6サーキットに制限することにより、サーキット数が徒に増加することによる分岐・集合器の大型化、熱交換器の大型化を回避しながら、分岐サーキット数を十分確保して圧力損失を抑制し、適正範囲に設定することができる。また、冷媒チューブの総本数のうち、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合を熱交換器の能力に応じて7ないし30%の範囲に設定することにより、冷・暖房時共に圧力損失を適正範囲に維持しつつ、暖房時に、1および2ないし4サーキットの占める割合が7%未満となり、より多サーキット化されて液リッチとなった冷媒の流速が低下し、熱伝達率が低下して暖房COPが悪化する一方、冷房時に、1および2ないし4サーキットの占める割合が30%を超えて、多サーキット化が低下することでガス化して膨張した冷媒の圧力損失が増大し、熱伝達率が低下して冷房COPが悪化するのを防止することができる。従って、冷・暖房時共に冷媒の熱伝達率および圧力損失を適正範囲に設定して高COPを維持し、HFO冷媒が用いられた熱交換器としての熱交換性能、ひいては暖房性能を確保することができる。
また、本発明によれば、多数の冷媒チューブの総本数のうち、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合が、能力が2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器で、15ないし30%、能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器で、7ないし15%に設定されているため、駆動電力が通常100Vとされる空気調和機用の能力が小さい2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器で、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合を15ないし30%、駆動電力が通常200Vとされる空気調和機用の能力が大きい3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器で、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合を7ないし15%とすることにより、それぞれ能力に応じた適正な範囲に1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合を設定し、熱伝達率および圧力損失を適正範囲に維持することができる。つまり、能力が大きい3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器では、能力に応じて冷媒循環量が増し、冷媒流速が上昇して圧力損失が増大することから、1および2ないし4サーキットの占める割合を、暖房性能を確保あるいはサーキットを構築する上で最低限必要な1および2ないし4サーキット部を確保して相当分だけ下げることによって、多サーキット化を適正化し、圧力損失の増大を抑制することができる。従って、熱交換器の能力に応じて、それぞれ冷媒の熱伝達率および圧力損失を適正に設定して高COPを維持し、熱交換性能を確保することができる。
【0013】
さらに、本発明の熱交換器は、上記の熱交換器において、前記多数の冷媒チューブの総本数のうち、前記1サーキットの占める割合が、前記能力が2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器で、5ないし15%、前記能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器で、3ないし10%に設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、多数の冷媒チューブの総本数のうち、1サーキットの占める割合が、能力が2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器で、5ないし15%、能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器で、3ないし10%に設定されているため、駆動電力が通常100Vとされる空気調和機用の能力が小さい2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器で、1サーキットの占める割合を5ないし15%、駆動電力が通常200Vとされる空気調和機用の能力が大きい3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器において、1サーキットの占める割合を3ないし10%とすることにより、それぞれ能力に応じた適正な範囲に1サーキットの占める割合を設定することができる。つまり、1サーキット部では冷媒流速が速くなり圧力損失も増大することから、1サーキットの占める割合を、暖房性能を確保するために最低限必要な1サーキット部のみとして相当分下げることにより、圧力損失の増大を抑制することができる。従って、熱交換器の能力に応じて、それぞれ冷媒の熱伝達率および圧力損失を適正に設定し、熱交換性能を確保することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかる空気調和機は、冷凍サイクル中にHFO冷媒が充填され、その冷凍サイクルを構成している室内熱交換器が、上述のいずれかの熱交換器とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、冷凍サイクル中にHFO冷媒が充填され、その冷凍サイクルを構成している室内熱交換器が、上述のいずれかの熱交換器とされているため、冷媒とした低GWP冷媒であるHFO冷媒を用いたとしても、上述の熱交換器を室内熱交換器に適用することにより、冷・暖房時共に冷媒の熱伝達率および圧力損失を適正範囲に設定して高COPを維持し、熱交換性能を向上することができる。従って、暖房性能の低下を抑制し、R410A冷媒を用いた空気調和機と略同等の空調性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱交換器によると、冷媒チューブの分岐サーキット数を最大6サーキットに制限することにより、サーキット数が徒に増加することによる分岐・集合器の大型化、熱交換器の大型化を回避しながら、分岐サーキット数を十分確保して圧力損失を抑制し、適正範囲に設定することができる。また、冷媒チューブの総本数のうち、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合を熱交換器の能力に応じて7ないし30%の範囲に設定することにより、冷・暖房時共に圧力損失を適正範囲に維持しつつ、暖房時に、1および2ないし4サーキットの占める割合が7%未満となり、より多サーキット化されて液リッチとなった冷媒の流速が低下し、熱伝達率が低下して暖房COPが悪化する一方、冷房時に、1および2ないし4サーキットの占める割合が30%を超えて、多サーキット化が低下することでガス化して膨張した冷媒の圧力損失が増大し、熱伝達率が低下して冷房COPが悪化するのを防止することができるため、冷・暖房時共に冷媒の熱伝達率および圧力損失を最適範囲に設定して高COPを維持し、HFO冷媒が用いられた熱交換器としての熱交換性能、ひいては暖房性能を確保することができる。
【0018】
本発明の空気調和機によると、冷媒とした低GWP冷媒であるHFO冷媒を用いたとしても、上述の熱交換器を室内熱交換器に適用することにより、冷・暖房時共に冷媒の熱伝達率および圧力損失を適正範囲に設定して高COPを維持し、熱交換性能を向上することができるため、暖房性能の低下を抑制し、R410A冷媒を用いた空気調和機と略同等の空調性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の外観斜視図である。
図2】上記空気調和機の室内ユニットに設けられる室内熱交換器の冷媒チューブサーキットの設定例を示す模式図である。
図3】上記熱交換器の冷媒チューブサーキットの設定例を示す図表である。
図4】上記熱交換器におけるサーキット割合と暖房時のCOPおよび圧力損失との関係を示すグラフである。
図5】上記熱交換器におけるサーキット割合と冷房時のCOPおよび圧力損失との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
図1には、本発明の実施形態に係る空気調和機の外観斜視図が示され、図2には、その室内ユニットに設けられる室内熱交換器の冷媒チューブサーキットの設定例を示す模式図が示されている。
空気調和機1は、セパレート形の空気調和機であり、室外ユニット2と室内ユニット3とから構成されている。室外ユニット2は、屋外の適所に設置され、また、室内ユニット3は、室内の壁面等に据付け板4を介して設置されるものであり、この室外ユニット2と室外ユニット3は、内外接続配管5および図示省略の信号線等を介して接続されることにより一体化され、リモコン6によって運転操作されるようになっている。
【0021】
室外ユニット2には、公知の如く、圧縮機、室外熱交換器、室外送風機、四方切換弁、膨張弁および室外コントローラ等の室外側機器類が収容設置されるとともに、室内ユニット3には、室内熱交換器、室内送風機、室内コントローラ等の室内側機器類が収容設置されている。これら圧縮機、室外熱交換器、四方切換弁、膨張弁、室内熱交換器等が、内外接続配管5を含む冷媒配管を介して順次配管接続されることにより、密閉サイクルとされた公知の冷凍サイクルが構成されている。そして、この冷凍サイクル内には、地球温暖化係数(GWP)が小さい低GWP冷媒であるR1234yf冷媒(HFO冷媒)が所要量充填されている。
【0022】
また、室内ユニット3は、上面(および/または前面)に設けられている吸込みグリル7から室内空気を吸込み、その空気を室内熱交換器9(図2参照)により冷却または加熱して温調した後、送風機を介して下部の吹出し口8から室内に吹出すことにより、室内の空調に供する構成とされている。室内熱交換器9は、図2に示されるように、複数の熱交換器に分割されて室内ユニット3内の前面側、背面側にそれぞれ前後に2層に積層された状態で配設されている。
【0023】
この室内熱交換器9は、アルミ製薄板からなる多数枚のプレートフィン10と、銅製パイプからなる多数本の冷媒チューブ11とから構成されたフィンチューブ型の熱交換器であり、冷媒は多数の冷媒チューブ11に対して複数の分岐・集合器12を介して多サーキットに分岐、集合されて流通されるように構成されている。本実施形態における室内熱交換器(熱交換器)9は、能力が2kWから6kWクラスの小型エアコン(空気調和機)に適用される熱交換器9とされており、冷媒チューブ11として径が6.35Φの銅製パイプが用いられたものである。
【0024】
なお、室内熱交換器(熱交換器)9の能力が2kWから6kW迄のクラスの小型エアコンの場合、一般的に、能力が2kWから3.6kW以下のクラスのエアコン(空気調和機)では、駆動電力として100Vの電力が使用され、能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスのエアコン(空気調和機)では、駆動電力として200Vの電力が使用されるようになっている。
【0025】
図2には、能力が2kWないし3.6kWクラスの範囲に入る2.5kWクラスの熱交換器9であって、冷媒チューブ11の総本数が48本とされたものが示されている。より詳しくは、冷媒チューブ11の総本数が48本で、分岐サーキット数が1サーキット部13Aの冷媒チューブ11の本数が6本、4サーキット部13Cの冷媒チューブ11の本数が8本、6サーキット部13Dの冷媒チューブ11の本数が34本で構成され、1サーキット部13Aの占める割合が総本数に対して13%、1サーキット部13Aおよび2ないし4サーキット部13B,13Cの占める割合が総本数に対して29%とされた構成の熱交換器9が示されている。
【0026】
同様に冷媒チューブ11を多サーキット化した熱交換器9の構成例(1)ないし(4)が図3の図表に示されている。
多サーキット例(1)は、1サーキット部13Aの冷媒チューブ11の本数が4本、6サーキット部13Dの冷媒チューブ11の本数が44本とされ、1サーキット部13Aの占める割合が8%、1サーキット部13Aおよび2ないし4サーキット部13B(図示省略),13Cの占める割合が8%とされている構成の熱交換器9である。
【0027】
多サーキット例(2)は、1サーキット部13Aの冷媒チューブ11の本数が4本、図示省略されている2サーキット部13Bの冷媒チューブ11の本数が4本、6サーキット部13Dの冷媒チューブ11の本数が40本とされ、1サーキット部13Aの占める割合が8%、1サーキット部13Aおよび2ないし4サーキット部13B,13Cの占める割合が17%とされている構成の熱交換器9である。
また、多サーキット例(3)は、上述した図2に例示されている熱交換器9である。
【0028】
さらに、多サーキット例(4)は、1サーキット部13Aの冷媒チューブ11の本数が8本、2サーキット部13Bの冷媒チューブ11の本数が10本、6サーキット部13Dの冷媒チューブ11の本数が30本とされており、1サーキット部13Aの占める割合が17%、1サーキット部13Aおよび2ないし4サーキット部13B,13Cの占める割合が38%とされている構成の熱交換器9である。
【0029】
図4には、上記多サーキット例(1)ないし(4)の熱交換器9において、横軸に1サーキットの割合と、1サーキットおよび2ないし4サーキットの割合、縦軸に暖房COPと暖房圧力損失を表し、それぞれの関係を解析した結果が示され、図5には、同様の熱交換器9において、横軸に1サーキットの割合と、1サーキットおよび2ないし4サーキットの割合、縦軸に冷房COPと冷房圧力損失を表し、各々の関係を解析した結果が示されている。図4,5に示すグラフにおいて、横軸は左から右へと1サーキットの割合、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合が順次低くなり、より多サーキット化された熱交換器9であることを示している。
【0030】
この図4から見ると、熱交換器9を暖房時に凝縮器として機能させた場合、1サーキットの占める割合が、概ね5ないし15%の範囲、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合が、概ね15ないし30%の範囲において、暖房圧力損失を低くし、熱伝達率を向上して暖房COPを高く維持できることが解る。これは、暖房時、低サーキットである1および2ないし4サーキットの占める割合を低くすると、より多サーキット化されることによって、液リッチとなった冷媒の流速が低下し、熱伝達率が低下することで暖房COPが悪化することによるものと考えられる。従って、暖房時、低サーキットの占める割合は、上記の範囲が適正な範囲と思われる。
【0031】
また、図5を見ると、熱交換器9を冷房時に蒸発器として機能させた場合、1サーキットの占める割合が、概ね15%を超える範囲、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合が、概ね30%を超える範囲において、冷房圧力損失が増大し、熱伝達率が低下して冷房COPが低下することが解る。これは、冷房時、低サーキットである1および2ないし4サーキットの占める割合が高くなると、低サーキット化により、蒸発ガス化されて体積が膨張した冷媒の圧力損失が増大し、熱伝達率が低下して冷房COPが悪化することによるものと考えられる。従って、冷房時、低サーキットの占める割合は、上記の範囲が適正な範囲と思われる。
【0032】
一方、上記は能力が2kWないし3.6kW以下のクラスで、100Vの駆動電力で駆動されるエアコン(空気調和機)に適用する熱交換器9についてのものであるが、それより1クラス上の3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器9の場合、200Vの駆動電力で駆動されるエアコン(空気調和機)に適用されることから、圧縮機の押しのけ量も大きくなり、冷媒循環量が増えるため、室内熱交換器(熱交換器)9の多サーキット化についても、それに対応できるように低サーキット側の1サーキットの占める割合、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合をそれぞれ変える必要がある。
【0033】
ここで、3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器9の場合、上記の如く、冷媒循環量が増えることから、より多サーキット化する必要があるものの、暖房時における性能確保を考慮すると、最低限の1サーキット部を確保する必要がある。この際の冷媒チューブ11の本数は、2本または4本であり、1サーキット部が占める割合は、4ないし8%が適正範囲と云える。
【0034】
一方、冷房時の圧力損失の増加を考慮すると、暖房性能を確保するために最低限必要な1サーキット部を除き、2ないし4サーキット部は極力減らし、多サーキット化することが望ましいと云える。かかる点から物理的に多サーキットを構築する上で必要な最低限の2ないし4サーキット部のみを残すと、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合は、概ね2kWないし3.6kW以下のクラス(15ないし30%)の半分程度の7ないし15%が適正範囲と云える。
【0035】
以上から、上記熱交換器9では、HFO冷媒を使用するに当たり、多数の冷媒チューブ11における分岐サーキット数を最大で6サーキットとし、多数の冷媒チューブ11の総本数のうち、1サーキットおよび2ないし4サーキットの占める割合を、能力に応じて7ないし30%の範囲に設定している。これによって、冷・暖房時共に冷媒の熱伝達率および圧力損失を最適な範囲に設定することが可能となる。
【0036】
より詳細には、小型エアコン(空気調和機)に適用される能力が2.0kWから6.0kW迄のクラスの熱交換器9のうち、能力が2.0kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器9が適用され、100Vの駆動電力で駆動される小型エアコンでは、多数の冷媒チューブ11の総本数のうち、
1サーキットが占める割合を、5ないし15%
1サーキットおよび2ないし4サーキットが占める割合を、15ないし30%
の範囲に設定し、
能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器9が適用され、200Vの駆動電力で駆動される小型エアコンでは、多数の冷媒チューブ11の総本数のうち、
1サーキットが占める割合を、3ないし10%
1サーキットおよび2ないし4サーキットが占める割合を、7ないし15%
の範囲に設定するのが望ましいと云える。
【0037】
斯くして、本実施形態においては、多サーキット化されたフィンチューブ型の熱交換器9にあって、多数の冷媒チューブ11の分岐サーキット数が最大で6サーキットとされており、その多数の冷媒チューブ11の総本数のうち、1サーキット部13Aおよび2ないし4サーキット部13B,13Cの占める割合が、熱交換器9の能力に応じて7ないし30%の範囲に設定された構成とされている。このように、冷媒チューブ11の分岐サーキット数を最大6サーキットに制限することにより、サーキット数が徒に増加することによる分岐・集合器12の大型化、熱交換器9の大型化を回避しながら、分岐サーキット数を十分確保して圧力損失を抑制し、適正範囲に設定することができる。
【0038】
また、冷媒チューブ11の総本数のうち、1サーキット部13Aおよび2ないし4サーキット部13B,13Cの占める割合を熱交換器9の能力に応じて7ないし30%の範囲に設定することにより、冷・暖房時共に圧力損失を適正範囲に維持しつつ、暖房時、図4に示されるように、1および2ないし4サーキット部13Aないし13Cの占める割合が7%未満となり、より多サーキット化されて液リッチとなった冷媒の流速が低下し、熱伝達率が低下して暖房COPが悪化するのを防止することができる。
【0039】
さらに、冷房時には、図5に示されるように、1および2ないし4サーキット部13Aないし13Cの占める割合が30%を超えて、多サーキット化が低下することでガス化して膨張した冷媒の圧力損失が増大し、熱伝達率が低下して冷房COPが悪化するのを防止することができる。
これによって、冷・暖房時共に冷媒の熱伝達率および圧力損失を適正範囲に設定して高COPを維持し、HFO冷媒が用いられた熱交換器9としての熱交換性能、ひいては暖房性能を確保することができる。
【0040】
一方、上記熱交換器9では、多数の冷媒チューブ11の総本数のうち、1サーキット部13Aおよび2ないし4サーキット部13B,13Cの占める割合が、能力が2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器9で、15ないし30%、能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器9で、7ないし15%に設定された構成とされている。
【0041】
このように、駆動電力が通常100Vとされる空気調和機用の能力が小さい2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器9で、1サーキット部13Aおよび2ないし4サーキット部13B,13Cの占める割合を、15ないし30%、駆動電力が200Vとされる空気調和機用の能力が大きい3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器9で、1サーキット部13Aおよび2ないし4サーキット部13B,13Cの占める割合を、7ないし15%とすることにより、それぞれ能力に応じた適正な範囲に1および2ないし4サーキット部13Aないし13Cの占める割合を設定し、熱伝達率および圧力損失を適正範囲に維持することができる。
【0042】
つまり、能力が大きい3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器9では、能力に応じて冷媒循環量が増大し、冷媒流速が上昇して圧力損失が増大することから、1および2ないし4サーキット部13A,13B,13Cの占める割合を相当分だけ下げることによって、暖房性能を確保あるいはサーキットを構築する上で最低限必要な1および2ないし4サーキット部13A,13B,13Cを確保して多サーキット化を適正化し、圧力損失の増大を抑制することができる。
従って、熱交換器9の能力に応じて、それぞれ冷媒の熱伝達率および圧力損失を適正に設定して高COPを維持し、熱交換性能を確保することができる。
【0043】
更に、本実施形態においては、多数の冷媒チューブ11の総本数のうち、1サーキット13Aの占める割合を、能力が2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器9で、5ないし15%、能力が3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器9で、3ないし10%に設定した構成としている。このように、駆動電力が通常100Vとされる空気調和機用の能力が小さい2kWから3.6kW以下のクラスの熱交換器において、1サーキットの占める割合を5ないし15%の範囲、駆動電力が通常200Vとされる空気調和機用の能力が大きい3.6kWを超え6kW迄のクラスの熱交換器において、1サーキットの占める割合を3ないし10%の範囲とすることにより、それぞれ能力に応じた適正な範囲に1サーキットの占める割合を設定し、熱伝達率および圧力損失を適正範囲に維持することができる。
【0044】
つまり、1サーキット部13Aでは、冷・暖房時共に冷媒流速が速くなって圧力損失が増大することから、1サーキット部13Aの占める割合を、暖房性能を確保するために最低限必要な1サーキット部のみとして相当分下げることにより、圧力損失の増大を抑制することができ、従って、熱交換器9の能力に応じて、それぞれ冷媒の熱伝達率および圧力損失を適正に設定して高COPを維持し、熱交換性能を確保することができる。
【0045】
また、HFO冷媒が充填された冷凍サイクルを構成している空気調和機1の室内熱交換器9が、上記の熱交換器9とされているため、冷媒とした低GWP冷媒であるHFO冷媒を用いたとしても、上記熱交換器9を室内熱交換器に適用することで、冷・暖房時共に冷媒の熱伝達率および圧力損失を適正範囲に設定して高COPを維持し、熱交換性能を向上することができる。従って、暖房性能の低下を抑制し、R410A冷媒を用いた空気調和機と略同等の空調性能を確保することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、熱交換器9を室内熱交換器に適用した空気調和機1について説明したが、該熱交換器9を室外熱交換器に適用してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
1 空気調和機
2 室外ユニット
3 室内ユニット
9 熱交換器(室内熱交換器)
10 プレートフィン
11 冷媒チューブ
12 分岐・集合器
13A 1サーキット部
13B 2サーキット部
13C 4サーキット部
13D 6サーキット部
図1
図2
図3
図4
図5