(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の油中水型乳化組成物は、塗布時の圧力およびせん断力により、内包された水分が放出される。
【0009】
本発明の乳化組成物は前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分を含有する。
【0010】
本発明に用いる前記(A)成分は、(ジメチコン/(PEG−10/15))クロスポリマーを用いることが好ましい。
【0011】
本発明の油中水型乳化組成物は、前記(A)成分以外に、(ジメチコン/ビス−イソブチルPPG−20)クロスポリマー等のポリエーテル変性架橋型シリコーンを本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合してもよい。
【0012】
本発明に用いる前記(A)成分の配合量は、0.5〜2.5質量%が好ましい。更に0.75〜2.25質量%が好ましく、特に1.25〜1.75質量%が好ましい。0.5質量%未満であると、保湿感が劣る恐れがあり、手に塗布後の作業においてぬめり感を生じてしまう場合がある。また、油中水型乳化組成物を調整することができない場合もある。2.5質量%を超えると内包された水分が放出されない場合があり、そのためさっぱり感が劣る恐れがある。また、手に塗布後の作業においてぬめり感およびべたつき感を生じてしまう場合がある。
なお、本発明において他の成分についての含有量を示す%数は、特段の断りがない限り質量%数とする。
【0013】
本発明に用いる前記(B)成分のHLB値は10.0以下が好ましい。HLB値が10.0を超えると、さっぱり感が劣る恐れがあり、手に塗布後の作業においてぬめり感およびべたつき感を生じてしまう場合がある。
【0014】
なお、HLBとは、親水性−親油性のバランス(Hydrophile−Lipophile Balance)を示す指標であり、「Griffin法」を用いて算出する。「HLB値は10.0以下」とはGriffin法の意味において、25℃におけるHLBが10.0以下である界面活性剤を意味する。
【0015】
本発明に用いる前記(B)成分は特に限定されないが、PEG−3ジメチコン、PEG−9ジメチコン、PEG−10ジメチコン、PEG−12ジメチコン、PEG/PPG−19/19ジメチコン、ポリシリコーン−13、PEG/PPG−30/10ジメチコン、PEG/PPG−20/22ブチルエーテルジメチコン等を用いることができる。
【0016】
本発明に用いる前記(B)成分の配合量は、0.1〜1.0%が好ましい。更に0.1〜0.6%が好ましく、特に0.1〜0.3%が好ましい。0.1%未満であると、保湿感が劣る恐れがあり、手に塗布後の作業においてぬめり感を生じてしまう場合がある。1.0%を超えると内包された水分が放出されない場合があり、そのためさっぱり感が劣る恐れがある。また、手に塗布後の作業においてぬめり感およびべたつき感を生じてしまう場合がある。
【0017】
本発明に用いる前記(C)成分は、動粘度が10〜100mm
2/sのものが好ましい。更に10〜50mm
2/sのものが好ましく、特に10〜30mm
2/sのものが好ましい。10mm
2/s未満であると、保湿感が劣る場合がある。100mm
2/sを超えると、さっぱり感が劣る恐れがあり、手に塗布後の作業においてぬめり感およびべたつき感を生じてしまう場合がある。
なお、本発明に用いる前記(C)成分は限定されないが、信越化学工業株式会社から市販されている、KF−96A−10CS(動粘度10mm
2/s)、KF−96A−30CS(動粘度30mm
2/s)、KF−96A−50CS(動粘度50mm
2/s)、KF−96A−100CS(動粘度100mm
2/s)等を用いることができる。
【0018】
なお、動粘度の測定方法は、「医薬部外品原料規格2006一般試験法粘度測定法第1法」に準じて改良型オストワルド粘度計にて測定する。ただし、測定温度は25℃±0.1℃とする。
【0019】
本発明に用いる前記(C)成分の配合量は4.0〜14.0%が好ましい。更に6.0〜12.0%が好ましく、特に8.0〜10.0%が好ましい。4.0%未満であると保湿感が劣る恐れがあり、手に塗布後の作業においてぬめり感およびべたつき感を生じてしまう場合がある。14.0%を超えるとさっぱり感が劣る恐れがあり、手に塗布後の作業においてぬめり感およびべたつき感を生じてしまう場合がある。
【0020】
本発明に用いる前記(D)成分は特に限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩化物塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩等を用いることができる。
【0021】
本発明の油中水型乳化組成物は、前記(D)成分以外に炭酸塩、リン酸塩および酢酸塩等の無機塩を本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合してもよい。
【0022】
本発明に用いる前記(D)成分の配合量は、0.2〜0.8%が好ましい。更に0.3〜0.7%が好ましく、特に0.4〜0.6%が好ましい。0.2%未満であると、さっぱり感が劣る場合がある。0.8%を超えると手に塗布後の作業においてぬめり感を生じてしまう場合がある。
【0023】
本発明の油中水型乳化組成物は、油剤として炭化水素油、エステル油、植物油脂、高級アルコール等を本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合してもよい。
【0024】
前記油剤は植物油脂であると高い保湿感が得られ、特に限定されないがシア脂、カカオ脂、マンゴー種子脂等が挙げられる。その中でもシア脂はより高い保湿感が得られる。
【0025】
前記植物油の配合量は、0.001〜1.0%が好ましく、0.5%以下がより好ましい。0.001%未満では保湿感が得られない恐れがあり、1.0%を超えると、手に塗布後の作業においてぬめり感やべたつき感を生じてしまう場合がある。
【0026】
本発明の油中水型乳化組成物は、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等の架橋型シリコ−ンを本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合してもよい。
【0027】
前記架橋型シリコーンを用いることにより、手に塗布後の作業においてぬめり感やべたつき感を軽減できる。
【0028】
前記架橋型シリコーンの配合量は、0.025〜0.1%が好ましく、0.05%以下がより好ましい。0.025%未満であると、手に塗布後の作業においてぬめり感やべたつき感を軽減する効果が得られない恐れがあり、0.1%を超えると手に塗布後の作業においてぬめり感やべたつき感を生じてしまう場合がある。
【0029】
本発明の油中水型乳化組成物は、その他の化粧料等に通常用いられる原料を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合してもよい。非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤、香料、ビタミン類、植物抽出液等が挙げられる。
【0030】
また、本発明の油中水型乳化組成物は、従来皮膚に適用されている化粧料や医薬部外品に幅広く応用することができるが、高いさっぱり感や保湿感があり、手に塗布後の作業においてぬめり感やべたつき感を生じない点で、ハンドケア用として特に優れている。
【0031】
以下に、実施例をあげて、本発明をより詳細に説明する。本発明はこれにより制限されるものではない。
【実施例】
【0032】
実施例に先立って実施例で採用した評価法を説明する。
【0033】
水分の放出
実施例、比較例に示した油中水型乳化組成物を0.1g手の甲にのせ、指で塗り広げるようにして圧力およびせん断力をかけ、水分が放出されるかどうか確認した。
<評価基準>
◎:水分が出てくる。
×:水分が出てこない。
【0034】
さっぱり感
実施例、比較例に示した油中水型乳化組成物を、被験者20名に使用させ、さっぱり感を実感したかどうか評価した。
<評価基準>
◎:とても良好 15名以上がさっぱり感を実感した。
○:良好 10〜14名がさっぱり感を実感した。
△:普通 5〜9名がさっぱり感を実感した。
×:悪い 4名以下がさっぱり感を実感した。
【0035】
保湿感
実施例、比較例に示した油中水型乳化組成物を、被験者20名に使用させ、保湿感を実感したかどうか評価した。
<評価基準>
◎:とても良好 15名以上が保湿感を実感した。
○:良好 10〜14名が保湿感を実感した。
△:普通 5〜9名が保湿感を実感した。
×:悪い 4名以下が保湿感を実感した。
【0036】
ぬめり感
実施例、比較例に示した油中水型乳化組成物を被験者20名に使用させ、金属製のボールペンで筆記作業を行い、ぬめり感を評価した。
<評価基準>
◎:とても良好 15名以上がぬめり感がないと評価した。
○:良好 10名〜14名がぬめり感がないと評価した。
△:普通 5名〜9名がぬめり感がないと評価した。
×:悪い 4名以下がぬめり感がないと評価した。
【0037】
べたつき感
実施例、比較例に示した油中水型乳化組成物を被験者20名に使用させ、金属製のボールペンで筆記作業を行い、べたつき感の有無を評価した。
<評価基準>
◎:とても良好 15名以上がべたつき感がないと評価した。
○:良好 10名〜14名がべたつき感がないと評価した。
△:普通 5名〜9名がべたつき感がないと評価した。
×:悪い 4名以下がべたつき感がないと評価した。
【0038】
(実施例1〜27、比較例1〜8)
実施例1〜27、比較例1〜8に示した油中水型乳化組成物を調製し、水分の放出、さっぱり感、保湿感、ぬめり感およびべたつき感を評価しその結果を表1〜4に示した。
【0039】
調製方法
a相を均一に混ぜ、攪拌しながらb相を徐々に加える。b相を加え終わった後、適切な硬さになるまで混合し続ける。なお、b相のクエン酸およびクエン酸ナトリウムの配合量はb相のpHが5.5程度になるように適宜調整する。
【0040】
【表1】
比較例1および比較例2はa相とb相を混合したときに分離してしまい、油中水型乳化組成物を調製することができなかった。
【0041】
【表2】
比較例3は保湿感およびぬめり感が劣った。比較例4はぬめり感およびべたつき感が劣った。
【0042】
【表3】
比較例5および比較例6はさっぱり感、ぬめり感およびべたつき感が劣った。比較例7は、保湿感、ぬめり感およびべたつき感が劣った。
【0043】
【表4】
比較例8はさっぱり感が劣った。
【0044】
実施例1〜27から明らかなように、本発明の油中水型乳化組成物は塗布時の圧力およびせん断力により内包された水分が放出され、高いさっぱり感や保湿感があり、手に塗布後の作業におけるべたつき感やぬめり感がなかった。
【0045】
比較例1のように前記(A)成分以外の変性架橋型シリコーンを配合した場合は、分離してしまい油中水型乳化組成物が調製できない。比較例2のように前記(A)成分が配合されない場合も、分離してしまい油中水型乳化組成物が調製できない。比較例3のように前記(B)成分が配合されない場合は保湿感が劣り、塗布後の作業においてぬめり感を生じてしまう。前記(B)成分が比較例4である場合は、手に塗布後の作業においてぬめり感およびべたつき感を生じてしまう。比較例5および比較例6のように、前記(C)成分以外の油剤の場合はさっぱり感が劣り、塗布後の作業においてぬめり感およびべたつき感を生じてしまう。比較例7のように前記(C)成分が配合されない場合は水分が放出されず、保湿感が劣り、塗布後の作業においてぬめり感およびべたつき感を生じてしまう。比較例8のように前記(D)成分が配合されない場合はさっぱり感が劣る。
【0046】
(実施例28、29、30)
以下表5に処方例を示す。
【表5】
実施例28、29、30に示した油中水型乳化組成物は塗布時の圧力およびせん断力により内包された水分が放出され、高いさっぱり感や保湿感があり、手に塗布後の作業におけるべたつき感やぬめり感がなかった。
【0047】
本発明は、塗布時の圧力およびせん断力により内包された水分が放出される油中水型乳化組成物であって、保湿感やさっぱり感があり、手に塗布後の作業(パソコンの使用、ペンでの筆記作業等)においてべたつき感やぬめり感を生じない油中水型乳化組成物を提供できる。